特許第6043248号(P6043248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043248
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】熱式空気流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/684 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   G01F1/684 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-153119(P2013-153119)
(22)【出願日】2013年7月24日
(65)【公開番号】特開2015-21953(P2015-21953A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】緒方 公俊
(72)【発明者】
【氏名】石塚 典男
(72)【発明者】
【氏名】田代 忍
(72)【発明者】
【氏名】徳安 昇
(72)【発明者】
【氏名】森野 毅
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−252796(JP,A)
【文献】 特開2013−36892(JP,A)
【文献】 特開2012−202786(JP,A)
【文献】 特開平3−263625(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/084259(WO,A1)
【文献】 特開2011−148293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/68− 1/699
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗体を有する回路部と流量検出部とを、前記流量検出部の少なくとも一部が露出するようにインサートモールドして構成したセンサアセンブリと、副通路を有し前記流量検出部を前記副通路内に配置して前記センサアセンブリを収容する筐体とを備え、前記センサアセンブリが第一の樹脂でモールド成形され、前記筐体が第二の樹脂でモールド成形された熱式空気流量計において、
前記センサアセンブリは、前記流量検出部が露出する前記センサアセンブリの表面側の表面と前記センサアセンブリの裏面側の表面とに前記第二の樹脂が接触し、前記第二の樹脂で前記筐体に固定されており、
前記センサアセンブリの表面側の表面に接触する前記第二の樹脂の体積と、前記センサアセンブリの裏面側の表面に接触する前記第二の樹脂の体積とを異ならせることにより、前記センサアセンブリに対して前記流量検出部が露出する面に平行な方向の引張応力を生じさせる樹脂構造を備えたことを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項2】
請求項に記載の熱式空気流量計において、
前記引張応力は、前記樹脂構造が前記センサアセンブリに反り変形を生じさせることにより発生され、前記回路部の抵抗体は前記引張応力が作用する部分に位置することを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項3】
請求項に記載の熱式空気流量計において、
前記センサアセンブリの表面側の表面に接触する前記第二の樹脂の体積よりも、前記センサアセンブリの裏面側の表面に接触する前記第二の樹脂の体積の方が大きいことを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項4】
請求項に記載の熱式空気流量計において、
前記回路部に対して前記センサアセンブリの裏面側に設けられた前記第一の樹脂の厚さを、前記回路部に対して前記センサアセンブリの表面側に設けられた前記第一の樹脂の厚さよりも厚くしたことを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項5】
請求項に記載の熱式空気流量計において、
前記樹脂構造は、前記回路部に対して前記センサアセンブリの裏面側に設けられた前記第一の樹脂の厚さを、前記回路部に対して前記センサアセンブリの表面側に設けられた前記第一の樹脂の厚さよりも厚くした構造であることを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項6】
請求項又はに記載の熱式空気流量計において、
前記第一の樹脂は熱硬化性樹脂であり、前記第二の樹脂は熱可塑性樹脂であることを特徴とする熱式空気流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量検出部を有するセンサチップと流量検出部で検出した信号を処理するLSIとを樹脂で覆って構成したセンサアセンブリを備える熱式空気流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
気体流量を計測する熱式空気流量計は、流量を計測するための流量検出部を備え、前記流量検出部と計測対象である気体との間で熱伝達を行うことにより、気体の流量を計測するように構成されている。熱式空気流量計が計測する流量は、様々な装置において重要な制御パラメータとして広く使用されている。熱式空気流量計の特徴は、他方式の流量計に比べ相対的に高い精度で気体流量、例えば質量流量を計測できることである。
【0003】
しかし、さらなる気体流量の計測精度の向上が望まれている。例えば、内燃機関を搭載した車両では、省燃費の要望や排気ガス浄化の要望が非常に高い。これらの要望に応えるには、内燃機関の主要パラメータである吸入空気量を高い精度で計測することが求められている。内燃機関に導かれる吸入空気量を計測する熱式空気流量計は、吸入空気量の一部を取り込む副通路と前記副通路に配置された流量検出部を備え、前記流量検出部が被計測気体との間で熱伝達を行うことにより、前記副通路を流れる被計測気体の状態を計測して、前記内燃機関に導かれる吸入空気量を表す電気信号を出力する。このような技術は、例えば特開2011−252796号公報(特許文献1)に開示されている。
【0004】
特許文献1の空気流量測定装置では、取り込んだ空気が流れる内部流路を形成する筐体と、副流路内に配置されるセンサチップと、センサチップが発生する電気信号を処理する回路チップとを備え、センサチップと回路チップとは一つの構成部品としてのセンサアセンブリとして組み立てられている(段落0027,0031)。筐体はセンサアセンブリが嵌る穴を有し、穴を形成する面にはセンサアセンブリに設けられた二つの当接面にそれぞれ面接触する二つの当接面が設けられている(段落0033)。穴を形成する面には、二つの当接面を除く面部にリブが設けられており、センサアセンブリはリブの先端に圧接するように穴に圧入されることにより、筐体に固定される(段落0034)。これにより、センサアセンブリと筐体との間で線膨張の伝達を遮断して線膨張差起因の応力がセンサチップや回路チップにかからないようにし、センサチップや回路チップの素子の抵抗値が変動するのを抑制している(要約)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−252796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱式空気流量計により、空気の流量を高い精度で計測するためには、主通路を流れる空気流量を計測するための熱式空気流量計に設けられた副通路に、流量検出部を高い精度で位置決めして固定し、流量検出部により検出された流量を正確に計測することが求められる。特許文献1に記載の技術では、センサアセンブリを嵌め込むための穴が開口する内部流路を備える筐体を予め樹脂で製造し、この筐体とは別に、流量検出部を備えるセンサアセンブリを製造し、次に内部流路の穴にセンサアセンブリを挿入した状態で、センサアセンブリを筐体に固定している。内部流路に開口する穴とセンサアセンブリとの間の隙間、およびセンサアセンブリの筐体への嵌め込み部分の隙間には、弾性接着剤が充填され、互いの線膨張係数差を接着剤の弾性力で吸収している。
【0007】
さらに、センサアセンブリと筐体に設けられた副通路との位置や角度のばらつきを少なくして、副通路(内部流路)に対してセンサアセンブリ(特に、流量検出部)を正確に位置決めするには、流量検出部を含むセンサアセンブリを筐体のモールド成型と同時に固定することが有効となる。
【0008】
しかし、この場合には、センサアセンブリと筐体との線膨張係数差に起因してLSI:Large Scale Integration(回路チップ)内の抵抗に発生する熱応力が接着剤を使用する場合に比べて高く、測定精度が低下するという課題があった。
【0009】
本発明の目的は、流量検出部の高い位置決め精度を確保しつつ、LSI内の抵抗体に発生する熱応力の影響を低減することで、計測精度の高い熱式空気流量計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の熱式空気流量計は、抵抗体を有する回路部と流量検出部とを、前記流量検出部の少なくとも一部が露出するようにインサートモールドして構成したセンサアセンブリと、副通路を有し前記流量検出部を前記副通路内に配置して前記センサアセンブリを収容する筐体とを備え、前記センサアセンブリが第一の樹脂でモールド成形され、前記筐体が第二の樹脂でモールド成形された熱式空気流量計において、前記センサアセンブリは、前記流量検出部が露出する前記センサアセンブリの表面側の表面と前記センサアセンブリの裏面側の表面とに前記第二の樹脂が接触し、前記第二の樹脂で前記筐体に固定されており、前記センサアセンブリの表面側の表面に接触する前記第二の樹脂の体積と、前記センサアセンブリの裏面側の表面に接触する前記第二の樹脂の体積とを異ならせることにより、前記センサアセンブリに対して前記流量検出部が露出する面に平行な方向の引張応力を生じさせる樹脂構造を備える
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、センサアセンブリを筐体のモールド成型と同時に固定する場合に、LSIへの発生応力が低減されるので、流量検出部の高い位置決め精度を確保しつつ、計測精度の高い熱式空気流量計を得ることができる。
【0012】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本発明の一実施例における熱式空気流量計の上面を表す平面図である。
図1B図1Aに示す熱式空気流量計の右側面について、側面に設けられたカバー部材を取り除いて示す平面図である。
図2】本発明に係る第1実施例におけるセンサアセンブリの平面図である。
図3図2のIII−III断面を示す断面図である。
図4図1BのIV−IV断面を模式的に示した断面図である。
図5図2のV−V断面について、センサアセンブリの変形の様子を表した模式図である。
図6】本発明に係る第2実施例におけるセンサアセンブリの平面図である。
図7図6のIII−III断面を示す断面図である。
図8】本発明に係る第3実施例におけるセンサアセンブリについて、図3及び図7と同様な断面で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施例について、説明する。
【0015】
まず、熱式空気流量計の全体構成について、図1A及び図1Bを用いて説明する。図1Aは、熱式空気流量計300の上面を表す平面図である。図1Bは、熱式空気流量計300の側面について、側面に設けられたカバー部材302,303を取り除いて示す平面図である。尚、図1B図1Aの右側面を示している。また、図1Bに示す矢印26は吸気管(図示せず)を流れる空気の向きを表している。図1A及び図1Bで説明する全体構成は、以下で説明する各実施例に共通する。
【0016】
熱式空気流量計300の図1Aに示す面は、吸気管の中を流れる空気流れの上流側に向けて設けられる。以下、熱式空気流量計300における上下方向は、吸気管の中を流れる空気流れに対して上流側に位置する方を上、下流側に位置する方を下として説明する。この上下方向は、熱式空気流量計300が自動車等の内燃機関に取り付けられた実装状態での上下方向を意味するものではない。また、熱式空気流量計300の長さ方向300L、幅方向300Wを図1の矢印で示すように定義する。さらに、長さ方向300L及び幅方向300Wに対して垂直な方向を高さ方向と定義する。300Cは幅方向300Lにおける中心線を表す。
【0017】
図1Aに示すように、熱式空気流量計300のハウジング(筐体)301の両側面には、薄板状のカバー部材302,303が取り付けられている。熱式空気流量計300はフランジ部(取付部)304が吸気管の壁面に固定され、ハウジング301の先端側に吸気管を流れる空気の一部を取り込む副通路305が設けられている。305aは副通路305の入口開口である。入口開口305aはハウジング301の幅方向300Lの全体にわたって設けられている。副通路305の入口側通路部分305iは入口開口305aから下流側に進むにつれて通路断面が中心線300Cの左側に向かって絞られる。入口側通路部分305iの中心線300Cから右側の部分には入口側通路部分305iの奥側に副通路305の出口側通路部分305oが形成されている。出口側通路部分305oは図1A上に示すことができないので、括弧を付けて引き出し線も点線で示している。副通路305は入口側通路部分305iと、出口側通路部分305oと、空気の流れ方向において入口側通路部分305iと出口側通路部分305oとの間に設けられセンサアセンブリ100(図1B参照)の流量検出部4aが配置される流量計測通路部分305s(後述)とで構成されている。
【0018】
フランジ部304には、副通路305が設けられるのとは反対側に、コネクタ部307が設けられている。このコネクタ部307には、外部装置(例えばエンジン制御装置)に接続された信号線(通信線)が接続される。
【0019】
図1Bに示すように、ハウジング301の先端側(紙面下側)には、副通路305を構成する出口側通路部分305oと流量計測通路部分305sとが設けられている。出口側通路部分305oの下流端は出口開口305bに連通する。図1Bには示されていないが、出口側通路部分305oの奥側に副通路305の入口側通路部分305iが設けられている。流量計測通路部分305sは図1Aに示す中心線300Cを介して幅方向両側に跨るように形成されており、中心線300Cに対して一方(左)の側面側に形成された入口側通路部分305iの下流端と、中心線300Cに対して他方(右)の側面側に形成された出口側通路部分305oの上流端とは、この流量計測通路部分305sによって連通することになる。
【0020】
副通路305とフランジ部304との間には、センサアセンブリ100が配置されている。本実施例では、センサアセンブリ100は、ハウジング301を形成する樹脂によって、固定部306でハウジング301に固定されている。センサアセンブリ100の流量検出部4aが露出する表面とその反対側の裏面とには、それぞれ流量計測通路部分305sの壁面との間に、空気の流れる隙間が設けられている。すなわち、センサアセンブリ100は幅方向300Lにおいて、流量計測通路部分305sの中間部に配置されている。また、図1Bに示すように、センサアセンブリ100は、その流量検出部4aが、熱式空気流量計300における出口側通路部分305oが形成される側面側に面するように、配置されている。
【0021】
コネクタ部307には、熱式空気流量計300を外部装置(例えばエンジン制御装置)に接続された信号線(通信線)と電気的に接続して通信を行うための接続端子307aが設けられている。接続端子307aはハウジング301の内部に露出した端子307bに電気的につながっており、端子307bを介してセンサアセンブリ100から引き出されたリード102bに電気的に接続されている。リード102bは、LSI103や吸気温度検出素子(図示せず)の入出力端子を構成する。
【0022】
以下、センサアセンブリ100、100’及び保持部20、21の実施例について、実施例1乃至実施例3に分けて説明する。
【実施例1】
【0023】
図2乃至図5を用いて、熱式空気流量計の第1実施例について、説明する。以下、本実施例の特徴的部分であるアセンブリ100及び保持部20,21について説明する。
【0024】
図2はセンサアセンブリ100形成後の平面図であり、図3図2のIII−III断面を示す断面図である。図2では、周囲を被覆する第1樹脂24を透視して、内部のリードフレーム1、換気プレート2、LSI3、センサチップ4を示している。
【0025】
図2図3に示すように、センサアセンブリ100はリードフレーム1、換気プレート2、LSI(回路部)3、センサチップ4を備えており、これらが第1樹脂24で覆われている。具体的には、センサアセンブリ100は、センサチップ4の流量検出部4aの少なくとも一部が露出するようにして、リードフレーム1、換気プレート2、LSI(回路部)3、センサチップ4の各インサート部品を、第1樹脂24でインサートモールドして構成されている。
【0026】
ここで、上述のリード102bはリードフレーム1から切り離されて構成される。また、流量検出部4aはセンサチップ4上に構成される。センサチップ4には、ダイヤフラム4aが形成されている。ダイヤフラム4a上には発熱抵抗体や感温抵抗体が形成され、流量検出部4aが構成されている。
【0027】
第1樹脂24としては、例えば熱硬化性樹脂を用いる。具体的な製造方法は、まず、リードフレーム1上に換気プレート2を接着テープ5で接着し、さらに換気プレート2上にLSI3とセンサチップ4とを接着テープ6で接着する。なお、この換気プレート2には、ガラスを用いても樹脂を用いても構わない。
【0028】
次に、LSI3とセンサチップ4との間、及びLSI3とリードフレーム1との間をワイヤボンディングにより金線8、9を用いて電気的に結線する。これらを第1樹脂24によって樹脂封止し、センサアセンブリ100が完成する。LSI3は流量検出部4aを有するセンサチップ4からのアナログ信号をデジタル信号に変換し、制御、出力する回路部である。この回路部は、回路チップ(半導体チップ)で構成されている。LSI3の表面には、抵抗体7が配置され、この抵抗体7は例えば基準発信器(クロック)やA/D変換器などに用いられる。
【0029】
図1B及び図4を参照して、センサアセンブリ100の実装構造を説明する。図4図1BのIV−IV断面図である。筐体301は主通路を流れる空気をセンサチップ4に導くための副通路305(305i、305o)とセンサアセンブリ100の保持部20、21(副通路の側壁となる)と端子307bの保持部14を備えており、第2樹脂からなる筐体301の形成と同時にセンサアセンブリ100が筐体11に収容されて固定される。この際、流量検出部4aを有するセンサチップ4の流量検出部4aは空気流量を測定する必要があるため、副通路305中に配置される。LSI3とセンサチップ4は隣接するように配置されているので、副通路305の側壁となる保持部20、21はセンサチップ4とLSI3との間に位置する。なお、保持部20、21は図1Bに固定部306として示す部分であり、センサアセンブリ100の流量計測通路部分305sに沿う方向の全周が第2樹脂によって覆われている。これにより、センサアセンブリ100の表面側には保持部20が、またセンサアセンブリ100の裏面側には保持部21が構成されている。そして、筐体11の形成の際には保持部20、21は、図4に示すようにセンサアセンブリ100の表面側の保持部20の樹脂体積よりもセンサアセンブリ100の裏面側の保持部21の樹脂体積のほうが大きくなるように形成されている。
【0030】
次に第1実施例による作用効果について説明する。センサアセンブリ100は第1樹脂24により形成され、筐体301は第2樹脂により形成されている。また、第1樹脂24と第2樹脂とは材料が異なる。例えば、第1樹脂24は熱硬化性樹脂を用い、第2樹脂は熱可塑性樹脂を用いる。このため、保持部20、21によってセンサアセンブリ100との界面に、第1樹脂24と第2樹脂との線膨張係数差に起因する熱応力、もしくは樹脂収縮差に起因する収縮応力により圧縮応力が発生する。これにより、保持部20、21に隣接するLSI3内の抵抗体7にも圧縮応力が発生する。抵抗体7に応力(ひずみ)が発生すると、ピエゾ効果によって抵抗値が変化し、LSI3の出力特性が変化するため、空気流量の測定精度が悪化する。
【0031】
本実施例では、保持部20の樹脂体積を保持部21の樹脂体積よりも小さくした。これにより、保持部20、21の樹脂収縮差によって、センサアセンブリ100に図5に示すような反りを発生させる。図5は、図2のV−V断面を示す断面図であり、反り変形の形状を示している。図5に示すように、LSI3にもセンサアセンブリ100と同様の反りが発生する。その結果、抵抗体7に引張応力が印加されるため、保持部20、21によって抵抗体7に発生する圧縮応力を低減することができる。すなわち、本実施例では、保持部20と保持部21との収縮差によってセンサアセンブリ100に反りを発生させる。この反りはLSI3が受ける上記圧縮応力を相殺或いは低減する引張応力を生じさせる。この反りを発生するために、センサアセンブリ100の表面側の保持部20よりもセンサアセンブリ100の裏面側の保持部21の収縮量を大きくしている。
【実施例2】
【0032】
図6及び図7を用いて、熱式空気流量計の第2実施例について説明する。以下、本実施例の特徴的部分であるセンサアセンブリ100’について説明する。
【0033】
図6はセンサアセンブリの正面図であり、図7図6のIIV−IIV断面を示す断面図である。センサアセンブリ100’の基本構成は実施例1と同様であるが、センサアセンブリ100’の表面側にある樹脂の厚さt1とセンサアセンブリ100’の裏面側にある樹脂の厚さt2が、t1<t2となるように形成されている。
【0034】
次に、第2実施例による作用効果について説明する。センサアセンブリ100’において、LSI3と第1樹脂24との界面で第1樹脂24の樹脂収縮及び熱収縮による圧縮応力が抵抗体7に発生する。本実施例では、センサアセンブリ100’の表面側と裏面側との樹脂厚みt1、t2について、t1<t2なる関係が成り立っているため、第1樹脂24の表面側と裏面側との熱収縮差によってセンサアセンブリ100’に図5に示す反りが発生し、LSI3にも同様の反りが発生する。その結果、LSI3内の抵抗体7に引張応力が印加され、抵抗体7に発生する圧縮応力を低減或いは相殺することができる。なお、本実施例で示したセンサアセンブリ100’の構造に、実施例1で示した筐体301の構造を組み合わせた構成をとっても、抵抗体7に発生する圧縮応力を低減できることは言うまでもない。
【実施例3】
【0035】
図8を用いて、熱式空気流量計の第3実施例について説明する。以下、本実施例の特徴的部分であるセンサアセンブリ100’’について説明する。図8は、本発明に係る第3実施例におけるセンサアセンブリ100’’について、図3及び図7と同様な断面で示す断面図である。
【0036】
本実施例では、第2実施例のセンサアセンブリ100’において、センサチップ4とLSI(回路部)3とが一体化され、一つの半導体チップとして構成されている。この場合においても、センサアセンブリ100’’の表面側にある樹脂の厚さt1とセンサアセンブリ100’’の裏面側にある樹脂の厚さt2が、t1<t2となるように形成することにより、実施例2と同様な効果が得られ、流量の計測精度が向上する。
【0037】
本実施例においても、実施例1の保持部20、21と組み合わせることができる。或いは、実施例1において、本実施例のように、センサチップ4とLSI3とを一体化して、一つの半導体チップとして構成してもよい。
【0038】
第1実施例、第2実施例及び第3実施例では、センサアセンブリ100、100’、100’’に対して流量検出部4aが露出する面に平行な方向の引張応力を生じさせる樹脂構造を備えている。この樹脂構造は、LSI(回路部)3に対して流量検出部4aが露出するセンサアセンブリ100、100’、100’’の表面側に存在する樹脂の体積とセンサアセンブリ100、100’、100’’の裏面側に存在する樹脂の体積とを異ならせた構造である。そして、引張応力は、この樹脂構造がセンサアセンブリ100、100’、100’’に反り変形を生じさせることにより発生され、LSI3の抵抗体7は引張応力が作用する部分に位置することにより、上述の圧縮応力が相殺或いは軽減される。この樹脂構造は、第1実施例においては、センサアセンブリ100の表面側の表面に接触する第二の樹脂(保持部20を構成する樹脂)の体積と、センサアセンブリ100の裏面側の表面に接触する第二の樹脂(保持部21を構成する樹脂)の体積とを異ならせた構造である。そして、センサアセンブリ100の表面側の表面に接触する第二の樹脂(保持部20を構成する樹脂)の体積よりも、センサアセンブリ100の裏面側の表面に接触する第二の樹脂(保持部21を構成する樹脂)の体積の方が大きい。このとき、第2実施例に記載したセンサアセンブリ100’のように、LSI3に対してセンサアセンブリ100の裏面側に設けられた第一の樹脂24の厚さを、LSI3に対してセンサアセンブリ100の表面側に設けられた第一の樹脂24の厚さよりも厚くしてもよい。また、第2実施例においては、樹脂構造は、LSI3に対してセンサアセンブリ100’の裏面側に設けられた第一の樹脂の厚さを、LSI3に対してセンサアセンブリ100’の表面側に設けられた第一の樹脂の厚さよりも厚くした構造により実現されている。
【0039】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、上述した気体流量を計測するための計測装置に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1…リードフレーム、2…換気プレート、3…LSI、4…センサチップ、5…接着テープ、6…接着テープ、7…抵抗体、8…金線、9…金線、100,100’ ,100’’…センサアセンブリ、11…筐体、12…副通路、14…保持部、20…保持部、21…保持部、24…第1樹脂、26…空気。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8