特許第6043208号(P6043208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6043208ハニカム構造体の表面処理方法およびこれを用いたハニカム構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043208
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の表面処理方法およびこれを用いたハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20161206BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20161206BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20161206BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B01J35/04 301F
   B01J37/02 301Z
   F01N3/28 301P
   B01J32/00ZAB
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-32516(P2013-32516)
(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公開番号】特開2014-161754(P2014-161754A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】大原 悦二
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−168517(JP,A)
【文献】 特開2009−190020(JP,A)
【文献】 特開昭56−133036(JP,A)
【文献】 特開2005−334842(JP,A)
【文献】 特開2011−206764(JP,A)
【文献】 国際公開第03/078064(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
F01N 3/28
C04B 41/83
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の外周を取り囲む外周壁とを備えるハニカム構造体における前記外周壁の表面に、撥水性オイルを塗布し、前記ハニカム構造体に標識を表示するための領域である表示用領域を設けるハニカム構造体の表面処理方法であり、
塗布具の表面の転写用領域に前記撥水性オイルを塗布して、前記転写用領域に前記撥水性オイルを含む塗膜を形成する第1工程と、
前記塗布具の前記転写用領域を前記ハニカム構造体の前記外周壁の前記表面に当てて、前記外周壁の前記表面に前記塗膜を転写することにより、前記外周壁の前記表面に、前記撥水性オイルを塗布して前記表示用領域を設ける第2工程と、を有し、
前記第1工程においては、前記転写用領域に前記撥水性オイルを塗布し、次いで、レーザー発光粉末とセラミックス原料粉末と分散媒とを含むレーザー発色用下地材を塗布して、前記転写用領域に前記撥水性オイルと前記レーザー発色用下地材とを含む前記塗膜を形成し、
前記第2工程においては、前記塗布具の前記転写用領域を前記ハニカム構造体の前記外周壁の前記表面に当てて、前記外周壁の前記表面に前記塗膜を転写することにより、前記外周壁の前記表面に、前記撥水性オイルおよび前記レーザー発色用下地材を塗布し、前記表示用領域および前記表示用領域内にレーザー発色用領域を設けるハニカム構造体の表面処理方法。
【請求項2】
前記撥水性オイルは、シリコーンオイル、マシン油、およびグリスからなる群より選ばれる1種以上を含む請求項1に記載のハニカム構造体の表面処理方法。
【請求項3】
前記ハニカム構造体の前記外周壁の表面に、撥水性オイルを塗布することにより表示用領域を設け、次いで、前記表示用領域の一部または全部に、レーザー発光粉末とセラミックス原料粉末と分散媒とを含むレーザー発色用下地材を塗布することによりレーザー発色用領域を設ける請求項1または2に記載のハニカム構造体の表面処理方法。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載のハニカム構造体の表面処理方法を用いてハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の表面処理方法およびこれを用いたハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質セラミックスによって形作られたハニカム構造体は、排ガス浄化用フィルタや排ガス浄化用の触媒を担持するための担体(触媒担体)など、幅広い用途がある。こうした種々の用途のために、ハニカム構造体を製造する過程や、ハニカム構造体を市場に流通させる過程においては、個々のハニカム構造体についての製品情報を管理することが求められている。そこで、従来から、ハニカム構造体に標識を記すための技術が数多く提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
例えば、ハニカム構造体を触媒担体として用いる場合には、まず、ハニカム構造体を作製し、続いて、ハニカム構造体の個々のセルを取り囲む隔壁に触媒金属(例えば、Pt、Pd、Rhなど)を担持させることになる。ここで、ハニカム構造体の隔壁に触媒金属を担持させる際には、触媒金属を分散液に分散させて作った触媒スラリーを、ハニカム構造体のセル内に注ぎ込むという処理を行うことになる。こうした一連の過程では、通常、触媒を担持させるための処理に先立って、ハニカム構造体に予め標識を記しておき、さらに、触媒担持の処理後にも、ハニカム構造体(ハニカム触媒体)に別途の標識を記すことにより、製品情報の管理がなされている。
【0004】
ところが、従来の技術では、ハニカム構造体に対して、触媒を担持させるための処理などの諸々の処理を施すと、ハニカム構造体が変色してしまい、その結果として、ハニカム構造体に記した標識を識別することが困難になる場合がある。
【0005】
例えば、図1は、従来の方法により標識が記されているハニカム構造体200の斜視図である。図示されているように、従来から、ハニカム構造体200の外周壁7表面に文字や図柄などを記しておき[図1中のクロス印(×)]、その後、触媒を担持させるための処理を行うことが一般的である。ここで、触媒を担持させる際には、触媒を分散させた触媒スラリーをセル4内に注ぎ込むことにより、隔壁5に触媒を付着させる処理が行われている。図2は、図1に示されているハニカム構造体200に触媒を担持させて得られるハニカム触媒体250の一例を表す斜視図である。図示されているように、ハニカム触媒体250においては、触媒スラリーの染み出しに起因して、外周壁7が褐色に変色してしまい、この褐色によって、外周壁7に記しておいた記号や図柄が塗りつぶされてしまうことがある[図2中のクロス印(×)]。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/072694号
【特許文献2】特開2011−206764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の問題に鑑みて、本発明の目的は、ハニカム構造体に記された文字や図柄などの標識を、触媒を担持させるための処理などの諸々の処理の前後で良好に識別可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に示すハニカム構造体の表面処理方法およびこれを用いたハニカム構造体の製造方法である。
【0009】
[1] 流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の外周を取り囲む外周壁とを備えるハニカム構造体における前記外周壁の表面に、撥水性オイルを塗布し、前記ハニカム構造体に標識を表示するための領域である表示用領域を設けるハニカム構造体の表面処理方法であり、塗布具の表面の転写用領域に前記撥水性オイルを塗布して、前記転写用領域に前記撥水性オイルを含む塗膜を形成する第1工程と、前記塗布具の前記転写用領域を前記ハニカム構造体の前記外周壁の前記表面に当てて、前記外周壁の前記表面に前記塗膜を転写することにより、前記外周壁の前記表面に、前記撥水性オイルを塗布して前記表示用領域を設ける第2工程と、を有し、前記第1工程においては、前記転写用領域に前記撥水性オイルを塗布し、次いで、レーザー発光粉末とセラミックス原料粉末と分散媒とを含むレーザー発色用下地材を塗布して、前記転写用領域に前記撥水性オイルと前記レーザー発色用下地材とを含む前記塗膜を形成し、前記第2工程においては、前記塗布具の前記転写用領域を前記ハニカム構造体の前記外周壁の前記表面に当てて、前記外周壁の前記表面に前記塗膜を転写することにより、前記外周壁の前記表面に、前記撥水性オイルおよび前記レーザー発色用下地材を塗布し、前記表示用領域および前記表示用領域内にレーザー発色用領域を設けるハニカム構造体の表面処理方法。
【0010】
[2] 前記撥水性オイルは、シリコーンオイル、マシン油、およびグリスからなる群より選ばれる1種以上を含む前記[1]に記載のハニカム構造体の表面処理方法。
【0011】
[3] 前記ハニカム構造体の前記外周壁の表面に、撥水性オイルを塗布することにより表示用領域を設け、次いで、前記表示用領域の一部または全部に、レーザー発光粉末とセラミックス原料粉末と分散媒とを含むレーザー発色用下地材を塗布することによりレーザー発色用領域を設ける前記[1]または[2]に記載のハニカム構造体の表面処理方法。
【0014】
] 前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体の表面処理方法を用いてハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法
【発明の効果】
【0015】
本発明のハニカム構造体の表面処理方法およびこれを用いたハニカム構造体の製造方法によれば、ハニカム構造体の外周壁表面における表示用領域に撥水性オイルを塗布することにより、触媒を担持させるための処理などの諸々の処理をする場合、触媒スラリーなどの処理液が外周壁表面の表示用領域内に染み出しにくくなり、その結果、外周壁表面の表示用領域内では処理液に起因する変色を抑制することができる。すなわち、本発明のハニカム構造体の表面処理方法およびこれを用いたハニカム構造体の製造方法によれば、ハニカム構造体の外周壁表面に変色をもたらし得る処理を行う場合であっても、外周壁表面の表示用領域内では変色を抑制することができるので、この表示用領域内に文字や図柄などを記すと、文字や図柄などを触媒担持などの処理の前後で良好に識別可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来の方法により標識が記されているハニカム構造体の斜視図である。
図2図1に示されているハニカム構造体に触媒を担持させて得られるハニカム触媒体の斜視図である。
図3】本発明のハニカム構造体の表面処理方法の一実施形態により得られるハニカム構造体の一具体例の斜視図である。
図4図3中のA−A’断面図である。
図5図3に示されているハニカム構造体に触媒を担持させて得られるハニカム触媒体の斜視図である。
図6図5に示されているハニカム触媒体の表示用領域内の余白に文字や記号を記した場合を模式的に示す斜視図である。
図7】本発明のハニカム構造体の表面処理方法の他の実施形態により得られるハニカム構造体の一具体例の斜視図である。
図8図7に示されているハニカム構造体に触媒を担持させて得られるハニカム触媒体の斜視図である。
図9】本発明のハニカム構造体の表面処理方法の一実施形態で用い得る塗布具の一例を示す模式図である。
図10図9に示されている塗布具を用いる、本発明のハニカム構造体の表面処理方法の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0018】
図3は、本発明のハニカム構造体の表面処理方法の一実施形態により得られるハニカム構造体100の一具体例の斜視図である。図4は、図3中のA−A’断面図である。これらの図を参照し述べると、本実施形態のハニカム構造体の表面処理方法は、流体Gの流路となる複数のセル4を区画形成する多孔質の隔壁5を有するハニカム構造部と、ハニカム構造部の外周を取り囲む外周壁7とを備えるハニカム構造体100aの外周壁7の表面に、撥水性オイルを塗布することにより表示用領域10を設けることを特徴とする技術である。
【0019】
図5は、図3に示されているハニカム構造体100aに触媒を担持させて得られるハニカム触媒体150aの斜視図である。本実施形態のハニカム構造体の表面処理方法によれば、ハニカム構造体100aに触媒を担持させる処理を行った場合に、表示用領域10に塗布されている撥水性オイルの作用によって、触媒スラリー(処理液)がハニカム構造体100aの外周壁7の表示用領域10内に染み出してくることを抑制することが可能である。その結果、図5に示されているように、触媒担持の処理を経て得られるハニカム触媒体150aにおいては、外周壁7の表示用領域10内の変色を抑制することが可能である。
【0020】
そのため、本実施形態のハニカム構造体の表面処理方法によれば、ハニカム構造体100aの表示用領域10内に文字や図柄などを記しておき[図3中のクロス印(×)]、その後に触媒の担持のための処理を行う場合であっても、こうした処理を経て得られるハニカム触媒体150aにおいては、表示用領域10内に記した文字や図柄などを依然として良好に識別することが可能である[図5中のクロス印(×)]。
【0021】
本実施形態のハニカム構造体の表面処理方法に用い得る撥水性オイルとしては、シリコーンオイル、マシン油、およびグリスからなる群より選ばれる1種以上を含むものを挙げることができる。ここに列挙したものの中でも、ハニカム構造体100aの外周壁7の表面への影響が少ないという観点から、撥水性オイルは、シリコーンオイル、マシン油、およびグリスからなる群より選ばれる1種以上からなることが好ましく、さらに、シリコーンオイルからなることがより好ましい。
【0022】
図6は、図5に示されているハニカム触媒体150aの表示用領域10内の余白15に文字や記号を記した場合を模式的に示す斜視図である。本実施形態のハニカム構造体の表面処理方法では、撥水性オイルがシリコーンオイル、マシン油、およびグリスからなる群より選ばれる1種以上からなる場合、撥水性オイルによる外周壁7表面への影響が抑制されているので、ハニカム触媒体150aの表示用領域10内の余白15に、インクなどの簡便な手段によって、文字や図柄などを記すことが可能になる。
【0023】
また、本実施形態のハニカム構造体の表面処理方法では、ハニカム構造体100aの外周壁7表面への影響を抑制しつつ、触媒スラリーなどの処理液の表示用領域10内への染み出しを十分に抑制する観点から、単位面積当たりの撥水性オイルの塗布量[表示用領域に塗布された撥水性オイルの総塗布量(g)/表示用領域の面積(cm)]は、0.05〜50.0g/cmであることが好ましく、さらに、0.15〜1.50g/cmであることがより好ましい。
【0024】
本実施形態のハニカム構造体の表面処理方法では、ハニカム構造体100aの外周壁7に撥水性オイルを塗布する方法については特に制限はない。本実施形態のハニカム構造体の表面処理方法では、例えば、刷毛を用いる方法や、スタンプを用いる方法、スプレー方法、インクジェット方法などを挙げることができる。
【0025】
本実施形態のハニカム構造体の表面処理方法において、対象物となるハニカム構造体100については、多孔質の隔壁5を有するハニカム構造部と、外周壁7とを備えるものであれば、特に制限はない。特に、本実施形態のハニカム構造体の表面処理方法は、排ガス浄化用の金属触媒を担持するための触媒担体として用いるハニカム構造体100に対して好適である。こうしたハニカム構造体100の隔壁5および外周壁7の材質については、例えば、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、及び炭化珪素−コージェライト系複合材料などを主成分とするものを挙げることができる。本明細書にいう「主成分」とは、50質量%以上を含有することを意味する。例えば、コージェライトを主成分とする隔壁5とは、隔壁5においてコージェ―ライトが50質量%以上含有されていることをいう。また、本実施形態のハニカム構造体の表面処理方法において、対象物となるハニカム構造体100については、外周壁7が多孔質であっても差し支えない。
【0026】
図7は、本発明のハニカム構造体の表面処理方法の他の実施形態により得られるハニカム構造体100bの一具体例の斜視図である。図7を参照し述べると、本実施形態のハニカム構造体の表面処理方法は、ハニカム構造体100bの外周壁7の表面に、撥水性オイルを塗布することにより表示用領域10を設け、次いで、表示用領域10の一部または全部に、レーザー発光粉末とセラミックス原料粉末と分散媒とを含むレーザー発色用下地材を塗布することによりレーザー発色用領域20を設けることを特徴とする技術である。
【0027】
図8は、図7に示されているハニカム構造体100bに触媒を担持させて得られるハニカム触媒体150bの斜視図である。本実施形態のハニカム構造体の表面処理方法でも、撥水性オイルの作用によって、触媒スラリー(処理液)が表示用領域10内(レーザー発色用領域20内も含む)に染み出してくることを抑制することが可能である。したがって、ハニカム触媒体150bにおいては、外周壁7の表示用領域10内での変色を抑制することが可能であり、ひいては、触媒を担持させるための処理の前に表示用領域10内に記した文字や図柄などを、ハニカム触媒体150aにおいても依然として良好に識別することが可能である[図7中および図8中の星印(*)]。
【0028】
また、本実施形態によって得られるハニカム構造体100b(あるいは、ハニカム触媒体150b)においては、外周壁7のレーザー発色用領域20内にレーザー光を照射すると、レーザー光を照射した箇所を発色させることができる。例えば、ハニカム構造体100b(あるいは、ハニカム触媒体150b)の外周壁7のレーザー発色用領域20内にレーザー光を照射する際に、レーザーの照射箇所を文字や図柄などを描く具合に動かしてゆくと、図8中に示されている二重丸印(◎)のように、レーザー発色用領域20内に文字や図柄などの標識を記すことが可能である。
【0029】
こうしてレーザー光の照射によってレーザー発色用領域20内に文字や図柄などを記すと、ハニカム構造体100b(あるいは、ハニカム触媒体150b)の外周壁7が擦られる場合であっても、インク等による文字や図柄などと比べ、消えにくくいという利点がある。
【0030】
本実施形態において、レーザー発色用下地材の材料として用い得るレーザー発色粉末とは、レーザー(例えば、赤外線レーザー)の照射によって暗色(例えば、黒、茶、緑、藍、紫など)を発色する性質を持つ、金属粉末、あるいは金属化合物の粉末のことをいう。本実施形態において、レーザー発色用下地材の材料として用い得るレーザー発色粉末としては、例えば、炭化珪素、珪素、チタニア、および窒化アルミニウムからなる群より選ばれる1種以上の金属または金属化合物の粒子を含有する粉末を挙げることができる。
【0031】
本実施形態において、レーザー発色用下地材の材料として用い得るセラミックス原料粉末とは、セラミックスの原料となる無機粉末のことを意味する。本実施形態において、レーザー発色用下地材の材料として用い得るセラミックス原料粉末としては、例えば、コージェライト原料粉末、窒化珪素、アルミナ、ムライト、ジルコニア、燐酸ジルコニウム、及びアルミニウムチタネートからなる群より選ばれる1種以上の無機粒子を含有する粉末を挙げることができる。
【0032】
また、本実施形態において、レーザー発色用下地材の材料として用い得る分散媒とは、レーザー発色粉末、セラミックス原料粉末と混ぜ合わせることにより、スラリー状態にすることが可能な液体であれば特に制限されない。本実施形態において、レーザー発色用下地材の材料として用い得る分散媒としては、例えば、水を挙げることができる。
【0033】
本実施形態に用いるレーザー発色用下地材では、セラミックス原料粉末100質量部に対して、レーザー発色粉末が20〜400質量部含まれていることが好ましい。例えば、レーザー発色粉末の量が20質量部以上の場合には、レーザー照射によって十分な発色を確実に得ることが可能になり、また、レーザー発色粉末の量が400質量部以下の場合には、耐熱衝撃性を確実に維持することが可能になる。
【0034】
なお、本実施形態に用いるレーザー発色用下地材では、レーザー照射によって生じる標識の識別性を高める(発色箇所と非発色箇所とのコントラストを高める)観点から、レーザー発色粉末の量は、セラミックス粉末100質量部に対して、50〜200質量部であることがより好ましく、さらに、100〜200質量部であることが最も好ましい。
【0035】
また、本実施形態のハニカム構造体の表面処理方法のように、表示用領域10内にレーザー発色用領域20を設ける場合には、文字や図柄などで標識する方法を任意に選択し易くなるという観点から、表示用領域10内の一部にレーザー発色用領域20を設けることが好ましい。換言すると、表示用領域10内にレーザー発色用領域20を設ける場合には、表示用領域10内にレーザー発色用領域20ではない領域を設けることが好ましい。こうして表示用領域10内にレーザー発色用領域20ではない領域、すなわち、レーザー発色用下地材を塗布されていない領域を設けることにより、インクがレーザー発色用下地材に馴染まない場合であっても、表示用領域10内のレーザー発色用領域20ではない領域内に文字や図柄などを容易に標識することが可能になる[例えば、図7および図8中の星印(*)を記されている領域を参照]。
【0036】
図9は、本発明のハニカム構造体の表面処理方法の一実施形態で用い得る塗布具50の一例を示す模式図である。図示されているように、塗布具50の一部表面は、ハニカム構造体100の外周壁7の形状と略相補的に凹んでいる。そして、塗布具50の表面のうちで、この凹んでいる領域を転写用領域55として用いる。
【0037】
図10は、図9に示されている塗布具50を用いる、本発明のハニカム構造体の表面処理方法の一実施形態を示す模式図である。図10を参照し述べると、本実施形態のハニカム構造体の表面処理方法は、塗布具50の表面の転写用領域55に撥水性オイルを塗布して、転写用領域55に撥水性オイルを含む塗膜60を形成する第1工程と、塗布具50の転写用領域55をハニカム構造体100の外周壁7の表面に当てて、外周壁7の表面に塗膜60を転写することにより、外周壁7の表面に、撥水性オイルを塗布して表示用領域10を設ける第2工程と、を有する。
【0038】
本実施形態のハニカム構造体の表面処理方法のように、塗布具50を用いる場合には、転写用領域55への撥水性オイルの塗布量を調整することにより、ハニカム構造体100の外周壁7への撥水性オイルの塗布量を容易に調整することが可能になるので好ましい。
【0039】
また、本実施形態のハニカム構造体の表面処理方法のように塗布具50を用いて、上述レーザー発色用領域20を設ける場合、まず、第1工程において、転写用領域55に撥水性オイルを塗布し、次いで、レーザー発光粉末とセラミックス原料粉末と分散媒とを含むレーザー発色用下地材を塗布して、転写用領域55に撥水性オイルとレーザー発色用下地材とを含む塗膜60を形成する。
【0040】
続いて、第2工程において、塗布具50の転写用領域55をハニカム構造体100の外周壁7の表面に当てて、外周壁7の表面に塗膜60を転写することにより、ハニカム構造体100の外周壁7の表面に、撥水性オイルおよびレーザー発色用下地材を塗布する。こうして最終的に、ハニカム構造体100の外周壁7の表面に表示用領域10、さらに表示用領域10内にレーザー発色用領域20を設けることが可能になる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
(ハニカム構造体)
参考例1〜6)
焼成後の組成がコージェライトの理論組成(2MgO・2Al・5SiO)となるように配合したコージェライト原料粉末に、成形助剤、造孔剤、および水を加え、混合、混練して坏土を調製した。得られた坏土を押出成形し、ハニカム成形体(隔壁と外周壁を一体的に押出成形したもの)を作製し、このハニカム成形体を乾燥、焼成してハニカム構造体を作製した。得られたハニカム構造体は、直径が118.4mmで長さが101.6mmの円柱状で、気孔率が35%、隔壁厚さ0.1mm、セル密度が62.0セル/cmであった。
【0043】
上述のハニカム構造体の外周壁とは略相補的に、円弧状に凹んだ塗布具を用意した。塗布具の円弧状に凹んでいる表面を、転写用領域とし、この転写用領域に、参考例1〜6のそれぞれについて、撥水性オイル(シリコーンオイル)を、表1に示されている塗布量[単位面積当たりの塗布量(g/cm)、総塗布量(g)]にて塗布することにより、塗膜を形成した。
【0044】
続いて、ハニカム構造体の外周壁の所定の位置(後述の2次元コードリーダーの読み取り位置)に、塗布具の転写用領域を押し当て、撥水性オイルの塗膜を転写し、乾燥することにより、ハニカム構造体の外周壁に、四角形(縦60mm×横60mm)の表示用領域を設けた。
【0045】
次いで、同一の2次元コード(データマトリクスコード)を、インクジェットプリンターを用いて表示用領域内に標識することにより、参考例1〜6の、2次元コード付きのハニカム構造体(以下、「標識付きハニカム構造体」という)を得た。なお、参考例1〜6では、表示用領域内に、インクでの標識を良好に行うことが可能であった(表1中の「インクでの標識」の欄)。
【0046】
(比較例1)
参考例1で用いたものと同様のハニカム構造体に対して、外周壁の所定の位置(後述の2次元コードリーダーの読み取り位置)に、四角形(縦60mm×横60mm)の枠を描いて疑似表示用領域とし、この疑似表示用領域内に、インクジェットプリンターを用いて参考例1と同一の2次元コード(データマトリクスコード)を標識することにより、比較例1の標識付きハニカム構造体を得た。
【0047】
続いて、参考例1で用いたものと同様のハニカム構造体に対して、外周壁の所定の位置(後述の2次元コードリーダーの読み取り位置)に、塗布具の転写用領域を押し当てて、レーザー発色用下地の塗膜を転写し、25℃で24時間にわたり自然乾燥を行い、さらに、電気炉を用いて600℃で1時間の熱処理を行うことにより、ハニカム構造体の外周壁に、四角形(縦35mm×横45mm)のレーザー用表示用領域を設けた。
【0048】
このレーザー用表示用領域内に、インクジェットプリンターを用いて参考例1と同一の2次元コード(データマトリクスコード)を標識することを試みたところ、レーザー用表示用領域内ではインクがはじいてしまって、完全な2次元コード(データマトリクスコード)を標識することが不可能であった(表1中の「インクでの標識」の欄)。
【0049】
そこで、レーザー用表示用領域に対して、COレーザーマーカーを用いて出力20W、スキャンスピード500mm/sの条件で、参考例1と同一の2次元コード(データマトリクスコード)を標識し、比較例1の標識付きハニカム構造体を得た。
【0050】
(触媒の担持)
参考例1〜6および比較例1の標識付きハニカム構造体を8体ずつ用意し、これらの標識付きハニカム構造体のセル内に触媒スラリー(200g/L)を注いだ。次いで、セル内に注ぎ込んだ触媒スラリーを排出し、乾燥、熱処理(600℃、1時間)することにより、ハニカム触媒体を得た。なお、標識付きハニカム構造体のセル内に触媒スラリーを注いだ際に、表示用領域、疑似表示用領域、およびレーザー用表示用領域における触媒スラリーの染み出しの有無を観察した。参考例1〜6および比較例1の標識付きハニカム構造体のそれぞれにつき、合計8体のうちで、染み出しが観察されなかったものの割合(%)を、表1中の「染み出し抑制」の欄に示す。なお、ここでいう「染み出しが有り」には、表示用領域(疑似表示用領域、レーザー用表示用領域)内の一部分[2次元コード(データマトリクスコード)の読み取りに影響を与えない部分も含む]でも、染み出しが観察されたものが含まれる。
【0051】
(標識の読み取り)
上述の触媒担持によって得られた、参考例1〜6および比較例1のハニカム触媒体(それぞれ合計8体)について、ISO/IEC15415に適合した2次元コードリーダーを用いて、2次元コード(データマトリクスコード)の読み取り試験を行った。参考例1〜6および比較例1の標識付きハニカム構造体のそれぞれにつき、正確な読み取りがなされたものの割合(%)を、表1中の「読み取り」の欄に示す。
【0052】
(影響)
撥水性オイルの塗布量が多いと、触媒スラリーを必要以上にはじいてしまい、その結果、ハニカム触媒体に適当量の触媒を担持できないことがある。そこで、ハニカム触媒体に適当量の触媒を担持できるレベルの塗布量であれば「影響なし」、適当量の触媒を担持できないレベルの塗布量であれば「影響あり」とした。
【0053】
【表1】
【0054】
(考察)
参考例1〜6では、触媒担持の際に、表示用領域内における触媒スラリーの染み出しの抑制が75%以上であり、特に、参考例2〜6では、染み出しの抑制が100%であった。こうした染み出しの抑制によって、参考例1〜6では、表示用領域内に記した2次元コード(データマトリクスコード)についての正確な読み取りが75%以上であり、特に、参考例2〜6では、2次元コード(データマトリクスコード)の正確な読み取りが100%であった。また、参考例1〜6では、インクによって良好に標識可能であることが判明した。以上から、参考例1〜6については、インクという簡便な手段で表示用領域内に標識することが可能であり、また、表示用領域内に記した2次元コード(データマトリクスコード)の正確な読み取りも、高頻度にて可能であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、触媒担体用のハニカム構造体を製造する際に利用できる。
【符号の説明】
【0056】
2:端面、2a:流入側端面、2b:排出側端面、4:セル、5:隔壁、7:外周壁、10:表示用領域、15:余白、20:レーザー発色用領域、50:塗布具、55:転写用領域、60:塗膜、100:ハニカム構造体、100a,100b:ハニカム構造体、150:ハニカム触媒体、150a,150b:ハニカム触媒体、200:ハニカム構造体、250:ハニカム触媒体。
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