(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方の乗降口から他方の乗降口にかけて設置された乗客コンベアのステップまたはベルトの左右両側に配置され、一方の乗降口パネル、少なくとも一つの中間部パネル、他方の乗降口パネルで構成された欄干パネル群の何れかの欄干パネルに交換用として用いられる乗客コンベア用欄干パネルにおいて、
前記欄干パネルは、ガラスで構成された複数の欄干パネル部から構成されるとともに、前記複数の欄干パネル部を乗客コンベアの外観上見える位置に設けられた継ぎ手で接続することにより組立品として構成され、前記継ぎ手は、前記複数の欄干パネル部間の隙間を表側の継ぎ板と裏側の継ぎ板とで挟み前記表側の継ぎ板と前記裏側の継ぎ板とを連結部材で連結した構造であり、
前記組立品として構成された欄干パネルは、乗客コンベアのデッキに固定され、
前記複数の欄干パネル部は、あらかじめ乗客コンベアの仕様に合わせて形成した複数種類の欄干パネル部から交換対象の欄干パネルの形状に対応して選択された欄干パネル部と、あらかじめ複数の乗客コンベアの仕様において共用可能に形成した欄干パネル部とを有することを特徴とする乗客コンベア用欄干パネル。
一方の乗降口から他方の乗降口にかけて無端状に連結されて移動する複数のステップと、前記ステップと同期して移動するハンドレールと、それぞれの乗降口間に跨って設置される本体枠と、前記ステップの左右両側に配置され、一方の乗降口パネル、少なくとも一つの中間部パネル及び他方の乗降口パネルで構成された欄干パネル群とを備えた乗客コンベアにおいて、
前記一方の乗降口パネル、前記中間部パネル及び前記他方の乗降口パネルのうち少なくとも一つの欄干パネルは、複数の欄干パネル部から構成されるとともに、前記複数の欄干パネル部を乗客コンベアの外観上見える位置に設けられた継ぎ手で接続することにより組立品として構成され、前記継ぎ手は、前記複数の欄干パネル部間の隙間を表側の継ぎ板と裏側の継ぎ板とで挟み前記表側の継ぎ板と前記裏側の継ぎ板とを連結部材で連結した構造であり、
前記欄干パネルは、少なくとも3つに分割され、両端部に位置する端部用欄干パネル部と、両端部の前記端部用欄干パネル部の間に位置する少なくとも一つの中央部用欄干パネル部とを有し、前記端部用欄干パネル部は乗客コンベアの仕様に合わせて形成した欄干パネル部として形成され、前記中央部用欄干パネル部は複数の乗客コンベアの仕様において共用可能に形成した欄干パネル部として形成されていることを特徴とする乗客コンベア。
一方の乗降口から他方の乗降口にかけて設置された乗客コンベアのステップまたはベルトの左右両側に配置され、一方の乗降口パネル、少なくとも一つの中間部パネル、他方の乗降口パネルで構成された欄干パネル群の何れかの欄干パネルを交換する乗客コンベア用欄干パネルの交換方法において、
複数の欄干パネル部から構成されるとともに、前記複数の欄干パネル部を乗客コンベアの外観上見える位置に設けられた継ぎ手で接続することにより組立品として構成され、前記継ぎ手は、前記複数の欄干パネル部間の隙間を表側の継ぎ板と裏側の継ぎ板とで挟み前記表側の継ぎ板と前記裏側の継ぎ板とを連結部材で連結した構造である交換用の欄干パネルを用いて欄干パネルの交換を行うようにすると共に、
あらかじめ乗客コンベアの仕様に合わせて形成した複数種類の欄干パネル部から交換対象の欄干パネルの形状に対応する欄干パネル部を選択し、選択した前記あらかじめ乗客コンベアの仕様に合わせて形成した欄干パネル部と、あらかじめ複数の乗客コンベアの仕様において共用可能に形成した欄干パネル部とを組み合わせて前記継ぎ手で接続することにより前記交換対象の欄干パネルの形状に対応した前記交換用の欄干パネルの組立品を得るようにし、
前記複数の欄干パネル部の間隔を調整して前記複数の欄干パネル部を前記継ぎ手で接続することにより前記交換対象の欄干パネルの長さに対応した前記交換用の欄干パネルの組立品を得るようしたことを特徴とする乗客コンベア用欄干パネルの交換方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
欄干パネルの材質としては通常ガラスが用いられている。乗客コンベアが設置された現地においてガラス製の欄干パネルが万一破損した場合に、破損した欄干パネルを新たな欄干パネルに迅速に交換するため、欄干パネルを予備として準備する必要がある。
【0006】
欄干パネルは、乗客コンベアの仕様に応じて長さや形状が異なる。このため、乗客コンベアのメンテナンス事業者は、複数の現地で稼動している乗客コンベアの各仕様に対応した欄干パネルを予備として準備する必要がある。
【0007】
しかし、乗客コンベアの各仕様に対応して欄干パネルを準備するとなると、多種類の欄干パネルを準備する必要がある。すなわち、乗客コンベアの長さが異なることに対応して長さが異なる欄干パネルを複数種類準備する必要がある。また、垂直割と鉛直割とでは欄干パネルの形状が異なり、しかも鉛直割の場合は傾斜角度ごとに欄干パネルの形状が変わるため、長さと形状による変動要素を考慮すると、準備する欄干パネルの種類は非常に多くなってしまう。そして、欄干パネルを保管する場所、費用等の制限により全てを準備することは非常に困難となる。
【0008】
このため、予備の欄干パネルを準備できない場合は、次のような方法で欄干パネルの交換作業を行うことになる。すなわち、破損したガラスの欄干パネルと同一仕様の欄干パネルを手配すると共に、応急的に例えば木材または樹脂等の比較的容易に入手できる材質の部材を用いて、現地で稼働している乗客コンベアの仕様に合わせた長さと形状にした応急用の欄干パネルを製作する。製作した応急用の欄干パネルを現地の乗客コンベアに取り付け乗客コンベアを仮復帰させる。そして、後日に先に手配したガラスの欄干パネル入荷後に、最終的な欄干パネルの交換作業を行う。
【0009】
しかしながら、上述した応急用の欄干パネルには下記の課題がある。
(1)比較的用意に入手できる材質でも、現地と同一仕様の長さ、形状で新規に緊急で製作する必要があり、その都度製作日数がかかる。
(2)現地と同一仕様の長さ、形状として製作するため、ガラスの欄干パネルに交換後は、応急用の欄干パネルを他の納入先に再利用できないことが多く、廃棄せざるを得ない。このため費用が嵩む。
【0010】
本発明の目的は、長さおよび/または形状の異なる多種類の欄干パネルを容易に準備することが可能な欄干パネル構造を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、乗客コンベアが設置された現地において欄干パネルが万一破損した場合に、迅速に準備することができ、また、最終的な欄干パネルに交換後は他の納入先にも再利用できる応急用の欄干パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、欄干パネルを複数の欄干パネル部に分割して構成し、複数の欄干パネル部を、継ぎ手を用いて一体化したことを特徴とする。
【0013】
前記他の目的を達成するために、本発明は、欄干パネルを複数の欄干パネル部に分割して構成し、複数の欄干パネル部を、間隔調整可能な継ぎ手を用いて一体化することにより、所要の欄干パネルの長さに対応した欄干パネルを構成することを特徴とする。
【0014】
また、前記他の目的を達成するために、本発明は、欄干パネルを、乗客コンベアの仕様に合わせて形成した欄干パネル部と、複数の乗客コンベアの仕様において共用可能に形成した欄干パネル部とに分割して構成し、これら欄干パネル部を、継ぎ手を用いて一体化することにより、所要の欄干パネルの形状に対応した欄干パネルを構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、欄干パネル部の組み合わせを変えることにより、長さおよび/または形状の異なる多種類の欄干パネルを容易に準備することが可能となる。
【0016】
また、本発明によれば、乗客コンベアが設置された現地において欄干パネルが万一破損した場合に、乗客コンベアの仕様に対応した応急用の欄干パネルを迅速に準備することができ、また、最終的な欄干パネルに交換後は、応急用の欄干パネルの構成に用いた欄干パネル部や継ぎ手は、他の納入先にも再利用できる。
【0017】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【0020】
先ず、本発明が適用される乗客コンベアの概要について、
図1及び
図2を用いて説明する。なお、本発明において、乗客コンベアは、例えばエスカレーターや動く歩道を含むものである。以下に示す実施例では、エスカレーターを例にとり説明しているが、これに限定されるものではない。
【0021】
乗客コンベア(エスカレーター)は、
図1及び
図2に示すように、下階床に連なる一方の乗降口である下乗降口から上階床に連なる他方の乗降口である上乗降口にかけて、無端状に連結されて移動する複数のステップ(踏段)1と、これらのステップ1と同期して移動するハンドレール2と、それぞれの乗降口間に跨って(上下階床に跨って傾斜して)設置される本体枠3等からなる。上端部に設けられる機械室(図示省略)に配置された電動機及び減速機によりステップ1、ハンドレール2を駆動することで乗客を運搬するものである。なお、乗客コンベアが動く歩道の場合、本発明は、パレット式とベルト式の両者に適用可能である。また、本明細書では、「ステップ」には、エスカレーターの踏段や、動く歩道のパレットが含まれるものとする。
【0022】
欄干パネルは乗客コンベア1台分を一体にすると非常に長くなるため、製作上の理由から通常約1〜2m単位の長さに分割して構成される。
【0023】
図1は、欄干パネルを鉛直割で構成した乗客コンベアを示す。乗客コンベア1台の欄干パネルは、乗客コンベアの上部乗降口パネル25と、下部乗降口パネル27と、複数個からなる中間部パネル26とに分割して構成されている。上部乗降口パネル25と中間部パネル26、中間部パネル26同士、中間部パネル26と下部乗降口パネル27のそれぞれは、傾斜角度αに関わらず鉛直方向に分割されている。これらの欄干パネルは、デッキ31に固定されている。
【0024】
なお、本明細書では、上部乗降口パネル25、下部乗降口パネル27、中間部パネル26のそれぞれを欄干パネルと呼称するが、乗客コンベア1台の片側に配置され、上部乗降口パネル25、下部乗降口パネル27、中間部パネル26から構成される全体も欄干パネルであり、両者の混同を避けるため、後者の全体の欄干パネルを必要に応じて欄干パネル群と称する。
【0025】
また、中間部パネル26の長さは傾斜線に沿ったL、高さはHで示す。上部乗降口パネルの長さはLU、下部乗降口パネルの長さはLD、高さはそれぞれHU、HDで示す。
【0026】
図2は、欄干パネルを傾斜角度αの傾斜線に対する垂線方向に分割した垂直割の乗客コンベアを示す。
図1の鉛直割の乗客コンベアと同様に、乗客コンベア1台の欄干パネル群は、上部乗降口パネル28と、複数個からなる中間部パネル29と、下部乗降口パネル30とに分割して構成されている。また、
図1の鉛直割の乗客コンベアと同様に、中間部パネル29の長さは傾斜線に沿ったL、高さはHで示す。上部乗降口パネルの長さはLU、下部乗降口パネルの長さはLD、高さはそれぞれHU、HDで示す。
【0027】
上部乗降口パネルの高さHUと下部乗降口パネルの高さHDは、通常、殆どの場合、同一寸法に設計する。鉛直割と垂直割では、上部乗降口パネルの長さLU、下部乗降口パネルの長さLD、中間部パネルの長さLが同じでも、形状が異なるので欄干パネルの互換性は無い。さらに、鉛直割では、乗客コンベアの傾斜角度αが異なると、パネル形状が異なり、欄干パネルの互換性は無い。
【0028】
次に、本実施例における欄干パネルの構成の考え方について説明する。本実施例では、応急用の欄干パネルを対象として説明するが、下記に説明する欄干パネルの構成は、常設用の欄干パネルにも適用できる。
【0029】
欄干パネルは、乗客コンベアの仕様の相違により長さや形状が異なる。すなわち、(1)乗客コンベアの長さに対応した欄干パネルの長さ相違、(2)欄干パネルの分割方法による欄干パネルの形状の相違が生じる。
【0030】
そこで、本実施例では、乗客コンベアの仕様の相違により必要となる多種類にわたる所要の長さおよび所要の形状の1個の欄干パネルを、複数に分割して構成するようにし、分割したものを継ぎ手で接続して組立品として構成するものである。
【0031】
言い換えれば、本実施例では、例えば、上部乗降口パネル、下部乗降口パネル、複数個からなる中間部パネルに分割された各欄干パネルを、さらに複数の欄干パネル部に分割し、複数の欄干パネル部を継ぎ手で接続する構造とし、構成する部品を共通化することで、少ない種類の部品で、現地の乗客コンベアの仕様に合わせた欄干パネルを準備できるようにしたものである。
【0032】
本実施例では、欄干パネルの組立品の構成と分割方法は、具体的には、下記の考え方としている。なお、本実施例では、欄干パネルを3つに分割した場合を例にして説明しているが、これに限定されるものではない。
(1)両端部の欄干パネル部(端部用欄干パネル部)は垂直割と鉛直割に対応した形状とする。従って、端部用欄干パネル部としては垂直割用と鉛直割用を準備する。さらに、鉛直割用としては、傾斜角度の種類に応じてさらに複数準備する。
(2)中央部の欄干パネル部(中央部用欄干パネル部)は、垂直割、鉛直割を共用とした形状とする。また、欄干パネルの長さが相違しても後述の継ぎ手を用いることにより、中央部用欄干パネル部は、長さが異なる複数の欄干パネルに共用可能であるが、継ぎ手による長さ調整可能範囲で対応しきれない場合を考慮して、長さが異なる中央部用欄干パネル部を複数種類用意しておくのが望ましい。また、本実施例では、中央部用欄干パネル部を1個としているが、必要により中央部用欄干パネル部をさらに複数個に分割しても良い。これにより欄干パネルがかなり長い場合にも対応できる。
(3)端部用欄干パネル部のそれぞれと中央部用欄干パネル部を、各々継ぎ手を介在させて接続し、1個の欄干パネルを組立てする。また、継ぎ手に長さ調整機能を持たせて、端部用欄干パネル部と中央部用欄干パネル部の接続部の隙間を調整することで所要の長さの欄干パネルとする。なお、中央部用欄干パネル部をさらに複数個に分割した場合は、当然ながら中央部用欄干パネル部間も継ぎ手で接続し、隙間の調整により所要の長さの欄干パネルとする。
【0033】
このように1個の欄干パネルを分割することにより、例えば、端部用欄干パネル部の形状を変えることで、現地の仕様に合った欄干パネルを容易に構成することが可能となる。
【0034】
また、中央部用欄干パネル部の長さを複数種類用意し、端部用欄干パネル部と中央部用欄干パネル部間の隙間を調整することで、1個の欄干パネルは、約1〜2メートルの範囲で任意の長さのものとすることができる。
【0035】
特に乗客コンベアの仕様により、欄干パネルは数ミリ単位で異なる長さのものが必要になり、長さだけでも非常に多くの種類が必要となる。更に垂直割、鉛直割の形状を考慮すると、長さの種類に形状の種類を掛けたものが、実際に準備が必要な種類となり、単純に数千種類が必要となるが、本実施例により端部用欄干パネル部、中央部用欄干パネル部を合計十数種類用意することで対応可能となる。
【0036】
次に、乗客コンベアの欄干パネルの分割構造例を図に基づき具体的に説明する。
【0037】
先ず、乗客コンベアの欄干パネルが鉛直割りの中間部パネル(
図1における中間部パネル26)の実施例を、
図3〜
図6を用いて説明する。
【0038】
本実施例は、中間部パネル26の1個の欄干パネルを、複数(3つ)の欄干パネル部である上側パネル(端部用欄干パネル部)4、中央部パネル(中央部用欄干パネル部)5、下側パネル(端部用欄干パネル部)6の3分割とした例を示す。上側パネル4、下側パネル6は乗客コンベアの傾斜角度αに対応した傾斜をつけた形状としている。中央部パネル5は、後述の垂直割の欄干パネルの中央部パネルと同じ形状を有している。
【0039】
上側パネル4と中央部パネル5、中央部パネル5と下側パネル6を、それぞれ継ぎ板7,8を用いて挟み、ワッシャ10、ボルト11などの連結部材により継ぎ板7,8を締め付けることで連結し、1個の欄干パネルとして組立てている。本実施例ではパネル(欄干パネル部)を連結部材の一種であるボルト11で締め付ける場合を示しているが、これを連結部材の一種であるリベット等により締め付けて固定しても良い。各パネルは、ガラスで構成されているが、応急用の場合には、ガラス以外の材料を用いて構成しても良い。また、継ぎ手はパネルの接続が十分な強度で行われるように金属で構成されている。
【0040】
ここで、継ぎ手は、乗客コンベアの外観上見える位置に設けられている。また、継ぎ手は、複数の欄干パネル部間の隙間を表側の継ぎ板と裏側の継ぎ板(例えば継ぎ板7,8)とで挟み表側の継ぎ板と裏側の継ぎ板とを連結部材(例えばボルト11)で連結した構造となっている。
【0041】
尚、この継ぎ手を用いて組立品で構成された欄干パネルは、乗客コンベアに設置される際には、隣接する欄干パネルとは
図3で示したような継ぎ手を用いて接続する必要はなく、組立品ではない通常の欄干パネルと同様に通常通りの方法で乗客コンベアに設置すればよい。
【0042】
本実施例では、継ぎ手とパネル間に、
図6に示すように、ゴム板9を挟んで摩擦係数を上げることで継ぎ手部の摩擦力を上げ、継ぎ手とパネル間のズレ防止を図っている。
【0043】
また、本実施例では、
図4,
図6に示した如く、継ぎ板7,8には、ステップ1、ハンドレール2の進行方向に対して傾斜部7a,8aを設けて、乗客が継ぎ手に接触しても引っかからないようにしている。具体的には、継ぎ手は、欄干パネル部に対向する側とは反対側の面が進行方向に対して傾斜した形状を有している。
【0044】
また、
図5に示した如く、乗客が乗降する踏段1側(図の左側)にネジ穴を設けた継ぎ板7を配置し、乗客とは反対側にボルト穴を設けた継ぎ板8を配置して、乗客とは反対側からボルト11で締め付けるようにしている。更に、
図6に示すように、継ぎ板8には凹部を設けてボルト11の頭が継ぎ板8よりも出ないようにし、万一乗客が反対側に手を出してもボルト11に引っかからないようにしている。
【0045】
こうした構造での欄干パネルの長さLは、下側パネル長さL1、中央部パネル長さL2、上側パネル長さL3、および隙間G1、G2の合計となるが、継ぎ手長さBよりも小さい範囲で隙間G1、G2を調整することで、欄干パネル長さLを任意に調整できる。更に継ぎ手長さBに対して、隙間G1、G2が大きくなるようなパネル長さLが必要になった場合は、上側、下側パネルはそのままとし、中央部パネル長さL2が1段階長いものとして対応する。このように必要なパネル長によって、あらかじめ中央部パネル長L2、隙間G1、G2を設定しておくことによって、鉛直割に対応した任意の長さL、高さHの欄干パネルが提供可能となる。
【0046】
尚、
図5に示すように(
図3では二点鎖線で示したように)、ハンドレール2をガイドする部品32が欄干パネル上部に取り付けられるが、隙間G1、G2の影響を改善するため、樹脂などで形成されたスペーサ12を継ぎ手7,8で挟んで、スペーサ12によりパネル間の隙間G1、G2に部分的に埋め込んである。
【0047】
また、継ぎ手は、乗客が引っかからないように、デッキ31から部品32までの高さH’を有する一体物として構成されている。乗客が引っかかりにくいことが担保できれば継ぎ手を高さ方向に分割して構成しても良い。但し、作業性の面や乗客が引っかかりにくいようにすることを考慮すると、分割しないで構成した方が良い。
【0048】
乗客コンベアのメンテナンスを行う事業者の拠点には、複数の欄干パネル部として、乗客コンベアの仕様に合わせて形成した複数種類の欄干パネル部と、複数の乗客コンベアの仕様において共用可能に形成した欄干パネル部とを保管しておく。
【0049】
欄干パネルの組み立ては、乗客コンベアのメンテナンス事業者のサービス拠点で組み立てて、組み立てたものを現地に運び込むようにしても良いし、現地に部品を持ち込み現地にて組み立てるようにしても良い。組み立てた応急用の欄干パネルは現地の乗客コンベアに取り付けられ、乗客コンベアが仮復帰する。そして、後日に先に手配したガラスの欄干パネル(一体物の欄干パネル)入荷後に、最終的な欄干パネルの交換作業が行われる。応急用の欄干パネルに用いられたパネル(特に中央部パネル)や継ぎ手などの部品は、別の乗客コンベアにおける応急用の欄干パネルとして再利用される。
【0050】
なお、
図3に示す実施例では、欄干パネルを3分割した場合であるが、中央部パネル5を省略し、上側パネル4と下側パネル6とを継ぎ板7,8を用いて接続するようにしても良い。この場合でも、継ぎ手により長さ調節が可能であり、長さが異なる複数の欄干パネルの応急用パネルを容易に得ることができる。
【0051】
次に、乗客コンベアの欄干パネルが垂直割りの中間部パネル(
図2における中間部パネル29)の実施例を、
図7を用いて説明する。
【0052】
本実施例は、中間部パネル29の1個の欄干パネルを、上側パネル(端部用欄干パネル部)13、中央部パネル(中央部用欄干パネル部)5、下側パネル(端部用欄干パネル部)14の3分割とした例を示す。本実施例では、上側パネル13、下側パネル14の形状を中央部パネル5と同じ長方形にしたもので、これ以外の部品は
図3の鉛直割の欄干パネルと同一にしている。
【0053】
したがって上側パネル、下側パネルを交換するのみで直ちに鉛直割から垂直割の欄干パネルに対応でき、しかも任意の長さLの欄干パネルを提供できる。
【0054】
また鉛直割の場合の上側パネル、下側パネル長さの合計L1+L3と、垂直割の場合の上側パネル、下側パネル長さの合計L4+L5を同じにしておくことで、任意の長さの欄干パネルLを得るために構成する中央部パネル長さL2、隙間G1、G2の設定が同一となるので統一性が図れる。ただし、傾斜角度αとパネル高さHによりやむを得ず同一にできない場合もあるので、これが必須条件ではない。この場合でも任意の長さと形状に対応可能な欄干パネルを提供できることに変わりはない。また、L4とL5とを同じ長さにすれば、部品の共通化を図ることができる。
【0055】
なお、
図7の実施例においても、
図3の実施例と同様に、中央部パネル5を省略し、上側パネル13と下側パネル14とを継ぎ手7,8を用いて接続するようにしても良い。この場合でも、継ぎ手により長さ調節が可能であり、長さが異なる複数の欄干パネルの応急用パネルを容易に得ることができる。
【0056】
次に、乗客コンベアの上部乗降口パネル(
図1における上部乗降口パネル25、
図2おける上部乗降口パネル28)の実施例を、
図8及び
図9を用いて説明する。
【0057】
図8は鉛直割りの上部乗降口パネル25の分割構造を示し、上部乗降口パネル25は、上側パネル(端部用欄干パネル部)15、中央部パネル(中央部用欄干パネル部)16、下側パネル(端部用欄干パネル部)17の3分割で構成されている。
【0058】
図9は垂直割りの上部乗降口パネル28の分割構造を示し、上部乗降口パネル28は、上側パネル(端部用欄干パネル部)15、中央部パネル(中央部用欄干パネル部)16、下側パネル(端部用欄干パネル部)18の3分割で構成されている。
【0059】
尚、鉛直割、垂直割共に、継ぎ手の構造や、その他の構成部品は、
図3〜
図7の中間部パネルと同一である。
【0060】
上部乗降口パネルにおいても、中間部パネルと同様に、鉛直割の場合は下側パネル17を、垂直割の場合は下側パネル18とすることで、鉛直割と垂直割の形状に対して直ちに対応可能となる。
【0061】
また、上部乗降口パネルの場合、通常は、上側パネル15と中央部パネル16は、鉛直割、垂直割に関わらず同一にできる(すなわち、共用できる)場合が多い。したがって中央部パネル16の長さと、継ぎ手における隙間GU1、GU2を調整することで、任意の長さの上部乗降口パネルに対応可能となる。
【0062】
なお、
図8及び
図9の実施例においても、
図3の実施例と同様に、中央部パネル16を省略し、上側パネル15と下側パネル17(18)とを継ぎ板7,8を用いて接続するようにしても良い。この場合でも、継ぎ手により長さ調節が可能であり、長さが異なる複数の上部乗降口パネルの応急用パネルを容易に得ることができる。
【0063】
次に、乗客コンベアの下部乗降口パネル(
図1における下部乗降口パネル27、
図2おける下部乗降口パネル30)の実施例を、
図10及び
図11を用いて説明する。
【0064】
図10は鉛直割りの下部乗降口パネル27の分割構造を示し、下部乗降口パネル27、上側パネル(端部用欄干パネル部)21、中央部パネル(中央部用欄干パネル部)20、下側パネル(端部用欄干パネル部)19の3分割で構成されている。
【0065】
図11は垂直割りの下部乗降口パネル30の分割構造を示し、下部乗降口パネル30は、上側パネル(端部用欄干パネル部)22、中央部パネル(中央部用欄干パネル部)20、下側パネル(端部用欄干パネル部)19の3分割で構成されている。
【0066】
尚、鉛直割、垂直割共に、継ぎ手の構造や、その他の構成部品は、
図3〜
図7の中間部パネルと同一である。
【0067】
下部乗降口パネルにおいても、中間部パネルと同様に、鉛直割の場合は上側パネル21を、垂直割の場合は上側パネル22とすることで、鉛直割と垂直割の形状に対して直ちに対応可能となる。
【0068】
また、上部乗降口パネルと同様に、下部乗降口パネルにおいても、通常は、下側パネル19と中央部パネル20は、鉛直割、垂直割に関わらず同一にできる場合が多い。したがって中央部パネル20の長さと、継ぎ手における隙間GD1、GD2を調整することで、任意の長さの下部乗降口パネルに対応可能となる。
【0069】
なお、
図10及び
図11の実施例においても、
図3の実施例と同様に、中央部パネル20を省略し、上側パネル21(22)と下側パネル19とを継ぎ板7,8を用いて接続するようにしても良い。この場合でも、継ぎ手により長さ調節が可能であり、長さが異なる複数の下部乗降口パネルの応急用パネルを容易に得ることができる。
【0070】
さらに、前述した如く、上部乗降口パネル高さHUと下部乗降口パネル高さHDは通常同一であるため、上部乗降口パネルの上側パネル15の長さLU1、下部乗降口パネルの下側パネル19の長さLD1を同一にし、上部乗降口パネルの中央部パネル16の長さLU2と下部乗降口パネルの中央部パネル20の長さLD2を同一寸法として、各々共用可能とする。
【0071】
欄干パネルの鉛直割、垂直割の分割方法による形状の相違とパネル長さの相違から、数千種類にわたる欄干パネルが存在するが、上述の各実施例を適宜組合せすることにより、数十種類のパネル(部品)を準備しておき、それらを継ぎ手で接続することで必要な長さ、形状の欄干パネルに対応できる。これにより、数千種類の欄干パネルを準備する必要がなくなり、しかも、現地において万一ガラスパネルが破損しても、破損した欄干パネルと同じ長さ形状の応急用の欄干パネルを迅速に提供することができる。また、欄干パネルの部品は、繰り返して使用できるため、本実施例の欄干パネルの分割構造は、費用低減にも寄与できる。
【0072】
また、上述の実施例では、応急用の欄干パネルについて説明しているが、欄干パネルの分割構造は、常設用の欄干パネルにも適用できる。本実施例によれば、いろいろな欄干パネルを容易に製作することができるので、乗客コンベアの欄干パネルは、乗客コンベアの仕様に対応した専用品として準備する必要がなくなり、結果的に、乗客コンベアのコストを低減することができる。なお、乗客コンベアの全ての欄干パネルに上述の各実施例を適用する必要はなく、何れか一つの欄干パネルにいずれかの実施例を適用するようにしても良い。
【0073】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加,削除,置換をすることが可能である。