【実施例】
【0015】
実施例に係る管接続部材の脱着装置につき、
図1から
図15を参照して説明する。
図1に示すように、本実施例の流体管1は、例えば、地中に埋設される上水道用のダクタイル鋳鉄製であり、断面視略円形状に形成され、内周面がモルタル層で被覆されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいは石綿、コンクリート製、塩化ビニール、ポリエチレン若しくはポリオレフィン製等であってもよい。更に尚、流体管の内周面はモルタル層に限らず、例えばエポキシ樹脂等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。また、本実施例では流体管内の流体は上水であるが、本実施例の上水に限らず、例えば工業用水や農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0016】
また、流体管1には、流体管1に連通する連通管2が接続されて分岐部が設けられている。そして、この連通管2には、本発明に係る管接続部材としてのフランジ短管4及び空気弁6がそれぞれ一対のフランジ3、5を介して接続されている。また、それぞれのフランジ3、5は、複数(本実施例では4つ)の挿通孔7を有しており、これらの挿通孔7を用いて既設ボルト・ナット8によって締結されている。尚、この空気弁6は、流体管1内の空気を抜くためまたは空気を導入するために利用される。
【0017】
次に、本発明に係る管接続部材の脱着装置9について
図2から
図3に基づいて説明する。脱着装置9は、管接続部材のフランジ3に密封状に取り付けられる取付部10と、弁体11が収納される弁収容部12からなる。
【0018】
取付部10は、
図2に示すように、弁収容部12に連設されフランジ3の外径より若干大きい内径の円弧状をなす第1円弧状部材13と、フランジ3の外径より若干大きい内径の円弧状をなす第2円弧状部材14と、後述するようにフランジ3の対向面間に挿入されてフランジ3間に間隙を形成する間隙形成手段16を有するとともに、フランジ3の外径より若干大きい内径の円弧状をなす第3円弧状部材15とから成る。また、それぞれの円弧状部材13、14、15の周方向の両端部には、後述するように各円弧状部材13、14、15同士を組付ボルト・ナット17で組み付けるための掛止部18が設けられている。
【0019】
また、第1円弧状部材13は、フランジ3の外周の略半周を覆い、第2円弧状部材14及び第3円弧状部材15は、フランジ3の外周の残りを略等分して覆うように、取付部10が3分割されている。なお、取付部10は、さらに複数に分割されて4つ以上とされてもよく、均等に分割されても不均等に分割されても構わない。
【0020】
また、各円弧状部材13、14、15には、それらの下方から円弧の中心方向に略水平に延びる、フランジ3bの下面に向けて延設された鍔部19が形成されており、これらの鍔部19には、規制ボルト20が夫々螺合されるボルト孔21が設けられている。また、各円弧状部材13、14、15の内周壁の上下方向の中央部には、各円弧状部材13、14、15の内径方向に向かって膨出する膨出部22が形成されている。そして、各円弧状部材13、14、15が組付ボルト・ナット17によりフランジ3にその外側から取り付けられた後に、規制ボルト20が、フランジ3bに向かってねじ込まれることで、規制ボルト20の上端面と膨出部22の下面とにより、フランジ3bが挟持されて、各円弧状部材13、14、15がフランジ3bに取り付けられることで、取付部10がフランジ3bに対して固定されるようになっている。
【0021】
また、各円弧状部材13、14、15の内壁部の上部及び下部には、該内壁部に亘って形成された夫々の嵌合溝23に嵌合する弾性材から成りフランジの外周面に当接される第1密封部材24および第2密封部材25がそれぞれ配設される。この上部側の第2密封部材25の内壁は、
図4(a)に示すように、フランジ3a、3bの対向面間から離れるほど内径が漸次大となるように傾斜された傾斜面部26と、この傾斜面部26の傾斜角に比べて更に大きく傾斜されたテーパ面に形成されたテーパ面部27とを有している。一方、下部側の第1密封部材24の内壁は、フランジ3bの外周面にほぼ平行に当接されうる平行面部のみから成る。
【0022】
また、
図2及び
図3に示すように、各円弧状部材13、14、15の周方向の端面には、弾性体から成る接合部パッキン58が設けられており、各円弧状部材13、14、15同士が組付ボルト・ナット17で組み付けられた際に、流体管1内の流体の外部への漏洩が防止される。
【0023】
更に、第1円弧状部材13は、その外周壁面に、弁体11を収納する弁収容部12が連設されている。また、
図3に示すように、第1円弧状部材13の中央部には、外周側から内周側に連通され、弁体11が通過可能な横長のスリット状の挿入孔28が設けられている。
【0024】
また、第3円弧状部材15は、その内壁面に、
図2および
図3に示すように、第3円弧状部材15の外径側から内径側に延設された間隙形成片29が設けられており、間隙形成片29の先端部は、連結されている上方側のフランジ3aと下方側のフランジ3bとの対向面間に挿通可能なように比較的薄い肉厚に形成されている。また、間隙形成片29は、第3円弧状部材15内に設けられた支持棒(図示略)に枢支されている。更に、間隙形成片29の外径側端部の上方には挿通孔が穿設されており、この挿通孔には操作ボルト30が螺挿されており、この操作ボルト30が下方へ螺挿されることで、間隙形成片29の外径側端部を上方から押圧するようになっている。
【0025】
そして、これらの間隙形成片29と操作ボルト30と支持棒とにより間隙形成手段16が構成されており、間隙形成片29の先端部がフランジ3a、3bの対向面間に挿入されたのちに、操作ボルト30により間隙形成片29の外径側端部が下方に押圧されることで、支持棒を支点として梃子の原理で、間隙形成片29の内径側端部が上方に回動可能となっている。
【0026】
弁収容部12は、
図2に示すように、第1円弧状部材13の外壁から連設された略方形の筒状をなしており、末端部は、弁体11を弁収容部12内に配置するための開口部57を有する。この開口部57は、弁体11が弁収容部12内に配置されたのちに、略方形の板状の封止板31により密封されている。また、この封止板の中央部には、弁収容部12の内部から外部に貫通された貫通孔32が設けられており、貫通孔32には、後述する弁体11の操作杆33がパッキンを介して密封状に挿通されている。
【0027】
なお、弁収容部12の筒状の本体の上面には、弁収容部12内から水や空気などの流体を抜いたり導入したりする排出弁34が設けられている。
【0028】
そして、
図3に示すように、弁収容部12の内部には弁体11が配置されており、操作杆33を紙面左右方向に進退移動させることで、弁体11が弁収容部12と取付部10とを移動可能になっている。
【0029】
次に、本発明に係る弁体11について
図5に基づいて説明する。以下、弁体11の挿入及び抜出の方向を弁体11の前後方向として説明する。弁体11は、
図5に示すように、上面視で、前方に向けて凸状をなす略弧状に形成された先端部35と、略長方形をなす板状の板状部36と、弁体11を前後方向に移動操作する操作杆33が接続される後端部中央の接続部37とからなる。
【0030】
弁体11の先端部35は、その厚みが断面視で、先端側が後端側に比べて漸次小となるように形成されており、後述するようにフランジ3a、3bの対向面間に弁体11を挿入する際に、フランジ3の座面59に固着したガスケット38を剥離させやすくなっている(
図8参照)。
【0031】
また、板状部36は、先端部35から連続して金属製の板材により形成されて、略方形の薄い板状をなしており、その下面側には弾性体からなる弁体シート部材39が設けられている。そして、弁体シート部材39は板状部36の両側方に延設されており、上面視で、先端側から中央部にかけて漸次幅が広がるとともに、中央部から後端側にかけて漸次幅が狭まる略円弧状をなす可変部40を備えている。さらに、この可変部40は、その弁体11左右方向の幅は、後述するようにフランジ3の座面59が覆われるのに十分な幅となっている。また、本実施例では、自然状態において、可撓部40を含む弁体11の最大幅が、フランジ3において隣接する作業用ボルト・ナット47、47の離間間隔よりも大きくなるように形成されている。
【0032】
また、可変部40は、流体管1内の流体を遮断可能な高い遮断性を有するとともに、変形後に所定の形状に復元可能な高い弾性を有するゴム材からなる。なお、可変部40は、流体の遮断性および弾性が十分に高い材質であれば、ゴム材以外から構成されてもよい。
【0033】
また、可変部40は、外周面に沿って延設され板状部36よりも上方に僅かに突出された突出部41が設けられている。この突出部41は、後述するように弁体11がフランジ3a、3bの対向面間に挿入された際に、フランジ3の座面59に圧着される圧着用のつぶし代として機能するように、突出部41の上下方向の厚みは弾性体の弾性係数によって所定厚さに形成される。
【0034】
さらに、可変部40は、突出部41のよりも内側に、可変部40の外形に沿って、弁体11の挿入方向に延設された溝状の溝部42を備えている。この溝部42は、後述するように弁体11がフランジ3a、3bの対向面間に挿入される際に、ボルト等に接触して可変部40が変形する場合に、圧縮された可変部40の一部が逃げるための逃げ空間として機能するように、突出部41の厚みや弾性体の弾性係数によって所定幅に形成される。これにより、可変部40のフランジ3bの座面に対する追従性や密封性が向上される。
【0035】
そして、
図3及び
図5に示すように、弁体11の接続部37は、断面視略コ字形状の接続部材43からなり、接続部材43の左右側には、上下方向に貫通する貫通孔43aが設けられている。さらに、弁体11の後端部には、貫通孔43aに連通する比較的大径の挿通孔(図示略)が形成されており、これら貫通孔43a及び前記挿通孔に、該挿通孔よりも小径のスプリングピン45が挿入されていることで、弁体11が接続部材43に対し、上下方向に遊嵌状態で接続されている。また、上面側および下面側の接続部材43の後方側の中央部には貫通孔が設けられており、この貫通孔に六角穴付き止めネジ44が挿入されて、接続部材43に操作杆33が固定されている。また、操作杆33は、弁体11の挿入方向に延設されており、操作杆33の端部には、操作者により把持される把持部46が設けられている。
【0036】
次に、脱着装置9を用いて、流体管1の管路を上流側で遮断することなく管路内の流体の流れを維持したままの状態(不断流状態)で、管接続部材の脱着を行う脱着工程について、
図1、
図6乃至
図15に基づいて説明する。
【0037】
まず、
図1に示すように、既設ボルト・ナット8で接続されている連通管2のフランジ3b、及びフランジ短管4のフランジ3aを清掃し、フランジ3a、3bの状態を確認する。フランジ3にパッキン等による密封性に影響をもたらすような凹凸等があれば補修を行う。また、フランジ3a、3bの対向面間に挟まれているガスケットをフランジ3b側から剥離させて、その剥離片をフランジ3a側に退避させる。
【0038】
そして、既設ボルト・ナット8を、挿通孔7から流体が漏洩するのを防止する漏洩防止機能を有する作業用ボルト・ナット47に1本ずつ交換する。この作業用ボルト・ナット47のうち、少なくとも第1円弧状部材13が取り付けられる側、すなわち弁体の挿入側における2本の作業用ボルト・ナット47の外周には、
図6に示すように、筒状のポリ四フッ化エチレン製の筒状体56が、後述する弁体11のガイド部48として機能するように作業用ボルト47の周方向および軸方向に摺動可能に取り付けられている。なお、この筒状体56は、ポリ四フッ化エチレン以外の摺動性の良好なプラスチック材、例えば、フッ素化プラスチック、そしてポリアセタール、ナイロン、高分子量高密度ポリエチレンなどからなってもよい。更になお、筒状体の縦方向に渡ってスリット状の切欠部を形成し、すなわち当該筒状体を平面視略C字状に形成することで、ボルトに対し遊嵌状態を創出して摺動性を高めるとともに、当該筒状体を複数種の径のボルトに取り付け可能として汎用性を持たせることができる。
【0039】
次に、本発明に係る脱着装置9の取付部10を、嵌合溝23に第1密封部材24及び第2密封部材25を嵌合させた各円弧状部材13、14、15の掛止部18にそれぞれ組付ボルト・ナット17を挿入して、仮組み状態にする。また、各円弧状部材13、14、15の膨出部22及び間隙形成片29を、フランジ3の外周方向からフランジ3a、3bの対向面間に挿入して、フランジ3bの上面に当接させるとともに、鍔部19をフランジ3bの下面に配置させるようにして、各円弧状部材13、14、15をフランジ3bに仮固定する。
【0040】
そして、各組付ボルト・ナット17を締め付けて、第1密封部材24及び第2密封部材25をフランジ3の外周面に密着させる。このとき、脱着装置9の取付部10が3分割されているので、各組付ボルト・ナット17を締め付けると、各密封部材24、25が少なくとも3方向から押圧されることになる。これにより、各密封部材24、25を密着させる力が3方向に分散されるので、第1及び第2密封部材24、25は、周方向に均等に押圧されてフランジ3に密着される。
【0041】
また、鍔部19のボルト孔21に規制ボルト20をその上端面がフランジ3bの下面に当接するようにねじ込み、規制ボルト20と膨出部22とでフランジ3bを上下方向から挟み込むことで、脱着装置9をフランジ3bに固定する(
図7参照)。そして、脱着装置の弁体挿入側に、上述のガイド部48を有する2本の作業用ボルト・ナット47が位置するように、脱着装置のフランジ3に対する周方向位置を調整する。ここで、三分割された取付部材としての各円弧状部材13、14、15が、それぞれ膨出部22を備えることで、各円弧状部材13、14、15をフランジ3bに仮固定しやすくなっており、更に、安定的に仮固定されるので脱着装置の位置調整が容易になっている。
【0042】
そして、
図7及び
図8に示すように、脱着装置9をフランジ3bに固定した後に、各作業用ボルト・ナット47を1本ずつ順々に所定ピッチ量緩めて上方に夫々螺出させる。これにより、流体管1内の流体の圧力がフランジ3に作用して、フランジ3aとフランジ3bとが作業用ボルト・ナット47の緩められた所定ピッチ量分だけ相対的に管軸方向に移動して、後述するように弁体11が挿入可能な間隙がフランジ3a、3bの対向面間に生じる(
図8(a)参照)。ここで、本実施例の脱着装置9においては、
図4に示すように、第1密封部材24の内周面がフランジ3bの外周面に沿って形成されており、第1密封部材ではフランジ3bに比較的強く密着される。その一方で、第2密封部材25の内周面がフランジ3a、3bの対向面から遠ざかるに連れて内径が漸次大となるテーパ面を有するように形成されており、第2密封部材25ではフランジ3a、3bの対向面から遠い部位ほど、フランジ3aに比較的弱く密着される。これにより、フランジ3bから離す方向にフランジ3aを移動させやすくなっている。
【0043】
ここで、上述のように取付部10が3分割された各円弧状部材13、14、15からなり、第2密封部材25が少なくとも3方向から均等にフランジ3aの外周面に密接しているので、フランジ3aの一部で他の部位よりも大きな摩擦力が生じることが防止されて、フランジ3aとフランジ3bとが相対的に管軸方向に移動されやすくなっている。これにより、フランジ3a、3bの対向面間に間隙が形成されなかったり、フランジ3bがフランジ3aに対して傾いて移動されたりすることが防止され、作業効率が向上する。
【0044】
なお、フランジ3a、3bの対向面間の間隙形成が不十分であった場合には、間隙形成手段16の操作ボルト30を下方に螺入させることで、間隙形成片29をフランジ3aに作用させて間隙の形成を促すことができる。尚、間隙形成手段16は、操作ボルト30が下方に螺入されると、間隙形成片29の外径側端部を力点として梃子の原理によって、間隙形成片29の内径側端部がフランジ3aの下面に当接されてフランジ3aに上向きの力を働かせる。この上向きの力により、フランジ3aが連通管2の管軸方向に移動されて、フランジ3a、3bの対向面間に弁体11を挿入可能な間隙が形成される。
【0045】
次いで、
図8に示すように、弁体11の操作杆33を押し込み、弁体11をフランジ3の中心方向に移動させて、フランジ3aとフランジ3bとの間隙に弁体11を挿入する。ここで、弁体11の先端が、上面視で前方に凸状をなす略弧状であり、断面視で先端側が後端側に比べて漸次小となるように形成されているので、フランジ3弁体11の先端をフランジ3のガスケット38の下方側に容易に挿入することができるとともに、ガスケット38がフランジ3の座に固着されていても容易にガスケット38を剥離させながら弁体11を挿入することができる。
【0046】
また、
図8(a)の拡大図に示すように、弁収容部12の挿入孔28の下面とフランジ3bの上面とが段差を生じないように合わせられているとともに、弁体11下面の傾斜により弁体11がフランジ3bの座面59上方に導かれるようになっているので、弁体11の先端がフランジ3の座の外縁に接触しても、先端が座に引っ掛かることなく、弁体11をフランジ3a、3bの対向面間に容易且つ円滑に挿入させることができる。さらに上記したように、弁体11が接続部材43に対し、スプリングピン45を介し上下方向に遊嵌状態で接続されていることで、弁体11が上下方向に移動し易く、フランジ3a、3bの対向面間に挿入可能となっている。
【0047】
そして、
図9に示すように、弁体11の操作杆33を更に押し込み、弁体11をフランジ3の中心方向に更に移動させる。ここで、フランジ3を接続する作業用ボルト47同士の間を弁体11が通過される際には、弁体11の可変部40は、
図9(b)に示すように、作業用ボルト47に接触される。そして、可変部40が弾性体からなるとともに上面視で略円弧状をなしているので、可変部40が作業用ボルト47に接触されると、接触部位を作用点として、弁体11挿入方向と逆の方向や略円弧状の可変部40の中心方向に向けて、可変部40が作用点から漸次弾性変形されることになり、弁体11はその横幅より狭い作業用ボルト47同士の間を通過可能になっている。
【0048】
また、可変部40は、溝部42が設けられていることで、可変部40が変形する場合に、圧縮された可変部40の一部が逃げるための逃げ空間が確保されている。なおかつ、可変部40において溝部42が形成された部分は、肉厚が薄く撓みやすくなっており、可変部40が略円弧状の中心方向に向けて変形しやすくなっている。これにより、可変部40の変形に対する追従性や密封性が高められているので、弁体11を作業用ボルト47同士間に更に円滑に挿入することができる。なお、可変部40が略円弧状をなしているので、後述するように弁体11を弁収容部12に引き戻す場合においては、弁体11を作業用ボルト47同士間から円滑に抜き出すことができる。
【0049】
また、弁体11に接触される作業用ボルト47の外周面には、筒状体56からなるガイド部48が設けられ、弁体11と作業用ボルト47との摺動抵抗が低減されているので、弁体11と作業用ボルト47とが接触する場合であっても、作業用ボルト47同士間を弁体11が円滑に通過できる。さらに、このガイド部48によって作業用ボルト47のネジ山が覆われているので、弾性体からなる可変部40が作業用ボルト47のネジ山によって疵付けられることが防止される。
【0050】
なお、可変部40において作業用ボルト47に接触される部位に、低摩擦抵抗体が塗布等されて設けられてもよく、これにより、作業用ボルト47同士間を弁体11が更に円滑に通過できる。
【0051】
さらに、
図10に示すように、弁体11の操作杆33を更に押し込み、連通管2の管路を閉塞するための所定の流体遮断位置まで弁体11を移動させる。ここで、弁体11の可変部40は、作業用ボルト47同士間を通過する際には上述のように変形されるが、通過後には、自然状態の形状(閉塞形状)に弾性復元されて、弁体11により連通管2の流路が塞がれるとともにフランジ3bの座面59に対して十分に大きなシート面が確保される。
【0052】
次いで、作業用ボルト・ナット47を順々に少しずつ締め付ける。なお、上述の間隙形成手段16を使用していた場合は、操作ボルト30を操作して間隙形成片29を初期位置に戻した後に、作業用ボルト・ナット47を締め付ける。これにより、弁体11がフランジ3a、3bの対向面によって挟み込まれて、連通管2とフランジ短管4との間の流れが完全に遮断される。
【0053】
ここで、可変部40には、外形に沿って上方に突出する突出部41が形成されているので、弁体11がフランジ3a、3bで挟み込まれると、突出部41の上方側が下方に向けて圧縮される。これにより、突出部41の下方側、すなわちシート面がフランジ3bの座面59に対して押圧されて強固に密着される。また、可変部40以外のシート部は、弁体11の挿入方向に十分に大きな接触面積をもってフランジ3bの座面59に密着される。したがって、本発明に係る弁体11により、フランジ3a、3bの対向面間の流れが確実に遮断されて、流体が漏洩することが防止される。
【0054】
また、可変部40が弾性体からなる突出部41を有しており、弁体11両側のシート面とフランジ3bの座面59とに対する追従性と密封性が高められているので、フランジ3bの座面59に比べて可変部40の面積が小さくても、弁体11は流体の流れを確実に遮断することができる。
【0055】
続いて、
図11に示すように、フランジ短管4から空気弁6を取り外して、閉塞装置49をフランジ短管4に取り付ける。この閉塞装置49は、フランジ短管4に密封状に取り付けられる収容ケース50と、収容ケース50の内部に収容され、連通管2の分岐口51を閉塞する閉塞部材52と、閉塞部材52を連通管2の分岐口51に挿入する棒状の操作軸53と、作業者が操作軸53を操作するハンドル54とから構成される。なお、これらの収容ケース50、閉塞部材52、ハンドル54等については、具体的な構成および詳細な説明は省略する。
【0056】
そして、脱着装置9の各作業用ボルト47を、上述のように1本ずつ順々に所定ピッチ量緩めて上方に夫々螺出させて、フランジ3a、3bを管軸方向に相対的に移動させ、フランジ3a、3bの対向面間に間隙を生じさせる。
【0057】
次いで、
図12に示すように、脱着装置9の操作杆33を引いて、弁体11を流体遮断位置から移動させて弁収容部12に収容する。その後、閉塞装置49のハンドル54を操作して、閉塞部材52を収容ケース50から連通管2の分岐口51付近まで移動させて、分岐口51を閉塞させ、流体管1と連通管2との間の流体の流れを遮断する。
【0058】
また、
図13に示すように、閉塞装置49の閉塞具により分岐口51を閉塞した状態で、閉塞装置49のハンドル54、収容ケース50、フランジ短管4、脱着装置9を連通管2から取り外す。ここで、本実施例の脱着装置9においては、
図4に示すように、第1密封部材24の内周面がフランジ3bの外周面に沿って形成されており、第1密封部材ではフランジ3bに比較的強く密着される。その一方で、第2密封部材25の内周面がフランジ3a、3bの対向面から遠ざかるに連れて内径が漸次大となるテーパ面を有するように形成されており、第2密封部材25ではフランジ3a、3bの対向面から遠い部位ほど、フランジ3aに比較的弱く密着される。
【0059】
これにより、フランジ3bから離す方向にフランジ3aを移動させやすくなっている。すなわち、管接続部材としてのフランジ短管4を分岐部としての連通管2から取り外しやすくなっており、熟練を要することなく管接続部材を分岐部から取り外すことができる。
【0060】
そして、
図14に示すように、連通管2のフランジ3bの対向面を点検、清掃、補修した後に、連通管2に新たな補修弁55を取り付けるとともに、補修弁55に閉塞装置49の収容ケース50およびハンドル54を取り付ける。さらに、閉塞装置49のハンドル54を操作して、閉塞部材52を収容ケース50に収容する。さらにその後、
図15に示すように、補修弁55を閉じて、閉塞装置49を補修弁55から取り外し、補修弁55に新たな空気弁6’を取り付ける。
【0061】
以上により、本発明に係る管接続部材の脱着装置9は、弁体11が、該弁体11の挿入方向に対して直交する方向に変形可能な可変部40を備えることで、既設流体管1の連通管2(分岐部)と該連通管2に接続されたフランジ短管4(管接続部材)との間に介在するフランジ3が、内部に弁体11を備えた円弧状部材13、14、15(取付部材)で密封状に外嵌されるとともに、前記弁体11が、前記フランジ3を接続する複数の作業用ボルト・ナット47(接続具)同士の間を通して、前記フランジ3の対向面間に挿入される際に、弁体11がその挿入方向に対して直交する方向に変形可能となるので、作業用ボルト・ナット47同士の間隔に制限されることなく弁体11の横幅を広くでき、既設流体管1の連通管2の閉塞に十分なシート面が確保されるので、既設流体管1の連通管2の実際の内径が作業開始時の想定より大きかったり、弁体11の挿入方向が分岐部の中心からずれたりした場合であっても、弁体11により連通管2を確実に閉塞できる。
【0062】
また、前記可変部40が、前記連通管2を閉塞する閉塞形状に復元可能であるので、弁体11が作業用ボルト・ナット47等に接触されて変形しても、既設流体管1の連通管2を閉塞する際には閉塞形状に復元されて十分なシート面を確保でき、流体の漏洩を防止することができる。
【0063】
また、前記可変部40が、該可変部40の変形を開始させる作用点を少なくとも該可変部の先端側に有しているので、弁体11を挿入する際に、弁体11の先端側から漸次変形がなされて、弁体11が作業用ボルト・ナット47同士の間を通過することができる。
【0064】
また、前記可変部40の作用点が、前記可変部40の後方側に設けられているので、弁体11をフランジ3の対向面間から抜き出す際に、弁体11の後方側から漸次変形がなされて、弁体が作業用ボルト・ナット47同士の間を通過させることができる。
【0065】
また、前記可変部40が弾性体からなるので、前記可変部40を容易に該弁体11の挿入方向に対して直交する方向に変形させることができるとともに、弁体11を挿入させるフランジ3の座面に対する追従性及び密封性が向上するので、流体の漏洩を防止することができる。
【0066】
また、前記可変部40が凹状の溝部42(溝)を有するので、可変部40が弁体11の挿入方向に直交する方向に変形する際に、変形した可変部40の逃げ空間として凹状の溝部42が機能するので、可変部40を変形させやすくなり弁体11の挿入作業を容易にすることができる。なお、本実施例では凹状の溝部42は、弁体11の挿入方向に沿うように形成されているが、例えば、本発明の凹状の溝は、弁体11の挿入方向に直交する方向に形成されても構わない。
【0067】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0068】
例えば、前記実施例では、本発明に係る管接続部材を空気弁6としたが、本発明に係る管接続部材は、空気弁に限られず、仕切弁やフランジ管、その他の弁装置や流体管であってもよい。
【0069】
また、前記実施例では、本発明に係る脱着装置の取付部10が3分割されているが、取付部の分割数は、3分割に限らず、例えば4分割等の複数に分割されてもよい。
【0070】
また、前記実施例では、第2密封部材25の内壁は、フランジ3a、3bの対向面よりも離れるほど内径が漸次大となるように傾斜された傾斜面部26及びテーパ面部27とで形成されているが、例えば、
図4(b)に示すように、第2密封部材25’の内壁は、フランジ3bに平行に接触するように形成された平行面部26’とテーパ面27から形成されてもよい。
【0071】
また、前記実施例では、弁体11をフランジ3a、3bの対向面間に挿入する際の弁体11のガイド部48として、作業用ボルト47の外周に筒状体56を設けているが、ガイド部48はこれに限られず、例えば、
図6(b)に示すように、作業用ボルトの外周の中央部付近から基端部付近にかけての部位をフッ素樹脂被覆56’で加工することで、作業用ボルトの外周面の摺動性を高めるようにしてもよい。また、筒状体56に替えて帯状の摺動性の高い樹脂材等からなるシールテープなどを、作業用ボルトに取り付けてもよい。
【0072】
また、前記実施例では、弁体11の自然状態での最大幅を、フランジ3において隣接する作業用ボルト・ナット47、47の離間間隔よりも大きく形成しているが、例えば、弁体の自然状態での最大幅を、フランジ軸芯を挟んで相対向する作業用ボルト・ナットの対向間隔よりも大きく形成するようにしてもよいし、あるいは、弁体の自然状態での最大幅を、フランジにおいて隣接するボルト・ナットの離間間隔よりも小さく形成するようにしても構わない。
【0073】
また、前記実施例では、弁体11は、該弁体11の両側に可変部40を備えているが、弁体が該弁体の片側のみに可変部を備えるようにしてもよい。
【0074】
また、前記実施例では、フランジ3は、4つの挿通孔7を有しているが、例えばフランジが6つの挿通孔を有しており、これ等挿通孔のうち1つの挿通孔に挿通されていたボルト・ナットを取り除き、当該挿通孔の両隣の挿通孔に残ったボルト・ナット同士の間に、本発明に係る弁体を挿入するようにしてもよい。