特許第6043013号(P6043013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6043013
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】運搬装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/14 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   A01G9/14 W
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-155498(P2016-155498)
(22)【出願日】2016年8月8日
【審査請求日】2016年8月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503421667
【氏名又は名称】株式会社 匠
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100189854
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 明美
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】川田 幸典
【審査官】 木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭47−041081(JP,Y1)
【文献】 登録実用新案第3047141(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3066338(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3163113(JP,U)
【文献】 特開2004−097166(JP,A)
【文献】 特開2001−333646(JP,A)
【文献】 特開昭61−037609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場において台車が走行可能な搬送レールを備える運搬装置であって、
前記搬送レールは、複数のレール部材と、前記複数のレール部材を左右方向に所定間隔離間させて平行に接続する複数の横杆部材と、を備え、
前記複数の横杆部材は、前記複数のレール部材の下方で交差するように連結され、
前記台車は、複数のレール部材に対応して左右方向に複数箇所で支持されて前記搬送レール上を走行可能となっており、
前記搬送レールは、前記複数の横杆部材の左右端部を吊支部材により吊支されることで、圃場に形成される畝部の延伸方向に沿って設けられる構造体の下方吊支されることを特徴とする運搬装置。
【請求項2】
前記吊支部材における前記搬送レールと前記構造体との高さ方向の距離を調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の運搬装置。
【請求項3】
前記搬送レールは、前記吊支部材により前記構造体に対して近接する方向に相対移動可能に吊支されていることを特徴とする請求項1または2に記載の運搬装置。
【請求項4】
前記構造体に対する前記吊支部材の取り付け位置を左右方向に変更可能であることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の運搬装置。
【請求項5】
前記レール部材は、断面視円環状を成し、
前記台車は、前記複数のレール部材をそれぞれ左右から挟む複数の走行ローラを備えることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の運搬装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場において農作物等を運搬するための運搬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物の栽培が行われる圃場においては、地表面の土を細長く直線状に盛り上げることにより畝部が複数形成され、該畝部に沿って農作物が植え付けられる。また、並行する畝部間に形成される谷部は、作業者が通行する作業通路等として利用される。尚、圃場においては、農作物の栽培面積(畝部の面積)をより大きく確保するために、谷部の幅は狭く形成されている。
【0003】
従来、圃場における農作物等の運搬は、農作物等を積載した運搬機や手押し式の台車等を作業通路としての谷部において走行させることにより行われており、このとき、運搬機や手押し式の台車等は、谷部の底を構成する地表面を走行することになる。しかしながら、例えば、運搬機や手押し式の台車等が地表面の起伏を乗り越える際には上下方向の振動が生じ、散水機等により水が撒かれた場合には谷部の底に水が溜まってぬかるみができるため、運搬機や手押し式の台車等を地表面で安定して走行させることは困難であった。
【0004】
このような作業通路としての谷部において運搬機や手押し式の台車等を安定して走行させるために、特許文献1に示されるような運搬装置が考案されている。特許文献1に示される収穫作物用運搬車(運搬装置)は、谷部に敷設されるパイプレール(搬送レール)と、該パイプレール上を走行可能な運搬車(台車)と、から主に構成されている。パイプレールは、平行する2本のレール部材が幅方向に連結されており、運搬車はこの2本のレール部材にそれぞれ左右のプーリーを支持させて走行可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案公報第3047141号(第7頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にあっては、運搬車を左右方向に安定して走行させるために谷部の地表面に平行な2本のレール部材を有するパイプレールを敷設しているため、パイプレール敷設用の幅を谷部に広く確保しなければならず、圃場における農作物の栽培面積(畝部の面積)が減少してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、台車を安定して走行可能としながら、圃場における農作物の栽培面積への影響を抑えた運搬装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の運搬装置は、
圃場において台車が走行可能な搬送レールを備える運搬装置であって、
前記搬送レールは、複数のレール部材と、前記複数のレール部材を左右方向に所定間隔離間させて平行に接続する複数の横杆部材と、を備え、
前記複数の横杆部材は、前記複数のレール部材の下方で交差するように連結され、
前記台車は、複数のレール部材に対応して左右方向に複数箇所で支持されて前記搬送レール上を走行可能となっており、
前記搬送レールは、前記複数の横杆部材の左右端部を吊支部材により吊支されることで、圃場に形成される畝部の延伸方向に沿って設けられる構造体の下方吊支されることを特徴としている。
この特徴によれば、台車が構造体に吊支される搬送レールにおける複数のレール部材に左右方向に複数箇所で支持されることから、地表面の状態に関わらず安定的に走行可能であるとともに、搬送レールを畝部の上方に吊支することで、圃場における農作物の栽培面積への影響を抑えることができる。また、搬送レールの構造強度が高められるとともに、横杆部材を吊支する吊支部材が搬送レールにおける台車の走行を邪魔しない。
【0010】
前記吊支部材における前記搬送レールと前記構造体との高さ方向の距離を調整可能であることを特徴としている。
この特徴によれば、圃場の環境に合わせて搬送レールの高さ位置を調整することができる。
【0011】
前記搬送レールは、前記吊支部材により前記構造体に対して近接する方向に相対移動可能に吊支されていることを特徴としている。
この特徴によれば、搬送レールが構造体に対して近接する方向に固定的に支持されていないため、搬送レール及び吊支部材に作用する予期しない力を分散させることができる。
【0012】
前記構造体に対する前記吊支部材の取り付け位置を左右方向に変更可能であることを特徴としている。
この特徴によれば、吊支部材の構造体に対する取り付け位置を左右方向に変更することにより、圃場において搬送レールを左右方向に移動させることができるため、搬送レールを複数設置する必要がなく、設置コストを抑えることができる。
【0013】
前記レール部材は、断面視円環状を成し、
前記台車は、前記複数のレール部材をそれぞれ左右から挟む複数の走行ローラを備えることを特徴としている。
この特徴によれば、搬送レール上に台車を設置する際に、レール部材の周面に走行ローラを左右から常時接触させることができるため、台車の荷重が走行ローラを介して複数のレール部材に預けられることにより、搬送レール上において台車を安定して走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1における運搬装置をビニールハウス内に設置した状態を示す正面図である。
図2】実施例1における搬送レール及び搬送台車の構造を示す斜視図である。
図3】実施例1における運搬装置の構造を示す正面視の断面図である。
図4】実施例1における運搬装置の構造を示す側面視の断面図である。
図5】(a)は、搬送レール上に設置された搬送台車の走行ローラと管状レールとの接触状態を示す正面図であり、(b)は、同じく側面図である。
図6】実施例1における運搬装置を左右方向へ移動させた状態を示す正面模式図である。
図7】実施例2における運搬装置を露地に設置した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る運搬装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0016】
実施例1に係る運搬装置につき、図1から図6を参照して説明する。以下、図1の紙面正面側及び図4の紙面右側を運搬装置の正面側(前方側)とし、これらの前方側から見たときの上下左右方向を基準として説明する。
【0017】
図1に示されるように、本実施例に係る運搬装置1は、圃場に設けられるビニールハウス10の室内において、ビニールハウス10の長手方向に沿って地表面の土を直線状に盛り上げて形成された複数の畝部11A,11B,11Cの上方に設置されている。
【0018】
ビニールハウス10は、左右に立設する一対の支柱10a,10aと、該支柱10a,10aの上端を左右方向に連結する補強杆10b(構造体)と、該補強杆10bの上方で支柱10a,10aの上端をアーチ状に連結する天井杆10cと、から構成されるフレームユニットから主に構成され、該フレームユニットは、ビニールハウス10の長手方向に沿って所定間隔置きに複数立設され、フレームユニット同士は、側部杆10d,10dによりそれぞれ連結されている(説明の便宜上、図1においては、1つのフレームユニットのみ図示する)。尚、ビニールハウス10は、その長手方向に亘って複数のフレームユニットと側部杆10d,10d,…とから構成される図示しない矩形枠を塞ぐように、合成樹脂製のシート材により覆われている。
【0019】
図1及び図2に示されるように、運搬装置1は、ビニールハウス10の補強杆10bに対して左右方向へ移動可能に取り付けられる移動装置2と、該移動装置2の下方に設けられる後述する連結部材22の左右両端部に取り付けられる鎖状部材4,4(吊支部材)と、該鎖状部材4,4の下端に吊支される搬送レール5と、該搬送レール5の長手方向に沿って走行可能な搬送台車6(台車)と、から主に構成されている。
【0020】
図3に示されるように、移動装置2は、ビニールハウス10の補強杆10bに左右方向に所定間隔離間して取り付けられる左右一対のガイド部材21,21と、補強杆10bの長手方向に沿って延び、ガイド部材21,21の下端部を連結する連結部材22と、ガイド部材21,21の側方に設けられる規制部材23,23と、から主に構成されている。尚、ガイド部材21,21及び規制部材23,23は、同一構成であるため、それぞれ右側に設けられるガイド部材21及び規制部材23について説明する。
【0021】
図4に示されるように、ガイド部材21は、断面視下向き略コ字状を成し、内壁側の上方にガイドローラ21a,21a,21aが設けられている。ガイドローラ21a,21a,21aは、前後方向(補強杆10bの延伸方向と直交する方向)に軸支されている。また、ガイド部材21は、ビニールハウス10の補強杆10bを上方から跨ぐように取り付けられる。このとき、ガイドローラ21a,21a,21aは、補強杆10bの上面10e上に載置されている。これによれば、ガイド部材21に設けられるガイドローラ21a,21a,21aが補強杆10bの上面10e上を左右方向に転がることにより、移動装置2全体が補強杆10bに沿って左右方向に滑らかに移動できるようになっている。
【0022】
また、ガイド部材21には、下方から断面視上向き略コ字状のカバー部材25が外嵌されている。ガイド部材21とカバー部材25は、前後からそれぞれボルト26,26により一体に連結されることでビニールハウス10の補強杆10bが周方向に囲繞されるため、移動装置2が補強杆10bから容易に外れないようになっている。
【0023】
図3に示されるように、規制部材23は、ガイド部材21の側部に沿って立ち上がる起立片23aと、該起立片23aの下端から水平方向に延びる規制片23bと、該規制片23bをそれぞれ前後から挟むように取り付けられる一対のガイド片23c,23c(図1参照)と、から主に構成されている。また、規制部材23は、起立片23aを介してガイド部材21の側部(右方側)に固定されており、ガイド部材21と同様にビニールハウス10の補強杆10bを上方から跨ぐようにして取り付けられる。このとき、規制片23bは、補強杆10bの上面10e上に配置され、ガイド片23c,23cは、補強杆10bの前後面に沿ってそれぞれ配置されている。これによれば、規制部材23は、補強杆10bに対して前後方向へ相対移動しないようになっている。
【0024】
また、規制片23bには、上下方向に貫通する貫通孔23dが設けられている。また、ここでは左右にそれぞれ上下に2箇所のみ図示しているが、補強杆10bには、上下方向に貫通する貫通孔10f,10f,…が長手方向に亘って複数設けられており、規制片23bに設けられる貫通孔23dと、補強杆10bに設けられる複数の貫通孔10f,10f,…から選択した貫通孔10f,10fとが上下方向に一列に揃った状態で、上方から規制ボルト24を挿通させることで移動装置2全体を補強杆10bに対して所望の位置(例えば、図1に示されるように、畝部11Bの上方の位置)に固定できる。
【0025】
図3及び図4に示されるように、連結部材22は、断面視倒立略L字状を成し、左右方向に延びてカバー部材25,25の下面と連結されている。また、連結部材22の左右両端部には、前後方向に貫通する貫通孔22a,22aが設けられ、着脱部材3,3が挿通されている。
【0026】
着脱部材3,3は、略L字状のフックであり、その自由端が鎖状部材4を構成する複数の環形状の鎖素子に挿通可能となっている。これによれば、着脱部材3,3を介して鎖状部材4,4を連結部材22の左右両端部にそれぞれ取り付けることができる。尚、本実施例においては、鎖状部材4を構成する複数の鎖素子の内、着脱部材3に挿通される鎖素子を上端鎖素子4aとして説明する。
【0027】
図2及び図3に示されるように、鎖状部材4,4の下端部に相当する下端鎖素子4b,4bには、下端にボルト41,41の胴部41bの先端が溶接により固定されている。また、搬送レール5を構成する後述する横杆部材51の上板51aの左右両端部には、左右方向に延びるスリット51b,51bが形成されている。尚、横杆部材51のスリット51b,51bの幅寸法は、ボルト41,41の胴部41b,41bの径よりも大きく、かつボルト41,41の頭部41a,41aの径よりも小さくなるように形成されている。
【0028】
これによれば、横杆部材51の内部にボルト41,41の頭部41a,41aが配置されるようにスリット51b,51bにボルト41,41の胴部41b,41bをそれぞれ挿入した状態で、ボルト41,41の胴部41b,41bに予め挿通されたナット42,42とボルト41,41の頭部41a,41aとで横杆部材51の上板51aを上下から挟み込んで固定することができる。すなわち、鎖状部材4,4によって横杆部材51を移動装置2に対して吊支させることができる。
【0029】
また、連結部材22と横杆部材51は、左右方向に略同一寸法に形成され、連結部材22の左右両端部に設けられる貫通孔22a,22aと、横杆部材51の左右両端部に設けられるスリット51b,51bの左右中央側の端部は上下方向に一列に揃うように形成位置が調整されている。そのため、連結部材22と横杆部材51との間に鎖状部材4,4が略鉛直に配置され、運搬装置1の左右方向の寸法をコンパクトに構成することができる。
【0030】
図2及び図3に示されるように、搬送レール5は、前述したように鎖状部材4,4により左右両端部を吊支される複数の横杆部材51,51,…と、横杆部材51,51,…の上板51a,51a,…に固定される左右一対の管状レール52,52(レール部材)と、から主に構成されている。
【0031】
管状レール52,52は、断面視円環状を成し、各横杆部材51と直交した状態で、それぞれ所定管間隔離間させて平行に配置されている。また、管状レール52,52は、延伸方向に亘って下端から延出する延出片53,53を有しており、各横杆部材51の左右中央から所定間隔離間させて形成される左右一対の溝部51c,51cに対して延出片53,53を挿入させた状態で固定されている(図5(a)参照)。これによれば、横杆部材51に形成される溝部51c,51cに延出片53,53を挿入することにより、横杆部材51,51,…に対して管状レール52,52を平行に位置決めしやすくなっている。
【0032】
上述したように、搬送レール5は、管状レール52,52と直交する複数の横杆部材51,51,…とにより略矩形状(図2参照)を成しており、構造強度が高められている。また、各横杆部材51の左右両端部を鎖状部材4,4により吊支されることにより、鎖状部材4,4,…が搬送レール5における搬送台車6の走行を邪魔することがない。さらに、搬送レール5が、ビニールハウス10の補強杆10b,10b,…に対して安定的に吊支されているため、搬送レール5のねじれや揺れ等の動きに対して管状レール52,52が平行な状態に維持され、搬送レール5が揺れた際にも所定の平行状態に復元されやすい。
【0033】
また、管状レール52,52の端部には、ストッパ54,54(図2参照)がそれぞれ設けられており、搬送台車6の管状レール52,52上における走行方向への脱線が防止されている。
【0034】
図2及び図3に示されるように、搬送台車6は、農作物等の物品を載置可能な載置部61と、該載置部61の下面の4隅に取り付けられる走行ローラ62,62,62,62と、から主に構成されている。尚、走行ローラ62,62,62,62は、同一構成であるため、一つの走行ローラ62について説明する。
【0035】
図5(a)及び図5(b)に示されるように、走行ローラ62は、載置部61の下面に設けられる取付板61aに対してボルト63,63,…で固定される基部62aと、該基部62aの左右中央部から垂下する垂下部62bと、該垂下部62bの下端に固定される断面視略W字状の軸受部62cと、該軸受部62cに対して左右斜め下方からボルト62e,62eによりそれぞれ軸支される車輪62d,62dと、から構成されている。
【0036】
搬送レール5に搬送台車6が設置された状態において、各走行ローラ62は、左右に軸支される車輪62d,62dによって管状レール52,52を左右方向から挟み込んでいるため、各走行ローラ62は、管状レール52,52から左右方向に脱輪し難くなっている。
【0037】
また、各走行ローラ62においては、管状レール52,52の周面に対して車輪62d,62dの周面がそれぞれ左右斜め上方から点接触している。これによれば、管状レール52,52に対する各走行ローラ62の車輪62d,62dの接触面積を小さくでき、管状レール52,52の周面と各走行ローラ62の車輪62d,62dの周面との間における摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0038】
また、車輪62d,62dは、軸受部62cに対して左右斜め下方からそれぞれ軸支され、車輪62d,62dの周面は、管状レール52の周面に対してそれぞれ左右斜め上方から点接触しているため、車輪62d,62dに生じる傾斜方向(左右斜め下方)の分力により、車輪62d,62dの周面を介して管状レール52の周面にかかる搬送台車6の荷重が低減される。さらに、搬送台車6の荷重は、載置部61の下面の4隅に取り付けられる各走行ローラ62を介して管状レール52,52に略均等に預けられるとともに、走行ローラ62毎に車輪62d,62dを介して荷重を左右2箇所に分散させている。そのため、各走行ローラ62の車輪62d,62dを介して管状レール52,52にかかる荷重が小さくなり、搬送台車6の走行時における抵抗を低減でき、搬送レール5上において搬送台車6を小さな力で滑らかに走行させることができる。
【0039】
また、前述したように管状レール52,52は、断面視円環状を成しており、管状レール52,52に対して搬送台車6が左右方向に傾いて設置された場合、あるいは搬送レール5が左右方向に傾いている場合であっても、各走行ローラ62の車輪62d,62dは、管状レール52,52の周面を周方向にガイドされ、管状レール52,52の周面に対して左右方向からそれぞれ点接触した状態を維持することができる。そのため、管状レール52,52上において搬送台車6を安定的に設置することができ、搬送レール5から搬送台車6が脱線し難くなっている。
【0040】
尚、搬送台車6は、左右どちらか一方から操作される(例えば、図1において、畝部11Aと畝部11Bの間の谷部に操作者が立った状態で左側から操作される)と、左右方向に引っ張られて荷重が偏る場合があるため、管状レール52,52に対して上下方向に接触する車輪を設けるよりも、車輪62d,62dによって管状レール52,52を左右方向から挟み込むことにより操作者と対向する側の車輪62dによる接触を主体として抵抗が少ない状態で走行できる。
【0041】
以上説明したように、本発明の運搬装置1は、搬送レール5は、ビニールハウス10の室内に形成される畝部11A〜11Cの延伸方向に沿って複数設けられる補強杆10b,10b,…の下方に複数の鎖状部材4,4,…により畝部11A〜11Cの上方に吊支されるため、圃場における農作物の栽培面積への影響を抑えることができる。また、搬送台車6が補強杆10b,10b,…に吊支される搬送レール5における複数の管状レール52,52に左右方向に複数箇所で支持されることから、地表面の状態に関わらず安定的に走行可能である。
【0042】
また、鎖状部材4,4は、複数の鎖素子の中から着脱部材3,3に挿通される上端鎖素子4a,4aを選択することにより、連結部材22と横杆部材51との間における鎖状部材4,4の高さ方向の距離を調整可能となっている。これによれば、圃場の環境(例えば、補強杆10bが設置される高さ位置や畝部11A〜11Cで栽培される農作物の背の高さ等)に応じて搬送レール5の高さ位置の調整を容易に行うことができる。尚、搬送レール5を吊支する吊支部材は、鎖状部材に限らず、長さ調整可能なワイヤ等であってもよい。
【0043】
さらに、前述したように、鎖状部材4,4は、連結部材22と横杆部材51との間で略鉛直に配置されるため、左右の鎖状部材4,4における連結部材22と横杆部材51との間の上下寸法を揃えやすく、横杆部材51を水平に設置しやすくなっている。すなわち、搬送レール5を水平に設置しやすくなっている。
【0044】
また、鎖状部材4,4が略鉛直に配置されることにより、載置部61が左右方向あるいは前後方向に略水平の状態で揺れるようになっており、地震等の発生時に載置部61上の物品の落下を抑制できる。
【0045】
また、搬送レール5は、複数の鎖状部材4,4,…により左右方向あるいは前後方向に相対移動可能に吊支されているため、例えば、畝部11A〜11Cで栽培される農作物の手入れ等の作業を行う際に、搬送レール5の位置を容易に動かすことができるため、搬送レール5が固定的に支持される場合と比べて作業の邪魔になり難い。
【0046】
また、搬送レール5は、複数の鎖状部材4,4,…によりビニールハウス10の補強杆10b,10b,…に対して近接する方向に相対移動可能に吊支されているため、搬送レール5がビニールハウス10の補強杆10b,10b,…に対して近接する方向に固定的に支持されず、搬送レール5及び鎖状部材4,4,…に作用する予期しない力を分散させることができる。尚、搬送レール5を地表面等と別体の鎖状部材等により仮固定し、上下方向から支持することにより、搬送レール5をビニールハウス10の補強杆10b,10b,…に対して近接する方向に相対移動し難くして設置時の安定性を高めてもよい。
【0047】
また、図6に示されるように、運搬装置1は、規制部材23,23から規制ボルト24,24を引き抜くことにより、ビニールハウス10の補強杆10bに対して移動装置2を左右方向に相対移動可能となっている。すなわち、運搬装置1は、補強杆10bに対する鎖状部材4,4の取り付け位置を左右方向に変更可能であるため、圃場において搬送レール5を移動させる(例えば、ビニールハウス10の室内において、畝部11Bの上方から畝部11Cの上方に移動させる)ことができ、搬送レール5を複数設置する必要がなく、設置コストを抑えることができる。
【実施例2】
【0048】
実施例2に係る運搬装置につき、図7を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分については、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0049】
図7に示されるように、運搬装置100は、露地に形成された畝部11の延伸方向に沿って設置される複数の正面視門型のフレーム体101,101,…(構造体)に対して取り付けられている(説明の便宜上、一つのフレーム体101のみを図示する)。
【0050】
フレーム体101は、左右に立設される一対の支柱101a,101aと、該支柱101a,101aの上端同士を左右方向に連結する横杆部101bと、から主に構成されている。
【0051】
支柱101a,101aの下端には、断面視下向きコ字状の基部102,102が設けられている。基部102,102は、前後方向に長尺に構成され、下端部が図示しないスパイク状に形成されている。これによれば、畝部11の側方の地表面に対して基部102,102の下端部が突き刺さりやすくなるとともに、フレーム体101が前後方向及び左右方向に転倒し難くなり、フレーム体101を安定して立設することができる。
【0052】
横杆部101bには、左右中央から所定間隔離間させて上下方向に貫通する図示しない一対の貫通孔が設けられており、該貫通孔には、上方から吊下げボルト103,103がそれぞれ横杆部101bの下方から突出するように挿通されている。吊下げボルト103,103の胴部103a,103aには、下端に着脱部材3,3が取り付けられており、着脱部材3,3を介して左右の吊下げボルト103,103に鎖状部材4,4を取り付けることができる。
【0053】
これによれば、鎖状部材4,4,…を取り付けるための構造体が既設されていない露地等において、複数のフレーム体101,101,…を設置することにより、搬送レール5をフレーム体101,101,…の横杆部101b,101b,…の下方に複数の鎖状部材4,4,…により吊支することができる。
【0054】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0055】
例えば、前記実施例では、左右方向に略同一寸法の連結部材22と横杆部材51との間に鎖状部材4,4が略鉛直に配置される態様として説明したが、これに限らず、連結部材を横杆部材よりも左右方向の寸法を大きく構成し、鎖状部材4,4を上方に向かうにつれて左右方向に拡開するように配置することにより、搬送レール5の左右方向への揺動を抑えるようにしてもよい。
【0056】
また、前記実施例では、搬送レール5は、畝部の長手方向に沿って延びるように設置される態様として説明したが、これに限らず、搬送レール5を畝部の延伸方向と直交するように設置されてもよい。
【0057】
また、前記実施例では、着脱部材3,3の形状は、略L字状のフック型に構成される態様として説明したが、これに限らず、鎖状部材4の鎖素子を挿通できるものであれば、形状は自由に構成されてよく、例えば、C字状のフックやカラビナ等であってもよい。
【0058】
尚、鎖状部材4を構成する複数の鎖素子について、例えば、鎖状部材4の下端からの構成位置(下端から何番目の鎖素子であるか)をそれぞれ識別できるように鎖素子に塗装や印字等を施すことにより、複数の鎖状部材4,4,…において下端からの構成位置が同じ鎖素子を上端鎖素子4a,4a,…として選択しやすくしてもよい。
【0059】
また、鎖状部材4は、移動装置2の連結部材22、ビニールハウス10の補強杆10b及びフレーム体101の横杆部101bに対して直接取り付けられてもよい。さらに、鎖状部材4は、ビニールハウス10の補強杆10b以外の構造体(例えば、天井杆10c等)に取り付けられてもよい。
【0060】
また、鎖状部材4の下端鎖素子4bは、横杆部材51に直接固定されていてもよい。
【0061】
また、ビニールハウス10の長手方向における既設の補強杆10b,10b,…の間に、新たに補強杆を増設して、鎖状部材4,4,…による搬送レール5の吊支箇所をふやすことにより、搬送レール5をより安定して吊支できるようにしてもよい。
【0062】
また、前記実施例では、搬送レール5の延伸方向に亘って複数の横杆部材51,51,…の左右両端部が全て鎖状部材4,4,…によって吊支される態様として説明したが、搬送レール5が水平に安定して吊支できれば、吊支位置は自由に構成されてよく、例えば、吊支位置は横杆部材51,51,…の左右端部のいずれか一方に交互に設けられてもよい。
【0063】
また、横杆部材51,51,…は、管状レール52,52を平行に連結していれば、鎖状部材4,4,…によって吊支されていなくてもよく、例えば、管状レール52,52が鎖状部材4,4,…によって直接吊支されていてもよい。
【0064】
また、横杆部材51,51,…は、管状レール52,52を平行に連結していれば、管状レール52,52と直交して略矩形状を形成しなくてもよい。
【0065】
また、横杆部材51に左右一対の溝部51c,51cを複数組設けて管状レール52,52の延出片53,53を選択的に挿入することにより、畝部の幅や、搬送する物品の大きさに合わせて管状レール52,52間の幅を調整できるようにしてもよい。
【0066】
また、搬送レール5は、3本以上のレール部材から構成されていてもよい。
【0067】
また、搬送レール5を構成するレール部材は、走行ローラ62の車輪62d,62dにより左右から挟み込むことができれば、略円環状のものに限らず、三角形や四角形等の多角形状であってもよい。
【0068】
また、搬送台車6に取り付けられる走行ローラ62の数や、各走行ローラ62を構成する車輪62d,62dの数や軸受部62cに対する取り付け角度等は自由に構成されてよい。
【0069】
また、搬送台車6の載置部61は、物品を載置可能であれば形状等は自由に構成されてよく、例えば、下面に走行ローラが取り付けられる矩形枠の上面に箱や籠等を載置できるものであってもよい。
【0070】
また、運搬装置は、搬送レール5の端部近傍で搬送台車6の走行速度を減速させる減速手段を設けてもよく、例えば、管状レール52,52の端部に設けられるストッパ54,54の近傍において、管状レール52,52の周面を摩擦係数の大きい塗装やシール等で被覆することにより搬送台車6の走行速度を自然に減速させてもよい。また、搬送台車6に搬送レール5の端部近傍で作動するブレーキ装置を設けてもよい。
【0071】
また、運搬装置は、搬送レール5を畝部の延伸方向に沿って傾斜するように設けてもよく、例えば、横杆部材51,51,…を吊支する鎖状部材4,4,…の長さを調整して、搬送台車6の進行方向へ向って搬送レール5の高さ位置が低くなるように緩やかに傾斜させることにより搬送台車6を傾斜に従って自然に移動させるようにしてもよい。尚、この場合、搬送台車6の移動を規制するストッパ装置等を搬送台車6あるいは搬送レール5に設けてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 運搬装置
2 移動装置
3 着脱部材
4 鎖状部材(吊支部材)
4a 上端鎖素子
4b 下端鎖素子
5 搬送レール
6 搬送台車(台車)
10 ビニールハウス
10b 補強杆(構造体)
11A〜11C 畝部
21 ガイド部材
22 連結部材
23 規制部材
24 規制ボルト
51 横杆部材
52 管状レール(レール部材)
61 載置部
62 走行ローラ
62d 車輪
【要約】
【課題】台車を安定して走行可能としながら、圃場における農作物の栽培面積への影響を抑えた運搬装置を提供する。
【解決手段】圃場において台車6が走行可能な搬送レール5を備える運搬装置1であって、搬送レール5は、複数のレール部材52,52と、複数のレール部材52,52を左右方向に所定間隔離間させて平行に接続する横杆部材51と、を備え、台車6は、複数のレール部材52,52に対応して左右方向に複数箇所で支持されて走行可能となっており、搬送レール5は、圃場に形成される畝部11A〜11Cの延伸方向に沿って設けられる構造体10bの下方に複数の吊支部材4,4,…により吊支される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7