(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上側が開放された空間部が備えられた第1ハウジング、及び前記第1ハウジングの上部に配置されて前記第1ハウジングの空間部を密閉し、下側が開放された空気収容部及び前記空気収容部に連通する通気孔が備えられた第2ハウジングを含むハウジング部と、
前記第1ハウジングの空間部に収容されたリチウム金属を含む第1電極部と、
前記第2ハウジングの空気収容部の下側に結合された多孔質空気極を含む第2電極部と、
前記第1ハウジングの空間部に備えられ、且つ前記第1電極部の上部に配置された電解質部と、を含み、
前記電解質部は、
前記リチウム金属の上側に備えられ、有機電解質を含有するセパレータと、前記セパレータの上側に備えられた固体電解質と、前記固体電解質の上側に備えられ、上下を貫通する収容孔が形成された収容体と、を含み、前記収容体が、固体電解質、セパレータ、及び第1電極部を前記空間部に密着させる、
リチウム空気電池。
前記第2電極部において、前記多孔質空気極が、気体拡散層(Gas Diffusion Layer;GDL)及び触媒層で構成される、請求項1に記載のリチウム空気電池。
前記ハウジング部は、前記第1ハウジングと第2ハウジングとの間に介装され、上下を貫通する固定孔が形成されていて前記固定孔に多孔質空気極が固定される第3ハウジングをさらに含む、請求項1に記載のリチウム空気電池。
【発明を実施するための形態】
【0025】
通常、リチウム空気電池は、様々な電気化学エネルギー貯蔵システムの中でも最も有望な技術として注目されており、充電後に最大300マイルまで走行できる長距離電気自動車の開発を可能とする。しかし、現在、リチウム空気電池は、制限された容量、短い寿命、及び耐久性などの問題により、実用化されていない。したがって、本発明の実施例によるリチウム空気電池1000は、充放電が容易であって、十分な容量、長い寿命、及び高い耐久性を有するリチウム空気電池1000を提供する。
【0026】
図1及び
図2は本発明の第1実施例によるリチウム空気電池1000の組み立て斜視図及び分解斜視図であり、
図3は
図1のA−A’方向の断面図である。
図示されたように、本発明の第1実施例によるリチウム空気電池1000は、おおまかに、ハウジング部100と、第1電極部200と、第2電極部300と、電解質部400と、で構成される。
【0027】
ハウジング部100は、第1ハウジング110と、第2ハウジング120と、を含む。第1ハウジング110は円盤状であって、その内部に空間部111が備えられる。この際、空間部111は、上側が開放されるように形成される。また、第2ハウジング120は円盤状に形成される。第2ハウジング120は、第1ハウジング110の上部に配置され、第1ハウジング110の空間部111が密閉されるように結合される。この際、第2ハウジング120には、下側に空気収容部122が形成されており、この空気収容部122に連通するように通気孔121が形成されている。この通気孔121を介して外部の空気を空気収容部122に流入させるか、空気収容部122から空気を排出させることができる。通気孔121は、一つまたは複数個を形成することができ、空気が空気収容部122に流入または空気収容部122から流出するように、様々な形態に形成することができる。
【0028】
また、第2ハウジング120の一側には、第1ハウジング110との結合のための第1固定部127が形成されており、第1結合部128が第1固定部127に挿入されることで、第2ハウジング120と第1ハウジング110とを結合することができる。本発明の第1実施例による第2ハウジング120の第1固定部127は貫通孔で構成され、第1結合部128はボルトで構成されており、第1ハウジング110には、第1固定部127に対応する位置に雌ねじで構成された結合孔112が形成される。第1結合部128が第1固定部127を貫通して結合孔112に結合されることで、第1ハウジング110と第2ハウジング120とを結合することができる。この際、第1ハウジング110と第2ハウジング120とは、ねじ結合の他にも、嵌合、溶接、またはリベット締めなど様々な形態で結合することができる。
【0029】
第1電極部200はリチウム金属210を含み、第1ハウジング110の空間部111にリチウム金属210が収容される。ここで、第1電極部200は、リチウムイオンを貯蔵及び放出することができるリチウム金属210を含み、バインダーをさらに含むことができる。リチウム金属210としては、例えば、リチウム金属、リチウム金属系の合金、またはリチウム挿入化合物(lithium intercalating compound)などが使用でき、水分などに対する耐久性を向上させるために、リチウム合金を用いることが好ましい。バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。バインダーの含量は、特に限定されるものではないが、例えば、30重量%以下であり、より具体的には、1〜10重量%とすることができる。
【0030】
第2電極部300は多孔質空気極310を含み、第2ハウジング120の下側に多孔質空気極310が結合される。この際、多孔質空気極310は第2ハウジング120の空気収容部122の開放された下側を密閉するように結合することができる。
【0031】
電解質部400は、第1ハウジング110の空間部111に備えられ、且つ第1電極部200の上部に配置される。すなわち、電解質部400は、第1電極部200と第2電極部300との間に備えられて、リチウムイオンが移動できるように構成される。
【0032】
これにより、リチウム金属210を含む第1電極部200が負極(アノード、anode)となり、多孔質空気極310を含む第2電極部300が正極(カソード、cathode)となって、第1電極部200と第2電極部300との間に電解質部400が備えられてリチウム空気電池が構成される。
【0033】
この際、第1ハウジング110の空間部111には水溶性電解質を収容することができる。
【0034】
これにより、本発明のリチウム空気電池は、電解質部400、第1電極部200及び第1ハウジング110の接触抵抗が減少して、リチウム空気電池の効率及び性能が向上されるだけでなく、リチウム空気電池の寿命が長くなる利点がある。
【0035】
また、前記第1電極部200は、前記リチウム金属210の下側に網状に備えられた集電体220を有することができる。
【0036】
第1ハウジング110の空間部111に収容されたリチウム金属210、電解質部400、及び第1ハウジング110が密着されるように、リチウム金属210の下側に集電体220を設けることができる。この際、集電体220が弾性のある網状に構成されることで、リチウム金属210と電解質部400とを反応に最も有利な状態で接触させることができる。すなわち、第1ハウジング110の空間部111に収容された集電体220、リチウム金属210、及び電解質部400が、第2ハウジング120の結合により密着されることで、接触抵抗をさらに減少させることができる。また、集電体220の材質として、銅、ステンレス、ニッケルなどを用いることができる。
【0037】
また、前記第2電極部300において、前記多孔質空気極310は、気体拡散層311(Gas Diffusion Layer;GDL)及び触媒層312で構成することができる。この際、第2電極部300は、第2ハウジング120の空気収容部122の開放された下側を密閉するように結合し、且つ上側に気体拡散層311が位置し、下側に触媒層312が位置するように結合することができる。これにより、空気収容部122に収容された空気が気体拡散層311を介して拡散され、触媒層312でリチウムイオンと空気中の酸素との酸化還元反応が起こるように構成される。
【0038】
すなわち、多孔質空気極310では活物質として酸素が用いられ、多孔質空気極310は、酸素及びリチウムイオンが移動できる空隙を有する導電性材料を含む。
【0039】
また、第1電極部200と同様に、第2電極部300はバインダーを含むことができ、酸素との酸化還元反応を促進する触媒層312を形成することができる。
【0040】
一例として、多孔質空気極310は、触媒、導電性材料、及びバインダーを混合した後、気体拡散層(またはカーボン紙)311上にプレス成形したり、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤に、触媒、導電性材料、バインダーを混合し溶解または分散させてスラリーを製造した後、これを気体拡散層311上にグラビアコーティング法、ブレードコーティング法、コンマコーティング法、ディップコーティング法などの方法により塗布し、次いで、有機溶剤を揮散させ、プレスしたりすることで形成することができる。
【0041】
導電性材料としては、例えば、炭素材料、金属繊維などの導電性繊維、銅、銀、ニッケル、アルミニウムなどの金属粉末、ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料を用いることができる。炭素材料としては、カーボンブラック、黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボン繊維などを用いることができ、選択的に、芳香族環化合物を含む合成樹脂、石油ピッチなどを焼成して得られたメソポーラスカーボンを用いることができる。
【0042】
また、前記電解質部400は、前記リチウム金属210の上側に備えられ、有機電解質を含有するセパレータ410と、前記セパレータ410の上側に備えられた固体電解質420と、を含むことができる。
【0043】
すなわち、第1電極部200のリチウム金属210の上側に、有機電解質を含有するセパレータ410が形成されており、その上側に固体電解質420が形成されて密着される。この際、固体電解質420と第2電極部300との間には、水溶性電解質を満たすことができる。
【0044】
これにより、リチウム空気電池の電気化学的特性及び充放電性能を向上させることができる。
【0045】
ここで、水溶性電解質としては、酢酸リチウム二水和物(Lithium Acetate dihydrate、C
2H
3LiO
2、Sigma-Aldrich)、塩化リチウム(Lithium Chloride、LiCl、Sigma-Aldrich)、水酸化リチウム(Lithium hydroxide、LiOH、Sigma-Aldrich)の塩を脱イオン水(D. I. Water)に溶解させたものを用いることができる。
【0046】
また、水溶性電解質の他に、イオン性液体(ionic liquid)が電解質として使用でき、下記化学式1で表される化合物及びこれらの混合物から選択することができる。
【0047】
[化学式1]
X
+Y
-
(前記化学式1中、
X
+は、イミダゾリウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、またはスルホニウムイオンであり、Y
-は、(CF
3SO
2)
2N
-、(FSO
2)SN
-、BF
4-、PF
6-、AlCl
4-、Halogen
-、CH
3CO
2-、CF
3CO
2-、CH
3SO
4-、CF
3SO
3-、(CF
3SO
2)N
-、NO
3-、SbF
6-、MePhSO
3-、(CF
3SO
2)
3C
-、または(R”)
2PO
2-(ここで、R”はC1−C5のアルキルである)である。)
【0048】
前記化学式1において、カチオン(X
+)は、次の表のように例示することができる。
【0050】
前記表中、R
1〜R
20及びRは、(C1−C20)アルキル、(C2−C20)アルケニル、または(C2−C20)アルキニルであり、前記アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、ヒドロキシ、アミノ、−SO
3H、−COOH、(C1−C5)アルキル、(C1−C5)アルコキシ、Si(R
21)(R
22)(R
23)(ここで、R
21、R
22、及びR
23は、互いに独立して、水素または(C1−C5)アルキル、(C1−C5)アルコキシである)から選択される1つ以上でさらに置換することができる。
【0051】
前記化学式1中、アニオン(Y
-)は、次の表のように例示することができる。
【0053】
イオン性液体電解質の一例としては、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−3−アリルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−メチル−3−アリルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−メチル−1−プロピルピロリジウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−アリルピロリジウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−プロピルピロリジウム(フルオロスルホニル)イミド、1−メチル−1−アリルピロリジウム(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムジブチルホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムジシアンアミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムハイドロジェンカーボネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムハイドロジェンサルフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラクロロアルミネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラクロロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−4−メチルピリジウムクロリド、1−ブチル−4−メチルピリジウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−4−メチルピリジウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリド、テトラヘプチルアンモニウムクロリド、テトラキス(デシル)アンモニウムブロミド、トリブチルメチルアンモニウムクロリド、テトラヘキシルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、トリイソブチルメチルホスホニウムトシレート1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−ブチル−1−メチルピロリジウムブロミド、1−ブチル−1−メチルピロリジウムテトラフルオロボレート、1−アリール−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−アリール−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムジブチルホスフェート、1−(3−シアノプロピル)−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、1,3−ジメチルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムエチルサルフェートなどが挙げられ、好ましくは、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアルミニウムクロリド、1−ブチル−4−メチルピリジウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジルジメチルテトラデシルアルミニウムクロリド、トリブチルメチルアルミニウムクロリド、テトラブチルホスフィニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−1−メチルピロリジウムクロリド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラクロロアルミネート、1−ブチル−4−メチルピリジウムクロリド、1−ブチル−4−メチルピリジウムテトラフルオロボレートなどが挙げられる。
【0054】
水溶性電解質は、高いイオン伝導度及び優れた電気特性を示す粘度を有するために、下記化学式2または3で表されるカチオンを含むことが好ましい。
【0057】
(前記化学式2及び3中、
R
1〜R
4は、(C1−C20)アルキル、(C2−C20)アルケニル、または(C2−C20)アルキニルであり、前記アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、ヒドロキシ、アミノ、−SO
3H、−COOH、(C1−C5)アルキル、(C1−C5)アルコキシ、Si(R
21)(R
22)(R
23)(ここで、R
21、R
22、及びR
23は、互いに独立して、水素または(C1−C5)アルキル、(C1−C5)アルコキシである)から選択される1つ以上でさらに置換することができる。)
【0058】
より好ましくは、イオン性液体電解質は、下記構造から選択される1つ以上の化合物を含むことができる。
【0060】
水溶性電解質は、LiPF
6、LiTFSI(Lithium bis(fluorosulfonly)imide)、LiBF
4、LiClO
4、LiSbF
6、LiAsF
6、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(SO
3C
2F
5)
2、LiCF
3SO
3、LiC
4F
9SO
3、LiC
6H
5SO
3、LiSCN、LiAlO
2、LiAlCl
4、LiN(C
xF
2x+1SO
2)(C
yF
2y+1SO
2)(ここで、x及びyは自然数)、LiCl、LiI、及びLiB(C
2O
4)
2からなる群から選択される1つ以上のリチウム塩を含むことができる。生成されたLi
2O
2が多孔質空気極の表面で連続的な反応を阻害せず、イオン伝導度を増加させるという点で、リチウム塩は0.025〜1モルの濃度で存在することができる。
【0061】
また、セパレータ410に含有される有機電解質は、非水系電解質であって、水を含有しない有機溶媒を用いることができる。非水系有機溶媒としては、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、有機硫黄(organosulfur)系溶媒、有機リン(organophosphorus)系溶媒、または非プロトン性溶媒が使用できる。
【0062】
カーボネート系溶媒としは、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ブチレンカーボネート(BC)などが使用でき、エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ−ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)、などが使用できる。
【0063】
エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランが使用でき、ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどが使用できる。
【0064】
また、有機硫黄系及び有機リン系溶媒としては、メタンスルホニルクロリド(methanesulfonyl chloride)及びp−トリクロロ−n−ジクロロホスホリルモノホスファゼン(p-Trichloro-n-dichlorophosphorylmonophosphazene)などが使用でき、非プロトン性溶媒としては、R’CN(ここで、R’は、炭素数2〜20の直鎖状、分枝状、または環状の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3−ジオキソランなどのジオキソランのようなスルホラン(sulfolane)類などが使用できる。
【0065】
非水系有機溶媒は、単独でまたは2つ以上を混合して用いることができる。2つ以上を混合して用いる場合の混合比率は、目的とする電池性能に応じて適切に調節することができ、これは当業者が理解できる範囲である。
【0066】
この際、非水系有機溶媒はリチウム塩を含むことができる。リチウム塩は、有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源として作用することができ、例えば、負極とリチウムイオン伝導性固体電解質420との間におけるリチウムイオンの移動を促進する役割をすることができる。
【0067】
リチウム塩は、水溶性電解質に含まれたリチウム塩と同一でも異なっていてもよく、LiPF
6、LiTFSI(Lithium bis(fluorosulfonly)imide)、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6、LiN(SO
2C
2F
5)
2、Li(CF
3SO
2)
2N、LiC
4F
9SO
3、LiClO
4、LiAlO
2、LiAlCl
4、LiN(C
xF
2x+1SO
2)(C
yF
2y+1SO
2)(ここで、x及びyは自然数)、LiF、LiBr、LiCl、LiI、及びLiB(C
2O
4)
2(リチウムビスオキサレートボレート(Lithium bis(oxalate)borate;LiBOB)からなる群から選択される1つまたは2つ以上が使用できる。
【0068】
リチウム塩の濃度は、0.1〜2.0モルの範囲とすることができる。リチウム塩の濃度が前記範囲内である場合、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するため、優れた電解質性能を示すとともに、リチウムイオンが効果的に移動することができる。非水系有機溶媒は、リチウム塩以外にも、他の金属塩をさらに含むことができ、例えば、AlCl
3、MgCl
2、NaCl、KCl、NaBr、KBr、CaCl
2などが挙げられる。
【0069】
固体電解質420は、リチウムイオン伝導性固体電解質膜を意味するものであって、水溶性電解質中に含まれた水が、負極に含まれたリチウムと直接的に反応しないように保護する保護膜の役割をすることができる。このようなリチウムイオン伝導性固体電解質420としては、例えば、リチウムイオン伝導性ガラス、リチウムイオン伝導性結晶(セラミックまたはガラス−セラミック)、またはこれらの混合物を含有する無機物質などが挙げられる。
【0070】
また、本発明の第1実施例によるリチウム空気電池1000は、前記固体電解質420の上側に備えられ、上下を貫通する収容孔431が形成された収容体430をさらに含み、前記収容体430は、固体電解質420、セパレータ410、及び第1電極部200を前記空間部111に密着させることができる。
【0071】
すなわち、
図3のように、収容体430は、第2ハウジング120により上側の縁部分が押されることになり、この収容体430により、固体電解質420、セパレータ410、及び第1電極部200を空間部111の底面に密着固定することができる。この際、収容体430の中央部には、上下を貫通するように収容孔431が形成されており、水溶性電解質が収容孔431を介して固体電解質420と接触して、イオンが移動されるように構成される。
【0072】
また、前記電解質部400は、前記第1電極部200が空間部111に収容されて密封されるようにする第1密閉部440をさらに含むことができる。
【0073】
電解質部400の縁部に第1密閉部440が配置された後、第1ハウジング110と第2ハウジング120とが結合されることで、第1電極部200が電解質部400及び第1密閉部440により空間部111内に密封されるように構成される。すなわち、水溶性電解質が第1電極部200に流入しないようにして、リチウム金属210の腐食を防止することで、リチウム空気電池の性能及び寿命を向上させることができる。
【0074】
この際、図示されたように、電解質部400の固体電解質420の下側縁部及び収容体430の上側縁部に、それぞれO−リング(O-ring)の第1密閉部440を形成することで、第1電極部200を空間部111内に密封する密封性を向上させることができる。また、有機電解質を含有するセパレータ410も、固体電解質420及び第1密閉部440により密封することができる。
【0075】
また、
図4のように、収容体430が、内側に収容孔431を有する板状に形成され、収容体430の上側及び下側に第1密閉部440が備えられて密着することで、密封性を向上させることができる。すなわち、空間部111に満たされる水溶性電解質がハウジング部100の外部に漏れることを防止することができるため、リチウム空気電池の性能をさらに向上させることができる。
【0076】
この際、第1密閉部440がハウジング部100の結合により密着することで、第1電極部200、セパレータ410、及び固体電解質420が空間部111の底面に密着し、収容体430も、固体電解質420の上面から所定間隔で離間した状態で密着させることができる。
【0077】
また、収容体430なしに、固体電解質420の上側及び下側に第1密閉部440が備えられて密着するように結合することで、水溶性電解質の漏れを防止するように構成してもよい。
【0078】
また、前記ハウジング部100は、前記第1ハウジング110と第2ハウジング120との間に介装され、上下を貫通する固定孔131が形成されていて前記固定孔131に多孔質空気極310が固定される第3ハウジング130をさらに含むことができる。
【0079】
図2及び
図3のように、第1ハウジング110と第2ハウジング120との間に第3ハウジング130が介装されて密着する。この際、第1ハウジング110の空間部111に第1電極部200及び電解質部400が収容された後、第3ハウジング130を上側で結合することで、電解質部400、第1電極部200が第1ハウジング110の空間部111の底面に密着するように結合することができる。第1ハウジング110と第3ハウジング130とは、ボルトで構成された第2結合部133と、第1ハウジング110に雌ねじ山で構成された結合孔112と、によりねじ結合することができる。第3ハウジング130には、第2結合部133が貫通するように、貫通孔で構成された第2固定部132が形成されている。ここで、第2固定部132は上側が傾斜するように形成され、第2結合部133は皿ボルトで構成されて、第2結合部133の上側頭部が第3ハウジング130の上面より上側に突出しないように構成される。これにより、第3ハウジング130の上側に第2ハウジング120を容易に密着結合することができる。
【0080】
次に、第3ハウジング130の上側に第2ハウジング120が密着結合される。第3ハウジング130には貫通孔134が形成されていて、第1固定部127及び貫通孔134に第1結合部128を貫通して第1ハウジング110の結合孔112にねじ結合させることができる。
【0081】
この際、第3ハウジング130には固定孔131が形成されており、固定孔131の上側縁部と第2ハウジング120との間に第2電極部300の縁部が密着して固定される。この際、固定孔131の上側縁部は、図示されたように傾斜して形成されてもよく、段差が形成されて、その段差に第2電極部300の縁部が載置されて固定されてもよい。また、固定孔131には水溶性電解質が収容されて、第1電極部200と第2電極部300との間にイオンが移動できるように構成される。
【0082】
これにより、第1ハウジング110、第2ハウジング120、及び第3ハウジング130が強固に密着して結合されることで、第1電極部200及び電解質部400の密封性が向上するとともに、第2電極部300の結合及び固定が容易になる利点がある。
【0083】
また、本発明の第1実施例によるリチウム空気電池1000は、ハウジング部100が第1ハウジング110、第2ハウジング120及び第3ハウジング130で構成されるため、上部が開放されて空間部が広く形成された従来のリチウム空気電池に比べ、優れた密封性を有し、耐久性が向上される利点がある。
【0084】
また、電解質部400の下側に備えられた第1密閉部440は第1ハウジング110の空間部111の内部に収容され、第1ハウジング110には、固体電解質420の形状に対応する正方形状の空間部111を形成することができる。この際、固体電解質420の下側に備えられた第1密閉部440の密封性を向上させるためには、第1密閉部440の直径が、集電体220、リチウム金属210、及びセパレータ410が積層された厚さより大きいかまたは同一であることが好ましく、接触抵抗を減少させるためには、第1密閉部440の直径が、集電体220、リチウム金属210、及びセパレータ410が積層された厚さより小さいことが好ましい。
【0085】
また、第1ハウジング110の内部に形成された空間部111は、正方形だけでなく、長方形、円形、楕円形などの様々な形状を有することができる。
【0086】
図5及び
図6は本発明の第2実施例によるリチウム空気電池1000の組み立て斜視図及び分解斜視図であり、
図7は
図5のB−B’方向の断面図である。
【0087】
図示されたように、本発明の第2実施例によるリチウム空気電池1000は、第2ハウジング120に挿入孔123が形成されており、前記挿入孔123に挿入される測定手段500を含む。
【0088】
ここで、測定手段500は、リチウム空気電池1000の内部に備えられた水溶性電解質の水素イオン指数(pH)、リチウムイオン伝導度、溶存酸素濃度などを測定する。この際、測定手段500は挿入孔123に挿入されており、図示されたように、挿入された測定手段500の端部は、第2電極部300を貫通して固定孔131の内側または空間部111に位置するように固定することができる。また、第2電極部300を貫通せず、第3ハウジング130の側面に挿入孔を形成して、測定手段500が挿入されるようにしてもよい。
【0089】
また、前記測定手段500は、ガラス封止型プローブとすることができる。測定手段500をガラス封止型プローブで形成することで、水溶性電解質による測定手段500の腐食及びリチウム空気電池の性能低下を防止することができる。ここで、ガラス封止型プローブは、ガラス棒にセンサを設け、その外側をガラスで封止させた形態であり、ガラス封止型プローブの外側に、センシングのための電極部が露出するように形成することができる。
【0090】
また、前記第2ハウジング120は、上側に突出形成された突出部124を含み、前記突出部124に前記挿入孔123が形成される。
【0091】
第2ハウジング120に突出部124が形成され、突出部124に挿入孔123が形成されることで、測定手段500を挿入孔123の内側に挿入して支持することができる。これにより、測定手段500を第2ハウジング120に強固に結合及び固定することができる。
【0092】
また、前記第2ハウジング120は、前記突出部124に結合される支持部125と、前記突出部124と支持部125との間に備えられた第2密閉部126と、を含む。
【0093】
すなわち、第2ハウジング120の突出部124に形成された挿入孔123に測定手段500を挿入した後、支持部125を突出部124に結合することで、測定手段500をさらに強固に支持することができる。また、第2密閉部126を突出部124と支持部125との間に介装した後、密着して結合することで、その隙間を介してガスや電解液などが漏れることを防止することができる。これにより、測定の信頼度を向上し、リチウム空気電池の耐久性を向上させることができる。
【0094】
図8から
図11は本発明の第1実施例によるリチウム空気電池1000のサイクル特性を実験した結果を示したグラフである。グラフに示した結果を得るために、0.25mA/cm
2の一定の電流が流れる条件の下で充電及び放電を行い、充電及び放電のそれぞれのサイクルを24分、充電及び放電が行われない時間を10分と設定した。
【0095】
また、第2電極部300に白金(Platinum)層を付加することができ、
図7及び
図8は、白金層中の白金の重量百分率がそれぞれ10wt%、40wt%であるリチウム空気電池1000に対して実験を行う際に、20回の充放電サイクルが終了した時の結果を示したグラフである。また、
図9及び
図10は、白金層中の白金の重量百分率がそれぞれ10wt%、40wt%であるリチウム空気電池1000に対して実験を行う際に、200回の充放電サイクルが終了した時の結果を示したグラフである。
【0096】
上述の条件で本発明の第1実施例によるリチウム空気電池1000に対して実験を行った結果、
図8から11に図示したように、前記リチウム空気電池1000は、複数回の充放電サイクルの間に安定して充放電されることが分かった。したがって、
図8から
図11を参照すれば、本発明の一実施例によるリチウム空気電池1000は、安定的で且つ優れた充放電性能を有することが分かる。
【0097】
また、
図12から
図16は、下記表に記載の実験例1〜5の充放電実験結果を示したグラフである。
【0099】
本発明のリチウム空気電池は、前記表及び
図12〜
図16に示したように、従来の水系電解質に代えてイオン性液体を用いることで、イオン性液体化合物の疎水性官能基が水分の浸透を抑えて、サイクル特性が非常に向上することが分かる。
【0100】
さらに、従来は、負極としてリチウム金属を用いる場合、水分の影響によって数十サイクル以上の寿命を確保することが困難であったが、本発明のリチウム空気電池は、水分の浸透が根本的に遮断される構造を有するため、大気雰囲気で100サイクル以上の優れたサイクル特性を確保することができ、放電エネルギー保持率(discharge energy retention rate)も80%以上であって、非常に高いことが分かる。
【0101】
また、本発明のリチウム空気電池は、電気的な短絡(short circuit)が防止される。さらに、通常の半電池(Half-cell)は、最小4時間〜12時間の安定化時間が要求されるのに対し、本発明のリチウム空気電池は30分〜1時間の短い安定化時間を有する。
【0102】
また、本発明のリチウム空気電池は、イオン性液体、特に、FSIやTFSIのアニオンを有するイオン性液体を水溶性電解質として採用することで、リチウムとの分解反応による劣化を減少させることができるため、優れた充放電特性を示す。
【0103】
本発明は上記の実施例に限定されず、適用範囲が多様であることは勿論であり、特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を外れることなく、本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば誰でも多様な変形実施が可能である。