(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。なお、ここに示す各図では説明のため一部の部材を省略したり、部材の形状を誇張して表すことがある。
また、以下の説明では、開口部装置が建物開口部に設置された姿勢で、開口部装置により仕切られた部屋から開口部装置を見たときに上下となる方向を見付け方向上下、左右となる方向を見付け方向左右、仕切られた隣接する部屋間の内外方向を見込み方向と記載することがある。さらに、見付け方向左右及び見付け方向上下に平行な面を見付け面、並びに見込み方向に平行な面を見込み面と記載することがある。
【0018】
図1は1つの形態に係る開口部装置1の正面図である。本形態では開口部装置1により浴室と更衣室とを仕切る場合について説明する。
図1は浴室側から見た図である。本形態は、2枚の引違い障子30、35で開口部分10aを閉鎖可能とし、当該障子30、35を見付け方向左右に移動して戸袋部分10bに収容することで開口部分10aを開放する、いわゆる引き戸式の開口部装置である。
図2は
図1にII−IIで示した水平方向矢視断面図、
図3は
図2と同じ視点における障子30、35を開放した姿勢の断面図、
図4は
図1にIV−IVで示した鉛直方向矢視断面図である。
図4では2枚の障子30、35ともに断面で表している。
図2〜
図4には併せて浴室側及び更衣室側となる方向を示している。
【0019】
開口部装置1は、
図1乃至
図4に表れているように、浴室と浴室外としての更衣室との間の建物開口部における躯体に固定された枠体10と、該枠体10の枠内に見付け方向左右に移動可能に設けられた2枚の障子30、35が引違いに配置されている。
【0020】
枠体10は、上枠11、下枠12、縦枠16、方立17、下枠止水材18、及び端部止水部材19を有している。
【0021】
上枠11は、枠体10の上枠を構成する長尺の部材で、
図4に表れる断面を有して長手方向に延びるように形成されている。上枠11は、その長手方向が建物開口部の上縁に沿って配置され、建物躯体に固定されている。
図4からわかるように、本形態の開口部装置1の上枠11は、後述する障子30、35の上端に設けられた吊り車33、38が載置されて転動するレール11a、11bを備えている。レール11aとレール11bとは見込み方向に並べて配列され、それぞれが上枠11の長手方向に沿って見付け方向左右に延びるように形成されている。一方のレール11aが障子30、他方のレール11bが障子35のためのレールである。
【0022】
下枠12は、下枠本体13、着脱下枠14、及びスロープ15を具備して形成されている。
図5には、
図4のうち下枠本体13及び着脱下枠14を表し、下枠本体13と着脱下枠14とを分離して示した分解断面図を示した。また、
図6には、下枠12と縦枠16とが形成する入隅部のうち、開口部分10a側の入隅部を浴室側からみた斜視図で表した。
図6では下枠本体13の形態がわかるように着脱下枠14を除外して示している。
【0023】
下枠本体13は、枠体10の下枠を構成する部材のうち、建物躯体に固定される長尺の部材で、
図4、
図5に表れる断面を有して長手方向に延びるように形成されている。下枠本体13は、その長手方向が建物開口部の下縁に沿って配置され、建物躯体に固定されている。
【0024】
図4、
図5からわかるように、下枠本体13は、当該断面において見込方向に延びる片13aを有し、該片13aの見込方向一方側及び他方側端部からは見付け方向上下の上方に向けて片13b、13cが立設している。これにより片13aを底、片13b、13cを壁とする凹部13dが形成されている。凹部13dの所定の位置には片13aから見付け方向上下の上方に向けて片13eが立設されている。当該片13eの位置は後述する着脱下枠14と関係し、後で説明する。また片13eは
図6からわかるように、縦枠16に達する前に切り欠かれ、縦枠16と片13eの端面との間には間隙13fが形成される。片13eは後で説明する係合片14fと合わせて着脱下枠14の移動制限手段としても機能する。
【0025】
また下枠本体13には、浴室側に配置される片13bから見込み方向浴室側に延びる片13gが設けられている。なお、片13bにはスロープ15を引っ掛けて保持する係止片13hが具備されている。ここに取り付けられるスロープ15は
図1乃至
図3からわかるように開口部分10a側にのみ設けられているので、片13gも下枠本体13のうち開口部分10aにのみ具備されていればよい。
【0026】
一方、片13cの更衣室側には、下枠止水材取付溝13iが設けらている。
さらに、下枠止水材取付溝13iの更衣室側壁を形成する片からは更衣室側に向かって見込み方向に延びる片13jが具備されている。
【0027】
着脱下枠14は、枠体10の下枠を構成する部材のうち、下枠本体13の凹部13d内に装着及び離脱できるように構成された長尺の部材で、
図4、
図5に表れる断面を有して長手方向に延びるように形成されている。本形態では着脱下枠14は、後述する障子30、35の下端に設けられたガイド片32a、37aが挿入され、該ガイド片32a、37aをガイドする溝であるガイド溝14c、14gを形成する。
本形態では開口部装置1が吊り戸の形態であるため、下枠12の着脱下枠14によりガイド溝14c、14gを形成する例を示したが、着脱下枠は、下枠の上面の少なくとも一部を形成する部材であればよく、着脱下枠により形成される具体的形態は障子の形態に合わせて適宜変更することが可能である。例えば障子の下端に戸車が備えられた形態では着脱下枠にレールを形成することができる。また、障子が回動式、揺動式の開き戸の形態では、着脱下枠に戸当たりが設けられたり、平坦であってもよい。
【0028】
本形態では、
図4、
図5からわかるように、着脱下枠14は、当該断面において見込方向に延びる片14a、14bを有し、片14aと片14bとは見込み方向に所定の間隔を有して並べるように配列されている。本形態では更衣室側に片14a、浴室側に片14bが配置されている。そして当該間隔にガイド溝14cが形成されており、該ガイド溝14cにより片14aと片14bとが連結されている。またガイド溝14cの開口の縁部にはパッキンを具備している。
片14aの更衣室側の端部、及び片14bの浴室側の端部からは見付け方向上下で下枠本体13の片13aに向けて片14d、14eが延びている。さらに片14dの更衣室側からは更衣室側に向けて見込み方向に片14hが延在する。
【0029】
一方、着脱下枠14の長手方向については次の通りである。
図7には、着脱下枠14の長手方向端部形状のうち、開口部分10aにおける下枠12と縦枠16とが形成する入隅部に配置される側の端部を表した。
図7(a)は、上方から見た図(
図3と同じ視点)、
図7(b)は斜視図である。
図3、
図7(a)、
図7(b)からわかるように、着脱下枠14の当該端部は、片14aが片14bよりも短くなるように形成されている。これにより後述するように片14aと縦枠16との間に間隙が形成され、使用者はここに指等を差し込んで着脱下枠14を下枠本体13から容易に離脱することができる。
また、
図7(b)からわかるように、片14aの端面からは下枠本体13の片13aに向けて見付け方向上下の下方に延びる係合片14fが設けられている。本形態では片14aの一部が下方に折り曲げられて形成されている。当該係合片14fは後述するように、下枠本体13の片13eと合わせて着脱下枠14の見付け方向左右への移動を制限する移動制限手段として機能する。
【0030】
このような着脱下枠14は次のように下枠本体13に装着される。
図8には着脱下枠14を下枠本体13に装着した場面における、下枠12と縦枠16とが形成する入隅部のうち開口部分10a側を表した斜視図を示した。また、
図9(a)、
図9(b)はさらに、当該入隅部を拡大した図である。
【0031】
図4、
図5からわかるように、着脱下枠14は、下枠本体13の凹部13dの内側に載置される。このとき、着脱下枠14の片14e、片14dの下端が下枠本体13の凹部13dの底を形成する片13aに載せられるように配置される。その際には着脱下枠14は凹部13dのうち更衣室側に寄せられる。これにより、浴室側において片14eと片13bとの間に間隙を形成することができ、この間隙がガイド溝14gとなる。
着脱下枠14を下枠本体13に装着した姿勢では、
図4、
図5からわかるように、下枠本体13の片13eと片13cとの間に、着脱下枠14の片14d、片14hが配置され、片14dが片13eに、片14hの更衣室側の端部が片13cにそれぞれ接触可能に位置づけられる。これにより、着脱下枠14が見込み方向に移動してしまうことを制限し、ガイド溝14cの位置決め及びガイド溝14gの維持が図られる。
【0032】
一方、着脱下枠14の長手方向については、
図3、
図8、
図9によく表れているように着脱下枠14の長手方向が下枠本体13の凹部13dの長手方向に沿うように配置される。このとき、着脱下枠14の端部のうち開口部分10a側の端部は、片14bの端面が縦枠16の見込み面16aに突き当てられる。一方、片14aは上記のように片14bより短くされているので、縦枠16と片14aとの間には間隙が形成される。これにより、片14bと縦枠16との接触により止水性が確保される。また片14aと縦枠16との間の間隙に使用者は指を差し入れる等して着脱下枠14を着脱することができる。
このとき、下枠本体13の片13eは縦枠16に達する前に切り欠かれ、間隙13fが形成されており(
図6参照)、一方、片14aの端面には係合片14fが設けられている。そして、
図9(a)、
図9(b)から特によくわかるように、係合片14fが間隙13fの間に入るとともに、係合片14fが片13eの端面に係止するように配置される。これにより着脱下枠14が見付け方向左右(長手方向)に移動することが制限され、片14bが縦枠16から離れて間隙を生じさせることによる止水性の低下を防止することができる。
【0033】
着脱下枠14の下枠本体13からの離脱は、着脱下枠14は下枠本体13に載置されているだけなので、容易におこなうことができる。着脱下枠14を下枠本体13から離脱すれば
図6に表れるように、平滑部分が多くて清掃がしやすい。凹部13dには不図示の排水手段が設けられており、適切な排水も速やかに行われる。
【0034】
本形態では、着脱下枠14の端部に、見付け方向左右への移動制限手段を設けたが、本発明はこれに限定されることなく下枠のいずれかの部位に当該移動制限手段が設けられていればよい。例えば着脱下枠の長手方向のいずれかの部位に下方に突出する突起を設け、下枠本体にはこれに係合する凹部を設けておき、着脱下枠の装着時には当該突起と凹部とが係合するように構成することもできる。
また、本形態では着脱下枠14は一体で構成されているが、開口部の見付け方向左右に分割して複数で構成されてもよい。着脱下枠が複数で構成された場合は、見付け方向左右に隙間ができやすいが、本発明により縦枠と着脱下枠との間隙を最小限に抑えることができる。
【0035】
図1乃至
図4に戻り、下枠12のスロープ15について説明する。下枠12のスロープ15は、
図1乃至
図4に表れているように板状の部材であり、更衣室側の端部が下枠本体13のスロープ取付片13hに係止して取り付けられ、浴室側端部は浴室の床面に近づくように傾斜して配置される。これにより、スロープ15が下枠本体13の浴室側の縁部を覆い、下枠12の上面と浴室の床との段差を滑らかに連結している。一方、スロープ15の見付け方向左右は、
図2、
図3からわかるように開口部分10a全体に亘って延在する。
【0036】
次に縦枠16について説明する。縦枠16は、枠体10の縦枠を構成する長尺の部材で、
図2、
図3に表れる断面を有して見付け方向上下を長手方向として延びるように形成されている。
図1からわかるように、縦枠16は左右に2つの設けられ、その長手方向が建物開口部の左右縁のそれぞれに沿って配置され、その端部が上枠11の端部と下枠本体13の端部とを渡すように取り付けられるとともに建物躯体にも固定されている。
本形態では、
図6からわかるように縦枠16の見込み面16aに下枠本体13の端部が突き当てられるように組み合わされる。このとき見込み面16aと下枠本体13の端部との間に板状のシール材が挟まれてもよい。
【0037】
縦枠16には、必要に応じて複数の片が見付け方向左右に延びるように設けられている。そのうちの1つとして、縦枠16には、その見込み面16a(
図2、
図3、
図6参照)から、片16bが見付け方向左右のうち枠内側に延びるように設けられている。より詳しくは、片16bは、
図2乃至
図6に表れているように、上記した下枠止水材取付溝13iの浴室側に隣接する位置に、見付け方向左右のうち枠内側に延びるように形成されている。片16bは、
図2、
図3からわかるように左右両方の縦枠16にそれぞれに同様に設けられている。一方、片16bは縦枠16の長手方向に沿って見付け方向上下に延在している。
【0038】
方立17は、
図1乃至
図3からわかるように、
図2、
図3に示した断面を有して見付け方向上下に延びる部材である。方立17は2つの縦枠16間に、該縦枠16と概ね平行に配置され、上端が上枠11に、下端が下枠本体13に固定される。また、方立17は
図2、
図3に表れているように、上枠11、下枠本体13のうち、浴室側に寄せられた位置に設置されている。
【0039】
このように方立17が2つの縦枠16間に配置されることにより、上枠11、下枠12及び縦枠16により囲まれた枠内が2つの部位に分割され、一方が開口部分10a、他方が戸袋部分10bとされている。戸袋部分10bには上枠11、下枠12、方立17及び縦枠16で囲まれる枠内に面材であるパネル40が固定されている。
【0040】
下枠止水材18は、
図4にその断面形状が表れ、
図2、
図3、
図6に長手方向の態様が示されている。すなわち、下枠止水材18は、その下部が下枠本体13の下枠止水材取付溝13iに挿入され、上部が下枠止水材取付溝13iから上枠11側に向けて上方に突出するように配置され、止水をする機能を有する。下枠止水材18の当該突出する上部は、中空の断面形状を備えていることが好ましい。これにより、人が踏むなどして倒れても再び起立する性能を高めることができる。下枠止水材18は、人が踏むことや再び起立する必要がある観点から樹脂やゴム等により形成されることが好ましい。
【0041】
一方、下枠止水材18の長手方向は
図2、
図3、
図6に表れているように、その両端が2つの縦枠16の見込み面16a、又はその近くにまで達するように延在する。すなわち、下枠止水材18は、下枠本体13の概ね全長に亘って延在するように下枠本体13に取り付けられる。このとき、下枠止水材18の浴室側の面(見付け面)のうち、下枠止水材18の両端部のそれぞれが、縦枠16の片16bの更衣室側の面(見付け面)に対向するように配置される。これにより後述するように下枠止水材18の両端部を縦枠16と端部止水部材19とで挟むように配置することが可能となる。
【0042】
端部止水部材19は、下枠本体13と縦枠16とにより形成される入隅部の止水性を向上するとともに、起立すべき下枠止水材18が倒れたままの姿勢となることを防止する。端部止水部材19は止水性、及び下枠止水材18の保持の観点から硬質の樹脂又はゴムにより構成されていることが好ましい。
【0043】
このような端部止水部材19は、
図2〜
図4、
図6に表れるように配置される。すなわち、端部止水部材19は、下枠本体13と縦枠16とが形成する入隅部のうち、更衣室側に配置される。そのとき、端部止水部材19の浴室側見付け面が、下枠止水材18の更衣室側の見付け面の端部に対向するように位置付けられ、下枠止水材18の端部を縦枠16の片16bの見付け面16cとの間に挟むように配置される。
【0044】
このような端部止水部材19によれば、下枠止水材18の端部が縦枠16の片16bの見付け面と端部止水部材19の見付け面との間に挟まれるように配置されるので、いわゆる突き当てによる端面接触よりも止水性を向上させることができる。また、下枠止水材18の一方側の見付け面が端部止水部材19ではなく、剛性が高い縦枠16の見付け面により保持されているので、下枠止水材18の起立を助け、下枠止水材18が倒れたままの姿勢になることを従来よりも確実に防止することができる。
【0045】
図1乃至
図4に戻り、障子30、35について説明する。障子30、35はいわゆる内障子と外障子の違いに起因する構造の違いはあるものの、基本的な構造は概ね同じである。すなわち、障子30、35は面材としてのパネル31、36を有し、その外周を縁取るように框32、37が配置されている。框32、37の上部には吊り車33、38が上方に延びるように配置され、框32、37の下部にはガイド片32a、37aが下方に延びるように設けられている。
【0046】
このような障子30は、上部に配置された吊り車33が上枠11のレール11aに載置され、下部に設けられたガイド片32aが下枠12の着脱下枠14のガイド溝14cに挿入される。これにより障子30は、枠体10内のうち更衣室側において見付け方向左右に移動可能とされる。
一方、障子35は、上部に配置された吊り車38が上枠11のレール11bに載置され、下部に設けられたガイド片37aが下枠12の着脱下枠14のガイド溝14gに挿入される。これにより障子35は、枠体10内のうち障子30より浴室側において見付け方向左右に移動可能とされる。
以上より、
図1に示した視点で障子30が左側、障子35がその右側に配置され、開口部分10aを閉鎖することにより、障子30、35、及びパネル40により建物開口部が閉鎖される。障子30、35を見付け方向左右の右側に移動することにより障子30、35を戸袋部分10b側に配置して見込み方向にパネル40と重ねることにより、開口部分10aが開放される。