(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043172
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】繊維強化プラスチックを含む電気泳動式電気浸透脱水機のドラム装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 35/06 20060101AFI20161206BHJP
B03C 5/02 20060101ALI20161206BHJP
B01D 61/56 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
B01D35/06 P
B01D35/06 S
B01D35/06 T
B03C5/02
B01D61/56
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-265690(P2012-265690)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-108423(P2014-108423A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】512313388
【氏名又は名称】ファイン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FINE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】サン ジュン,イ
【審査官】
増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平4−310217(JP,A)
【文献】
特開昭52−154183(JP,A)
【文献】
特開平6−154797(JP,A)
【文献】
特開昭63−256113(JP,A)
【文献】
特開2000−354789(JP,A)
【文献】
国際公開第96/007124(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 35/06
B01D 61/56
B03C 5/02
C02F 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気泳動式電気浸透脱水機のドラム装置において、
軸に沿って回転する円筒状のドラムと、
前記ドラムの外周面を覆うように具備され、一方の極性の直流電源が印加され、複数個の補強繊維及び複数個の既知の材料で構成される繊維強化プラスチックで形成される電極部と、を含み、
前記電極部は、前記補強繊維が炭素繊維(carbon fiber)であり、前記既知の材料がエポキシ樹脂(epoxy resin)であり、前記炭素繊維及び前記エポキシ樹脂をそれぞれ接合して形成されることを特徴とする電気泳動式電気浸透脱水機のドラム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気
泳動式電気浸透脱水機のドラム装置及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、繊維強化プラスチックで形成される電極部を含む電気
泳動式電気浸透脱水機のドラム装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気浸透脱水機はスラッジと結合された水を電気
泳動性で除去するための電場を形成するために直流電源が印加され、その電圧差によってスラッジの含水を脱水する装置である。
【0003】
このような電気泳動式電気浸透脱水機は、「電気浸透脱水機(特許文献1)」、「位相制御型電気脱水機(特許文献2)」、「電気浸透脱水機(特許文献3)」及び「三相交流電源を
用いた位相制御型
の電気泳動式電気浸透脱水
器(特許文献4)」などに記載されて周知であるように、その構造は大きく正極(+)又は負極(−)が印加されたドラム、ドラムと一定空間部をおいて接地され、全体に負極(−)又は正極(+)が印加されたキャタピラ、ドラムとキャタピラの間にスラッジの移送及び脱水のために巻き取られたろ布ベルトなどで構成される。
【0004】
このような従来の電気浸透脱水機は、ドラムとキャタピラの間に一定の純粋直流電圧が印加されて電場が形成され、電場の中で帯電された液体スラッジ粒子周囲の水が電気泳動と毛細管現象によってスラッジ粒子が帯びている電荷と反対の電極の方に移動し、水分が分離されて除去される。
【0005】
即ち、スラッジ粒子は(−)表面電荷を帯びるため、スラッジに電場を形成させるとスラッジ粒子は(+)極に移動し、スラッジ粒子層内の水分は(−)極に移動して脱水が促進される。
【0006】
このような従来の電気浸透脱水機は、例えば、上述した「電気浸透脱水機(特許文献2)」はドラムの耐久性と共に電気伝導率を増大し得るようにするための発明であり、ドラム装置部分を
図1に示した。
図1は、従来技術による電気
泳動式電機浸透脱水機のドラム装置の一部を示す拡大断面図である。
【0007】
図1を参照すると、従来のドラム装置はドラム210の外側面に銅板270が具備され、銅板270の外側面に白金系金属のコーティング剤をコーティングしたチタン板220が具備される構成である。そして、チタン板220及び銅板270を貫通してドラム210とねじ締結されるボルト250が具備される。
【0008】
ところで、このような従来の電気浸透脱水機は銅板270の両面に水が浸透して腐食されることで通電を却って悪くし、時間が経つにつれ腐食面によって通電度が低下する問題点がある。即ち、脱水機の特性上水を多く使用することで発生する酸素、消毒をすることで発生する塩素によって酸性が高くなり、銅板270が腐食する問題点がある。
【0009】
銅板270が腐食された状態を
図2aに示した。
図2a乃至
図2cは、従来技術による電気
泳動式電機浸透脱水機のドラム装置における銅板、ドラム及びチタン板の腐食状態を示す写真である。
【0010】
そして、このような銅板270の腐食によって、銅板270の内面に具備されるドラム210と外周面に具備されるチタン板220まで腐食し、隙間が空く問題点がある。ドラム210が腐食された状態を
図2bに示し、チタン板220が腐食された状態を
図2cに示した。このような腐食によって、従来のドラム装置は耐摩耗性が弱く、取扱が不便で、寿命が短く、高温に脆弱な問題点がある。
【0011】
ここで、通電性の向上のためにチタン板の外
周面に希土類金属、例えば、イリジウムなどをコーティングしてもよい。しかし、チタンと希土類金属が高価である問題がある。
【0012】
一方、上述した問題点を解決するための従来技術による他のドラム装置として、チタン金属の代わりにセラミックを使用してドラム装置を形成する場合もある。しかし。このような場合でもセラミックが高価であり、脆性に弱く、取扱が不便で製作が難しいなどの問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】大韓民国出願番号10−2004−7759号
【特許文献2】大韓民国出願番号10−2005−9928号
【特許文献3】大韓民国出願番号10−2007−46494号
【特許文献4】大韓民国出願番号10−2008−44901号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上述した問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、通電性が向上され、相対的に低価である電気泳動式電気浸透脱水機のドラム装置及びその製造方法を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、耐摩耗性、耐化学
薬品性、耐熱性に優れ、電気的な腐食が発生しない電気泳動式電気浸透脱水機のドラム装置及びその製造方法を提供することにある。
【0016】
本発明のまた他の目的は、半永久的に使用し得る電気泳動式電気浸透脱水機のドラム装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した目的を達成するための本発明による電気泳動式電気浸透脱水機のドラム装置は、軸に沿って回転する円筒状のドラムと、前記ドラムの外周面を覆うように具備され、一方の極性の直流電源が印加され、補強繊維と既知の材料で構成される繊維強化プラスチックで形成される電極部と、を含む。
【0018】
そして、本発明による電気泳動式電気浸透脱水機のドラム装置の前記電極部は、前記補強繊維が炭素繊維(carbon fiber)であり、前記既知の材料がエポキシ樹脂(epoxy resin)であり、複数個の前記炭素繊維及びエポキシ樹脂を接合して形成されることにその特性がある。
【0019】
上述した目的を達成するための本発明による電気泳動式電気浸透脱水機のドラム装置の製造方法は、金型を準備する過程と、前記金型の内部にパッキン部を具備する過程と、前記パッキン部上に複数個の炭素繊維及びエポキシ樹脂を入れ、前記パッキン部の内部を真空状態に形成する過程と、熱処理炉に入れて圧力を加えて加熱し、前記材料を接合して電極部を形成する過程と、前記電極部をドラムの外周面にボルトで固定してドラム装置を形成する過程と、を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、耐摩耗性、耐化学
薬品性、耐熱性に優れ、電気的な腐食が発生しない繊維強化プラスチックを電極部として利用するため、それによる耐摩耗性、耐化学性、耐熱性に優れ、電気的な腐食が発生しないドラム装置を提供し得る効果がある。
【0021】
そして、上述した特性によって通電性が向上され、半永久的に使用し得る効果がある。
【0022】
また、従来の電極部より相対的に低価である繊維強化プラスチックを利用するため、低価のドラム装置を提供し得る効果もある。
【0023】
本発明は添付された図面に示した実施例を参考に説明されるが、これは例示的なものであり、当該分野で通常の知識を有する者であれば、それから多様な変更及び均等な実施例が可能であるということを理解できるはずである。よって、本発明の真の保護範囲は、添付した特許請求の範囲のみによって決められるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】従来技術による電気
泳動式電機浸透脱水機のドラム装置の一部を示す拡大断面図である。
【
図2a】従来技術による電気
泳動式電機浸透脱水機のドラム装置における銅板、ドラム及びチタン板の腐食状態を示す写真である。
【
図2b】従来技術による電気
泳動式電機浸透脱水機のドラム装置における銅板、ドラム及びチタン板の腐食状態を示す写真である。
【
図2c】従来技術による電気
泳動式電機浸透脱水機のドラム装置における銅板、ドラム及びチタン板の腐食状態を示す写真である。
【
図3】本発明による電気泳動式電気浸透脱水機を示す図である。
【
図4】本発明による電気泳動式電気浸透脱水機のドラム装置を示す図である。
【
図5】本発明による電気泳動式電気浸透脱水機のドラム装置の一部を示す図である。
【
図6】本発明による電気泳動式電気浸透脱水機のドラム装置の電極部の製造過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施例による繊維強化プラスチックを含む電気泳動式電気浸透脱水機のドラム装置及びその製造方法を添付した図面に基づいて詳しく説明する。
図3は、本発明による電気泳動式電気浸透脱水機を示す図である。そして、
図4は本発明による電気泳動式電気浸透脱水機のドラム装置を示す図であり、
図5は本発明による電気泳動式電気浸透脱水機のドラム装置の一部を示す図である。
【0026】
図3乃至
図5を参照すると、本発明による繊維強化プラスチックを含む電気泳動式電気浸透脱水機500のドラム装置100は、ドラム10と電極部30で構成される。
【0027】
ドラム10は円筒状であり、軸に沿って回転する。
【0028】
電極部30はドラム10の外周面を覆うように具備される。電極部30はボル
トを介してドラム10にねじ締結される。電極部30には一方の極性の直流電源が印加される。電極部30は、補強繊維31と既知の材料33で構成される繊維強化プラスチックで形成される。繊維強化プラスチック(FRP:fiber reinfoced plastics)は繊維のような強化材で
複合させ、機械的強度と耐熱性を良くしたプラスチックである。繊維補強樹脂強化プラスチックともいう。
【0029】
補強繊維としてはガラス繊維、炭素繊維及びケブラー(Kevlar:米国デュポン社の商品名)という芳香族ナイロン繊維が使用され、既知の材料(これをマトリックスという)としては不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が多く使用される。このような繊維強化プラスチックは、成分と形態が異なる2種類以上の素材が巨視的に組み合わされて有効な機能を有するようになる。この際、2種類以上の材料が微視的に組み合わされて巨視的に均質性を有する合金とは異なるものであり、繊維強化プラスチックは構成素材の間に巨視的に境界面を有するという点から合金とは異なる。
【0030】
補強繊維31は荷重に耐える要素であり、主に連続繊維が使用される。本実施例による電極部30の補強繊維31としては、炭素繊維(carbone fiber)が使用される。
【0031】
既知の材料33は、それぞれの補強繊維31を元の位置に固定させて構造的な模様を成すために必要な要素である。せん断(shear)荷重である際主に既知の材料33が荷重を支えるためその機械的性質が非常に重要であり、破壊進行に決定的な影響を及ぼす。また、補強繊維31が熱、化学物質などの外部要素に対して安定されているため、そのような外部要素に対する既知の材料33の抵抗性が重要である。本実施例による既知の材料33としては、エポキシ樹脂(epoxy resin)が使用される。
【0032】
電極部30は、複数個の補強繊維31及び既知の材料33が接合されて形成されるが、以下ではそれについて説明する。
図6は、本発明による電気泳動式電気浸透脱水機のドラム装置の電極部の製造過程を示す図である。
【0033】
図6を参照すると、まず金型50を準備する。金型50は製造された電極部30が円筒状のドラム10を囲むが
、図6に示したように断面が半円状であるものを準備する。
【0034】
次に、金型50の内部にパッキン部60を具備する。金型50の内部に材料を入れる前に、パッキン部60を金型50の内壁に具備する。
【0035】
次に、パッキン部60に複数個の炭素繊維31及びエポキシ樹脂33を入れる。この際、炭素繊維31は約0.125mmであり
、エポキシ樹脂33と共に入れる。そして、図面のホースを介してパッキン部60の内部を真空状態に形成する。
【0036】
次に、約500℃の熱処理炉に入れて圧力を加えながら加熱し、炭素繊維31とエポキシ樹脂33を接合して電極部30を形成する。このような電極部30の成型方法はオートクレーブ(autoclave)成型法であり、そのような形態に限ることはない。
【0037】
次に、製造された電極部302つをドラム10の外周面にあるボル
トで固定し、ドラム装置100を形成する。
【0038】
一方、本実施例による繊維強化プラスチックを含む電気泳動式電気浸透脱水機のドラム装置及びその製造方法は上述した形態に限らず、本発明の技術的中心思想を逸脱しない範囲内で多様に変形実施され得る。これは、本
願発明が属する技術分野に携わる者であれば用意に理解できるはずである。
【符号の説明】
【0039】
500:繊維強化プラスチックを含む電気泳動式電気浸透脱水機
100:繊維強化プラスチックを含む電気泳動式電気浸透脱水機のドラム装置
10:ドラ
ム
30:電極部
31:補強繊維
33:既知の材料
50:金型
60:パッキン部