特許第6042998号(P6042998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6042998光学ユニットおよびこの光学ユニットを備えた内視鏡
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042998
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】光学ユニットおよびこの光学ユニットを備えた内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   A61B1/00 300Y
   A61B1/00 300P
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-552665(P2015-552665)
(86)(22)【出願日】2015年5月12日
(86)【国際出願番号】JP2015063611
(87)【国際公開番号】WO2015174406
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2015年10月22日
(31)【優先権主張番号】特願2014-101649(P2014-101649)
(32)【優先日】2014年5月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】西原 輝幸
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−263064(JP,A)
【文献】 特開2008−079881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/32
G02B 23/24 − 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物光学系を保持する筒状のレンズ保持枠と、
前記レンズ保持枠が内挿して嵌合し、前記対物光学系によって結像される被写体像を検出する受光部を有した撮像素子を保持する筒状の撮像素子保持枠と、
前記対物光学系による前記被写体像の結像面と前記受光部とを一致させた嵌合位置で前記レンズ保持枠と前記撮像素子保持枠を固定する、前記レンズ保持枠と前記撮像素子保持枠との嵌合部に設けられ、光軸に対して垂直な同一平面上であって、前記撮像素子保持枠の外周部に形成された溶接部及び非溶接部と、
前記レンズ保持枠と前記撮像素子保持枠との間に形成される隙間を埋める接合材と、
を具備することを特徴とする光学ユニット。
【請求項2】
前記撮像素子保持枠の外周部に形成された溶接部は1箇所であることを特徴とした請求項1記載の光学ユニット。
【請求項3】
前記溶接部は、前記受光部における像高の低い位置と対向した延長線上の位置に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光学ユニット。
【請求項4】
前記レンズ保持枠は、前記対物光学系を保持する孔部を有し、前記レンズ保持枠における前記嵌合部の外径中心と前記孔部の内径中心とが所定の距離離間しており、前記対物光学系が前記レンズ保持枠における前記嵌合部の外径に対して所定の偏芯方向に偏芯するように保持されており、
前記溶接部は、前記レンズ保持枠における前記偏芯方向とは反対方向に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光学ユニット。
【請求項5】
前記撮像素子保持枠は、前記撮像素子保持枠における前記嵌合部の内径中心が前記受光部の所定の結像中心位置に対して所定の第1の方向に所定の距離離間しており、
前記溶接部は、前記撮像素子保持枠における前記第1の方向とは反対方向に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光学ユニット。
【請求項6】
前記レンズ保持枠の前記嵌合部に第1の平面部が形成され、前記撮像素子保持枠の前記嵌合部に前記第1の平面部に当接して面接触する第2の平面部が形成され、
前記溶接部は、前記第1の平面部と前記第2の平面部が面接触した位置に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光学ユニット。
【請求項7】
前記レンズ保持枠は、前記対物光学系を保持する孔部を有し、前記レンズ保持枠における前記嵌合部の外径中心と前記孔部の内径中心とが所定の距離離間しており、前記対物光学系が前記レンズ保持枠における前記嵌合部の外径に対して所定の偏芯方向に偏芯するように保持されており、
前記溶接部は、複数の前記溶接部のうち前記レンズ保持枠における前記偏芯方向とは反対方向に位置する溶接部を初めに溶接して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光学ユニット。
【請求項8】
前記撮像素子保持枠は、前記撮像素子保持枠における前記嵌合部の内径中心が前記受光部の所定の結像中心位置に対して所定の第1の方向に所定の距離離間しており、
前記溶接部は、複数の前記溶接部のうち前記撮像素子保持枠における前記第1の方向とは反対方向に位置する溶接部を初めに溶接して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光学ユニット。
【請求項9】
前記レンズ保持枠の前記嵌合部に第1の平面部が形成され、前記撮像素子保持枠の前記嵌合部に前記第1の平面部に当接して面接触する第2の平面部が形成され、
前記溶接部は、複数の前記溶接部のうち前記第1の平面部と前記第2の平面部が面接触した位置を初めに溶接して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光学ユニット。
【請求項10】
前記請求項2に記載の光学ユニットを具備することを特徴とする内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に用いられ、レンズ枠と素子枠が嵌合固定される光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
生体の体内や構造物の内部などの観察が困難な箇所を観察するために、生体や構造物の外部から内部に導入可能であって、光学像を撮像するための撮像ユニットなどの光学ユニットを具備した内視鏡が、例えば医療分野または工業分野において利用されている。
【0003】
内視鏡の撮像ユニットなどの光学ユニットは、被写体像を結像する対物レンズと、対物レンズの結像面に配設された一般にCCD(電荷結合素子)、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサなどの撮像素子を具備している。
【0004】
このような光学ユニットは、例えば、日本国特開2002−238837号公報に開示されるような撮像ユニットが知られており、一般的にレンズ枠と素子枠が互いに嵌合されて、熱硬化型の接着剤またはハンダなどのろう接による接合材によって接着固定される。
【0005】
しかしながら、従来の光学ユニットでは、レンズ枠および素子枠をレンズの焦点位置に撮像素子の受光部と一致させて嵌合して固定するときに、接合材の硬化処理時に発生する接合材を含むレンズ枠および素子枠の膨張収縮などによって、レンズ枠および素子枠の所定の嵌合位置がずれて固定されてしまい所望の光学性能が得られないという問題があった。
【0006】
また、特に、内視鏡のような医療機器においては、使用前後に高温高圧滅菌消毒(オートクレーブ処理)が行われる。このときに、内視鏡が高温下に晒されることで、光学ユニットも高温となり、レンズ枠および素子枠を接着固定する接合材が軟化して、レンズ枠および素子枠の所定の嵌合位置がずれてしまう虞があるという問題があった。
【0007】
近年の内視鏡では、撮影する内視鏡画像の高画素化および挿入性を向上させるために挿入部の細径化が進んでおり、撮像ユニットに高解像度の撮像素子を備えたものが用いられたり、小型なものが用いられたりしているため、レンズ枠と素子枠との嵌合位置のずれが微小であっても、光学性能の適合品質を満足しなかったり、その光学性能の劣化を招いてしまったりするという課題が新たに生じている。
【0008】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、製造時および高温高圧滅菌消毒時などの高温環境下でも、レンズ枠および素子枠が所定の嵌合位置でずれることなく固定された状態を維持して、光学性能の適合品質を満足させ、その光学性能の劣化を防止した光学ユニットおよびこの光学ユニットを備えた内視鏡を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の光学ユニットは、対物光学系を保持する筒状のレンズ保持枠と、前記レンズ保持枠が内挿して嵌合し、前記対物光学系によって結像される被写体像を検出する受光部を有した撮像素子を保持する筒状の撮像素子保持枠と、前記対物光学系による前記被写体像の結像面と前記受光部とを一致させた嵌合位置で前記レンズ保持枠と前記撮像素子保持枠を固定する、前記レンズ保持枠と前記撮像素子保持枠との嵌合部に設けられ、光軸に対して垂直な同一平面上であって、前記撮像素子保持枠の外周部に形成された溶接部及び非溶接部と、前記レンズ保持枠と前記撮像素子保持枠との間に形成される隙間を埋める接合材と、を具備する。
【0011】
本発明の一態様の内視鏡は、対物光学系を保持する筒状のレンズ保持枠と、前記レンズ保持枠が内挿して嵌合し、前記対物光学系によって結像される被写体像を検出する受光部を有した撮像素子を保持する筒状の撮像素子保持枠と、前記対物光学系による前記被写体像の結像面と前記受光部とを一致させた嵌合位置で前記レンズ保持枠と前記撮像素子保持枠を固定する、前記レンズ保持枠と前記撮像素子保持枠との嵌合部に設けられ、光軸に対して垂直な同一平面上であって、前記撮像素子保持枠の外周部に形成された溶接部及び非溶接部と、前記レンズ保持枠と前記撮像素子保持枠との間に形成される隙間を埋める接合材と、を備えた光学ユニットを具備する。
【0013】
以上に記載の本発明によれば、製造時および高温高圧滅菌消毒時などの高温環境下でも、レンズ枠および素子枠が所定の嵌合位置でずれることなく固定された状態を維持して、光学性能の適合品質を満足させ、その光学性能の劣化を防止した光学ユニットおよびこの光学ユニットを備えた内視鏡を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態に係る内視鏡の構成を示す図
図2】同、撮像ユニットの構成を示す断面図
図3】同、図2のIII−III線に沿った光学ユニットの構成を示す断面図
図4】同、レンズユニットと撮像素子ユニットの嵌合される前の状態を示す断面図
図5】同、レンズユニットと撮像素子ユニットが嵌合されて溶接部によって固定された状態を示す断面図
図6】同、レンズユニットと撮像素子ユニットが接合材により固定された状態を示す断面図
図7】同、第1の変形例の光学ユニットの構成を示す横断面図
図8】同、第2の変形例の光学ユニットの構成を示す横断面図
図9】同、第3の変形例の光学ユニットの構成を示す横断面図
図10】同、第4の変形例の光学ユニットの構成を示す縦断面図
図11】同、第1の参考例の光学ユニットの構成を示す縦断面図
図12】同、第2の参考例の光学ユニットの構成を示す縦断面図
図13】同、第3の参考例の光学ユニットの構成を示す縦断面図
図14】同、第4の参考例の光学ユニットの構成を示す縦断面図
図15】同、第5の参考例の光学ユニットの構成を示す縦断面図
図16】第2の実施の形態に係るレンズユニットと撮像素子ユニットが嵌合された状態の光学ユニットの構成を示す横断面図
図17】同、レンズユニットと撮像素子ユニットが嵌合されて固定された状態の光学ユニットの構成を示す横断面図
図18】同、第1の変形例のレンズユニットと撮像素子ユニットが嵌合されて固定された状態の光学ユニットの構成を示す横断面図
図19】同、第2の変形例のレンズユニットと撮像素子ユニットの嵌合される前の状態を示す断面図
図20】同、レンズユニットと撮像素子ユニットが嵌合された状態の光学ユニットの構成を示す横断面図
図21】同、レンズユニットと撮像素子ユニットが嵌合されて固定された状態の光学ユニットの構成を示す横断面図
図22】同、第3の変形例のレンズユニットと撮像素子ユニットが嵌合されて固定された状態の光学ユニットの構成を示す横断面図
図23】第3の実施の形態に係るレンズユニットと撮像素子ユニットが嵌合されて固定された状態の光学ユニットの構成を示す横断面図
図24】同、変形例のレンズユニットと撮像素子ユニットが嵌合されて固定された状態の光学ユニットの構成を示す横断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、および各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。また、以下の説明においては、図の紙面に向かって見た上下方向を構成要素の上部および下部として説明している場合がある。
【0016】
(第1の実施の形態)
先ず、本発明の第1の実施の形態の光学ユニットおよび内視鏡について、図面に基づいて、以下に説明する。
【0017】
なお、図1は、内視鏡の構成を示す図、図2は光学ユニットの構成を示す断面図、図3図2のIII−III線に沿った光学ユニットの構成を示す断面図、図4はレンズユニットと撮像素子ユニットの嵌合される前の状態を示す断面図、図5はレンズユニットと撮像素子ユニットが嵌合されて溶接部によって固定された状態を示す断面図、図6はレンズユニットと撮像素子ユニットが接合材により固定された状態を示す断面図、図7は第1の変形例の光学ユニットの構成を示す横断面図、図8は第2の変形例の光学ユニットの構成を示す横断面図、図9は第3の変形例の光学ユニットの構成を示す横断面図、図10は第4の変形例の光学ユニットの構成を示す縦断面図、図11は第1の参考例の光学ユニットの構成を示す縦断面図、図12は第2の参考例の光学ユニットの構成を示す縦断面図、図13は第3の参考例の光学ユニットの構成を示す縦断面図、図14は第4の参考例の光学ユニットの構成を示す縦断面図、図15は第5の参考例の光学ユニットの構成を示す縦断面図である。
【0018】
以下に、本発明の実施形態の一例を説明する。先ず、図1を参照して、本発明に係る光学ユニットとしての撮像ユニット1を具備する内視鏡101の構成の一例を説明する。
【0019】
本実施形態の内視鏡101は、人体などの被検体内に導入可能であって被検体内の所定の観察部位を光学的に撮像する構成を有する。
【0020】
なお、内視鏡101が導入される被検体は、人体に限らず、他の生体であっても良いし、機械、建造物などの人工物であっても良い。
【0021】
内視鏡101は、被検体の内部に導入される挿入部102と、この挿入部102の基端に位置する操作部103と、この操作部103の側部から延出する複合ケーブルとしてのユニバーサルコード104とで主に構成されている。
【0022】
挿入部102は、先端に配設される先端部110、この先端部110の基端側に配設される湾曲自在な湾曲部109およびこの湾曲部109の基端側に配設され操作部103の先端側に接続される可撓性を有する可撓管部108が連設されて構成されている。
【0023】
なお、内視鏡101は、挿入部102に可撓性を有する部位を具備しない、所謂硬性鏡と称される形態のものであってもよい。
【0024】
詳しくは後述するが、先端部110には、撮像ユニット1が設けられている。また、操作部103には、湾曲部109の湾曲を操作するためのアングル操作ノブ106が設けられている。
【0025】
ユニバーサルコード104の基端部には、外部装置120に接続される内視鏡コネクタ105が設けられている。内視鏡コネクタ105が接続される外部装置120は、モニタなどの画像表示部121にケーブルを介して接続されている。
【0026】
また、内視鏡101は、ユニバーサルコード104、操作部103および挿入部102内に挿通された電気ケーブル115および外部装置120に設けられた光源部からの照明光を伝送する光ファイバ束(不図示)を有している。
【0027】
電気ケーブル115は、内視鏡コネクタ105と撮像ユニット1とを電気的に接続するように構成されている。内視鏡コネクタ105が外部装置120に接続されることによって、撮像ユニット1は、電気ケーブル115を介して外部装置120に電気的に接続される。
【0028】
この電気ケーブル115を介して、外部装置120から撮像ユニット1への電力の供給および外部装置120と撮像ユニット1との間の通信が行われる。
【0029】
外部装置120には、画像処理部が設けられている。この画像処理部は、撮像ユニット1から出力された撮像素子出力信号に基づいて映像信号を生成し、画像表示部121に出力する。即ち、本実施形態では、撮像ユニット1により撮像された光学像(内視鏡像)が、映像として画像表示部121に表示される。
【0030】
なお、内視鏡101は、外部装置120または画像表示部121に接続する構成に限定されず、例えば、画像処理部またはモニタの一部または全部を有する構成であっても良い。
【0031】
また、光ファイバ束は、外部装置120の光源部から発せられた光を、先端部110の照明光出射部としての照明窓まで伝送するように構成されている。さらに、光源部は、内視鏡101の操作部103または先端部110に配設される構成であってもよい。
【0032】
次に、先端部110に設けられる光学ユニットとしての撮像ユニット1の構成を説明する。
以下においては、被写体像の撮影光軸Oに沿って撮像ユニット1から被写体へ向かう方向(各図において左方)を先端、前方または物体側と称し、その反対の方向を基端、後方または像側と称する場合がある。
【0033】
本実施の形態の光学ユニットである撮像ユニット1は、図2に示すように、前方となる物体側から順に、レンズユニット10および撮像素子ユニット20を有している。
【0034】
レンズユニット10は、レンズ枠としての筒状のレンズ保持枠11と、このレンズ保持枠11によって保持された対物光学系としての複数の対物レンズ群13と、を有している。
【0035】
撮像素子ユニット20は、素子枠としての筒状の撮像素子保持枠12と、透明なガラス板などの光学部材14およびカバーガラス22と、撮像素子21と、を有している。
【0036】
撮像素子ユニット20の光学部材14には、撮像素子21の受光部21aを保護する透明なカバー体としてのカバーガラス22が光学接着剤などによって貼着されている。そして、撮像素子保持枠12に光学部材14が嵌合され固着されている。即ち、撮像素子ユニット20は、先端側の撮像素子保持枠12が、基端側の撮像素子21を、光学部材14およびカバーガラス22を介して保持している。
【0037】
撮像素子21は、ここでは矩形状の受光部21aが実装される撮像基板部が、FPCなどの電子基板部24を介して電気ケーブル115と接続されている。なお、電子基板部24には、複数の電子部品25が実装されている。
【0038】
撮像素子21は、入射される撮影光軸Oで示す光に応じた電気信号を所定のタイミングで出力する複数の素子が面状の受光部に配列されたものであり、例えば一般にCCD(電荷結合素子)、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサなどと称される形式、あるいはその他の各種の形式が適用されている。
【0039】
また、レンズユニット10のレンズ保持枠11の嵌合部の外周と、撮像素子ユニット20の撮像素子保持枠12の嵌合部の内周と、は嵌合されて固着されている。
【0040】
これにより、撮像素子21は、レンズユニット10の対物レンズ群13の結像面に、上述の受光部21aが位置するように配設される。
【0041】
なお、撮像ユニット1には、撮像素子保持枠12の外枠部分に先端部分が固着されて外装を形成し、内部の水密保持するための熱収縮チューブ15が設けられている。
【0042】
そして、撮像ユニット1は、熱収縮チューブ15内に撮像素子21、電子基板部24などを覆う接着剤などの充填剤26が充填されて内部が水密保持される。
【0043】
ここで、本実施の形態の光学ユニットとしての撮像ユニット1における、レンズユニット10と撮像素子ユニット20の嵌合固定について、以下に詳しく説明する。
【0044】
図2および図3に示すように、撮像ユニット1は、レンズユニット10のレンズ保持枠11の嵌合部が、撮像素子ユニット20の撮像素子保持枠12の嵌合部に内挿するように嵌合されている。このとき、レンズ保持枠11の嵌合部の外周および撮像素子保持枠12の嵌合部の内周の中心が一致するように嵌合される。
【0045】
なお、レンズ保持枠11の嵌合部の外周および撮像素子保持枠12の嵌合部の内周の中心は、レンズ保持枠11で保持する対物レンズ群13に通過する被写体像の撮影光軸Oと一致している。
【0046】
そして、レンズ保持枠11および撮像素子保持枠12の嵌合部は、互いが嵌合された状態で、ここでは1箇所の溶接部30によって接合されると共に、互いが重なった部分の微小な隙間を埋めるように接着剤などの接合材31が充填されて気密(水密)保持された状態で固着されている。
【0047】
その製造過程について説明すると、レンズユニット10および撮像素子ユニット20は、図4に示すように、互いが離別した状態から、レンズ保持枠11が撮像素子保持枠12の内部に嵌挿される。
【0048】
このとき、レンズ保持枠11は、撮像素子保持枠12に対して撮影光軸Oに沿った長手方向に沿って物体側および像側の前後に移動され、対物レンズ群13による撮影光軸Oの光の結像面が撮像素子保持枠12に保持された撮像素子21の受光部21aと一致する所定の位置となるように撮像素子保持枠12に対する所定の嵌合位置が調整される。
【0049】
即ち、レンズユニット10および撮像素子ユニット20は、撮像素子21の受光部21aに配列される素子群によって検出する対物レンズ群13が集光した被写体像を所定の光学性能とする合焦位置、所謂ピントが合った被写体像が得られる位置となるように、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12との長手方向の所定の嵌合位置が調整される。
【0050】
そして、レンズユニット10および撮像素子ユニット20は、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12との嵌合部の嵌合位置がずれないように図示しない治具などで固定され、例えば、外方側の撮像素子保持枠12の外周中途部に、図5に示すように、例えばレーザ光線の照射によるレーザ溶接によって互いが溶接された溶接部30が形成されて、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12とが動かないように固定される。
【0051】
次に、レンズユニット10および撮像素子ユニット20は、図6に示すように、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12の嵌合部に生じる微小な隙間を埋めるように、例えば、熱硬化型の接着剤である接合材31が充填される。なお、接合材31は、撮像素子保持枠12の嵌合部の物体側の端面に沿って塗布されることで、所謂毛細管現象により、微小な隙間内に浸入する。
【0052】
そして、レンズユニット10および撮像素子ユニット20は、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12の嵌合部の隙間に充填された接合材31を硬化する熱硬化処理が行われる。
【0053】
このように、撮像ユニット1は、レンズユニット10のレンズ保持枠11と撮像素子ユニット20の撮像素子保持枠12の嵌合位置が溶接部30によって固定されると共に、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12の重なった隙間に充填硬化された接合材31によって気密(水密)に固着された構成となっている。
【0054】
即ち、撮像ユニット1は、レンズユニット10および撮像素子ユニット20が溶接部30によって、対物レンズ群13の焦点位置と撮像素子21の受光部21aとが一致する所定の光学性能を満足する位置で強固に固定され、接合材31によって気密(水密)に接合された構成となっている。
【0055】
以上のように構成された撮像ユニット1は、製造時において、レンズユニット10および撮像素子ユニット20を気密(水密)に接合する接合材31を熱硬化処理するとき、および内視鏡101を高温高圧滅菌処理(オートクレーブ処理)するときに、接合材31、レンズ保持枠11および撮像素子保持枠12が膨張収縮などしても、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12が溶接部30によって強固に固定されているため、レンズユニット10および撮像素子ユニット20のずれが防止される。
【0056】
したがって、撮像ユニット1は、製造時および高温高圧滅菌消毒時などの高温環境下でも、レンズユニット10および撮像素子ユニット20の所定の嵌合位置がずれることなく固定された状態を維持して、所定の光学性能の適合品質を満足できると共に、その光学性能の劣化も防止することができる。
【0057】
なお、レンズユニット10のレンズ保持枠11および撮像素子ユニット20の撮像素子保持枠12がずれないよう固定する溶接部30は、レーザ溶接に限定されることなく、超音波溶接、スポット溶接など各種溶接方法を適用してもよい。
【0058】
さらに、撮像ユニット1は、レンズ保持枠11および撮像素子保持枠12を固定するための溶接部30が撮像素子21の受光部21aの像高の低い位置、即ち、ここでは受光部21aが矩形状であるため、この受光部21aのいずれかの辺の中心に対向する位置の延長線上に形成することが好ましい。
【0059】
これは、溶接部30を形成するときに生じる熱、圧力などによって、レンズ保持枠11に設けられた対物レンズ群13が変形などして光の屈折率に影響を及ぼす可能性があり、その影響によって内視鏡画像が歪んでしまう場合があるためである。
【0060】
即ち、撮像ユニット1は、受光部21aの像高の高い位置、ここでは矩形状の受光部21aの対角線方向の延長線上に溶接部30が形成されると、溶接部30を形成する溶接時に、この溶接部30に近接し対向する対物レンズ群13の一部が変形すると、その変形部分の光の屈折によって歪んだ被写体像が受光部21aに結像される可能性がある。
【0061】
そのため、撮像ユニット1は、レンズ保持枠11および撮像素子保持枠12を固定するための溶接部30が撮像素子21の受光部21aの像高の低い位置に対向する延長線上に形成されることで、その部分の対物レンズ群13が変形などしても、受光部21aに結像される範囲の被写体像の歪みの影響を極力低減することができる。
【0062】
さらに、撮像ユニット1は、製造時において、レンズユニット10のレンズ保持枠11の嵌合部の基端外周部または撮像素子ユニット20の撮像素子保持枠12の嵌合部の先端内周部に接合材31を予め塗布した後、それらレンズ保持枠11と撮像素子ユニット20とが嵌合されて溶接部30が形成され、最後に接合材31の熱硬化処理が行われてもよい。
【0063】
(変形例)
なお、撮像ユニット1は、以下に説明する種々の変形例の構成としてもよい。
【0064】
(第1の変形例)
本変形例の撮像ユニット1では、図7に示すように、レンズユニット10のレンズ保持枠11の嵌合部と撮像素子ユニット20の撮像素子保持枠12の嵌合部とに溶接により形成される溶接部30a,30bが、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12の嵌合部の中心(撮影光軸Oが通過する点)点対称の位置に2つ形成されている。
【0065】
ここでも、撮像ユニット1は、レンズ保持枠11および撮像素子保持枠12を固定するための2つの溶接部30a,30bが、撮像素子21の受光部21aの像高の低い位置と対向する延長線上の位置に形成される。
【0066】
なお、レンズユニット10と撮像素子ユニット20は、2つの溶接部30a,30bが同時に形成することで、レンズ保持枠11の嵌合部の外径中心と撮像素子保持枠12の嵌合部の内径中心がずれることなく、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12を固定することができる、
このように構成された撮像ユニット1は、2つの溶接部30a,30bを形成することで、レンズユニット10と撮像素子ユニット20が対物レンズ群13の焦点位置と撮像素子21の受光部21aとが一致する所定の光学性能を満足する位置でより強固に固定された構成となる。
【0067】
(第2の変形例)
本変形例の撮像ユニット1は、図8に示すように、レンズ保持枠11および撮像素子保持枠12を固定するための4つの溶接部30a〜30dが、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12の嵌合部の中心回りに等間隔に形成されている。
【0068】
なお、2つの溶接部30a,30bは、第1の変形例と同様に、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12の嵌合部の中心点対称の位置に形成されている。
【0069】
また、2つの溶接部30c,30dは、他の2つの溶接部30a,30bに対して、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12の嵌合部の中心回りに90度回転した位置であって、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12の嵌合部の中心点対称の位置に形成されている。
【0070】
そして、4つの溶接部30a〜30dは、ここでもレンズ保持枠11および撮像素子保持枠12を固定するための2つの溶接部30が撮像素子21の受光部21aの像高の低い位置と対向する延長線上の位置に形成されている。
【0071】
このように構成された撮像ユニット1は、4つの溶接部30a〜30dを形成することで、レンズユニット10と撮像素子ユニット20が対物レンズ群13の焦点位置と撮像素子21の受光部21aとが一致する所定の光学性能を満足する位置でさらに強固に固定された構成となる。
【0072】
(第3の変形例)
本変形例の撮像ユニット1は、図9に示すように、複数、ここで12個の溶接部30a〜30jによって、レンズ保持枠11および撮像素子保持枠12が固定されてもよい。
【0073】
これら、複数の溶接部30a〜30jは、偶数個によってレンズ保持枠11と撮像素子保持枠12の嵌合部の中心回りに等間隔に形成されていることが好ましい。
【0074】
なお、溶接部30a〜と溶接部30bは、それらの2つが対となって、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12の嵌合部の中心点対称の位置に対向配置するように形成される。
【0075】
(第4の変形例)
本変形例の撮像ユニット1は、図10に示すように、レンズ保持枠11および撮像素子保持枠12を固定する溶接部30が、撮像素子保持枠12の嵌合部の先端であり撮像素子保持枠12の先端面一部の縁部(エッジ部)に形成されている。
【0076】
このように構成された撮像ユニット1は、溶接部30を撮像素子保持枠12の嵌合部の中途部分に形成していないため、接合材31がレンズ保持枠11と撮像素子保持枠12が重なった部分の隙間に満遍なく充填し易く、より確実にレンズユニット10と撮像素子ユニット20を気密(水密)に接合することができる。
【0077】
(参考例)
撮像ユニット1は、以上に記載した各変形例の他、以下に説明する種々の参考例の構成としてもよい。
【0078】
(第1の参考例)
図11に示すように、撮像ユニット1は、レンズユニット10と撮像素子ユニット20を気密(水密)に接合する接合材31が、撮像素子保持枠12の嵌合部の先端面一部の縁部(エッジ部)に塗布されて硬化された構成としてもよい。
【0079】
(第2の参考例)
図12に示すように、撮像ユニット1は、レンズユニット10と撮像素子ユニット20を気密(水密)に接合する接合材31としての余分な接着剤などが流れ込む接合材溜(接着溜)として機能する凹部状の周溝12aが撮像素子保持枠12の内周部に形成された構成としてもよい。
【0080】
なお、本参考例においては、周溝12aを、撮像素子保持枠12の嵌合部より基端側の内周部に設けているが、これに限らず、撮像素子保持枠12の嵌合部の内周部に形成してもよい。
【0081】
(第3の参考例)
図13に示すように、撮像ユニット1は、レンズユニット10と撮像素子ユニット20を気密(水密)に接合する接合材31としての余分な接着剤などが流れ込む接合材溜(接着溜)として機能する凹部状の周溝11aがレンズ保持枠11の外周部に形成された構成としてもよい。
【0082】
なお、本参考例においては、周溝11aを、レンズ保持枠11の嵌合部の外周部に設けているが、これに限らず、レンズ保持枠11の嵌合部より基端側の外周部に形成してもよい。
【0083】
(第4の参考例)
図14に示すように、撮像ユニット1は、撮像素子ユニット20の撮像素子保持枠12の嵌合部より先端側であり撮像素子枠の先端をテーパ面12bに形成して、レンズユニット10と撮像素子ユニット20を気密(水密)に接合する接合材31がテーパ面12bによって形成された撮像素子保持枠12の先端部分にも充填されて撮像素子ユニット20の先端全周を覆うようにして、より気密(水密)性を高めた構成としてもよい。さらに、撮像素子保持枠12の先端面をテーパ面12bとすることで、接合材31の充填作業も行い易くなる。
【0084】
(第5の参考例)
図15に示すように、撮像ユニット1は、レンズユニット10のレンズ保持枠11の嵌合部よりも先端側にフランジ部11bを設けて、このフランジ部11bの基端面をテーパ面11cに形成して、レンズユニット10と撮像素子ユニット20を気密(水密)に接合する接合材31がテーパ面12bと撮像素子保持枠12の先端面との間にも充填されて撮像素子ユニット20の先端全周を覆うようにして、より気密(水密)性を高めた構成としてもよい。ここでも、レンズ保持枠11のフランジ部11bの基端面をテーパ面11cとすることで、接合材31の充填作業も行い易くなる。
【0085】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態の光学ユニットおよび内視鏡について、図面に基づいて、以下に説明する。
【0086】
なお、以下の説明において、上述した第1の実施の形態に記載した同一の構成要素について、同じ符号を用いて、それら構成要素の詳細な説明を省略する。
【0087】
また、図16は、レンズユニットと撮像素子ユニットが嵌合された状態の光学ユニットの構成を示す横断面図、図17はレンズユニットと撮像素子ユニットが嵌合されて固定された状態の光学ユニットの構成を示す横断面図、図18は第1の変形例のレンズユニットと撮像素子ユニットが嵌合されて固定された状態の光学ユニットの構成を示す横断面図、図19は第2の変形例のレンズユニットと撮像素子ユニットの嵌合される前の状態を示す断面図、図20はレンズユニットと撮像素子ユニットが嵌合された状態の光学ユニットの構成を示す横断面図、図21はレンズユニットと撮像素子ユニットが嵌合されて固定された状態の光学ユニットの構成を示す横断面図、図22は第3の変形例のレンズユニットと撮像素子ユニットが嵌合されて固定された状態の光学ユニットの構成を示す横断面図である。
【0088】
ところで、撮像ユニット1は、レンズユニット10のレンズ保持枠11および撮像素子ユニット20の撮像素子保持枠12を嵌合して溶接部30を形成するとき、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12との嵌合部には非常に若干ではあるが隙間がある場合があり、また溶接部30が凝固時に収縮するため、レンズユニット10のレンズ保持枠11の嵌合部の外径中心と、撮像素子ユニット20の撮像素子保持枠12の嵌合部の内径中心と、が偏芯し、ずれてしまい、撮影光軸Oと直交する方向において、撮像素子ユニット20に対してレンズユニット10が所定の位置からずれて固定されてしまう場合がある。
【0089】
このように、レンズユニット10のレンズ保持枠11の嵌合部が撮像素子ユニット20の撮像素子保持枠12の嵌合部に対して偏芯してしまうと、撮影光軸Oと直交する方向において、撮像素子ユニット20に対して、レンズユニット10のレンズ保持枠11で保持する対物レンズ群13の中心が所定の位置からずれてしまう。これにより、被写体像の撮影光軸Oは、撮像素子ユニット20の撮像素子保持枠12に設けられた撮像素子21の受光部21aの所定の結像中心位置、ここでは受光部21aの中心からずれてしまい、所定の光学性能の適合品質が得られない虞がある。
【0090】
そこで、本実施の形態の撮像ユニット1は、図16に示すように、レンズユニット10の筒状のレンズ保持枠11の嵌合部の外径中心O1と、レンズ保持枠11の対物レンズ群13を保持するレンズ保持孔の内径中心O2とが所定の距離h1にずれた構成となっている。なお、レンズ保持枠11の内径中心O2は、保持する対物レンズ群13の中心、即ち、被写体像の撮影光軸Oと一致している。
【0091】
そのため、レンズ保持枠11は、嵌合部の外周面に対してレンズ保持孔の内周面が所定の距離h1にずれて、それぞれの中心が偏芯した構成となっている。即ち、レンズユニット10は、レンズ保持枠11の嵌合部の外径中心O1に対して、レンズ保持枠11の対物レンズ群13を保持するレンズ保持孔の内径中心O2が所定の距離h1だけ所定の方向に偏芯した構成となっている。
【0092】
そのため、レンズ保持枠11は、所定の厚さd1を有する最少肉厚部18となり、この最少肉厚部18に対して点対称の位置が所定の厚さd1よりも厚い所定の厚さd2(d1<d2)を有する最大肉厚部19となっている。
【0093】
なお、所定の距離h1は、レンズユニット10が撮像素子ユニット20に挿嵌された状態において、レンズ保持枠11の嵌合部の外周面と撮像素子保持枠12の嵌合部の内周面との間で周方向に形成される微小な隙間としてのクリアランスC1と略同一の距離(h1≒C1)に設定されている。
【0094】
以上のように構成された撮像ユニット1は、レンズユニット10が撮像素子ユニット20に挿嵌された後、図17に示すように、レンズ保持枠11の嵌合部の最大肉厚部19側となる撮像素子保持枠12の嵌合部の外周中途部に溶接部30が形成されて、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12とが動かないように固定される。
【0095】
このとき、レンズ保持枠11は、溶接部30を形成する過程において、溶接部30が凝固時に収縮してレンズ保持枠11の嵌合部の最大肉厚部19が撮像素子保持枠12の嵌合部の内周面側、即ち、嵌合部の外径中心O1に対するレンズ保持孔の内径中心O2の偏芯方向とは反対側の方向に引き寄せられて、最大肉厚部19の外周面と撮像素子保持枠12の嵌合部の内周面が当接した状態となって、溶接部30により撮像素子保持枠12に固定される。
【0096】
そして、レンズユニット10および撮像素子ユニット20は、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12との嵌合部に生じた隙間を埋めるように接合材31が充填されて熱硬化処理が行われて気密(水密)に固着される。
【0097】
こうして、レンズユニット10および撮像素子ユニット20は、接合された状態においてレンズ保持枠11のレンズ保持孔の内径中心O2が撮像素子保持枠12の嵌合部の内径中心と一致した状態で接合される。
【0098】
これにより、撮像ユニット1は、レンズ保持枠11が保持する対物レンズ群13の中心が撮像素子保持枠12の嵌合部の内径中心と一致するため、被写体像の撮影光軸Oが撮像素子保持枠12に保持された撮像素子21の受光部21aの所定の結像中心位置、ここでは受光部21aの中心に入射する構成となる。
【0099】
なお、最大肉厚部19の所定の厚さd2は、最少肉厚部18の所定の厚さd1とクリアランスC1の2倍との和(d2=d1+2C1)となっている。
【0100】
以上に説明したように、撮像ユニット1は、レンズユニット10および撮像素子ユニット20を溶接部30によって固定するときに、溶接部30を形成する方向へレンズユニット10が移動することを前提として、被写体像の撮影光軸Oが撮像素子21の受光部21aの所定の結像中心位置、ここでは受光部21aの中心に入射するように、レンズ保持枠11の嵌合部の外径中心O1とレンズ保持孔の内径中心O2とを予めずらして偏芯させた構成とすることで、所定の光学性能の適合品質を満足する構成となる。
【0101】
なお、レンズユニット10には、撮像素子ユニット20の撮像素子保持枠12の嵌合部の外周部側から溶接部30を形成する位置、即ち、レンズ保持枠11の嵌合部の最大肉厚部19の位置を容易に識別するための指標部を設けるとよい。この指標部は、レンズ保持枠11の撮像素子保持枠12と重ならない位置に、最大肉厚部19の位置を示す、例えば、切り欠き、平面部またはメッキ、蒸着、塗装などによるマーカを設けた部分的表面処理によって形成すればよい。
【0102】
(第1の変形例)
本変形例の撮像ユニット1は、図18に示すように、レンズユニット10が撮像素子ユニット20に挿嵌された後、先ず、レンズ保持枠11の嵌合部の最大肉厚部19側となる撮像素子保持枠12の嵌合部の外周中途部に上述の溶接部30(図18では符号なし)が形成されて、その後、撮像素子保持枠12の嵌合部の外周回り全体を連続的に溶接した溶接部35を形成してもよい。
【0103】
なお、レンズユニット10と撮像素子ユニット20は、初めにレンズ保持枠11の嵌合部の最大肉厚部19側の撮像素子保持枠12の嵌合部の外周中途部が溶接部30によって固定されることで、その後に、撮像素子保持枠12の嵌合部の外周回り全体を連続的に溶接して溶接部35を形成しても、レンズユニット10および撮像素子ユニット20がずれることなく、レンズ保持枠11のレンズ保持孔の内径中心O2が撮像素子保持枠12の嵌合部の内径中心と一致した状態で固定される。
【0104】
このように構成された撮像ユニット1は、上述の効果に加え、レンズユニット10と撮像素子ユニット20との間に形成された隙間が溶接部35によって埋められるため、この隙間に接合材31を設けなくともレンズユニット10と撮像素子ユニット20が気密(水密)に固着される。
【0105】
(第2の変形例)
本変形例の撮像ユニット1は、図19に示すように、撮像素子保持枠12筒状部の中心O3と撮像素子21の受光部21aの中心O4が所定の距離h2ずれた構成となっている。
【0106】
なお、所定の距離h2は、レンズユニット10が撮像素子ユニット20に挿嵌された状態において、レンズ保持枠11の外周面と撮像素子保持枠12筒状部の内周面との間で周方向に形成される微小な隙間としてのクリアランスC1と略同一の距離(h2≒C1)に設定されている。
【0107】
以上のように構成された本変形例の撮像ユニット1は、図20に示すように、レンズユニット10が撮像素子ユニット20に挿嵌された後、図21に示すように、溶接部30が形成されて、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12とが動かないように固定される。
【0108】
このとき、レンズ保持枠11は、溶接部30を形成する過程において、溶接部30が凝固時に収縮して撮像素子保持枠12筒状部の内周面側に引き寄せられて、その外周面と撮像素子保持枠12筒状部の内周面が当接した状態となって、溶接部30により撮像素子保持枠12に固定される。
【0109】
そして、レンズユニット10および撮像素子ユニット20は、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12筒状部の重なった部分に生じた隙間を埋めるように接合材31が充填されて熱硬化処理が行われて気密(水密)に固着される。
【0110】
こうして、レンズユニット10および撮像素子ユニット20は、接合された状態においてレンズ保持枠11の内径中心O2が撮像素子21の受光部21aの中心O4と一致した状態で接合される。
【0111】
以上に説明したように、撮像ユニット1は、レンズユニット10および撮像素子ユニット20を溶接部30によって固定するときに、溶接部30を形成する方向へレンズユニット10が移動することを前提として、被写体像の撮影光軸Oが撮像素子21の受光部21aの中心に入射するように、撮像素子保持枠12筒状部の中心O3と撮像素子21の受光部21aの中心O4とを予めずらして偏芯させた構成とすることで、所定の光学性能の適合品質を満足する構成となる。
【0112】
なお、レンズユニット10には、撮像素子ユニット20の撮像素子保持枠12筒状部の外周部側から溶接部30を形成する位置を容易に識別するための指標部を設けるとよい。この指標部は、撮像素子保持枠12の外周部に、撮像素子21の受光部21aの偏芯方向の位置を示す、例えば、切り欠き、平面部またはメッキ、蒸着、塗装などによるマーカを設けた部分的表面処理によって形成すればよい。
【0113】
(第3の変形例)
本変形例の撮像ユニット1は、図22に示すように、レンズユニット10が撮像素子ユニット20に挿嵌された後、先ず、撮像素子保持枠12筒状部の外周中途部に上述の溶接部30が形成されて、その後、撮像素子保持枠12筒状部の外周回り全体を連続的に溶接した溶接部35を形成してもよい。
【0114】
なお、レンズユニット10と撮像素子ユニット20は、撮像素子保持枠12筒状部の外周中途部が溶接部30によって固定されることで、その後に、撮像素子保持枠12筒状部の外周回り全体を連続的に溶接して溶接部35を形成しても、レンズユニット10および撮像素子ユニット20がずれることなく、レンズ保持枠11の内径中心O2が撮像素子保持枠12の中心と一致した状態で固定される。
【0115】
このように構成された撮像ユニット1は、上述の効果に加え、レンズユニット10と撮像素子ユニット20との間に形成された隙間が溶接部35によって埋められるため、この隙間に接合材31を設けなくともレンズユニット10と撮像素子ユニット20が気密(水密)に固着される。
【0116】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態の光学ユニットおよび内視鏡について、図面に基づいて、以下に説明する。
【0117】
なお、以下の説明において、上述した第1の実施の形態および第2の実施の形態に記載した同一の構成要素について、同じ符号を用いて、それら構成要素の詳細な説明を省略する。
【0118】
また、図23は、レンズユニットと撮像素子ユニットが嵌合されて固定された状態の光学ユニットの構成を示す横断面図、図24は変形例のレンズユニットと撮像素子ユニットが嵌合されて固定された状態の光学ユニットの構成を示す横断面図である。
【0119】
本実施の形態の撮像ユニット1は、図23に示すように、レンズユニット10のレンズ保持枠11の嵌合部の外周一部に平面部16が形成され、この平面部16に当接して面接触する平面部17が撮像素子ユニット20の撮像素子保持枠12の嵌合部の内周一部に形成されている。
【0120】
そして、レンズ保持枠11の平面部16と撮像素子保持枠12の平面部17とが当接して面接触した状態において、レンズ保持枠11の嵌合部の外径中心と撮像素子保持枠12の嵌合部の内径中心が一致した状態となっている。
【0121】
また、撮像ユニット1は、レンズ保持枠11の平面部16と撮像素子保持枠12の平面部17が当接して面接触した部分に溶接部30が形成されて、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12とが動かないように固定され、レンズ保持枠11と撮像素子保持枠12との嵌合部に生じた隙間を埋めるように接合材31が充填されて熱硬化処理が行われて気密(水密)に固着されている。
【0122】
以上の構成された撮像ユニット1は、レンズユニット10のレンズ保持枠11と撮像素子ユニット20の撮像素子保持枠12のそれぞれの嵌合部に形成された平面部16,17が当接して面接触した部分に溶接部30を形成するときに、溶接部30が凝固時に収縮しても、撮像素子ユニット20に対するレンズユニット10が動かないため、レンズ保持枠11の嵌合部の外径中心が撮像素子保持枠12の嵌合部の内径中心と一致した状態からずれることなく固定される。
【0123】
これにより、撮像ユニット1は、レンズ保持枠11が保持する対物レンズ群13の中心も撮像素子保持枠12の嵌合部の内径中心と一致するため、被写体像の撮影光軸Oが撮像素子保持枠12に保持された撮像素子21の受光部21aの所定の結像中心位置、ここでは受光部21aの中心に入射する構成となる。
【0124】
(変形例)
本変形例の撮像ユニット1は、図24に示すように、先ず、レンズ保持枠11の平面部16と撮像素子保持枠12の平面部17が当接して面接触した部分に上述の溶接部30(図24では符号なし)が形成されて、その後、撮像素子保持枠12の嵌合部の外周回り全体を連続的に溶接した溶接部35を形成してもよい。
【0125】
このように構成された撮像ユニット1は、上述の効果に加え、第2の実施の形態の変形例と同様に、レンズユニット10と撮像素子ユニット20との嵌合部の間に形成された隙間が溶接部35によって埋められるため、この隙間に接合材31を設けなくともレンズユニット10と撮像素子ユニット20が気密(水密)に固着される。
【0126】
以上の各実施の形態に記載した発明は、それら実施の形態および変形例に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記各実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0127】
例えば、各実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【0128】
本出願は、2014年5月15日に日本国に出願された特願2014−101649号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の内容は、本願明細書、請求の範囲、および図面に引用されたものである。
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