(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記目標値演算部は、前記再加速予測部による予測結果に基づいて前記目標発電電力を演算する目標発電電力演算部と、前記再加速予測部による予測結果に基づいて前記目標スロットル開度を演算する目標スロットル開度演算部と、を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
前記目標値演算部は、前記再加速予測部による予測結果に基づいて前記目標発電電力を演算する目標発電電力演算部と、前記目標発電電力演算部による演算結果に基づいて前記目標スロットル開度を演算する目標スロットル開度演算部と、を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
前記車両制御装置は、前記車両の目標駆動力を演算する目標駆動力演算部と、該目標駆動力演算部による演算結果に基づいて前記エンジンの目標エンジントルクを演算する目標エンジントルク演算部と、を更に備え、
前記目標スロットル開度演算部は、前記目標発電電力演算部による演算結果と前記目標エンジントルク演算部による演算結果とに基づいて前記目標スロットル開度を演算することを特徴とする、請求項5に記載の車両制御装置。
前記目標値演算部は、前記再加速予測部による予測結果と前記動力伝達状態演算部による演算結果とに基づいて前記目標発電電力を演算する目標発電電力演算部と、前記再加速予測部による予測結果と前記動力伝達状態演算部による演算結果とに基づいて前記目標スロットル開度を演算する目標スロットル開度演算部と、を有することを特徴とする、請求項1又は3に記載の車両制御装置。
前記目標値演算部は、前記再加速予測部による予測結果と前記動力伝達状態演算部による演算結果とに基づいて前記目標発電電力を演算する目標発電電力演算部と、前記目標発電電力演算部による演算結果と前記動力伝達状態演算部による演算結果とに基づいて前記目標スロットル開度を演算する目標スロットル開度演算部と、を有することを特徴とする、請求項1又は3に記載の車両制御装置。
前記目標値演算部は、前記車両が再加速する可能性がないと予測したときの前記目標スロットル開度を前記車両が再加速する可能性があると予測したときの前記目標スロットル開度よりも大きく設定することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
前記車両制御装置は、前記エンジンへの燃料供給を停止したときに、前記スロットルの開度が小さい領域における開閉速度が前記スロットルの開度が大きい領域における開閉速度よりも小さくなるように前記目標スロットル開度に基づいて前記スロットルを開閉駆動することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
前記動力伝達状態演算部は、前記エンジンと前記車両の駆動輪との間の動力伝達を遮断した後に前記目標スロットル開度を全閉に設定することを特徴とする、請求項16に記載の車両制御装置。
前記再加速予測部は、アクセルペダルの踏み込み量がゼロのときであって前記車両と前方車両との車間距離が所定値以上且つ前記車両が前方車両から離れるとき、あるいは、アクセルペダルの踏み込み量がゼロのときであって前記車両と前方車両との車間距離が所定値以上且つ前方車両の加速度が所定値以上であるとき、前記車両が再加速する可能性があると予測することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
前記再加速予測部は、外界情報を取得するための外界情報取得手段が故障していると判断したとき、前記車両が再加速する可能性があると予測することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
前記目標停止位置演算部は、前記車両の位置から最も近い信号機が停止信号であること、前記車両の前方の車両が停止中であること、または、前記車両の前方に停止線があることを検知したときに、前記目標停止位置を演算することを特徴とする、請求項7に記載の車両制御装置。
前記目標停止位置演算部は、前記車両の前方の信号機、前記車両の前方の車両の後方位置、または、前記車両の前方の停止線から所定値だけ手前の位置に前記目標停止位置を設定することを特徴とする、請求項7に記載の車両制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る車両制御装置の実施形態を図面を参照して説明する。
【0015】
[実施形態1]
図1は、本発明に係る車両制御装置の実施形態1が搭載された車両のシステム構成を概略的に示したものである。また、
図2は、
図1に示すエンジンの内部構成を概略的に示したものである。
【0016】
図1に示すように、車両100にはエンジン101が搭載されており、エンジン101によって得られる駆動力は、変速機102及びディファレンシャル機構103を介して駆動輪104へ伝達されるようになっている。なお、エンジン101としては、自動車の動力源として一般に使用されるガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどを適用することができる。また、変速機102としては、例えば、トルクコンバータと遊星歯車機構を組み合わせた有段変速機や、ベルトあるいはチェーンとプーリを組み合わせた無段変速機などを適用することができる。
【0017】
エンジン101には始動装置としてのスタータモータ105が組み付けられると共に、駆動ベルト107を介して発電機106が連結されている。また、スタータモータ105と発電機106はそれぞれ、電力供給用のバッテリ108と接続されると共に、スタータモータ105と発電機106とエンジン101は、それらの駆動を制御するコントローラ(車両制御装置)111と通信可能に接続されている。
【0018】
スタータモータ105は、バッテリ108から供給される電力によって回転駆動され、スタータモータ105の回転駆動に連動してエンジン101が回転駆動する。なお、エンジン101の始動装置としては、スタータモータ105に限定されず、スタータモータの機能と発電機の機能を備えたモータであってもよい。
【0019】
また、エンジン101のクランク軸101aは、駆動ベルト107を介して発電機106のクランク軸106aと接続されており、発電機106は、エンジン101のクランク軸101aの回転に従動して回転駆動して電力を発生するようになっている。また、発電機106は、界磁電流を制御することによって発電電圧を調整する調整機構や発電出力を停止する停止機構を備えている。発電機106で発電された電力は、バッテリ108や車載電装機器109、外界情報取得装置112、コントローラ111等へ供給されるようになっている。
【0020】
バッテリ108には、当該バッテリ108の状態を検出するバッテリ状態検出装置110が取り付けられている。このバッテリ状態検出装置110は、例えば、バッテリ108の電圧を検出する電圧センサ、バッテリ108からの充電電流または放電電流を検出する電流センサ、バッテリ108の温度を検出する温度センサなどから構成され、それらの各種センサから得られる情報に基づいてバッテリ108の充電状態(例えば電池残容量など)を演算し、その演算結果をコントローラ111へ送信する。例えば、バッテリ108の残容量SOC(State of Charge)は、バッテリ108への充放電電流やバッテリ108の電圧等に基づいて演算される。なお、バッテリ108としては、例えば、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、キャパシタなどが挙げられ、それらの電池のうち特性の異なる電池を並列に接続して当該バッテリを構成してもよい。
【0021】
車載電装機器109は、発電機106やバッテリ108から供給される電力によって駆動する装置であり、例えば、エンジン101を動作させるための各種アクチュエータ(例えば、燃料供給装置や点火装置)、ヘッドライトやブレーキランプ、方向指示器などの灯火装置、ブロアファンやヒータなどの空調機器などから構成され、それら各種装置はコントローラ111と通信可能に接続されている。
【0022】
また、外界情報取得装置112は、車両100の周囲の外界情報を取得する装置であり、例えば、ナビゲーションシステムやカメラ、レーダ、車々間通信または路車間通信モジュールなどから構成され、この外界情報取得装置112によって取得された外界情報は定期的にコントローラ111へ送信される。
【0023】
また、車両100には、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダル踏み込み量検出装置113、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキペダル踏み込み量検出装置114、車両100の速度を検出する車速検出装置115などが搭載されており、アクセルペダル踏み込み量検出装置113、ブレーキペダル踏み込み量検出装置114、車両の速度を検出する車速検出手段115などによって検出された情報はコントローラ111へ定期的に送信される。
【0024】
上記したエンジン101の動作状態を
図2を参照して概説すると、まず、コントローラ111により電制スロットル201の開度(スロットル開度)が調整され、吸気管203に負圧が発生して吸気管203の内部に空気が取り込まれる。吸気管203の入口から取り込まれた空気はエアクリーナ202を通過し、吸気管203の途中に設けられたエアフローセンサ204で空気量(吸入空気量)が計測された後、電制スロットル201の入口へ導入される。なお、エアフローセンサ204による計測値(吸入空気量)はコントローラ111へ送信され、コントローラ111は、エアフローセンサ204から送信された吸入空気量に基づいて、排ガスの空燃比が理論空燃比となるような燃料噴射装置205の燃料噴射パルス幅を演算する。
【0025】
電制スロットル201を通過した吸入空気は、コレクタ206を通過した後にインテークマニホールド216内に導入され、前記燃料噴射パルス幅に関する制御信号に従って燃料噴射装置205から噴射されたガソリン噴霧と混合されて混合気を形成し、その混合気は、吸気バルブ207の開閉に同期して燃焼室208へ導入される。吸気バルブ207を閉じた状態でピストン209の上昇過程で燃焼室208内で圧縮された混合気は、圧縮上死点直前付近でコントローラ111から送信された点火時期に従って点火された点火プラグ210により着火され、燃焼室208内で急速に膨張してピストン209を押し下げてエンジントルクを発生させる。このような過程を繰り返すことで、エンジン101の回転が維持される。なお、その際のエンジン101の回転速度(回転数)は、クランク角センサ211により検出されてコントローラ111へ送信される。
【0026】
燃焼室208内で混合気が燃焼されて生成された排ガスは、ピストン209が上昇して排気バルブ212が開いた瞬間から燃焼室208から排気されて排気マニホールド213へ排出される。排気マニホールド213の下流には、排ガスを浄化するための三元触媒214が設けられ、排ガスが三元触媒214を通過する際にHC、CO、NOxといった排気成分が、H
2O、CO
2、N
2へ変換される。なお、三元触媒214の入口には空燃比センサ215が設置され、この空燃比センサ215で計測された空燃比に関する情報はコントローラ111へ送信される。コントローラ111は、空燃比センサ215から送信された情報に基づいて排ガスの空燃比が理論空燃比となるように空燃比フィードバック制御を実施する。
【0027】
図3は、
図1に示すコントローラの内部構成を概略的に示したものである。図示するように、コントローラ111は、主に、減速判定部301と再加速予測部302と燃料供給量演算部303と目標値演算部310を備え、目標値演算部310は、目標スロットル開度演算部304と目標発電電力演算部305を有している。
【0028】
減速判定部301は、アクセルペダル踏み込み量検出装置113によって検出されたブレーキペダルの踏み込み量に基づいて、車両100が減速状態であるか否かを判定する。具体的には、減速判定部301は、アクセルペダルの踏み込み量がゼロであることを検知したときに「車両100が減速状態である」と判定し、アクセルペダルの踏み込み量がゼロでないことを検知したときに「車両100が減速状態でない」と判定する。
【0029】
再加速予測部302は、減速判定部301から送信される判定結果に基づいて車両100が減速状態であるか否かを判断し、車両100が減速状態である(アクセルペダルの踏み込み量がゼロ)と判断したときに、外界情報取得装置112によって取得された車両100の外界情報に基づいて車両100が減速状態から再加速する可能性があるか否かを予測する。
【0030】
具体的には、再加速予測部302は、例えば、自車両と前方車両との車間距離が所定値以上であって自車両と前方車両との相対速度が負のときに当該車両100が再加速する可能性があると判断する。なお、相対速度とは、自車両の速度から前方車両の速度を引いた値であり、正のときは自車両の速度が前方車両の速度よりも速く自車両が前方車両に近づき、負のときは自車両の速度が前方車両の速度よりも遅く自車両が前方車両から離れることを意味する。また、再加速予測部302は、例えば、自車両と前方車両との車間距離が所定値以上であって前方車両の加速度が所定値以上になったときに当該車両100が再加速する可能性があると判断する。さらに、再加速予測部302は、例えば、運転者によるウィンカー操作やハンドル操作等があったときに、自車両が前方車両を追い越す可能性があると判断して当該車両100が再加速する可能性があると判断する。すなわち、再加速予測部302は、ウィンカースイッチがオン状態のときやハンドルの操舵角が所定値以上になったときに、当該車両100が再加速する可能性があると判断する。また、再加速予測部302は、例えば、自車両の前方に車両が検知されないときに、当該車両100が再加速する可能性があると判断する。
【0031】
また、外界情報取得装置112を構成する各デバイスは故障検知機能を有しており、その故障検知機能によって検知される各デバイスの故障に関する情報がコントローラ111へ送信されるようになっている。再加速予測部302は、外界情報取得装置112から送信される各デバイスの故障に関する情報に基づき、外界情報取得装置112の各デバイスのいずれかもしくは複数が故障していると判断したときに、当該車両100が再加速する可能性があると判断する。これにより、車両100の運転性の悪化やエンジン101の停止、エンジン101の再始動の繰り返し等による燃費性能の悪化を抑制することができる。
【0032】
燃料供給量演算部303は、減速判定部301から送信される判定結果及びクランク角センサ211によって検出されたエンジン101の回転数に基づいて燃料供給量を演算し、その演算結果(燃料供給量)に基づく制御信号をエンジン101へ送信する。
【0033】
具体的には、燃料供給量演算部303は、
図4に示すように、減速判定部301から送信される判定結果に基づいて車両100が減速状態であるか否かを判断し(S401)、車両100が減速状態であると判断したときに、クランク角センサ211によって検出されたエンジン101の回転数が所定値NE_th以上であるか否かを判断する(S402)。次いで、エンジン101の回転数が所定値NE_th以上であると判断したときには、エンジン101への燃料供給を停止してエンジン101を空転状態にする(S403)。一方で、車両100が減速状態でないと判断したときやエンジン101の回転数が所定値NE_thよりも低いと判断したときは、例えばアクセルペダルの踏み込み量に応じた通常の燃料噴射制御を実施する(S404)。なお、所定値NE_thは、例えば、燃料供給停止状態から燃料供給を再開して点火プラグ210により該燃料を着火したときに、エンジン101の回転を維持し得る回転数に設定される。
【0034】
目標値演算部310の目標スロットル開度演算部304は、減速判定部301から送信される判定結果、燃料供給量演算部303から送信される演算結果(燃料供給量)、及び再加速予測部302から送信される予測結果に基づいて、エンジン101に流入する空気量(吸入空気量)を調整する電制スロットル201の開度を演算し、その演算結果(目標スロットル開度)に基づく制御信号をエンジン101の電制スロットル201へ送信する。
【0035】
具体的には、目標スロットル開度演算部304は、
図5に示すように、減速判定部301から送信される判定結果に基づいて車両100が減速状態であるか否かを判断し(S501)、車両100が減速状態であると判断したときに、燃料供給量演算部303から送信される燃料供給量がゼロであるか否かを判断する(S502)。なお、車両100が減速状態であると判断されたときにはアクセルペダルの踏み込み量がゼロとなっており、電制スロットル201の開度を全閉付近になるまで小さく設定し、燃料供給量がゼロになるまでその開度を維持する(
図6の時刻T11〜T12)。
【0036】
次いで、目標スロットル開度演算部304は、燃料供給量がゼロであると判断したときに、再加速予測部302から送信される予測結果に基づいて車両100が減速状態から再加速する可能性があるか否かを判断し(S503)、車両100が再加速する可能性がないと判断したときには、電制スロットル201を全閉付近から例えば全開状態になるまで徐々に開いていく(S504)(
図6の時刻T12〜T13)。
【0037】
一方、車両100が減速状態でないと判断したときや車両100が再加速する可能性があると判断したときは、例えばアクセルペダルの踏み込み量に応じた通常のスロットル制御を実施する(S505)。例えば、車両100が減速状態であると判断し(アクセルペダルの踏み込み量がゼロ)、車両100が再加速する可能性があると判断した場合には、電制スロットル201を全閉付近に維持する。また、例えば、車両100が再加速する可能性がないと判断して電制スロットル201を全開状態になるまで開弁した後に車両100が再加速する可能性があると判断した場合であり、アクセルペダルの踏み込み量がゼロである場合には、電制スロットル201を全閉付近になるまで徐々に閉じていく(
図6の時刻T13〜T14)。
【0038】
このように、車両100が再加速する可能性がないと判断したときに電制スロットル201の開度(目標スロットル開度)を大きく設定することによって、エンジン101のポンピングロスを低減してエンジンフリクションを低減しながら、車両100の再加速に起因する車両100の燃費性能の悪化を抑制することができる。また、電制スロットル201の開度を徐々に開くことによって、エンジンフリクションの急激な低下に伴うトルクショックを防止することもできる。
【0039】
なお、電制スロットル201の開度が小さい領域では、電制スロットル201の開度に対するエンジン101のポンピングロスの変動量が大きくなり、エンジンフリクションの低下に伴うトルクショックが大きくなる可能性がある。そのため、目標スロットル開度演算部304は、エンジン101への燃料供給を停止したときに、電制スロットル201の開度が小さい領域における開度の単位時間当たりの増加量もしくは減少量(電制スロットル201の開閉速度)が電制スロットル201の開度が大きい領域における電制スロットル201の開閉速度よりも小さくなるように電制スロットル201を開閉駆動することが好ましい。
【0040】
また、目標値演算部310の目標発電電力演算部305は、減速判定部301から送信される判定結果、バッテリ状態検出装置110から送信されるバッテリ108の残容量SOC、燃料供給量演算部303から送信される演算結果(燃料供給量)、及び再加速予測部302から送信される予測結果に基づいて、バッテリ108の充電状態を調整する発電機106の発電電力を演算し、その演算結果(目標発電電力)に基づく制御信号を発電機106へ送信する。
【0041】
具体的には、目標発電電力演算部305は、
図7に示すように、減速判定部301から送信される判定結果に基づいて車両100が減速状態であるか否かを判断し(S701)、車両100が減速状態であると判断したときに、バッテリ108の残容量SOCが所定値SOC_th以上であるか否かを判断する(S702)。なお、所定値SOC_thは、例えば、バッテリ108が過放電状態とならない値やバッテリ108の劣化が進行しない値などに設定される。
【0042】
次いで、目標発電電力演算部305は、バッテリ108の残容量SOCが所定値SOC_th以上であると判断したときに、バッテリ108の残容量SOCが十分であると判断し、発電機106を制御して発電させないようにする。すなわち、発電機106の発電電力(目標発電電力)をゼロに設定する(S703)。これにより、エンジン101への負荷を低減して燃料消費を抑制することができる。
【0043】
次に、目標発電電力演算部305は、燃料供給量演算部303から送信される燃料供給量がゼロであるか否かを判断し(S704)、燃料供給量がゼロであると判断したときには、再加速予測部302から送信される予測結果に基づいて車両100が減速状態から再加速する可能性があるか否かを判断する(S705)。そして、車両100が再加速する可能性がないと判断したときには、発電機106の発電電力が最大となるように目標発電電力を設定する(S706)。
【0044】
ここで、発電機106はその回転数に応じて発電可能な電力が変化するため、目標発電電力演算部305は、発電機106の回転数に応じて当該発電機106が発電可能な最大発電電力を予め演算する。また、バッテリ108が発電機106から受け入れ可能な電力(バッテリ充電可能電力)は、バッテリ108の残容量SOCが大きくなるに従って小さくなり、バッテリ108の残容量SOCが所定値以下になると一定となるため、目標発電電力演算部305は、バッテリ108の残容量SOCに応じたバッテリ充電可能電力を予め演算する。そして、目標発電電力演算部305は、予め演算した最大発電電力とバッテリ充電可能電力のうち値が小さい方を目標発電電力として設定する(
図8参照)。なお、バッテリ充電可能電力はバッテリ108の性能によって規定される。
【0045】
一方、目標発電電力演算部305は、車両100が減速状態でないと判断したときやバッテリ108の残容量SOCが所定値SOC_thよりも低いと判断したとき、車両100が再加速する可能性があると判断したときは、例えばアクセルペダルの踏み込み量やバッテリ108の残容量SOCに応じた通常の発電電力制御を実施する(S707)。例えば、車両100の加速中においては、エンジン101の負荷が大きくならないように発電機106の目標発電電力をゼロに設定し、バッテリ108の残容量SOCが所定値SOC_thよりも低くなったときにはバッテリ108が過放電状態とならないように、あるいは、バッテリ108の劣化が進行しないように、バッテリ108に対する発電機106の目標発電電力を上昇させて該バッテリ108を充電する。さらに、バッテリ108の残容量SOCが別途の所定値SOC_th2よりも大きくなったときには、発電機106の目標発電電力をゼロに設定してもよい。
【0046】
このように、車両100が再加速する可能性がないと判断したときに発電機106の発電電力が最大となるように目標発電電力を設定することによって、車両100の再加速に起因する車両100の燃費性能の悪化を抑制しながら、エンジン101への燃料供給量がゼロの状態で運動エネルギを電気エネルギとして最大限に回収することができ、車両100の燃費を一層高めることができる。
【0047】
本実施形態1のコントローラ111では、外界情報取得装置112によって取得される車両100の周囲の外界情報を利用して当該車両100の減速状態からの再加速を予測した上で電制スロットル201を開くことによって、エンジン101のポンピングロスを低減してエンジンフリクションを低減し、車両100の運動エネルギの損失が低減しながら、車両100の再加速に起因する燃費性能の悪化を抑制することができる。また、車両100の運動エネルギの損失が低減された状態で、発電機106の発電電力を大きく設定することによって、バッテリ108で回生し得る回生エネルギを効果的に高めることができ、車両100全体としての燃費性能を格段に高めることができる。
【0048】
[実施形態2]
図9は、本発明に係る車両制御装置の実施形態2の内部構成を概略的に示したものである。実施形態2の車両制御装置は、上記する実施形態1の車両制御装置に対して、主に目標値演算部の構成が相違しており、その他の構成は実施形態1の車両制御装置と同様である。したがって、実施形態1の車両制御装置と同様の構成には同様の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0049】
図示するように、コントローラ111Aは、主に、減速判定部301Aと再加速予測部302Aと燃料供給量演算部303Aと目標駆動力演算部801Aと目標エンジントルク演算部802Aと目標値演算部310Aを備え、目標値演算部310Aは、目標スロットル開度演算部304Aと目標発電電力演算部305Aを有している。
【0050】
目標駆動力演算部801Aは、アクセルペダル踏み込み量検出装置113によって検出されたアクセルペダルの踏み込み量及び車速検出装置115によって検出された車両100の車速に基づいて目標駆動力を演算する。
【0051】
具体的には、目標駆動力演算部801Aは、
図10に示すように、予め記憶されたアクセルペダルの踏み込み量と車両100の車速と目標駆動力の関係を規定するマップM10に基づいて目標駆動力を演算する。なお、このマップM10は、アクセルペダルの踏み込み量がゼロのときであって車両100の車速が所定値Vth未満のときに正の目標駆動力を出力し、車両100の車速が所定値Vth以上のときに負の目標駆動力を出力するように設定する。ここで、所定値Vthはクリープトルクを発生させる車速に設定する。これにより、アクセルペダルの踏み込み量がゼロであって車両100の車速が所定値Vth未満のときに目標駆動力をクリープトルク相当とし、車両100の車速が所定値Vth以上のときに目標駆動力をエンジンブレーキ相当とすることができる。
【0052】
目標エンジントルク演算部802Aは、以下の式(1)により、目標駆動力演算部801Aから送信される目標駆動力TG_F、予め記憶された変速機102のギア比Gt、ディファレンシャル機構103のギア比Gf、及び駆動輪104の外径Trに基づいて目標エンジントルクTG_Tを演算する。
【0054】
目標値演算部310Aの目標発電電力演算部305Aは、上記した実施形態1と同様に、減速判定部301Aから送信される判定結果、バッテリ状態検出装置110から送信されるバッテリ108の残容量SOC、燃料供給量演算部303Aから送信される演算結果(燃料供給量)、及び再加速予測部302Aから送信される予測結果に基づいて、バッテリ108の充電状態を調整する発電機106の発電電力を演算し、その演算結果(目標発電電力)に基づく制御信号を発電機106へ送信する。
【0055】
目標値演算部310Aの目標スロットル開度演算部304Aは、目標エンジントルク演算部802Aから送信される目標エンジントルク、目標発電電力演算部305Aから送信される目標発電電力、クランク角センサ211によって検出されるエンジン101の回転数に基づいて、エンジン101に流入する空気量(吸入空気量)を調整する電制スロットル201の開度を演算し、その演算結果(目標スロットル開度)に基づく制御信号をエンジン101の電制スロットル201へ送信する。
【0056】
具体的には、目標スロットル開度演算部304Aは、
図11に示すように、目標発電電力演算部305Aによって演算された目標発電電力を予め検出された発電機106の回転数で除して発電機106の発電負荷トルクを演算する。なお、発電機106の回転数は、発電機106に取り付けられた回転数センサから得られる情報に基づいて検出してもよいし、例えばオルタネータのように駆動ベルト107が固定プーリである場合には、エンジン101の回転数を取得し、そのエンジン101の回転数に固定プーリの比を乗じた値に基づいて推定してもよい。
【0057】
また、目標スロットル開度演算部304Aは、目標エンジントルク演算部802Aによって演算された目標エンジントルクから発電負荷トルクを差し引いて目標フリクショントルクを演算する。すなわち、目標スロットル開度演算部304Aは、目標エンジントルクを実現するために発電負荷トルクで賄えない分を目標フリクショントルクとして演算して出力する。そして、目標スロットル開度演算部304Aは、予め記憶されたエンジン101の回転数と目標フリクショントルクと目標スロットル開度の関係を規定するマップM11に基づいて目標スロットル開度を演算する。
【0058】
このように、本実施形態2のコントローラ111Aでは、目標発電電力演算部305Aによりバッテリ108の充電状態(残容量SOC)に基づいて目標発電電力を演算すると共に、目標スロットル開度演算部304Aによりその目標発電電力に基づいて目標スロットル開度を演算することによって、
図12に示すように、バッテリ108を効率的に充電しながら(時刻T21〜T23)、バッテリ108の充電状態に応じて電制スロットル201の開度を調整して(時刻T23〜T24)所望の目標駆動力を実現することができる。よって、バッテリ108の回生エネルギを確保しながら、バッテリ108の残容量SOCに起因する車両100の減速度ばらつきを抑制して車両100の運転性能を高めることができる。
【0059】
[実施形態3]
図13は、本発明に係る車両制御装置の実施形態3の内部構成を概略的に示したものである。実施形態3の車両制御装置は、上記する実施形態2の車両制御装置に対して、主に目標駆動力演算部の構成が相違しており、その他の構成は実施形態2の車両制御装置と同様である。したがって、実施形態2の車両制御装置と同様の構成には同様の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0060】
図示するように、コントローラ111Bは、主に、減速判定部301Bと再加速予測部302Bと燃料供給量演算部303Bと目標停止位置演算部1301Bと目標駆動力演算部801Bと目標エンジントルク演算部802Bと目標値演算部310Bを備え、目標値演算部310Bは、目標スロットル開度演算部304Bと目標発電電力演算部305Bを有している。
【0061】
目標停止位置演算部1301Bは、外界情報取得装置112により取得された車両100の外界情報に基づいて、車両100が停止すべき目標停止位置を演算する。具体的には、目標停止位置演算部1301Bは、自車両の位置から最も近い信号機が停止信号であるか否か、自車両の前方の車両が停止中であるか否か、自車両の前方に停止線があるか否か等に基づいて、車両100が停止すべきか否かを判断し、自車両の位置から最も近い信号機が停止信号であることや、自車両の前方の車両が停止中であること、自車両の前方に停止線があることを検知したときに、車両100が停止すべきと判断して目標停止位置を演算する。なお、目標停止位置は、例えば、外界情報取得装置112により取得された外界情報の自車両の前方の信号機、前方車両の後方位置、自車両の前方の停止線等から所定値だけ手前の位置に設定する。ここで、車両100に衝突防止ブレーキ機構が搭載されている場合には、目標停止位置は、衝突防止ブレーキ作動時の停止位置等に設定してもよい。
【0062】
目標駆動力演算部801Bは、減速判定部301Bから送信される判定結果、燃料供給量演算部303Bから送信される演算結果(燃料供給量)、再加速予測部302Bから送信される予測結果、目標停止位置演算部1301Bから送信される演算結果(目標停止位置)、及び車速検出装置115から送信される車両100の車速に基づいて目標駆動力を演算し、その演算結果(目標駆動力)を目標エンジントルク演算部802Bへ送信する。
【0063】
具体的には、目標駆動力演算部801Bは、
図14に示すように、減速判定部301Bから送信される判定結果に基づいて車両100が減速状態であるか否かを判断し(S1401)、車両100が減速状態であると判断したときに、燃料供給量演算部303Bから送信される燃料供給量がゼロであるか否かを判断する(S1402)。電制スロットル201の開度が小さく(例えば全閉付近に)設定され、エンジン101への燃料供給量がゼロであると判断したときには、再加速予測部302Bから送信される予測結果に基づいて車両100が減速状態から再加速する可能性があるか否かを判断し(S1403)、車両100が再加速する可能性がないと判断したときには、目標停止位置演算部1301Bから送信される目標停止位置に基づいて目標停止位置があるか否かを判断する(S1404)。次に、目標停止位置があると判断したときには、前記目標停止位置と自車両との距離Xstopを演算すると共に、以下の式(2)により、車両100の車速Vと距離Xstopとに基づいて目標減速度(車両後方への加速度を正とする)TG_αを演算する(S1405)。
【0065】
そして、目標駆動力演算部801Bは、以下の式(3)により、S1405で演算された目標減速度TG_αに基づいて目標駆動力(車両前方への力を正とする)TG_FAを演算する(S1406)。なお、以下の式(3)において、Mは車両の重量、Cdは空気抵抗係数、Sは前面投影面積、Vは車速、gは重力加速度、θは路面勾配、uは転がり抵抗係数を表している。また、以下の式(3)において、括弧内は車両の走行抵抗と称することができる。
【0067】
なお、目標停止位置と自車両との距離Xstopが大きくなるに従って目標減速度TG_αは小さくする必要があるものの、目標減速度TG_αが小さくなり過ぎると、車両100が減速中にも関わらず、目標駆動力TG_FAが正となって車両100に駆動力が発生してしまう。そこで、車両100の減速中に駆動力を発生させない範囲内で電制スロットル201の目標スロットル開度を調整するために、目標駆動力TG_FAを算出するための目標減速度TG_αは、以下の式(4)に示す関係を満たすように設定されることが好ましい。
【0069】
一方、車両100が減速状態でないと判断したときや車両100が再加速する可能性があると判断したとき、目標停止位置がないと判断したときには、例えばアクセルペダルの踏み込み量や車両100の車速に応じた通常の駆動力制御を実施する(S1407)。すなわち、目標駆動力演算部801Bは、例えば
図10に基づき説明した演算方法に基づいて目標駆動力を算出する。
【0070】
このように、本実施形態3のコントローラ111Bでは、目標停止位置演算部1301Bにより車両100の外界情報に基づいて目標停止位置を演算すると共に、目標駆動力演算部801Bによりその目標停止位置に基づいて目標駆動力を演算した上で、目標発電電力演算部305Bにより目標発電電力を演算し、目標スロットル開度演算部304Bによりその目標発電電力に基づいて目標スロットル開度を演算する。これにより、
図15に示すように、車両100が停止すべき目標停止位置に応じた減速度で減速され、その減速度に応じて電制スロットル201の開度が調整されることで(特に時刻T32〜T33)、運動エネルギの損失を抑制することができる。よって、車両100を効率的に減速させて目標停止位置に停止させることができると共に、バッテリ108の回生エネルギを増加させて車両100の燃費性能を高めることができる。
【0071】
[実施形態4]
ところで、車両100に、コーストストップ機構が搭載されている場合、エンジンブレーキによる減速とコーストストップによる減速を切り替えて利用することで、減速中のエンジン101の再始動を抑制し、車両100の燃費性能を高めることができる。なお、コーストストップ機構とは、車両100の減速時にエンジン101への燃料供給を中断してエンジン101を停止させ、クラッチ等を開放して車両100を惰性走行させる機構である。一方、コーストストップによる減速を行うと、エンジン101が停止して発電機106も停止するため、車両100の運動エネルギを電気エネルギとして回生できなくなり、車両100の燃費性能が低下する可能性もある。
【0072】
そこで、本実施形態4の車両制御装置では、車両100の外界情報に基づいて、車両100の走行状態に応じた適宜の時期にエンジンブレーキによる減速とコーストストップによる減速を切り替えることで、バッテリ108の回生エネルギを確保して車両100の燃費性能を向上させる。
【0073】
図16は、本発明に係る車両制御装置の実施形態4の内部構成を概略的に示したものである。実施形態4の車両制御装置は、上記する実施形態3の車両制御装置に対して、主に動力伝達状態演算部を追加した点及び目標値演算部の構成が相違しており、その他の構成は実施形態3の車両制御装置と同様である。したがって、実施形態3の車両制御装置と同様の構成には同様の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0074】
図示するように、コントローラ111Cは、主に、減速判定部301Cと再加速予測部302Cと燃料供給量演算部303Cと目標停止位置演算部1301Cと目標駆動力演算部801Cと目標エンジントルク演算部802Cと動力伝達状態演算部1701Cと目標値演算部310Cを備え、目標値演算部310Cは、目標スロットル開度演算部304Cと目標発電電力演算部305Cを有している。
【0075】
ここで、上記コーストストップ機構を実現するために、エンジン101とディファレンシャル機構103の間に設けられる変速機102は、
図17に示すように、トルクコンバータ601Cと変速比可変部602Cと動力伝達制御部603Cを有している。変速機102は、ロックアップクラッチ機構を有するトルクコンバータ601Cによってエンジン101側からの出力トルクを受信し、変速比可変部602Cによってその変速比を変更し、乾式クラッチあるいは湿式クラッチ等からなる動力伝達制御部603Cによってディファレンシャル機構103側へエンジン101の動力を伝達するか否かを制御する。なお、変速比可変部602Cは、複数のギアを有する自動変速機であってもよいし、入力側/出力側のプーリの幅を調整して変速比を連続的に可変する無段変速機であってもよい。
【0076】
コントローラ111Cの動力伝達状態演算部1701Cから動力伝達制御部603Cへ動力伝達状態に関する制御信号を送信し、その制御信号に基づいて前記動力伝達制御部603Cがエンジン101とディファレンシャル機構103(すなわち車両100の駆動輪104)との間で動力を伝達したり遮断することによって、車両100の減速中にエンジンブレーキによる減速とコーストストップによる減速を切り替えることができる。
【0077】
上記した動力伝達状態演算部1701Cは、
図16に示すように、目標停止位置演算部1301Cから送信される演算結果(目標停止位置)等に基づいて、動力伝達制御部603Cにおける動力伝達状態を演算し、その演算結果(動力伝達状態)を目標値演算部310Cの目標スロットル開度演算部304Cと目標発電電力演算部305Cへ送信する。
【0078】
具体的には、動力伝達状態演算部1701Cは、
図18に示すように、目標停止位置演算部1301Cから送信される目標停止位置に基づいて目標停止位置があるか否かを判断し(S1801)、目標停止位置があると判断したときには、コーストストップを推奨するか否かを判断する(S1802)。ここで、動力伝達状態演算部1701Cは、コーストストップによる減速で目標停止位置に到達できずに車両100を再加速させ、当該車両100の燃費性能が低下する可能性を回避するために、自車両から目標停止位置までの距離Xstopとコーストストップで到達し得る距離Xcを算出し、距離Xstopが距離Xc以上であるときにコーストストップを推奨すると判断する。なお、減速中にエンジン101の回転数が所定値以下になると、エンジン100を再始動して無駄な燃料消費が発生する可能性があるため、動力伝達状態演算部1701Cは、距離Xstopが距離Xcよりも小さいときであっても、エンジン101の回転数が前記所定値以下であるときにはコーストストップを推奨すると判断してもよい。
【0079】
コーストストップで到達可能な距離Xcは、車速検出装置115によって検出された車両100の車速Vとコーストストップを実施したときの減速度(車両後方への加速度を正とする)αcに基づいて、以下の式(5)により算出される。
【0081】
また、コーストストップを実施したときの減速度αcは、以下の式(6)により算出される。なお、以下の式(6)において、Mは車両の重量、Cdは空気抵抗係数、Sは前面投影面積、Vは車速、gは重力加速度、θは路面勾配、uは転がり抵抗係数を表している。
【0083】
次いで、動力伝達状態演算部1701Cは、コーストストップを推奨すると判断したときに、コーストストップの準備を開始する(S1803)。具体的には、動力伝達制御部603Cで動力伝達を開放(遮断)する前の事前処理として、電制スロットル201を徐々に開いて全開付近にしつつ、発電機106の発電電力(目標発電電力)をゼロにして発電機106の負荷トルクを小さくする(
図21の時刻T42〜T43)。
【0084】
次に、動力伝達状態演算部1701Cは、コーストストップ許可条件が成立したか否か、すなわち上記した事前処理が完了したか否かを判断し(S1804)、コーストストップ許可条件が成立したと判断したときには、動力伝達制御部603Cによりエンジン101とディファレンシャル機構103との間の動力伝達を遮断してコーストストップ処理を実施する(S1805)(
図21の時刻T43)。動力伝達状態演算部1701Cは、定期的にエンジン再始動条件が成立したか否かを判断し(S1806)、エンジン再始動条件が成立したと判断するまでは、このコーストストップ処理を維持する。その際、電制スロットル201の目標スロットル開度をゼロ付近とし、電制スロットル201を全閉付近にまで閉じている。
【0085】
動力伝達状態演算部1701Cは、エンジン再始動条件として、バッテリ108の残容量SOCが所定値以下になったか否か、車載電装機器109の電気負荷が高いか否か、エバポレータ温度が所定値以上になったか否か、ブレーキ負圧が低下したか否か、再加速予測部302Cによって車両100が再加速する可能性があると判断されたか否か等を定期的に判断し、それらの少なくとも1つが成立したときにエンジン再始動条件が成立したと判断してエンジン101を再始動させる(S1807)。そして、エンジン101の再始動が完了した後に、動力伝達制御部603Cによりエンジン101とディファレンシャル機構103との間の動力伝達を再開する(S1808)。
【0086】
目標値演算部310Cの目標スロットル開度演算部304Cは、主に、減速判定部301Cから送信される判定結果、燃料供給量演算部303Cから送信される演算結果(燃料供給量)、再加速予測部302Cから送信される予測結果、及び動力伝達状態演算部1701Cから送信される演算結果(動力伝達状態)に基づいて、エンジン101に流入する空気量(吸入空気量)を調整する電制スロットル201の開度を演算し、その演算結果(目標スロットル開度)に基づく制御信号をエンジン101の電制スロットル201へ送信する。
【0087】
具体的には、目標スロットル開度演算部304Cは、
図19に示すように、
図5に基づき説明した実施形態1と同様のステップ(S1901〜S1905)を実施し、電制スロットル201を全閉付近から徐々に開いていく(S1904)、あるいは、例えばアクセルペダルの踏み込み量に応じた通常のスロットル制御を実施する(S1905)。
【0088】
次いで、目標スロットル開度演算部304Cは、動力伝達状態演算部1701Cから送信される動力伝達状態に基づいてコーストストップの準備が開始したか否かを判断し(S1906)、コーストストップの準備が開始したと判断したとき(
図18のS1803に対応)には、動力伝達を開放したときのトルクショックを低減するために、電制スロットル201を全開にし(S1907)、エンジンフリクションを低減する。目標スロットル開度演算部304Cは、定期的にコーストストップ処理を実施したか否かを判断し(S1908)、コーストストップ処理を実施したと判断するまでは、電制スロットル201を全開に維持する(
図21の時刻T42〜T43)。
【0089】
次に、目標スロットル開度演算部304Cは、コーストストップ処理を実施したと判断したとき(
図18のS1805に対応)、エンジン再始動待機処理を実施する(S1909)。具体的には、次回のエンジン101の再始動時に無駄な空気流入による燃料消費を抑制するために、電制スロットル201を全閉付近に制御する(
図21の時刻T43)。ここで、コーストストップ状態ではエンジン101の回転が停止しており、電制スロットル201の開度の単位時間当たりの変化量(電制スロットル201の開閉速度)を大きくしてもトルクショックが発生しないことから、次回のエンジン101の再始動までの準備時間を短縮するために、電制スロットル201を全閉付近へ迅速に制御する。
【0090】
そして、目標スロットル開度演算部304Cは、動力伝達状態演算部1701Cから送信される動力伝達状態に基づいてエンジン101が再始動したか否かを判断し(S1910)、エンジン101が再始動したと判断した(
図18のS1807に対応)ときには、当該演算処理を終了する。
【0091】
また、目標値演算部310Cの目標発電電力演算部305Cは、減速判定部301Cから送信される判定結果、バッテリ状態検出装置110から送信されるバッテリ108の残容量SOC、燃料供給量演算部303Cから送信される演算結果(燃料供給量)、再加速予測部302Cから送信される予測結果、及び動力伝達状態演算部1701Cから送信される演算結果(動力伝達状態)に基づいて、バッテリ108の充電状態を調整する発電機106の発電電力を演算し、その演算結果(目標発電電力)に基づく制御信号を発電機106へ送信する。
【0092】
具体的には、目標発電電力演算部305Cは、
図20に示すように、
図7に基づき説明した実施形態1と同様のフロー(S2001〜S2005、S2007)を実施する。また、目標発電電力演算部305Cは、動力伝達状態演算部1701Cから送信される動力伝達状態に基づいてコーストストップの準備が開始したか否かを判断し(S2008)、コーストストップの準備が開始したと判断したとき(
図18のS1803に対応)には、発電機106による発電負荷を小さくしてコースストップ時におけるトルクショックを抑制するために、発電機106の発電電力(目標発電電力)を徐々に低下させてゼロにする(S2009)。一方、コーストストップの準備が開始していないと判断したときには、
図7に基づき説明した実施形態1と同様、発電機106の発電電力が最大となるように目標発電電力を設定する(S2006)。
【0093】
このように、本実施形態4のコントローラ111Cでは、車両100の外界情報に基づいて演算される目標停止位置に応じてエンジン101と駆動輪104との間の動力伝達状態を変更し、車両100の走行状態に応じた適宜の時期にエンジンブレーキによる減速とコーストストップによる減速を切り替えることによって、バッテリ108の回生エネルギを確保して車両100の燃費性能をより一層高めることができる。また、車両100の減速時におけるエンジン101の低回転領域にてコーストストップを実施することによって、燃料再供給に起因する燃費の悪化を抑制することができる。また、コーストストップ処理を実施する以前に電制スロットル201の開度を大きくしたり、発電機106の発電電力を小さくすることによって、エンジンブレーキによる減速からコーストストップによる減速に切り替える際に発生し得るトルクショックを効果的に低減することができる。
【0094】
なお、上記する実施形態4では、目標スロットル開度演算部304Cが、減速判定部301Cから送信される判定結果、燃料供給量演算部303Cから送信される燃料供給量、再加速予測部302Cから送信される予測結果、及び動力伝達状態演算部1701Cから送信される動力伝達状態に基づいて電制スロットル201の開度を演算する形態について説明したが、例えば実施形態2、3と同様に、目標エンジントルク演算部802Cから送信される目標エンジントルク、目標発電電力演算部305Cから送信される目標発電電力、クランク角センサ211によって検出されるエンジン101の回転数、及び動力伝達状態演算部1701Cから送信される動力伝達状態等に基づいて電制スロットル201の開度を演算してもよい。
【0095】
なお、本発明は上記した実施形態1〜4に限定されるものではなく、様々な変形形態が含まれる。例えば、上記した実施形態1〜4は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0096】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0097】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。