(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043123
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】非接触支持装置及び塗布装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20161206BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20161206BHJP
B65G 51/03 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B05C13/02
B65G51/03 A
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-182995(P2012-182995)
(22)【出願日】2012年8月22日
(65)【公開番号】特開2014-41898(P2014-41898A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140693
【弁理士】
【氏名又は名称】木宮 直樹
(72)【発明者】
【氏名】角田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】平山 琢哉
【審査官】
中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−041989(JP,A)
【文献】
特開2011−176086(JP,A)
【文献】
特開2006−266690(JP,A)
【文献】
特開2008−226972(JP,A)
【文献】
特開2011−220631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B05C 13/02
B65G 51/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被支持物を非接触に支持するために気体が吐出される開口を有する支持面を備える載置手段と、
前記開口を流れる前記気体を絞る絞り部材を取り替えるための取替手段と、を備え、
前記載置手段の支持面の位置を維持した状態で、前記取替手段により前記絞り部材を取り替え可能であることを特徴とする非接触支持装置。
【請求項2】
前記載置手段は、互いに接離可能な一対の載置手段構成部材を有し、前記一対の載置手段構成部材が互いに接すると、前記絞り部材は前記一対の載置手段構成部材に挟持されることを特徴とする請求項1に記載の非接触支持装置。
【請求項3】
前記一対の載置手段構成部材を互いに離間させた状態で、前記絞り部材が前記取替手段により取り替えられることを特徴とする請求項2に記載の非接触支持装置。
【請求項4】
前記一対の載置手段構成部材の一方は、前記一対の載置手段構成部材の他方に対して離接するための駆動手段を有し、前記一対の定盤構成部材が互いに離間した状態で、前記絞り部材が前記取替手段により取り替えられることを特徴とする請求項2又は3に記載の非接触支持装置。
【請求項5】
前記取替手段は、前記絞り部材が巻回される供給ロールと前記絞り部材を巻き取る巻取りロールとを有し、前記供給ロールと前記巻取りロールとの間に前記載置手段が配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載の非接触支持装置。
【請求項6】
被支持物を非接触に支持するための気体が吐出される開口を有する支持面を備える載置手段と、
前記被支持物に塗液を塗布するための塗布手段と、
前記開口を通る流れを絞るための絞り部材と、
前記絞り部材を取り替えるための取替手段と、を備え、
前記支持面の前記塗布手段に対する位置を維持した状態で、前記絞り部材が前記取替手段により取り替えられることを特徴とする塗布装置。
【請求項7】
前記載置手段は、互いに接離可能な一対の載置手段構成部材を有し、前記一対の載置手段構成部材が互いに接すると、前記絞り部材は前記一対の載置手段構成部材に挟持されることを特徴とする請求項6に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記一対の載置手段構成部材を互いに離間させた状態で、前記絞り部材が前記取替手段により取り替えられることを特徴とする請求項7に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記一対の載置手段構成部材の一方を前記一対の載置手段構成部材の他方に対して離接するための駆動手段を備えることを特徴とする請求項7又は8に記載の塗布装置。
【請求項10】
前記取替手段は、前記絞り部材が巻回される供給ロールと前記絞り部材を巻き取る巻取りロールとを有し、前記供給ロールと前記巻取りロールとの間に前記載置手段が配置されることを特徴とする請求項6〜9のいずれか一に記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイパネル等に使用される液晶用大型ガラス等の薄板状材料を非接触状態にて支持する非接触支持装置及び非接触状態で塗液を塗布する塗布装置に関し、より具体的には、絞り部材を用いた非接触支持装置及び塗布装置において絞り部材を容易に取り替えることができる非接触支持装置及び塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶パネルや半導体の搬送や塗装等の製造工程では、ガラス基板や半導体ウエハといった薄板状の被支持物の表面に傷をつけないように、被支持物を非接触で支持する非接触支持装置や、被支持物に塗液を塗布するために被支持物を非接触で支持する塗布装置が利用されている。
【0003】
例えば、引用文献1及び引用文献2は、空気を供給する気体通路を構成する上面板と、気体通路から供給される空気を透過及び噴出させる絞り部材である多孔質フィルムと、多孔質フィルムから噴出される気体が噴出される支持板と、を備えた積層構造からなり、多孔質フィルムが上面板及び支持板に挟まれた状態で複数の締結部材で固定されている非接触支持装置を開示する。この非接触支持装置では、上面板から供給される空気は、多孔質フィルムを透過し、その空気圧が高くなる。空気圧が高められた空気は、その後、支持板へ供給され、支持板上の被支持物を非接触支持するために利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4629007号
【特許文献2】特開2010−156357号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被支持物を非接触に支持する非接触支持装置や、被支持物を非接触支持状態にて塗液を塗布する従来の塗布装置では、多孔質フィルム等の絞り部材が複数の締結部材により固定されている。当該絞り部材が意図せずに汚れた場合、より具体的には、塗布装置の塗布手段から塗布される塗液が、絞り部材に付着した場合には、絞り部材を取り替える必要がある。取替作業には、絞り部材を挟持する上面板及び支持板を取り外す工程、絞り部材を取り付ける工程、さらに、上面板及び支持板を位置決めする工程が含まれ、従来の非接触支持装置や塗布装置の構造では、絞り部材の取り換え作業に要する時間を短くすることが難しい。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものである。すなわち、絞り部材が汚染又は破損した場合に、容易に取り替えることができる非接触支持装置及び塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の非接触支持装置の第1の態様は、被支持物を非接触に支持するために気体が吐出される開口を有する支持面を備える載置手段と、前記開口を流れる気体を絞る絞り部材を取り替えるための取替手段と、を備え、前記載置手段の支持面の位置を維持した状態で、前記取替手段により前記絞り部材を取り替え可能である。
【0008】
また、本発明の非接触支持装置の第2の態様によれば、前記第1の態様の非接触支持装置であって、前記載置手段は、互いに接離可能な一対の載置手段構成部材を有し、前記一対の載置手段構成部材が互いに接すると、前記絞り部材は前記一対の載置手段構成部材に挟持される。
【0009】
また、本発明の非接触支持装置の第3の態様によれば、前記第2の態様の非接触支持装置であって、前記一対の載置手段構成部材を互いに離間させた状態で、前記絞り部材が前記取替手段により取り替えられる。
【0010】
また、本発明の非接触支持装置の第4の態様によれば、前記第2又は3の態様の非接触支持装置であって、前記一対の載置手段構成部材の一方は、前記一対の載置手段構成部材の他方に対して離接するための駆動手段を有し、前記一対の載置手段構成部材が互いに離間した状態で、前記絞り部材が前記取替手段により取り替えられる。
【0011】
本発明の非接触支持装置の第5の態様によれば、前記第1〜4のいずれか一の態様の非接触支持装置であって、前記取替手段は、前記絞り部材が巻回される供給ロールと前記絞り部材を巻き取る巻取りロールとを有し、前記供給ロールと前記巻取りロールとの間に前記載置手段が配置される。
さらに、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の塗布装置の第1の態様は、被支持物を非接触に支持するための気体が吐出される開口を有する支持面を備える載置手段と、前記被支持物に塗液を塗布するための塗布手段と、前記開口を通る流れを絞るための絞り部材と、前記絞り部材を取り替えるための取替手段と、を備え、前記支持面の前記塗布手段に対する位置を維持した状態で、前記絞り部材が前記取替手段により取り替えられる。
【0012】
また、本発明の塗布装置の第2の態様によれば、前記第1の態様の塗布装置であって、前記載置手段は、互いに接離可能な一対の載置手段構成部材を有し、前記一対の載置手段構成部材が互いに接すると、前記絞り部材は前記一対の載置手段構成部材に挟持される。
【0013】
また、本発明の塗布装置の第3の態様によれば、前記第2の態様の塗布装置であって、前記一対の載置手段構成部材を互いに離間させた状態で、前記絞り部材が前記取替手段により取り替えられる。
【0014】
また、本発明の塗布装置の第4の態様によれば、前記第2又は3の態様の塗布装置であって、前記一対の載置手段構成部材の一方を前記一対の載置手段構成部材の他方に対して離接するための駆動手段を備える。
【0015】
本発明の塗布装置の第5の態様によれば、前記第1〜4のいずれか一の態様の塗布装置であって、前記取替手段は、前記絞り部材が巻回される供給ロールと前記絞り部材を巻き取る巻取りロールとを有し、前記供給ロールと前記巻取りロールとの間に前記載置手段が配置される。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる非接触支持装置及び塗布装置は、載置手段の支持面を維持した状態で、絞り部材を取り替えることができる取替手段を備える。従って、取替工程の後に、支持面の位置決めを再度行うことが必要ないため、容易に絞り部材を取り替えることができるとともに、取替工程に要する時間を短縮できる
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る塗布装置を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1の線II−IIに沿って塗布装置の主要要素を示す断面図である。
【
図3】
図1の線III−IIIに沿って塗布装置の主要要素を示す断面図であって、(a)は、定盤に多孔質フィルムが挟持されている状態であり、(b)は、定盤から多孔質フィルムが解放されている状態である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る非接触支持装置を適用した塗布装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0019】
図1は、実施形態に係る塗布装置101を示す斜視図であり、
図2は、
図1の線II−IIに沿って塗布装置101の主要要素を示す断面図である。また、
図3は、
図1の線III−IIIに沿って塗布装置101の主要要素を示す断面図であって、(a)は、定盤構成部材121、123により多孔質フィルム105が挟持されている状態であり、(b)は、定盤構成部材121、123から多孔質フィルム105が解放されている状態である。
【0020】
なお、
図1において、定盤103の上方に延在する多孔質フィルム105は、図面の明瞭化のため、割愛されている。また、
図2では、図面の明瞭化のため、エアシリンダ132が割愛されている。さらに、
図2は、上側及び下側定盤構成部材121、123、多孔質フィルム105及びガラス基板の109の構成を専ら示すことを目的としているものであり、本塗布装置101においてフィルム105を解放した状態で、塗布工程が行われることを意図するものではない。
【0021】
図1、2に示すように、塗布装置101は、塗液であるレジスト液111(
図2参照。)を、被支持物であるガラス基板109(
図2参照。)に塗布するための装置である。この塗布装置101は、ガラス基板109を非接触に支持するための気体が吐出される開口(吐出口121a、123a、吸引口121b、123a)を有する支持面103aを備える載置手段である定盤103と、ガラス基板109にレジスト液111を塗布するための塗布手段であるスリットノズル107と、吐出口121a、123a、吸引口121b、123aの気体流れを絞るための絞り部材である多孔質フィルム105と、多孔質フィルム105を取り替えるための取替手段である供給ロール129及び巻取ロール131と、を備える。さらに、本塗布装置101では、支持面103aのスリットノズル107に対する位置を維持した状態で、多孔質フィルム105が供給ロール129及び巻取ロール131により取り替えることができる。
【0022】
図示はしないが、塗布装置101は、ガラス基板109を搬送方向(
図2の矢印T方向)に搬送する搬送手段を備える。なお、本実施形態では、塗布装置101の例を示すが、塗布工程以外の工程で用いられる装置の非接触支持装置として利用することも可能であり、非接触支持装置は、定盤103と、供給ロール129及び巻取ロール131とにより構成される。
【0023】
ガントリ106は、定盤103の幅方向(
図1の矢印W方向)に延びスリットノズル107が装着される保持部108を有し、保持部108の長手方向両端部が、定盤103の長手方向(
図1の矢印L方向)に延在する塗布装置101の基部110に固定されている。また、保持部108には、
図2の上下方向(すなわち定盤103の上面である支持面103aに対して離接する方向)に移動可能なスリットノズル107が装着され、不図示の駆動手段により定盤103の支持面103aに対して近づいたり、離れたり移動することができる。
【0024】
定盤103は、絞り部材である多孔質フィルム105(例えば、3M社製のマイクロポ
ーラスフィルム(ポリプロピレン樹脂と有機フィラーで構成した多孔質フィルム))を挟持することができる一対の載置手段構成部材である上側定盤構成部材121及び下側定盤構成部材123を有する。上側定盤構成部材121は、多孔質フィルム105に面し配置され、基部110に固定される。下側定盤構成部材123は、多孔質フィルム105を挟んだ状態で上側定盤構成部材121に多孔質フィルム105を介して当接できるとともに上下方向(
図3の矢印z方向)に移動可能である。上側定盤構成部材121は、
図3に示すように、断面矩形状の中空筒の部材であり、その内部空間に下側定盤構成部材123が配置される。なお、多孔質フィルム105は、定盤103に設けられている後述の開口毎の通気率を均一にするための部材であり、定盤103の開口の径より、小さい平均径(又は開口が多角形の場合には、その開口面積に比べ小さい開口面積)の細孔を有する。
【0025】
上側定盤構成部材121は、その厚さ方向(
図2の上下方向)に貫通する複数の開口を備え、この開口が、気体を吐出するための吐出口121aと、気体を吸引するための吸引口121bとを構成する。同様に、下側定盤構成部材123も、その厚さ方向に貫通する複数の開口が設けられ、この開口が、気体を吐出するための吐出口123aと、気体を吸引するための吸引口123bとを構成する。
【0026】
上記構成の上側定盤構成部材121と下側定盤構成部材123とが互いに接した状態では、前述の多孔質フィルム105が、上側定盤構成部材121の吸引口121b及び下側定盤構成部材123の吐出口123aの絞りとして機能する。また、上側定盤構成部材121の各々の吐出口121aと、下側定盤構成部材123の各々の吐出口123aが多孔質フィルム105の細孔を介し連通し、圧縮気体を供給する気体供給源(不図示)から所定圧力の気体125が所定流量で上側定盤構成部材121の吐出口121aから吐出される。一方、上側定盤構成部材121の各々の吸引口121bと、下側定盤構成部材123の各々の吐出口123bが多孔質フィルム105の細孔を介し連通し、ポンプ等の吸引源(不図示)により下側定盤構成部材123の吸引口121bから気体127が吸引される。
【0027】
このように、上側定盤構成部材121と下側定盤構成部材123とに、吐出口121a、123aと吸引口121b、123bとを混在させることにより、ガラス基板109等の薄板部材を非接触に支持する際の浮上量を正確に制御できる。
【0028】
また、本実施形態では、ガラス基板109の近くに配置される上側定盤構成部材121を基部110に固定し、ガラス基板121から離れて配置される下側定盤構成部材123を移動可能としている。これは、上側定盤構成部材121に対してガラス基板109を非常に高精度(例えば、浮上量が30μmで、誤差が±5μmの範囲内。)で浮上させる必要があり、この高精度な浮上性能を実現するためには、ガラス基板109を支持する支持面103aを有する上側定盤構成部材121の位置決め精度が重要である、という知見に基づくものである。すなわち、上側定盤構成部材121を基部110に固定することで、常に上側定盤構成部材121を所定位置に配置させると、多孔質フィルム105の取替工程の後に上側定盤構成部材121の位置決め調整を行う必要が無い。結果として、上側定盤構成部材121の配置を所定の位置決め精度で実現できる。
【0029】
次に、フィルム105を取り替えるための取替手段について説明する。
図2に示すように、上側定盤構成部材121及び下側定盤構成部材123との間に介在する長尺状の多孔質フィルム105は、その一端部が送出ロール129に巻回されており、多孔質フィルム105の他端部は、巻取ロール131に装着されている。送出ロール129及び巻取ロール131は、塗布装置101の基部110に
図2の矢印R方向に回転可能に支持されている。
【0030】
定盤103の上方(
図2の上下方向に関する上方)に配置されるガラス基板109の搬送方向(
図2の矢印T)に関し、駆動ロールとして機能する巻取ロール131が下流側に配置され、従動ロールとして機能する送出ロール129が上流側に配置されている。また、不図示の駆動モータからの回転力が巻取ロール131に伝達されると、多孔質フィルム105が巻取ローラ131に巻き取られるとともに送出ロール129が回転し、送出ロール129が回転し多孔質フィルム105が送り出される。
【0031】
図3(a)、(b)に示されるように、上側定盤構成部材121に対する下側定盤構成部材123の当接位置及び上側定盤構成部材121に対する下側定盤構成部材123の離間位置は、エアシリンダ、カム機構等の移動手段により、下側定盤構成部材123を昇降させることにより行う。本実施形態では、4つのエアシリンダ132を下側定盤構成部材123の下方に配置し、4つのエアシリンダ132の各伸縮ロッド133がそれぞれ下側定盤構成部材の四隅に連結されている。上記構成において、制御部120からの駆動信号により、各伸縮ロッド133がz方向に伸縮し、下側定盤構成部材123が上側定盤構成部材121に多孔質フィルム105を介して当接したり、上側定盤構成部材121から離間したりする。
【0032】
多孔質フィルム105を取り替える際、制御部120からの信号により、
図3(a)に示す状態の下側定盤構成部材123が、
図3(b)に示すように下降した後、巻取ロール131(
図2参照。)が回転する。巻取ロール131は、多孔質フィルム105の未使用部分が、下側定盤構成部材123の挟持面103bを覆うまで、多孔質ファイル105の使用済み部分を巻き取る。多孔質フィルム105の取替工程が完了すると、エアシリンダ121が再度駆動され、下側定盤構成部材123が上昇し、多孔質フィルム105が上側及び下側定盤構成部材121、123により挟持された状態になる。
【0033】
本実施形態は、気体を吸引するための吸引口121b、123bを備える構成であるため、塗液等によりフィルム105が汚染し、フィルム105を取り替える必要性の頻度が、吸引口を備えない構成に比べ、高くなる可能性がある。しかし、本実施形態のように、多孔質フィルム105の取替工程において、支持面103aを構成する上側定盤構成部材121を移動させる必要がないため、上側定盤構成部材121の支持面103aの所定位置を保持できるので、取替工程を容易かつ迅速に実施することができる。
【0034】
なお、
図2で示すように、巻取ロール131及び送出ロール129間に延在し、両定盤構成部材121、123に挟持された状態の多孔質フィルム105(フィルム105の上面を2点鎖線で示す。)は、両定盤構成部材121、123から解放された状態の実線で示されるフィルム105に比べ、
図2の上下方向に関し上方に延在するように、両定盤構成部材121、123と、両ロール129、131とが配置されている。このように、両ロール129、131間に延在する多孔質フィルム105に関し、解放されたフィルム105(実線)が延在する高さを、挟持されたフィルム105(二点鎖線)が延在する高さより
図2の上下方向上方にずらすことにより、多孔質フィルム105の弛みが発生することを防止し、多孔質フィルム105が平坦な状態で両定盤構成部材121、123に挟持させることができる。なお、挟持された多孔質フィルム105が延在する高さが、解放された多孔質フィルム105が延在する高さより、
図2の上下方向下方になるような位置関係とすることも可能である。
【0035】
本実施形態では、ガラス基板109、すなわち被支持物の定盤103に対する浮上量を調節する手段として、気体を供給する吐出口と気体を吸引する吸引口とを有する構成としたが、本発明はこの構成に限定されず、吸引口を有さない吐出口のみを有する定盤を備える非接触支持装置及び塗布装置であっても本発明は適用できる。
【0036】
さらに、本実施形態の定盤は、一対の定盤構成部材により絞り部材である多孔質フィルムを挟持する構成であるが、本発明はこの構成に限定されない。単一部材から構成される定盤を用いて、絞り部材を支持する定盤の上面(支持面)又は定盤の上面に対向する定盤の下面に絞り部材を載置する構成とすることも可能である。但し、定盤の支持面に対する被支持物の浮上量に関する精度を考慮すると、絞り部材は、定盤の支持面に対向する定盤の下面に配置することが好ましい。
【0037】
本実施形態では、供給ロール129と巻回ロール131が、ガラス基板109の搬送方向Tに沿って配置されているが、定盤103の幅方向W(すなわち、搬送方向Tに直交する方向)に沿って配置することも可能である。すなわち、両ロール129、131間に定盤103が配置される関係であれば良い。
【0038】
上記実施形態において、定盤103が載置手段として用いられているが、本発明の載置手段は、当該定盤に限定されない。塗布作業、測定作業などで使用するための所定の平面度を有する平面を備え、所定の剛性、硬度、耐摩耗性を有する種々の台が載置手段として利用できる。また、定盤として、鋳鉄製の箱型定盤、JIS定盤、石定盤等が利用できる。
【符号の説明】
【0039】
101 塗布装置
103 定盤
103a 支持面
105 多孔質フィルム
106 ガントリ
107 スリットノズル
120 制御部
121 上側定盤構成部材
125 下側定盤構成部材
129 送出ロール
131 巻取ロール
132 エアシリンダ