(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043178
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】フラットパネルディスプレイの自動ムラ検出装置および自動ムラ検出方法
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20161206BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
G01M11/00 T
G01N21/88 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-275259(P2012-275259)
(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公開番号】特開2014-119362(P2014-119362A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117776
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 義一
(72)【発明者】
【氏名】中屋 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】市川 勉
【審査官】
小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−331929(JP,A)
【文献】
特開平10−096681(JP,A)
【文献】
特開平06−233112(JP,A)
【文献】
特開昭63−015573(JP,A)
【文献】
特開2007−322257(JP,A)
【文献】
特開2003−215048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 − G01M 11/08
G01N 21/84 − G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラにより撮像されたフラットパネルディスプレイの発光状態の画像を入力画像として取り込み、前記入力画像に対して前処理を行う前処理部、前記前処理部の出力画像に対してムラ候補領域の抽出処理を行う欠陥候補抽出部、および前記欠陥候補抽出部により抽出された前記ムラ候補領域の真偽判定を行う判定部とによる画像処理を施すことで、ムラ領域の有無を判定するフラットパネルディスプレイの自動ムラ検出装置であって、
前記前処理部は、前記フラットパネルディスプレイが有する画素構造の影響を前記入力画像から除去することなく、前記入力画像からカメラノイズおよび背景ノイズを除去し、後段の前記欠陥候補抽出部に出力し、
前記欠陥候補抽出部は、
前記前処理部の出力画像に対して輝度ヒストグラムを算出し、
算出した前記輝度ヒストグラムの分布に基づいて第1の閾値を算出し、
前記前処理部の出力画像に対して前記第1の閾値を用いることで第1の2値化画像を生成し、
前記第1の2値化画像に対して、所定サイズの注目ブロック内で白画素の比率を算出する処理を、1画素毎に前記注目ブロックを移動させながら実行し、各画素について算出された前記比率に対して所定の第2の閾値を用いることで、前記ムラ候補領域となる第2の2値化画像を生成し、
輝度が明るい欠陥を検出する場合には、前記第2の閾値をTH2Hに置換し、前記白画素の比率が前記TH2H以上であれば白に2値化し、前記白画素の比率が前記TH2H未満であれば黒に2値化することで前記第2の2値化画像を生成し、
輝度が暗い欠陥を検出する場合には、前記第2の閾値をTH2Lに置換し、前記白画素の比率が前記TH2L以上であれば白に2値化し、前記白画素の比率が前記TH2L未満であれば黒に2値化することで前記第2の2値化画像を生成する
フラットパネルディスプレイの自動ムラ検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフラットパネルディスプレイの自動ムラ検出装置において、
前記欠陥候補抽出部は、
前記第2の2値化画像に対して収縮/膨張処理を実行することで孤立点除去および領域連結を行った後、白または黒の閉領域を抽出し、
抽出した前記閉領域をラベリングすることで、前記ムラ候補領域をさらに絞り込み、後段に出力する
フラットパネルディスプレイの自動ムラ検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフラットパネルディスプレイの自動ムラ検出装置において、
前記判定部は、前記欠陥候補抽出部により算出された前記ムラ候補領域のそれぞれの領域について、輝度値あるいはコントラスト比に基づくパラメータを算出して所定の評価値と比較することで、前記ムラ候補領域の真偽判定を行う
フラットパネルディスプレイの自動ムラ検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載のフラットパネルディスプレイの自動ムラ検出装置において、
前記評価値は、検査者の経験に基づいてあらかじめ設定され、
前記判定部は、前記パラメータを前記評価値と比較して自動ムラの判定を行う
フラットパネルディスプレイの自動ムラ検出装置。
【請求項5】
カメラにより撮像されたフラットパネルディスプレイの発光状態の画像を入力画像として取り込み、前記入力画像に対して前処理を行う前処理部、前記前処理部の出力画像に対してムラ候補領域の抽出処理を行う欠陥候補抽出部、および前記欠陥候補抽出部により抽出された前記ムラ候補領域の真偽判定を行う判定部とによる画像処理を施すことで、ムラ領域の有無を判定するフラットパネルディスプレイの自動ムラ検出方法であって、
前記前処理部において、前記フラットパネルディスプレイが有する画素構造の影響を前記入力画像から除去することなく、前記入力画像からカメラノイズおよび背景ノイズを除去し、後段の前記欠陥候補抽出部に出力するステップと、
前記欠陥候補抽出部において、
前記前処理部の出力画像に対して輝度ヒストグラムを算出するステップと、
算出した前記輝度ヒストグラムの分布に基づいて第1の閾値を算出するステップと、
前記前処理部の出力画像に対して前記第1の閾値を用いることで第1の2値化画像を生成するステップと、
前記第1の2値化画像に対して、所定サイズの注目ブロック内で白画素の比率を算出する処理を、1画素毎に前記注目ブロックを移動させながら実行し、各画素について算出された前記比率に対して所定の第2の閾値を用いることで、前記ムラ候補領域となる第2の2値化画像を生成するステップと
を備え、
前記第2の2値化画像を生成するステップは、
輝度が明るい欠陥を検出する場合には、前記第2の閾値をTH2Hに置換し、前記白画素の比率が前記TH2H以上であれば白に2値化し、前記白画素の比率が前記TH2H未満であれば黒に2値化することで前記第2の2値化画像を生成し、
輝度が暗い欠陥を検出する場合には、前記第2の閾値をTH2Lに置換し、前記白画素の比率が前記TH2L以上であれば白に2値化し、前記白画素の比率が前記TH2L未満であれば黒に2値化することで前記第2の2値化画像を生成する
フラットパネルディスプレイの自動ムラ検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイの製造工程で生じる輝度や色の不均一性(ムラ)を、画像データに基づく演算処理を行うことで自動検出するためのフラットパネルディスプレイの自動ムラ検出装置および自動ムラ検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な種類のフラットパネルディスプレイが開発され、製品化されている。このようなフラットパネルディスプレイの画質を低下させる欠陥の一つとして、輝度や色の不均一性(ムラ)がある。
【0003】
生産現場におけるムラの検査は、従来、検査員により目視で行われていた。しかしながら、多くの時間、検査人員、費用が必要とされるため、検査の自動化が望まれており、一部自動化が進んでいる。
【0004】
このような自動化の方法の一例として、発光したフラットパネルをカメラで撮影し、画像処理によってムラの検出を行う技術が開発され、検査工程において利用されるようになってきている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】大谷哲也他、「フラットパネルディスプレイの画質検査アルゴリズム」、横河技法、vol.47 No.3(2003)
【非特許文献2】大津展之、「判別および最小2乗基準に基づく自動しきい値選定法」、電子通信学会論文誌D、Vol.63、No.4、pp349〜356、1980
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
このような自動検査は、まだまだ性能は十分でなく、特定の点欠陥や線欠陥以外の様々な欠陥に対応できるものではなかった。
【0007】
従来の画像処理による欠陥検査の一般的な流れは、大別すると、以下の3つの部分に分けられる。
(1)前処理部(フィルタ等によるノイズ除去、画素構造除去、背景画像予測除去等)
(2)欠陥候補抽出部(欠陥に係わる特徴量を計算、2値化、ラベリングすることで、候補を抽出)
(3)判定部(経験に基づいた判断ルールで欠陥部分を特定、表示)
【0008】
それぞれの画像処理部分では、検出対象となる欠陥の種類や撮影環境などに応じた複数の異なる処理が採用されるが、概ね複雑な処理になることが多く、安定的に検出性能が得られるとはいえなかった。
【0009】
ここで、具体的に、前処理部において生じる問題について説明する。フラットパネルディスプレイの欠陥は、輝度(明暗)の微妙な変化となって見えることが多い。しかしながら、フラットパネルディスプレイは、固定画素構造のパネルであるため、画素単位の構造がカメラ撮影による画像に明暗として写り、そのままでは、フラットパネルディスプレイの欠陥を検出する妨げになることがある。
【0010】
問題を避けるためには、所定の帯域を通過するフィルタをかけることで、画素構造を見えなくし、ディスプレイの各画素に表示された明暗情報のみを取り出すことを行わなければならない。しかしながら、フィルタをかけることによって、本来検出すべき欠陥の特徴をもなまらせてしまうことになり、以降の欠陥検出処理が難しくなるという新たな問題が生じる。
【0011】
また、検出対象となる欠陥の種類やパネルの種類によって、帯域通過フィルタの特性や以降の欠陥検出処理アルゴリズムを微妙に調整する必要があり、さらに作業工程が増えるという問題も誘発する。
【0012】
また、フィルタサイズの大きいローパスフィルタなどで背景画像予測を行い、入力画像から減算することで、ムラ部分の強調とともに、ノイズと分離し、ある閾値で2値化することで、ムラの検出を行うことが考えられる。しかしながら、このような検出に当たっては、フィルタのサイズを大きくして十分なローパス効果を実現しないと、ムラの検出性能に影響することとなる。このため、ハードウェアの負担が増大するとともに、ソフトウェアの処理時間が長くなるという問題も生じ、最終製品であるフラットパネルディスプレイのコスト高への影響が生じる。
【0013】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、フラットパネルディスプレイの検査工程において、画像処理により不均一性(ムラ)領域を自動検出する際に、検査工程の省力化、高速化を図り、最終製品であるフラットパネルディスプレイのコストダウンを達成することのできるフラットパネルディスプレイの自動ムラ検出装置および自動ムラ検出方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るフラットパネルディスプレイの自動ムラ検出装置は、カメラにより撮像されたフラットパネルディスプレイの発光状態の画像を入力画像として取り込み、入力画像に対して前処理を行う前処理部、前処理部の出力画像に対してムラ候補領域の抽出処理を行う欠陥候補抽出部、および欠陥候補抽出部により抽出されたムラ候補領域の真偽判定を行う判定部とによる画像処理を施すことで、ムラ領域の有無を判定するフラットパネルディスプレイの自動ムラ検出装置であって、前処理部は、フラットパネルディスプレイが有する画素構造の影響を入力画像から除去することなく、入力画像からカメラノイズおよび背景ノイズを除去し、後段の欠陥候補抽出部に出力し、欠陥候補抽出部は、前処理部の出力画像に対して輝度ヒストグラムを算出し、算出した輝度ヒストグラムの分布に基づいて第1の閾値を算出し、前処理部の出力画像に対して第1の閾値を用いることで第1の2値化画像を生成し、第1の2値化画像に対して、所定サイズの注目ブロック内で白画素の比率を算出する処理を、1画素毎に注目ブロックを移動させながら実行し、各画素について算出された比率に対して所定の第2の閾値を用いることで、ムラ候補領域となる第2の2値化画像を生成
し、輝度が明るい欠陥を検出する場合には、第2の閾値をTH2Hに置換し、白画素の比率がTH2H以上であれば白に2値化し、白画素の比率がTH2H未満であれば黒に2値化することで第2の2値化画像を生成し、輝度が暗い欠陥を検出する場合には、第2の閾値をTH2Lに置換し、白画素の比率がTH2L以上であれば白に2値化し、白画素の比率がTH2L未満であれば黒に2値化することで第2の2値化画像を生成するものである。
【0015】
また、本発明に係るフラットパネルディスプレイの自動ムラ検出方法は、カメラにより撮像されたフラットパネルディスプレイの発光状態の画像を入力画像として取り込み、入力画像に対して前処理を行う前処理部、前処理部の出力画像に対してムラ候補領域の抽出処理を行う欠陥候補抽出部、および欠陥候補抽出部により抽出されたムラ候補領域の真偽判定を行う判定部とによる画像処理を施すことで、ムラ領域の有無を判定するフラットパネルディスプレイの自動ムラ検出方法であって、前処理部において、フラットパネルディスプレイが有する画素構造の影響を入力画像から除去することなく、入力画像からカメラノイズおよび背景ノイズを除去し、後段の欠陥候補抽出部に出力するステップと、欠陥候補抽出部において、前処理部の出力画像に対して輝度ヒストグラムを算出するステップと、算出した輝度ヒストグラムの分布に基づいて第1の閾値を算出するステップと、前処理部の出力画像に対して第1の閾値を用いることで第1の2値化画像を生成するステップと、第1の2値化画像に対して、所定サイズの注目ブロック内で白画素の比率を算出する処理を、1画素毎に注目ブロックを移動させながら実行し、各画素について算出された比率に対して所定の第2の閾値を用いることで、ムラ候補領域となる第2の2値化画像を生成するステップとを備え
、第2の2値化画像を生成するステップは、輝度が明るい欠陥を検出する場合には、第2の閾値をTH2Hに置換し、白画素の比率がTH2H以上であれば白に2値化し、白画素の比率がTH2H未満であれば黒に2値化することで第2の2値化画像を生成し、輝度が暗い欠陥を検出する場合には、第2の閾値をTH2Lに置換し、白画素の比率がTH2L以上であれば白に2値化し、白画素の比率がTH2L未満であれば黒に2値化することで第2の2値化画像を生成するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フラットパネルディスプレイが有する画素構造の影響を入力画像から除去する処理を不要とすることで前処理部を大幅にカットし、欠陥候補抽出部で画素構造を積極的に利用した手法を採用することにより、検査工程の省力化、高速化を図り、最終製品であるフラットパネルディスプレイのコストダウンを達成することのできるフラットパネルディスプレイの自動ムラ検出装置および自動ムラ検出方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態1におけるフラットパネルディスプレイの自動ムラ検出装置の全体構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態1における画像処理部による一連処理を示したフローチャートである。
【
図3】本発明の実施の形態1における画像処理部による具体的な処理画像を示した説明図である。
【
図4】従来の画像処理部による一連処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のフラットパネルディスプレイの自動ムラ検出装置および自動ムラ検出方法の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
なお、本願発明は、任意のパターンで発光したフラットパネルディスプレイのカメラ撮像画像をコンピュータに取り込み、画像処理によって自動的にムラを検出する手法において、以下のような手段を有することを技術的特徴とするものである。
(特徴1)前処理部において、背景ノイズ除去後、例えば大津の手法(例えば、非特許文献2参照)によって輝度ヒストグラムから閾値を算出して、その閾値と比較することで2値化を行う第1の2値化手段
(特徴2)第1の2値化処理手段による2値化処理結果において、所定のブロック内の白の画素の比率を算出する手段
(特徴3)算出した比率を所定の閾値と比較して2値化する第2の2値化手段
【0019】
さらに、以下の技術的特徴を有することもできる。
(特徴4)第2の2値化処理手段による2値化処理結果を、オープニング(収縮/膨張)処理またはクロージング(膨張/収縮)処理によって整形することで欠陥候補領域を特定し、不均一性(ムラ)領域の判定を行う手段
【0020】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1におけるフラットパネルディスプレイの自動ムラ検出装置の全体構成図である。
図1に示した本実施の形態1におけるフラットパネルディスプレイの自動ムラ検出装置は、カメラ10、画像処理部20、および表示部30を備えて構成され、検査対象であるフラットパネルディスプレイ(以下、「検査パネル1」と称す)の自動ムラ検出を行う。
【0021】
画像処理部20は、カメラ10で撮像された検査パネル1の発光状態に対して画像処理を施すことで、ムラが発生している領域を特定し、表示部30に特定した場所を表示させることができる。そして、この画像処理部20は、前処理部21、欠陥候補抽出部22、および判定部23を備えて構成されている。
【0022】
前処理部21は、後段の欠陥候補抽出部22による処理を行うために、カメラ10で撮像された画像の補正処理を行う部分であり、具体的な処理例としては、以下のようなものが挙げられる。
・拡大/縮小処理
・幾何学的補正
・シェーディング補正
・ノイズ除去(平滑化フィルタ、メディアンフィルタ等)
・背景画像予測除去
【0023】
また、欠陥候補抽出部22は、前処理部21を経た画像に対して、ムラに相当する欠陥部分の候補領域を抽出する部分であり、具体的な処理例としては、以下のようなものが挙げられる。
・エンハンス処理
・エッジ検出(ラプラシアンフィルタ、ソーベルフィルタ等)
・第1の特徴量計算
・2値化
・孤立点除去
・膨張/収縮処理
・ラベリング
【0024】
さらに、判定部23は、欠陥候補抽出部22により抽出された候補領域について、ムラであるか否かを最終判断する部分であり、具体的な処理例としては、以下のようなものが挙げられる。
・第2の特徴量計算
・識別(閾値判定、分類等)
【0025】
次に、フローチャートおよび説明図を用いて、本実施の形態1における自動ムラ検出方法について具体的に説明する。
図2は、本発明の実施の形態1における画像処理部20による一連処理を示したフローチャートである。また、
図3は、本発明の実施の形態1における画像処理部20による具体的な処理画像を示した説明図である。さらに、
図4は、従来の画像処理部による一連処理を示したフローチャートである。
【0026】
まず始めに、ステップS201において、カメラ10により撮影された検査パネル1の画像が、前処理部21に入力画像(
図3(a)参照)として入力される。前処理部21は、詳細を図示しないが、入力画像に対してカメラノイズ除去を施した後、さらに、背景画像を予測して背景ノイズ除去後の画像を生成する(
図3(b)参照)。
【0027】
次に、ステップS211において、欠陥候補抽出部22は、前処理部21により生成された背景ノイズ除去後の画像に対して、ヒストグラム処理を実行し、背景ノイズ除去後の画像の輝度の度数分布を求める。
【0028】
次に、ステップS212において、欠陥候補抽出部22は、輝度の度数分布のバランスから2値化に最適な閾値を求める手法としてよく知られている、例えば大津の手法を使用して、次段の閾値処理で使用する第1の閾値TH1を算出する。
【0029】
次に、ステップS213において、欠陥候補抽出部22は、前処理部21により生成された背景ノイズ除去後の画像の各画素に対して、ステップS212で算出された第1の閾値TH1との比較を行うことで、白(1)と黒(0)に2値化された第1の2値化画像を生成する(
図3(c)参照)。
【0030】
次に、ステップS214において、欠陥候補抽出部22は、ステップS213で生成された第1の2値化画像に対して、所定の注目ブロック内で白(1)画素を計数し、注目ブロックの全画素数との比率を計算する。当該比率は、例えば、15×15画素からなる注目ブロックを1画素毎に移動しながら計算される。
【0031】
次に、ステップS215において、欠陥候補抽出部22は、ステップS214により各画素について計算された白画素比率を、所定の第2の閾値TH2と比較することで、白(1)黒(0)に2値化された第2の2値化画像を生成する(
図3(d)参照)。
【0032】
ここで、第2の閾値TH2について、さらに説明を加える。輝度の明るい欠陥を検出する場合には、欠陥候補抽出部22は、TH2をTH2Hに置き換え、白画素比率がTH2H以上の場合には白(1)、白画素比率がTH2H未満の場合には黒(0)に2値化することで、白領域が輝度の明るい欠陥に対応した2値化画像を生成する。
【0033】
一方、輝度の暗い欠陥を検出する場合には、欠陥候補抽出部22は、TH2をTH2Lに置き換え、白画素比率がTH2L以上の場合には白(1)、白画素比率がTH2L未満の場合には黒(0)に2値化することで、黒領域が輝度の暗い欠陥に対応した2値化画像を生成する。
【0034】
次に、ステップS216において、欠陥候補抽出部22は、ステップS215で生成された第2の2値化画像に対して、オープニング/クロージング処理として、孤立点除去や領域連結を実行する。
【0035】
次に、ステップS217において、欠陥候補抽出部22は、ステップS216によるオープニング/クロージング処理後の2値化画像の中から、白または黒の閉領域として識別される領域を抽出することで、欠陥部の候補領域を抽出する。
【0036】
さらに、ステップS218において、欠陥候補抽出部22は、ステップS217により抽出された欠陥部の候補領域をラベリングすることにより、欠陥候補画像とすることができる。
【0037】
そして、最後に、ステップS221において、判定部23は、ステップS218で生成された欠陥候補画像に関し、経験に基づいた判断ルールで欠陥部分およびその属性を特定し、結果を表示部30に表示する。
【0038】
より具体的には、判定部23は、ステップS218により特定された不均一性(ムラ)領域候補の各領域内で、輝度値やコントラスト比やSEMU値等のパラメータを演算する(ここで、「SEMU」とは、SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)において、ムラの測定単位として定義されたものであり、「SEMI MURA」の略称に相当する)。さらに、判定部23は、ステップS218で生成された欠陥候補画像を表示部30に表示させるとともに、演算で求めた各パラメータを各候補領域に対応させて表示させることができる。
【0039】
この結果、検査者は、表示内容に基づいた総合的な判断をすることで、不均一性(ムラ)領域の真偽判定を行うことができる。また、検査者の経験に基づいて、各パラメータからムラの発生の有無を判定するための評価値をあらかじめ設定しておくことで、判定部23は、演算で求めた各パラメータを各評価値と比較することによって、自動ムラ判定を行うことも可能である。
【0040】
図4は、従来の画像処理部による一連処理を示したフローチャートであり、
図2に示した本実施の形態1の画像処理部による一連処理を示したフローチャートとの対比を説明する。
図4に示したように、従来技術における前処理部21は、固定画素構造を有するフラットパネルディスプレイの画素単位の構造がカメラ撮影による画像に明暗として写るため、所定の帯域を通過させるフィルタリング処理により、画素構造を除去していた(
図4のステップS402参照)。
【0041】
しかしながら、発明が解決しようとする課題として上述したように、フィルタをかけることによって、本来検出すべき欠陥の特徴をもなまらせてしまうことになり、以降の欠陥検出処理が難しくなるという問題が生じていた。さらに、検出対象となる欠陥の種類やパネルの種類によって、帯域通過フィルタの特性や以降の欠陥検出処理アルゴリズムを微妙に調整する必要があり、さらに作業工程が増えるという問題もあった。
【0042】
これに対して、本実施の形態1における画像処理部20は、画素構造の除去処理を前処理部21によって行うことなく、欠陥候補抽出部22において、パネルの画素構造を積極的に利用して、2種類の2値化処理による簡単なロジックおよびハードウェアで欠陥部分の特徴を抽出している。さらに、オープニング/クロージング処理、およびラベリング処理による簡単なロジックおよびハードウェアで、欠陥部分の特徴をより高精度に抽出している。
【0043】
この結果、高速に、本来の欠陥を高精度に抽出することができ、検査工程の省力化、高速化を実現することで、最終製品であるフラットパネルディスプレイのコストダウンを達成することができる。なお、本実施の形態1における自動ムラ検出方法は、スポット状の欠陥や、ある程度の面積を持った欠陥の検査に対して特に有効である。
【0044】
以上のように、実施の形態1によれば、画素構造の除去処理を前処理によって行うことなく、パネルの画素構造を積極的に利用して、欠陥候補領域の抽出を行うことができる。この結果、検査工程の省力化、高速化を実現できるとともに、最終製品であるフラットパネルディスプレイのコストダウンを達成することができるフラットパネルディスプレイの自動ムラ検出装置および自動ムラ検出方法を得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 検査パネル、10 カメラ、20 画像処理部、21 前処理部、22 欠陥候補抽出部、23 判定部、30 表示部。