特許第6043216号(P6043216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6043216被処理水の処理方法、及び、被処理水の処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043216
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】被処理水の処理方法、及び、被処理水の処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   C02F3/12 H
   C02F3/12 A
   C02F3/12 P
   C02F3/12 V
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-39534(P2013-39534)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-166617(P2014-166617A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2015年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000156961
【氏名又は名称】関西熱化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲益 裕修
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 正法
(72)【発明者】
【氏名】山田 健太
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−097591(JP,A)
【文献】 再公表特許第2011/024905(JP,A1)
【文献】 特開平05−169083(JP,A)
【文献】 実開昭57−086699(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00−3/34
C02F 1/00−1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
COD成分を分解可能な細菌を含む活性汚泥を収容する生物処理槽に、COD成分を含む被処理水を導入して、前記被処理水を生物処理する工程と、
前記生物処理槽から供給された活性汚泥と処理された被処理水とを、前記生物処理槽よりも後段に設けられた沈殿槽において分離する工程と、
前記沈殿槽に設置された界面計により、連続的に前記沈殿槽内の状態を計測する工程と、
前記生物処理槽内に収容された前記活性汚泥中の細菌数を定期的に測定する工程と、
最後に細菌数を測定してから所定期間が経過するまでは、細菌数の測定結果に基づいて、前記生物処理槽の運転条件を調整する工程と、
最後に細菌数を測定してから所定期間が経過した後は、前記界面計による計測結果に基づいて、前記生物処理槽の運転条件を調整する工程とを備えることを特徴とする被処理水の処理方法。
【請求項2】
COD成分を分解可能な細菌を含む活性汚泥を収容する生物処理槽に、COD成分を含む被処理水を導入して、前記被処理水を生物処理する工程と、
前記生物処理槽から供給された活性汚泥と処理された被処理水とを、前記生物処理槽よりも後段に設けられた沈殿槽において分離する工程と、
前記沈殿槽に設置された界面計により、前記沈殿槽内の状態を計測する工程と、
前記界面計による計測結果が適正範囲内にあるか否かを判断する工程と、
前記界面計による計測結果が適正範囲内にないと判断した場合、前記生物処理槽内に収容された前記活性汚泥中の細菌数の分析を開始するとともに、前記界面計による計測結果に基づいて、前記生物処理槽の運転条件を調整する工程と、
細菌数の分析を開始した後、前記界面計による計測結果が適正範囲内に戻らない状態のまま、細菌数の分析の結果が得られた場合に、得られた細菌数の分析結果に基づいて前記生物処理槽の運転条件を調整する工程とを備えることを特徴とする被処理水の処理方法。
【請求項3】
前記生物処理槽内の細菌数を測定する工程は、アンモニア酸化細菌数を測定する工程であり、
前記生物処理槽の運転条件を調整する工程は、前記界面計による計測結果とアンモニア酸化細菌数の測定結果とに基づいて、前記生物処理槽の運転条件を調整する工程であることを特徴とする請求項1又は2に記載の被処理水の処理方法。
【請求項4】
前記沈殿槽内の状態を計測する工程は、前記沈殿槽内の処理された被処理水と活性汚泥との界面高さを計測することを含み、
前記生物処理槽の運転条件を調整する工程は、前記界面高さの経時変化に基づいて、前記生物処理槽の運転条件を調整する工程であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の被処理水の処理方法。
【請求項5】
前記被処理水が、石炭からコークスが作製される際に排出される排ガスが冷却されて発生する凝縮水を含有していることを特徴とする請求項1〜のいずれか1に記載の被処理水の処理方法。
【請求項6】
COD成分を分解可能な細菌を含む活性汚泥を収容する生物処理槽と、
前記生物処理槽よりも後段に設けられ、前記生物処理槽から供給された活性汚泥と処理された被処理水とを分離するための沈殿槽と、
前記沈殿槽に設置され、前記沈殿槽内の状態を連続的に計測する界面計と、
前記生物処理槽内に収容された前記活性汚泥中の細菌数を定期的に測定する測定部と、
前記界面計による計測結果と細菌数の測定結果とに基づいて、前記生物処理槽の運転条件を調整する制御を行なう制御部とを備え
前記制御部は、
最後に細菌数を測定してから所定期間が経過するまでは、細菌数の測定結果に基づいて、前記生物処理槽の運転条件を調整し、
最後に細菌数を測定してから所定期間が経過した後は、前記界面計による計測結果に基づいて、前記生物処理槽の運転条件を調整することを特徴とする被処理水の処理装置。
【請求項7】
COD成分を分解可能な細菌を含む活性汚泥を収容する生物処理槽と、
前記生物処理槽よりも後段に設けられ、前記生物処理槽から供給された活性汚泥と処理された被処理水とを分離するための沈殿槽と、
前記沈殿槽に設置され、前記沈殿槽内の状態を計測する界面計と、
前記生物処理槽内に収容された前記活性汚泥中の細菌数を測定する測定部と、
前記界面計による計測結果と細菌数の測定結果とに基づいて、前記生物処理槽の運転条件を調整する制御を行なう制御部とを備え、
前記制御部は、
前記界面計による計測結果が適正範囲内にあるか否かを判断し、
前記界面計による計測結果が適正範囲内にないと判断した場合、前記生物処理槽内に収容された前記活性汚泥中の細菌数の分析を開始するとともに、前記界面計による計測結果に基づいて、前記生物処理槽の運転条件を調整し、
細菌数の分析を開始した後、前記界面計による計測結果が適正範囲内に戻らない状態のまま、細菌数の分析の結果が得られた場合に、得られた細菌数の分析結果に基づいて前記生物処理槽の運転条件を調整することを特徴とする被処理水の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水の処理方法、及び、被処理水の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被処理水の処理方法においては、例えば、活性汚泥を浮遊汚泥の状態で収容させた生物処理槽にCOD(Chemical Oxygen Demand,化学的酸素要求量)成分を含む被処理水を導入し、生物処理によってCOD成分を低減させている。
【0003】
生物処理された被処理水(以下、処理水ともいう)は、活性汚泥と混合された状態で、生物処理槽よりも後段に設けられた沈殿槽に供給され、沈殿槽において、活性汚泥と処理水とに分離される。
【0004】
このような被処理水の処理方法においては、生物処理槽に導入する被処理水の量や、活性汚泥の量等を調整することによって、COD成分値を下げ、処理水の水質を一定レベル以上に維持させることが行なわれている。
【0005】
処理水の水質を一定レベル以上に維持させる方法としては、従来、生物処理槽への被処理水の導入に先立って活性汚泥に含まれている全細菌数を測定し、測定結果に基づいて、生物処理槽に導入する被処理水の量等を調整する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、全細菌数の測定にある程度(例えば、3〜5日程度)の日数を要し、全細菌数の測定結果を運転条件に反映させるまでにブランクが発生するといった点で改善の余地があった。
【0007】
これに対して、従来、沈澱槽に超音波式界面計を設置し、当該界面計によって活性汚泥の沈降状態を観察し、予めパターン化された活性汚泥の沈降状態との比較結果に基づいて曝気槽の運転条件を調整する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。この方法によれば、ほぼリアルタイムで運転条件を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4672816号公報
【特許文献2】特許第3164235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者らは、超音波式界面計により観察された活性汚泥の沈降状態だけでは、被処理水の状態が判断できない場合があることを見出した。すなわち、超音波式界面計により観察された活性汚泥の沈降状態が同じパターンであっても、過曝気状態にある場合もあれば、過負荷の状態の場合もあることを見出した。そのため、超音波式界面計により観察された活性汚泥の沈降状態にのみ基づいて生物処理槽の運転条件を調整すると、過曝気状態にあるものをさらに過曝気の方向へ調整してしまうおそれや、過負荷状態にあるものをさらに過負荷の方向へ調整してしまうおそれがある。
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、リアルタイムでの運転条件の調整を行なうことが可能であり、且つ、より確実に処理水の水質を一定レベル以上に維持することが可能な被処理水の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上のような目的を達成するために、本発明は、以下のようなものを提供する。
COD成分を分解可能な細菌を含む活性汚泥を収容する生物処理槽に、COD成分を含む被処理水を導入して、前記被処理水を生物処理する工程と、
前記生物処理槽から供給された活性汚泥と処理された被処理水とを、前記生物処理槽よりも後段に設けられた沈殿槽において分離する工程と、
前記沈殿槽に設置された界面計により、前記沈殿槽内の状態を計測する工程と、
前記生物処理槽内に収容された前記活性汚泥中の細菌数を測定する工程と、
前記界面計による計測結果と細菌数の測定結果とに基づいて、前記生物処理槽の運転条件を調整する工程とを備えることを特徴とする被処理水の処理方法。
【0012】
前記構成によれば、界面計による計測結果と細菌数の測定結果とに基づいて、生物処理槽の運転条件を調整する。界面計による計測結果から判断される被処理水の状態(すなわち、過曝気状態にあるか、過負荷状態にあるか)が、実際の状態とは異なることとなる場合は、稀である。従って、本発明では、まず、一次的に界面計による計測結果に基づいて運転条件の調整を行なう。その結果、リアルタイムでの運転条件の調整を行なうことができる。また、本発明では、稀に、界面計による計測結果から判断される被処理水の状態が、実際の状態とは異なる場合に備えて、二次的に、細菌数の測定結果に基づいて運転条件の調整を行なう。細菌数の測定には、通常、ある程度の時間(例えば、3〜5日程度)を要する。しかしながら、細菌数の測定結果を用いれば、界面計による計測結果から判断される被処理水の状態が実際の状態とは異なっていた場合にも、正しく調整をし直すことができる。従って、より確実に処理水の水質を一定レベル以上に維持することができる。
このように、本発明では、界面計による計測結果と細菌数の測定結果とに基づいて、生物処理槽の運転条件を調整するため、リアルタイムでの運転条件の調整を行なうことが可能となり、且つ、より確実に処理水の水質を一定レベル以上に維持することが可能となる。
【0013】
前記構成において、前記生物処理槽内の細菌数を測定する工程は、アンモニア酸化細菌数を測定する工程であり、
前記生物処理槽の運転条件を調整する工程は、前記界面計による計測結果とアンモニア酸化細菌数の測定結果とに基づいて、前記生物処理槽の運転条件を調整する工程であることが好ましい。
【0014】
本発明者らは、アンモニア酸化細菌数が予め設定された上限値よりも多い場合には過曝気状態にあることを見出した。
前記構成によれば、アンモニア酸化細菌数の測定結果に基づいて、生物処理槽の運転条件を調整するため、運転条件の調整をより正確に行なうことが可能となる。
【0015】
前記構成において、前記沈殿槽内の状態を計測する工程は、前記沈殿槽内の処理された被処理水と活性汚泥との界面高さを計測することを含み、
前記生物処理槽の運転条件を調整する工程は、前記界面高さの経時変化に基づいて、前記生物処理槽の運転条件を調整する工程であることが好ましい。
【0016】
前記構成によれば、沈殿槽内の処理された被処理水と活性汚泥との界面高さの経時変化に基づいて、生物処理槽の運転条件を調整する。例えば、界面が上昇した場合、細菌数(活性を有する菌と活性を失った菌との数の合計)が増加していることになる。通常は、活性を有する菌の数が増加していることが多いため、運転条件の調整としては、基本的には活性汚泥を減らすか被処理水の供給量を増やす調整を行なう。これにより、スカムの量、及び、界面と層底の把握可否に基づいて運転の調整を行なう(特許文献2参照)よりも、より確実なリアルタイムでの運転条件の調整を行なうことが可能となる。また、少なくとも、界面高さの経時変化を確認すればよいため、簡便である点で優れる。
【0017】
前記構成において、前記被処理水が、石炭からコークスが作製される際に排出される排ガスが冷却されて発生する凝縮水を含有していることが好ましい。
【0018】
石炭からコークスが作製される際に排出される排ガスが冷却されて発生する凝縮水は、フェノールやチオシアンが多く含有されており、処理水のCOD成分残存量を予測することが特に困難である。従って、前記被処理水が、前記凝縮水である場合は、本発明の効果、すなわち、リアルタイムでの運転条件の調整を行なうことが可能となり、且つ、より確実に処理水の水質を一定レベル以上に維持することが可能になるという効果をより顕著に発揮させることができる。
【0019】
本発明は、さらに、以下のようなものを提供する。
COD成分を分解可能な細菌を含む活性汚泥を収容する生物処理槽と、
前記生物処理槽よりも後段に設けられ、前記生物処理槽から供給された活性汚泥と処理された被処理水とを分離するための沈殿槽と、
前記沈殿槽に設置され、前記沈殿槽内の状態を計測する界面計と、
前記生物処理槽内に収容された前記活性汚泥中の細菌数を測定する測定部と、
前記界面計による計測結果と細菌数の測定結果とに基づいて、前記生物処理槽の運転条件を調整する制御を行なう制御部とを備えることを特徴とする被処理水の処理装置。
【0020】
前記構成によれば、界面計による計測結果と細菌数の測定結果とに基づいて、生物処理槽の運転条件を調整する制御を行なう。界面計による計測結果から判断される被処理水の状態(すなわち、過曝気状態にあるか、過負荷状態にあるか)が、実際の状態とは異なることとなる場合は、稀である。従って、本発明では、まず、一次的に界面計による計測結果に基づいて運転条件の調整を行なう。その結果、リアルタイムでの運転条件の調整を行なうことができる。また、本発明では、稀に、界面計による計測結果から判断される被処理水の状態が、実際の状態とは異なる場合に備えて、第2次的に、細菌数の測定結果に基づいて運転条件の調整を行なう。細菌数の測定には、通常、ある程度の時間(例えば、3〜5日程度)を要する。しかしながら、細菌数の測定結果を用いれば、界面計による計測結果から判断された被処理水の状態が実際の状態とは異なっていた場合にも、正しく調整をし直すことができる。従って、より確実に処理水の水質を一定レベル以上に維持することができる。
このように、本発明では、界面計による計測結果と細菌数の測定結果とに基づいて、生物処理槽の運転条件を調整する制御を行なうため、リアルタイムでの運転条件の調整を行なうことが可能となり、且つ、より確実に処理水の水質を一定レベル以上に維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、生物処理槽のリアルタイムでの運転条件の調整を行なうことが可能となり、且つ、より確実に処理水の水質を一定レベル以上に維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る被処理水の処理装置を示す模式図である。
図2】(a)は、超音波式界面計により沈殿槽内の状態を計測する原理を説明するための図であり、(b)は、図2(a)の状態を超音波式界面計で測定した際の結果を画像として表示する場合の一例を示す画面の模式図である。
図3】(a)〜(d)は、超音波式界面計による測定により得られ得る画像を模式的に示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る運転条件調整処理Aを示すフローチャートである。
図5】制御部において実行される運転条件調整処理Bを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る被処理水の処理装置を示す模式図である。図1に示すように、被処理水の処理装置100は、曝気槽(生物処理槽)110と、細菌数測定部120と、酸素供給部130と、酸素濃度測定部131と、酸素濃度制御部132と、沈殿槽150と、汚泥量制御部160と、超音波式界面計170とを備える。酸素濃度制御部132及び汚泥量制御部160は、本発明の制御部に相当する。
【0024】
曝気槽110は、反応槽やエアレーションタンクとも称される生物処理槽である。曝気槽110は、COD成分を分解可能な細菌を含む活性汚泥を収容し、かつ、コークス炉排水等のCOD成分を含む被処理水が導入される。コークス炉排水とは、石炭からコークスが作製される際に排出される排ガスが冷却されて発生する凝縮水を含む水をいう。曝気槽110においては、活性汚泥中の好気性微生物によって曝気槽110に収容された被処理水中の有機物を吸収・分解する。
【0025】
細菌数測定部120は、曝気槽110内の活性汚泥中の細菌数(生物処理に関与する、活性を有する細菌数)を測定する。活性汚泥中に存在する細菌としては、アンモニア酸化細菌(AOB)、亜硝酸酸化細菌(NOB)、フェノール分解細菌、チオシアン分解細菌等を挙げることができる。本実施形態では、細菌数測定部120が、アンモニア酸化細菌(AOB)及び全細菌(真正細菌)数を測定する場合について説明する。なお、アンモニア酸化細菌(AOB)及び全細菌(真正細菌)の測定方法は、従来公知の方法(例えば、特許第4672816号公報参照)を用いることができるため、ここでの詳細な説明は省略する。細菌数測定部120は、細菌数の測定をすることができれば特にその構成は限定されないが、例えば、曝気槽110に貯留された活性汚泥の一部を採取する採取部と、採取した活性汚泥のDNAを精製する精製部と、精製したDNAとPCRプライマーとプローブとを含む反応液を用いて定量PCR法により細菌数を測量する測量部とを有する構成とすることができる。細菌数測定部120では、定期的(例えば、1週間に一回)に細菌数の測定が行なわれる。細菌数測定部120で測定された細菌数は、細菌数に係るデータとして、制御部に送信される。
【0026】
酸素供給部130は、曝気槽110の底部に配置され、曝気槽110に貯留されている活性汚泥に酸素を供給する。酸素供給部130としては、例えば、散気装置を挙げることができる。
【0027】
酸素濃度測定部131は、曝気槽110の内部に収容され、曝気槽110に貯留された活性汚泥中の酸素濃度を測定する。酸素濃度測定部131としては、例えば、酸素濃度計を挙げることができる。
【0028】
酸素濃度制御部132は、後述する超音波式界面計170による計測結果と細菌数測定部120により測定された細菌数とに基づいて、酸素濃度測定部131で測定される活性汚泥中の酸素濃度を制御するために、酸素供給部130により供給する酸素量を制御する。
酸素濃度制御部132は、活性汚泥中の全細菌(真正細菌)数やAOB数が予め設定された範囲内となるように調整するように構成されている。具体的には、例えば、超音波式界面計170による計測結果、細菌数測定部120により測定された細菌数等により、予め設定された前記範囲の上限値よりもAOB数が多い(過曝気状態)と判断した場合には、酸素供給部130から活性汚泥へ供給する酸素量を低減する。
【0029】
沈殿槽150は、曝気槽110の後段に設けられている。沈殿槽150では、曝気槽110で有機物を吸収・分解した活性汚泥及び曝気槽110でCOD成分が低減された被処理水(すなわち、処理水)を、処理水と活性汚泥とに沈降分離される。
【0030】
汚泥量制御部160は、後述する超音波式界面計170による計測結果と細菌数測定部120により測定された細菌数とに基づいて、沈殿槽150から系外に排出する余剰汚泥量を制御する。汚泥量制御部160は、SRT(固形物滞留時間)、ASRT(好気的固形物滞留時間)等を制御するために、余剰汚泥の排出量を制御する。また、汚泥量制御部160は、返送汚泥の量を制御する。
【0031】
沈殿槽150から引き抜かれた引抜汚泥の一部は、返送汚泥として曝気槽110へ返送され、残部は余剰汚泥として排出される。この場合、処理装置100は、曝気槽110への返送経路をさらに備えている。
【0032】
汚泥量制御部160は、活性汚泥中の全細菌(真正細菌)数やAOB数が予め設定された範囲内となるように調整するように構成されている。具体的には、例えば、超音波式界面計170による計測結果、細菌数測定部120により測定された細菌数等により、予め設定された前記範囲の上限値よりもAOB数が多い(過曝気状態)と判断した場合には、沈殿槽150から引き抜く余剰汚泥量を増やして、SRTやASRTを短くするように調整する。
【0033】
超音波式界面計170は、沈殿槽150に設置されており、沈殿槽内の状態を計測する。超音波式界面計170では、連続的(例えば、数秒ごと)に沈殿槽内の状態が計測される。超音波式界面計170で得られた計測結果は、計測結果に係るデータとして、制御部に送信される。図2(a)は、超音波式界面計により沈殿槽内の状態を計測する原理を説明するための図であり、図1で示した超音波式界面計170及びその近傍の部分拡大図である。超音波式界面計170は、超音波の送受信を行なうことが可能な送受信器170aを備える。送受信器170aは、沈殿槽150の液面180よりも少し下側に位置されるように配置されている。送受信器170aから水中(図2(a)では、下方向)に超音波が発射されると、発射された超音波は、密度の異なる種々の位置(例えば、互いに汚泥濃度差のある各位置)で反射して送受信器170aに再び到達する。水中の音速は一定であるため、超音波が送受信器170aから発射されてから再び送受信器170aに達するまでの時間とその反射強度とを計測することにより、汚泥の界面深度や汚泥の状態(例えば、密度差に起因する沈降状態)を計測することができる。
【0034】
例えば、超音波が送受信器170aから発射されてから再び送受信器170aに到達するまでの時間(高さに相当)を縦軸とし、当該反射時間に対応する位置に反射強度(密度に相当)に応じた色を付せば、沈殿槽150内の状態を画像として表示することができる。
【0035】
図2(b)は、図2(a)の状態を超音波式界面計で測定した際の結果を画像として表示する場合の一例を示す画面の模式図である。図2(a)では、沈殿槽150内の活性汚泥の沈降状態が良好な場合を示しており、処理水層181と活性汚泥層182とが明確に分かれている。このような場合、画像としては、図2(b)に示すように、密度の低い部分181a(処理水層181に対応する部分)と密度の高い部分182a(活性汚泥層182に対応する部分)とが色分けされて表示される。なお、図2(b)中、横軸は、測定時間軸である。このような画像は、CRT表示装置、液晶表示装置、プラズマ表示装置等の画像表示装置を使用して表示させることができる。
【0036】
次に、超音波式界面計170による測定により得られる得る画像、及び、各画像から想定される沈殿槽150内の状態について説明する。
【0037】
図3(a)〜(d)は、超音波式界面計による測定により得られ得る画像を模式的に示す図である。図3(a)に示す画像では、密度の低い部分181a(処理水層181に対応する部分)と密度の高い部分182a(活性汚泥層182に対応する部分)との界面183aが明確となっている様子を示している。この状態は、安定運転をしている状態である。すなわち、活性汚泥中の細菌に対して負荷されるCOD成分が適度であり、その結果、処理水のCOD濃度は低い状態で安定となっている。図3(a)に示す画像の状態では、例えば、細菌1つに対する負荷(以下、「COD−Bact」ともいう)は、40〜60pg/(copies・day)である。COD−Bactは、下記式1により得られる。
式1:(COD−Bact)=(被処理水のCOD濃度)/[(細菌数)×1.49×10
例えば、被処理水のCOD濃度(曝気槽110に導入される前の被処理水のCOD濃度)が、3000kg/dayの場合、AOB数は、3.00×10〜9.00×10cells/mL−MLSS程度であり、全細菌数(活性を有する菌数)は、3.36×1010〜5.03×1010cells/mL−MLSS程度である。この際の処理水のCOD濃度(処理され、沈殿槽150から排出される処理水のCOD濃度)は、85mg/L以下程度となる。
【0038】
図3(a)に示す画像が得られている状態で運転をしていると、界面183aが上昇する場合がある(図3(b)参照)。界面183aが上昇した場合、活性汚泥層182の量が増えていることから、細菌数(活性を有する菌と活性を失った菌との数の合計)が増加していることになる。通常は、活性を有する菌の数が増加している(過曝気状態となっている)場合が多い。図3(b)に示す画像の状態では、例えば、COD−Bactは、30pg/(copies・day)である。
図3(a)の例と同様、例えば、被処理水のCOD濃度が、3000kg/dayの場合、図3(b)に示す画像の状態では、AOB数は、1.00×10cells/mL−MLSS程度であり、全細菌数(活性を有する菌数)は、6.71×1010cells/mL−MLSS程度である。
このような状況の場合、基本的には活性汚泥を減らす、酸素供給量を減らす、被処理水の供給量を増やす等の調整、すなわち、負荷を加えるための調整を行なう。具体的な調整方法については、後に詳述する。
【0039】
図3(b)の状態から、負荷を加えたとしても、図3(a)の状態に戻らず、図3(c)の状態となることがある。図3(c)は、画面全体がほぼ同一色となった様子を示している。図3(c)の状態では、活性汚泥と処理水とが全体的に混ざり合った状態となり、単一の混合層184となっている。図3(c)の状態においては、細菌全体の数(活性を有する菌と活性を失った菌との数の合計)が増加していることは分かるが、COD成分に対して活性を有する菌が多い(すなわち、過曝気状態にある)のか、活性を失った菌が多い(すなわち、過負荷状態にある)のか、画像からは把握できない。そのため、仮に、過曝気状態にあるにも関わらず、調整を行わないと、COD成分がさらに少なくなり、活性を有していた細菌は活性を失い、浮いてくる。その後、過曝気状態を維持すると、活性を失って浮いた細菌が処理水とともに系外に取り出され、図3(d)に示すように、画面表示としては、安定運転の図3(a)と同様の画像表示となる。しかしながら、実際は、活性を失って浮いた細菌が系外に取り出されただけであり、処理水に含有されるCOD成分は高い状態となってしまっている。
このように、図3(c)の状態となった場合には、超音波式界面計170による測定結果からだけでは、正しい調整を行なうことができず、処理水の水質を一定レベル以上に維持できない場合がある。
しかしながら、本実施形態では、細菌数測定部120において細菌数を測定している。従って、図3(c)の状態の場合であっても、過曝気状態にあるのか過負荷状態にあるのかを確実に把握することができる。その結果、細菌数測定部120による測定結果を基に、正しい調整を行なうことが可能となる。
【0040】
続いて、本実施形態に係る被処理水の処理方法について説明する。以下では、まず、上述した処理装置100を用いない被処理水の処理方法について説明し、その後、上述した処理装置100を用いた被処理水の処理方法について説明する。
【0041】
まず、曝気槽110にCOD成分を分解可能な細菌を含む活性汚泥を収容する。この活性汚泥には、アンモニア酸化細菌(AOB)、亜硝酸酸化細菌(NOB)、フェノール分解細菌、チオシアン分解細菌等、適宜必要な菌が含まれる。
【0042】
また、COD成分を含む被処理水を準備する。被処理水は、例えば、石炭からコークスが作製される際に排出される排ガスが冷却されて発生する凝縮水、スクラバー等で処理した後のスクラバー排水等のコークス炉排水を用いることができる。なお、コークス炉排水は、ガス液や安水とも称される。なお、被処理水のCOD濃度は、随時測定しておく。
【0043】
次に、曝気槽110に被処理水を導入して、被処理水を生物処理する。具体的には、曝気槽110に被処理水を導入するとともに攪拌し、活性汚泥と被処理水とを混合し、活性汚泥中の細菌によって被処理水の有機物を吸収・分解する。これにより、被処理水のCOD濃度を低減させる。この際、酸素供給部130から活性汚泥に酸素を供給することにより、有機物の吸収・分解を促進することができる。酸素の供給量は、超音波式界面計170による計測結果や、細菌数測定部120により測定された細菌数、酸素濃度測定部131で測定される活性汚泥中の酸素濃度等に基づいて、酸素濃度制御部132により制御することができる。
【0044】
次に、曝気槽110でCOD成分が低減された活性汚泥と処理された被処理水(すなわち、処理水)との混合物を沈殿槽150に供給する。
【0045】
次に、沈殿槽150において、活性汚泥と処理水との混合物を分離する。具体的には、沈殿槽150において、上澄み液を処理水として次段の処理等に向けて流下し、かつ、沈殿させた汚泥を引抜汚泥として底部から排出する。
【0046】
上記工程により沈殿槽150から排出した引抜汚泥は、例えば、その一部を返送汚泥として曝気槽110又はその供給部に返送し、残部を余剰汚泥として系外に排出する。この際、返送汚泥の量により、曝気槽110に貯留される活性汚泥の量、すなわち、細菌数を調整することができる。返送汚泥の量は、超音波式界面計170による計測結果や、細菌数測定部120により測定された細菌数等に基づいて、汚泥量制御部160により制御することができる。
【0047】
上記の工程により、被処理水からCOD成分が低減された処理水を生成することができる。なお、処理水のCOD濃度は、随時測定しておく。しかしながら、上記工程を続けると、種々の要因によりCOD成分の低減が適切に行なわれなくなる場合がある。そこで、本実施形態では、以下の工程を実施して、COD成分の低減が適切に行なわれるように制御している。
【0048】
図4は、本発明の一実施形態に係る運転条件調整処理Aを示すフローチャートである。運転条件調整処理Aは、作業者によって行なわれる操作を示している。超音波式界面計170では、計測が連続的に行なわれており、測定結果に基づいた画像が画像表示装置にリアルタイム表示されている。
【0049】
運転条件調整処理Aでは、まず、超音波式界面計170による測定結果から得られる画像に基づき、沈殿槽150における、処理水層181と活性汚泥層182との界面183(図2(a)、図2(b)参照)が適正範囲内であるか否かを判断する(ステップS1)。具体的には、界面の位置(界面高さ)が上昇しているかを観察したり、密度分布を観察したりして判断する。界面183aの画像を参照し、界面183が適正範囲内にあると判断した場合、ステップS1に戻る。一方、界面183が適正範囲内にないと判断した場合、細菌数の分析を開始する(例えば、曝気槽110からサンプリングして、細菌数の分析を外部機関等に依頼する)とともに、超音波式界面計170による測定結果に基づいて、曝気槽110の運転条件を調整する(ステップS3)。なお、細菌数の分析は、アンモニア酸化細菌(AOB)数のみの測定であってもよく、全細菌(真正細菌)数のみの測定であってもよく、アンモニア酸化細菌(AOB)数と、全細菌(真正細菌)数との両方であってもよい。また、さらに、亜硝酸酸化細菌(NOB)、フェノール分解細菌、チオシアン分解細菌等の細菌数の測定を行なってもよい。なお、亜硝酸酸化細菌(NOB)、フェノール分解細菌、チオシアン分解細菌等の細菌数の測定方法は、従来公知の方法(例えば、特許第4672816号公報参照)を用いることができるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0050】
ステップS3の後、処理水層181と活性汚泥層182との界面183が適正範囲内に戻ったかを判断する(ステップS5)。適正範囲内に戻ったと判断した場合、ステップS1に戻る。適正範囲内に戻らない場合は、細菌数の分析の結果が得られるまで、曝気槽110の運転条件の調整を継続し、適正範囲内に戻ったと判断した場合、ステップS1に戻る。一方、適正範囲内に戻らない状態のまま、ステップS3において開始した細菌数の分析の結果が得られた場合には(ステップS5:NO)、得られた細菌数の分析結果に基づいて運転条件の調整を行なう(ステップS7)。その後、ステップS1に戻る。
【0051】
上述した実施形態では、界面高さが適正範囲内にない場合にのみ細菌数の分析を行なう場合について説明したが、本発明はこの例に限定されず、界面高さが適正範囲内にある場合にも、一定の期間ごと(例えば、1月ごと)に細菌数の分析を行なってもよい。この場合、得られた細菌数の結果に基づいて運転条件の調整を行なうことができる。
【0052】
以上、処理装置100を用いない被処理水の処理方法(作業者によって行なわれる被処理水の処理方法)について説明した。次に、上述した処理装置100を用いた被処理水の処理方法について説明する。
【0053】
図5は、制御部において実行される運転条件調整処理を示すフローチャートである。なお、本実施形態では、酸素濃度制御部132と汚泥量制御部160とが1の制御部で構成されている場合について説明する。すなわち、本実施形態では、酸素濃度制御部132、及び、汚泥量制御部160が本発明の制御部に相当する。
【0054】
制御部には、細菌数測定部120から、定期的(例えば、1週間に一回)に細菌数に係るデータが送信される。また、制御部には、超音波式界面計170から、連続的(例えば、数秒ごと)に計測結果に係るデータが送信される。
【0055】
運転条件調整処理では、まず、制御部は、菌数測定部120から細菌数に係るデータを受信したか否かを判断する(ステップS10)。細菌数に係るデータを受信したと判断した場合、制御部は、随時測定している被処理水のCOD濃度と、受信した細菌数に係るデータに基づいて、COD−Bact値を算出し、このCOD−Bact値が所定の範囲内にあるか否かを判断する(ステップS12)。COD−Bact値が所定範囲内にあると判断した場合、処理をステップS10に戻す。一方、COD−Bact値が所定範囲内にないと判断した場合、制御部は、曝気槽110の運転条件をCOD−Bact値に基づいて調整する(ステップS14)。具体的には、予め設定された前記範囲の上限値よりも細菌数が多い(過曝気状態)と判断した場合には、酸素供給部130から活性汚泥へ供給する酸素量を低減したり、沈殿槽150から引き抜く余剰汚泥量を増やして、SRTやASRTを短くするように調整する制御を行なう。
なお、ステップS12においては、COD−Bact値が所定範囲内にあり、且つ、AOB数が所定の範囲内にあるか否かも判断し、COD−Bact値が所定範囲内にあり、且つ、AOB数が所定の範囲内にある場合、処理をステップS10に戻し、いずれかが、所定の範囲内にない場合、ステップS14において、曝気槽110の運転条件をCOD−Bact値、及び/又は、AOB数に基づいて調整することとしてもよい。
【0056】
ステップS10において細菌数に係るデータを受信していないと判断した場合、最後に細菌数に係るデータを受信してから所定期間が経過したか否かを判断する(ステップS16)。最後に細菌数に係るデータを受信してから所定期間(例えば、2日)が経過していないと判断した場合、処理をステップS10に戻す。これは、最後に細菌数に係るデータを受信してから所定期間が経過していない場合は、細菌数に基づく運転の調整を優先させるために、超音波式界面計170からの計測結果に係るデータに基づく運転の調整を行なわないためである。
【0057】
一方、ステップS16において、最後に細菌数に係るデータを受信してから所定期間が経過したと判断した場合、制御部は、連続的に超音波式界面計170から受信している計測結果に係るデータに基づき、沈殿槽150における、処理水層181と活性汚泥層182との界面183(図2(a)参照)が上昇傾向にあるのか否かを判断する(ステップS18)。具体的には、制御部は、以前に受信した計測結果に係るデータと比較して、界面183が上昇傾向にあるのか否かを判断する。界面183が上昇傾向にないと判断した場合、制御部は、処理をステップS10に戻す。一方、界面183が上昇傾向にあると判断した場合、制御部は、曝気槽110の運転条件を調整する(ステップS20)。具体的な調整方法は、ステップS14と同様である。
【0058】
このように、本実施形態に係る被処理水の処理方法によれば、超音波式界面計170から連続的に受信する計測結果に係るデータに基づいてリアルタイムでの運転条件の調整を行なうことが可能であり、且つ、細菌数測定部120から定期的に受信する細菌数に係るデータに基づいてより確実な運転条件の調整を行なうことができる。これにより、より確実に処理水の水質を一定レベル以上に維持することが可能となる。また、超音波式界面計による計測結果を用いているため、高価な細菌数測定の頻度を減らすことが可能となり、ランニングコストを削減することができる。
【0059】
上述した実施形態では、界面高さの経時変化に基づいて、曝気槽110の運転条件を調整する場合について説明した。しかしながら、本発明は、超音波式界面計による計測結果(沈殿槽内の状態の計測結果)に基づいて生物処理槽の運転条件を調整するのであれば、この例に限定されない。例えば、超音波式界面計による測定により得られた画像を複数の領域に分割した後、各領域における密度を数値化し、これらの数値を用いて所定の演算を行ない、その演算結果に応じて、生物処理槽の運転条件を調整することとしてもよい。
【0060】
上述した実施形態では、最後に細菌数を測定してから所定期間が経過していない場合には、細菌数に基づいて運転の調整を行い、最後に細菌数を測定してから所定期間を経過した場合に、超音波式界面計170による計測結果に基づいて運転の調整を行なう場合について説明した。しかしながら、本発明においては、超音波式界面計による計測結果と細菌数の測定結果とに基づいて、生物処理槽の運転条件を調整するのであれば、この例に限定されない。
【0061】
上述した実施形態では、酸素濃度制御部132及び汚泥量制御部160が、本発明の制御部に相当する場合について説明した。しかしながら、本発明の制御部は、超音波式界面計による計測結果と細菌数の測定結果とに基づいて、生物処理槽の運転条件を調整するのであれば、この例に限定されない。例えば、被処理水の生物処理槽への導入量を調整してもよく、新たな活性汚泥を追加して調整してもよい。
【0062】
上述した実施形態では、酸素濃度制御部132と汚泥量制御部160とが1の制御部で構成されている場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、酸素濃度制御部132と汚泥量制御部160とを別個の制御部とするとともに、これらの制御部を統括して制御する統括コントローラを本発明の制御部として備える構成とし、統括コントローラが、生物処理槽の運転条件を調整する構成であってもよい。この場合、酸素濃度制御部132と汚泥量制御部160とが統括コントローラの制御の下で、酸素供給量の調整や、返送汚泥の量の調整等を行なう。
【0063】
以上、処理装置100を用いた被処理水の処理方法について説明した。しかしながら、本発明に係る被処理水の処理方法は、処理装置100を用いる例に限定されない。また、上述した操作(工程)は、装置により実施してもよく、一部の操作を作業者等が行なってもよい。
【0064】
上述した実施形態では、本発明の界面計が超音波式である場合について説明した。しかしながら、本発明の界面計は沈殿槽内の状態を計測する(例えば、沈殿槽内の汚泥濃度分布を画像化する)ことがきれば、この例に限定されず、例えば、静電容量式、フロート式、レーダー式、圧力式、サウジング式、歪み式当の界面計を用いてもよい。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した例に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行なうことが可能である。
【符号の説明】
【0066】
100 処理装置
110 曝気槽(生物処理槽)
120 細菌数測定部
130 酸素供給部
131 酸素濃度測定部
132 酸素濃度制御部
150 沈殿槽
160 汚泥量制御部
170 超音波式界面計
181 処理水層
182 活性汚泥層
181a 密度の低い部分(処理水層181に対応する部分)
182a 密度の高い部分(活性汚泥層182に対応する部分)
183a 界面
図1
図2
図3
図4
図5