特許第6043247号(P6043247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6043247制御回路、共振回路、電子機器、制御方法、制御プログラム、及び半導体素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043247
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】制御回路、共振回路、電子機器、制御方法、制御プログラム、及び半導体素子
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20161206BHJP
   H03J 3/20 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   G06K19/07 260
   H03J3/20
【請求項の数】28
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-146252(P2013-146252)
(22)【出願日】2013年7月12日
(65)【公開番号】特開2015-18472(P2015-18472A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(74)【代理人】
【識別番号】100150898
【弁理士】
【氏名又は名称】祐成 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】管野 正喜
【審査官】 甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−222249(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/027318(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00−19/18
H03J 3/00− 7/32
G06K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変の直流電圧からなる制御電圧を出力する制御電圧出力部と、
上記制御電圧を印加することによって静電容量値を可変する可変容量素子と、
上記可変容量素子を含む回路の特性を取得する検出部とを備え、
上記検出部は、上記制御電圧が上記可変容量素子に印加された後に、上記回路の特性の測定値を取得するまでの待ち時間を有しており、該待ち時間は、上記制御電圧に応じて複数設定されることを特徴とする可変容量素子の制御回路。
【請求項2】
上記待ち時間は、上記制御電圧の変位量に応じて変化させることを特徴とする請求項1記載の制御回路。
【請求項3】
上記待ち時間は、上記制御電圧の変位の方向に応じて変化させることを特徴とする請求項1記載の制御回路。
【請求項4】
上記待ち時間は、上記制御電圧の変位量及び上記制御電圧の変位の方向に応じて変化させることを特徴とする請求項1記載の制御回路。
【請求項5】
上記待ち時間は、上記制御電圧の変位量に比例させることを特徴とする請求項2又は4記載の制御回路。
【請求項6】
上記制御電圧を減少させる場合の待ち時間は、上記制御電圧を増加させる場合の待ち時間よりも短く設定されることを特徴とする請求項3又は4記載の制御回路。
【請求項7】
上記制御電圧は、交流信号阻止用インピーダンス素子を介して上記可変容量素子に接続されることを特徴とする請求項1記載の制御回路。
【請求項8】
上記回路の特性は、該回路の共振周波数又はインピーダンスであることを特徴とする請求項1記載の制御回路。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか1項記載の制御回路と、該制御回路に接続された共振コイルとを備える共振回路。
【請求項10】
請求項1〜8いずれか1項記載の制御回路を備える電子機器。
【請求項11】
可変の直流電圧を出力する制御電圧出力部によって、制御電圧を印加して可変容量素子の静電容量値を設定し、
上記可変容量素子を含む回路の特性を検出する検出部によって、上記可変容量素子を含む回路の特性を測定し、
上記検出部は、上記制御電圧が上記可変容量素子に印加された後に、上記回路の特性の測定値を取得するまでの待ち時間を有しており、該待ち時間は、上記制御電圧に応じて複数設定されることを特徴とする可変容量素子の制御方法。
【請求項12】
上記待ち時間は、上記制御電圧の変位量に応じて変化させることを特徴とする請求項11記載の制御方法。
【請求項13】
上記待ち時間は、上記制御電圧の変位の方向に応じて変化させることを特徴とする請求項11記載の制御方法。
【請求項14】
上記待ち時間は、上記制御電圧の変位量及び上記制御電圧の変位の方向に応じて変化させることを特徴とする請求項11記載の制御方法。
【請求項15】
上記待ち時間は、上記制御電圧の変位量に比例させることを特徴とする請求項12又は14記載の制御方法。
【請求項16】
上記制御電圧を減少させる場合の待ち時間は、上記制御電圧を増加させる場合の待ち時間よりも短く設定されることを特徴とする請求項13又は14記載の制御方法。
【請求項17】
上記制御電圧は、交流信号阻止用インピーダンス素子を介して上記可変容量素子に接続されることを特徴とする請求項11記載の制御方法。
【請求項18】
上記回路の特性は、該回路の共振周波数又はインピーダンスであることを特徴とする請求項11記載の制御方法。
【請求項19】
プログラムを格納する記憶部と、格納されたプログラムを展開して実行する処理部とを有する半導体素子で実行するステップを有する制御プログラムであって、可変容量素子の静電容量を制御する制御プログラムにおいて、
可変の直流電圧を出力する制御電圧出力部によって、制御電圧を印加して可変容量素子の静電容量値を設定するステップと、
上記可変容量素子を含む回路の特性を検出する検出部によって、上記可変容量素子を含む回路の特性を取得するステップとを有し、
上記検出部は、上記制御電圧が上記可変容量素子に印加された後に、上記回路の特性の測定値を取得するまでの待ち時間を有しており、該待ち時間は、上記制御電圧に応じて複数設定されることを特徴とする制御プログラム。
【請求項20】
上記待ち時間は、上記制御電圧の変位量に応じて変化させることを特徴とする請求項19記載の制御プログラム。
【請求項21】
上記待ち時間は、上記制御電圧の変位の方向に応じて変化させることを特徴とする請求項19記載の制御プログラム。
【請求項22】
上記待ち時間は、上記制御電圧の変位量及び上記制御電圧の変位の方向に応じて変化させることを特徴とする請求項19記載の制御プログラム。
【請求項23】
上記待ち時間は、上記制御電圧の変位量に比例させることを特徴とする請求項20又は22記載の制御プログラム。
【請求項24】
上記制御電圧を減少させる場合の待ち時間は、上記制御電圧を増加させる場合の待ち時間よりも短く設定されることを特徴とする請求項21又は22記載の制御プログラム。
【請求項25】
上記制御電圧は、交流信号阻止用インピーダンス素子を介して上記可変容量素子に接続されることを特徴とする請求項19記載の制御プログラム。
【請求項26】
上記回路の特性は、該回路の共振周波数又はインピーダンスであることを特徴とする請求項19記載の制御プログラム。
【請求項27】
請求項19〜26いずれか1項記載の制御プログラムを格納する記憶部を備える半導体素子。
【請求項28】
上記記憶部に格納された制御プログラムをロードして実行する処理部を更に備える請求項27記載の半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を印加することによって静電容量値を可変することができる可変容量素子の制御回路、その制御回路を含む共振回路、電子機器、可変容量素子の制御方法、制御プログラム、及びその制御プログラムを有する半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導を利用した非接触通信技術は、FeliCa(登録商標)、Mifare(登録商標)やNFC(Near Field Communication)等のICカードに盛んに適用されるようになってきた。近年では、Qiフォーマットに代表されるような非接触充電(給電)技術にも適用され、広がりを見せている。
【0003】
非接触ICカードとリーダライタ間のような非接触通信の場合であっても、比較的大電力の送電・受電を行う非接触充電の場合であっても、その信号伝送及び電力伝送には、電磁結合や磁気共鳴現象を利用する。これらの結合方式においては、送信側及び受信側に有する共振回路の共振周波数を合わせることが伝送エラーの低減や伝送効率の改善に直結することになる。一方で、送受信側それぞれの共振回路の共振周波数は、さまざまな要因でばらつきを生じ、変動する。共振回路に用いるコンデンサの静電容量値やコイルのインダクタンス値は、製造上の初期ばらつきを有しており、動作時の発熱や周囲温度の変化にしたがう温度特性を有しておりばらつき範囲は増大する。さらには、使用時において、送受信を行う機器に搭載される共振回路の配置条件によっても共振周波数は変動し、送信側、受信側の共振回路の相対的位置関係も伝送条件に影響を与える。
【0004】
共振回路を構成する素子の初期的ばらつきに関しては、出荷時等において個々に共振周波数の調整を行うことで温度特性を含めて所定の範囲内に設定することが可能であるが、使用時における共振周波数の変動についてまで考慮に入れて回路設計を行うことは非常に困難である。また、素子の初期ばらつきについては一定範囲で認められるものの、初期ばらつきを極端に制限することは、材料コストの高騰、製造工程の複雑さをもたらし好ましくない。
【0005】
そこで、共振回路の共振周波数のばらつきを補正し、かつ使用時における共振周波数の変動の影響を低減させるために、送信側又は受信側でそれぞれ共振周波数を自動調整し、あるいは送受信側双方において共振周波数を自動的に調整することが検討されている。
【0006】
たとえば、特許文献に1においては、共振回路に複数の共振コンデンサを設けて、所望の共振周波数に合わせるように、半導体スイッチを用いて静電容量値を調整する方法が記載されている。また、特許文献2には、共振回路を構成する共振コンデンサに強誘電体薄膜を備えた可変容量コンデンサを用いることで外部直流バイアスによって、静電容量値を制御して所望の共振周波数を得る方法が記載されている。また、特許文献2には、共振回路の共振周波数の同調検出に共振コイルの入出力信号の位相差を利用することによって、アナログ信号のピーク検出を行うことなく、容易に共振周波数を調整する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−160312号公報
【特許文献2】特開2012−099968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されている技術では離散的に共振周波数を調整しなければならず、共振回路を構成する要素の初期ばらつき等によっては、所望の共振周波数に調整することが困難な場合がある。
【0009】
特許文献2に記載されている技術を用いることによって、共振周波数を連続的に可変することができるので、所望の共振周波数を得やすくなるとのメリットがある。しかしながら、特許文献2に記載された技術では、共振周波数の目標値を探索するのに、可変容量コンデンサに印加する制御電圧のステップ電圧幅を固定にしてステップ状に上げていくため、ステップ電圧幅のステップ数を細かくするほど、精度よく目標値を得ることができる一方で、調整時間はステップ数に比例するため、調整時間が長くなるとの問題を有している。
【0010】
制御電圧を固定ステップ幅でステップ状に上げていく逐次探索法に対して、最初は大きいステップ幅で制御電圧を変化させ、ステップごとに制御電圧の範囲を順次半分にして目標値に追い込んでいく2分法が知られている。2分法を採用することによって、共振周波数の測定時間、調整時間が短縮されることが期待される。
【0011】
ここで、共振周波数を調整することができるような可変容量コンデンサを用いた共振回路では、可変容量コンデンサに送受信のための交流信号とは別に直流バイアスを印加して静電容量値を変える必要がある。交流信号と分離して直流電圧を印加するためには、可変容量コンデンサの端子に高抵抗の交流阻止用のバイアス抵抗を用いる必要がある。共振周波数を調整するために、可変容量コンデンサに直流の制御電圧を印加しようとすると、可変容量コンデンサの有する静電容量値と交流阻止用のバイアス抵抗とで大きな時定数を有することになる。可変容量コンデンサに印加される制御電圧が安定する前に共振周波数を測定すると、正しい値を測定することができないので、時定数よりも十分長い時間の待ち時間後に共振周波数を測定する必要がある。待ち時間を十分に長くとることによって、正確な共振周波数の測定を行える一方で、ステップ数にしたがって目標値の収束までの時間が長くなってしまうとの問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、可変容量コンデンサの制御電圧印加時の時定数を考慮しても、短時間で回路の測定、調整を行うことができる制御回路、共振回路、電子機器、制御方法、制御プログラム及び半導体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するための手段として、本発明の一実施の形態に係る可変容量素子の制御回路は、可変の直流電圧からなる制御電圧を出力する制御電圧出力部と、制御電圧を印加することによって静電容量値を可変する可変容量素子と、可変容量素子を含む回路の特性を取得する検出部とを備える。そして、検出部は、制御電圧が可変容量素子に印加された後に、回路の特性の測定値を取得するまでの待ち時間を有しており、待ち時間は、制御電圧に応じて複数設定される。
【0014】
また、本発明の一実施の形態に係る共振回路は、可変の直流電圧からなる制御電圧を出力する制御電圧出力部と、制御電圧を印加することによって静電容量値を可変する可変容量素子と、可変容量素子を含む回路の特性を取得する検出部とを有する可変容量素子の制御回路と制御回路に接続された共振コイルとを備える。そして、検出部は、制御電圧が可変容量素子に印加された後に、回路の特性の測定値を取得するまでの待ち時間を有しており、待ち時間は、制御電圧に応じて複数設定される。
【0015】
また、本発明の一実施の形態に係る電子機器は、可変の直流電圧からなる制御電圧を出力する制御電圧出力部と、制御電圧を印加することによって静電容量値を可変する可変容量素子と、可変容量素子を含む回路の特性を取得する検出部とを有する可変容量素子の制御回路を備える。そして、検出部は、制御電圧が可変容量素子に印加された後に、回路の特性の測定値を取得するまでの待ち時間を有しており、待ち時間は、制御電圧に応じて複数設定される。
【0016】
また、本発明の一実施の形態に係る可変容量素子の制御方法は、可変の直流電圧を出力する制御電圧出力部によって、制御電圧を印加して可変容量素子の静電容量値を設定し、可変容量素子を含む回路の特性を検出する検出部によって、可変容量素子を含む回路の特性を取得する。そして、検出部は、制御電圧が可変容量素子に印加された後に、回路の特性の測定値を取得するまでの待ち時間を有しており、待ち時間は、制御電圧に応じて複数設定される。
【0017】
また、本発明の一実施の形態に係る可変容量素子の制御プログラムは、プログラムを格納する記憶部と、格納されたプログラムを展開して実行する処理部とを有する半導体素子で実行するステップを有する制御プログラムである。この制御プログラムは、可変の直流電圧を出力する制御電圧出力部によって、制御電圧を印加して可変容量素子の静電容量値を設定するステップと、可変容量素子を含む回路の特性を検出する検出部によって、可変容量素子を含む回路の特性を取得するステップとを有する。そして、検出部は、制御電圧が可変容量素子に印加された後に、回路の特性の測定値を取得するまでの待ち時間を有しており、待ち時間は、制御電圧に応じて複数設定される。
【0018】
また、本発明の一実施の形態に係る半導体素子は、可変容量素子の制御プログラムを格納する記憶部を備える。記憶部に格納された制御プログラムを実行する処理部を更に備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、制御電圧が可変容量素子に印加された後に、回路の特性の測定値を取得するまでの待ち時間が、制御電圧に応じて複数設定されるので、短い待ち時間で回路の特性の測定値を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明が適用された一実施の形態に係る可変容量コンデンサの制御回路の一例を示すブロック図である。
図2】(A)は、可変容量コンデンサの回路構成の一例を示す回路図である。(B)は、各端子に接続された信号源を含む可変容量コンデンサの回路図の一例である。
図3】2分法と逐次探索法で目標値の測定時間を比較したグラフである。
図4】(A)は、逐次探索法を用いて目標値の探索を行うのに何回のステップを要するのかを示すグラフであり、(B)は2分法を用いて目標値の探索を行うのに何回のステップを要するのかを示すグラフである。
図5図2(B)の回路において可変容量コンデンサに流れる電流を測定した波形グラフであり、可変容量コンデンサの直流入力端子に印加する制御電圧のステップ電圧幅を変化させた場合に一定の値に落ち着くまでの時間を測定したグラフである。
図6図2(B)の回路で、時定数を図5の2倍に設定した場合において可変容量コンデンサに流れる電流を測定した波形グラフであり、可変容量コンデンサの直流入力端子に印加する制御電圧のステップ電圧幅を変化させた場合に一定の値に落ち着くまでの時間を測定したグラフである。
図7】(A)は、改良された2分法を用いて目標値を探索する場合と、逐次探索法を用いて同一の目標値を探索する場合の測定時間を比較したグラフである。(B)は、(A)図の改良された2分法(2分法1)と、さらに改良された2分法(2分法2)をそれぞれ用いて同一の目標値を探索する場合の測定時間を比較したグラフである。
図8】制御電圧の立下り時と立上り時において時定数が異なることを示す波形グラフである。
図9】制御回路の動作を実行するためのフローチャートの一例であり、初期設定を行うフローチャートである。
図10】制御回路の動作を実行するためのフローチャートの一例であり、図9のフローチャートで初期設定された制御回路を改良2分法で目標値の探索を行うフローチャートである。
図11】改良された2分法と、通常の2分法とで目標値に到達するまでの測定時間を比較して示すグラフである。(A)は、通常の2分法と、改良された2分法(2分法1)との比較であり、2分法1は、最大ステップ電圧幅を制御電圧の最大値の1/2とし、その際の待ち時間を他のステップ電圧幅に対しても一律に設定したものである。(B)は、改良2分法2として、ステップ電圧幅に比例した待ち時間を設定したものである。(C)は、改良2分法3として、ステップ電圧幅に比例し、かつ制御電圧の立下り時の待ち時間を、立上り時の待ち時間よりも短く設定したものである。
図12】非接触通信システムの一例を示すブロック図である。
図13】非接触充電システムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることはもちろんである。
【0022】
説明は、以下の順序にしたがって行う。
1.共振周波数を制御する制御回路の構成例
2.制御回路の動作原理
3.制御回路の動作手順
4.制御回路の動作例
5.電子機器の構成例
【0023】
1.共振周波数を制御する制御回路の構成例
図1に示すように、本発明が適用された一実施の形態に係る共振周波数を制御する制御回路(以下、単に制御回路という。)1は、共振コンデンサを構成する可変容量コンデンサ(VC1)2と、可変容量コンデンサ(VC1)2に並列に接続された共振コイル(L1)4と、共振コイル(L1)4に直列に接続された直列共振コンデンサ(C1)3とを有する共振部と、可変容量コンデンサ(VC1)2に制御電圧(Vcont)19を印加するデジタル−アナログコンバータ(以下、単にDACという。)11と、共振部の入出力信号をそれぞれ入力して位相差を検出するフェーズデテクタ12と、フェーズデテクタ12が検出した位相差信号を構成する出力信号(Phase_det)17をデジタル信号に変換するアナログ−デジタルコンバータ(以下、単にA/DCという。)13と、出力信号(Phase_det)17のデジタル値を所定の目標値(Target)18と比較する比較部14とを備える。
【0024】
制御回路1は、さらに、比較部14の比較結果に基づいて、DAC11を介して可変容量コンデンサ(VC1)2に印加する次の制御電圧19を設定することをDAC11に指令する制御部10を備える。制御部10は、DAC11に対して制御電圧19の電圧値を設定する場合には、所定の待ち時間を経てから出力するように指令する。制御部10は、好ましくは、演算処理装置となる処理部10aを有し、処理部10aは、メモリ10bに記憶されたプログラムの各ステップを読み込んで実行する。処理部10a及びメモリ10bは、一体として構成された半導体素子で実現されてもよく、処理部10aをMPUやマイクロコントローラ等で実現し、メモリ10bをROM、RAM、磁気記憶装置、あるいはこれらの組み合わせにより実現してもよい。
【0025】
なお、制御回路1の共振回路への信号入力には、コイル(Lf)5とコンデンサ(Cf)6とからなるフィルタ回路により、所定の周波数帯域のみを通過させるようにするのが好ましい。
【0026】
制御回路1の信号入力端子(TX)8から入力された周波数f0を有する交流信号は、直列共振コンデンサ(C1)と可変容量コンデンサ(VC1)と共振コイル(L1)4とを含む共振部に入力され、この共振部の共振周波数f1が入力信号の周波数f0と一致するように、DAC11から出力される制御電圧(Vcont)19が調整される。周波数f0と周波数f1との周波数のずれの測定は、フェーズデテクタ12を用いて行う。フェーズデテクタ12に入力される信号は、共振部に入力される入力信号(REF)15及び共振部に流れる電流信号からなる出力信号(MONITOR)16である。なお、出力信号(MONITOR)16は、共振部に接続された電流検出抵抗(R6)によって電圧信号に変換して検出される。フェーズデテクタ12は、入力信号(REF)15と、出力信号(MONITOR)16との位相差に応じた出力信号(Phase_det)17を出力するので、出力信号(Phase_det)17と目標値(Target)18とを比較して一致するか、比較した値がA/DC13の分解能以下となるまで、DAC11から出力される制御電圧(Vcont)19の値を調整する。
【0027】
図2には、可変容量コンデンサ(VC1)2の構成例を示す。図2(A)に示すように、可変容量コンデンサ(VC1)2は、2つの交流入力端子(AC1,AC2)20a,20b間に直列に接続された4つの可変容量素子(C2〜C5)22〜25を有する。可変容量素子の直列数は、回路上必要となる耐圧に応じて適切に選択され、4つより少なくてもよく、4つよりも多くてもよい。また、単一の可変容量素子で構成されていてもよい。それぞれの可変容量素子(C2〜C5)22〜25は、一般的には同一の静電容量値を有するが、これに限定されないのはいうまでもない。
【0028】
可変容量コンデンサ(VC1)2は、たとえばチタン酸バリウム等の強誘電体薄膜に金属電極を蒸着形成したものを複数積層することによって製造される。
【0029】
可変容量コンデンサ(VC1)は、各可変容量素子(C2〜C5)22〜25に直流バイアスを印加することによって、静電容量値を可変することができる。直流バイアス電圧は、直流入力端子(DC1,DC2)間に印加される。ここで、各可変容量素子(C2〜C5)22〜25の両端電極には、同一の直流バイアス電圧を印加すると電極間でショートするため直接印加することはできない。可変容量素子(C2〜C5)22〜25に印加されている交流信号の周波数に対応する可変容量素子のインピーダンスに比べて十分大きなインピーダンスとなるようなインピーダンス素子を介して、可変容量素子の両端電極に直流バイアス電圧を印加する。より具体的には、直流入力端子(DC1,DC2)は、それぞれ高抵抗(R2,R1)27,26を介して、可変容量素子(C2)22の両端電極に接続される。同様に、直流入力端子(DC1,DC2)は、高抵抗(R2,R3)27,28を介して可変容量素子(C3)23の両端電極に接続され、高抵抗(R4,R3)29,28を介して、可変容量素子(C4)24の両端電極に接続され、高抵抗(R4,R5)29,30を介して、可変容量素子(C5)25の両端電極に接続される。このように接続することによって、すべての可変容量素子(C2〜C5)22〜25の両端電極には、同一の直流バイアス電圧が印加される。
【0030】
図2(B)に示すように、可変容量コンデンサ(VC1)2の交流入力端子(AC1,AC2)20a,20bには、交流信号源(VAC)31が接続される。可変容量コンデンサ(VC1)に流れる電流を測定するために、交流入力端子(AC2)20bと交流信号源(VAC)31との間に電流検出抵抗(R6)7を接続すればよい。なお、抵抗(R8)32は、交流信号源(VAC)31の出力インピーダンスである。可変容量コンデンサ(VC1)2の直流入力端子(DC1,DC2)21a,21bには、可変の直流バイアス電圧を出力する制御電圧(Vcont)33が接続される。図2(B)においては、直流入力端子(DC1)21aにプラス電圧を、直流入力端子(DC2)21bにマイナス電圧を印加するようにしているが、可変容量コンデンサには極性がないので、逆の接続としてもよいのはいうまでもなく、応用回路に応じて設定することができる。
【0031】
上述においては、非接触通信等に搭載される、可変容量コンデンサを共振コンデンサに用いた共振回路の共振周波数の制御回路の構成例について説明したが、交流阻止抵抗を介して可変容量コンデンサの静電容量値を制御電圧によって制御し、可変容量コンデンサを含む回路の特性を調整する他の制御回路に用いることができるのはいうまでもない。他の回路の制御回路として用いる場合には、検出すべき特性値は、共振周波数であってもよく、回路インピーダンスであってもよく、他の回路特性であってもよい。また、検出すべき回路特性に合わせて、検出回路の構成を選択し、構成することができる。
【0032】
2.制御回路の動作原理
(1)2分法の動作原理
図3には、制御電圧の目標値を探索する場合に、2分法を用いた場合と、逐次探索法を用いた場合との測定時間の違いを概念的に示す。図3では、2.5Vと3Vの間に目標値がある場合の事例を示す。破線で示された逐次探索法による場合では、15単位の時間(相対的時間単位)を要するのに対して、2分法を用いることによって、5単位時間と、逐次探索法の場合の1/3の時間で目標値の探索が可能であることが示される。
【0033】
図3のように目標値が2.7V付近にある場合には、2分法では、以下のようにして目標値の探索を行う。
【0034】
目標値が、最大電圧3Vの1/2である1.5Vよりも高いか低いかを判定して、高い場合には、目標値が1.5Vから3Vの範囲にあるとして、次の判定範囲にうつる。次の判定範囲は、1.5Vから2.25V(=1.5V+(3V−1.5V)/2)の範囲であり、目標値が2.25Vよりも高いか低いかを判定する。目標値が2.25Vよりも高いと判定した場合には、目標値が2.25Vから2.625V(=2.25V+(3V−2.25V)/2)の範囲にあり、2.625Vよりも高いか低いかを判定する。目標値が2.625Vよりも高い場合には、次の判定範囲は、2.625Vから2.8125V(=2.625V+(3V−2.625V)/2)の範囲であり、目標値が2.8125Vから3Vの範囲内にあると判定する。
【0035】
このように、制御電圧のステップごとに、探索する制御電圧の範囲を順次1/2ずつにして、目標値が存在する範囲を追い込んでいくようにすると、少ないステップ数で短時間に目標値に到達することができる。
【0036】
図4には、実際に測定する特性曲線(たとえば、図1の制御回路における制御電圧(Vcont)に対する位相検出電圧(Phase_det))が、どのように目標値(Vtarget)に到達するかを概念的に示しており、逐次探索法と2分法との相違を合わせて示す。
【0037】
図4(A)に示すように、逐次探索法では、制御電圧の最大値3Vを均等に分割したステップ電圧(たとえばDACの1LSB)ごとに、測定対象である位相検出電圧を測定する。図4(A)においては、ステップ増加を9回繰り返した後に目標値Vtargetに到達したことを示す。
【0038】
図4(B)に示すように、2分法では、制御電圧の最大値3Vを1/2にした1.5Vからスタートし、4回のステップで目標値Vtargetに到達できることを示す。
【0039】
(2)2分法の問題点
図1及び図2に示すように、可変容量コンデンサ(VC1)2の静電容量値を調整する場合には、高抵抗(R1〜R5)26〜30を介して各可変容量素子(C2〜C5)22〜25の各電極に制御電圧(Vcont)19を印加する。そうすると、制御電圧(Vcont)19をステップ状に変化させて、直流入力端子(DC1,DC2)21a,21bに印加しても、各可変容量素子(C2〜C5)22〜25の両端電極に印加される電圧は、自己の静電容量と、交流阻止用抵抗(R1〜R5)26〜30の抵抗値との積で決まる時定数をもって変化するので、所望の一定の電圧に達するまでに相当の時間の経過を要する。それぞれの可変容量素子(C2〜C5)22〜25の容量値がすべて等しく(C2〜C5=C)、交流阻止用抵抗(R1〜R5)26〜30の抵抗値がすべて等しい(R1〜R5=R)とすると、この場合の時定数τは、交流阻止用抵抗が可変容量素子の両端に接続される構成となるため、τ=2CRとなる。
【0040】
一般に、強誘電体薄膜を有する可変容量コンデンサを、非接触通信システムや非接触充電システムの送受信用アンテナの共振回路に用いる場合には、使用耐圧をかせぐため、複数の可変容量素子を直列に接続して共振回路を構成する。交流阻止用抵抗(R1〜R5)26〜30の抵抗値を低く設定すると、交流入力端子(AC1,AC2)20a,20bに入力される交流信号が、直流入力端子(DC1、DC2)21a,21bに流れ出してしまう。また、交流信号が交流阻止用抵抗にバイパスして流れるために損失が増え、共振回路のQ(Quality factor)を低下させてしまう。
【0041】
そこで、交流阻止用抵抗(R1〜R5)26〜30の抵抗値を大きく設定すると、τ=2CRが大きくなり、2分法を用いて目標値探索を行っても、長時間の測定時間を要することになる。
【0042】
(3)2分法の改良
上述の問題点を解決するために、本発明の発明者は、可変容量コンデンサの静電容量値と、交流阻止用抵抗との時定数が、印加されるステップ電圧幅と所定の関係を有することを見出し、この関係を用いることによって短時間で測定を行うことができる改良2分法を導き出した。
【0043】
図5には、図2(B)の回路において、制御電圧(Vcont)33をステップ状に変化させた場合の電流検出抵抗(R6)7両端の電圧波形(すなわち、可変容量コンデンサ(VC1)2に流れる電流波形)を示す。図5に示す波形は、制御電圧(Vcont)33のステップ電圧幅を、0.375V、0.75V、1.5V、3.0Vと変化させた場合のものである。ステップ電圧幅を大きくすると、一定の電圧に収まるまでの時間がより長くなる。ここで、一定の電圧(元の電流値)となったと認められる範囲を測定系の検出精度Vtolを考慮した電圧値として、ステップ電圧印加から一定電圧となるまでの時間を整定時間とすると、0.375Vのステップ電圧幅の場合の整定時間と、3.0Vのステップ電圧幅の場合の整定時間とでは、整定時間差Δtを生ずる。
【0044】
図6には、図2(B)の回路で図5の場合の2倍の時定数として制御電圧(Vcont)33をステップ状に変化させた場合の電流検出抵抗(R6)7両端の電圧波形(すなわち、可変容量コンデンサ(VC1)2に流れる電流波形)を示す。ステップ電圧幅による整定時間差Δt’は、図5の場合の整定時間差Δtよりも顕著に長くなる。
【0045】
ここで、図5及び図6の場合において、それぞれのステップ電圧幅に対する整定時間は、ステップ電圧幅と比例関係にあり、ステップ電圧幅が小さい場合には、整定時間を短時間にすることができる。そこで、本発明の制御回路では、回路に用いる可変容量素子の静電容量値と、可変容量素子に直流バイアス電圧を印加する交流阻止抵抗の抵抗値とから計算される時定数に応じて整定時間を設定し、整定時間経過後に共振電流等の回路特性値を測定し、整定時間を制御電圧のステップ電圧幅に応じて設定して、ステップ電圧幅が小さい場合は、整定時間を短く設定することで、目標値に到達する時間の短縮をはかる。なお、整定時間としては、時定数の5倍程度(≒5τ=10CR)に設定するのが好ましい。
【0046】
図7(A)には、可変容量素子の静電容量値と交流阻止抵抗の抵抗値との時定数を考慮した改良2分法(改良2分法1)による目標値到達と、逐次探索法による目標値到達との相違を示す。実線で示す改良2分法1では、破線で示す逐次探索法に比べて、ステップ数が減少した分だけ、短時間で目標値に到達することが可能である。
【0047】
通常の2分法では、0Vからスタートした場合の最初のステップ幅は、最大値である3Vに設定するが、改良2分法では、最大値の1/2の電圧値からスタートする。整定時間は、ステップ電圧幅に比例するので、最大値の1/2のステップ電圧幅とすることによって、より短時間の整定時間を設定することができる。
【0048】
一方で、改良2分法1においても、可変容量素子の静電容量値と交流阻止抵抗の抵抗値とで構成される時定数が長い場合には、測定時間を十分に短くすることが困難となる。そこで、制御電圧の各ステップ電圧幅に応じて整定時間を変化させるように設定することによって、測定時間の短縮が可能になる。図7(B)に示すように、制御電圧のステップ電圧幅に比例して整定時間を設定するようにした改良2分法2(実線で示す)では、破線で示す改良2分法1よりも、目標値に到達する時間を短くすることができる。
【0049】
さらに、図8に示すように、可変容量コンデンサの直流入力端子(DC1,DC2)21a,21bにステップ状の制御電圧を印加する場合に、低い電圧から高い電圧にステップ電圧を印加する場合(立上り)と、高い電圧から低い電圧にステップ電圧を印加する場合(立下り)とでは、時定数が異なる。すなわち、制御電圧の立上り時の時定数は、立下り時の時定数よりも長くなる。そこで、上述の改良2分法において、制御電圧のステップ変化の方向に応じて整定時間を変えて設定することによって、さらに測定時間の短縮をはかることができる。
【0050】
3.制御回路の動作手順
図9及び図10は、上述した制御回路の動作を実現する手順を示すフローチャートの一例である。図9に示すフローチャートでは、制御回路の動作手順の初期設定を行い、共振周波数の調整を行う調整モードを設定する。図10のフローチャートでは、調整モードの動作手順を示し、より具体的には、改良2分法の動作手順を示す。
【0051】
図9に示すように、ステップS1において、制御部10によって調整モードの初期設定を開始する。以下では、すべて制御部10の動作によって実行され、好ましくは、各ステップを含むプログラムがメモリ10bに記憶され、処理部10aによって逐次読み出されて実行される。
【0052】
ステップS2において、制御電圧(Vcont)19のステップ数の初期値をn=1に設定し、ステップS3において、制御電圧(Vcont)19を出力するDAC11の出力を0Vに設定する。
【0053】
次のステップにおいて、制御電圧(Vcont)19を印加した後、共振周波数の測定を行うまでの待ち時間の最大値を設定する。好ましくは、ステップS4において、制御電圧(Vcont)19を増加方向に変化させる場合の待ち時間の最大値(tmax(P))を設定し、ステップS5において、制御電圧(Vcont)19を減少方向に変化させる場合の待ち時間(tmax(N))を設定する。なお、待ち時間は、整定時間(≒2τ=10CR)か、整定時間に一定の余裕度を乗じた値を用いることができる。
【0054】
ステップS6において、探索すべき目標値(Target)18を設定し、ステップS7において、目標値(Target)18に対する±の許容範囲電圧として、OK範囲を設定する。
【0055】
図10に示すように、図9の初期設定をして調整モードに入った制御回路1は、以下の手順にしたがって動作する。制御回路1は、初期設定と同様に、制御部10の作用によって動作する。
【0056】
本実施の形態では、制御電圧(Vcont)19が増加した場合に、フェーズデテクタ12の出力電圧(Phase_det)17は低下する構成である。そのため、ステップS10において、共振部の入力信号(REF)15及び共振部の出力信号(MONITOR)16が入力されるフェーズデテクタ12の出力電圧(Phase_det)17が目標値(Target)18よりも小さいか否かをチェックする。出力電圧(Phase_det)17が初期設定において設定した目標値(Target)18よりも大きい場合には、調整不能であるとして、ステップS11においてエラー処理を行う。出力電圧(Phase_det)17が目標値(Target)18よりも小さい場合には、次のステップS12以降に進み、調整動作を開始する。
【0057】
ステップS13において、制御電圧のステップ数nを2nに設定する。
【0058】
ステップS14において、増加させる方向のステップ電圧を、VCC/nに設定する。ここで、VCCは、DAC11の出力電圧(制御電圧Vcont)の最大値である。
【0059】
ステップS15において、DAC11から制御電圧(Vcont)19を出力後の待ち時間を、2×tmax(P)/nに設定する。
【0060】
ステップS16において、フェーズデテクタ12の出力電圧(Phase_det)17が目標値(Target)18±OK範囲内である場合には、目標値(Target)18に到達したものとして、ステップS17において、現在のDAC11の出力電圧をホールドし、調整モードを終了する。フェーズデテクタ12の出力電圧(Phase_det)17が目標値(Target)18±OK範囲外の場合には、次のステップS18に進む。
【0061】
ステップS18では、フェーズデテクタ12の出力電圧(Phase_det)17と目標値(Target)18との大小関係をチェックする。出力電圧(Phase_det)17が目標値(Target)18よりも小さい場合には、ステップS13に戻って、新たにステップ数を設定し、探索範囲を1/2にしてステップS16までの動作を繰り返す。出力電圧(Phase_det)17が目標値(Target)18よりも大きい場合には、次のステップS19に進む。ステップS16ではフェーズデテクタ12の出力電圧(Phase_det)17が反転しているため、次のステップS19では、ステップ電圧を減少させる方向で目標値(Target)18の探索を行う。
【0062】
ステップS19において、ステップ数nを2nに設定し、ステップS20において、減少させる方向のステップ電圧幅を、−VCC/nに設定し、ステップS21において、待ち時間を、2×tmax(N)/nに設定する。
【0063】
その後、ステップS16に戻って、フェーズデテクタ12の出力電圧(Phase_det)17が目標値(Target)18±OK範囲内になるまで上述の動作を繰り返す。
【0064】
4.制御回路の動作例
上述の動作フローにしたがって、図1に示す制御回路1を動作させた場合の測定時間を取得した。図11には、通常用いられる2分法を用いて目標値を測定した場合の測定時間と、上述した改良2分法を用いて測定した場合の測定時間とを比較して示す。
【0065】
図11(A)には、改良2分法1として、制御電圧(Vcont)19の待ち時間が制御電圧(Vcont)19のステップ電圧幅に比例して増大することを利用して、制御電圧(Vcont)の最大値の1/2を開始電圧として設定する場合の測定時間を示す。各ステップにおける待ち時間は、同一である。図10のフローチャートでは、ステップS4,S5において、tmax(P)=tmax(N)=tmaxと設定し、ステップS15,S21の待ち時間において、n=1に固定したものである。初期設定値としては最も単純であり、プログラムのステップ数も少なくて済み、通常の2分法と比較して1/2の測定時間を実現することができる。
【0066】
図11(B)には、改良2分法2として、制御電圧(Vcont)19のステップごとに待ち時間を変更する場合の測定例を示す。改良2分法2では、図10のフローチャートのステップS4,S5において、tmax(P)=tmax(N)=tmaxと設定し、ステップS15,S21の待ち時間をステップ電圧幅に応じて変化させたものである。2分法では、ステップごとに制御電圧(Vcont)19のステップ電圧幅が小さくなるので、これに比例して待ち時間も短く設定される(図10のステップS13〜S15及びステップS19〜S21)。測定時間も通常の2分法に比べて1/6程度に短縮される。
【0067】
図11(C)には、改良2分法3として、制御電圧(Vcont)19のステップごとに整定時間を変更するとともに、制御電圧(Vcont)19の立下り時の待ち時間を、制御電圧(Vcont)19の立上り時の待ち時間よりも短く設定することによって、さらに測定時間を短縮することができ、通常の2分法の1/6よりも短くできる。
【0068】
5.電子機器の構成例
本発明の制御回路は、非接触通信装置や、非接触充電装置等のアンテナ回路に用いられる共振回路及びその共振周波数の制御回路に用いて、使用状況に応じて共振周波数の調整に用いられる。
【0069】
(1)非接触通信装置の構成例
共振コンデンサ及び共振コイルから構成された共振回路を非接触通信装置に搭載して、これと他の非接触通信装置と非接触で通信を行う。非接触通信装置は、たとえば携帯電話に搭載されたNFC(Near Field Communication)等の非接触通信モジュール150である。また、他の非接触通信装置は、たとえば非接触通信システムにおけるリーダライタ140である。
【0070】
図12に示すように、非接触通信モジュール150は、可変容量コンデンサを含む共振コンデンサと、共振コイルとからなる共振回路を含む2次側アンテナ部160を備える。非接触通信モジュール150は、リーダライタ140から送信されてきた交流信号を、各ブロックの電源として用いるために、整流して直流電力に変換する整流部166と、各ブロックに対応する電圧を生成する定電圧部167とを備える。非接触通信モジュール150は、定電圧部167により供給される直流電力によって動作する復調部164と変調部163と受信制御部165とを備えており、また、全体の動作を制御するシステム制御部161を備えている。2次側アンテナ部160によって受信された信号は、整流部166による直流電力変換とともに、復調器で復調され、システム制御部161によって、リーダライタ140からの送信データが解析される。また、システム制御部161によって、非接触通信モジュール150の送信データが生成され、送信データは、変調部163によってリーダライタ140に送信するための信号に変調されて2次側アンテナ部160を介して送信される。受信制御部165では、システム制御部161の制御手順にしたがって、2次側アンテナ部160の共振周波数の調整を行う。受信制御部165は、2次側アンテナ部160の入力信号(REF)115と、2次側アンテナ部160の出力信号(MONITOR)116とが入力され、これらの信号の位相比較を行う。受信制御部165は、入出力信号の位相比較の結果、2次側アンテナ部160の共振周波数が目標値、すなわち1次側アンテナ部120が送信する共振周波数に等しくなるように、制御電圧(Vcont)119を制御する。
【0071】
非接触通信システムのリーダライタ140は、共振コンデンサからなる可変容量回路と共振コイルとを有する共振回路を含む1次側アンテナ部120を備える。リーダライタ140は、リーダライタ140の動作を制御するシステム制御部121と、システム制御部121の指令に基づいて、送信信号の変調を行う変調部124と、変調部124からの送信信号により変調されたキャリア信号を1次側アンテナ部120に送出する送信信号部125とを備える。さらに、リーダライタ140は、送信信号部125によって送出される変調されたキャリア信号を復調する復調部123を備える。
【0072】
リーダライタ140にも、非接触通信モジュール150と同様の共振周波数の自動調整機能を実装することができるのはいうまでもない。
【0073】
(2)非接触通信装置の動作
リーダライタ140は、送信信号部125によって送出されるキャリア信号に基づいて、1次側アンテナ部120とのインピーダンスマッチングの調整を行う。変調部124では、一般的なリーダライタで用いられる変調方式、符号化方式は、マンチェスタ符号化方式やASK(Amplitude Shift Keying)変調方式等である。キャリア周波数は、典型的には13.56MHzである。
【0074】
送信されるキャリア信号は、送受信制御部122が、送信電圧、送信電流をモニタすることによって、インピーダンスマッチングが得られるよう1次側アンテナ部120の可変電圧Vcを制御して、インピーダンス調整を行う。
【0075】
リーダライタ140から送信された信号は、非接触通信モジュール150の2次側アンテナ部160で受信され、復調部164によって信号が復調される。復調された信号の内容がシステム制御部161によって判断され、システム制御部161は、その結果に基づいて応答信号を生成する。受信制御部165は、受信信号の電圧位相及び電流位相に基づいて、2次側アンテナ部160の共振パラメータ等を調整して、受信状態が最適になるように、共振周波数の調整をする。上述したように、受信制御部165は、受信信号の入力信号(REF)115と出力信号(MONITOR)116との位相を比較して、システム制御部161の制御の下に制御電圧(Vcont)119を調整して共振周波数を調整する。
【0076】
非接触通信モジュール150は、応答信号を変調部163によって変調し、2次側アンテナ部160によってリーダライタ140に送信する。リーダライタ140は、1次側アンテナ部120で受信した応答信号を復調部123で復調し、復調された内容に基づいて、システム制御部121によって必要な処理を実行する。
【0077】
(3)非接触充電装置及び受電装置の構成例
本発明が適用された制御回路及び共振回路は、非接触充電装置180によって、非接触で携帯電話等の携帯端末に内蔵される2次電池を充電する受電装置190に実装することもできる。非接触充電の方式としては、特に限定されず、電磁誘導方式や磁気共鳴等が適応可能である。
【0078】
図13には、本発明が適用された携帯端末等の受電装置190と、受電装置190を非接触で充電する非接触充電装置180とからなる非接触充電システムの構成例を示す。
【0079】
受電装置190は、上述した非接触通信モジュール150とほぼ同じ構成を備える。また、非接触充電装置180の構成は、上述したリーダライタ140の構成とほぼ同じである。したがって、リーダライタ140、非接触通信モジュール150として図12に記載されたブロックと同じ機能を有するものについては、同じ符号で示す。ここで、リーダライタ140では、送受信するキャリア周波数が多くの場合に13.56MHzであるのに対して、非接触充電装置180では、100kHz〜数100kHzの場合がある。
【0080】
非接触充電装置180は、送信信号部125によって送出されるキャリア信号に基づいて、1次側アンテナ部120とのインピーダンスマッチングの調整を行う。
【0081】
送信されるキャリア信号は、送受信制御部122が、送信電圧、送信電流をモニタすることによって、インピーダンスマッチングが得られるよう1次側アンテナ部120の可変電圧Vcを制御して、インピーダンス調整を行う。
【0082】
受電装置190は、2次側アンテナ部160で受信された信号を整流部166で整流し、整流された直流電圧を充電制御部170の制御にしたがって、バッテリ169を充電する。2次側アンテナ部160による信号の受信がない場合であっても、ACアダプタ等の外部電源168によって充電制御部170を駆動してバッテリ169を充電することができる。
【0083】
非接触充電装置180から送信された信号は、2次側アンテナ部160で受信され、復調部164によって信号は復調される。復調された信号の内容がシステム制御部161によって判断され、システム制御部161は、その結果に基づいて応答信号を生成する。なお、受信制御部165は、受信信号の電圧位相(入力信号(REF)115)及び電流位相(出力信号(MONITOR)116)に基づいて、制御電圧(Vcont)119を調整して2次側アンテナ部160の可変容量コンデンサの静電容量値を調整して、受信状態が最適になるように、共振周波数を調整する。
【符号の説明】
【0084】
1 制御回路、2 可変容量コンデンサ、3 直列共振コンデンサ、4 共振コイル、5 フィルタコイル、6 フィルタコンデンサ、7 電流検出抵抗、8 信号入力端子、10 制御部、11 デジタル−アナログコンバータ、12 フェーズデテクタ、13 アナログ−デジタルコンバータ、14 比較部、15 入力信号(REF)、16 出力信号(MONITOR)、17 出力信号(Phase_det)、18 目標値(Target)、19 制御電圧(Vcont)、20a,20b 交流入力端子、21a,21b 直流入力端子、22〜25 可変容量素子、26〜30 交流阻止抵抗、31 交流信号源、32 出力インピーダンス、33 制御電圧源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13