(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6042963
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】温度差エネルギー変換装置
(51)【国際特許分類】
F03G 7/04 20060101AFI20161206BHJP
F02C 1/10 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
F03G7/04
F02C1/10
【請求項の数】25
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-237205(P2015-237205)
(22)【出願日】2015年12月4日
【審査請求日】2016年6月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597040304
【氏名又は名称】阿部 俊廣
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】阿部 俊廣
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−052609(JP,A)
【文献】
特開2002−256882(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第02270119(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01C 7/00
F02C 1/10
F03G 7/04
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の側壁及び下壁を有し内部に冷却用の液体が入れられる容器を備え、該容器の上側に気体を取り入れる上開口を設け、上記容器の下壁の中央に該容器の中心軸を中心とした下開口を設け、上記容器の上側に、上記上開口から気体を取り入れその一部若しくは全部を作動気体として旋回させながら圧縮して降下させ上記内部の液体を上記下開口を開放したロート状の内表面を有した液体壁部に形成して該作動気体を上記下開口から導出させるファン機構を設け、上記容器の中心軸と同軸の軸線を有して上記下開口に臨み導出する作動気体により回転させられるタービンを設けたことを特徴とする温度差エネルギー変換装置。
【請求項2】
上記液体壁部のロート状の内表面の角度を調整可能な液体壁部調整部を備えたことを特徴とする請求項1記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項3】
上記液体壁部調整部を、上記側壁に該側壁の内面側から中心軸に対して進退動可能に設けられ、進退動量によって上記液体壁部のロート状の内表面の角度を調整可能な突出体と、該突出体を駆動する駆動部とを備えて構成したことを特徴とする請求項2記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項4】
上記取り入れられる気体は大気からなる外気で構成され、上記液体は水で構成されることを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項5】
上記液体壁部を構成する水を外部から供給する水供給部と、上記液体壁部を構成する水を循環させる循環水路とを設けたことを特徴とする請求項4記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項6】
上記容器の上部に上記液体壁部の上端の水位が所定高さを超えたとき該超えた分の水を流出させて回収する回収路を設け、該回収路を通って回収された水を貯留する回収水貯留槽を設けたことを特徴とする請求項5記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項7】
上記回収路からの水の流出量の大小を検知する水量センサを設け、該水量センサが水量大を検知したとき上記水供給部からの水供給を停止し、該水量センサが水量小を検知したとき上記水供給部からの水供給を行わせる水供給制御部を備えたことを特徴とする請求項6記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項8】
上記容器の上側に上壁を設け、上記上開口を上記上壁の中央に上記容器の中心軸を中心として設け、上記ファン機構を、上記上壁に回転可能に設けられ上記容器の中心軸を中心に回転する第1ファンと、上記上壁に設けられ上記第1ファンを回転させるモータと、上記タービンから延び容器の中心軸を軸線とする上回転軸によって該タービンと同期して回転させられる第2ファンとを備えて構成し、
上記第1ファンを、中央に上記上開口に対応する吸引口を有し上記上壁に近接して対峙する基盤と、該基盤に等角度関係で複数列設され吸引口からの作動気体を遠心方向に送出する第1回転羽根と、上記上回転軸が回転可能に貫通し上記基盤に対向して上記第1回転羽根を覆うとともに外周に作動気体の吹出口を形成する覆い板とを備えて構成し、
上記第2ファンを、上記第1ファンの第1回転羽根の内側であって上記吸引口に対峙し上記吸引口からの作動気体を遠心方向に送出する複数の第2回転羽根を備えて構成したことを特徴とする請求項4乃至7何れかに記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項9】
上記液体壁部を構成する水を外部から供給する水供給部と、上記液体壁部を構成する水を循環させる循環水路とを設け、該循環水路を、上記第1ファンの基盤と上記上壁との間へ水を供給する水供給管を備えて構成したことを特徴とする請求項8記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項10】
上記水供給部を、上記水供給管を通して水を供給する構成にしたことを特徴とする請求項9記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項11】
上記容器の上側に、上記ファン機構の吸引力により外気を取り入れて作動気体として該ファン機構に送給する作動気体生成部を設け、該作動気体生成部を、外周に設けられた外気取入口と、内側に設けられ上記上開口に連通する作動気体出口と、上記外気取入口と作動気体出口との間に設けられ外気を比重分離して比重の小さい側の気体を作動気体とする分離通路とを備えて構成したことを特徴とする請求項4乃至10何れかに記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項12】
上記分離通路を、外気が入り込む通路入口と上記作動気体出口との間に設けられ上記容器の中心軸を中心とする螺旋状の第1螺旋通路と、該第1螺旋通路の上側に設けられ該第1螺旋通路の上記作動気体出口側に連通するとともに外周側に比重の大きい気体の気体出口を有した上記容器の中心軸を中心とする螺旋状の第2螺旋通路とを備えて構成したことを特徴とする請求項11記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項13】
上記作動気体生成部を開閉可能にし、閉時に上記容器内部の圧力が所定以上上昇したとき開になって圧力を逃がすことを可能にしたことを特徴とする請求項11または12記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項14】
上記外気取入口と作動気体出口との間に、外気を水で洗浄する洗浄部を設けたことを特徴とする請求項11乃至13何れかに記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項15】
上記洗浄部を、水が貯留される洗浄槽と、該洗浄槽に上記液体壁部の下側を構成する水を配給する水配給路とを備えて構成し、該洗浄槽の底壁に取り入れられた外気を洗浄槽内に吹き込む多数の小孔を形成し、該洗浄槽に汚れた水を排水する配水管を連携させたことを特徴とする請求項14記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項16】
上記タービンを通過した作動気体が排気ガスとして排気される排気通路を設け、外気を取り入れる第2外気取入口を設け、該第2外気取入口から上記タービンの動力により回転させられる吸引ファンによって外気を吸引する外気吸引通路を設け、上記排気通路の一部と上記外気吸引通路の一部とを熱交換板を介して並設し、該熱交換板により外気中の水分を凝縮して取り出す外気中水分取出し部を設けたことを特徴とする請求項4乃至15何れかに記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項17】
上記外気吸引通路の第2外気取入口側に、外気を水で洗浄する第2洗浄部を設けたことを特徴とする請求項16記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項18】
上記第2洗浄部を、水が貯留される第2洗浄槽と、該第2洗浄槽に上記液体壁部の下側を構成する水を配給する水配給路とを備えて構成し、該第2洗浄槽の底壁に取り入れられた外気を該第2洗浄槽内に吹き込む多数の小孔を形成し、該第2洗浄槽に汚れた水を排水する配水管を連携させたことを特徴とする請求項17記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項19】
上記外気中水分取出し部を、上記排気通路及び外気吸引通路が上記容器の中心軸に平行になるように上記容器の外周に設け、上記熱交換板を上記排気通路及び外気吸引通路が交互に列設されるように蛇腹状に形成し、該外気中水分取出し部の下側に上記熱交換板を伝って落下する外気中水分の外気中水分貯留槽を設けたことを特徴とする請求項16乃至18何れかに記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項20】
上記容器の下側の排気通路を螺旋状に形成したことを特徴とする請求項19記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項21】
上記吸引ファンを上記タービンの下側において該タービンの下側回転軸に設け、上記容器の下側に上記吸引ファンに至る上記外気吸引通路の終端部を設け、該終端部の下側に上記吸引ファンからの外気の排気が送出され上記外気中水分取出し部を構成する排気通路に合流する外気排気通路を設け、該外気排気通路の下側に外気の排気から凝縮した水が流出させられる水分流出路を設けたことを特徴とする請求項16乃至20何れかに記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項22】
上記外気排気通路及び水分流出路を螺旋状に形成したことを特徴とする請求項21記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項23】
上記タービンの上側に該タービンから延び容器の中心軸を軸線とする上回転軸を設け、該上回転軸を管状に形成するとともに管壁に軸方向に沿って多数の小孔を開設し、上記外気中水分取出し部を、上記排気通路及び外気吸引通路が上記容器の中心軸に平行になるように上記容器の外周に設け、上記熱交換板を上記排気通路及び外気吸引通路が交互に列設されるように蛇腹状に形成し、該外気中水分取出し部の下側に上記熱交換板を伝って落下する外気中水分の外気中水分貯留槽を設け、該外気中水分貯留槽に貯留される水及び上記水分流出路からの水を上記上回転軸内に送給して小孔から容器内に噴出させる噴出水流路を設けたことを特徴とする請求項21または22記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項24】
上記容器の上記液体壁部の上端より上から上記容器内で生成される酸素を回収する酸素回収通路と、上記容器の上記液体壁部の下端側から上記容器内で生成される水素を回収する水素回収通路とを設けたことを特徴とする請求項4乃至23何れかに記載の温度差エネルギー変換装置。
【請求項25】
上記下壁の下側に、上記側壁に一体に設けられ上記下壁との間に下部空間を形成する隔壁を設け、上記下壁の少なくとも外周部を上記側壁の内側に設けたフランジに対して上下に摺動可能な移動部として構成し、該移動部の上端位置を規制するストッパを設け、一端側が上記容器内に開口し他端側が上記下部空間に開口し上記容器内の圧力と上記下部空間との圧力を等しくするための連通管を設け、上記移動部を上記ストッパに常時押圧する付勢手段を設け、上記容器内部の圧力が所定以上急上昇したとき、上記付勢手段の付勢力に抗して該移動部がフランジを摺動して下部空間内に落ち込み、該移動部とフランジ内周との間に形成された間隙から容器内の圧力を逃がすことを可能にしたことを特徴とする請求項4乃至24何れかに記載の温度差エネルギー変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体を流通させるとともに加熱及び冷却させ、気体の温度差エネルギーを利用して種々のエネルギーを得る温度差エネルギー変換装置に係り、特に、気体の流通経路の途中にタービンを介装し、タービンにより気体の温度差エネルギーを動力に変換して取り出す温度差エネルギー変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度差エネルギー変換装置としては、例えば、先に本願出願人が提案した特許文献1(特開2011−52609号公報)に掲載されたものが知られている。
図9に示すように、この温度差エネルギー変換装置は、上開口1011及び下開口1012を有したロート状の熱伝動性の筒体1010を備え、この筒体1010の上開口1011から暖気を導入し、導入された暖気を旋回させながら下開口1012側に移動させるとともに、筒体1010の壁部1010aとの熱交換により冷却を行い、下開口1012においてノズル1013から筒体1010内に冷気を噴出させて暖気と混合させて一気に冷却し、この冷却された混合気を筒体1010の下開口1012から導出し、下開口1012に臨む混合気の導出流路に設けたタービンTを回転させ、タービンTの動力を発電機1014を介して電力として取り出すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−52609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この従来の温度差エネルギー変換装置においては、筒体1010内に導入された暖気に対して、筒体1010の壁部1010aとの熱交換により冷却を行うとともに、下開口1012においてノズル1013から冷気を噴出させて一気に冷却するようにしているが、筒体1010の壁部1010aである固体との熱交換によるので冷却効率が必ずしも良いとは言えず、また、ノズル1013からの冷気の噴出が下開口1012のみなのでこの点でも冷却効率に劣り、それだけ、タービンTの回転力が弱く出力が小さいという欠点があった。更に、ノズル1013から冷気を噴出させているので、冷気を作るための装置が必要になる分、装置が複雑化してしまうという問題もある。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、冷気を使うことなく、容器内に導入される気体の冷却効率の向上を図ってエネルギー変換できるようにした温度差エネルギー変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するため、本発明の温度差エネルギー変換装置は、
図1に示す原理図に基づいて説明すると、筒状の側壁及び下壁を有し内部に冷却用の液体(W)が入れられる容器(10)を備え、該容器(10)の上側に気体を取り入れる上開口(20)を設け、上記容器(10)の下壁の中央に該容器(10)の中心軸(P)を中心とした下開口21を設け、上記容器(10)の上側に、上記上開口(20)から気体を取り入れその一部若しくは全部を作動気体(G)として旋回させながら圧縮して降下させ上記内部の液体(W)を上記下開口(21)を開放したロート状の内表面を有した液体壁部(H)に形成して該作動気体(G)を上記下開口(21)から導出させるファン機構(40)を設け、上記容器(10)の中心軸(P)と同軸の軸線を有して上記下開口(21)に臨み導出する作動気体(G)により回転させられるタービン(T)を設けた構成としている。そして、このタービン(T)から動力を取り出し、例えば、発電機で発電を行う。
【0007】
これにより、ファン機構により気体が取り入れられると、作動気体は、容器内を上側から下側に向かって旋回させられながら圧縮して下降させられ、この旋回力によって容器内部の液体を回転させ、下開口を開放したロート状の内表面を有した液体壁部に形成し、下開口から導出されて、タービンを回転させる。この過程において、作動気体は、旋回させられながら圧縮して下降させられると、圧力及び温度が上昇していき、高圧,高温になり、下開口から導出されると、急膨張して冷気になり、タービンを回転させる。この場合、高圧,高温の作動気体は、ロート状の液体壁部に接するので、液体の表面で熱交換が行われることになり、そのため、冷却効率が極めて良くなり、それだけ、下開口から毎秒導出される混合気のロート状内外の比較総合比重を増加させ、それにより遠心力の勢いを増してタービンの出力の向上を図ることができる。
【0008】
この構成において、必要に応じ、上記液体壁部のロート状の内表面の角度を調整可能な液体壁部調整部を備えた構成としている。液体壁部のロート状の内表面の角度を適正な角度に調整して、下開口を確保し、下開口からの作動気体の導出を円滑に行わせることができるようになる。
【0009】
この場合、上記側壁に該側壁の内面側から中心軸に対して進退動可能に設けられ、進退動量によって上記液体壁部のロート状の内表面の角度を調整可能な突出体と、該突出体を駆動する駆動部とを設けた構成としたことが有効である。この突出体の突出量により、液体の回転抵抗が異なるので、液体壁部のロート状の内表面の角度を適正な角度に調整して、下開口を確保し、下開口からの作動気体の導出を円滑に行わせることができるようになる。
【0010】
そして、本装置においては、上記取り入れられる気体は大気からなる外気で構成され、上記液体は水で構成されることが有効である。無尽蔵にある外気と水の熱交換によりエネルギーを取り出すことができるので、汎用性を増すことができる。外気と水の場合で説明すると、ファン機構により、作動気体を旋回させながら圧縮して下降させると、圧力及び温度が上昇していき、例えば、約30気圧の高圧,約8000℃もの高温にし、液体壁部の内表面においては液体壁部を構成する水を熱分解させるほどにすることができる。そして、容器内の作動気体が下開口から導出されると、急膨張して冷気になり、タービンを回転させる。この場合、液体壁部の内部は200℃〜300℃程度に上昇するが、相対的に、作動気体から熱を奪い作動気体を冷却することができる。液体の表面で熱交換が行われることになり、そのため、冷却効率が極めて良くなり、それだけ、下開口から毎秒導出される混合気のロート状内外の比較総合比重を増加させ、それにより遠心力の勢いを増してタービンの出力の向上を図ることができる。
【0011】
また、必要に応じ、上記液体壁部を構成する水を外部から供給する水供給部と、上記液体壁部を構成する水を循環させる循環水路とを設けた構成としている。水供給部により水を供給することができ、また、循環水路により水を循環させるので、それだけ冷却効率を向上させることができる。
【0012】
この場合、上記容器の上部に上記液体壁部の上端の水位が所定高さを超えたとき該超えた分の水を流出させて回収する回収路を設け、該回収路を通って回収された水を貯留する回収水貯留槽を設けた構成とすることができる。温度上昇した水を回収して水位調整することができ、液体壁部を安定させることができる。また、回収した水は、飲料水にすることができる。この場合、回収路から液体壁部の上側を構成する水が飲料水として回収されるが、液体壁部においては、これに生じる遠心力により、重水が下側に集約されることから、液体壁部の上側は重水素減少水になっており、回収された水はこの液体壁部の上側の水になるので、重水素減少水を飲料水とすることができ、極めて有用になる。
【0013】
更にまた、この場合、上記回収路からの水の流出量の大小を検知する水量センサを設け、該水量センサが水量大を検知したとき上記水供給部からの水供給を停止し、該水量センサが水量小を検知したとき上記水供給部からの水供給を行わせる水供給制御部を備えた構成とすることができる。水供給制御部により、常時、適正な水を維持できるので、液体壁部を安定させることができる。
【0014】
また、必要に応じ、上記容器の上側に上壁を設け、上記上開口を上記上壁の中央に上記容器の中心軸を中心として設け、上記ファン機構を、上記上壁に回転可能に設けられ上記容器の中心軸を中心に回転する第1ファンと、上記上壁に設けられ上記第1ファンを回転させるモータと、上記タービンから延び容器の中心軸を軸線とする
上回転軸によって該タービンと同期して回転させられる第2ファンとを備えて構成し、
上記第1ファンを、中央に上記上開口に対応する吸引口を有し上記上壁に近接して対峙する基盤と、該基盤に等角度関係で複数列設され吸引口からの作動気体を遠心方向に送出する第1回転羽根と、上記
上回転軸が回転可能に貫通し上記基盤に対向して上記
第1回転羽根を覆うとともに外周に作動気体の吹出口を形成する覆い板とを備えて構成し、
上記第2ファンを、上記第1ファンの
第1回転羽根の内側であって上記吸引口に対峙し上記吸引口からの作動気体を遠心方向に送出する複数の第2回転羽根を備えて構成している。第1ファンと第2ファンとの2つのファンにより、作動気体に遠心力を付与して旋回させて圧縮するので、確実に高圧,高温にすることができる。
【0015】
この構成において、上記液体壁部を構成する水を外部から供給する水供給部と、上記液体壁部を構成する水を循環させる循環水路とを設け、該循環水路を、上記第1ファンの基盤と上記上壁との間へ水を供給する水供給管を備えて構成したことが有効である。内部圧により、第1ファンが上壁側に押されても、水供給管により、第1ファンの基盤と上壁との間へ水が供給されるので、水が潤滑水の役目をし、第1ファンに下側に押し下げる力が作用し、そのため、第1ファンの回転を円滑に維持できるようになる。
【0016】
この場合、上記水供給部を、上記水供給管を通して水を供給する構成にしたことが有効である。水供給管により、循環水と新しい水と同時に供給することができ、共用できるので、装置の効率化を図ることができる。
【0017】
また、必要に応じ、上記容器の上側に、上記ファン機構の吸引力により外気を取り入れて作動気体として該ファン機構に送給する作動気体生成部を設け、該作動気体生成部を、外周に設けられた外気取入口と、内側に設けられ上記上開口に連通する作動気体出口と、上記外気取入口と作動気体出口との間に設けられ外気を比重分離して比重の小さい側の気体を作動気体とする分離通路とを備えて構成している。比重の重い酸素や二酸化炭素を比重分離して、主に窒素を作動気体とすることができるようになる。そのため、酸素を減少させることで、容器内での窒素酸化物(NOx)の有害ガスの発生を減少させることができる。
【0018】
更に、必要に応じ、上記分離通路を、外気が入り込む通路入口と上記作動気体出口との間に設けられ上記容器の中心軸を中心とする螺旋状の第1螺旋通路と、該第1螺旋通路の上側に設けられ該第1螺旋通路の上記作動気体出口側に連通するとともに外周側に比重の大きい気体の気体出口を有した上記容器の中心軸を中心とする螺旋状の第2螺旋通路とを備えて構成している。これにより、第1螺旋通路を経て作動気体出口に至る外気は、遠心力により第2螺旋通路に入り込み、比重分離されて比重の大きい気体が気体出口から排出され、比重の小さい気体が作動気体として作動気体出口に吸引されていく。螺旋の経路で比重分離するので、効率よく分離を行うことができる。
【0019】
更にまた、必要に応じ、上記作動気体生成部を開閉可能にし、閉時に上記容器内部の圧力が所定以上上昇したとき開になって圧力を逃がすことを可能にした構成としている。容器内部の圧力が所定以上上昇し、所謂バックファイヤーが生じても、作動気体生成部が開になって圧力が逃げるので、安全を図ることができる。
【0020】
また、必要に応じ、上記外気取入口と作動気体出口との間に、外気を水で洗浄する洗浄部を設けた構成としている。洗浄部で外気を洗浄することができるので、液体壁部の水を飲料水として取り出す場合に有効になる。
【0021】
この場合、上記洗浄部を、水が貯留される洗浄槽と、該洗浄槽に上記液体壁部の下側を構成する水を配給する水配給路とを備えて構成し、該洗浄槽の底壁に取り入れられた外気を洗浄槽内に吹き込む多数の小孔を形成し、該洗浄槽に汚れた水を排水する配水管を連携させた構成とすることができる。これにより、水配給路から液体壁部の下側を構成する水が洗浄水として配給されるが、液体壁部においては、これに生じる遠心力により、重水が下側に集約されることから、洗浄水はこの重水の多い水を用いることになり、洗浄後は排水されるので、効率よく重水の多い水を排水することができる。また、洗浄槽に多数の小孔から外気を噴出して洗浄するので、洗浄効率が極めて良くなる。
【0022】
また、必要に応じ、上記タービンを通過した作動気体が排気ガスとして排気される排気通路を設け、外気を取り入れる第2外気取入口を設け、該第2外気取入口から上記タービンの動力により回転させられる吸引ファンによって外気を吸引する外気吸引通路を設け、上記排気通路の一部と上記外気吸引通路の一部とを熱交換板を介して並設し、該熱交換板により外気中の水分を凝縮して取り出す外気中水分取出し部を設けた構成としている。これにより、排気ガスと外気との熱交換を行うので、外気を水分の極めて少ない気体として利用することができる。また、外気中から取り出した水を利用することができる。
【0023】
この場合、上記外気吸引通路の第2外気取入口側に、外気を水で洗浄する第2洗浄部を設けたことが有効である。第2洗浄部で外気を洗浄することができる。
【0024】
また、必要に応じ、上記第2洗浄部を、水が貯留される第2洗浄槽と、該第2洗浄槽に上記液体壁部の下側を構成する水を配給する水配給路とを備えて構成し、該第2洗浄槽の底壁に取り入れられた外気を該第2洗浄槽内に吹き込む多数の小孔を形成し、該第2洗浄槽に汚れた水を排水する配水管を連携させた構成としている。これにより、水配給路から液体壁部の下側を構成する水が洗浄水として配給されるが、液体壁部においては、これに生じる遠心力により、重水が下側に集約されることから、洗浄水はこの重水の多い水を用いることになり、洗浄後は排水されるので、効率よく重水の多い水を排水することができる。また、第2洗浄槽に多数の小孔から外気を噴出して洗浄するので、洗浄効率が極めて良くなる。
【0025】
この場合、上記外気中水分取出し部を、上記排気通路及び外気吸引通路が上記容器の中心軸に平行になるように上記容器の外周に設け、上記熱交換板を上記排気通路及び外気吸引通路が交互に列設されるように蛇腹状に形成し、該外気中水分取出し部の下側に上記熱交換板を伝って落下する外気中水分の外気中水分貯留槽を設けた構成とすることができる。熱交換板を排気通路及び外気吸引通路が交互に列設されるように蛇腹状に形成したので、熱交換効率を向上させることができる。また、蛇腹状の熱交換板によって、容器の外周の強度を増すことができる。
【0026】
また、必要に応じ、上記容器の下側の排気通路を螺旋状に形成した構成としている。排気の遠心力を増すことができ、それだけ、タービンの出力を増すことができる。また、容器の底壁側の強度を増すことができる。
【0027】
更に、必要に応じ、上記吸引ファンを上記タービンの下側において該タービンの下側回転軸に設け、上記容器の下側に上記吸引ファンに至る上記外気吸引通路の終端部を設け、該終端部の下側に上記吸引ファンからの外気の排気が送出され上記外気中水分取出し部を構成する排気通路に合流する外気排気通路を設け、該外気排気通路の下側に外気の排気から凝縮した水が流出させられる水分流出路を設けた構成としている。水分の分離を効率よく行うことができる。
【0028】
この場合、上記外気排気通路及び水分流出路を螺旋状に形成した構成としている。遠心力を増すことができ、この点でも、水分の分離を効率よく行うことができる。また、容器の底壁側の強度を増すことができる。
【0029】
また、必要に応じ、上記タービンの上側に該タービンから延び容器の中心軸を軸線とする
上回転軸を設け、該
上回転軸を管状に形成するとともに管壁に軸方向に沿って多数の小孔を開設し、
上記外気中水分取出し部を、上記排気通路及び外気吸引通路が上記容器の中心軸に平行になるように上記容器の外周に設け、上記熱交換板を上記排気通路及び外気吸引通路が交互に列設されるように蛇腹状に形成し、該外気中水分取出し部の下側に上記熱交換板を伝って落下する外気中水分の外気中水分貯留槽を設け、該外気中水分貯留槽に貯留される水及び上記水分流出路からの水を上記
上回転軸内に送給して小孔から容器内に噴出させる噴出水流路を設けた構成としている。外気中水分貯留槽に貯留される水及び上記水分流出路からの水は、
上回転軸の小孔から噴射され、作動気体内に分散し、冷却の用に供される。この場合、小孔からの噴射によるので、冷却効率が高くなる。また、噴射された水は、溶液壁部の表面に一体化して行き、一部は熱分解する。また、噴射される水は、第2外気取入口から取り入れた外気からの水なので、外気中の水の利用効率が向上させられる。
【0030】
更に、必要に応じ、上記容器の上記液体壁部の上端より上から上記容器内で生成される酸素を回収する酸素回収通路と、上記容器の上記液体壁部の下端側から上記容器内で生成される水素を回収する水素回収通路とを設けた構成としている。容器内部においては、作動気体の圧力及び温度が上昇して、例えば、約30気圧の高圧,約8000℃もの高温になるので、液体壁部の内表面においては液体壁部を構成する水が熱分解させられ、酸素と水素が発生するが、酸素回収通路により、酸素を回収し、水素回収通路により水素を回収することができる。
【0031】
このことにより、重水素減少水の製造方法を提案することができる。重水素減少水の製造に当たって、従来技術として、水を電気分解して水素と酸素に分け重力や質量の差を利用して軽水素のみに分解し再度、酸素と結合させる方法があるが、エネルギー消費コストが高くなる欠点がある。しかし、本発明によれば、容器内で作動気体を遠心高熱分解し、水素と酸素を強力遠心比重分離させるので、軽水素のみが回転する液体壁部の遠心減圧された中心部に集合して下部の水素回収通路から取り出される。そのため、図示しない焼却炉で軽水素と酸素とを結合させることにより、重水素減少水を精製出来るようになる。水素回収通路に導入されなかった重水素はタービンの外周部から減圧されて排気されるので、重水素のみを分離して燃焼処理をすることでその燃焼熱は本発明の導入外気の加温に利用し、出力アップに寄与できる。
【0032】
そしてまた、必要に応じ、上記下壁の下側に、上記側壁に一体に設けられ上記下壁との間に下部空間を形成する隔壁を設け、上記下壁の少なくとも外周部を上記側壁の内側に設けたフランジに対して上下に摺動可能な移動部として構成し、該移動部の上端位置を規制するストッパを設け、一端側が上記容器内に開口し他端側が上記下部空間に開口し上記容器内の圧力と上記下部空間との圧力を等しくするための連通管を設け、上記移動部を上記ストッパに常時押圧する付勢手段を設け、上記容器内部の圧力が所定以上急上昇したとき、上記付勢手段の付勢力に抗して該移動部がフランジを摺動して下部空間内に落ち込み、該移動部とフランジ内周との間に形成された間隙から容器内の圧力を逃がすことを可能にした構成としている。これにより、容器内部と下部空間との間は連通管により接続されているので、常時は、容器内の圧力と下部空間との圧力が等しく保たれ、下壁は一定位置に位置させられる。万一、容器内部の圧力が所定以上上昇し、所謂バックファイヤーが生じると、付勢手段の付勢力に抗して下壁の移動部がフランジを摺動して下部空間内に落ち込み、移動部とフランジ内周との間に形成された間隙から容器内の圧力が逃げるので、安全を図ることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の温度差エネルギー変換装置によれば、ファン機構により気体が取り入れられると、作動気体は、容器内を上側から下側に向かって旋回させられながら圧縮して下降させられ、この旋回力によって容器内部の液体を回転させ、下開口を開放したロート状の内表面を有した液体壁部に形成し、下開口から導出されていく。そのため、作動気体は、容器内で圧力及び温度が上昇して高圧,高温になり、下開口から導出されると、急膨張して冷気になり、タービンを回転させる。この場合、高圧,高温の作動気体は、ロート状の液体壁部に接するので、液体の表面で熱交換が行われることになり、そのため、冷却効率が極めて良くなり、それだけ、下開口から毎秒導出される混合気のロート状内外の比較総合比重を増加させ、それにより遠心力の勢いを増してタービンの出力の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の温度差エネルギー変換装置の原理を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る温度差エネルギー変換装置を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る温度差エネルギー変換装置を示す部分断面斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る温度差エネルギー変換装置の上側を示す拡大断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る温度差エネルギー変換装置の下側を示す拡大断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る温度差エネルギー変換装置を示す
図2中A−A線断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る温度差エネルギー変換装置を示す
図2中B−B線断面図である。
【
図8】本発明の別の実施の形態に係る温度差エネルギー変換装置を示す原理図である。
【
図9】従来の温度差エネルギー変換装置の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る温度差エネルギー変換装置を説明する。本装置は、例えば、直径が1m〜300m、高さが1.2m〜400mの大きさのものである。
図2乃至
図7には、本発明の実施の形態に係る温度差エネルギー変換装置Sを示している。この温度差エネルギー変換装置Sは、基台1とこの基台1に立設される本体2とを備えている。基台1は、コンクリートの基礎3に設置され内部に後述の発電機55,56を収容する発電機室8を形成している。本体2は、支持台4に支持された容器10を備えている。支持台4は、基台1に支持され、上板5,下板6及び側板7で形成さている。下板6は、基台1の上面部を形成する。
【0036】
容器10は、筒状の側壁11,上壁12及び下壁13を有し内部に冷却用の液体としての水Wが入れられる。容器10において、上部には上壁12との間に上部空間14を形成する上隔壁15が設けられ、側壁11下部の内側には、下壁13との間に下部空間16を形成し中央部が支持台4の上板5で形成された下隔壁17が設けられている。容器10の上壁12の中央には、容器10の中心軸Pと同軸で気体を取り入れる上開口20が形成されている。容器10の下壁13の中央には、容器10の中心軸Pを中心とした下開口21が設けられている。また、容器10の側壁11の外側には、この側壁11とともに後述の噴出水流路170の主流路173を形成する筒状の第1外筒22が設けられ、第1外筒22の外側には、この第1外筒22とともに後述の外気中水分取出し部160を形成する第2外筒23とが備えられている。
【0037】
容器10の上側にはファン機構40が設けられている。ファン機構40は、後で詳述するが、上開口20から気体としての大気からなる外気を取り入れその一部若しくは全部(実施の形態では比重分離した一部)を作動気体Gとして旋回させながら圧縮して降下させ、内部の液体である水Wを下開口21を開放したロート状の内表面を有した液体壁部Hに形成して、作動気体Gを下開口21から導出させるものである。
【0038】
また、容器10の下側には、容器10中心軸Pと同軸の軸線を有した回転軸50を有し下開口21に臨み導出する作動気体Gにより回転させられるタービンTが設けられている。タービンTの回転軸50は上側に突出する上回転軸51と下側に突出する下回転軸52とを有した管状に形成されている。下回転軸52の下端部は中実軸であり基台1に軸受部53を介して軸支されている。また、基台1内部において、タービンTの下回転軸53の下端にはかさ歯車機構54を介して回転させられて発電を行う一対の発電機(Ge)55,56が設置されている。一方の発電機56は、本装置の始動時にセルモータ(Sm)として外部電源により駆動され、定常時においては切換えられて発電機として機能する。符号57はかさ歯車機構54の潤滑用オイルが貯留されるオイル溜である。
【0039】
容器10において、下壁13は、下開口21が形成されにタービンTを囲繞するとともに支持台4の上板5に固定される下開口管24と、下開口管24に上下に摺動可能且つ側壁11の内側に設けたフランジ25に対して上下に摺動可能で下壁13の壁面を形成する円盤状の移動部26とを備えて構成されている。下開口管24の上端には、移動部26の上端位置を規制するストッパ27が固定されている。そして、一端側が容器10内に開口し他端側が下部空間16に開口して容器10内の圧力と下部空間16との圧力を等しくするための連通管30が設けられている。
図4に示すように、容器10の上部内周には、矩形の平断面を形成するチャンネル部材で形成されたリング状の周管31が付設されており、この周管31の半周の側壁11には容器10内と連通する多数の連通口32が列設されている。そして、連通管30は側壁11の軸方向に沿って側壁11外側に設けられ、その一端は周管31の連通口32の内側(a)に開口し、他端が下部空間16(b)に開口している。
【0040】
また、下部空間16には、移動部26をストッパ27に常時押圧する付勢手段が設けられている。付勢手段は、中心軸Pを中心に等角度関係で列設される複数のコイルスプリング33で構成されている。これにより、容器10内部の圧力が所定以上急上昇したとき、付勢手段としてのコイルスプリング33の付勢力に抗して移動部26が下開口管24及びフランジ25を摺動して下部空間16内に落ち込み、移動部26とフランジ25内周との間に形成された間隙から容器10内の圧力を逃がすことを可能にしている。
【0041】
ファン機構40は、
図4及び
図6に示すように、上壁12に回転可能に設けられ容器10の中心軸Pを中心に回転する第1ファン41と、上壁12に設けられ第1ファン41を回転させるモータ(M)42と、タービンTから延び容器10の中心軸Pを軸線とする上回転軸51によってタービンTと同期して回転させられる第2ファン60とを備えて構成されている。第1ファン41の回転主軸43と上回転軸51とは同軸であり、スラストメカニカルシール61を介して互いに独立して回転可能に連設されている。モータ42は、始動時から定常運転に至るまでの間及び必要に応じ適時に、外部電源で駆動され、定常運転後は発電機55,56からの電力で駆動される。
【0042】
第1ファン41は、中央に上開口20に対応する吸引口44を有し上壁12に近接して対峙し回転主軸43に固定されて回転させられるとともに上壁12にラジアルメカニカルシール62を介して軸支される基盤45と、基盤45に等角度関係で複数列設され吸引口44からの作動気体Gを遠心方向に送出する第1回転羽根46と、上回転軸51が回転可能に貫通し基盤45に対向して第1回転羽根46を覆うとともに外周に作動気体Gの吹出口47を形成する覆い板48とを備えて構成されている。第1回転羽根46の外周は、遠心力により内側に水Wを保持可能な覆い側板49で被覆されている。モータ42は、上壁12に支持部材63を介して支持されており、支持部材63の下側は、回転主軸43を包容し後述もする液体壁部Hからの水が入り込む包容空間64を形成する包容部65に形成されている。
【0043】
第2ファン60は、第1ファン41の第1回転羽根46の内側であって、吸引口44に対峙し回転させられて吸引口44からの作動気体Gを遠心方向に送出して吹出口47から吹き出す複数の
第2回転羽根66を備えて構成されている。
【0044】
容器10の上側には、上隔壁15に支持され、ファン機構40の吸引力により外気を取り入れて作動気体Gとしてファン機構40に送給する作動気体生成部70が設けられている。この作動気体生成部70は、外周に設けられた複数の第1外気取入口71と、内側に設けられ上開口20に連通する作動気体出口72とを備えている。作動気体出口72は、逆円錐台筒状に形成されモータ42の支持部材63を囲繞するダクト体73で形成されている。符号73aは支持部材63から放射状に延びてダクト体73を内側から支持する複数の補強板である。また、作動気体生成部70は、第1外気取入口71と作動気体出口72との間に設けられ外気を比重分離して比重の小さい側の気体を作動気体Gとする分離通路74を備えている。
【0045】
分離通路74は、ダクト体73の上側に連設されたドーナツ状の円盤体75内に形成されており、第1外気取入口71側の通路入口76を有し作動気体出口72に連通する上下2段であって中心軸Pを中心とする螺旋状に形成されている。詳しくは、分離通路74は、通路入口76からの外気が流入させられ容器10の中心軸Pを中心とする螺旋状の第1螺旋通路74aと、第1螺旋通路74aの上側に設けられ第1螺旋通路74aの作動気体出口72側に連通し第1螺旋通路74aからの外気が流入させられるとともに外周側に比重の大きい気体の気体出口を有した容器10の中心軸を中心とする螺旋状の第2螺旋通路74bとを備えて構成されている。気体出口は円盤体75の上部に複数形成され、外周側から順に、主に二酸化炭素用の気体出口77,主に酸素用の気体出口78,主にアルゴン用の気体出口79として備えられている。これにより、ファン機構40の吸引力により容器10内に送給される作動気体Gは、主に窒素ガスとなる。
【0046】
作動気体生成部70の円盤体75は、中心軸Pを中心に放射状に複数に分割形成され、外周側がヒンジ装置を介して開閉可能に設けられており、閉時に容器10内部の圧力が所定以上上昇したとき、
図4の上部において点線で示すように、開になって圧力を逃がすことを可能にしてある。
【0047】
また、第1外気取入口71と作動気体出口72との間には、外気を水で洗浄する第1洗浄部80が設けられている。円盤体75と上隔壁15との間には周壁で囲繞された空間が設けられており、この第1洗浄部80は、この空間に設けられ水が貯留される第1洗浄槽81と、第1洗浄槽81に液体壁部Hの下側を構成する水Wを配給する水配給路82とを備えて構成されている。第1洗浄槽81は、水配給路82から配給される水を旋回させるリング状に形成されている。第1洗浄槽81の底壁83には取り入れられた外気を第1洗浄槽81内に吹き込む多数の小孔84が形成されている。第1洗浄槽81は負圧になっており、外気はこの小孔84から泡状になって槽内に吹き出していき洗浄される。また、第1洗浄槽81には、汚れた水を排水する第1配水管85が連携されている。第1配水管85は、後述の第2洗浄槽151に排水を供給する。水配給路82は、容器10の側壁11に沿って付設された水配給パイプ86で形成され、下端が容器10内の下側(c)に開口し、上端が第1洗浄槽81内(d)に開口しており、液体壁部Hの圧力により液体壁部Hの下側を構成する水Wを第1洗浄槽81内に供給する。
【0048】
本装置Sには、液体壁部Hを構成する水Wを外部から供給する水供給部90と、液体壁部Hを構成する水Wを循環させる循環水路91とが設けられている。水供給部90は、水道水W(s)を供給する水供給パイプ92を備えて構成されている。循環水路91は、容器10の側壁11に沿って付設された左右一対の循環パイプ93で形成され、その下端が容器10内の下側(e)に開口し、上端側が水供給管94として構成され、この水供給管94の先端が第1ファン41の基盤45と上壁12との間であって、上開口20側(f)に開口し、この第1ファン41の基盤45と上壁12との間に水を供給する。水供給管94の基端にはギヤポンプ95が介装されており、このギヤポンプ95の駆動により、液体壁部Hを構成する水を循環させる。循環水路91を構成する一方の循環パイプ93(
図4中右側)においては、ギヤポンプ95の手前に、循環パイプ93を通る高圧熱水と熱交換を行って暖房の用に供する熱交換部96が接続されており、水Wはこの熱交換部96を通ってから、ギヤポンプ95に至る。循環水路91を構成する他方の循環パイプ93(
図4中左側)においては、ギヤポンプ95の手前に分岐管97が接続され、分岐管97に介装した開閉弁の開閉により適時に高圧熱水を取出して種々の用途に使用可能にしている。
【0049】
基盤45の上面には、螺旋状の溝98が形成されており、水供給管94から供給された水は、この溝98にガイドされるとともに、第1ファン41の基盤45と上壁12との間に充満されて流出し、第1ファン41の覆い側板49の外側面を伝わって容器10内に供給される。そして、水道水を供給する水供給パイプ92は、一方のギヤポンプ95(
図4中左側)に接続されており、水供給部90を、水供給管94を通して水を供給する構成にしている。これにより、水が潤滑剤の役目をし、基盤45の上壁12に対する摩擦が低減され、基盤45の冷却も行われる。
【0050】
また、本装置Sには、液体壁部Hのロート状の内表面の角度を調整可能な液体壁部調整部100が備えられている。この液体壁部調整部100は、容器10の側壁11にその内面側から中心軸Pに対して進退動可能に設けられ、進退動量によって液体壁部Hのロート状の内表面の角度を調整可能な突出体101と、突出体101を駆動する駆動部102とが設けられている。詳しくは、容器10内には、側壁11内周に沿って、側壁11との間に所定間隔の隠れ空間103を有し、下壁13近傍から側壁11の上側で第1ファン41の外周よりも所定間隔下側の位置までの所定高さを有した筒状の内壁板104が設けられている。突出体101は上下方向に延びる棒状の板材で形成され、4本設けられている。内壁板104には、等角度関係(実施の形態では90°間隔)で、突出体101が通過可能な挿通溝105を形成し、各挿通溝105に突出体101を配し、各突出体101をその上端を内壁板104の側壁11側でこの内壁板104に揺動可能に支持し、揺動により隠れ空間から内壁板104外に出没可能にしている。駆動部102は、側壁11に付設され、例えば、パルスモータで進退可能に回転させられ先端が突出体101の下端に係止するボールネジを有したアクチュエータ106で構成され、パルスモータによるボールネジの回転量により、突出体101の進退動量を変えて、液体壁部Hのロート状の内表面の角度を調整可能にしている。
【0051】
容器10の内壁板104より上の上部には、液体壁部Hの上端の水位が所定高さを超えたとき、超えた分の水を流出させて回収する回収路110が設けられている。回収路110は回収路パイプ111で形成される。また、本体2の外側には回収路110を通って回収された水を飲料水として貯留する回収水貯留槽112が設けられている。この回収水貯留槽112は、第2外筒23と、この第2外筒23を囲繞する第3外筒113と、第2外筒23及び第3外筒113との間の上下を塞ぐ板114で構成されている。また、回収路110からの水の流出量の大小を検知する水量センサを設け、水量センサが水量大を検知したとき水供給部90からの水供給を停止し、水量センサが水量小を検知したとき水供給部90からの水供給を行わせる水供給制御部115が備えられている。
【0052】
具体的には、回収水貯留槽112の上には、水の流下管120を介して一時的に回収路110からの水を貯留する中間貯留槽116が設けられている。容器10の上部と中間貯留槽116との間に回収路パイプ111が水Wが流下可能に架設されている。そして、中間貯留槽116には中間貯留槽116内の水位の所定の上位と所定の下位を検知する水量センサとしてのフロートスイッチ117が設けられており、フロートスイッチ117が水位の上位を検知すると、水量大として水供給パイプ92に介装した電磁バルブ118を閉にして水供給部90のからの水供給を停止するとともに、流下管120に介装した電磁バルブ121を開にして、中間貯留槽116から回収水貯留槽112へ水を流下させる。一方、フロートスイッチ117が水位の下位を検知すると、水量小として水供給パイプ92に介装した電磁バルブ121を開にして水供給部90のからの水供給を行い、流下管120に介装した電磁バルブ118を閉にする。122は回収水貯留槽112の下部に設けられ飲料水を取り出す取出口、123は取出口122に設けられ飲料水を送給する送給ポンプ、124は回収水貯留槽112の上部に設けられ飲料水が満杯になったとき飲料水を排出するドレン管である。125は回収水貯留槽112の上部に設けられ交換可能なフィルタである。
【0053】
また、本装置においては、タービンTを通過した作動気体Gが排気ガスとして排気される排気通路130が設けられている。排気通路130は、容器10の下側の支持台4内、及び、後述の外気中水分取出し部160を構成する第1外筒22と第2外筒23との間に形成されている。容器10の下側の支持台4内において、支持台4の上板5の下部には、排気通路130の円盤状の始端部131が設けられている。この排気通路130の始端部131は、内側に下開口管24に連通しタービンTの下部が臨む入口132を有し、外周に出口133を有している。また、排気通路130の始端部131は、中心軸Pを中心とする螺旋状に形成されている。第2外筒23の上側には、排気通路130に連通する周状の側部ダクト135が設けられており、この側部ダクト135に排気口136が形成されている。排気通路130を構成する下板137にはタービンTの下回転軸52を軸支する軸受部138が設けられている。
【0054】
更に、上記の第1外気取入口71からの外気の取入とは別に、第2外気取入口141からタービンTの動力により回転させられる吸引ファン142によって外気を吸引する外気吸引通路140が設けられている。上壁12は外側にフランジ状に突出しており、第2外気取入口141はこの上壁12の外側に設けた周状の上部ダクト143の外側に設けられている。そして、吸引ファン142は支持台4内であってタービンTの下側においてタービンTの下回転軸52に設けられている。外気吸引通路140は、後述の外気中水分取出し部160を構成する第1外筒22と第2外筒23との間、及び、容器10の下側であって排気通路130の下側の支持台4内に形成されている。
【0055】
更にまた、容器10の下側の支持台4内において、排気通路130の下側には、吸引ファン142に至る外気吸引通路140の終端部144が設けられるが、この外気吸引通路140の終端部144には、上側とは流下パイプ145を通して外気が流入する。この外気吸引通路140の終端部144の下側には、吸引ファン142からの外気の排気が送出され容器10の下側の排気通路130の出口133に接続パイプ146を通して合流する外気排路147が設けられている。また、外気排路147の下側には、外気の排気から凝縮した水が流出させられる水分流出路148が設けられている。外気排路147及び水分流出路148も、中心軸Pを中心とする螺旋状に形成されている。水分流出路148の外側には、水分流出路148からの水を貯める水溜部149が設けられている。
【0056】
外気吸引通路140の第2外気取入口141側には、外気を水で洗浄する第2洗浄部150が設けられている。この第2洗浄部150は、水が貯留される第2洗浄槽151と、第2洗浄槽151に液体壁部Hの下側を構成する水を配給する上記の水配給路82とを備えて構成されている。第2洗浄槽151は、上部ダクト143内に設けられ、水配給路82から配給される水を旋回させるリング状に形成されている。具体的には、水配給路82からの水は、第1洗浄槽81に至り、その後、第1配水管85を通して第2洗浄槽151に供給される。第2洗浄槽151の底壁152には、取り入れられた外気を第2洗浄槽151内に吹き込む多数の小孔153が形成されている。水が貯留される第2洗浄槽151は負圧になっており、外気はこの小孔153から泡になって槽内に噴出していき洗浄される。また、第2洗浄槽151には汚れた水を排水する第2配水管154が連携されている。第2配水管154は、基台1側部に設けた排水槽155に至っており、落差を利用して水を排水する。排水槽155は汚れた水の逆流を防止する。汚れた水は排水槽155に一時貯留されてから排水される。
【0057】
また、排気通路130の一部と外気吸引通路140の一部とを熱交換板161を介して並設し、熱交換板161により外気中の水分を凝縮して取り出す外気中水分取出し部160が設けられている。外気中水分取出し部160は、排気通路130及び外気吸引通路140が容器10の中心軸Pに平行になるように容器10の外周に容器10を囲繞して設けられ、具体的には、第1外筒22と第2外筒23との間に形成されている。熱交換板161は、排気通路130及び外気吸引通路140が交互に列設されるように蛇腹状に形成され、その頂部において第1外筒22及び第2外筒23に固設されている。外気中水分取出し部160の下側には、熱交換板161を伝って落下する外気中水分を、上記の流下パイプ145を通して受けて貯留する外気中水分貯留槽162が設けられている。外気中水分貯留槽162から溢れた水は水溜部149に至る。163は外気中水分貯留槽162のドレンである。
【0058】
更に、タービンTの上側には、タービンTから延び容器10の中心軸Pを軸線とする上回転軸51が設けられているが、この上回転軸51は、管状に形成され、タービンTの近傍で仕切部材171で閉塞され、上端が上記のモータ42の管状の回転軸50に連通している。モータ42の管状の回転軸50の上部は上記の支持部材63の包容部65の包容空間64に開放しており、上回転軸51の内部はこの包容部65に連通している。また。上回転軸51の管壁には軸方向に沿って多数の小孔172が開設されている。そして、外気中水分貯留槽163に貯留される水及び水分流出路148からの水であって、水溜部149に至った水を上回転軸51内に送給して小孔172から容器10内に噴出させる噴出水流路170が設けられている。この噴出水流路170は、容器10の側壁11と第1外筒22とで形成される主流路173と、水溜部149と主流路173の下部との間に接続される下部給水管174と、主流路173の上部に設けられ一時的に水を貯める一時水槽175と、一時水槽175と包容部65の包容空間64との間に接続される上部給水管176とで構成される。主流路173は側壁11及び第1外筒22に付設される蛇腹状の補強板177で補強されている。この主流路173内には、上記の連通管30,水配給パイプ86,循環パイプ93が引き通されている。
【0059】
また、本装置Sは、容器10の液体壁部Hの上端より上から容器10内で生成される酸素を回収する酸素回収通路180を備えている。酸素回収路110は、側壁11の周管31の下に開口を有して外部に至る酸素回収管181で構成されている。周管31の下側には、筒状で第1ファン41を囲繞するガイド板182が設けられており、このガイド板182に酸素が入り込む補助吸入口183が周方向に多数設けられている。
【0060】
更に、本装置Sは、容器10の液体壁部Hの下端側から容器10内で生成される水素を回収する水素回収通路190を備えている。詳しくは、タービンTの上回転軸51の基端部であって仕切部材171の下側側部には水素が導入される導入口191が形成され、下回転軸52の中実の下端部より上側側部には水素の導出口192が形成されている。導出口192は軸受部材53で囲繞されており、軸受部材53には導出口192に連通し導出口192からの水素を外部に取り出す水素取出管193が接続されている。水素回収通路190は、導入口191から導出口192に至るタービンTの回転軸50内通路及び水素取出管193によって構成されている。
【0061】
従って、実施の形態に係る温度差エネルギー変換装置Sによれば、基本的には、モータ42及び発電機56をセルモータとして始動すると、ファン機構40により気体が取り入れられ、作動気体Gは、容器10内を上側から下側に向かって旋回させられながら圧縮して下降させられ、この旋回力によって容器10内部の水Wを回転させ、下開口21を開放したロート状の内表面を有した液体壁部Hに形成し、下開口21から導出されて、タービンTを回転させる。この過程において、作動気体Gは、旋回させられながら圧縮して下降させられると、圧力及び温度が上昇していき、高圧,高温になり、下開口21から導出されると、急膨張して冷気になり、タービンTを回転させる。タービンTにより発電機55による発電が行われる。この場合、高圧,高温の作動気体Gは、ロート状の液体壁部Hに接するので、液体の表面で熱交換が行われることになり、そのため、冷却効率が極めて良くなり、それだけ、下開口21から毎秒導出される混合気のロート状内外の比較総合比重を増加させ、それにより遠心力の勢いを増してタービンTの出力の向上及び発電機の出力の向上を図ることができる。そして、定常状態になったならば、発電機55による発電も行われ、モータ42の電源を発電機55,56の電源でまかなうことができるようになる。
【0062】
以下、気体の経路と水の経路に分けて詳しく説明する。
<気体の経路>
ファン機構40が回転すると、外気は、ファン機構40の吸引力により複数の第1外気取入口71から外気が取り入れられる。取り入れられた外気は、第1洗浄部80に至り、水で洗浄される。この場合、第1洗浄槽81に多数の小孔84から外気を噴出して洗浄するので、洗浄効率が極めて良くなる。また、第1洗浄槽81はリング状に形成され、水は旋回させられるので、より一層洗浄効率が良くなる。第1洗浄部80で外気を洗浄するので、液体壁部Hの水を綺麗なものにすることができ、飲料水として取り出す場合に有効になる。
【0063】
第1洗浄部80で洗浄された外気は、作動気体生成部70の分離通路74に流入し、これにより、作動気体出口72に至る外気は、遠心力により比重分離されて比重の大きい気体が気体出口77,78,79から排出され、比重の小さい気体が作動気体Gとして作動気体出口72に吸引されていく。螺旋の経路で比重分離するので、効率よく分離を行うことができる。即ち、気体出口は円盤体の上部に複数形成され、外周側から順に、主に二酸化炭素用の気体出口77,主に酸素用の気体出口78,主にアルゴン用の気体出口79として備えられている。これにより、ファン機構40の吸引力により容器10内に送給される作動気体Gは、主に窒素ガスとなって、容器10内に流出させられる。
【0064】
ファン機構40においては、第1ファン41と第2ファン60との2つのファンにより、作動気体Gに遠心力を付与して旋回させて圧縮するので、確実に高圧,高温にすることができる。例えば、約30気圧の高圧,約8000℃もの高温になり、液体壁部Hの内表面においては液体壁部Hを構成する水を熱分解させる。この場合、液体壁部Hの内部は200℃〜300℃程度に上昇するが、相対的に、作動気体Gから熱を奪い作動気体Gを冷却することができる。容器10内の液体壁部Hの表面で水が熱分化すると、主に比重の重い酸素は液体壁部Hを上昇して酸素回収通路180に流入して回収される。一方、主に比重の軽い水素は、水素回収通路190に流入して回収される。
【0065】
そして、主に窒素からなる作動気体Gは、下開口21から吹き出され、急膨張してタービンTを回転せしめ、冷気となった排気ガスとして排気通路130に排気される。排気ガスは、容器10下部の排気通路130の始端部131を通る。この場合、排気通路130の始端部131は螺旋状に形成されているので、排気の遠心力を増すことができ、それだけ、タービンTの出力を増すことができる。また、容器10の下壁13側の強度を増すことができる。排気通路130の始端部131を通った排気ガスは、外気中水分取出し部160の排気通路130に送出される。
【0066】
一方、タービンTが回転すると吸引ファン142も回転するので、第2外気取入口141から外気が取り入れられる。第2外気取入口141から取り入れられた外気は、第2洗浄部150に入り、洗浄される。第2洗浄槽151に多数の小孔153から外気を噴出して洗浄するので、洗浄効率が極めて良くなる。そして、この外気は、外気中水分取出し部160の外気吸引通路140を通過して、外気吸引通路140の終端部144に至り、吸引ファン142に吸引されて外気排路147に送出され、外気中水分取出し部160を構成する排気通路130に合流する。この場合、吸引ファン142に吸引される際に凝縮した水が水分流出路148に流出させられ、水溜部149に至る。また、外気排気通路130及び水分流出路148は、螺旋状に形成されているので、遠心力を増すことができ、水分の分離を効率よく行うことができる。また、容器10の下壁13側の強度を増すことができる。
【0067】
また、外気中水分取出し部160においては、熱交換板161を介して排気通路130を通り外気が合流した排気と外気吸引通路140を通る外気との熱交換が行われる。これにより、熱交換板161により外気中の水分が凝縮して取り出される。この場合、熱交換板161は、排気通路130及び外気吸引通路140が交互に列設されるように蛇腹状に形成されているので、熱交換効率を向上させることができる。また、蛇腹状の熱交換板161によって、容器10の外周の強度を増すことができる。熱交換板161を伝って落下する外気中水分は、外気中水分貯留槽163に貯留され、水溜部149に至る。排気ガスと外気との熱交換を行うので、外気を水分の極めて少ない気体として利用することができる。上記の排気通路130の始端部131を通って排気される排気ガスと、これに合流した外気は、外気中水分取出し部160の排気通路130を通過して、側部ダクト135を通って排気口136から排気されていく。この排気ガスは、冷気であることから、例えば、冷房の用に供することができる。
【0068】
また、本体2においては、一端側が容器10の内側(a)に開口し他端側が下壁13の下の下部空間16(b)に開口して容器10内の圧力と下部空間16との圧力を等しくするための連通管30が設けられているので、常時は、容器10内の圧力と下部空間16との圧力が等しく保たれ、下壁13は一定位置に位置させられる。万一、容器10内部の圧力が所定以上上昇し、所謂バックファイヤーが生じると、付勢手段のコイルスプリング33の付勢力に抗して下壁13の移動部26がフランジ25を摺動して下部空間16内に落ち込み、移動部26とフランジ25内周との間に形成された間隙から容器10内の圧力が逃げ、また、作動気体生成部70も開閉可能になっており、閉時に容器10内部の圧力が所定以上上昇したとき開になって圧力が逃げるので、安全を図ることができる。
【0069】
そしてまた、上述したように、酸素回収通路により、酸素を回収し、水素回収通路により水素(軽水素)を回収することができるが、このことにより、重水素減少水の製造方法を提案することができる。例えば、図示しない焼却炉を用意し、回収した軽水素と酸素とを燃焼により結合させることにより、重水素減少水を精製出来るようになる。
【0070】
<水の経路>
液体壁部Hを構成する水Wは水供給部90により外部から供給される。また、液体壁部Hを構成する水Wは、容器10の下側(e)から循環水路91を経て第1ファン41の基盤45と上壁12との間(f)に供給されて循環させられる。水供給部90により水Wを供給することができ、また、循環水路91により水Wを循環させるので、それだけ冷却効率を向上させることができる。詳しくは、水供給制御部115の電磁バルブ118が開のときに、ギヤポンプ95が駆動されると、水供給管94から第1ファン41の基盤45と上壁12との間(f)へ水が供給される。この場合、内部圧により、第1ファン41が上壁12側に押されても、第1ファン41の基盤45と上壁12との間へ水が供給されるので、水が潤滑水の役目をし、第1ファン41に下側に押し下げる力が作用し、そのため、第1ファン41の回転を円滑に維持できるようになる。そして、第1ファン41の周囲から容器10内部へ水が供給される。
【0071】
また、上述したように、外気中水分取出し部160において、熱交換板161を伝って落下する外気中水分は、外気中水分貯留槽163に貯留され、水溜部149に至り、吸引ファン142に吸引される際に凝縮した水が水分流出路148に流出させられ、水溜部149に至る。この水溜部149の水は、噴出水流路170を通して上昇し、即ち、下部給水管174→主流路173→一時水槽175→上部給水管176を通して、上回転軸51の小孔172から噴射される。そのため、小孔172から噴射された水は、作動気体G内に分散し、冷却の用に供される。この場合、小孔172からの噴射によるので、冷却効率が高くなる。また、噴射された水は、液体壁部Hの表面に一体化して行き、一部は熱分解する。また、噴射される水は、第2外気取入口141から取り入れた外気からの水を含むので、外気中の水の利用効率が向上させられる。
【0072】
そして、容器10内の水Wは、ファン機構40による作動気体Gの旋回力によって回転させられ、下開口21を開放したロート状の内表面を有した液体壁部Hに形成される。この場合、液体壁部調整部100において、駆動部102により突出体101を側壁11の内面側から適宜突出させ、液体壁部Hのロート状の内表面の角度を調整する。即ち、この突出体101の突出量により、液体の回転抵抗が異なるので、液体壁部Hのロート状の内表面の角度を適正な角度に調整して、下開口21を確保し、下開口21からの作動気体Gの導出を円滑に行わせることができるようになる。
【0073】
この液体壁部Hにおいて、その上端の水位が所定高さを超えたときは、超えた分の水が、回収路110に流出して回収され、回収水貯留槽112に飲料水として貯留される。この場合、水供給制御部115により、水量センサが水量大を検知したとき水供給部90からの水供給を停止し、水量センサが水量小を検知したとき水供給部90からの水供給を行わせる。具体的には、水量センサとしてのフロートスイッチ117が水位の上位を検知すると、水量大として水供給パイプ92に介装した電磁バルブ118を閉にして水供給部90のからの水供給を停止するとともに、流下管120に介装した電磁バルブ121を開にして、回収水貯留槽112から回収水貯留槽112へ水を流下させる。一方、フロートスイッチ117が水位の下位を検知すると、水量小として水供給パイプ92に介装した電磁バルブ118を開にして水供給部90のからの水供給を行い、流下管120に介装した電磁バルブ121を閉にする。温度上昇した水を回収して水位調整することができ、液体壁部Hを安定させることができる。また、回収路110から液体壁部Hの上側を構成する水が飲料水として回収されるが、液体壁部Hにおいては、これに生じる遠心力により、重水が下側に集約されることから、液体壁部Hの上側は重水素減少水になっており、回収された水はこの液体壁部Hの上側の水になるので、重水素減少水を飲料水とすることができ、極めて有用になる。
【0074】
更に、第1洗浄部80及び第2洗浄部150においては、液体壁部Hの下側を構成する水Wが水配給路82を通して配給される。水Wは、容器10内の下側(c)→水配給路82→第1洗浄槽81(d)→第1配水管85→第2洗浄槽151→第2配水管154→排水槽155の経路で流される。これにより、水配給路82から液体壁部Hの下側を構成する水が洗浄水として配給されるが、液体壁部Hにおいては、これに生じる遠心力により、重水が下側に集約されることから、洗浄水はこの重水の多い水を用いることになり、洗浄後は排水されるので、効率よく重水の多い水を排水することができる。
【0075】
図8には、本発明の別の実施の形態に係る温度差エネルギー変換装置の原理図を示す。これは、気体及び液体を構成する媒体を、蒸発,凝縮を繰り返し行いうる例えば液体アンモニウム,フロン,二酸化炭素などの媒体で構成している。そして、外郭200を密閉空間にし、この外郭200の内部に、上記と同様に、筒状の側壁及び下壁を有し内部に冷却用の液体Wが入れられる容器10を備えている。外郭200の外側には外気と熱交換を行うフィン201が設けられ、容器10の外側には外郭200内部の気体と熱交換を行うフィン202が設けられる。容器10においては、上側に気体を取り入れる上開口20が設けられ、下壁の中央には容器10の中心軸Pを中心とした下開口21が設けられ、上側には上開口20から気体を取り入れ作動気体Gとして旋回させながら圧縮して降下させ凝縮した内部の液体Wを下開口21を開放したロート状の内表面を有した液体壁部Hに形成して作動気体Gを下開口21から導出させるファン機構40が設けられ、下開口21に臨み導出する作動気体Gにより回転させられるタービンTが設けられる。タービンTから導出される作動気体Gは、外郭200の閉空間に放出され、再び容器内に取り込まれ、凝縮→蒸発→凝縮を繰り返し、外気との熱交換により、エネルギーを生成することができる。
【0076】
尚、上記実施の形態において、容器10やタービンT等の大きさ、形状、あるいは各部の材質などは、適宜に定めてよい。本発明は、上述した本発明の実施の形態に限定されず、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
S 温度差エネルギー変換装置
W 水(液体)
H 液体壁部
G 作動気体
1 基台
2 本体
8 発電機室
10 容器
P 中心軸
11 側壁
12 上壁
13 下壁
14 上部空間
15 上隔壁
16 下部空間
17 下隔壁
20 上開口
21 下開口
22 第1外筒
23 第2外筒
24 下開口管
25 フランジ
26 移動部
27 ストッパ
30 連通管
31 周管
32 連通口
33 コイルスプリング(付勢手段)
40 ファン機構
41 第1ファン
42 モータ
43 回転主軸
44 吸引口
45 基盤
46 第1回転羽根
47 吹出口
48 覆い板
49 覆い側板
T タービン
50 回転軸
51 上回転軸
52 下回転軸
53 軸受部
54 かさ歯車機構
55,56 発電機
57 オイル溜
60 第2ファン
61 スラストメカニカルシール
62 ラジアルメカニカルシール
63 支持部材
64 包容空間
65 包容部
66 第2回転羽根
70 作動気体生成部
71 第1外気取入口
72 作動気体出口
73 ダクト体
74 分離通路
75 通路入口
77,78,79 気体出口
80 第1洗浄部
81 第1洗浄槽
82 水配給路
85 第1配水管
86 水配給パイプ
90 水供給部
91 循環水路
92 水供給パイプ
93 循環パイプ
94 水供給管
95 ギヤポンプ
96 熱交換部
97 分岐管
98 溝
100 液体壁部調整部
101 突出体
102 駆動部
110 回収路
111 回収路パイプ
112 回収水貯留槽
113 第3外筒
115 水供給制御部
130 排気通路
131 始端部
132 入口
133 出口
135 側部ダクト
136 排気口
140 外気吸引通路
141 第2外気取入口
142 吸引ファン
143 上部ダクト
144 終端部
145 流下パイプ
146 接続パイプ
147 外気排路
148 水分流出路
149 水溜部
150 第2洗浄部
151 第2洗浄槽
152 底壁
154 第2配水管
155 排水槽
160 外気中水分取出し部
161 熱交換板
162 外気中水分貯留槽
170 噴出水流路
171 仕切部材
172 小孔
173 主流路
174 下部給水管
175 一時水槽
176 上部給水管
177 補強板
180 酸素回収通路
181 酸素回収管
190 水素回収通路
191 導入口
192 導出口
193 水素取出管
【要約】
【課題】 冷気を使うことなく、容器内に導入される気体の冷却効率の向上を図ってエネルギー変換できるようにする。
【解決手段】 筒状の側壁及び下壁を有し内部に冷却用の液体(W)が入れられる容器(10)を備え、容器(10)の上側に気体を取り入れる上開口(20)を設け、容器(10)の下壁の中央に容器(10)の中心軸(P)を中心とした下開口21を設け、上記容器(10)の上側に、上開口(20)から気体を取り入れその一部若しくは全部を作動気体(G)として旋回させながら圧縮して降下させ内部の液体(W)を下開口(21)を開放したロート状の内表面を有した液体壁部(H)に形成して、作動気体(G)を下開口(21)から導出させるファン機構(40)を設け、容器(10)の中心軸(P)と同軸の軸線を有して下開口(21)に臨み導出する作動気体(G)により回転させられるタービン(T)を設け、このタービン(T)から動力を取り出す。
【選択図】
図1