(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0015】
[第1実施形態:ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤]
第1実施形態に係るポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤は、下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位を含む重合鎖を有する。該ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤の重量平均分子量Mw(以下、場合により単に「Mw」という。)は100,000未満であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mn(以下、場合により単に「Mw」という。)との比Mw/Mn(以下、場合により単に「Mw/Mn」という。)は1.6以下である。
【化4】
【化5】
[式(1)及び(2)中、R
1は水素又はメチル基を示し、R
2は下記一般式(3)で表される基を示し、R
3は直鎖又は炭素数5以下の分岐を有する炭素数1〜18のアルキル基を示す。
【化6】
式(3)中、m及びnは、m≧5かつn≧4かつm+n≦31を満たす整数である。]
【0016】
R
1は水素又はメチル基のいずれであってもよいが、好ましくはメチル基である。
【0017】
R
2としては、低粘度化の観点から、mが5〜16、nが4〜15であるものが好ましく、mが6〜15、nが6〜10であるものがより好ましく、mが7〜10、nが6〜9であるものが更に好ましい。重合鎖に含まれる上記一般式(1)で表される構造単位が2以上の場合、R
1及びR
2は構造単位同士で同一でも異なっていてもよい。
【0018】
重合鎖は、上記のとおり、上記一般式(1)で表される構造単位及び上記一般式(2)で表される構造単位を含むが、配合油の低粘度化の観点から、上記一般式(1)で表される構造単位を、重合鎖に含まれる構造単位の全量を基準として、20〜80質量%含むことが好ましく、20〜70質量%含むことがより好ましく、20〜50質量%含むことが更に好ましい。また、重合鎖は、省燃費性の観点から、上記一般式(2)で表される構造単位を、重合鎖に含まれる構造単位の全量を基準として、20〜80質量%含むことが好ましく、20〜70質量%含むことがより好ましく、50〜80質量%含むことが更に好ましい。また、重合鎖は、上記一般式(1)で表される構造単位と上記一般式(2)で表される構造単位とを合わせて、重合鎖に含まれる構造単位の全量を基準として、70質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことが更に好ましく、100質量%含むことが最も好ましい。
【0019】
重合鎖に含まれる上記一般式(2)で表される構造単位が2以上の場合、R
1及びR
3は構造単位同士で同一でも異なっていてもよい。R
3の異なる2種以上の構造単位が含まれる場合、ポリ(メタ)アクリレートの溶解性の観点から、R
3がメチル基である構造単位が、重合鎖に含まれる構造単位の全量を基準として、5〜50質量%含まれることが好ましく、10〜45質量%含まれることがより好ましく、20〜45質量%含まれることが更に好ましい。また、低温流動性の観点から、R
3が炭素数18のアルキル基である構造単位が、重合鎖に含まれる構造単位の全量を基準として、5〜50質量%含まれることが好ましく、10〜45質量%含まれることがより好ましく、20〜40質量%含まれることが更に好ましい。
【0020】
重合鎖は、上記一般式(1)で表される構造単位及び上記一般式(2)で表される構造単位のみを含んでいてもよく、あるいは、これら以外の構造単位を更に含んでいてもよい。また、重合鎖の末端は、特に制限されない。このような重合鎖の中でも、上記一般式(1)で表される構造単位及び上記一般式(2)で表される構造単位のみを含んでおり、末端が水素原子である重合鎖、すなわち下記一般式(4)で表される重合鎖であることが好ましい。
【0022】
式(4)中、R
1は水素又はメチル基を示し、R
4は、上記一般式(3)で表される基、又は直鎖若しくは炭素数5以下の分岐を有する炭素数1〜18のアルキル基を示し、nはMw及びMw/Mnが上記の条件を満たすように選ばれる整数である。nは、例えば40〜450の整数である。
【0023】
重量平均分子量Mwは、100,000未満であり、省燃費性の観点から、80,000以下であることが好ましく、70,000以下であることがより好ましく、60,000以下であることが更に好ましい。Mwの下限は特に制限されないが、Mwは例えば10,000以上である。
【0024】
数平均分子量Mnは、Mw/Mnが上記の条件を満たすように適宜選択される。Mnは、省燃費性の観点から、6,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、12,500以上であることが更に好ましい。Mnの上限は特に制限されないが、Mnは例えば60,000以下である。
【0025】
Mw/Mnは、1.6以下であるが、省燃費性の観点から、1.5以下であることが好ましく、1.4以下であることがより好ましく、1.3以下であることが更に好ましい。また、Mw/Mnは、省燃費性の観点から、1.0以上であることが好ましく、1.01以上であることがより好ましく、1.02以上であることが更に好ましい。
【0026】
なお、本発明でいう「重量平均分子量Mw」、「数平均分子量Mn」及び「重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mn」とは、GPC分析により得られるMw、Mn及びMw/Mn(ポリスチレン(標準試料)換算値)を意味する。具体的には、例えば以下のように測定される。
【0027】
溶剤としてテトラヒドロフランを使用し、希釈して試料濃度を2質量%とした溶液を調製する。その試料溶液を、GPC装置(Waters Alliance2695)を用いて分析を行う。溶剤の流速は1ml/min、分析可能分子量10,000から256,000のカラムを使用し、屈折率を検出器として分析を実施する。なお、分子量が明確なポリスチレン標準を用いてカラム保持時間と分子量との関係を求め、検量線を別途作成した上で、得られた保持時間から分子量を決定する。
【0028】
本実施形態に係るポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、重合試薬及び溶媒を含む混合溶液に開始剤を加え、所定の温度でアルキル(メタ)アクリレートを重合する方法が挙げられる。
【0029】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(5)で表されるアルキル(メタ)アクリレート及び下記一般式(6)で表されるアルキル(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0032】
式(5)及び(6)中、R
1は水素又はメチル基を示し、R
2は上記一般式(3)で表される基を示し、R
3は直鎖又は炭素数5以下の分岐を有する炭素数1〜18のアルキル基を示す。
【0033】
R
1はメチル基であることが好ましい。R
2としては、mが5〜16、nが4〜15であるものが好ましく、mが6〜15、nが6〜10であるものがより好ましく、mが7〜10、nが6〜9であるものが更に好ましい。
【0034】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、上記のとおり、上記一般式(5)で表されるアルキル(メタ)アクリレート及び上記一般式(6)で表されるアルキル(メタ)アクリレートを用いることができるが、上記一般式(5)で表されるアルキル(メタ)アクリレートの含有量が、アルキル(メタ)アクリレート全量基準で、20〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましく、20〜50質量%であることが更に好ましい。また、上記一般式(5)で表されるアルキル(メタ)アクリレートの含有量が、アルキル(メタ)アクリレート全量基準で、20〜80質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましく、50〜80質量%であることが更に好ましい。
【0035】
上記一般式(6)で表されるアルキル(メタ)アクリレートとしては、上記一般式(6)で表されるアルキル(メタ)アクリレートの1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができるが、2種以上を混合して用いることが好ましい。2種以上を混合して用いる場合、R
2がメチル基であるメチル(メタ)アクリレートの含有量が、アルキル(メタ)アクリレート全量基準で、5〜50質量%であることが好ましく、10〜45質量%であることがより好ましく、20〜45質量%であることが更に好ましい。また、R
2が炭素数18のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートの含有量が、アルキル(メタ)アクリレート全量基準で、5〜50質量%であることが好ましく、10〜45質量%であることがより好ましく、20〜40質量%であることが更に好ましい。
【0036】
重合試薬としては、例えば、クミルジチオ安息香酸、チオカルボニル基を含有する化合物を用いることができる。好ましい重合試薬としては、クミルジチオ安息香酸を例示することができる。
【0037】
溶媒としては、例えば、高度精製鉱油、アニソール、トルエンを用いることができる。好ましい溶媒としては、高度精製鉱油を例示することができる。
【0038】
開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメチルブチルニトリルを用いることができる。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリルを例示することができる。
【0039】
アルキル(メタ)アクリレートを重合する際の反応温度としては、70〜120℃であることが好ましく、80〜110℃であることがより好ましく、80〜120℃であることが更に好ましい。反応温度を上記範囲内にすることで、得られるポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤のMw/Mnが1.6以下となりやすくなる。例えば、反応温度が90〜100℃であるとMw/Mnが1.0〜1.2となる傾向にあり、反応温度が100〜110℃であるとMw/Mnが1.2〜1.4となる傾向にあり、反応温度が110〜120℃であるとMw/Mnが1.4〜1.6となる傾向にある。
【0040】
反応時間は、原料であるアルキル(メタ)アクリレート、重合試薬、溶媒及び開始剤の種類及び使用量、反応温度等の反応条件、目的とするポリ(メタ)アクリレートのMw及びMw/Mnに応じて適宜選定することができる。好ましい反応時間としては、例えば10〜14時間を例示することができる。
【0041】
アルキル(メタ)アクリレートの重合は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0042】
[第2実施形態:潤滑油添加剤]
本発明の第2実施形態に係る潤滑油添加剤は、上記一般式(1)で表される構造単位及び上記一般式(2)で表される構造単位を含む重合鎖を有し、重量平均分子量Mwが100,000未満であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが1.6以下であるポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を含有する。なお、本実施形態におけるポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤は、上記第1実施形態における粘度指数向上剤と同様であり、ここでは重複する説明を省略する。
【0043】
潤滑油添加剤は、上記のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤のみからなるものであってもよく、あるいは、当該粘度指数向上剤と他の添加剤との混合物(すなわち添加剤組成物)であってもよい。潤滑油添加剤が当該粘度指数向上剤と他の添加剤との混合物である場合、これらの混合割合は特に制限されず、用途に応じて適宜選定することができる。
【0044】
他の添加剤としては、上記のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤以外の粘度指数向上剤、酸化防止剤、摩耗防止剤(又は極圧剤)、腐食防止剤、防錆剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤、無灰摩擦調整剤等の添加剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
上記のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤以外の粘度指数向上剤としては、上記のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤以外のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤、ポリイソブテン系粘度指数向上剤、エチレン−プロピレン共重合体系粘度指数向上剤、スチレン−ブタジエン水添共重合体系粘度指数向上剤などが挙げられる。
【0046】
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、亜鉛系、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。
【0047】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2'−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4'−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、2,2'−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアリル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル−3−(3−メチル−5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。これらは二種以上を混合して使用してもよい。
【0048】
アミン系酸化防止剤としては、例えば、芳香族アミン化合物、アルキルジフェニルアミン、アルキルナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン等の潤滑油用として一般に使用されている公知のアミン系酸化防止剤が挙げられる。
【0049】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、又はイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0050】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、又は多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0051】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、又はβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0052】
消泡剤としては、例えば、25℃における動粘度が1,000〜100,000mm
2/sのシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリチレートとo−ヒドロキシベンジルアルコール等が挙げられる。
【0053】
無灰摩擦調整剤としては、潤滑油用の無灰摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル等の無灰摩擦調整剤等が挙げられる。また特開2009−286831号公報に記載の窒素含有化合物及びその酸変性誘導体等、国際公開第2005/037967号パンフレットに例示されている各種無灰摩擦調整剤を用いることもできる。
【0054】
また、本実施形態に係る潤滑油添加剤は、溶剤を更に含有していてもよい。溶剤としては、高度精製鉱油、溶剤精製鉱油、合成油を用いることができる。これらの中でも、高度精製鉱油を用いることが好ましい。潤滑油添加剤が溶剤を含有する場合、溶剤の含有量は、潤滑油添加剤の全量を基準として、好ましくは5〜75質量%、より好ましくは30〜60質量%である。
【0055】
[第3実施形態:潤滑油組成物]
第3実施形態に係る潤滑油組成物は、潤滑油基油と、上記一般式(1)で表される構造単位及び上記一般式(2)で表される構造単位を含む重合鎖を有し、重量平均分子量Mwが100,000未満であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが1.6以下であるポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤と、を含有する。ここで、本実施形態に係る潤滑油組成物には、潤滑油基油と上記第2の実施形態に係る潤滑油添加剤とを含有する態様が包含される。本実施形態におけるポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤は上記第1実施形態及び第2実施形態におけるポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤と同様であり、また、潤滑油組成物に含まれ得るその他の添加剤及び溶剤は第2実施形態におけるその他の添加剤及び溶剤と同様であり、ここでは重複する説明を省略する。
【0056】
潤滑油基油としては、特に制限されず、通常の潤滑油に使用される潤滑油基油を使用できる。具体的には、鉱油系潤滑油基油、合成油系潤滑油基油又はこれらの中から選ばれる2種以上の潤滑油基油を任意の割合で混合した混合物等を使用できる。
【0057】
鉱油系潤滑油基油としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいはワックス異性化鉱油、GTLワックス(ガストゥリキッドワックス)を異性化する手法で製造される基油等が挙げられる。
【0058】
合成油系潤滑油としては、例えば、ポリブテン又はその水素化物;1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフィン又はその水素化物;ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のジエステル;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;アルキルナフタレン、アルキルベンゼン等の芳香族系合成油又はこれらの混合物等が例示できる。
【0059】
潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは2.5〜10.0mm
2/s、より好ましくは3.0〜8.0mm
2/s、更に好ましくは3.5〜6.0mm
2/sである。また、潤滑油基油の粘度指数は、好ましくは90〜165、より好ましくは100〜155、更に好ましくは120〜150である。
【0060】
潤滑油基油のクロマト分析による飽和分は、第1実施形態に係るポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤等の添加剤の効果を発揮しやすくするため、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0061】
第1実施形態に係るポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤の含有量は、潤滑油組成物全量を基準として、好ましくは0.1〜20.0質量%、より好ましくは0.5〜15.0質量%、更に好ましくは1.0〜10.0質量%である。当該含有量が上記下限値以上であると、十分な添加効果を得られやすくなり、一方、当該含有量が上記上限値以下であると、せん断安定性が高くなり、燃費持続性が向上する。
【0062】
潤滑油組成物の100℃における動粘度は、好ましくは2.0〜16.3mm
2/s、より好ましくは2.5〜12.5mm
2/s、更に好ましくは3.0〜10.0mm
2/sである。100℃における動粘度が上記下限値以上であると、潤滑性を確保しやすくなり、一方、100℃における動粘度が上記上限値以下であると、より省燃費性が向上する。なお、本発明での100℃における動粘度は、JIS K−2283−1993に規定される100℃における動粘度を意味する。
【0063】
潤滑油組成物の粘度指数は、好ましくは130〜250、より好ましくは140〜240、更に好ましくは160〜230である。粘度指数が上記下限値以上であると、HTHS粘度を維持しながら、より省燃費性を向上させることができ、また低温粘度を低下させやすくなる。一方、粘度指数が上記上限値以下であると、低温流動性、添加剤の溶解性、及びシール材料との適合性を確保することができる。なお、本発明での粘度指数は、JIS K 2283−1993に規定される粘度指数を意味する。
【0064】
潤滑油組成物の−40℃におけるBF粘度は、好ましくは20,000mPa・s以下、より好ましくは18,000mPa・s以下、更に好ましくは16,000mPa・s以下である。−40℃におけるBF粘度が上記上限値以下であると、低温流動性に優れ、低温時に潤滑油が流動しやすくなる。なお、本発明での−40℃におけるBF粘度は、JPI−5S−26−99に規定される−40℃におけるBF粘度を意味する。
【0065】
以上説明した第1実施形態に係る粘度指数向上剤、第2実施形態に係る潤滑油添加剤、及び第3実施形態に係る潤滑油組成物は、内燃機関用潤滑油、駆動系潤滑油等の幅広い分野で使用することができるが、特に、駆動系潤滑油の分野において有用である。この場合の駆動装置は自動変速機(AT)、無段自動変速機(CVT)および有段変速機(TM)のいずれであってもよい。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0067】
[実施例1]
下記の条件(「合成条件1」とする)でポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を合成した。
【0068】
錨型金属製攪拌翼(真空シール付)、ジムロート冷却器、窒素導入用3方コック及びサンプル導入口を装着した300mlの5口セパラブルフラスコに、メチルメタクリレート(式(6)中のR
1及びR
3が共にメチル基である化合物。以下「C1−MA」と表記する。)12g、2−オクチルドデシルメタクリレート(式(5)中のR
1がメチル基、R
2が式(3)でm=9、n=6である化合物。以下「A2」と表記する。)9g、ステアリルメタクリレート(式(6)中のR
1がメチル基、R
3がステアリル基(炭素数18の直鎖アルキル基)である化合物。以下「C18−MA」と表記する。)9g、クミルジチオ安息香酸(CDTBA)0.075g、及び溶媒として高度精製鉱油30gを投入し、攪拌下で均一溶液とした。本溶液を氷浴にて0℃まで冷却し、ダイヤフラムポンプを用いて反応系の真空脱気/窒素パージを5回実施した。さらに、窒素フロー下でサンプル導入口よりラジカル開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.020gを投入した後、窒素雰囲気下にて溶液温度110℃で12時間重合を実施し、ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を含有した溶液を得た。
【0069】
得られたポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤について、GPC分析により、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを測定した。その結果、重量平均分子量Mwは84,000、数平均分子量Mnは53,000、Mw/Mnは1.58であった。GPC分析の手順は以下のとおりである。
【0070】
溶剤としてテトラヒドロフランを使用し、希釈して試料濃度を2質量%とした溶液を調製した。その試料溶液を、GPC装置(Waters Alliance2695)を用いて分析を行った。溶剤の流速は1ml/min、分析可能分子量10,000から256,000のカラムを使用し、屈折率を検出器として分析を実施した。なお、分子量が明確なポリスチレン標準を用いてカラム保持時間と分子量との関係を求め、検量線を別途作成した上で、得られた保持時間から分子量を決定した。
【0071】
[実施例2]
下記の条件(「合成条件2」とする)でポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を合成した。
【0072】
錨型金属製攪拌翼(真空シール付)、ジムロート冷却器、窒素導入用3方コック及びサンプル導入口を装着した300mlの5口セパラブルフラスコにメチルメタクリレート(C1−MA)12g、2−オクチルドデシルメタクリレート(A2)9g、ステアリルメタクリレート(C18−MA)9g、クミルジチオ安息香酸(CDTBA)0.075g、及び溶媒として高度精製鉱油30gを投入し、攪拌下で均一溶液とした。本溶液を氷浴にて0℃まで冷却し、ダイヤフラムポンプを用いて反応系の真空脱気/窒素パージを5回実施した。さらに、窒素フロー下でサンプル導入口よりラジカル開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.018gを投入した後、窒素雰囲気下にて溶液温度100℃で12時間重合を実施し、ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を含有した溶液を得た。
【0073】
得られたポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤について、実施例1と同様にGPC分析を行った結果、重量平均分子量Mwは77,000、数平均分子量Mnは59,000、Mw/Mnは1.32であった。
【0074】
[実施例3]
下記の条件(「合成条件3」とする)でポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を合成した。
【0075】
錨型金属製攪拌翼(真空シール付)、ジムロート冷却器、窒素導入用3方コック及びサンプル導入口を装着した300mlの5口セパラブルフラスコに、メチルメタクリレート(C1−MA)12g、2−オクチルドデシルメタクリレート(A2)9g、ステアリルメタクリレート(C18−MA)9g、クミルジチオ安息香酸(CDTBA)0.075g、及び溶媒として高度精製鉱油30gを投入し、攪拌下で均一溶液とした。本溶液を氷浴にて0℃まで冷却し、ダイヤフラムポンプを用いて反応系の真空脱気/窒素パージを5回実施した。さらに、窒素フロー下でサンプル導入口よりラジカル開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.014gを投入した後、窒素雰囲気下にて溶液温度90℃で12時間重合を実施し、ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を含有した溶液を得た。
【0076】
得られたポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤について、実施例1と同様にGPC分析を行った結果、重量平均分子量Mwは88,000、数平均分子量Mnは79,000、Mw/Mnは1.11であった。
【0077】
[比較例3]
下記の条件(「合成条件4」とする)でポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を合成した。
【0078】
撹拌羽(真空シール付)、ジムロート冷却器、窒素導入用3方コック及びサンプル導入用滴下ロートを装着した300mlの4口の反応フラスコに、溶媒として高度精製鉱油30gを投入し、85℃の油浴内で窒素パージを実施しながら1時間撹拌した。サンプル導入用滴下ロートに、原料モノマーとしてメチルメタクリレート(C1−MA)12g、2−オクチルドデシルメタクリレート(A2)9g及びステアリルメタクリレート(C18−MA)9g、ラジカル開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.021gを混合した原料を投入し、この原料を70分かけて反応フラスコ内に滴下した。その後、窒素フロー下にて85℃で撹拌を保持して8時間重合を実施し、ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を含有した溶液を得た。その後、130℃、1mmHgで3時間真空蒸留を実施して、上記溶液から未反応モノマーを除去した。
【0079】
得られたポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤について、実施例1と同様にGPC分析を行った結果、重量平均分子量Mwは98,000、数平均分子量Mnは47,000、Mw/Mnは2.1であった。
【0080】
[実施例4〜19、比較例1〜2、4〜7]
原料の配合量を表1、3、5、7、9に示すとおりに変更し、それ以外は上記の合成条件1〜4のいずれかと同様にして、ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を合成した。なお、表中、C12−MAは式(6)中のR
1がメチル基、R
2がドデシル基(炭素数12の直鎖アルキル基)である化合物、また、A1:m=7、n=6等は式(5)中のR
1がメチル基、R
2が式(3)でm=7、n=6である化合物等をそれぞれ表す。得られたポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤のMw、Mn及びMw/Mnを表2、4、6、8、10に示す。
【0081】
<潤滑油組成物の調製>
実施例1〜19及び比較例1〜7でそれぞれ得られたポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤と、金属系(TBN300mgKOH/gのカルシウムスルホネート系)清浄剤、無灰分残剤(コハク酸イミド)、摩擦調整剤(オレイルアミド)、摩耗防止剤(リン酸)、酸化防止剤(ジフェニルアミン)、金属不活性化剤(チアジアゾール)、及び硫黄系添加剤(硫化エステル)を含む性能添加剤と、高度精製鉱油(GroupII基油、100℃における動粘度:3.3mm
2/s、VI:110)とを、表2、4、6、8、10に示す割合で配合し、潤滑油組成物を調製した。
【0082】
<潤滑油組成物の評価>
実施例1〜19及び比較例1〜7の各潤滑油組成物について、100℃における動粘度、粘度指数、及び−40℃におけるBF粘度を、それぞれ下記に準拠した方法により測定した。結果を表2、4、6、8、10に示す。
動粘度:JIS K−2283−1993
粘度指数:JIS K 2283−1993
BF粘度:JPI−5S−26−99
【0083】
また、実施例1〜19及び比較例1〜7の各潤滑油組成物の摩擦特性を、二円筒転がりすべり摩擦試験機を用いて、一定荷重条件下での摩擦係数により評価した。具体的には、試験温度80℃、荷重142N、面圧0.48GPa、周速1.0m/s、すべり率5.1%の条件で、試験開始から10分間の摩擦係数を平均化した。結果を表2、4、6、8、10に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
【表5】
【0089】
【表6】
【0090】
【表7】
【0091】
【表8】
【0092】
【表9】
【0093】
【表10】