(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
防液堤の構築予定位置に水平プレート材を配置した状態で基礎版のコンクリートを打設する水平プレート材埋設工程と、前記防液堤の内周部となる位置に残存型枠を設置する残存型枠設置工程と、前記防液堤の外周面となる位置に外型枠を設置する外型枠設置工程と、前記残存型枠と前記外型枠との間にコンクリートを打設する打設工程とを備えており、
前記残存型枠設置工程では、前記残存型枠の下端内周部に埋設された垂直プレート材の内側に円周プレートを設置し、
前記円周プレートを前記垂直プレート材に溶接するとともに前記水平プレート材に溶接する
ことを特徴とする低温貯槽の構築方法。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(LNG)などを貯蔵する低温貯槽は、基礎版上に防液堤が構築され、その内側に鋼製の外槽が形成され、さらにその内側に内槽が形成された構造となっている。外槽と内槽の間には、保冷材が充填されている。
【0003】
図4に示すように、外槽110は防液堤100の内周面に設けられる側部ライナープレート111を備えている。側部ライナープレート111は、防液堤100の内周面に、周方向に所定ピッチで埋設された垂直フラットバー101間に架け渡されている(例えば、特許文献1参照)。側部ライナープレート111の下端部にはコーナーアングル112を介して、底部ライナープレート113が接続されている。コーナーアングル112は、外槽110の外周形状に沿って無端状に形成されており、基礎版120の表面に埋設されている。なお、
図4中、符号102は、コーナーアングル112と側部ライナープレート111を溶接するための裏当プレートである。裏当プレート102の上端部には、垂直フラットバー101の下端部が溶接されている。
【0004】
図5に示すように、側部ライナープレート111の上端部には、頂部ライナープレート114が突き合わされた状態で溶接されている。側部ライナープレート111と頂部ライナープレート114の外側には、円周アンカープレート103が設けられている。円周アンカープレート103の下端部には、垂直フラットバー101の上端部が溶接されている。なお、
図5中、符号104は、円周アンカープレート103と垂直フラットバー101を溶接するための裏当プレートである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、コーナーアングル112は、側部ライナープレートの位置に沿わせて配置されているが、基礎版100を構築するコンクリートの収縮により、コーナーアングル112の位置が変動する場合がある。コンクリートの収縮を考慮してコーナーアングル112の埋設位置を設定しても、コンクリートの収縮量は場所によってバラツキがあるため、全てのコーナーアングル112を所望の位置に設置するのは困難であった。
【0007】
コーナーアングル112は、側部ライナープレート111と底部ライナープレート113とを接続するとともに、側部ライナープレート111の位置決めガイドの役目を果たすところ、コーナーアングル112の位置がずれると、側部ライナープレート111とコーナーアングル112の溶接の施工性が悪化するとともに、側部ライナープレート111の位置精度が低下してしまう。また、防液堤を構築するための内型枠にプレキャストコンクリート製セグメントを用いる場合は、内型枠の形状が予め決まっているので、内型枠とコーナーアングル112との間に隙間が発生してしまい施工性が悪化してしまう問題があった。
【0008】
一方、側部ライナープレート111の上端部には、頂部ライナープレート114が突き合わされた状態で溶接されているので、裏当プレート103を設ける必要があり部品点数が多く、多くの施工手間を要し、施工性が悪い。また、側部ライナープレート111の施工が完了した後でないと、頂部ライナープレート114の施工ができないので、長い施工期間を必要としている。
【0009】
このような観点から、本発明は、施工性の良い低温貯槽およびその構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための本発明は、基礎版と、前記基礎版上に構築された防液堤と、前記防液堤の内側に構築された外槽と、前記外槽の内側に構築された内槽とを備える低温貯槽において、前記基礎版は、当該基礎版の表層部に埋設された水平プレート材を備え、前記防液堤は、前記水平プレート材上に立設された残存型枠を備え、前記残存型枠は、その下端内周部に埋設された垂直プレート材を備え、前記垂直プレート材の内側には、前記水平プレート材上に配置された円周プレートが設けられ、前記円周プレートの上端部が前記垂直プレート材に溶接され、前記円周プレートの下端部が前記水平プレート材に溶接されていることを特徴とする低温貯槽である。
【0011】
このような構成によれば、水平プレート材上で残存型枠の位置調整を行えるので、基礎版のコンクリートが収縮して水平プレート材の位置が多少変動しても、その変動に影響されることなく、残存型枠を所望の位置に容易に設置でき、施工性が良くなる。さらに、残存型枠の内側に設置される側部ライナープレートの位置精度も高めることができる。また、円周プレートを設けることで周方向に連続したプレートを確保できる。
【0012】
請求項2に係る発明では、前記外槽は、底部ライナープレートと、下端部に前記円周プレートを含む側部ライナープレートとを有し、前記水平プレート材の表面に底部ライナープレートが溶接されており、前記側部ライナープレートと前記底部ライナープレートが、前記水平プレート材を介して接続されていることを特徴とする。このような構成によれば、水平プレート材を介して、底部ライナープレートと側部ライナープレートとが周方向全周に亘って溶接され、液密性の高い外槽が形成される。
【0013】
請求項3に係る発明では、前記外槽は、前記側部ライナープレートの上方に配置される頂部ライナープレートをさらに有し、前記残存型枠の上端部には、上端面を覆う上端プレート材が埋設されており、前記上端プレート材上に頂部ライナープレートが載置され、前記上端プレート材と前記頂部ライナープレートが溶接されており、前記頂部ライナープレートの内周面と前記残存型枠の内周面は面一になっており、前記頂部ライナープレートの内周面に前記側部ライナープレートの上端部が重ね合わされた状態で、前記頂部ライナープレートと前記側部ライナープレートが溶接されていることを特徴とする。このような構成によれば、側部ライナープレートの上端部は頂部ライナープレートの内周面に重なった状態で溶接されるので、裏当プレートを必要とせず部品点数が減少して、施工性が良くなる。また、上端プレート材と頂部ライナープレートを溶接することで、側部ライナープレートの設置を待たずに、頂部ライナープレートを設置できるので、施工時間の短縮を図れる。
【0014】
請求項4に係る発明は、基礎版と、前記基礎版上に構築された防液堤と、前記防液堤の内側に構築された外槽と、前記外槽の内側に構築された内槽とを備える低温貯槽において、前記防液堤は、
前記基礎版上に立設された残存型枠を備え、前記残存型枠の上端部には、上端面を覆う上端プレート材が埋設されており、前記上端プレート材上に頂部ライナープレートが載置され、前記上端プレート材と前記頂部ライナープレートが溶接されており、前記頂部ライナープレートの内周面と前記残存型枠の内周面は面一になっており、前記頂部ライナープレートの内周面に、
前記残存型枠の内周面に沿って設置された側部ライナープレートの上端部が重ね合わされた状態で、前記頂部ライナープレートと前記側部ライナープレートが溶接されていることを特徴とする低温貯槽である。
【0015】
このような構成によれば、請求項3に係る発明と同様に、施工性が良くなるとともに、施工時間の短縮を図れる。
【0016】
請求項5に係る発明は、防液堤の構築予定位置に水平プレート材を配置した状態で基礎版のコンクリートを打設する水平プレート材埋設工程と、前記防液堤の内周部となる位置に残存型枠を設置する残存型枠設置工程と、前記防液堤の外周面となる位置に外型枠を設置する外型枠設置工程と、前記残存型枠と前記外型枠との間にコンクリートを打設する打設工程とを備えており、前記残存型枠設置工程では、前記残存型枠の下端内周部に埋設された垂直プレート材の内側に円周プレートを設置し、前記円周プレートを前記垂直プレート材に溶接するとともに前記水平プレート材に溶接することを特徴とする低温貯槽の構築方法である。
【0017】
このような方法によれば、残存型枠を所望の位置に容易に設置でき、施工性が良くなるとともに、その内側に設置される側部ライナープレートの位置精度も高めることができる
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、施工性を良くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る低温貯槽Tは、液化天然ガス(LNG)を貯蔵する地上LNGタンクであり、基礎版B上に外枠となる防液堤Wが構築され、その内側に金属製の外槽Taが形成され、さらにその内側に内槽Tbが形成された二層構造となっている。外槽Taと内槽Tbの間には、保冷材が充填されている。外槽Taは、基礎版B上に敷設された底部ライナープレート20と、防液堤Wの内周面に沿って設置された側部ライナープレート5と、その上部に設けられた頂部ライナープレート6と、防液堤Wで囲まれた上部開口を覆う天井ライナープレート21とを備えている。
【0021】
基礎版Bは、支持杭(図示せず)上に構築されたコンクリート構造体にて構成されている。コンクリート構造体は、所定の厚さを備えており、断熱性能を備えている。
【0022】
防液堤Wは、図示は省略するが平面視円筒状を呈している。防液堤Wを構築するに際しては、防液堤Wの内周部となる位置に内型枠となる残存型枠2を設置するとともに、防液堤Wの外周面となる位置に外型枠(図示せず)を設置し、残存型枠2と外型枠との間にコンクリートを打設する。
【0023】
防液堤Wは、基礎版Bから立ち上がるプレストレストコンクリート構造の構造体であり、場所打ちコンクリートからなるコンクリート壁部1と、コンクリート壁部1の内側に設置された残存型枠2とを備えている。つまり、防液堤Wは、残存型枠2と、残存型枠2と対向して設けられた外型枠(図示せず)との間に、コンクリートを打設することで構築され、コンクリートの硬化後に外型枠のみが撤去され、残存型枠2はそのまま残置される。
【0024】
コンクリート壁部1の内部には、壁筋のほか、周方向PC鋼材や縦方向PC鋼材などが埋設されている。壁筋は、縦筋と横筋とを格子状に組み合わせたものである。周方向PC鋼材は、一のピラスターから他のピラスターに至るPC鋼より線からなり、周方向に延在するシース(横シース)に挿通されている。横シースは、外周側の壁筋に沿って配置されている。縦方向PC鋼材は、コンクリート壁部1の下端部から上端部に至るPC鋼棒からなり、上下方向に延在するシース(縦シース)に挿通されている。
【0025】
残存型枠2は、複数のセグメント2aを周方向および上下方向に連結して形成したものである。セグメント2aは、正面視矩形状且つ平面視円弧状を呈するプレキャストコンクリート製品である。図示は省略するが、セグメント2aには、コンクリート壁部1側に開口する継手ボックスの他、外槽ライナープレート用のインサートナット、セパレータ用のインサートナット、コンクリート壁部1との一体化を図るためのせん断伝達部材などが埋設されている。
【0026】
次に、残存型枠2と基礎版Bとの取り合いを説明する。
図2の(c)に示すように、基礎版Bの表面には、金属製(たとえばスチール製)の水平プレート材10が埋設されている。水平プレート材10の表面は、基礎版Bの表面と面一になっている。水平プレート材10は、残存型枠2の設置予定位置に沿って配置されており、全体の平面視で円形に近似する多角形状を呈している。水平プレート材10は、タンクの径方向に所定幅を有している。水平プレート材10の幅寸法は、残存型枠2の厚さ寸法より大きく、且つ基礎版Bに打設されたコンクリートの収縮長さよりも大きくなっている。
【0027】
水平プレート材10の下部には、スチール製のリブ11が溶接されている。リブ11は、基礎版Bへのアンカーの役目と水平プレート材10を補強する補強材の役目を果たす。リブ11は、水平プレート材10の長手方向に沿って配置されており、水平プレート材10の幅方向中間部に設置されている。なお、リブ11に代えて、或いはプレート11に加えてアンカーボルト12を設けてもよい。
【0028】
本実施形態では水平プレート材10の下面にリブ11を溶接した構造となっているが、プレートの下部にリブを一体形成したものであってもよい。また、水平プレート材は、本実施形態のように一枚のプレートからなる構成に限定されるものではなく、基礎版Bの表面と面一となるプレート部を備えていればよい。水平プレート材は、たとえば補強リブが一体化された溝型鋼やH型鋼を用いてもよい。この場合、溝型鋼のウエブ部、或いはH型鋼のフランジ部がそれぞれ基礎版Bの表面と面一となるプレート部となる。
【0029】
残存型枠2の下端部に位置するセグメント2aの下端部には、スチール製の垂直プレート材3が埋設されている。垂直プレート材3は、セグメント2aの内周側の表層部に埋設されており、セグメント2aの内周コンクリート面と面一になっている。垂直プレート材3は、セグメント2aの内周面に沿って、円周方向に等間隔(例えば、5〜6mピッチ)をあけて複数配置されている。
【0030】
垂直プレート材3の内側表面、および垂直プレート材3が位置しない部分のセグメント2aの内周コンクリート面の下端部の内側には、筒状の第一円周プレート5a(請求項での円周プレート)が周設されている。第一円周プレート5aは、側部ライナープレート5の下端部を構成する円筒状プレートである。第一円周プレート5aの外周面は、垂直プレート材3と重なった部分で、その内側表面と重ね合わさった状態で面接触している。第一円周プレート5aの上端部のうち、垂直プレート材3と重なった部分は、垂直プレート材3の内側表面に重ね継手状に接触しており、隅肉溶接によって垂直プレート材3に固定されている。第一円周プレート5aの下端部は、全周に亘って、水平プレート材10の表面に断面T字状に接触しており、隅肉溶接によって水平プレート材10に固定されている。つまり、第一円周プレート5aを介して、垂直プレート材3と水平プレート材10が溶接されて、残存型枠2が基礎版Bに固定されている。
【0031】
第一円周プレート5aの上方には、側部ライナープレート5の一部となる第二円周プレート5bが設けられている。第二円周プレート5bは、第一円周プレート5aと同径の円筒状プレートであって、第一円周プレート5a上側において上下方向に複数段設置されている。第一円周プレート5aと複数段の第二円周プレート5bとで、側部ライナープレート5が構成されている。第二円周プレート5bは、残存型枠2の内側に周設されている。第二円周プレート5bの下端部は、第一円周プレート5aの上端部に全周に亘って突合せ溶接されている。第一円周プレート5aと側部ライナープレート5の突合せ溶接は、第一円周プレート5aと垂直プレート材3の溶接の後に行われる。
【0032】
水平プレート材10の表面には、基礎版B上に敷設された底部ライナープレート20の周縁端部が延在して、その周縁端が溶接されている。底部ライナープレート20の周縁端は、全周に亘って水平プレート材10に隅肉溶接されている。
つまり、側部ライナープレート5と底部ライナープレート20とは、水平プレート材10を介して、全周に亘って接合されており、外槽Taの水密性が確保されている。
【0033】
次に、残存型枠2の上端部と頂部ライナープレート6との取り合いを説明する。
図3の(c)に示すように、残存型枠2の上端部に位置するセグメント2aの上端部(残存型枠2の上端部)には、スチール製の上端プレート材7が埋設されている。上端プレート材7は、セグメント2aの上端面と同等の幅寸法を有しており、上端面を覆っている。なお、上端プレート材7は、必ずしもセグメント2aの上端面全体を覆っている必要はなく、少なくとも上端面の内周縁部を覆っていればよい。上端プレート材7は、図示しないアンカーなどの固定手段によってセグメント2aに固定されている。
【0034】
上端プレート材7の下側には、スチール製の補強プレート7aが固定されている。補強プレート7aは、上端プレート材7の剛性を高めるとともに、セグメント2aを構成するコンクリートへの上端プレート材7の定着性を高める。補強プレート7aは、残存型枠2の内周部に埋設されており、セグメント2aの内周コンクリート面と面一になっている。補強プレート7aは、平面視でセグメント2aの内周面と同じ曲率の円弧状を呈している。
【0035】
上端プレート材7の上方には、頂部ライナープレート6が設けられている。頂部ライナープレート6は、防液堤Wの上端部まで延在しており、天井ライナープレート21を支持する。頂部ライナープレート6は、残存型枠2(セグメント2a)の内周部の上方に配置されており、頂部ライナープレート6の内周面は、セグメント2aの内周コンクリート面および補強プレート7aの内周面と面一になっている。頂部ライナープレート6と残存型枠2との接合部分で、高さ寸法の誤差を吸収するようになっており、立ち上げられた残存型枠2の上端部が所望の高さよりも低くなっている場合は、上端プレート材7の上にスペーサ9を設置した状態で、頂部ライナープレート6を載置し、頂部ライナープレート6の下端部を上端プレート材7に溶接する。
【0036】
残存型枠2の内周面に周設された側部ライナープレート5(第二円周プレート5b)の上端部は、頂部ライナープレート6の底面より上の高さまで延在しており、頂部ライナープレート6の内周面に沿って重ね合わされた状態で面接触している。側部ライナープレート5の上端部は、頂部ライナープレート6の内周面に重ね継手状に接触しており、全周に亘って頂部ライナープレート6に隅肉溶接されている。
【0037】
残存型枠2の径方向外側および頂部ライナープレート6の径方向外側には、コンクリート壁部1が形成されている。
【0038】
次に、前記構成の低温貯槽Tの構築方法を説明する。低温貯槽Tの構築方法は、水平プレート材埋設工程と、残存型枠設置工程と、外型枠設置工程と、打設工程とを備えている。防液堤Wは、複数回のロットに分けて数メートルずつ立ち上げるものであって、残存型枠設置工程と、外型枠設置工程と、打設工程とがロットごとに繰り返して行われる。
【0039】
(水平プレート材埋設工程)
図2の(a)に示すように、水平プレート材埋設工程では、基礎版Bの残存型枠2の設置予定位置に水平プレート材10を埋設する。具体的には、基礎版Bのコンクリート打設前に、水平プレート材10を設置しておき、水平プレート材10の表面と基礎版Bの表面とが面一になるようにコンクリートを打設する。水平プレート材10の下面にはリブ11が溶接されており、水平プレート材10自体の剛性を高めるとともに、基礎版Bへの定着力を高めている。水平プレート材10は、基礎版Bのコンクリートの収縮を考慮して、残存型枠2の設置位置よりも外側に配置するのが好ましい。
【0040】
(残存型枠設置工程)
図2の(b)に示すように、残存型枠設置工程では、基礎版B上に残存型枠2の最下段のセグメント2aを設置する。残存型枠設置工程では、セグメント2aの下端面のレベル調整を行いつつ、セグメント2aを水平プレート材10上の所定位置に載置することになるが、水平プレート材10の上面は一定幅を有した平面状であるので、基礎版Bのコンクリートの収縮によって位置が変動していたとしても、セグメント2aを設置予定位置に設置することができる。つまり、コンクリート収縮量のバラツキによって、タンク中心と水平プレート材10との距離にバラツキが発生したとしても、水平プレート材10は、コンクリートの収縮長さより長い幅寸法を有しているので、全ての残存型枠2を水平プレート材10上に設置することができる。
【0041】
(側部ライナープレート設置工程)
セグメント2aの設置後に、セグメント2aの内側に第一円周プレート5aを設置する。そして、第一円周プレート5aの上端部と垂直プレート材3の内周面を溶接するとともに、第一円周プレート5aの下端部と水平プレート材10を溶接する。これによって、セグメント2aが基礎版Bに確実に固定される。さらに、第一円周プレート5aと水平プレート材10間で止水性が得られるので、後に打設されるコンクリートの水分が内側に染み出してこない。なお、第一円周プレート5aを設置して、垂直プレート材3および水平プレート材10に溶接する作業は、残存型枠設置工程と側部ライナープレート設置工程の両工程に含まれる。
【0042】
その後、
図2の(c)に示すように、第一円周プレート5aの上方で、セグメント2aの内周面に第二円周プレート5bを周設して、第一円周プレート5aの上端部と側部ライナープレート5の下端部とを溶接する。
【0043】
(底部ライナープレート設置工程)
他方、第二円周プレート5bの設置の前に、あるいは並行して、底部ライナープレート20を基礎版B上に設置し、底部ライナープレート20の周縁端を水平プレート材10の表面に溶接する。
なお、本実施形態では、第二円周プレート5bおよび底部ライナープレート20の設置を、コンクリート打設の前に行っているが、他工程との兼ね合いに応じてコンクリート打設と並行して行ってもよいし、コンクリート打設後に行ってもよい。
【0044】
(外型枠設置工程)
外型枠設置工程では、防液堤Wの外周面となる位置に外型枠(図示せず)を設置する。外型枠の設置は、残存型枠2を設置した後に行ってもよいし、残存型枠2の設置と並行して行ってもよい。
【0045】
(打設工程)
打設工程では、残存型枠2と外型枠との間にコンクリートを打設する。
【0046】
コンクリートの打設が完了したならば、次ロットにおける残存型枠設置工程と、外型枠設置工程と、打設工程を順次行う。複数のロットのうち最終ロットにおいて、残存型枠2が上端部まで立ち上げた後(最上段のセグメント2aを設置した後)は、
図3に示すような工程によって、残存型枠2と頂部ライナープレート6とを固定する。
【0047】
残存型枠2の最上段のセグメント2aの上端部には、
図3の(a)に示すように、下部に補強プレート7aが設けられた上端プレート材7が埋設されている。
【0048】
(頂部ライナープレート設置工程)
図3の(b)に示すように、上端プレート材7上に頂部ライナープレート6を設置する。ここで、立ち上げられた残存型枠2の上端部の高さに誤差があるときは、頂部ライナープレート6の設置高さを調整する。具体的には、上端プレート材7の表面高さに応じて、上端プレート材7上にスペーサ9を設置した上に頂部ライナープレート6を載置する。頂部ライナープレート6と上端プレート材7は、スペーサ9を巻き込んで隅肉溶接する。
【0049】
頂部ライナープレート6の固定後、
図3の(c)に示すように、側部ライナープレート5の最上段の第二円周プレート5bを残存型枠2および頂部ライナープレート6の内周面に周設する。そして、最上段の第二円周プレート5bの上端部(側部ライナープレートの上端部)を、頂部ライナープレート6の内周面に重ね合わせた状態で、頂部ライナープレート6の内周面に全周溶接する。
【0050】
以上のように、上端プレート材7と頂部ライナープレート6を溶接するとともに、頂部ライナープレート6と側部ライナープレート5を溶接することで、セグメント2aと頂部ライナープレート6と側部ライナープレート5とが確実に一体化される。また、側部ライナープレート5の上端部が頂部ライナープレート6の内周面に全周溶接されているので、液密性が確保される。
その後、外型枠設置工程および打設工程を順次行って防液堤Wの構築が完了する。
【0051】
以上のような低温貯槽Tおよびその構築方法によれば、水平プレート材10の水平面上で残存型枠2の設置位置調整を行えるので、基礎版Bのコンクリートが収縮して水平プレート材10の位置が変動しても、その変動に影響されることなく、残存型枠2を所望の位置に精度良く設置でき、従来のようにコーナーアングルを設置していた場合と比較して施工性が良くなる。さらに、残存型枠2の内側に設置される側部ライナープレート5の位置精度も高めることができる。
【0052】
また、残存型枠2の内側に第一円周プレート5aを周設したことで、周方向に連続したプレート隔壁を確保できる。そして、水平プレート材10を介して、底部ライナープレート20と、側部ライナープレート5の下端部となる第一円周プレート5aとが周方向全周に亘って溶接されているので、液密性の高い外槽Taを形成することができる。また、第一円周プレート5aと第二円周プレート5bは同等の曲率半径に形成されているので、容易に溶接できる。
【0053】
また、本実施形態によれば、セグメント2aの内側に側部ライナープレート5が一体化された場合の残存型枠2と頂部ライナープレート6との取り合い(固定構造)が明確になった。つまり、上端プレート材7と頂部ライナープレート6を溶接するとともに、頂部ライナープレート6と側部ライナープレート5とを溶接することで、側部ライナープレート5と頂部ライナープレート6と残存型枠2とが確実に一体化される。また、側部ライナープレート5を頂部ライナープレート6の内周面に重ね合わせた状態で溶接しているので、裏当て材などを必要とせず、部品点数が低減されることで施工性が良くなる。さらに、液密性の高い外槽Taを形成することができる。また、上端プレート材7と頂部ライナープレート6の溶接においても、裏当て材などを必要とせず施工性が良くなる。
【0054】
また、本実施形態では、側部ライナープレート5の設置を待たずに、上端プレート材7上に頂部ライナープレート6を溶接できるので、その後のコンクリートの打設工程を早く施工でき、工期の短縮が図れる。
【0055】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、残存型枠2が複数のセグメント2aからなる残存型枠であるが、これに限定する趣旨ではなく、残存型枠が側部ライナープレートからなる型枠であっても、本発明は適用可能である。
【0056】
また、前記実施形態では、本発明を地上LNGタンクに適用した場合を例に挙げたが、地下LNGタンクやその他の低温貯槽においても本発明を適用可能であるのは言うまでもない。