特許第6043148号(P6043148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043148
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】銅エッチング液
(51)【国際特許分類】
   C23F 1/00 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   C23F1/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2012-235733(P2012-235733)
(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公開番号】特開2014-84508(P2014-84508A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 宗紀
(72)【発明者】
【氏名】繁田 朗
(72)【発明者】
【氏名】細田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】越後 良彰
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−193886(JP,A)
【文献】 特開平04−354808(JP,A)
【文献】 特開2009−185348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 1/00−4/04
B22F 1/00−9/30
C25C 5/00−5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過硫酸塩または過酸化水素を含有する水溶液であって、アルミナ基板上にスパッタリング法で形成した厚さ0.5μmの銅薄膜を20℃で浸漬した際の銅に対するエッチング速度が100nm/分以下である銅エッチング液を用いて、10μm未満である繊維状または盤状の銅微粒子をエッチングすることを特徴とするエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銅のエッチング液および銅微粒子のエッチング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、銅エッチング液は、例えば、プリント基板の製造において、基板の表面に形成された銅層をエッチングして必要とされる電気的配線パターンを作成するために用いられてきた。このような用途に使用される銅エッチング液としては、過硫酸アンモニウムなどの活性酸素を有する化合物を高濃度で水溶液が用いられている。しかしながら、このような化合物を高濃度で含有する水溶液は、エッチング速度が速すぎるために、基板等の表面に形成された銅層が薄い場合は、エッチングの制御が困難になるという問題があった。このような問題を解消するため、活性酸素を有する化合物が比較的低濃度の銅エッチング液を用いて、銅層が数μm程度と薄い銅層に対し比較的緩慢にエッチングを行う方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には水に過硫酸アンモニウムを0.5重量%以上6重量%以下含有することを特徴とする銅エッチング液が開示されている。
【0004】
また、特許文献2にはアンモニア水溶液に0.1〜1.0モル/lの過硫酸アンモニウムと、1〜10g/lの銅を溶解させたエッチング液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−330353号公報
【特許文献2】特開平11−43784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来開示されたような、銅エッチング液では、含有する活性酸素を有する化合物が比較的低濃度であっても、これを、銅微粒子に適用し、銅微粒子の表面をエッチングして、当該銅微粒子の細粒径化を図ろうとした場合、エッチング速度が速すぎて、粒径制御が難しいという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、その目的とする所は、銅微粒子、特にその体積が10μm以下である銅微粒子の表面をエッチングすることにより当該銅微粒子の細粒径化を図るに際し、細粒径化の制御を容易にする銅エッチング液およびこれを用いた銅微粒子のエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、銅エッチング液のエッチング速度を特定の特性とすることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は下記を趣旨とするものである。
(1)過硫酸塩または過酸化水素を含有する水溶液であって、アルミナ基板上にスパッタリング法で形成した厚さ0.5μmの銅薄膜を20℃で浸漬した際の銅に対するエッチング速度が100nm/分以下である銅エッチング液を用いて、10μm未満である繊維状または盤状の銅微粒子をエッチングすることを特徴とするエッチング方法。

【発明の効果】
【0009】
本発明の銅エッチング液は、そのエッチング速度が特定の範囲となっているので、銅微粒子表面のエッチングによる細粒径化に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の銅エッチング液は、活性酸素を有する化合物を含有する水溶液である。活性酸素を有する化合物としては、水溶液中で銅を銅イオンに酸化させる化合物であれば、どのような化合物でも使用することができるが、具体的には、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、過酸化水素などが挙げられ、過硫酸アンモニウムが好ましく用いられる。
【0012】
この水溶液中には、銅イオンと錯体を形成する化合物(例えばアンモニア、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等)や塩を形成する化合物(例えば、酢酸、蓚酸等の有機酸、またグリシン等のアミノ酸)を、前記活性酸素を有する化合物と共存させることができる。
【0013】
また、前記水溶液中には、食塩などの無機塩や銅イオン等を共存させることもできる。
【0014】
本発明の銅エッチング液中における活性酸素を有する化合物の濃度範囲としては、0.01質量%以上0.5質量%未満が好ましく、0.1質量%以上0.4質量%以下がより好ましい。
【0015】
本発明の銅エッチング液は、活性酸素を有する化合物を含有する水溶液であって、銅に対するエッチング速度が100nm/分以下としたものである。ここで、好ましいエッチング速度の範囲としては、5〜95nm/分である。このエッチング速度は、アルミナ基板上にスパッタリング法で形成した厚さ0.5μmの銅薄膜を20℃でエッチング液に浸漬することにより、エッチングに伴う厚み変化を測定することにより、算出することができる。このエッチング速度を100nm/分以下とした銅エッチング液は、例えば銅微粒子の表面をエッチングして銅微粒子の細粒径化する際に好適に用いることができる。
【0016】
ここで銅微粒子の形状としては、例えば、球状、角状、盤状、繊維状、不定形状などの形状の微粒子を使用することができる。
【0017】
本発明の銅微粒子は、前記銅微粒子の中で、その体積が10μm3未満である銅微粒子に特に好適に用いることができる。これらの銅微粒子は本発明のエッチング液で処理することによりその体積を10〜90%程度減らすことが出来、銅微粒子の細粒径化を行うことができる。また、銅微粒子の形状が、繊維状や盤状の場合にはそのアスペクト比を高めることもできる。ここでアスペクト比とは、繊維状微粒子の場合は、繊維長を繊維径で除算した値を言い、盤状微粒子の場合は、盤面積の平方根を厚みで除算した値を言う。
【0018】
ここで、これら銅微粒子の体積は、例えば、レーザ回折法により体積基準の平均粒径を測定し、その値を形状が真球と仮定して算出することができる。なお、銅微粒子の形状が繊維状の場合は、そのSEM像を画像処理して得られる繊維径と繊維長の値から算出することもできる。
【0019】
本発明の銅エッチング液を用いて、銅微粒子をエッチング処理する際は、このエッチング液に銅微粒子を浸漬し、攪拌しつつ液温10〜50℃程度の範囲で処理することが好ましい。 この際のエッチング液中の銅微粒子の濃度は0.2〜20質量%程度にすることが好ましい。
【0020】
ここで、エッチング処理時間としては、1〜10分程度が好ましい。
【0021】
以上述べた如く、本発明のエッチング液を使用することにより、簡単なプロセスで例えば銅微粒子の細粒径化を図ることができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0023】
[実施例1〜2、比較例1]
アンモニア水溶液中に過硫酸アンモニウムを所定濃度になるように溶解し、エッチング速度が30 nm/分(実施例1とする)、50 nm/分(実施例2とする)、150 nm/分(比較例1とする)の銅エッチング液を調製した。
【0024】
前記エッチング液に平均体積が1.36μmの市販電解銅微粒子(レーザ回折法に基づく体積基準の平均粒径は1.4μm)を浸漬し、攪拌下液温20℃で5分間エッチング処理を行い、エッチング処理後の平均体積をレーザ回折法に基づく平均粒径の測定結果から算出した。 その結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1に示すように、実施例1および2の銅エッチング液による処理により、銅微粒子の細粒径化が図られたのに対し、比較例1の銅エッチング液では、銅微粒子が殆ど酸化され溶解してしまった。
【0027】
このことから、銅エッチング液のエッチング速度を本発明の範囲とすることにより、銅微粒子のエッチングによる細粒径化を制御して行う事ができる。