特許第6043218号(P6043218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6043218海上構造物の上部コンクリートの形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043218
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】海上構造物の上部コンクリートの形成方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/00 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   E02B3/00
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-47365(P2013-47365)
(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公開番号】特開2014-173343(P2014-173343A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062982
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 紀一
(72)【発明者】
【氏名】原 基久
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−059758(JP,A)
【文献】 特開平07−138970(JP,A)
【文献】 特開2002−256578(JP,A)
【文献】 特開2011−220058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 1/00〜 3/28
E02D 19/00〜 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上構造物の下部躯体上に上部コンクリートを形成するために打設されるコンクリートの外側面に対応するように上方に延びる壁板部と上記壁板部の下端から上記下部躯体の上面に沿って延びる底板部とよりなるコンクリート製の断面L字状型枠を、上記海上構造物の下部躯体上に載置する第1の工程と、
上記断面L字状型枠の内側に、上記底板部の上面の高さまで、上部コンクリートを形成するためのコンクリートを打設して硬化させ、上記打設されたコンクリートと上記底板部とを一体にし、上記断面L字状型枠を上記下部躯体に固定する第2の工程と、
上記断面L字状型枠の壁板部の内側に、上部コンクリートを形成するためのコンクリートを打設して硬化させ、上記打設されたコンクリートと上記断面L字状型枠とを一体にする第3の工程と
よりなることを特徴とする海上構造物の上部コンクリートの形成方法
【請求項2】
上記断面L字状型枠の底板部は、上部コンクリートを形成するために打設されたコンクリートが入り込んで、上記底板部と上記打設されたコンクリートとを一体化させるための、上下に貫通する孔を有することを特徴とする請求項1記載の海上構造物の上部コンクリートの形成方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防波堤や岸壁などの海上構造物の上部コンクリート打設用型枠及びこの型枠を用いた海上構造物の上部コンクリートの形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8に示すように、防波堤や岸壁などの海上構造物1は、例えば、海底2の捨石マウンド3上に重力式ケーソン4やセルラーブロックなどを据え付け、これらケーソン4等の内部に中詰砂5等を投入し、上記ケーソン4等の上端に蓋コンクリート6を打設して上端を塞いで下部躯体7を形成し、そして、上記下部躯体7上に上部コンクリート8を施工することにより形成される(特許文献1)。
【0003】
そして、上記上部コンクリート8は、例えば、図9に示すように、ケーソン4の海面上の側面4aにブラケット9を設置して足場を確保し、その足場を利用して、上記ケーソン4の上面に型枠支保工10及び鉄筋11等によりコンクリート打設用の型枠12を固定し、上記型枠12の内側にコンクリートを打設して硬化させて、上部コンクリート8を形成させ、その後に、上記型枠12を撤去することにより形成される。なお、図9において、24は足場であり、25は、上記足場24を支える支柱である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−193076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記海上構造物1の上部コンクリート8の施工のように、型枠設置のための足場を確保できない場合には、足場として下部躯体の側面にブラケットを設置する必要があり、このブラケットの設置や撤去は、海面上の作業となり危険が多く、また、施工性も悪い。
【0006】
また、型枠の組み立て、設置、固定、そして撤去はケーソン上での作業となり、作業時間が長い場合には気象条件等の制約を受けるという欠点があった。
【0007】
本発明は、上記の欠点を除くようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の海上構造物の上部コンクリートの形成方法は、海上構造物の下部躯体上に上部コンクリートを形成するために打設されるコンクリートの外側面に対応するように上方に延びる壁板部と上記壁板部の下端から上記下部躯体の上面に沿って延びる底板部とよりなるコンクリート製の断面L字状型枠を、上記海上構造物の下部躯体上に載置する第1の工程と、上記断面L字状型枠の内側に、上記底板部の上面の高さまで、上部コンクリートを形成するためのコンクリートを打設して硬化させ、上記打設されたコンクリートと上記底板部とを一体にし、上記断面L字状型枠を上記下部躯体に固定する第2の工程と、上記断面L字状型枠の壁板部の内側に、上部コンクリートを形成するためのコンクリートを打設して硬化させ、上記打設されたコンクリートと上記断面L字状型枠とを一体にする第3の工程とよりなることを特徴とする。
【0009】
また、上記断面L字状型枠の底板部は、上部コンクリートを形成するために打設されたコンクリートが入り込んで、上記底板部と上記打設されたコンクリートとを一体化させるための、上下に貫通する孔を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ブラケットの設置、型枠の固定、撤去を不要とすることができるので、作業の安全性を高め、施工性を良くすることができるという大きな利益がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の海上構造物の上部コンクリート打設用型枠の縦断側面図である。
図2】本発明の海上構造物の上部コンクリート打設用型枠の斜視図である。
図3】本発明の海上構造物の上部コンクリートの形成方法の説明用斜視図である。
図4】本発明の海上構造物の上部コンクリートの形成方法の説明用縦断側面図である。
図5】本発明の海上構造物の上部コンクリートの形成方法の説明用縦断側面図である。
図6】本発明の海上構造物の上部コンクリート打設用型枠の更に他の実施例の縦断側面図である。
図7】本発明の海上構造物の上部コンクリート打設用型枠の更に他の実施例の縦断側面図である。
図8】従来の海上構造物の上部コンクリートの形成方法の説明用縦断側面図である。
図9】従来の海上構造物の上部コンクリートの形成方法の説明用縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面によって本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の海上構造物の上部コンクリート打設用型枠は、図1及び図2に示すように、コンクリート製の断面L字状型枠13よりなり、この断面L字状型枠13は、海上構造物の下部躯体7上に上部コンクリートを形成するために打設されるコンクリートの外周面に対応するよう上方に延びて形成された壁板部14と、この壁板部14の下端のコンクリート打設面14a側から、上記下部躯体7の上面に沿って水平方向に延びて形成された底板部15とよりなり、上記壁板部14と上記底板部15とは一体に形成されている。
【0017】
また、上記断面L字状型枠13の底板部15には、上下に貫通する複数の孔16を設ける。
【0018】
なお、17は、上記ケーソン4等の上端面4bと、載置された上記断面L字状型枠13の下面との間に介挿した止水材である。
【0019】
次に、上記断面L字状型枠13を用いて、海上構造物の上部コンクリートを形成する方法を説明する。
【0020】
海底の捨石マウンド上に重力式ケーソン4やセルラーブロックなどを据え付け、これらケーソン4等の内部に中詰砂5を投入し、上記ケーソン4等の上端に蓋コンクリート6を打設して上端を塞いで下部躯体7を形成する。
【0021】
次に、図1及び図3に示すように、上記下部躯体7上面の外周部に、クレーン等により複数の上記断面L字状型枠13を載置し、上記下部躯体7上にコンクリート打設のための囲いを形成する。
【0022】
なお、18は、上記底板部15の遊端部15aと上記蓋コンクリート6との間に設けた、上記底板部15を水平に載置するためのブロックである。
【0023】
次に、上記断面L字状型枠13の内側にコンクリートを打設し、上記打設したコンクリートを硬化させれば、上記打設されたコンクリートと上記断面L字状型枠13が一体となり、上部コンクリートが形成されるようになる。
【0024】
また、上記底板部15の孔16に、打設されたコンクリートが入り込んで一体化するので、上記断面L字状型枠13と上記打設されたコンクリートとが強固に一体化するようになる。
【0025】
なお、図4に示すように、上記断面L字状型枠13の壁板部14の所望の高さ、例えば、上記底板部15上面の高さまでコンクリートを打設して、硬化させ、上記打設されたコンクリート19と上記底板部15とを一体にし、上記断面L字状型枠13を強固に下部躯体7に固定されるようにし、そして、図5に示すように、更に、上記断面L字状型枠13の壁板部14の内側にコンクリートを打設して硬化させ、上記打設されたコンクリート19、20と上記断面L字状型枠13とを一体とし、上部コンクリートを形成するようにしてもよい。
【0026】
本発明の海上構造物の上部コンクリート打設用型枠及びこの型枠を用いた上部コンクリートの形成方法によれば、断面L字状型枠を上記下部躯体上に載置し、そして、打設したコンクリートを硬化させて、上記打設したコンクリートと断面L字状型枠とを一体化することによって、上記断面L字状型枠13を下部躯体7に固定するので、型枠設置のための足場を確保できないような場合であっても、ケーソン4の側面などにブラケットの設置が不要になる。
【0027】
また、上記断面L字状型枠13は打設したコンクリートと一体化するので、型枠の撤去が不要となる。
【0028】
従って、ケーソン上での作業を減らすことができ、安全性や施工性を高めることができるようになる。
【0029】
なお、上部コンクリート打設時にコンクリートによる側圧等で上記断面L字状型枠13が変形して破損してしまうのを防止するために、上記断面L字状型枠13の壁板部14と上記底板部15とを補強部材によって連結してもよい。
【0030】
上記補強部材には、例えば、図6に示すように、断面L字状型枠13の壁板部14の上端と底板部15の遊端部15aとを連結したワイヤーや棒状部材などの線状体21がある。
【0031】
また、上記補強部材には、例えば、図7に示すように、上記断面L字状型枠13の壁板部14の打設面と上記底板部の上面とを連結した、貫通孔22を有する三角状の板部材などの板状体23がある。
【0032】
また、上部コンクリート打設時において、上記断面L字状型枠13の転倒や滑動などを防止して、安定性を確保するために、上記海上構造物の下部躯体7やこの躯体に付属する蓋コンクリート6等にアンカー筋などの連結部材(図示せず)を設置し、この連結部材により、上記下部躯体7等と上記断面L字状型枠13の底板部15とを連結するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 海上構造物
2 海底
3 捨石マウンド
4 ケーソン
4a 側面
4b 上端面
5 中詰砂
6 蓋コンクリート
7 下部躯体
8 上部コンクリート
9 ブラケット
10 型枠支保工
11 鉄筋
12 コンクリート打設用型枠
13 断面L字状型枠
14 壁板部
14a 打設面
15 底板部
15a 遊端部
16 孔
17 止水材
18 ブロック
19 コンクリート
20 コンクリート
21 線状体
22 貫通孔
23 板状体
24 足場
25 支柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9