(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1は、電磁継電器の外観を説明する、端子側斜視図(a)、実装面側斜視図(b)、実装面拡大図(c)、及び永久磁石と継鉄の取り付け上面図(d)の一例である。
【0021】
図1(a)において、電磁継電器1は、ベースカバー10、ベース11及びカバープレート12を備えている。ベースカバー10、ベース11及びカバープレート12は、絶縁性プラスチックが使用されており、難燃性を備えている。
【0022】
ベース11は、固定端子カバー111a及び固定端子カバー111b、並びにコイル端子カバー112a及びコイル端子カバー112bを備えている。固定端子カバー111a及び固定端子カバー111bは、
図2で説明する固定端子203a及び固定端子203bをそれぞれ包囲するようにZ1方向に開口部を有している。
【0023】
固定端子カバー111a及び固定端子カバー111bは、固定端子203aと固定端子203bを包囲することにより固定端子203aと固定端子203bの絶縁を得る。
【0024】
固定端子203aと固定端子203bにそれぞれ電線を接続するときには、電線を固定端子カバー111a及び111bのそれぞれの開口部にZ1方向からZ2方向に差し込み、固定端子203a及び固定端子203bにそれぞれ接続する。
【0025】
コイル端子カバー112a及びコイル端子カバー112bは、
図2で説明するコイル端子205a及びコイル端子205bの3辺をコの字状に取り囲むようにZ1方向に立ち上げられている。コイル端子カバー112a及び固定端子カバー112bは、固定端子とコイル端子との絶縁を得るため、コイル端子カバー112a及び固定端子カバー112bの辺のうち、固定端子カバー111a及び固定端子カバー111bから遠いX1方向にある1辺については、本実施の形態においては開放した形状となっている。
【0026】
カバープレート12は、ベース11に接着されて、電磁継電器1の内部をカバーする。
【0027】
図1(b)において、ベースカバー10は、取り付け穴101、取り付け穴102、実装面103、永久磁石取り付け部104a、永久磁石取り付け部104b、永久磁石取り付け部104c、継鉄取り付け部105を備えている。実装面とは、例えば制御盤の部品取り付け面等へ電磁継電器1を取り付ける面である。電磁継電器1は、取り付け穴101、及び取り付け穴102を利用して制御盤の部品取り付け面にネジ等により固定される。本実施例では、実装面103にて電磁継電器1を制御盤等に取り付けた場合、固定端子カバー111a及び固定端子カバー111b、並びにコイル端子カバー112a及びコイル端子カバー112bは、電磁継電器1の
図1(a)で図示される上面となる、表(おもて)面に配される。このため、制御盤等に電磁継電器1を実装したときに、周辺に他の機器を接近させて実装した場合であっても固定端子とコイル端子には表側(制御盤への実装面と反対側)から電線の接続作業ができるので作業性が良い。
【0028】
図1(c)において、実装面103の、永久磁石取り付け部104a、永久磁石取り付け部104b及び永久磁石取り付け部104c、並びに継鉄取り付け部105を拡大して説明する。また、
図1(d)は、永久磁石取り付け部104a、永久磁石取り付け部104b及び永久磁石取り付け部104cのそれぞれに取り付けられる、永久磁石23a、永久磁石23b及び永久磁石23c、並びに、継鉄取り付け部105に取り付けられる磁性体からなる継鉄24の配置を説明する上面図である。
図1(c)における永久磁石取り付け部104a〜c、及び継鉄取り付け部105には、
図1(d)で示した永久磁石23a〜cと継鉄24とが接した状態で取り付けられる。ここで、
図1(c)で示す点線は、永久磁石23a〜cと継鉄24が取り付けられたときに、永久磁石104aと継鉄24、及び永久磁石104bと継鉄24の境界を示すものである。永久磁石取り付け部104aと継鉄取り付け部105、及び永久磁石取り付け部104bと継鉄取り付け部105は、区切りのない1つの空間として形成されている。
【0029】
図1(d)の上面図において、永久磁石23a〜23cは、Y軸方向に比べてX軸方向が長い長方形の形状を有している。このX軸方向が、後述するアーク引き延ばし方向となる。永久磁石23a〜23cは、例えば、フェライト磁石、アルニコ磁石、又は希土類磁石などの種類の磁石が使用される。永久磁石23a〜23cは、使用する磁石の個数や極性の向きを任意に変更ができる。例えば、永久磁石23aと永久磁石23bのそれぞれを永久磁石取り付け部104aと永久磁石取り付け部104bに、N極を対向させて取り付けることができる。
【0030】
継鉄24は、永久磁石23a〜23cで発生する磁界を強める。継鉄24は、所定の透磁率を有する磁性体である磁性鋼板を例えばプレス加工などにより折り曲げて、対向する2面とそれをつなぐ1面からなるコの字形状を形成する。継鉄24は、永久磁石23aと接する第1の面241と、永久磁石23bと接する第2の面242と、第1の面241と第2の面242とをつないでいる第3の面243の3面体を有している。また、継鉄24は、永久磁石23cとは第3の面で接している。
図1(d)では、永久磁石23aのX1−X2方向の長さは、永久磁石23aのX1方向の面が第3の面243に接したときに、永久磁石23aのX2方向の端面と第1の面241のX2方向の端面とが略同一となるようにしている。また、同様に、永久磁石23bのX2方向の端面と第2の面242のX2方向の端面とが略同一となるようにしている。
【0031】
この実施例では、継鉄24は第1の面をもつ部分、第1の面と対向する第2の面をもつ部分、及び第1の面を持つ部分と第2の面を持つ部分とをつなぐ第3の面をもつ部分がそれぞれ直角に交わり、「コの字状」を形成している。しかし、継鉄24は全体として「略コの字状」であれば良い。例えば、それぞれの面が平面ではなく、僅かに湾曲した面で形成されていても良い。また、第3の面が、例えば円弧などの曲線で形成されていて「⊃の字状」の形状であっても良い。
【0032】
次に、電磁継電器1の詳細について
図2、
図3、
図4、及び
図5にて説明する。
【0033】
図2は、コイルボビンの組み立ての一例を説明する図である。
図2において、コイルボビン組立体20は、ボビン201、コイル202、固定端子203a、固定端子203b、固定接点204a、固定接点204b、コイル端子205a、及びコイル端子205bを備えている。
【0034】
ボビン201は、固定端子203a、固定端子203b、コイル端子205a、及びコイル端子205bのそれぞれを取り付ける、固定端子取り付け部2011a、固定端子取り付け部2011b、コイル端子取り付け部2012a及びコイル端子取り付け部2012bを備えている。コイル202は、コイル端子205a、及びコイル端子205bに通電することにより電磁力を発生し、後述する可動接点を駆動する。
固定端子203a、及び固定端子204bは、それぞれY2方向及びY1方向からからボビン201の固定端子取り付け部2011a及び固定端子取り付け部2011bに圧入される。また、コイル端子205a及びコイル端子205bは、それぞれY2方向及びY1方向からからボビン201のコイル端子取り付け部2012a及びコイル端子取り付け部2012bに圧入される。固定端子203a、固定端子203b、コイル端子205a、及びコイル端子205bへの電線の接続方法は、例えば、図示しないタブ端子やハンダ付け等により行われる。
【0035】
固定端子203a及び固定端子204bには、それぞれ固定接点204a及び固定接点204bが取り付けられる。固定接点204a及び固定接点204bは、
図4にて説明する、固定接点204a及び固定接点204bと接離可能な可動接点303a及び可動接点303bと対向する位置に配置される。固定接点204aと可動接点303a、及び固定接点204bと可動接点303bは、電流の開閉する接点部をそれぞれ構成する。固定接点204a、固定接点204b、可動接点303a及び可動接点303bには、例えば銀酸化錫、銀ニッケル、銀タングステン等が用いられる。
【0036】
ボビン201は、固定接点204aと固定接点204bとの間に、固定子間絶縁壁2013a、及び固定子間絶縁壁2013bを備えている。ボビン201はさらに、ラビリンス2014、ラビリンス2015、鉄心取り付け部2016及、ラビリンス2017及びラビリンス2019を備えている。
【0037】
固定子間絶縁壁2013a及び固定子間絶縁壁2013bは、固定接点204aと固定接点204bとの間の絶縁を行う。固定子間絶縁壁2013aと固定子間絶縁壁2013bの間に生じるスペースは、
図1で説明した、永久磁石取り付け部104cとなる部分であり、固定接点204aと固定接点204bとの間には、
図1で説明した永久磁石23cを介在させることができる。したがって、固定子間絶縁壁2013a、及び固定子間絶縁壁2013bは、固定接点204a及び固定接点204bと永久磁石23cとの間を絶縁する機能も備えている。
【0038】
図3は、ボビン−ベースの組み付けの一例を説明する図である。
図3において、コイルボビン組立体20は、ベース11にZ2方向に挿入されて組み合わされる。
【0039】
ベース11は、
図1で説明した、固定端子カバー111a、及び固定端子カバー111b、コイル端子カバー112a、及びコイル端子カバー112bを備えている。固定端子203a及び固定端子203bは、それぞれ固定端子カバー111a及び固定端子カバー111bに挿入され、また、コイル端子205a及びコイル端子205bは、それぞれコイル端子カバー112a及びコイル端子カバー112bに挿入される。
【0040】
ベース11はさらに、コイル収納部113を備えている。コイル収納部113は、コイルボビン組立体20のコイル202が収納される。コイル収納部113は、開口部のX2方向にバリヤ1131を備え、X1方向にラビリンス1132を備えている。ボビン201のX2方向には、ラビリンス2014、X1方向にはラビリンス2015が備えられている。ここでラビリンスとは、連続した凹凸形状を形成する部分を示している。コイルボビン組立体20とベース11が組み合わされると、ラビリンス2014はバリヤ1131と組み合わされて凹凸構造を形成し、またラビリンス2015は、ラビリンス1132と組み合わされて凹凸構造を形成する。また、コイル収納部113の内部底面には、ラビリンス1133を備えている。ボビン201の底部には、コイル収納部113のラビリンス1133と組み合わされて凹凸構造を形成するラビリンス2019が備えられている。なお、ここで凹凸構造とは、部品と部品との間に凹凸の組み合わせ部分を形成することにより、ラビリンスによる凹凸が後述する沿面距離や空間距離を増加させることができる凹凸構造のことをいう。
【0041】
図4は、可動部の組み立ての一例を説明する図である。
図4において、ベース11には、
図3で説明したコイルボビン組立体20が組み合わされている。電磁石継鉄22は、鉄心取り付け穴221、及び可動バネ取り付け部222を備えている。可動部組立体30は、可動バネ301、及びアマチュア302、可動接点303a及び可動接点303bを備えている。可動バネ301は、可動接点取り付け部3011a、可動接点取り付け部3011b、アマチュア取り付け部3012、及び継鉄取り付け部3013を備えている。また、アマチュア302は、可動バネ取り付け部3021を備えている。
【0042】
次に、可動部組立体の組み立て方法について説明する。可動接点取り付け部3011a、及び可動接点取り付け部3011bには、それぞれ可動接点可動接点303a、及び303bが取り付けられる。可動バネ301とアマチュア302は、アマチュア取り付け部3012と可動バネ取り付け部3021とが嵌合することにより組み立てられて、可動部組立体30を形成する。さらに、可動部組立体30は、継鉄取り付け部3013にて可動バネ取り付け部222と嵌合して、電磁石継鉄22と一体化する。電磁石継鉄22は、ベース11にX1方向に挿入されて、可動接点303a及び可動接点可動接点303bが、それぞれ固定接点204a及び固定接点204bに対して、Z1−Z2方向に対向して配置される。また、鉄心21は、鉄心取り付け部2016に取り付けられて、ベース11に挿入された電磁石継鉄22の鉄心取り付け穴221に先端部が挿入される。
【0043】
以上の組み立て方法により、鉄心21と電磁石継鉄22、可動部組立体30は一体化されて、磁気回路を形成するとともに、電気的にも導通されることになる。従って、鉄心21と電磁石継鉄22は電磁継電器1の接点である可動接点303と同電位になるため、鉄心21と電磁石継鉄22は、例えばコイル202等の部品と電磁継電器1の内部において絶縁する必要がある。
【0044】
図5は、ベースカバーの組み立ての一例を説明する図である。
図1にて説明したベースカバー10は、永久磁石取り付け部104a、永久磁石取り付け部104b、永久磁石取り付け部104c、及び継鉄取り付け部105を備えている。永久磁石取り付け部104a、永久磁石取り付け部104b及び永久磁石取り付け部104cには、それぞれ、永久磁石23a、永久磁石23b及び永久磁石23cが取り付けられる。また、継鉄取り付け部105には、継鉄24が取り付けられる。また、取り付け穴101及び取り付け穴102には、カラー1011及びカラー1021が取り付けられる。
【0045】
次に、電磁継電器1のアーク消弧方法について、
図6、
図7、
図8、
図9、及び
図10を用いて説明する。
【0046】
図6は、電磁継電器1の永久磁石及び継鉄の配置について説明する、斜視図(a)及び上面図(b)の一例である。
図6で示す実施例は、永久磁石23aと永久磁石23bの2つの永久磁石を使用し、永久磁石23cは使用しない場合を説明している。なお、
図6においては、永久磁石と継鉄の配置が分かりやすいように、
図5で説明した実装面103に配される永久磁石取り付け部104a〜104c、及び継鉄取り付け部105を図示省略している。
図6(a)において、可動接点303aは固定接点204aとZ1−Z2方向にて接離可能に対向して第1の接点部401を形成している。また、可動接点303bは固定接点204bとZ1−Z2方向にて接離可能に対向して第1の接点部402を形成している。永久磁石23a及び永久磁石23bは、この第1の接点部401と第1の接点部402を間に挟んでY1−Y2方向にて対向して取り付けられている。また、永久磁石23aは、Y2方向の面で継鉄24に接し、永久磁石23bは、Y1方向の面で継鉄24に接している。
図6(b)において、永久磁石23aと永久磁石23bは、お互いのN極を内側に、S極を外側にして、X1−X2方向に平行に対向している。第1の接点部401及び第1の接点部402は、永久磁石23a及び永久磁石23bにY1−Y2方向で挟まれている。
【0047】
永久磁石23a及び永久磁石23bのX1−X2方向の長さをl1とする。また、第1の接点部401及び第1の接点部402の中心から永久磁石23a及び永久磁石23のX1方向の長さをl2、第1の接点部401及び第1の接点部402の中心から永久磁石23a及び永久磁石23のX2方向の長さをl3とする。つまり、l1=l2+l3である。ここで、図示の通り、l3の長さに対して、l2の長さを大きくしている。つまり、永久磁石23a及び永久磁石23は、第1の接点部401及び第1の接点部402をY1−Y2方向で挟むだけではなく、第1の接点部401及び第1の接点部402の中心からX1方向に、l3より大きな距離であるl2の長さで伸延させている。このl2の伸延方向が後述するアークの引き伸ばし方向となり、
図7で説明する、アーク引き伸ばしのための空間を確保する方向となる。
【0048】
図7は、アーク引き延ばし空間の一例を説明する図である。
図7は、電磁継電器1を、
図1におけるA−Aの切断面をY2方向から見た断面の一部を拡大したものである。固定接点204aと可動接点303aの対で構成される第1の接点部401において、固定接点204aは固定端子203aに取り付けられて、固定端子203aがボビン201に固定されている。可動接点303aは、可動バネ301に取り付けられて、可動バネ301によりZ1方向に付勢されている。可動バネ301はベースカバー10の可動バネ係止部106により係止されて、可動接点303aは、対向している固定接点203aと所定距離の空隙を保って第1の接点部401を構成している。第1の接点部401の図示X1方向には、継鉄24との間に、組み付けられたベースカバー10の端子部絶縁壁107が配置される。第1の接点部401からX1方向に広がる、点線で略図示している空間がアーク引き延ばし空間40である。
【0049】
次に、永久磁石23aと永久磁石23bによって生じる磁界について、
図8を用いて説明する。
図8は、永久磁石による磁界の一例を説明する、継鉄無しの場合の図(a)、継鉄ありの場合の図(b)である。
【0050】
図8(a)において、永久磁石23aと永久磁石23bは、お互いにN極を内側に、S極を外側にして対向している。このとき永久磁石23a及び永久磁石23bに発生する磁界は、図示する通り、N極からS極に向かう磁力線に沿って発生する。第1の接点部401には、図示Y1方向の磁界が発生し、第1の接点部402には図示Y2方向の磁界が発生する。永久磁石の同極を対向させて配置することにより、発生する磁界は単独の永久磁石により発生する磁界に比べて強い磁界を発生させることができる。
【0051】
さらに、
図6で説明した通り、本実施例では、永久磁石23a及び永久磁石23bをX1方向に伸延させているため、第1の接点部401及び第1の接点部402からX1方向に離れた位置においても、強い磁界を発生させることができる。
【0052】
図8(b)において、
図8(a)における永久磁石23a及び永久磁石23bの配置に加えて、永久磁石23a及び永久磁石23bの外側に継鉄24が配置されている。継鉄24は永久磁石のS極側に配置されるため、S極へ向かう磁力線の密度を上げる。ここで、特に点線で示した部分について磁力線の密度が上がり、
図8(a)の場合に比べてさらに磁界が強くなる。つまり、継鉄24により、アーク引き延ばし空間40に生じる磁界が強くなる。
【0053】
次に、電磁継電器1の電路に流れる電流の経路について、
図9を用いて説明する。
図9は、電路を流れる電流経路を説明する、斜視図(a)、正面図(b)、右側面図(c)及び左側面図(d)の一例である。
【0054】
図9(a)〜(d)では、固定端子203aと可動接点303aで構成される第1の接点部401と、固定端子203bと可動接点303bで構成される第1の接点部402は開いた状態を図示するが、点線矢印で図示する電流経路は、第1の接点部401及び第1の接点部402が閉じたときに流れる経路である。固定端子203bから入った電流は、固定接点204bから可動接点303b、可動バネ301、可動接点303a、固定接点204a、さらに固定端子203aへと流れる。つまり、第1の接点部401ではZ2方向の下向きの電流が流れ、第1の接点部402ではZ1方向の上向きの電流が流れる。
【0055】
次に、
図9で説明した電流によって生じるアークが、
図8で説明した磁界によって引き伸ばされる様子を、
図10を用いて説明する。
図10は、アークが引き伸ばされる様子を説明する、斜視図(a)、アーク発生時の図(b)、アーク引き延ばし時の図(c)及びアーク消弧直前の図(d)の一例である。
図10(a)〜(d)では、発生したアークの引き伸ばしを説明するために、
図7で説明した、ベースカバー10の端子部絶縁壁107等によって形成されるアーク引き延ばし空間40の記載を省略している。
【0056】
図10(a)は、アーク発生時の図である。
図10(a)において、負荷電流が流れている状態で第1の接点部401が開放され、アークが発生している。アークは、固定接点204aと可動接点303aの空隙にて発生し、アーク放電により第1の接点部401を加熱するとともに、周囲の空気をイオン化して第1の接点部401に電流を流し続けようとする。アークは、
図9で説明した通り、Z2の方向に流れる下向きの電流であるため、
図8で説明したY1方向の磁界により、フレミングの左手の法則に従い、X1方向の力を受ける。したがって、アークは、X1方向に引き延ばされようとする。
図10(b)は、アークが引き伸ばされる様子を表している。
図10(b)において、発生したAの位置のアークはX1方向に力を受けて、
図10(c)におけるBの位置まで引き延ばされている。
図10(d)は、さらにアークがCの位置まで引き伸ばされて消弧直前の様子を表している。
【0057】
一方、固定接点204bと可動接点303bの空隙にて第1の接点部402で発生するアークは、
図9で説明した通り、Z1の方向で流れる上向きの電流であるため、
図8で説明したY2方向の磁界により、第1の接点部401と同様にX1方向の力を受け、X1方向に引き延ばされる。
【0058】
アークの消弧性能は、アークの引き伸ばし距離が大きくなるほど高くなる。本実施例では、
図8で説明した通り、同極で対向する永久磁石23a及び永久磁石23bにより、アーク引き延ばし方向に磁束密度が高くなり、X1方向に伸延された永久磁石23a及び永久磁石23bによりによりX1方向で磁束密度が高くなり、さらに継鉄24により磁束密度が高くなる。従って、アークに対する引き延ばし力が強くなり、アークの引き伸ばし距離が大きくなる。また、アークの引き延ばしに必要なアーク引き延ばし空間を設けておくことにより、引き延ばされたアークが消弧されやすくなる。
【0059】
本実施例における電磁継電器1は、第1の接点部401と第1の接点部402におけるアーク引き延ばし方向をX1方向で揃えることにより、
図7で説明した第1の接点部401と第1の接点部402のアーク引き延ばし空間40をX1方向に揃えて設けることができる。一方、例えば第1の接点部401と第1の接点部402のアーク引き延ばし方向をX1方向とX2方向に別々した場合は、X1方向のアーク引き延ばし空間とX2方向のアーク引き延ばし空間の両方が必要となる。したがって、アーク引き延ばし方向をX1方向で揃えることにより、アーク引き延ばし方向をX1方向とX2方向の別々にした場合に比べて、本実施例における電磁継電器1は、X1−X2方向に小型化することができる。また、アーク引き延ばし方向に伸延している継鉄24のX1−X2方向における長さを短くすることができる。従って電磁継電器1は絶縁性能を高めつつ、機器の小型化を図ることができる。
【0060】
なお、上記実施例では、2つの永久磁石を対向させて用いたが、例えば、
図1で説明した永久磁石取り付け部104cにさらに永久磁石23cを加えることにより、さらに磁束密度を高めたり、磁力線の方向を調整したりすることができる。
【0061】
次に電磁継電器1の絶縁性能について説明する。絶縁性能は、一般的に、空間距離と沿面距離にて説明される。空間距離とは、2つの導体間の空間を通る最短距離をいい、また、沿面距離とは、2つの導体間の絶縁物の表面に沿った最短距離をいう。
【0062】
[コイル端子と固定端子の間の絶縁]
図11は、コイル端子と固定端子の間の配置を説明する外観図の一例である。また、
図12は、コイル端子と固定端子の間の絶縁性能を説明する、空間距離を表す断面図(a)、沿面距離を表す断面図(b)の一例である。
【0063】
図11において、固定端子203bとコイル端子205bとの間の絶縁性能は、固定端子カバー111b、及びコイル端子カバー112bの形状によって決まる。固定端子カバー111b、及びコイル端子カバー112bは、絶縁性のプラスチックであるベース11の一部である。
図1で説明した通り、固定端子カバー111bは、固定端子203bを包囲するようにZ1方向に立ち上げたスリーブ状の形状をしている。また、コイル端子カバー112bは、コイル端子205bに対して、固定端子カバー111bと反対側のX1方向を除く3面にてZ1方向に立ち上げられた形状である。
【0064】
固定端子203bとコイル端子205bの空間距離は、
図12(a)の矢印実線で図示する通り、コイル端子205bからコイル端子カバー112b、固定端子カバー111bを経由する固定端子203bまでの空間を通る最短距離である。一方、固定端子203bとコイル端子205bの沿面距離は、
図12(b)の矢印破線で図示する通り、コイル端子205bからコイル端子カバー112b、固定端子カバー111bを経由する固定端子203bまでの表面に沿った最短距離である。従って、固定端子カバー111b及びコイル端子カバー112bの高さを高くすることにより、固定端子203bとコイル端子205bの空間距離及び沿面距離が増えることになる。本実施例では、固定端子203a及び固定端子203bにスリーブ状の固定端子カバー111a及び固定端子カバー111bを設置することにより、上記の通り空間距離及び沿面距離を増やして絶縁性能を向上させるとともに、固定端子から電気継電器1の外部の部品に対する絶縁性能も向上させることができる。
【0065】
次に、コイル202と電磁石継鉄22の絶縁性能を説明する。コイル202と電磁石継鉄22の絶縁性能は、電磁継電器内部において、以下で説明する第1の経路から第4の経路までの4つの経路における空間距離と沿面距離にて説明する。なお、第1の経路から第4の経路はいずれかの経路における絶縁性能が低いとその経路より短絡が発生するので、全ての経路における絶縁性能は同じであることが望ましい。
【0066】
[第1の経路におけるコイルと電磁石継鉄の間の絶縁]
第1の経路は、
図13及び
図14に矢印で図示する、コイル収納部113の開口部に設けられたバリヤ1131のY1−Y2方向における側方を通過して電磁石継鉄22に到達する経路である。
図13は、第1の経路におけるコイルと電磁石継鉄の空間距離を説明する、側面斜視図(a)及び上面図(b)の一例である。また、
図14は、第1の経路におけるコイルと電磁石鉄心の沿面距離を説明する、側面斜視図(a)、上面図(b)及び斜視図(c)の一例である。
【0067】
図13において、矢印実線は、第1の経路におけるコイルと電磁石継鉄の空間距離を図示している。コイル202はコイル収納部113に納められている。コイル収納部113の電磁石継鉄22の側には、
図3で説明したバリヤ1131が設けられている。ここで、コイル202と電磁石継鉄22の空間で最短距離となるのは、
図13(a)に示す通り、コイル202からバリヤ1131の端部を通り電磁石継鉄22の上部に到る経路である。コイル収納部に設けられたバリヤ1131は、コイル202から電磁石継鉄22までの空間距離を増やして絶縁性を向上させている。
【0068】
図14において、矢印破線は、コイル202と電磁石継鉄22の沿面距離を図示している。沿面距離は、コイル202からバリヤ1131の端部を通り、コイル収納部113の外面に沿って、
図4で説明した電磁石継鉄22が折り曲げられて水平になっている部分に到る経路である。コイル収納部113に設けられたバリヤ1131は、
図14(b)に示す通り、沿面距離をY2方向に増やして、絶縁性能を向上させている。
【0069】
[第2の経路におけるコイルと電磁石継鉄の間の絶縁]
第2の経路は、
図3で説明したコイル収納部113のバリヤ1131とボビン201のラビリンス2014とが組み合わされた場合の、
図15に示す、コイル202と電磁石継鉄22の間におけるバリヤ1131を越える経路である。
図15は、第2の経路におけるコイルと電磁石鉄心の、空間距離を説明する図(a)及び沿面距離を説明する図(b)の一例である。
【0070】
図15において、実線矢印は、第2の経路におけるコイルと電磁石継鉄の空間距離を示し、破線矢印は、同沿面距離示している。ラビリンス2014の凹部にはバリヤ1131の凸部が組み合わされて凹凸構造を形成する。空間距離は、
図15(a)で示す通り、コイルの上部から、ラビリンス2014とバリヤ1131が組み合わされた凹凸構造の部分を経由して、電磁石継鉄22に向かう経路となる。一方、沿面距離は、
図15(b)で示す通り、ラビリンス2014の表面に沿った経路となる。つまり、ラビリンス2014のZ1−Z2方向の凹凸によって、第2の経路における空間距離と沿面距離が増加して絶縁性能が向上することになる。
【0071】
なお、
図15では、空間距離及び沿面距離の説明のため、ラビリンス2014とバリヤ1131との隙間を大きくして図示しているが、密着した状態で組み付けられる。但し、本実施例においては、ラビリンス2014とバリヤ1131とで形成される凹凸構造により空間距離等を増加させるのが目的であり、ラビリンス2014とバリヤ1131とを密封するのが目的ではないため、両者が緩嵌合した状態であっても緊合した状態であっても良い。以下で説明する凹凸構造についても同様に、嵌合の強さによる実施例での限定はしない。
【0072】
[第3の経路におけるコイルと電磁石継鉄の間の絶縁]
図16は、コイル収納部113にコイルボビン組立体20を組み合わせたときの断面図の一例である。
図17は、
図16の図示左下の部分を拡大した図である。
【0073】
第3の経路におけるコイルと電磁石継鉄の空間距離及び沿面距離を矢印実線で示している。
図17において、電磁石継鉄22の底部から、コイル収納部113のラビリンス1133とボビン201のラビリンス2019との組み合わせで形成される凹凸構造を経由して、コイル202の底部のX2方向の端部に到達する経路である。ラビリンス1133は、
図3で説明した通り、コイル収納部113の底部にY1−Y2方向の溝として設けられている。ラビリンス2019は、コイル巻き付け部2018にコイル202が巻かれるボビン201の底部に設けられており、ラビリンス1133の溝と組み合わされる形状である。ラビリンス1133とラビリンス2019が組み合わされて凹凸構造を形成することにより、Z1−Z2方向の凹凸にて、第3の経路におけるコイルと電磁石継鉄の空間距離と沿面距離が増加し、絶縁性能が向上する。
【0074】
[第4の経路におけるコイルと電磁石継鉄の間の絶縁]
図18は、
図16の図示右下の部分を拡大した図である。第4の経路におけるコイルと電磁石継鉄の空間距離及び沿面距離を矢印実線で示している。第4の経路における空間距離と沿面距離は、電磁石継鉄22の底部から、コイル収納部113のラビリンス1133とボビン201のラビリンス2019との組み合わせで形成される凹凸構造を経由して、コイル202の底部のX1方向の端部に到達する経路である。第3の経路と第4の経路の差異は、電磁石継鉄22がコイル収納部113の底部にX2方向からX1方向に差し込まれることによるコイル収納部113及びボビン201の形状の差異に起因している。第4の経路は、第3の経路に比べてラビリンスの高さを高くしているので空間距離及び沿面距離による絶縁性能を第3の経路と同程度にしている。
【0075】
[コイルと固定端子の間の絶縁]
次に、コイル202と固定端子(203a、203b)の絶縁について、
図19を用いて説明する。
図19は、コイルと固定端子の空間距離と沿面距離の一例を説明する図である。
【0076】
図19において、コイルと固定端子の空間距離と沿面距離は矢印実線にて示す。コイル202はコイル収納部113に収納されている。
図3で説明した通り、コイル収納部113のX1方向の開口部にはラビリンス1132が設けられている。ボビン201には、固定接点204aが取り付けられた固定端子203aが圧入されている。また、ボビン201にはラビリンス2015が設けられ、コイル収納部113とボビン201が組み合わされたときにラビリンス1132とラビリンス2015が嵌合されて凹凸構造を形成している。コイル202と固定端子203aは、ラビリンス1132とラビリンス2015によって形成された凹凸構造により空間距離と沿面距離が長くなり、コイル202と固定端子203a間の絶縁性能が向上する。
【0077】
[コイルと鉄心の間の絶縁]
次に、コイル202と鉄心21の絶縁について、
図20を用いて説明する。
図20は、コイルと鉄心の絶縁性能を説明するための断面図(a)、空間距離を説明する拡大図(b)及び沿面距離を説明する拡大図の一例である。
【0078】
図20(a)において、ボビン201のコイル巻き付け部2018に巻き付けられたコイル202はコイル収納部113に収納されている。コイル202にはコイル端子205a及びコイル端子205bが取り付けられて、コイル端子205a及びコイル端子205bはコイル端子カバー112a及びコイル端子カバー112bに覆われている。ボビン201の上部はY1−Y2方向に張り出しており、コイル収納部113に当接する。ボビン201は上面にラビリンス2017を備える。ボビン201の鉄心取り付け部2016には鉄心21が取り付けられている。
【0079】
図20(b)は、
図20(a)の図示左上部を拡大して、矢印実線にてコイル202と鉄心21との空間距離を説明している。空間距離は、コイル202の上部からボビン201のY2側に張り出した部分を経由して、ラビリンス2017から鉄心21までの最短距離である。ここで、ボビン201のY2方向の張り出しとラビリンス2017のZ1方向の高さによって空間距離は増えて絶縁性能が向上する。
【0080】
図20(c)は、
図20(a)の図示左上部を拡大して矢印破線にてコイル202と鉄心21との沿面距離を説明している。沿面距離は、
図20(b)と同様に、コイル202の上部からボビン201のY2側に張り出した部分の表面を経由する。さらにラビリンス2017の表面を経由して、鉄心21まで到る。空間距離と同様に、ボビン201のY2方向の張り出しとラビリンス2017のZ1方向の高さによって沿面距離も増えて絶縁性能が向上する。
【0081】
[固定端子間の絶縁]
次に、固定端子間の絶縁について、
図21を用いて説明する。
図21は、固定端子間の絶縁性能を説明するための断面図(a)、空間距離を説明する拡大図(b)及び沿面距離を説明する拡大図の一例である。
【0082】
図21(a)において、固定接点204a及び固定接点204bは、固定端子203a及び固定端子203bに取り付けられて、ベースカバー10により覆われている。ベースカバー10は、
図5で説明した通り、実装面103において、永久磁石取り付け部104a、永久磁石取り付け部104b及び永久磁石取り付け部104cの凹部を備えている。永久磁石取り付け部104a、永久磁石取り付け部104b及び永久磁石取り付け部104cの凹部には、それぞれ、永久磁石23a、永久磁石23b及び永久磁石23cが取り付け可能となっている。永久磁石取り付け部104a、永久磁石取り付け部104b及び永久磁石取り付け部104cは実装面103の裏面であるZ2方向から見た場合には凸部を形成している。一方、ボビン201には固定子間絶縁壁2013a及び固定子間絶縁壁2013bが備えられており、固定子間絶縁壁2013a及び固定子間絶縁壁2013bによって凹部が形成されている。ベース11にベースカバー10が取り付けられたときに、固定子間絶縁壁2013a及び固定子間絶縁壁2013bによって形成された凹部に永久磁石取り付け部104cの凸部が組み合わされて、固定端子203a及び固定端子203bの間に絶縁バリヤが形成される。
【0083】
図21(b)は、
図21(a)の図示上部を拡大して、空間距離を説明している。
図21(b)において、空間距離は、矢印実線で示す通り、固定接点204aからボビン201の固定子間絶縁壁2013a及び固定子間絶縁壁2013bと永久磁石取り付け部104cで形成される凹凸構造を経由して固定接点204bに到る。固定子間絶縁壁2013a及び固定子間絶縁壁2013bと永久磁石取り付け部104cで形成される凹凸構造により空間距離が増えて絶縁性能が向上する。
【0084】
図21(c)は、
図21(a)の図示上部を拡大して、沿面距離を説明している。
図21(c)において、沿面距離は、矢印破線で示す通り、固定端子203aから固定子間絶縁壁2013a及び固定子間絶縁壁2013bと永久磁石取り付け部104cで形成される凹凸構造を経由して固定端子203bに到る。固定子間絶縁壁2013a及び固定子間絶縁壁2013bと永久磁石取り付け部104cで形成される凹凸構造により沿面距離が増えて絶縁性能が向上する。
【0085】
なお、本実施例においては、固定子間絶縁壁2013a及び固定子間絶縁壁2013bによって形成された凹部に、ベースカバー10に設けられた永久磁石取り付け部104cの凸部が嵌合する嵌合部に凹凸構造を形成したが、固定子間絶縁壁2013a及び固定子間絶縁壁2013bに凸部を形成し、ベースカバー10に凹部を設けることにより、固定子間絶縁壁2013a及び固定子間絶縁壁2013bが嵌合する嵌合部に凹凸構造を形成しても良い。
【0086】
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。