特許第6043156号(P6043156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043156
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】周波数偏差補償装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/01 20060101AFI20161206BHJP
   H04B 7/15 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   H04B7/01
   H04B7/15
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-240936(P2012-240936)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-93549(P2014-93549A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】柴田 孝基
【審査官】 川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−233091(JP,A)
【文献】 特開2011−109474(JP,A)
【文献】 特開2011−182007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/005 − 7/015
H04B 7/15
H04W 4/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AM方式の放送波の再放送における周波数偏差補償装置であって、
前記放送波及び回り込み波を含むベースバンド領域の入力信号の内、前記回り込み波の搬送周波数成分と、前記入力信号に所定の処理が施されることによって生成された再放送波を含むベースバンド領域の出力信号の内、前記放送波についての前記再放送波の搬送周波数成分との位相差の変化率を監視する位相差変化率監視手段と、
前記位相差の変化率が減少しあるいは抑圧される方向に、前記入力信号または前記出力信号を周波数変換する周波数変換手段と
を備えたことを特徴とする周波数偏差補償装置。
【請求項2】
AM方式の放送波の再放送における周波数偏差補償装置であって、
前記放送波及び回り込み波を含むラジオ周波数領域の入力信号の内、前記放送波の搬送周波数成分と、前記入力信号に所定の処理が施されることによって生成された再放送波を含むラジオ周波数領域の出力信号の内、前記放送波についての前記再放送波の搬送周波数成分と、の位相差の変化率を監視する位相差変化率監視手段と、
前記位相差の変化率が減少しあるいは抑圧される方向に、前記入力信号または前記出力信号を周波数変換する周波数変換手段と
を備えたことを特徴とする周波数偏差補償装置。
【請求項3】
AM方式の放送波の再放送における周波数偏差補償装置であって、
前記放送波及び回り込み波を含むベースバンド領域の入力信号の内、前記回り込み波の搬送周波数成分と、前記入力信号に周波数変換を含む処理が施されることによって生成された再放送波を含むベースバンド領域の出力信号の内、前記放送波についての前記再放送波の搬送周波数成分との位相差の変化率を監視する位相差変化率監視手段と、
前記位相差の変化率が減少しあるいは抑圧される方向に、前記周波数変換に供される局発信号の周波数を可変する周波数変換手段と
を備えたことを特徴とする周波数偏差補償装置。
【請求項4】
AM方式の放送波の再放送における周波数偏差補償装置であって、
前記放送波及び回り込み波を含むラジオ周波数領域の入力信号の内、前記放送波の搬送周波数成分と、前記入力信号に周波数変換を含む処理が施されることによって生成された再放送波を含むラジオ周波数領域の出力信号の内、前記放送波についての前記再放送波の搬送周波数成分との位相差の変化率を監視する位相差変化率監視手段と、
前記位相差の変化率が減少しあるいは抑圧される方向に、前記周波数変換に供される局発信号の周波数を可変する周波数変換手段と
を備えたことを特徴とする周波数偏差補償装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力から入力に至る何らかの経路を介して回り込みが生じ得る系において、特性や性能の低下の要因となる周波数偏差を是正する周波数偏差補償装置に関する。
【背景技術】
【0002】
AM方式のラジオ放送波をトンネル等の内部に再送信する中継装置には、再送信された放送波の回り込みに起因する種々の問題を解決するために、回り込みキャンセラが搭載される。
図4は、回り込みキャンセラが搭載された中継装置の構成例を示す図である。
【0003】
図において、放送局からアンテナ41に到来した放送波は、局部発振器42が生成する局発信号(周波数=fLr)に基づいて周波数変換器43が行う周波数変換の下で、ベースバンド信号に変換される。
【0004】
このようなベースバンド信号は、後述する回り込み経路の伝送路推定の下でその回り込み経路の遅延時間、並びに振幅、および位相量に基づいた回り込み波の除去が加算器44によって施された回り込み補償波となる。このような回り込み補償波は、局部発振器46によって生成された局発信号(周波数=fLt)に基づいて周波数変換器47が行う周波数変換の下で、所望の周波数(以下、放送波の周波数と同じであると仮定する。)の再放送波に変換され、さらに、アンテナ48からトンネル等の内部に放射される。
【0005】
一方、制御部49は、以下の処理を行う。
(1) 配下の局部発振器46によって生成される局発信号の周波数fLtを所定のアルゴリズムに基づいて設定したり切り替える。
(2) このような周波数fLtの設定や切り替えに応じて、DFT部51、52、53を介してそれぞれ得られるベースバンド信号、回り込み補償波および再放送波を示す既知の式の組み合わせからなる連立方程式の解として、アンテナ48からアンテナ41に至る回り込み経路の伝送路推定を行う。
【0006】
(3) このような伝送路推定の結果として得られた上記回り込み経路の遅延時間、並びに振幅、および位相量が相殺される係数をトランスバーサルフィルタ50に設定する。
【0007】
トランスバーサルフィルタ50は、アンテナ48に給電される再放送波の一部に上記係数に基づく濾波処理を施すことによって、既述の回り込み経路で生じる歪みと逆位相の帰還信号を生成する。
【0008】
加算器44は、上記ベースバンド信号にこのような帰還信号を加算することによって、回り込みの相殺を図る。
【0009】
なお、本発明に関連する先行技術としては、以下に列記する特許文献1および特許文献2があった。
(1) 「入力された信号に対して所定個数の単位に分類されたPNシーケンスを利用して、相関値を各々計算する複数の相関器と、該複数の相関器の出力値を各々入力して、前記入力値に対する共役複素数値を生成する少なくとも1つの共役信号生成部と、該少なくとも1つの共役信号生成部の各出力値を、前記共役信号生成部に出力値を入力する前記相関器と隣接した前記相関器の出力値に各々乗算する少なくとも1つの乗算器と、該少なくとも1つの乗算器の出力値を加算する加算器と、該加算器の出力値から位相成分を抽出して、搬送波周波数オフセットに出力する位相抽出部とを備える」ことによって、「デジタル受信システムにおいて、ノンコヒーレントチャネルプロフィールと交差相関とを利用してシンボルタイミングオフセットと関係なく搬送波周波数オフセットを検出する」点に特徴がある搬送波周波数のオフセット検出装置…特許文献1
(2) 「移動局との間で無線波を送受信する基地局装置であって、前記基地局装置における基準周波数と前記移動局からの受信波の周波数との誤差である周波数オフセットを検出する検出手段と、前記基準周波数から前記周波数オフセットの2分の1を減算した周波数である下りリンク周波数を前記移動局へ送信することで、前記検出手段により検出された周波数オフセットに基づいて、前記移動局への無線リンクにおいて発生するドップラーシフトをキャンセルするように、前記移動局へ信号を送信するための搬送波の送信周波数を制御する周波数制御手段を有する」ことによって、「高速移動環境においても、送信局および受信局双方の受信品質を改善できる。これにより、上りリンク及び下りリンク共に安定した通信品質を実現する」点に特徴がある基地局装置…特許文献2
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4064981号公報
【特許文献2】特許第4699843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上述した従来例では、回り込み経路の伝送路推定の精度は、一般に、既述の局発信号の周波数fLr、fLtの偏差によって大きく左右される。
このような伝送路推定の精度の確保は、例えば、局部発振器42、46の源振の共通化や安定化により実現可能である。
しかし、再放送が行われるべきトンネル周辺の地形等の条件によっては、中継装置の受信部と送信部とが地理的に分離されて設置されなければならないため、上述した源振の共通化および安定化が阻まれる場合が多かった。
【0012】
本発明は、適用される系の構成に大幅な変更が伴うことなく、多様な地理的条件および環境において精度よく安定に作動する周波数偏差補償装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明では、位相差変化率監視手段は、入力信号の搬送波の成分と、前記入力信号に所定の処理が施されることによって生成された出力信号の成分の内、前記搬送波と周波数が同じある特定の成分との位相差の変化率を監視する。周波数変換手段は、前記位相差の変化率が減少する方向に、前記入力信号または前記出力信号を周波数変換する。
【0014】
すなわち、入力信号と出力信号との間における周波数の偏差は、これらの入力信号または出力信号が共通の1つの周波数の成分の位相差の変化率が減少する方向に周波数変換されることによって、圧縮される。
【0015】
請求項2に記載の発明では、位相差変化率監視手段は、入力信号の搬送波の成分と、前記入力信号に所定の処理が施されることによって生成された出力信号の成分の内、前記搬送波と周波数が同じある特定の成分との位相差の変化率を監視する。周波数変換手段は、前記位相差の変動が減少しあるいは抑圧される値に、前記入力信号または前記出力信号を周波数変換する。
【0016】
すなわち、入力信号と出力信号との間における周波数の偏差は、これらの入力信号または出力信号が共通の1つの周波数の成分の位相差の変化率が減少しあるいは抑圧される値に、周波数変換されることによって、圧縮される。
【0017】
請求項3に記載の発明では、位相差変化率監視手段は、入力信号の搬送波の成分と、前記入力信号に周波数変換を含む処理が施されることによって生成された出力信号の成分の内、前記搬送波と周波数が同じある特定の成分との位相差の変化率を監視する。周波数変換手段は、前記位相差の変化率が減少する方向に、前記周波数変換に供される局発信号の周波数を可変する。
【0018】
すなわち、入力信号と出力信号との間における周波数の偏差は、これらの入力信号または出力信号が共通の1つの周波数の成分の位相差の変化率が減少する方向に周波数変換に供される局発信号の周波数が可変されることによって、圧縮される。
【0019】
請求項4に記載の発明では、位相差変化率監視手段は、入力信号の搬送波の成分と、前記入力信号に周波数変換を含む処理が施されることによって生成された出力信号の成分の内、前記搬送波と周波数が同じある特定の成分との位相差の変化率を監視する。周波数変換手段は、前記位相差の変動が減少しあるいは抑圧される値に亘って、前記周波数変換に供される局発信号の周波数を可変する。
【0020】
すなわち、入力信号と出力信号との間における周波数の偏差は、これらの入力信号または出力信号が共通の1つの周波数の成分の位相差の変化率が減少しあるいは抑圧される値に亘って、周波数変換に供される局発信号の周波数が可変されることによって、圧縮される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、入力信号に所定の処理を施して出力信号を生成する系は、その系の入力端と出力端との間に地理的な隔たりや環境条件の格差がある場合であっても、これらの入力信号と出力信号との間における周波数の偏差に起因する性能および特性の劣化から解放される。
したがって、本発明が適用された装置や系では、その構成だけではなく、設置、運用、保守の多様な形態に柔軟に適応して所望の性能や機能を安定に果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態を示す図である。
図2】本実施形態の原理を説明する図である。
図3】本実施形態における周波数オフセット検出部の動作フローチャートである。
図4】回り込みキャンセラが搭載された中継装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
図1において、図4に示すものと機能および構成が同じものについては、同じ符号を付与し、ここでは、その説明を省略する。
【0024】
本実施形態と、図4に示す従来例との構成の相違点は、以下の点にある。
(1)周波数変換器47の出力は、周波数変換器11を介してアンテナ48の給電点に接続される。
(2)DFT部51、52の入力がそれぞれDFT部55,54の入力に接続される。
(3)これらのDFT部55,54の出力が周波数オフセット検出部12の対応する入力に接続され、その周波数オフセット検出部12の出力が周波数変換器11の局発入力に接続される。
【0025】
〔本実施形態の原理〕
図2は、本実施形態の原理を説明する図である。
以下、図1および図2を参照して本実施形態の原理を説明する。
以下では、周波数軸上で放送波と再送信波との占有帯域(搬送波の周波数を含む)が同じであることを前提とする。
【0026】
(1) 局発信号の周波数fLr、fLtの間に偏差がない場合
放送波および回り込み波の合成波と、再送信波との周波数は高い精度で同じとなり、これらの搬送波の成分の位相の差は、図2(a) に示すように、アンテナ48からアンテナ41に至る回り込み経路の位相量θ,および局部発振器42と46の位相差θd(=θfLt−θfLr)に相当する一定の値φとなる。
φ=θ+(θLt−θLr)=θ+θ
【0027】
(2) 局発信号の周波数fLr、fLtの間に偏差がある場合
(2-1) 合成波と再送信波との搬送波の周波数は共に周波数軸上で異なる周波数の成分となり(図2(b)(1),(2))
、再送信波の搬送波周波数と同じ周波数における合成波の周波数成分の位相は、これらの周波数の差δ(=fLt−fLr)と伝搬遅延時間τとに相当する位相と、周波数の差δと位相差を算出する時刻tにより時間変化する位相と、既述の一定の値φとの和Φとして与えられる(図2(b)(3))

Φ(t)=φ−2π(fLt−fLr)τ−2π(fLt−fLr)t=φ−2πδτ−2πδt
【0028】
(2-2) したがって、このΦ(t)における位相差を算出する時刻tによる位相変化量(−2πδt)から
【数1】
により周波数の差δ(=fLt−fLr)を算出する。ここでのTは位相Φ(t)を算出した時刻tの差を表す。
【0029】
(2-3) 局発信号の周波数fLr、fLtの間に偏差がある場合には、所定の周期(頻度)およびアルゴリズムに基づいてこれらの周波数fLr、fLtの何れか一方を可変し、かつ上記周波数の差δ算出処理を適宜行うことにより、局発信号の周波数fLr、fLtの間の偏差を圧縮して許容可能な限度内に抑えることができる。以下、このように局発信号の周波数fLr、fLtの間の偏差を圧縮する処理については、「圧縮処理」という。
【0030】
(2-4) ところで、周波数fLr、fLtの間における偏差は、再送信波の占有帯域が周波数軸上でシフトする要因である。したがって、上記「圧縮処理」は、図1に示すように、周波数変換器47の出力とアンテナ48の給電点との間に配置された周波数変換器11と、これに連係する周波数オフセット検出部12とによって代行可能である。
【0031】
〔本実施形態の動作〕
図3は、本実施形態における周波数オフセット検出部の動作フローチャートである。
以下、図1ないし図3を参照して本実施形態の動作を説明する。
本発明の特徴は、本実施形態では、周波数オフセット検出部12および周波数変換器11が後述するように連係して行う処理の手順にある。
【0032】
周波数オフセット検出部12は、後述するようにその周波数オフセット検出部12によって設定され、かつ適宜更新される周波数の局発信号Sを生成する。
【0033】
周波数変換器11は、周波数変換器47によって生成された再送信波を上記局発信号に基づいて周波数変換することによって、アンテナ48から放射されるべき再送信波の周波数を補正する。
【0034】
一方、DFT部54、55は、それぞれ既述のベースバンド信号と再放送波とをオーバーサンプリングの下で離散フーリエ変換することによって、正規化周波数の列からなる周波数軸上の線スペクトルの組み合わせとして、これらのベースバンド信号(既述の合成波に相当する。)と再放送波との周波数スペクトルを求める。
【0035】
周波数オフセット検出部12は、以下の処理を行う。
(1) このようにして求められた線スペクトルの内、再放送波の搬送波の周波数に相当する正規化周波数の線スペクトルと、その正規化周波数におけるベースバンド信号の線スペクトルとの位相差Φ(bN)、およびΦ((b+B)N)を算出する(図3ステップS1)。但し、Nは離散フーリエ変換のポイント数であり、整数b、およびBは位相差の取得タイミングを表す。ここで、サンプリング周波数をFsとすると、位相の差Φ(bN)、およびΦ((b+B)N)はそれぞれ、
【数2】
【数3】
である。
【0036】
(2) その位相差Φ(bN)とΦ((b+B)N)との位相変化量ΔΦ(=Φ((b+B)N)−Φ(bN)
)を算出し、位相変化量の有無を判定する(図3ステップS2)。
【0037】
(3) 位相変化量ΔΦが一定と見なし得る場合には、局発信号Sの周波数fを更新することなく、上記(1) 以降の処理をサイクリックに反復する。
【0038】
(4) 反対に、位相変化量ΔΦが変動していると見なされる場合には、以下の処理(4-1),(4-2)を行う。
【0039】
(4-1) 搬送波の周波数差δを
【数4】
により算出したδに基づいて、局発信号Sの周波数fを更新する(図3ステップS3)。
(4-2) 上記(1) 以降の処理をサイクリックに反復する。
【0040】
すなわち、周波数オフセット検出部12によって既述の「判定処理」が主導的に行われ、その「判定処理」の結果に応じて、再送信波の周波数を調整する周波数変換器11によって「圧縮処理」が行われる。
【0041】
しかも、放送波に再放送波の回り込み波が重畳する状態では、その再放送波の搬送波の周波数における放送波の線スペクトルのみの位相差の位相変化量の有無に基づいて再放送波の周波数が適切に補正され、かつ維持される。
【0042】
また、図4に示す従来例に比べて、ハードウェアの構成が大幅に変更されることなく、かつ「判定処理」や「圧縮処理」に要する処理量が極めて少なく抑えられる。
【0043】
したがって、本実施形態によれば、局発信号の周波数fLr、fLtの間における偏差に起因する回り込みキャンセラの性能や応答性の低下が回避され、このような回り込みキャンセラが搭載された再放送装置が設置されるサイトにおける地理的条件および環境に対する柔軟な適応が可能となる。
【0044】
さらに、本実施形態は、どのような方式の回り込みキャンセラが備えられた系であっても、既存の放送波や再放送波の方式に変更が加えられることなく適用可能である。
【0045】
なお、本実施形態は、トンネル内にAM方式のラジオ放送波を再送信する中継装置に適用されている。
【0046】
しかし、本発明は、このような用途に限定されず、例えば、所望の変調波(無変調波であってもよい。)の周波数変換を望ましい形態で実現する装置にも、同様に適用可能である。
【0047】
また、本実施形態では、既述の回り込みキャンセラの方式は、如何なるものであってもよい。
【0048】
さらに、本実施形態では、周波数変換器43には、アンテナ41に到来した放送波が入力されている。
【0049】
しかし、このような放送波は、メタリックなケーブルや光伝送路を介して与えられてもよく、かつ周波数変調波や位相変調波だけではなく、搬送波抑圧型のAM変調方式あるいは拡散符号との乗算(実質的な振幅変調)に基づいて生成された信号であってもよい。
【0050】
また、本実施形態では、周波数変換器11は、既述の周波数変換器43(47)で兼用され、かつ周波数オフセット検出部12が局発信号Sの周波数を求めて局部発振器42(46)と連係することにより、代替されてもよい。
【0051】
さらに、本実施形態では、再送信波は、回り込み補償波が周波数変換器47によって周波数変換されることによって生成されている。
しかし、このような再送信波は、回り込み補償波に周波数変換以外の処理(回り込み波のキャンセルを図る処理に限定されない。)が施され、あるいは特段の処理が施されることなく生成されてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、アンテナ41に到来した放送波をベースバンド信号に変換するために行われる周波数変換用の局発信号の偏差に適応可能に構成されている。
しかし、本発明は、このような構成に限定されず、例えば、周波数変換器43が備えられるか否かにかかわらず、放送波そのものに周波数偏差を伴い得る場合にも同様に適用可能である。
【0053】
さらに、本実施形態では、局発信号Sの周波数fは、位相変化量ΔΦが有る場合には、搬送波の周波数差δを
【数5】
により算出した結果を用いて、所定のアルゴリズムに基づいて順次更新されている。
【0054】
ここに、上式の右辺にある項は、以下の通りである。
(1) DFT部54が行う離散フーリエ変換の結果として得られ、かつ再送信波の搬送波周波数と同じ周波数における回り込み波(放送波)の成分の位相差φ(離散的な時間軸上で隣接する線スペクトルの間について求められる。)
(2) 本実施形態の各部が行うディジタル信号処理に適用されるサンプリング周波数F
(3) DFT部54、55が離散フーリエ変換のために参照するサンプル値の数N
【0055】
また、本実施形態では、ベースバンド信号および再送信波の離散フーリエ変換は、周波数オフセット検出部12によって既述の通りに行われる処理の応答性や精度に関する要求によっては、以下の何れの形態で行われてもよい。
【0056】
(1) DFT部54、55ではなく、それぞれDFT部51、53において、所望の契機やサンプリング周波数で行われる。
(2) DFT部54、55と周波数オフセット検出部12との段間でリタイミングが別途図られる。
【0057】
さらに、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
11,43,47,50 周波数変換器
12 周波数オフセット検出部
41,48 アンテナ
42,46 局部発振器
44 加算器
49 制御部
50 トランスバーサルフィルタ
51,52,53 DFT部
図1
図2
図3
図4