(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中間材は、第一のシートの一方の端部と他方の端部が重ねられることにより重なりが形成されて前記ハニカム構造体の前記外周面を少なくとも前記軸方向の一方の前記端面側において隙間なく覆っている、または、前記第一のシート上に別体の第二のシートが重ねられることにより重なりが形成されて前記ハニカム構造体の前記外周面を少なくとも前記軸方向の一方の前記端面側において隙間なく覆っている請求項1に記載の熱交換部材。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0018】
(熱交換部材)
図1A及び
図1Bに本発明の熱交換部材10の一実施形態を示す。
図1Aは、熱交換部材10の模式図であり、ハニカム構造体1が金属管12内に備えられているところを示す。
図1Bは、ハニカム構造体1の端面2の部分拡大図である。
【0019】
熱交換部材10は、セラミックスを主成分とするハニカム構造体1と、ハニカム構造体1の外周側にハニカム構造体1を被覆する金属管12と、ハニカム構造体1と金属管12との間に挟み込まれた中間材13と、を備える。ハニカム構造体1は、筒形状の外周壁7と、第一の流体の流路となる複数のセル3を区画形成する隔壁4とを有する。またハニカム構造体1は、外周壁7に少なくとも1つのスリット15を有する。中間材13は、少なくとも一部がヤング率150GPa以下であり、厚さが0.05〜1mmである。中間材13は、ハニカム構造体1の外周面7hを少なくとも軸方向の一方の端面2側において隙間なく覆っている。熱交換部材10は、外周面7hが中間材13に隙間なく覆われた方を第一の流体の入口側として、ハニカム構造体1の内部に第一の流体を、金属管12の外周面12h側に第二の流体を流通させ、第一の流体と第二の流体との熱交換を行うものである。
【0020】
金属管12がハニカム構造体1の外周面7hを被覆しているため、ハニカム構造体1の内部を流れる第一の流体とハニカム構造体1の外部を流れる第二の流体とを混合させずに、それぞれを流通させ、熱交換させることができる。また、熱交換部材10は、金属管12を備えるため、設置場所や設置方法により加工することが容易であり、自由度が高い。熱交換部材10は、金属管12によってハニカム構造体1を保護することができ外部からの衝撃にも強い。
【0021】
外周壁7や隔壁4に熱を伝導させて、第一の流体と第二の流体との熱交換を行わせると、外周壁7や隔壁4において場所により温度差が生じる。こうした温度差は熱に伴う膨張や収縮の度合いの差を生み、その結果、外周壁7や隔壁4に熱応力を生じさせる。この熱応力は、外周壁7や隔壁4の歪みや割れの原因になりうる。本発明の熱交換部材10では、ハニカム構造体1の外周壁7に少なくとも1つ以上のスリット15が設けられているので、外周壁7に生じる熱応力を緩和させ、ひいては外周壁7や隔壁4での歪みや割れの発生を抑えることができる。
【0022】
熱交換部材10にヤング率が150GPa以下の中間材13を用いることにより、金属管12とハニカム構造体1との密着性を高めて、熱伝導性を向上させることができる。さらに、ハニカム構造体1の外周面7hを中間材13が少なくとも軸方向の一方の端面2側において隙間なく覆っていることにより、使用時に、外周面7hが中間材13に隙間なく覆われた方を第一の流体の入口側として用いると、硝酸、塩素、硫黄等を含んだガスまたは液体が、ハニカム構造体1と金属管12との間に浸入することを防止することができる。これにより、ガスに含まれる成分によって金属管12に腐食が発生することを防止することができる。ガスまたは液体がハニカム構造体1と金属管12との間に浸入することを防止するためには、第一の流体の入口となる端面2側の外周面7hが隙間なく中間材13に覆われていることが重要であり、外周面7hの全面が中間材13に覆われていることがより好ましい。
【0023】
中間材13がハニカム構造体1の外周面7hを少なくとも軸方向の一方の端面2側において隙間なく覆うために、中間材13は、少なくとも一部同士が重ねられて配置されており、中間材13の重なりが形成されていることが好ましい。
図1Bは、中間材13の重なり13kを示す一実施形態である。
図1Bの実施形態では、中間材13の重なり13kは、一枚のシート(第一のシート13a)の一方の端部と他方の端部が重ねられることにより形成されている。第一の流体の入口となる端面2を見た場合に、
図1Bのように中間材13で外周面7hが覆われていることが好ましい。
【0024】
または、中間材13の重なり13kは、
図2に示すように、第一のシート13a上に別体の第二のシート13bが重ねられることにより形成されていてもよい。
図1Bまたは
図2に示すように、中間材13を重ねて配置し、ハニカム構造体1の外周面7hを隙間なく覆うことにより、硝酸、塩素、硫黄等を含むガスまたは液体の浸入を防止することができる。なお、中間材13の重なり13kの実施形態は、これらに限定されるものではない。
【0025】
さらに、中間材13の重なり13kは、
図1Bや
図2に示すように、スリット15上でないところに設けられていることが好ましい。このようにスリット15上でないところに重なり13kを設けることにより、よりガスの浸入を防止することができる。
【0026】
中間材13は、ヤング率が50GPaのものを用いることができる。中間材13としては、グラファイトシート、金属シート、ゲルシート等が挙げられる。金属シートを構成する金属としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等が挙げられる。中間材13として、密着性や熱伝導性等を考慮すると、グラファイトシートを用いることが好ましい。以下、中間材13として、グラファイトシートを例として説明する。
【0027】
金属管12とハニカム構造体1とを、グラファイトシートの中間材13を挟んだ状態で、例えば、焼きばめにより嵌合させることができる。金属管12とハニカム構造体1とを一体化することにより、第一の流体と第二の流体とが混ざり合うことを防止することができる。グラファイトシートの中間材13を挟んで焼きばめすることにより、金属管12とハニカム構造体1との接合部の使用時の常温〜150℃の環境において、グラファイトシートに圧がかかり、熱を伝達することができる。
【0028】
本明細書におけるグラファイトシートとは、膨張黒鉛を主成分とするグラファイトを圧延しシート状に加工したものや、高分子フィルムを熱分解して得られるシート状のものであり、黒鉛シート、カーボンシートと称されるものも含む。グラファイトシートは、厚み方向のヤング率が1GPa以下、厚み方向の熱伝導率が1W/(m・K)以上であることが好ましい。厚み方向の熱伝導率について、より好ましくは、3〜10W/(m・K)である。また、面内方向の熱伝導率は、5〜1600W/(m・K)が好ましく、100〜400W/(m・K)がより好ましい。
【0029】
また、グラファイトシートのヤング率は、1MPa〜1GPaであることが好ましい。より好ましくは、5MPa〜500MPa、さらに好ましくは、10MPa〜200MPaである。ヤング率が1MPa以上であればグラファイトの密度が十分であり熱伝導性が良い。一方、500MPa以下である場合、薄いグラファイトシートでも焼きばめ時に十分弾性変形し、密着性や金属管12の応力緩和効果が得られる。
【0030】
グラファイトシートの厚みは、0.05〜1mmであることが好ましく、0.1〜0.5mmであることがより好ましく、0.2〜0.4mmであることがさらに好ましい。グラファイトシートは、薄くなるほど高価になる。また厚くなると、熱抵抗を生じる。この範囲のグラファイトシートを使用することにより、熱伝導性が良好となり、効率的にハニカム構造体1内の熱を金属管12の外側に排出できる。
【0031】
ハニカム構造体1を被覆する金属管12は、第一の流体や第二の流体を流通させず、熱伝導性がよく、耐熱性、耐蝕性のあるものが好ましい。金属管12の材質としては、例えば、ステンレス鋼、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮等を用いることができる。
【0032】
ハニカム構造体1は、セラミックスで筒状に形成され、軸方向の一方の端面2から他方の端面2まで貫通する流体の流路を有するものである。ハニカム構造体1は、隔壁4を有し、隔壁4によって、流体の流路となる多数のセル3が区画形成されている。隔壁4を有することにより、ハニカム構造体1の内部を流通する流体からの熱を効率よく集熱し、外部に伝達することができる。
【0033】
ハニカム構造体1の外形は、円筒状(円柱状)に限らず、軸(長手)方向に垂直な断面が楕円形であってもよい。また、ハニカム構造体1の外形は、角柱状、すなわち、軸(長手)方向に垂直な断面が、四角形、またはその他の多角形であってもよい。
【0034】
本発明の熱交換部材10では、ハニカム構造体1がセラミックスを主成分とすることにより、隔壁4や外周壁7の熱伝導率が高まり、その結果として、隔壁4や外周壁7を介在させた熱交換を効率良く行わせることができる。なお、本明細書にいうセラミックスを主成分とするとは、セラミックスを50質量%以上含むことをいう。
【0035】
ハニカム構造体1は、特に伝熱性を考慮すると、熱伝導性が高いSiC(炭化珪素)が主成分であることが好ましい。なお、主成分とは、ハニカム構造体1の50質量%以上が炭化珪素であることを意味する。
【0036】
さらに具体的には、ハニカム構造体1の材料としては、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC、金属複合SiC、再結晶SiC、Si
3N
4、及びSiC等を採用することができる。ただし、多孔体の場合は高い熱伝導率が得られないことがあるため、高い熱交換率を得るためには、緻密体構造(気孔率5%以下)とすることが好ましく、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiCを採用することが好ましい。SiCは、熱伝導率が高く、放熱しやすいという特徴を有するが、Siを含浸するSiCは、高い熱伝導率や耐熱性を示しつつ、緻密に形成され、伝熱部材として十分な強度を示す。例えば、SiC(炭化珪素)の多孔体の場合、20W/(m・K)程度であるが、緻密体とすることにより、150W/(m・K)程度とすることができる。
【0037】
ハニカム構造体1のセル3の軸方向に垂直な断面のセル形状としては、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形その他の多角形等の中から所望の形状を適宜選択すればよい。
【0038】
ハニカム構造体1のセル密度(即ち、単位断面積当たりのセルの数)については特に制限はなく、目的に応じて適宜設計すればよいが、25〜2000セル/平方インチ(4〜320セル/cm
2)の範囲であることが好ましい。セル密度を25セル/平方インチ以上とすることにより、隔壁4の強度、ひいてはハニカム構造体1自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)を十分なものとすることができる。また、2000セル/平方インチ以下とすることにより、熱媒体が流れる際の圧力損失が大きくなることを防止することができる。
【0039】
ハニカム構造体1のセル3の隔壁4の厚さ(壁厚)についても、目的に応じて適宜設計すればよく、特に制限はない。壁厚を50μm〜2mmとすることが好ましく、60〜500μmとすることが更に好ましい。壁厚を50μm以上とすることにより、機械的強度を十分なものとし、衝撃や熱応力によって破損することを防止することができる。また、2mm以下とすることにより、流体の圧力損失が大きくなったり、熱媒体が透過する熱交換率が低下するといった不具合を防止することができる。
【0040】
ハニカム構造体1のセル3の隔壁4の密度は、0.5〜5g/cm
3であることが好ましい。0.5g/cm
3以上とすることにより、隔壁4を十分な強度とし、第一流体が流路内を通り抜ける際に圧力により隔壁4が破損することを防止することができる。また、5g/cm
3以下とすることにより、ハニカム構造体1を軽量化することができる。上記の範囲の密度とすることにより、ハニカム構造体1を強固なものとすることができ、熱伝導率を向上させる効果も得られる。
【0041】
ハニカム構造体1は、熱伝導率が100W/(m・K)以上であることが好ましい。より好ましくは、120〜300W/(m・K)、さらに好ましくは、150〜300W/(m・K)である。この範囲とすることにより、熱伝導性が良好となり、効率よくハニカム構造体1内の熱を金属管12の外側に排出できる。
【0042】
本発明の熱交換部材10では、第一の流体として排ガスを流す場合、隔壁4に触媒を担持させることが好ましい。このように隔壁4に触媒を担持させると、排ガス中のCOやNOxやHCなどを触媒反応によって無害な物質にすることが可能になり、これに加えて、触媒反応の際に生じる反応熱を熱交換に用いることが可能になる。本発明の熱交換部材10に用いる触媒としては、貴金属(白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、及び金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、銅、亜鉛、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス及びバリウムからなる群から選択された元素を少なくとも一種を含有すると良い。ここに挙げた触媒は、金属、酸化物、およびそれ以外の化合物であっても良い。
【0043】
第一の流体(高温側)が通過するハニカム構造体1の第一流体流通部5のセル3の隔壁4に担持される触媒(触媒金属+担持体)の担持量としては、10〜400g/Lであることが好ましく、貴金属であれば0.1〜5g/Lであることが更に好ましい。触媒(触媒金属+担持体)の担持量を10g/L以上とすると、触媒作用が発現しやすい。一方、400g/L以下とすると、圧力損失を抑え、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0044】
ハニカム構造体1は、
図1Bに示すように、外周壁7に少なくとも1つのスリット15を有する。スリット15の本数は、熱応力を緩和するためには、1本以上が必要であり、2本以上が好ましく、4本以上がさらに好ましい。例えば、
図3Bに示すように、45°ごとに8本のスリット15を形成してもよい。複数のスリット15は、ハニカム構造体1の中心軸に対して対称の位置に配置されていることが好ましい。スリット15の深さは、外周壁7を切断する深さが必要である。さらに、スリット15は、外周壁7のみならず、隔壁4まで設けられていてもよい。また、スリット15は、ハニカム構造体1の長手方向に沿って、一方の端面2から他方の端面2まで設けられている(
図3A参照)。このようなスリット15を形成することにより、熱応力を緩和することができる。なお、外周壁7のスリット15は、軸方向において、ハニカム構造体1の全長にわたらず一部に形成されていてもかまわない。このようにすると、スリット15の加工時間を短縮することができるため、コストを低減することができる。
【0045】
ハニカム構造体1のスリット15の幅15tは、0.03〜4mmであることが好ましく、0.1〜2mmであることがより好ましく、0.1〜0.5mmであることがさらに好ましい。スリット15の幅15tをこの範囲とすると、熱応力を緩和するとともに、中間材13がスリット部にて撓みにくくなり、シール性が向上する。
【0046】
さらに、「中間材の厚さ>0.22×スリットの幅」の関係であることが好ましい。中間材13の厚さが薄い場合(中間材の厚さ≦0.22×スリットの幅)、スリット15のところで中間材13がたわみ、ガスまたは液体が染み込みやすくなる。中間材13の厚さが厚い場合(中間材の厚さ>0.22×スリットの幅)、ハニカム構造体1と金属管12との隙間が中間材13で充填され、シール性が向上する。
【0047】
(熱交換部材の製造方法)
次に、本発明の熱交換部材10の製造方法を説明する。まず、セラミックス粉末を含む坏土を所望の形状に押し出し、ハニカム成形体を作製する。ハニカム構造体1の材料としては、前述のセラミックスを用いることができるが、例えば、Si含浸SiC複合材料を主成分とするハニカム構造体1を製造する場合、所定量のC粉末、SiC粉末、バインダー、水又は有機溶媒を混練し坏土とし、成形して所望形状のハニカム成形体を得る。そしてハニカム成形体を乾燥し、焼成することによって、隔壁4によってガスの流路となる複数のセル3が区画形成されたハニカム構造体1を得ることができる。
【0048】
次に、
図3Aに示すように、ハニカム構造体1の外周壁7に対して、ダイヤモンド砥石等を用いて、所定の深さのスリット加工を行う。
【0049】
次に、
図3Bおよび
図3Cに示すように、中間材13をハニカム構造体1の外周面7hに巻き付ける。
図3Bおよび
図3Cは、一枚の中間材13(第一のシート)の一方の端部と他方の端部を重ねることにより重なり13kを形成する実施形態である。または、
図4Aに示すように、二枚の中間材13(第一のシート、第二のシート)を用いて、第一のシート上に別体の第二のシートを重ねることにより重なり13kを形成することもできる。このときに、ハニカム構造体1の外周面7hが全て中間材13によって覆われるようにする。
【0050】
続いて、金属管12を昇温させ、
図3Dに示すように、中間材13を巻き付けたハニカム構造体1を金属管12に挿入して焼きばめにより一体化し、熱交換部材10を形成することができる。中間材13を挟んで焼きばめすることにより、使用時の常温〜150℃の環境において、中間材13に圧がかかり、熱伝達が良好となる。なお、ハニカム構造体1と金属管12との接合は、焼きばめ以外に、ろう付けや拡散接合等を用いてもよい。
【0051】
(リングを備えた熱交換部材)
図5Aおよび
図5Bに示すように、金属管12内に、中間材13を金属管12との間に挟んで、ハニカム構造体1の端面2にリング18が備えられていることが好ましい。中間材13をハニカム構造体1とリング18で金属管12との間に挟むことにより、中間材13が締め付けられてシール性が向上する。なお、リング18は、ハニカム構造体1の一方の端面2と他方の端面2の両端面に備えられていることが好ましいが、コスト削減のため、一方の端面2のみに備えられていてもよい。また、リング18は、ハニカム構造体1の端面2に密着して備えられていることが好ましい。さらに、シール性を向上させるために、リング18の厚さ18tは、0.2〜3mmが好ましい。リング18の外径は、金属管12の内径の1.00〜1.03倍であるとシール性が向上して好ましい。
【0052】
(熱交換器)
図6に本発明の熱交換部材10を含む熱交換器30の斜視図を示す。
図6に示すように、熱交換器30は、熱交換部材10と、熱交換部材10を内部に含むケーシング21とによって形成されている。ハニカム構造体1のセル3が第一の流体が流通する第一流体流通部5となる。熱交換器30は、ハニカム構造体1のセル3内を、第二の流体よりも高温の第一の流体が流通するように構成されている。
【0053】
また、ケーシング21に第二の流体の入口22及び出口23が形成されており、第二の流体は、熱交換部材10の金属管12の外周面12h上を流通する。つまり、ケーシング21の内側面24と金属管12の外周面12hとによって第二流体流通部6が形成されている。第一の流体と第二の流体とは、完全に分離されており、これらの流体は混じり合わないように構成されている。
【0054】
熱交換器30は、第二の流体よりも高温である第一の流体を流通させ、第一の流体から第二の流体へ熱伝導するようにすることが好ましい。第一の流体として気体を流通させ、第二の流体として液体を流通させると、第一の流体と第二の流体の熱交換を効率よく行うことができる。つまり、本発明の熱交換器30は、気体/液体熱交換器として適用することができる。
【0055】
以上のような構成の本発明の熱交換器30に流通させる第一の流体である加熱体は、熱を有する媒体であれば、気体、液体等、特に限定されない。例えば、気体であれば自動車の排ガス等が挙げられる。また、加熱体から熱を奪う(熱交換する)第二の流体である被加熱体は、加熱体よりも低い温度であれば、媒体としては、気体、液体等、特に限定されない。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1〜
8、参考例1〜11、比較例1,2)
(ハニカム構造体の製造)
まず、平均粒径45μmのSiC粉末70質量%と、平均粒径35μmのSiC粉末10重量%と、平均粒径5μmのSiC粉末20重量%と、を混ぜ合わせて、SiC粉末の混合物を調製した。このSiC粉末の混合物100質量部に、バインダー4質量部、水を混ぜ合わせ、ニーダーを用いて混練することにより、混練物を得た。この混練物を真空土練機に投入し、円柱状の坏土を作製した。この坏土を押出成形によって円柱状の外観を備えたハニカム形状に成形し、乾燥して成形体を得た。続いて、成形体をSi含浸焼成することにより、主成分が炭化珪素のハニカム構造体1(直径42mm、長さ100mm、隔壁4の厚さ0.4mm、セル密度150cpsi)を製造した。
【0058】
(スリットの加工)
ハニカム構造体1の外周壁7に対して、所定の砥石幅をもつダイヤモンド砥石を用いて、表1のスリット幅で所定の深さのスリットを形成するスリット加工を実施した。スリット15は、ハニカム構造体1の一方の端面2から他方の端面2までの長さのものを8本作製した(
図3A、
図3B参照)。
【0059】
次に、ハニカム構造体1の外周面7hに、中間材13としてアクリル系粘着材付きグラファイトシート(大塚電機 HT−705A)を貼り付けた。実施例、比較例のグラファイトシートの貼り付けについては、以下に説明する。グラファイトシートは、熱伝導率が厚み方向で6W/(m・K)、ヤング率が0.1GPaのものを用いた。今回は粘着材付きグラファイトシートを用いたが、別途伝熱性接着剤を用いて接着しても良い。
【0060】
(比較例1)
比較例1の熱交換部材10は、グラファイトシートを重ね合わせなしで、ハニカム構造体1と金属管12との間に備えた(表1の「シート重ね部の浸み込み」については、グラファイトシートの一方の端部と他方の端部との隙間部分についての浸み込みの評価である。)(
図4B参照)。
【0061】
(実施例1〜
4、参考例1〜7、比較例2)
実施例1〜
4、参考例1〜7、比較例2の熱交換部材10は、一枚のグラファイトシートの一方の端部と他方の端部とが重なるようにしてハニカム構造体1と金属管12との間にグラファイトシートを備えた(
図3B、
図3C参照)。なお、実施例6のみグラファイトシートの重なり13kを、スリット15上にした。比較例2は、シート厚みが薄いものである。
【0062】
(実施例
5〜
8、参考例8〜11)
実施例
5〜
8、参考例8〜11の熱交換部材10は、一枚のグラファイトシート(第一のシート)に、別体のグラファイトシート(第二のシート)を重ねて、ハニカム構造体1の外周面7hの隙間がないようにした(
図4A参照)。
【0063】
(実施例1〜
8、参考例1〜11、比較例1,2)
続いて金属管12を高周波加熱機で1000℃まで昇温させ、ハニカム構造体1を金属管12に挿入して、焼きばめた(
図3D、
図1A参照)。金属管12は、SUS304薄肉管を用いた。
【0064】
なお、実施例
1〜
8の熱交換部材10については、金属管12内で、グラファイトシートを金属管12との間に挟んで、ハニカム構造体1の端面2にSUSリング(リング18)を備えたものである(
図5A、
図5B参照)。
【0065】
(レッドチェック評価)
ハニカム構造体1と金属管12との間へのガスまたは液体の浸み込みを評価するために、レッドチェック液を用いたレッドチェック評価を行った。まず、容器内に常温のレッドチェック液を入れ、その中に熱交換部材10を1時間、浸漬させた(
図7A参照)。その後、金属管12を長手方向に切断して(
図7B、
図7C参照)、金属管12の内周側を観察してレッドチェック液の浸み込みがあるかを調べた(
図7D参照)。
【0066】
表1にレッドチェック評価の結果を示す。表1の「端面からの浸み込み」は、
図7Dの浸み込み19aであり、金属管12の内周側の、ハニカム構造体1の端面2と接していた部分の浸み込みである。「スリット部の浸み込み」は、
図7Dの浸み込み19bであり、金属管12の内周側の、ハニカム構造体1のスリット15と接していた部分の浸み込みである。「シート重ね部の浸み込み」は、
図7Dの浸み込み19cであり、金属管12の内周側の、ハニカム構造体1のスリット15と接していた部分の浸み込みである。表1の◎は、まったく浸み込みがない場合、○は、問題がない程度の極わずかな浸み込みがある場合、×は、浸み込みがあったことを示す。
【0067】
【表1】
【0068】
グラファイトシート(中間材13)の重なり13kのない比較例1、グラファイトシートが薄い比較例2は、レッドチェック液の浸み込みがあった。グラファイトシートの厚さが0.05〜1mmでグラファイトシートの重なり13kがある実施例1〜
8、参考例1〜11については、レッドチェック液の浸み込みがなかった。スリット15の幅15tが0.03〜4mm、「グラファイトシートの厚さ>0.22×スリットの幅」を満たすものについては、特に結果が良好であった。実施例
2,
6は、「グラファイトシート(中間材13)の厚さ/スリットの幅」が0.01であったが、SUSリングを備えるため、良好な結果が得られた。