(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043110
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】センサーカード
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20161206BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-153649(P2012-153649)
(22)【出願日】2012年7月9日
(65)【公開番号】特開2014-16242(P2014-16242A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】591086854
【氏名又は名称】株式会社テクノメデイカ
(74)【代理人】
【識別番号】100064388
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】関岡 直行
(72)【発明者】
【氏名】檀 金宗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博也
(72)【発明者】
【氏名】篠原 悦夫
【審査官】
萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第03/093836(WO,A1)
【文献】
特表2008−530539(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0176963(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 − 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を導入するための流路となる溝が形成されたアッパーブロックを、ロアーブロックと重ね合わせて内部に流路を形成して成るセンサーカードであって、
前記流路の途中に、検体を光学的又は電気化学的に測定するための測定部を設け、
前記流路の少なくとも上流部分が、高さ1000um以下に寸法決めされた毛細管流路から成り、
前記アッパーブロックの前記毛細管流路の上流端に相当する位置に検体を導入するための貫通口を設け、
前記毛細管流路を前記貫通口の周囲全域に形成すると共に、
アッパーブロックの前記貫通口の周囲に、前記貫通口とは繋がっていない少なくとも一つの独立した補助貫通口を形成し、
ロアーブロックの前記補助貫通口に対応する部分に余剰検体収容部を形成し、
前記アッパーブロック及びロアーブロックにおける前記貫通口及びその周囲に対応する部分を透明又は半透明とした
ことを特徴とするセンサーカード。
【請求項2】
前記アッパーブロックの外面の前記貫通口の周囲が平坦であり、かつ、前記ロアーブロックの前記貫通口に対応する部分が平坦である
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサーカード。
【請求項3】
前記毛細管流路の壁面に、親水処理及び/又はヘパリンコート処理が施されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサーカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中の物質成分等の測定や分析を行うために用いられる使い捨てセンサーカードの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、検体中物質成分等の測定又は分析を行うためにセンサーカード内部に検体が通る流路を設け、その流路の途中に電気化学的又は光学的に成分等を測定するための測定部を設けて成る使い捨てのセンサーカードが提案されている。
図5は、従来のセンサーカードの概略上面図であり、
図6は、
図5に示したセンサーカードのC−C断面図である。
図面に示すように、従来のセンサーカードは、アッパーブロック20及びロアーブロック21を重ね合わせて成り、アッパーブロック20に毛細管流路22となる溝が形成されている。前記アッパーブロック20の流路22の上流端に相当する位置には検体を導入するための貫通口23が形成されている。
前記流路22の途中には、流路22を通って供給される検体を電気化学的又は光学的に測定するための測定部が設けられている。
上記したように構成された従来のセンサーカードでは、貫通口23は流路22の上流端に設けられ、貫通口23の内壁下部の約前方半周部分が前記流路22に接続されており、貫通口23の内壁下部の前記前方半周部分以外の部分(即ち、内壁後方部分)は、前記流路22に接続されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−229243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のセンサーカードは、患者の指先または耳朶を針等で穿刺して出血させ、その血液を前記貫通口23に点着することにより血液が貫通口23の内壁前方部分を介して流路22に至り、毛細管現象によって血液は流路22に導入される。
しかし、上記した従来のセンサーカードには下記のような問題がある。
即ち、従来のセンサーカードは、上記したように、貫通口23の内壁後方部分は流路22に接続されていないため、貫通口23の後方部分に血液を点着した場合、血液が貫通口23の後方部分に溜まって流路22に接触しないことがあり(
図7参照)、その結果、血液が流路22に導入されないことがあるという問題がある。
上記した問題を解決することができるセンサーカードとして、特許文献1に記載の検体点着流路構造が提案されている。
図8は、特許文献1に記載の検体点着流路構造の概略上面図、
図9は、
図8のD−D断面図を各々示している。
この検体点着流路構造は、カバープレート31とベースプレート32とを有し、ベースプレート32には、毛細管キャビティ35、保持チャンバ36、流路38、測定チャンバ37、流路39及び大気開放孔40が形成されている。また、毛細管キャビティ35の上流端にはベースプレート32の上面から上方に向かって突出する先端が半球形状の円柱状点着部33が形成されており、ベースプレート32にカバープレート31を取り付けた時にカバープレート31に設けられたリブ付きの注入口34から前記点着部33が突出するように構成されている。
この従来の検体点着流路構造は、前記したように毛細管キャビティ35に繋がる点着部33がカバープレート11から突出し、かつ、点着部33の先端が半球形状に形成されているので、例えば、穿刺して出血させた指先を点着部33に点着すると、血液が半球状の点着部33を伝い流れて毛細管キャビティ35に至るため血液が毛細管キャビティ35に導入されないことがない。
しかし、上記した検体点着流路構造は、検体の導入後に注入口34にシール等を貼って蓋をしなければならない場合には、注入口34から突出した点着部33が邪魔になって蓋をすることができないという問題がある。
本発明は、上記した従来の問題点を解決し、検体導入後に開口部に蓋をすることができ、かつ、点着した検体を確実に流路に導入することができるセンサーカードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために、本発明に係る使い捨てセンサーカードは、検体を導入するための流路となる溝が形成されたアッパーブロックを、ロアーブロックと重ね合わせて内部に流路を形成して成るセンサーカードであって、
前記流路の途中に、検体を光学的又は電気化学的に測定するための測定部
を設け、
前記流路の少なくとも上流部分が、高さ1000um以下に寸法決めされた毛細管流路から成り、
前記アッパーブロックの前記毛細管流路の上流端に相当する位置に検体を導入するための貫通口
を設け、
前記毛細管流路
を前記貫通口の周囲全域に形成
すると共に、
アッパーブロックの前記貫通口の周囲に、前記貫通口とは繋がっていない少なくとも一つの独立した補助貫通口を形成し、
ロアーブロックの前記補助貫通口に対応する部分に余剰検体収容部を形成し、
前記アッパーブロック及びロアーブロックにおける前記貫通口及びその周囲に対応する部分を透明又は半透明としたことを特徴とする。
前記アッパーブロックの外面の前記貫通口の周囲は平坦であり得、かつ、前記ロアーブロックの前記貫通口に対応する部分も平坦であり得る。
好ましくは、前記毛細管流路の壁面に、親水処理及び/又はヘパリンコート処理が施され得る。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る使い捨てセンサーカードは、検体を導入するための流路となる溝が形成されたアッパーブロックを、ロアーブロックと重ね合わせて内部に流路を形成して成るセンサーカードであって、 前記流路の途中に、検体を光学的又は電気化学的に測定するための測定部
を設け、前記流路の少なくとも上流部分が、高さ1000um以下に寸法決めされた毛細管流路から成り、前記アッパーブロックの前記毛細管流路の上流端に相当する位置に検体を導入するための貫通口
を設け、前記毛細管流路
を前記貫通口の周囲全域に形成
すると共に、アッパーブロックの前記貫通口の周囲に、前記貫通口とは繋がっていない少なくとも一つの独立した補助貫通口を形成し、ロアーブロックの前記補助貫通口に対応する部分に余剰検体収容部を形成し、前記アッパーブロック及びロアーブロックにおける前記貫通口及びその周囲に対応する部分を透明又は半透明としているので、貫通口の下部全周が毛細管流路に直接つながっている。これにより、検体が貫通口のどの部分に点着されても、検体は確実に貫通口の壁面を介して毛細管流路に接触して導入されることになるという効果を奏する。
また、前記アッパーブロックの前記貫通口の周囲に、前記貫通口とは繋がっていない少なくとも一つの独立した補助貫通口を形成し、ロアーブロックの前記補助貫通口に対応する部分に余剰検体収容部を形成しているので、点着時に貫通口から検体が溢れてしまった場合であっても、溢れた検体を、前記補助貫通口を介して余剰検体収容部に収容することが可能になる。
さらに、前記アッパーブロック及びロアーブロックにおける前記貫通口及びその周囲に対応する部分を、透明又は半透明に形成しているので、センサーカードの下方に指等をもってきても、又はセンサーカードを指等に近づけても、センサーカードを通して指の位置を確認することができ、また、センサーカード自身の貫通口の位置、および血液が流路へ導入される様子を確認することが可能になる。これにより、例えば、センサーカードを、その挿入口を下にして持って、出血させた患者の指、特に寝込んでいる患者の指に、センサーカードの貫通口を近づけて血液を点着させることが可能になる。また、同様な要領で、患者の耳朶から採血する場合も、出血させた耳朶に近づけ点着させることが容易となる。
前記アッパーブロックの外面の前記貫通口の周囲を平坦にし、かつ、前記ロアーブロックの前記貫通口に対応する部分を平坦にすることで、アッパーブロックの上面に突出した部分がなくなるので、点着後に貫通口をシール等で封鎖することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図6】
図5に示したセンサーカードのC−C断面図である。
【
図7】血液が貫通口23の後方部分に溜まった状態を示す図である。
【
図8】特許文献1に記載のセンサーカードの概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本発明に係るセンサーカードの実施の形態を説明していく。
【0009】
図1は、本発明に係るセンサーカードの概略上面図、
図2はアッパーブロックの概略上面図、そして、
図3はロアーブロックの概略上面図をそれぞれ示している。
図2に示すように、アッパーブロック1には、流路2を構成するための溝が形成されている。この流路2は、毛細管現象により検体を導入する毛細管流路2aと、導入した検体を一時的に溜める検体溜部2bと、センサ等が設けられた測定部2cとから成り、流路2の下流端はロアーブロック10に設けられた廃液部11に繋がる。
また、アッパーブロック1の前記流路2の上流端には点着口を構成するための貫通口3が形成されている。
前記毛細管流路2aは、毛細管現象を生じさせることができる程度に浅い溝で構成され、かつ、前記貫通口3の全周を囲むように形成されている。
また、アッパーブロック1における前記貫通口3の周囲には、6つの補助貫通口4が設けられており、かつ、ロアーブロック10の前記補助貫通口4に対応する位置には余剰検体を収容する収容部12が形成されている。これにより、検体点着時に点着口3から検体が溢れてしまった場合でも、溢れた検体が前記補助貫通口4からロアーブロック10の収容部12に流れ込むため、その後に点着口3と共に補助貫通口4をシール等で封鎖することで、余剰検体を外部に漏らさずに収容することが可能になる。
図2中、符号5はアッパーブロック1に設けられた空気供給通路を示しており、この空気供給通路5は、その下流端が前記流路2に接続され、その上流端がロアーブロック10に形成された空気供給通路13に接続されている。前記ロアーブロック10に形成された空気供給通路13は、ロアーブロック10に形成された空気袋収容凹部14に接続され、アッパーブロック1の空気袋収容凹部14に対向する部分には空気袋押圧用開口6が形成されている。
また、
図2中、符号7はアッパーブロック1に設けられた校正液供給通路を示しており、この校正液供給通路7は、その下流端が前記流路2に接続され、その上流端がロアーブロック10に形成された校正液供給通路15に接続されている。前記ロアーブロック10に形成された校正液供給通路15は、ロアーブロック10に形成された校正液袋収容凹部16に接続され、アッパーブロック1の校正液袋収容凹部16に対向する部分には校正液袋押圧用開口8が形成されている。
上記したように構成されたアッパーブロック1とロアーブロック10とは、その間に、空気袋(図示せず)、校正液袋(図示せず)及び適当な測定部(図示せず)を挟んで重ねて結合され、センサーカードを形成する。
【0010】
センサーカードは、
図1に示す点線Bより下方部分が測定装置(図示せず)に挿入され、点線Bより上方部分が測定装置の外部に露出する。測定装置には、適当な押圧部材が設けられており、センサーカードを挿入すると、始めに押圧部材が校正液袋を押圧して、その内部の校正液を校正液供給通路15及び7を介して流路2に送り、測定装置は該校正液を用いて測定部(図示せず)の校正を行う。
次いで、患者等の被測定者の指先や耳朶を穿刺して出血させ、指先や耳朶を点着口3と近づけて、その血液を点着口3に点着する。
ここで、
図4に示すように、アッパーブロック1において、毛細管流路2aが、貫通口3の全周を囲むように形成されているので、血液が点着口3の内壁のどの部分に点着されても、血液は点着口3の壁面を介して毛細管流路2aに至り、確実に血液を流路2に導入することが可能になる。尚、毛細管流路2aによって導入された血液は、検体溜部2bに溜まる。
この状態で、測定装置(図示せず)の押圧部材(図示せず)が空気袋収容凹部14に収容された空気袋を押圧すると、空気袋の中の空気は空気共通通路13及び5を介して流路2に送られ、前記検体溜部2bに溜まっていた血液が空気によって測定部2cに押し出される。
アッパーブロック1及びロアーブロック10における点線Bより上方部分、即ち、点着口3が設けられている部分は、好ましくは、透明又は半透明である。このように点着口3が設けられている部分を透明又は半透明にすることにより、指又は耳朶にセンサーカードを近づけても、点着口3の位置及び血液の位置を、センサーカードを通して正確に把握することが可能になるので、点着口3を下にして指又は耳朶の上から近づけて点着を行うことも可能になる。この構成は、寝込んでいる患者が、出血させた指をセンサーカードへ点着することが困難であることから、医師や看護師等の病院スタッフがセンサーカードを持って患者から血液を点着する場合には特に有効である。
【符号の説明】
【0011】
1 アッパーブロック
2 流路
2a 毛細管流路
2b 検体溜部
2c 測定部
3 貫通口(点着口)
4 補助貫通口
5 空気供給通路
6 空気袋押圧用開口
7 校正液供給通路
8 校正液袋押圧用開口
10 ロアーブロック
11 廃液部
12 余剰検体収容部
13 空気供給通路
14 空気供給用凹部
15 校正液供給通路
16 校正液袋押圧用開口
20 アッパーブロック
21 ロアーブロック
22 毛細管流路
23 貫通口
31 カバープレート
32 ベースプレート
33 点着部
34 リブ付き注入口
35 毛細管キャビティ
36 保持チャンバ
37 測定チャンバ
38 流路
39 流路
40 大気開放孔