(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記進入阻止部材は、三つ股に分岐し、1つは股間に沿って肛門から後方側へと配置可能であり、残り2つは各内股に沿って配置可能である進入阻止部を有することを特徴とする請求項3に記載の経肛門ドレーン装置。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0038】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る経肛門ドレーン装置(以下、「ドレーン装置」と称す。)1を示す。このドレーン装置1は、通路部材2と、通路部材2の外周に装着される進入阻止部材3と、通路部材2の下端部に接続される接続部材4とで構成されている。
【0039】
図2(a)に示すように、通路部材2は中空筒状で、可撓性を有するシリコンゴム等の材料からなり、押出成形により形成することができる。通路部材2には、その内部空間である第1通路部5のほか、外周壁(壁部)に第2通路部6及び第3通路部7がそれぞれ形成されている。
【0040】
図2(b)に示すように、第1通路部5は、通路部材2の軸心位置から偏心して形成された横断面円形の穴で構成されている。このため、通路部材2の外周壁は周方向で肉厚が相違している。そして、肉厚の大きい部分に第2通路部6と第3通路部7が形成されている。第2通路部6は長穴で、ここでは周方向に沿って2箇所に設けられている。第3通路部7は、第2通路部6に比べて流路断面積の小さな穴である。
【0041】
図1及び
図2(a)に戻って、通路部材2の外周壁には、先端側と後端側のそれぞれに周方向及び軸方向に位置をずらせて2箇所ずつ第1貫通孔8(
図2(a)では一方のみ図示)が形成されている。各第1貫通孔8は、第1通路部5にそれぞれ連通し、腸内の水様便を通過させて第1通路部5内へと導くことができるサイズに形成されている。
【0042】
通路部材2の先端には球状の膨らみ部9が形成されている。膨らみ部9には、第3通路部7が連通し、後述する接続部材4から水を供給して弾性的に膨らませることが可能となっている。
【0043】
通路部材2の外周壁(壁部)には、膨らみ部9と先端側の第1貫通孔8との間に、複数(ここでは、4箇所)の第2貫通孔10が形成されている。第2貫通孔10は、通路部材2の外周壁に形成した第2通路部6に連通し、水様便が流入しにくいサイズに形成されている。但し、第2貫通孔10を防水通気性素材で覆うのであれば、第2貫通孔10のサイズや形状は自由に設定することができる。また第2貫通孔10は、直腸内の縫合位置よりも上流側(S状結腸付近)に配置される(この位置は、直腸内に溜まる水様便内に浸かりにくい位置でもある)。具体的には、通路部材2の腸管内に挿入される長さが50mmから250mmの範囲とされている。
【0044】
進入阻止部材3は弾性材料(例えば、ゴム材料)からなり、
図1に示すように、通路部材2の外周に固定される中空筒状の挿入部11と、挿入部11の基部から側方に延びる進入阻止部12(12a、12b、12c)とを備える。
【0045】
挿入部11には上方から通路部材2の下端部が挿入されて下方から突出する。挿入部11と通路部材2とは互いに接着されて一体構造となっている。通路部材2の下端部には、後述する接続部材4の上端部が挿入され、これらは接着等によって連結される。挿入部11の外径寸法は肛門に挿入しやすい値(例えば、直径11mm)に設定され、肛門管と同じか若干超える長さとなっている。肛門管の長さは人によってバラツキがあるが、挿入部11の長さは、日本人として想定される長さ(約30mmから約40mm)よりも若干長い値(ここでは、45mm)に決定している。
【0046】
各進入阻止部12a、12b、12cは、平面視で、先端に向かうに従って徐々に幅寸法が大きくなり、先端部分で円弧状に形成されている。進入阻止部12aは、断面が股間の形状に合わせて断面山型に形成されている。進入阻止部12b、12cは薄肉に形成され、進入阻止部12aを股間に配置した状態で内股に沿って弾性変形し、その表面に塗布した粘着剤によって内股に固定可能となっている。また進入阻止部12aも粘着剤により身体側へと固定可能となっている。
【0047】
図3に示すように、接続部材4は、第1通路部13と、その先端部から斜めに延びる第2通路部14及び第3通路部15とを備える。接続部材4の上端部外面は円錐状に形成されており、通路部材2に接続される。このとき、第1通路部13、第2通路部14及び第3通路部15を、通路部材2の第1通路部5、第2通路部6及び第3通路部7にそれぞれ連通させる。第1通路部13には、図示しないチューブ等が接続され、排出される水様便が図示しない袋体へと排出されるようになっている。第2通路部14は、そのままの状態で使用され、通路部材2の第2貫通孔10から第2通路部6を通過してきたガスを排出する。第3通路部15は、内部に逆止弁(図示せず)を備える。逆止弁はシリンジ等で押圧されることにより流路を開放し、流動体(ここでは、水)の流入出を許容する。
【0048】
前記ドレーン装置1では、通路部材2の内部空間が第1通路部5で構成され、その外周壁に第2通路部6が形成されている。このため、通路部材2を外径寸法の小さいスリムな構成とすることができ、肛門から腸内へとスムーズに挿入することが可能となる。また挿入後も占有スペースが小さいため、患者が受ける負担も少なくて済む。また、これら通路部5及び6の加工は押出成形により一体的に形成することができるシンプルな構成である。
【0049】
前記構成からなるドレーン装置1は、大腸がんで肛門を温存しつつ行う直腸切除術(高位前方切除術、低位前方切除術、超低位前方切除術、括約筋間切除術、等)等、直腸管内の減圧が必要な際に使用する。以下、その使用方法について説明する。
【0050】
手術後、通路部材2の先端を肛門内へと挿入する。このとき、膨らみ部9は膨らませずに、小さな球状のままとしておく。これにより、肛門内への挿入をスムーズに行うことができる。
【0051】
挿入部11を肛門内に挿入し、進入阻止部12aを肛門から後方側の股間へと配置する。進入阻止部12b、12cを弾性変形させて内股に沿わせ、粘着剤によって内股に固定する。進入阻止部材3によって通路部材2がそれ以上腸内に進入することが阻止される。したがって、通路部材2の先端部、特に第2貫通孔10の位置を所望の位置、すなわち直腸の縫合部分よりも奥側の位置に配置することができる。
【0052】
第1通路部13の一端に袋を接続したチューブの他端を接続する。第3通路部15にシリンジ(詳しくは、シリンジの注射針を装着していない先端筒部)を挿入し、逆止弁を開放した状態で、水を注入して膨らみ部9を膨らませる。第3通路部15からシリンジを引き抜けば、逆止弁が流路を閉鎖し、膨らみ部9は膨らみ状態を維持する。この膨らみ部9は、球体状で角部のない構成であり、この部分が腸壁に接触する。しかも、その接触面積は十分に大きい。したがって、腸壁の一部で、圧力が増大して損傷するといった心配がない。
【0053】
前記経肛門ドレーン装置によれば、進入阻止部12b、12c(場合によっては、進入阻止部12a)を内股に固定するだけでよいので、取付状態での患者の負担が少ない。また滞留しやすい肛門付近の水様便を、通路部材2の第1貫通孔8から第1通路部5を介して排出することができる。さらに水様便の排出状態の如何に拘わらず、腸内で発生したガスは、通路部材2の先端側に形成した第2貫通孔10から第2通路部6を介して排出することができる。第2貫通孔10は肛門近傍の水様便が貯留される位置よりも腸内奥側に形成されているので、ガスをスムーズに排出することが可能である。この結果、腸内のガス圧が高まって吻合部が開いてしまうといった不具合の発生を防止することが可能となる。
【0054】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係るドレーン装置1を示す。このドレーン装置1は、第1通路部材の一例であるドレーン本体16と、このドレーン本体16に装着される、第2通路部材の一例である第1ドレーンチューブ17とを備える。
【0055】
ドレーン本体16は、弾性材料(例えば、ゴム材料)からなり、肛門に挿入される挿入部18と、この挿入部18の下端から前後に延びる進入阻止部19とで構成されている。
【0056】
図6に示すように、挿入部18は、中空円筒状で、その外径寸法、内径寸法及び長さは、前記第1実施形態と同様に設定されている。
【0057】
図7及び
図5も合わせて参照すると、進入阻止部19は、平面視略楕円形状で、挿入部18が突出する上面19aは股間の形状に合わせて断面山型に形成され、両端に向かうに従って徐々に上方側へと湾曲している。また、上面19aの両側部がR形状に形成される等、身体への接触部分に鋭角な構成が表出しないように工夫されている。一方、下面19bは上面19aと同様に湾曲しているが、その曲率半径は上面よりも小さく設定され、進入阻止部19が両端に向かうに従って徐々に薄くなるように構成されている。
【0058】
また挿入部18と進入阻止部19には第1連通孔20が貫通している。第1連通孔20は進入阻止部19の下面19bに開口し、そこには内径寸法の広がった逃がし凹部21が形成されている。第1連通孔20の内周面には、逃がし凹部21から所定範囲(以下の第2連通孔23までの範囲)に雌ねじ状の(又は複数の環状溝からなる)滑止部22が形成されている。
【0059】
第1連通孔20の途中から第2連通孔23が分岐している。第2連通孔23は、第1連通孔20に直交して延び、下面19bの側方部分に開口している。この開口には第2ドレーンチューブ24の一端部が接続されている。第2ドレーンチューブ24は塩化ビニール等で構成されている。第2ドレーンチューブ24の他端部にはジョイント部25を介して袋体(図示しないが、例えば、ウロバッグ等を使用することができる。)が接続される。
【0060】
進入阻止部19の両端部には、平面視幅方向に延びる長穴26がそれぞれ形成されている。各長穴26には帯状体27がそれぞれ接続されている。これら帯状体27を利用して、股間での進入阻止部19の装着状態を安定させることができるようになっている。
図8に帯状体27を利用したドレーン装置1の装着状態を示す。ここでは、帯状体27は、ドレーン装置1(
図8では、進入阻止部19のみ図示)を身体の前方で二股に分かれた第1帯状部28a及び第2帯状部28bと、後方の第3帯状部28cと、腰に巻かれ、第1〜第3帯状部28a〜28cが接続される第4帯状部28dとで構成されている。これにより、進入阻止部19を患者の身体に接着あるいは縫合することなく固定することができる。
【0061】
第1ドレーンチューブ17は、可撓性を有するシリコンゴム等の材料からなる。第1ドレーンチューブ17には、
図9の断面図に示すように、キンクレス構造を有するものを使用するのが好ましい。ここでは、中心孔17aを構成する内周面に、長手方向に沿う断面円弧状の溝部17bを周方向に6箇所等分で形成した構造が採用されている。この構造によれば、第1ドレーンチューブ17の周囲のいずれの方向から潰れても経路が完全に塞がることがない。また第1ドレーンチューブ17は、ドレーン本体16の第1連通孔20に挿通され、一端部が進入阻止部19の逃がし凹部21内に位置している。
【0062】
図6に示すように、第1ドレーンチューブ17の一端部(基部)には、中空栓体29が装着される。中空栓体29は鍔部29aを有する筒状で、第1ドレーンチューブ17の一端部内に圧入され、この一端部を第1連通孔20内に形成した滑止部22との間に挟持する。これにより、第1連通孔20の下端部が閉鎖され、第1ドレーンチューブ17による第1経路と、第1連通孔20から第2連通孔23に連なる第2経路とが形成される。またドレーン本体16に対して第1ドレーンチューブ17が位置決めされる。この状態では、中空栓体29の鍔部29aが逃がし凹部21内に位置し、進入阻止部19の下面19bからは突出しない。
【0063】
また第1ドレーンチューブ17では、ドレーン本体16の挿入部18からの突出寸法が先端部分(他端側)の直腸内での位置を考慮して決定されるのは前記第1実施形態と同様である。なお、ドレーン本体16からのドレーンチューブ17の突出寸法は必要に応じて調整することができるようになっている。例えば、第1ドレーンチューブ17の一端部を切断することにより所望の長さとした後、中空栓体29によってドレーン本体16に対して固定すればよい。
【0064】
図4に示すように、第1ドレーンチューブ17の他端部(先端部)には球体状の膨らみ部30が形成されている。膨らみ部30は、球体状であるので腸壁との摩擦が少なく、スムーズに直腸内へと挿入し、又、取り出すことができる。また挿入後は、膨らみ部30に角部がなく、しかも腸壁との接触面積が大きいので、部分的に圧力が増大して腸壁を傷つけてしまうことがない。
【0065】
また第1ドレーンチューブ17の他端側には複数の貫通孔31が形成されている。各貫通孔31の内径寸法は、十分に小さく、水様便が流入しにくい値、少なくとも、第1ドレーンチューブ自体の内径寸法よりも小さい値に設定されている。これら貫通孔31を介して、主に、腸内で発生したガスを排出できるようになっている。また貫通孔31は膨らみ部9には形成されておらず、しかもその内径寸法は十分に小さいので水様便は流入しにくくなっている。そして、たとえ腸内の水様便の一部が流入したとしても、貫通孔31よりも第1ドレーンチューブ17の内径寸法が大きく形成されているため、詰まりを生じさせることなくスムーズに排出することができる。
【0066】
また第1ドレーンチューブ17の外周面と進入阻止部材3の第1連通孔20の内周面との間には、水様便を排出するための環状通路32が形成されている。第1ドレーンチューブ17が可撓性を有する材料で構成され、使用状態において撓んで環状通路32の一部が閉鎖されることがあったとしても、周囲のいずれかに必ず第2ドレーンチューブ24へと繋がる通路を確保することができる。
【0067】
なお、第1ドレーンチューブ17や第2ドレーンチューブ24には負圧を発生させるポンプや袋体を接続し、強制的にガスや水様便を排出できるように構成することも可能である。
【0068】
次に、前記構成からなるドレーン装置1の使用方法について説明する。
【0069】
前記第1実施形態と同様な手術の後、ドレーン本体16の挿入部18を肛門に挿入する。ドレーン本体16には、予め、第1ドレーンチューブ17、第2ドレーンチューブ24、帯状体27を接続しておく。第1ドレーンチューブ17は、一端部を挿入部18の開口から挿入し、進入阻止部19の第1連通孔20に位置させる。第1ドレーンチューブ17の一端部開口内に中空栓体29を圧入し、第1ドレーンチューブ17を滑止部22との間に挟持して位置決めする。帯状体27は進入阻止部19の長穴26にそれぞれ取り付ける。
【0070】
但し、第1ドレーンチューブ17は、ドレーン本体16の挿入部18を肛門内に挿入してから装着するようにしてもよいし、先に肛門内に第1ドレーンチューブ17を挿入した状態で、ドレーン本体16の挿入部18を肛門内に挿入するようにしてもよい。肛門に対する装着順序は使用状況に応じて自由に変更することができる。
【0071】
ドレーン本体16の挿入部18は、進入阻止部19の上面が股間に沿う位置まで挿入する。この状態では、挿入部18の先端位置が肛門管上縁と同じ位置か、若干超える位置に至る。これにより、環状通路32が、直腸内の肛門管の上方近傍部分に開口し、この環状通路32を介して水様便を排出できるようになる。
【0072】
第1ドレーンチューブ17は、先端の膨らみ部30を直腸の吻合部分よりも奥側に位置させる。これは、術後の患者の直腸部分の長さ(主に、吻合位置)を考慮して決定すればよい。また装着後であっても、第1ドレーンチューブ17の挿入位置は調整することができる。
【0073】
帯状体27は、適宜、身体の胴部や大腿部等に巻き付けて使用する。これにより、ドレーン本体16、第1ドレーンチューブ17及び第2ドレーンチューブ24の取付状態を安定させることができる。
【0074】
このようにして装着されたドレーン装置1によれば、第1ドレーンチューブ17の先端部分には膨らみ部30が形成されている。この膨らみ部30は、球体状で角部のない構成である。したがって、前記第1実施形態と同様に、第1ドレーンチューブ17の先端部分が腸壁を損傷させることがない。
【0075】
膨らみ部30には貫通孔31が形成されていないため、腸内を流動してきた水様便は直接第1ドレーンチューブ内に浸入することがない。そして、膨らみ部30の近傍に形成した貫通孔31を介して、主に、腸内のガスが第1ドレーンチューブ17を流動し、体外へと排出される。第1ドレーンチューブ17を介して排出されるのは主にガスであるので、第1ドレーンチューブ17は常に体外に連通したままの状態とすることができる。したがって、患者は、ドレーン装置1を装着された上から紙おむつを履いておくだけで十分である。水様便は殆ど排出されないので、紙おむつが汚染されて肌荒れ等の不具合を発生させることはあまりない。
【0076】
ドレーン本体16の挿入部18は、直腸内の肛門管上縁近傍に位置し、その内側に配置した第1ドレーンチューブ17との間に形成される環状通路32が開口する。挿入部18の外周面には肛門管が密着し、水様便が外部に漏れ出ることがない。肛門管の手前で直腸内に水様便が溜まり、環状通路32から第2ドレーンチューブ24を介して袋体へと排出される。
【0077】
第2ドレーンチューブ24は、ドレーン本体16の下面19bの側方部分に接続されている。このため、第2ドレーンチューブ24を折り曲げることなく、下面19bに沿って配置することができる。この結果、ドレーン本体16からの突出部分が少なく、紙おむつを履いたとしても邪魔になることがない。つまり、装着状態を安定させつつ、ガスや水様便の排出をスムーズに行うことができ、患者の負担を抑えることが可能となる。
【0078】
(他の実施形態)
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0079】
前記第1及び第2実施形態では、ドレーン装置1の構成を、進入阻止部12、19を備えたものとしたが、この進入阻止部12、19は必須の構成ではない。
【0080】
前記第1及び第2実施形態では、通路部材2、第1ドレーンチューブ17に球体状の膨らみ部9、30を形成するようにしたが、この膨らみ部9、30は、例えば、次のような形態とすることもできる。
【0081】
図10及び
図11では、膨らみ部9、30はドーナツ状に形成されている。すなわち、筒状体の先端部分が外周面を内周側に折り返すことにより端面視でドーナツ状となっており、この折り返し部分が断面半円状の湾曲面状に形成されている。
【0082】
図12では、膨らみ部9、30は、前記同様に、球状体であるが、そこには複数の貫通孔31が形成されている。これら貫通孔31の内径寸法や数量は自由に設定することができる。また、全て同じ内径寸法に形成する必要もない。
【0083】
図13では、膨らみ部9、30は、先端に向かうに従って徐々に開口断面積を大きくする漏斗状に形成されている。ここでは、断面略六角形状で周方向に捩れた構成としている。
【0084】
また膨らみ部9、30は必ずしも必要なものではなく、通路部材2、第1ドレーンチューブ17の先端部分が十分に軟らかくて腸壁を傷つける心配がないのであれば、その先端構造を単なる半球状とするだけでも構わない。
【0085】
前記第1及び第2実施形態では、通路部材2、第1ドレーンチューブ17の他端部に複数の貫通孔10、31を形成し、これら貫通孔10、31を介して腸内のガスを排出するようにしたが、気体は通過させるが、液体は通過させないような防水通気性素材(例えば、ゴアテックス(登録商標)、通気性シート(ブレスロン(登録商標)等)を使用するようにしてもよい。これによれば、通路部材2、第1ドレーンチューブ17を介して体外に排出されるのが腸内で発生したガスのみであるので、紙おむつを装着する必要がなくなる点で好ましい。但し、通路部材2、第1ドレーンチューブ17の全体を防水通気性素材で構成する必要はなく、他端部に前記貫通孔10、31よりも大きな開口部を形成し、この開口部を防水通気性素材からなる膜で塞ぐようにしてもよい。
【0086】
前記第1実施形態では、通路部材2の膨らみ部9には水を供給するようにしたが、空気を供給することにより水様便に浮かぶバルーンとしてもよい。また前記第2実施形態では、第1ドレーンチューブ17の膨らみ部30は形状のみに特徴を有するものとしたが、前記同様、空気を供給して膨らむようなバルーンで構成してもよい。例えば、貫通孔10、31や防水通気性素材を採用した部分よりも肛門側に位置する領域にバルーンを設ければ、貫通孔等が水様便に水没することを防止でき、確実にガスを排出可能となる点で好ましい。
【0087】
前記第1及び第2実施形態では、通路部材2、第1ドレーンチューブ17の挿入部11、18からの突出寸法を調整可能な点についてのみ言及したが、挿入部11、18の長さを調整可能とすることもできる。例えば、挿入部11、18を進入阻止部12、19に対して螺合し、その螺合位置を変更して突出寸法を調整可能とすればよい。これにより、挿入部11の突出寸法を患者の肛門管の長さに応じた適切な長さとすることができる。
【0088】
前記第1及び第2実施形態では、通路部材2、第1ドレーンチューブ17の先端に膨らみ部9、30を形成するようにしたが、これら膨らみ部9、30はドレーン装置1に限らず、他のドレーンチューブやカテーテル等、体内に挿入して使用するチューブ全般に採用することができる。
【0089】
以上のように、体内に挿入して使用するチューブは、
チューブ本体と、
前記チューブ本体の挿入側先端部に設けられる体内挿入部位との接触部分が曲面で構成される膨らみ部と、
を備え、
前記チューブ本体は、体外から流動体を供給又は排出して前記膨らみ部を膨張又は縮小可能な連通部を備えることを特徴とする。
【0090】
この構成により、体内に挿入する際は膨らみ部9を縮小させておくことにより、挿入作業の妨げとはなりにくい。また体内挿入後に連通部を介して膨らみ部内に流動体を供給して膨らませれば、体内の挿入部位の内壁を傷つけることがない。
【0091】
前記チューブ本体は、前記連通部が筒状壁に形成されているのが好ましい。
【0092】
この構成により、チューブの外径寸法を大きくすることなく膨らみ部を膨張又は縮小させることができる。
【0093】
前記第2実施形態では、帯状体27を身体の一部(例えば、大腿部や胴部)に巻き付けてドレーン装置1を固定するようにしたが、適宜、テープ等、他の手段によって固定するようにしてもよい。
【0094】
前記第2実施形態では、ドレーン本体16の挿入部18と第1ドレーンチューブ17とで構成される2重管構造としたが、2つのドレーンチューブを並設するように構成してもよい。この場合、並設したドレーンチューブのみで構成すると、肛門で隙間が形成される恐れがあるので、少なくともいずれか一方を可撓性を有する構成とするのが好ましい。これにより、ドレーンチューブが肛門管によって圧接されて変形し、隙間の発生を防止することができる。但し、ドレーンチューブには、ガスや水様便が流動可能な流路断面積を確保できるような剛性は維持しておく必要はある。
【0095】
前記第2実施形態では、ドレーン本体16の挿入部18と第1ドレーンチューブ17とを2重管構造とし、両者の間に環状通路32が形成されるようにしたが、
図14に示すように、予め挿入部18の内周面に第1ドレーンチューブ17の外周面を当接させた構成とすることにより、環状とはなっていない通路を形成するようにしてもよい。
【0096】
前記第2実施形態では、第1通路部材をドレーン本体16で構成し、第2通路部材を第1ドレーンチューブ17で構成するようにしたが、
図15に示すように、直腸内への挿入長さの相違する2本のドレーンチューブ33、34の外周に円筒状のガイドスリーブ35を外装し、このガイドスリーブ35を肛門管で保持するように構成してもよい。この場合、ドレーンチューブ33、34はガイドスリーブ35の内周で隙間なく配置されるように構成すればよい。例えば、ドレーンチューブ33、34の少なくともいずれか一方を可撓性を有する材料で構成したり、ドレーンチューブ33、34とガイドスリーブ35の間に封止部材(図示せず)を介在させたりするようにしてもよい。
【0097】
前記第2実施形態では、ドレーン本体16を
図4等に示すように構成したが、以下の通り構成することも可能である。
【0098】
図16に示すように、ドレーン本体16は、本体部36と、本体部36から上方に延びる挿入部37と、本体部36から三つ股に分かれた進入阻止部38、39、40を備える。進入阻止部38は、前記実施形態と同様に断面山型に形成されており、股間の形状に合わせて肛門よりも後方側へと延びている。進入阻止部39、40は薄肉に形成され、進入阻止部38を股間に配置した状態で、
図16中、2点鎖線で示すように、内股に沿って弾性変形し、テープ等により内股に固定できるようになっている。また進入阻止部38もテープ等により身体側へと固定することができるようになっている。なお、進入阻止部38、39、40の表面に粘着剤を塗布して、身体側に固定できるように構成してもよい。
【0099】
図17も併せて参照すると、挿入部37には中心孔41が形成され、本体部36には中心孔41と連通する第1連通孔42及び第2連通孔43が形成されている。第1連通孔42は中心孔41よりも小径で、中心孔41とは同一直線上に配置され、本体部36の下面に開口する段付き孔を構成する。第2連通孔43は中心孔41から斜め下方に分岐し、進入阻止部39、40の間の下方側に形成される傾斜面に開口する段付き孔を構成する。
【0100】
図16及び
図17には図示しないが、第1連通孔42を介して挿入部37の中心孔41内には第1ドレーンチューブ17が配置される。第1ドレーンチューブ17は先端部分が挿入部37から突出し、後端部分が第1連通孔42に圧入される中空栓体29の外周面と第1連通孔42の内周面との間に固定される。挿入部37の内周面と第1ドレーンチューブ17の内周面の間に形成される環状通路32を介して腸内の水様便を排出可能となっている。第2連通孔43には第2ドレーンチューブ24が接続されて、水様便を袋体に排出可能となっている。
【0101】
前記構成からなる経肛門ドレーン装置によれば、従来のように、身体に縫合する必要がなくなり、その縫合に伴う痛みの発生を防止することができる。また進入阻止部39、40を内股にテープ等で貼着するだけでよいので、身体に対して経肛門ドレーン装置を簡単に固定することができる。また紐により固定する場合のように使用状態に於いて位置ずれする危険性が少ない。また縫合する場合であれば取り外しが困難であるが、前記固定方法によればテープを外すだけで交換等を容易に行うことができる。
【0102】
また前記構成からなる経肛門ドレーン装置では、前記第2実施形態と同様に、挿入部37内に第1ドレーンチューブ17を配置するようにしたが、挿入部37のみで構成することも可能である。この場合、第1連通孔42又は第2連通孔43のいずれか一方は不要となる。
【0103】
図1、
図16及び
図17に図示された経肛門ドレーン装置は、
肛門に挿入可能であり、中空筒状に形成された通路部材と、
前記通路部材の肛門内への進入寸法を規制する進入阻止部を有する進入阻止部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0104】
この構成により、身体に対して進入阻止部材を装着するだけで、通路部材の肛門内への進入寸法を所望の値とすることができる。
【0105】
前記進入阻止部は弾性変形可能であるのが好ましい。
【0106】
この構成により、進入阻止部を弾性変形させるだけで、簡単にこの進入阻止部を患者の内股等、身体に沿わせることができる。
【0107】
前記進入阻止部材は、三つ股に分岐し、1つは股間に沿って肛門から後方側へと配置可能であり、残る2つは身体の各内股に沿って配置可能である進入阻止部を有するのが好ましい。
【0108】
この構成により、進入阻止部を股間や内股に沿って配置し、身体に対して粘着剤等を利用して簡単に固定することができる。
【0109】
前記通路部材は、前記進入阻止部材よりも軟質なドレーンチューブを有し、
前記進入阻止部材は、肛門に挿入可能な挿入部を有するのが好ましい。
【0110】
この構成により、前記挿入部によって前記ドレーンチューブが肛門圧により潰れることを阻止することができるため、前記ドレーンチューブを腸壁の損傷防止に適した十分に軟質な材料で構成することが可能となる。
【0111】
前通路部材は、前記実施形態と同様に、長さを調整可能であるのが好ましい。
【0112】
前記実施形態では、進入阻止部材3として挿入部11を有する構成のものについて説明したが、この挿入部11については必ずしも必要なものではない。要は、進入阻止部材3によって腸管内への通路部材2の進入寸法を所望の値とできればよい。
【0113】
前記第2実施形態では、ドレーン本体16と第1ドレーンチューブ17とで2つの通路を形成するようにしたが、例えば、
図18に示すように、単一の通路部材44の内部を二分することにより2つの通路(第1通路部45及び第2通路部46)を形成するようにしてもよい。この場合、外周面に第1通路部45に連通する複数の第1貫通孔45aと、第2通路部46に連通する第2貫通孔46aとをそれぞれ形成する。通路部材44を肛門から挿入した使用状態で、第1貫通孔45aは肛門の近傍部分に形成されていればよく、第2貫通孔46aは肛門側の水様便が溜まる領域よりも奥側に形成されていればよい。また第2貫通孔46aを防水通気性素材で覆うのであれば、第2貫通孔46aのサイズや形状は自由に設定することができる。また必ずしも単一の通路部材44で構成する必要はなく、前記各実施形態と同様に、独立した2つの通路部材44で構成することも可能である。