特許第6043129号(P6043129)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6043129シリアルデータの受信回路および受信方法、オーディオ信号処理回路、電子機器、オーディオシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043129
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】シリアルデータの受信回路および受信方法、オーディオ信号処理回路、電子機器、オーディオシステム
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/00 20060101AFI20161206BHJP
   H04L 7/033 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   H04L7/00 080
   H04L7/033
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-192191(P2012-192191)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-49973(P2014-49973A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】横山 靖友
【審査官】 阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−061589(JP,A)
【文献】 特開平03−242056(JP,A)
【文献】 特開2007−124044(JP,A)
【文献】 特開2001−345792(JP,A)
【文献】 米国特許第07711974(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/00
H04L 7/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mビット(Mは自然数)を単位として伝送され、受信すべきKビット(Kは自然数)を含むシリアルデータと、前記シリアルデータのビットごとにエッジを有するビットクロックと、前記Mビットごとにエッジを有するワードクロックと、を受信する受信回路であって、
前記ビットクロックをN逓倍(Nは自然数)することによりシステムクロックを生成する逓倍回路と、
前記ビットクロックおよび前記ワードクロックと同期して、前記シリアルデータに含まれる受信すべきKビットをパラレルデータに変換するシリアルパラレル変換器と、
前記システムクロックをカウントし、そのカウント値が設定値に達するたびにカウント値を初期値にリセットする動作を繰り返す第1カウンタと、
前記システムクロックをカウントし、そのカウント値が設定値に達するたびにカウント値を初期値にリセットする動作を繰り返す第2カウンタと、
前記シリアルパラレル変換器から出力されるKビットのパラレルデータをラッチするラッチ回路と、
前記第1カウンタおよび前記第2カウンタの設定値を動的に設定する周期設定部と、
を備えることを特徴とする受信回路。
【請求項2】
前記周期設定部は、所定のタイミングにおける前記第1カウンタのカウント値にもとづいて、前記設定値を動的に設定することを特徴とする請求項1に記載の受信回路。
【請求項3】
前記所定のタイミングは、前記ワードクロックのエッジのタイミングであることを特徴とする請求項2に記載の受信回路。
【請求項4】
前記第1カウンタの前記初期値をα、所定の定数をx、yとするとき、前記周期設定部は、前記設定値がα+M×N−1である第1状態と、α+M×N−1−xである第2状態と、α+M×N−1+yである第3状態と、を遷移するステートマシンを含むことを特徴とする請求項2に記載の受信回路。
【請求項5】
前記ステートマシンは、前記ワードクロックのエッジのタイミングにおける前記第1カウンタのカウント値にもとづいて状態遷移することを特徴とする請求項4に記載の受信回路。
【請求項6】
前記状態遷移には、前記カウント値に対してヒステリシスが設定されることを特徴とする請求項5に記載の受信回路。
【請求項7】
前記シリアルデータは、KビットのLチャンネルデータとKビットのRチャンネルデータを含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の受信回路。
【請求項8】
前記第2カウンタのカウント値が第1所定値、第2所定値に達するたびにアサートされる第1、第2ストローブ信号を生成するストローブ信号生成部をさらに備え、
前記ラッチ回路は、前記第1ストローブ信号と同期して前記Lチャンネルデータをラッチし、前記第2ストローブ信号と同期して前記Rチャンネルデータをラッチすることを特徴とする請求項7に記載の受信回路。
【請求項9】
前記シリアルデータは、オーディオデータを含むことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の受信回路。
【請求項10】
ひとつの半導体基板に一体集積化されたことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の受信回路。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の受信回路と、
前記受信回路が受信したデータを信号処理する処理ユニットと、
を備えることを特徴とするオーディオ信号処理回路。
【請求項12】
請求項11に記載のオーディオ信号処理回路を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項13】
請求項11に記載のオーディオ信号処理回路を備えることを特徴とするオーディオシステム。
【請求項14】
Mビット(Mは自然数)を単位として伝送され、受信すべきKビット(Kは自然数)を含むシリアルデータと、前記シリアルデータのビットごとにエッジを有するビットクロックと、前記Mビットごとにエッジを有するワードクロックと、を受信する方法であって、
前記ビットクロックをN逓倍(Nは自然数)することによりシステムクロックを生成するステップと、
前記ビットクロックおよび前記ワードクロックと同期して、前記シリアルデータに含まれる受信すべきKビットをパラレルデータに変換するステップと、
第1カウンタによって、前記システムクロックをカウントし、そのカウント値が設定値に達するたびにカウント値を初期値にリセットする動作を繰り返すステップと、
第2カウンタによって、前記システムクロックをカウントし、そのカウント値が設定値に達するたびにカウント値を初期値にリセットする動作を繰り返すステップと、
前記Kビットのパラレルデータをラッチするステップと、
前記第1カウンタおよび前記第2カウンタの設定値を動的に設定するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項15】
所定のタイミングにおける前記第1カウンタのカウント値にもとづいて、前記設定値を動的に設定することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記所定のタイミングは、前記ワードクロックのエッジのタイミングであることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記設定値がM×Nである第1状態と、M×N−1である第2状態と、M×N+1である第3状態と、を遷移することを特徴とする請求項14から16のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリアルデータを受信する受信回路に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路間で情報を伝送するために、2線式あるいは3線式のシリアルインタフェースが利用される。2線式シリアルインタフェースとしてはIC(Inter Integrated Circuit)バス規格が、3線式シリアルインタフェースとしてはデジタルオーディオ信号を伝送するためのIS(Inter Integrated circuit Sound)バス規格が、提唱、実用化されている。
【0003】
図1は、ISの信号フォーマットを示す図である。シリアルデータDATAは、サンプリング周期Tsごとに、64ビットを含む。64ビットのうち、32ビットがLチャンネルに、32ビットがRチャンネルに割り当てられている。Lチャンネル、Rチャンネルごとのデータを1ワードという。
ビットクロックBCKは、シリアルデータDATAのビットごとにポジティブエッジを有する。つまりビットクロックBCKの周波数は、サンプリング周波数fs(=1/Ts)の64倍である。
【0004】
S伝送では、これらに加えて、1ワード(32ビット)ごとにポジティブエッジとネガティブエッジを有するワードクロックLRCKが入力される。ワードクロックLRCKがローレベルのときLチャンネルのデータが伝送され、ハイレベルのときRチャンネルのデータが伝送される。
【0005】
S通信では、1ワード32ビットのうち、最大24ビットがオーディオデータに割り当てられる。このビット長Kは音質に応じて可変である。左詰め(Left-justified)の場合、32ビットのうち上位Kビットがオーディオ信号を示すデータ(オーディオデータという)となり、右詰め(Right-justified)の場合、下位Kビットがオーディオデータとなる。LチャンネルのオーディオデータをLchデータ、RチャンネルのオーディオデータをRchデータと称する。
【0006】
以上がIS通信のフォーマットの概要である。
【0007】
図2は、本発明者が検討したIS通信用インタフェースを備える受信回路100rの構成を示すブロック図である。なお、図2の受信回路100rの構成およびその動作を、公知技術と認定してはならない。受信回路100rは、シリアルインタフェース回路10、逓倍回路30、DSP(Digital Signal Processor)の入力段50を備える。
【0008】
シリアルインタフェース回路10は、ワードクロックLRCK、ビットクロックBCK、データDATAを受け、パラレルシリアル変換し、LチャンネルデータD_Lch、RチャンネルデータD_Rchを、後段のDSPの入力段50に出力する。
【0009】
逓倍回路30はたとえばPLL回路を含み、ビットクロックBCKを16逓倍することにより、サンプリング周波数fsの1024倍のシステムクロックPLLCKを生成する。データの受信先であるDSPは、このシステムクロックPLLCKと同期してオーディオデータD_Lch、D_Rchを処理する。
【0010】
シリアルインタフェース回路10は、シリアルパラレル変換器11、第1カウンタ12、カウンタクリア回路16を備える。
【0011】
シリアルパラレル変換器11は、ビットクロックBCKおよびワードクロックLRCKと同期して、シリアルデータDATAに含まれるLチャンネルデータD_Lch、RチャンネルデータD_Rchを抽出する。
【0012】
シリアルパラレル変換器11は、シフトレジスタ14、LchバッファBUF_L、RchバッファBUF_R、タイミング制御部15を含む。
シリアルデータDATAは、32ビットのLチャンネルデータと、32ビットのRチャンネルデータを含むが、それぞれのうち実効的なオーディオデータは最長24ビットである。したがってシフトレジスタ14は、24ビットで構成されており、シリアルデータDATAをビットクロックBCKと同期して1ビットずつシフトしていく。シフトレジスタ14からは、24ビットのパラレルデータDpが出力される。
【0013】
タイミング制御部15は、ワードクロックLRCKのネガティブエッジから、ビットクロックBCKを24個カウントすると、第1タイミング信号をアサートする。LchバッファBUF_Lは、第1タイミング信号がアサートされると、シフトレジスタ14に格納されるパラレルデータDpをLチャンネルデータD_Lchとしてラッチする。
またタイミング制御部15は、ワードクロックLRCKのネガティブエッジから、ビットクロックBCKを(32+24)個カウントすると、あるいはワードクロックLRCKのポジティブエッジからビットクロックBCKを24個カウントすると、第2タイミング信号をアサートする。RchバッファBUF_Rは、第2タイミング信号がアサートされると、シフトレジスタ14に格納されるパラレルデータDpをRチャンネルデータD_Rchとしてラッチする。
【0014】
第1カウンタ12は、クリアコマンドが発行されると、次のワードクロックLRCKのネガティブエッジのタイミングでゼロクリアされる。その後、第1カウンタ12は、ビットクロックBCKと同期してカウント動作を行い、カウント値CNT1が所定値(たとえば1023)に達するたびに0に戻り、再びカウントアップする動作を繰り返す。
【0015】
カウンタクリア回路16は、第1カウンタ12のカウント値CNT1を受け、カウント値CNT1が所定値(たとえば800)に達するたびに、カウンタクリア信号CNT_CLRをアサートする。
【0016】
DSPの入力段50は、Lchラッチ52、Rchラッチ54、第2カウンタ(DSPシーケンスカウンタ)56、ストローブ信号生成部58を備える。
【0017】
第2カウンタ56は、カウントクリア信号CNT_CLRがアサートされるたびにゼロクリアされ、カウントアップする動作を繰り返す。ストローブ信号生成部58は、第2カウンタ56のカウント値CNT2が第1所定値(たとえば0)になるたびに言い換えればカウントクリア信号CNT_CLRがアサートされるたびに、第1ストローブ信号STRB1をアサートし、カウント値CNT2が第2所定値(たとえば512)になるたびに第2ストローブ信号STRB2をアサートする。
【0018】
Lchラッチ52は、第1ストローブ信号STRB1と同期して、LchバッファBUF_Lに格納されるLチャンネルデータD_Lchをラッチする。同様にRchラッチ54は、第2ストローブ信号STRB2と同期して、RchバッファBUF_Rに格納されるRチャンネルデータD_Rchをラッチする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2000−078027号公報
【特許文献2】特開平6−224873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明者は図2の受信回路100rの回路動作を検討し、以下の課題を認識するに至った。図3(a)、(b)は、図2の受信回路100rの動作を示す波形図である。
図3(a)は、システムクロックPLLCKの周波数が、1024×fsを保っているときの動作である。この場合、カウンタクリア信号CNT_CLRは、LチャンネルデータLの中央付近でアサートされるため、安定的にデータが取り込まれる。
【0021】
実際の回路では、ノイズ等の影響によってシステムクロックPLLCKの周波数は変動し、1024×fsから逸脱する。この場合、第1カウンタ12のクリアのタイミングが、ワードクロックLRCKのネガティブエッジから逸脱していく。その結果、入力段50のLchラッチ52によって、Lが取り込まれたり、Ln+1が取り込まれたりし、動作が不安定となる。
【0022】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものあり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、システムクロックの周波数の変動によらずに、シリアルデータを安定的に受信可能な受信回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明のある態様は、Mビット(Mは自然数)を単位として伝送され、受信すべきKビットを含むシリアルデータと、シリアルデータのビットごとにエッジを有するビットクロックと、Mビットごとにエッジを有するワードクロックと、を受信する受信回路に関する。受信回路は、ビットクロックをN逓倍(Nは自然数)することによりシステムクロックを生成する逓倍回路と、ビットクロックおよびワードクロックと同期して、シリアルデータに含まれる受信すべきKビットをパラレルデータに変換するシリアルパラレル変換器と、システムクロックをカウントし、そのカウント値が設定値に達するたびにカウント値を初期値にリセットする動作を繰り返す第1カウンタと、システムクロックをカウントし、そのカウント値が設定値に達するたびにカウント値を初期値にリセットする動作を繰り返す第2カウンタと、シリアルパラレル変換器から出力されるKビットのデータをラッチするラッチ回路と、第1カウンタの設定値を動的に設定する周期設定部と、を備える。
【0024】
この態様によると、システムクロックの変動に応じて、第1カウンタ、第2カウンタの設定値、すなわち周期を動的に設定することにより、シリアルデータを安定的に受信できる。
【0025】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る受信回路によれば、シリアルデータを安定的に受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ISの信号フォーマットを示す図である。
図2】本発明者が検討したIS通信用インタフェースを備える受信回路の構成を示すブロック図である。
図3図3(a)、(b)は、図2の受信回路の動作を示す波形図である。
図4】実施の形態に係る受信回路の構成を示すブロック図である。
図5図5(a)は、周期設定部のステートマシンの状態遷移図であり、図5(b)は、ワードクロックLRCKのネガティブエッジにおけるカウント値とカウント周期を示す図である。
図6図6(a)〜(c)は、受信回路の動作を示す波形図である。
図7】受信回路を備えるオーディオ信号処理回路を用いたオーディオシステムの構成を示すブロック図である。
図8図8(a)〜(c)は、電子機器あるいはオーディオコンポーネント装置の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0029】
図4は、実施の形態に係る受信回路100の構成を示すブロック図である。受信回路100は、ソースシンクロナス方式の3線シリアルインタフェース回路であり、図示しない送信回路から、ビットクロックBCK、ワードクロックLRCK、シリアルデータDATAを受ける。ビットクロックBCKは、シリアルデータDATAのビットごとにエッジを有している。以下では、ISバス規格に準拠したデジタルオーディオデータを受けるシステムを例に説明をする。
【0030】
オーディオ信号はサンプリング周波数fsでサンプリングされている。シリアルデータDATAは、サンプリング周期Ts(=1/fs)ごとに、64ビットを含む。64ビットのうち、32ビットがLチャンネルに、32ビットがRチャンネルに割り当てられている。Lチャンネル、Rチャンネルごとの32ビットを1ワードという。つまりシリアルデータDATAは、2ワード、M(=64ビット)を単位として伝送される。
【0031】
ビットクロックBCKは、シリアルデータDATAのビットごとにポジティブエッジを有する。つまりビットクロックBCKの周波数は、サンプリング周波数fs(=1/Ts)の64倍である。
【0032】
S伝送では、これらに加えて、1ワード(32ビット)の境界にポジティブエッジとネガティブエッジを有するワードクロックLRCKが伝送される。ワードクロックLRCKがローレベルのときLチャンネルのデータが伝送され、ハイレベルのときRチャンネルのデータが伝送される。
【0033】
S通信では、1ワード、32ビットのうち、最大でK(=24)ビットがオーディオデータに割り当てられる。IS通信では、1ワード32ビットのうち、Kビット(=24)が受信すべき有効なビットであり、左詰め(Left-justified)の場合、32ビットのうち上位24ビットがオーディオ信号を示すオーディオデータに割り当てられる。Lチャンネルのオーディオデータ(24ビット)をLchデータD_Lch、RチャンネルのオーディオデータをRchデータD_Rchと称する。
【0034】
受信回路100は、シリアルインタフェース回路10、逓倍回路30、入力段50、周期設定部70を備え、ひとつの半導体基板上に一体集積化される。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのICとして集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0035】
シリアルインタフェース回路10は、ワードクロックLRCK、ビットクロックBCK、データDATAを受け、パラレルシリアル変換し、LチャンネルデータD_Lch、RチャンネルデータD_Rchを、後段のDSPの入力段50に出力する。
【0036】
逓倍回路30は、ビットクロックBCKをN(Nは2以上の整数であり、本実施の形態ではN=16とする)逓倍することにより、サンプリング周波数fsのM×N(=1024)倍のシステムクロックPLLCKを生成する。たとえば逓倍回路30はPLL回路で構成される。
【0037】
データの受信先であるDSP(Digital Signal Processor)50は、このシステムクロックPLLCKと同期してオーディオデータD_Lch、D_Rchを処理する。
【0038】
シリアルインタフェース回路10は、シリアルパラレル変換器11、第1カウンタ12を備える。
【0039】
シリアルパラレル変換器11は、ビットクロックBCKおよびワードクロックLRCKと同期して、シリアルデータDATAに含まれるLチャンネルデータD_Lch、RチャンネルデータD_Rchをパラレルデータに変換する。
【0040】
シリアルパラレル変換器11は、シフトレジスタ14、LchバッファBUF_L、RchバッファBUF_R、タイミング制御部15を含む。
シリアルデータDATAは、32ビットのLチャンネルデータと、32ビットのRチャンネルデータを含むが、それぞれのうち実効的なオーディオデータは最長24ビットである。したがってシフトレジスタ14は、24ビットで構成されており、シリアルデータDATAをビットクロックBCKと同期して1ビットずつシフトしていく。シフトレジスタ14からは、24ビットのパラレルデータDpが出力される。
【0041】
タイミング制御部15は、ワードクロックLRCKのネガティブエッジから、ビットクロックBCKを24個カウントすると、第1タイミング信号をアサートする。LchバッファBUF_Lは、第1タイミング信号がアサートされると、シフトレジスタ14に格納されるパラレルデータDpをLチャンネルデータD_Lchとしてラッチする。
またタイミング制御部15は、ワードクロックLRCKのネガティブエッジから、ビットクロックBCKを(32+24)個カウントすると、あるいはワードクロックLRCKのポジティブエッジからビットクロックBCKを24個カウントすると、第2タイミング信号をアサートする。RchバッファBUF_Rは、第2タイミング信号がアサートされると、シフトレジスタ14に格納されるパラレルデータDpをRチャンネルデータD_Rchとしてラッチする。第1、第2タイミング信号がアサートされるタイミングは、受信すべきデータの配置(左詰、右詰)、受信すべきデータのビット数Kに応じて設定すればよい。
【0042】
第1カウンタ12は、クリアコマンドが発行されると、次のワードクロックLRCKのネガティブエッジのタイミングでゼロクリアされる。その後、第1カウンタ12は、システムクロックPLLCKをカウントし、カウント値CNT1が、後述の周期設定部70から与えられた設定値DSETに達するたびに初期値α(たとえば0)に戻り、再びカウントアップする動作を繰り返す。つまり、第1カウンタ12のカウント周期は、周期設定部70によって動的に制御される。
【0043】
入力段50は、Lchラッチ52、Rchラッチ54、第2カウンタ56、ストローブ信号生成部58を備える。
【0044】
第2カウンタ(DSP内部カウンタ)56は、クリアコマンドが発行されると、次のワードクロックLRCKのネガティブエッジのタイミングでゼロクリアされる。その後、第2カウンタ56はシステムクロックPLLCKをカウントし、そのカウント値CNT2が後述の周期設定部70から与えられた設定値DSETに達するたびに初期値β(たとえば0)に戻り、再びカウントアップする動作を繰り返す。
【0045】
ストローブ信号生成部58は、第2カウンタ56のカウント値CNT2が第1所定値(たとえば0)になるたびに、第1ストローブ信号STRB1をアサートし、カウント値CNT2が第2所定値(たとえば512)になるたびに第2ストローブ信号STRB2をアサートする。
【0046】
Lchラッチ52は、第1ストローブ信号STRB1と同期して、LchバッファBUF_Lに格納されるLチャンネルデータD_Lchをラッチする。同様にRchラッチ54は、第2ストローブ信号STRB2と同期して、RchバッファBUF_Rに格納されるRチャンネルデータD_Rchをラッチする。
【0047】
周期設定部70は、ワードクロックLRCKのネガティブエッジのタイミングにおける第1カウンタ12のカウント値CNT1にもとづいて、設定値DSETを動的に設定する。
【0048】
周期設定部70は、第1状態φ1〜第3状態φ3の間を遷移する。
第1カウンタ12の初期値をαとし、x、yを所定数とするとき、第1状態φ1では、設定値DSETがα+M×N−1であり、第2状態φ2では、設定値DSETがα+M×N−1−xであり、第3状態φ3では、設定値DSETがα+M×N−1+yである。α=0、x=y=1のとき、第1状態φ1において、カウント周期は1024であり、カウント値CNT1は0から1023を繰り返し、第2状態φ2において、カウント周期は1023であり、カウント値CNT2は0から1022を繰り返し、第3状態φ3において、カウント周期は1025であり、カウント値CNT3は0から1024を繰り返す。
【0049】
図5(a)は、周期設定部70のステートマシンの状態遷移図であり、図5(b)は、ワードクロックLRCKのネガティブエッジにおけるカウント値とカウント周期を示す図である。図5(a)に示すように、ステートマシンは、ワードクロックLRCKのエッジのタイミングにおける第1カウンタ12のカウント値CNT1にもとづいて状態遷移する。状態遷移には、カウント値CNT1に対してヒステリシスが設定される。ここではヒステリシス幅は16クロック分の場合が示される。ヒステリシス制御により、状態が頻繁に遷移するのを抑制でき、系を安定化できる。
【0050】
以上が受信回路100の構成である。続いてその動作を説明する。
図6(a)〜(c)は、受信回路100の動作を示す波形図である。図6(a)に示すように、システムクロックPLLCKが、M×N×fsを保っているとき、ワードクロックLRCKのネガティブエッジにおける第1カウンタ12のカウント値CNT1は0付近となる。このとき周期設定部70は第1状態φ1であり、第1カウンタ12のカウント周期はM×Nである。
【0051】
システムクロックPLLCKが、M×N×fs(=1024×fs)を上回る状態が持続すると、図6(b)に示すように、ワードクロックLRCKのネガティブエッジにおける第1カウンタ12のカウント値CNT1は増大する。やがてワードクロックLRCKのネガティブエッジにおける第1カウンタ12のカウント値CNT1がしきい値16を超えると、第3状態φ3に遷移し、第1カウンタ12のカウント周期がM×N+x(=1025)となる。
【0052】
システムクロックPLLCKが、M×N×fs(=1024×fs)を下回る状態が持続すると、図6(c)に示すように、ワードクロックLRCKのネガティブエッジにおける第1カウンタ12のカウント値CNT1は低下する。やがてワードクロックLRCKのネガティブエッジにおける第1カウンタ12のカウント値CNT1が1008以下になると、第2状態φ2に遷移し、第1カウンタ12のカウント周期がM×N−y(=1022)となる。
【0053】
以上が受信回路100の動作である。この受信回路100によれば、システムクロックPLLCKの周波数が変動すると、それに応じて第1カウンタ12および第2カウンタ56のカウント周期が、M×Nを基準として、M×N−x、M×N+yの2値で増減する。
この方式では、サンプリング周期Ts=1/fsごとに、xまたはyのクロック周波数のずれを吸収することができる。たとえばノイズの影響により、システムクロックPLLCKに100クロック分のずれが生じた場合、その後、100/x回のサンプリング周期、または100/y回のサンプリング周期で、ニュートラルな状態に復帰することができる。
【0054】
続いて受信回路100の用途を説明する。
図7は、受信回路100を備えるオーディオ信号処理回路200を用いたオーディオシステム500の構成を示すブロック図である。
【0055】
オーディオシステム500は、音源2、オーディオ信号処理回路200、アンプ8L、8R、スピーカ9L、9Rを備える。
【0056】
オーディオ信号処理回路200は、CDプレイヤなどの音源2と3線シリアルインタフェースを介して接続され、デジタルオーディオ信号を受ける。オーディオ信号処理回路200は、上述の受信回路100に加えて、複数の処理ユニット203、D/Aコンバータ204を備える。入力段50および複数の処理ユニット203を、DSP202と総称する。
【0057】
入力段50は、音源2からのデジタルオーディオ信号を受け、LチャンネルデータD_LchおよびRチャンネルデータD_Rchを生成する。入力段50から出力されたデータD_Lch、D_Rchは、後段の処理ユニット203に入力される。処理ユニット203は、デジタルボリウム回路、マルチバンドイコライザ、ラウドネス回路、クロスオーバフィルタ、バスブースト回路などであり、データD_Lch、D_Rchに所定の信号処理を施す。
【0058】
処理ユニット203の信号処理は、入力段50の第2カウンタ(DSPシーケンスカウンタ)56のカウント値CNT2と同期している。すなわち、カウント値CNT2が、第1の範囲のとき、最初の処理ユニット203が信号処理を行い、第2の範囲のとき、2番目の処理ユニット203が信号処理を行う。
【0059】
D/Aコンバータ204L、204Rはそれぞれ、処理ユニット203を経由したオーディオデータD_Lch、D_Rchをデジタル/アナログ変換し、アナログオーディオ信号S_Lch、S_Rchを生成する。
【0060】
アンプ8L、8Rは、アナログオーディオ信号S_Lch、S_Rchを増幅し、スピーカ9L、9Rへと出力する。
【0061】
図7のオーディオ信号処理回路200は、車載用オーディオ装置、家庭用のオーディオコンポーネント装置に利用することもできる。あるいは、オーディオ信号処理回路200は、テレビ、デスクトップPC、ノートPC、タブレットPC、携帯電話端末、デジタルカメラ、ポータブルオーディオプレイヤなどの電子機器に搭載することもできる。
【0062】
図8(a)〜(c)は、電子機器あるいはオーディオコンポーネント装置の外観図である。図8(a)は電子機器の一例であるディスプレイ装置600である。ディスプレイ装置600は、筐体602、スピーカ9を備える。オーディオ信号処理回路200は筐体に内蔵され、スピーカ9を駆動する。
【0063】
図7(b)はオーディオコンポ700である。オーディオコンポ700は、筐体702、スピーカ9を備える。オーディオ信号処理回路200は筐体702に内蔵され、スピーカ9を駆動する。
【0064】
図7(c)は電子機器の一例である小型情報端末800である。小型情報端末800は、携帯電話、PHS(Personal Handy-phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、タブレットPC(Personal Computer)、オーディオプレイヤなどである。小型情報端末800は、筐体802、スピーカ9、ディスプレイ804を備える。オーディオ信号処理回路200は筐体802に内蔵され、スピーカ9を駆動する。
【0065】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0066】
実施の形態では、ISバス規格のシリアルデータを例に説明したが本発明はそれに限定されず、ICバス規格など、その他の規格に準拠したシリアルデータの伝送にも利用することができる。この場合、パラメータである自然数M、K、x、yの値を適宜変更すればよい。また、シリアルデータを伝送する線は、複数であってもよい。
【0067】
実施の形態は、周期設定部70が3つの状態を遷移し、第1カウンタ12の周期を、3値で切りかえる場合を説明したが、本発明はそれには限定されず、周期を2値、あるいは、4値以上で切りかえてもよい。
【0068】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0069】
BCK…ビットクロック、DATA…シリアルデータ、LRCK…ワードクロック、PLLCK…システムクロック、100…受信回路、10…シリアルインタフェース回路、12…第1カウンタ、14…シフトレジスタ、16…カウンタクリア回路、30…逓倍回路、50…入力段、52…Lchラッチ、54…Rchラッチ、56…第2カウンタ、58…ストローブ信号生成部、70…周期設定部、200…オーディオ信号処理回路、202…DSP、203…処理ユニット、204…D/Aコンバータ、500…オーディオシステム、2…音源、8…アンプ、9…スピーカ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8