(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記車体(1)に揺動可能に支持され、前記クッションユニット(18)の作動端部(18a)を支持するとともに前記揺動部材(33)を介して前記フロントフォーク(11)を支持するクッションアーム(32)を備えることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
前記フロントフォーク(11)は、前方に湾曲した湾曲部(22a)を形成するフォーク本体(21)を有し、前記湾曲部(22a)の内側に前記揺動部材(33)が配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
前記フロントフォーク(11)は、前記湾曲部(22a)の上下端部に渡るフロントフォークステー(25)を有し、前記フロントフォークステー(25)に前記揺動部材(33)が支持されることを特徴とする請求項3に記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
前記スイングアーム(13)は、左右一対のアーム部(13c)と、前記左右アーム部(13c)の後端部を前輪(9)の後方で連結するアーム連結部(13d)と、を有することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
前記フロントフォーク(11)は、左右一対のフォーク部(22)と、前記左右フォーク部(22)を連結するフォーク連結部(23,24)と、を有することを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の鞍乗り型車両の前輪懸架装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の発明によれば、車軸がロアアームの回動軌跡上を動くことにより、前輪のストロークの軌跡が円弧状になるため、前輪の上下動に合わせて前輪の前後の移動が生じる。前輪の前後の移動があると、トレール量が変化することにより乗員の乗り心地に影響を与えるため、車軸の上下の動きは維持しつつも前後の移動を少なくすることが望まれている。
【0005】
そこで本発明は、リンク機構を用いて前輪を懸架する鞍乗り型車両の前輪懸架装置において、前輪の上下動に伴う前輪の前後の移動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、リンク機構を用いて前輪(9)を懸架する鞍乗り型車両の前輪懸架装置(10)において、車体(1)に設けられるハンドル支持部(1a)と、前記ハンドル支持部(1a)に上端部を操向可能かつ揺動可能に支持されるフロントフォーク(11)と、前記フロントフォーク(11)の下端部に後端部を揺動可能に支持されるとともに前端部に前輪(9)を軸支するスイングアーム(13)と、前記スイングアーム(13)の前端部に下端部を揺動可能に支持されるリンクアーム(14)と、前記リンクアーム(14)の上端部に前端部を揺動可能に連結するとともに後端部を前記フロントフォーク(11)の上下中間部に揺動可能に連結するリンクロッド(16)と、前記スイングアーム(13)の前後中間部に下端部を揺動可能に連結する伝達ロッド(17)と、前記スイングアーム(13)の揺動に伴う前記伝達ロッド(17)の移動により作動して緩衝作用を生じるクッションユニット(18)と、前記クッションユニット(18)の作動端部(18a)と前記伝達ロッド(17)の上端部との間に介設され、前記スイングアーム(13)の揺動に伴う前記伝達ロッド(17)の移動により揺動して、前記クッションユニット(18)を作動させるとともに前記フロントフォーク(11)を揺動させる揺動部材(33)と、を備えることを特徴とする。
なお、前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(スクータ型車両を含む)のみならず三輪の車両も含まれる。
請求項2に記載した発明は、前記車体(1)に揺動可能に支持され、前記クッションユニット(18)の作動端部(18a)を支持するとともに前記揺動部材(33)を介して前記フロントフォーク(11)を支持するクッションアーム(32)を備えることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、前記フロントフォーク(11)は、前方に湾曲した湾曲部(22a)を形成するフォーク本体(21)を有し、前記湾曲部(22a)の内側に前記揺動部材(33)が配置されることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、前記フロントフォーク(11)は、前記湾曲部(22a)の上下端部に渡るフロントフォークステー(25)を有し、前記フロントフォークステー(25)に前記揺動部材(33)が支持されることを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、前記スイングアーム(13)は、左右一対のアーム部(13c)と、前記左右アーム部(13c)の後端部を前輪(9)の後方で連結するアーム連結部(13d)と、を有することを特徴とする。
請求項6に記載した発明は、前記フロントフォーク(11)は、左右一対のフォーク部(22)と、前記左右フォーク部(22)を連結するフォーク連結部(23,24)と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載した発明によれば、前輪の上下動によりスイングアームが揺動すると、伝達ロッドが移動して揺動部材を揺動させ、クッションユニットを作動させるとともにフロントフォークを揺動させる。これにより、スイングアーム、リンクアーム、リンクロッド及びフロントフォークを含んだ四節リンクがパンタグラフ状に作動し、前輪車軸を概ね直線状にストロークさせることが可能となる。このため、トレール量の変化が抑えられ、乗り心地への影響を抑えることができる。
請求項2に記載した発明によれば、フロントフォークをクッションアームで車体側からしっかり支持し、前輪懸架装置の剛性を高めることができる。
請求項3に記載した発明によれば、揺動部材周辺に前方からの外乱が至り難くなるとともに、揺動部材をコンパクトに配置することができる。
請求項4に記載した発明によれば、湾曲したフォーク本体の剛性を確保するとともに、フロントフォークステーに揺動部材の支持機能を持たせ、揺動部材の支持剛性を高めることができる。
請求項5に記載した発明によれば、左右アーム部及びクロスメンバにより前輪の支持剛性を高めることができる。
請求項6に記載した発明によれば、左右フォーク部及びフォーク連結部により前輪の支持剛性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UP、及び車両左右中心線CLが示されている。
【0010】
図1は、鞍乗り型車両の一例としての自動二輪車の車体前部を示す。自動二輪車の車体フレーム1は、前端部に前輪懸架装置10を支持するフロントブロック2を有する。フロントブロック2の後方には左右一対のメインフレーム3が後下がりに延び、これらが不図示の後輪懸架装置10を支持するピボットフレーム4に接続される。フロントブロック2及び左右メインフレーム3の下方には、例えば水平対向型のエンジン5が搭載される。フロントブロック2及び左右メインフレーム3の上方には、エアクリーナケース及び各種電装部品等の補機類6が配置される。自動二輪車の車体前部は、合成樹脂製のフロントカウル7で覆われる。
【0011】
図2、
図3、
図9を併せて参照し、前輪懸架装置10は、車体フレーム1のフロントブロック2の上前端部で垂直方向に対して後傾して設けられる円筒状のハンドル支持部1aと、ハンドル支持部1aの上方にバーハンドル8の左右中央部を操向可能に支持するハンドルポスト8aと、ハンドル支持部1aの下方で上端部を後述するステアリング軸線C14を中心に操向可能、かつ上段ボールジョイント27を介して揺動自在に支持されるフロントフォーク構造体11と、ハンドルポスト8aとフロントフォーク構造体11の上部との間に架設されるステアリングリンク12と、を備える。
【0012】
ここで、ステアリング軸線C14とは、上段ボールジョイント27の揺動中心C11と中段ボールジョイント34の揺動中心C13とを結んだ直線(転舵軸)であり、このステアリング軸線C14の鉛直方向に対する角度がキャスター角となる。
【0013】
また、前輪懸架装置10は、フロントフォーク構造体11の下端部に後端部(アーム部13cの後端部13b)を車幅方向に沿う揺動軸13fを介して揺動可能に支持されるとともに、前端部(アーム部13cの前端部13a)に前輪車軸9aを支持するリーディングアームとしてのスイングアーム13と、スイングアーム13の前端部に下端部14bを前輪車軸9aの外側部を介して揺動可能に支持されるブレーキアーム14と、ブレーキアーム14の後方に支持されるブレーキキャリパ15と、ブレーキアーム14の上端部14aに前端部を車幅方向に沿う前連結軸16dを介して揺動可能に連結するとともに、後端部をフロントフォーク構造体11の上下中間部前側に設けたロッド連結部26に車幅方向に沿う後連結軸16eを介して揺動可能に連結するトルクロッド16と、を備える。
【0014】
なお、図中符号C1は前輪車軸9aの中心軸線、符号C2は揺動軸13fの中心軸線、符号C3,C4は前後連結軸16d,16eの中心軸線をそれぞれ示す。また、図中符号C1Lは中心軸線C1から地面Gに降ろした垂線、符号Tはトレールをそれぞれ示す。
【0015】
また、前輪懸架装置10は、スイングアーム13の前後中間部に下端部17bを車幅方向に沿う下連結軸17dを介して揺動可能に連結する伝達ロッド17と、車体前部の車幅方向中央でストローク軸線C9を前下がりに傾斜させて配置され、後上端部18b(支持端部)をフロントブロック2におけるハンドル支持部1aよりも後方に位置するクッション支持部1bに車幅方向に沿う後上支持軸18dを介して揺動可能に支持されるとともに、前下端部18a(作動端部)をクッションアーム32に車幅方向に沿う前下連結軸18cを介して揺動可能に連結し、スイングアーム13の揺動に伴う伝達ロッド17の移動により前下端部18aをストロークさせて緩衝作用を得るクッションユニット18と、クッションユニット18の前下端部18aと伝達ロッド17の上端部17aとの間に先端部(クッションアーム32の先端部)19a側を介在させるとともに、基端部(クッションアーム32の基端部)19bをフロントブロック2におけるクッションユニット18よりも下方に位置するアーム支持部1cに車幅方向に沿う揺動軸19cを介して揺動可能に支持されるクッションアーム組体19と、を備える。
【0016】
なお、図中符号17cは伝達ロッド17の上端部17aをクッションアーム組体19に連結する上連結軸、符号C5,C6は上下連結軸17c,17dの中心軸線、符号C7,C8は前下連結軸18c及び後上連結軸18dの中心軸線、符号C10は揺動軸19cの中心軸線をそれぞれ示す。
【0017】
図7を参照し、ハンドル支持部1aは、例えばアルミ製の車体フレーム1の前端部に一体に設けられる。ハンドル支持部1aは、その上部内周にハンドルポスト8aの軸部8bを挿通し、この軸部8bをハンドル支持部1aと同軸に回動可能(操向可能)に支持する。なお、図中符号1dはハンドル支持部1aの内周に保持されるボールベアリングを示す。
【0018】
本実施形態では、ハンドル支持部1aの中心軸線とステアリング軸線C14とが概ね一致する。軸部8bの上端部はハンドル支持部1aの上方に突出し、この上端部にハンドルポスト8aのホルダ8cが固定される。ホルダ8cには、バーハンドル8の左右中央部が固定的に支持される。
【0019】
図2〜
図5を参照し、フロントフォーク構造体11は、上下に延びる左右一対のフォーク部22、左右フォーク部22の上端部間を連結するとともにハンドル支持部1aの下方へ延びる上後延出部23、及び左右フォーク部22の後部間を連結する後クロスメンバ24、を一体に有するフォーク本体21と、フォーク本体21に上下端部25a,25bが締結固定される左右フロントフォークステー25と、左右フォーク部22の上下中間部前側に締結固定されるロッド連結部26と、を有する。フォーク本体21の各要素は、それぞれ例えば一体のアルミ製部品であり、これらが互いに一体に溶接結合される。
【0020】
フロントフォーク構造体11の側面視において、左右フォーク部22は、スイングアーム13のアーム部13cの後端部13bを支持する下端部から上方へやや前傾して延びた後、前方へ凸となるように湾曲する湾曲部22aを形成する。左右フォーク部22の上端部は車幅方向内側へ湾曲し、これらの上端部間に上後延出部23の下前端部が挟まれた状態で接合される。
【0021】
上後延出部23は、左右フォーク部22の上端部間から上後方へ延び、その上後端部23aを下後方へ傾斜させるように配置する。上後端部23aは、ハンドル支持部1aの下方でその下端部と軸方向で対向するように配置される。上後端部23aの上方には、上段ボールジョイント27のボールスタッド28がステアリング軸線C14に沿うように突設される。このボールスタッド28上端のボール部28aの中心が、上段ボールジョイント27の揺動中心C11となる。ボール部28aは、ハンドル支持部1aの下部内周に保持したソケット29内に摺動自在に保持される(
図7参照)。
【0022】
後クロスメンバ24は、左右フォーク部22の上下中間部に突設されて左右フロントフォークステー25の下端部25bをそれぞれ締結する左右の下ステー締結部22c間に渡接される。後クロスメンバ24は、その左右内側を後方に張り出すように湾曲し、かつ後下がりに傾斜して設けられる。
【0023】
フロントフォークステー25は、例えば所定形状に成形された一体帯状の鋼板からなり、その下端部25cを下ステー締結部22cに締結するとともに、上端部25aを上後延出部23の上後端部23aの直ぐ前方(側面視での頂部)に設けられた上ステー締結部23cに締結する。フロントフォークステー25は、その上部を車幅方向内側へ大きく湾曲させて、上端部25aを上ステー締結部23cの側面に至らしめる。
【0024】
なお、図中符号25cはフロントフォークステー25の上部に形成された円ビード、符号25e,25fはフロントフォークステー25の上下をフォーク本体21に締結するボルトをそれぞれ示す。
【0025】
ロッド連結部26は、例えば一体のアルミ製部品であり、フォーク部22の湾曲部22aの前側で前下向きの取り付け面に締結される。ロッド連結部26は、側面視で前傾した取り付け面に沿って延びるブロック状をなし、その上下端部が取り付け面にボルト26bにより締結される。ロッド連結部26の上下中間部には、取り付け面に沿って並ぶ上下一対の連結孔26aが車幅方向で貫通形成される。上下連結孔26aには、トルクロッド16の後端部を選択的に連結可能である。
【0026】
ステアリングリンク12は、側面視で前方に凸のV字状に配置されたアッパーリンク12a及びロアリンク12bを有する。アッパーリンク12a及びロアリンク12bは、それぞれ例えば一体のアルミ製部品である。
【0027】
アッパーリンク12aは、その後端部をハンドルポスト8aのホルダ8cに車幅方向に沿う上連結軸12cを介して揺動可能に連結し、前端部をロアリンク12bの前端部に車幅方向に沿う中間連結軸12dを介して揺動可能に連結する。ロアリンク12bの後端部は、フロントフォーク構造体11の上後延出部23に車幅方向に沿う下連結軸12eを介して揺動可能に連結される。このステアリングリンク12により、ハンドル支持部1aに対してフロントフォーク構造体11を上段ボールジョイント27を介して揺動可能とした上で、バーハンドル8の回動によりフロントフォーク構造体11及び前輪9を転舵可能となる。
【0028】
スイングアーム13は、前後に延びる左右一対のアーム部13c、及び左右アーム部13cの後端部13b間を連結するクロスメンバ13d、を一体に有する。スイングアーム13の各要素は、それぞれ例えば一体のアルミ製部品であり、これらが互いに一体に溶接結合される。
左右アーム部13cは、前輪9の左右両側に配置される。左右アーム部13cの後端部13bは、前輪9の後端位置のトレッド面に沿うように車幅方向内側へ湾曲し、これらの後端部13b間にクロスメンバ13dが配置される。クロスメンバ13dは、前輪9の直ぐ後方で車幅方向に延び、その両端部が左右アーム部13cの後端部13bに接合される。
【0029】
ブレーキアーム14は、左右一対に設けられ、前輪9の左右両側にそれぞれ配置される。ブレーキアーム14は、例えば一体のアルミ製部品であり、側面視で前方に凸の浅いV字状に形成される。
図8を参照し、ブレーキアーム14の下端部14bは、スイングアーム13のアーム部13cの前端部13aと前輪9のホイール9bのハブ部9cとの間に配置される。ブレーキアーム14の下端部14bは、前輪車軸9aの外側部を挿通した状態で、この前輪車軸9aの外側部に回動可能に支持される。
【0030】
なお、図中符号14cはブレーキアーム14の下端部14bの内周に保持される左右一対のボールベアリング、符号9dはハブ部9cの左右側部内周に保持される左右二対のボールベアリング(ホイールベアリング)、符号15aはハブ部9cの左右両端にインナーロータが固定されたブレーキロータ、符号13gは揺動軸13fを挿通するローラベアリングをそれぞれ示す。
【0031】
ブレーキアーム14の後方には、ブレーキキャリパ15が支持される。ブレーキアーム14の前方には、フロントフェンダ31における前輪9の上方を覆うフェンダ本体31aの左右両側から下方に延びる下方延出部31bが上下一対のボルト31cを介して支持される。
【0032】
図2、
図3を参照し、トルクロッド16は、前後をネジ軸とするロッド本体16aと、ロッド本体16aの前後ネジ軸に螺着される前後ブラケット16b,16cと、を有する。トルクロッド16の各要素は、それぞれ例えば一体の鋼材からなる。前後ブラケット16b,16cはそれぞれU字状をなし、これらの底部には、ロッド本体16aの前後ネジ軸が所定量螺着された状態でロックナット16fを用いて固定される。
【0033】
前ブラケット16bの開放側(トルクロッド16の前端部)にはブレーキアーム14の上端部14aが入り込み、これらが前連結軸16dを介して連結される。後ブラケット16cの開放側(トルクロッド16の後端部)にはロッド連結部26が入り込み、これらが後連結軸16eを介して連結される。トルクロッド16は、ロックナット16fを緩めて前後ブラケット16b,16cとロッド本体16aとの螺着量を増減させることで、前後連結部間の距離を増減可能である。
【0034】
伝達ロッド17は、例えば一体のアルミ製部品であり、H字状の断面形状を有して上下に延びる。
図7を併せて参照し、伝達ロッド17の下端部17bは、左右に分岐して下方に開放するU字状に形成され、伝達ロッド17の上端部17aは、左右に分岐して上方に開放するU字状に形成される。下端部17b内には、スイングアーム13の前後中間部上側に形成された連結片13eが入り込み、これらが車幅方向に沿う下連結軸17dを介して連結される。上端部17a内には、クッションアーム組体19のサブアーム33の左右外側に形成された外前連結部33aが入り込み、これらが車幅方向に沿う上連結軸17cを介して連結される。なお、図中符号17e,17fは上下連結軸17c,17dを挿通するローラベアリングをそれぞれ示す。
【0035】
図2、
図3、
図6を参照し、クッションユニット18は、側面視で上側ほど後側に位置するように傾斜したロッド式のダンパー18eと、ダンパー18eの周囲を巻回するコイルスプリング18fと、を有する。クッションユニット18は、その中心軸線(ストローク軸線C9)に沿ってストロークして伸縮し、所定の緩衝作用を得る。
【0036】
クッションアーム組体19は、後端部が車体フレーム1のアーム支持部1cに支持されるクッションアーム32と、クッションアーム32の前端部に中段ボールジョイント34を介して操向可能かつ揺動自在に支持されるサブアーム33と、を有する。クッションアーム32及びサブアーム33は、それぞれ例えば一体のアルミ製部品である。
【0037】
クッションアーム32は、平面視で先端部(前端部)19aに対して基端部(後端部)19bが左右に広い三角形状に形成される。クッションアーム32は、車体フレーム1のアーム支持部1cから前上方に延び、その先端部19aを上段ボールジョイント27の前下方に配置する。この先端部19aの下方には、中段ボールジョイント34のボールスタッド35がステアリング軸線C14に沿うように突設される。このボールスタッド35下端のボール部35aの中心が、中段ボールジョイント34の揺動中心C13となる。ボール部35aは、サブアーム33の左右中央部内側に保持したソケット36内に摺動自在に保持される。
【0038】
図7を参照し、サブアーム33は、左右に延びるように形成され、その左右外側部に対して左右中央部を前下方に変位させるように湾曲する。サブアーム33は、側面視でフォーク部22の湾曲部22aの内側に位置するように配置される。サブアーム33の左右中央部には、クッションアーム32の前端部が中段ボールジョイント34を介して連結される。
【0039】
サブアーム33の左右外側部の外前連結部33aには、それぞれ伝達ロッド17の上端部17aが上連結軸17cを介して連結される。サブアーム33の左右外側部の後側(外後連結部33b)には、それぞれフロントフォーク構造体11の下ステー締結部22bの上方に連設されたピボット部22cが、左右方向に沿う揺動軸33cを介して揺動可能に連結される。
【0040】
揺動軸33cとなるボルトは、ピボット部22cの外側に、フロントフォークステー25の下端部25bの直ぐ上方に設けられたピボット連結部25dをも共締めにより結合する。すなわち、フロントフォークステー25は、湾曲部22aの上下端部を連結する他にサブアーム33の支持を兼ねる。なお、図中符号C12は揺動軸33cの中心軸線、符号33dは揺動軸33cを挿通するボールベアリングをそれぞれ示す。
【0041】
ここで、
図2、
図9は、前輪懸架装置10に車重分の荷重が加わった1G状態を示す。この状態から、前輪制動等により前輪9が相対的に上方へ変位すると、スイングアーム13が上方へ揺動するとともに伝達ロッド17が上方へ移動し、サブアーム33をフロントフォーク構造体11のピボット部22cの軸回りに後転させる。すると、サブアーム33が中段ボールジョイント34を介してクッションアーム32を上方へ揺動させ、クッションユニット18の前下端部18aを上方へ変位させてクッションユニット18を圧縮させる。
【0042】
このとき、中段ボールジョイント34の揺動中心C13は、フロントフォーク構造体11のピボット部22cに支持した揺動軸33cを中心とした移動軌跡ではなく、車体フレーム1に支持したクッションアーム32の揺動軸19cを中心とした移動軌跡を描く。この移動軌跡の相違から、サブアーム33の後転は中段ボールジョイント34の揺動中心C13回りにも生じる。中段ボールジョイント34のボール部35aの後上方には揺動軸33cが位置し、この揺動軸33cがサブアーム33の後転により後方へ変位することで、フロントフォーク構造体11が上段ボールジョイント27を中心に後方へ揺動する。
【0043】
スイングアーム13が後方へ揺動すると、これに応じてブレーキアーム14及びトルクロッド16も適宜揺動する。これらスイングアーム13、ブレーキアーム14及びトルクロッド16は、フロントフォーク構造体11の下部を含んで四節リンクを構成する。そして、スイングアーム13の上方への揺動に伴いフロントフォーク構造体11が後方へ揺動することで、前記四節リンクがパンタグラフ状に作動し、前輪車軸9aをステアリング軸線C14に沿うように概ね直線状に変位させる。
【0044】
一方、前記1G状態から、加速等により前輪9が相対的に下方へ変位すると、スイングアーム13が下方へ揺動するとともに伝達ロッド17が下方へ移動し、サブアーム33をフロントフォーク構造体11のピボット部22cの軸回りに前転させる。すると、サブアーム33が中段ボールジョイント34を介してクッションアーム32を下方へ揺動させ、クッションユニット18の前下端部18aを下方へ変位させてクッションユニット18を伸長させる。
【0045】
このとき、前述した中段ボールジョイント34の揺動中心C13の移動軌跡の相違から、サブアーム33の前転は中段ボールジョイント34の揺動中心C13回りにも生じ、ピボット部22cに支持した揺動軸33cが前方へ変位することで、フロントフォーク構造体11が上段ボールジョイント27を中心に前方へ揺動する。
そして、スイングアーム13の下方への揺動に伴いフロントフォーク構造体11が前方へ揺動することで、前述の如く前輪車軸9aをステアリング軸線C14に沿うように概ね直線状に変位させる。
【0046】
フロントフォーク構造体11が揺動しない一般的なリーディング式ボトムリンクの場合、前輪車軸9aの移動軌跡がスイングアーム13の揺動軌跡に沿う円弧状となり、この揺動軌跡によって前輪9の前後の移動が生じるため、トレール量の変化が大きくなる。
一方、本実施形態では、スイングアーム13の揺動に伴いフロントフォーク構造体11が揺動し、転舵軸であるステアリング軸線C14の角度がストロークとともに変化するため、前記四節リンクがパンタグラフ状に作動して前輪車軸9aの移動軌跡がステアリング軸線C14に沿う概ね直線状となり、一般的なリーディング式ボトムリンクに比べてトレール量の変化が抑えられる。
【0047】
前輪制動時には、ブレーキアーム14を車軸回りに前方へ揺動させようとする力が生じるが、この力はトルクロッド16により支持される。このとき、スイングアーム13に対するブレーキアーム14の回動が抑えられ、前記四節リンクの作動が制限される。すなわち、スイングアーム13の上方への揺動を規制する力が作用し、前輪9の上方変位すなわち自動二輪車のノーズダイブが抑制される。この作用の強弱は、トルクロッド16の長さを変更したり、ロッド連結部26におけるトルクロッド16の連結位置を変更することで調整可能である。
【0048】
以上説明したように、上記実施形態は、リンク機構を用いて前輪9を懸架する鞍乗り型車両の前輪懸架装置10において、車体に設けられるハンドル支持部1aと、ハンドル支持部1aに上端部を操向可能かつ揺動可能に支持されるフロントフォーク構造体11と、フロントフォーク構造体11の下端部に後端部13bを揺動可能に支持されるとともに前端部13aに前輪9を軸支するスイングアーム13と、スイングアーム13の前端部13aに下端部14bを揺動可能に支持されるブレーキアーム14と、ブレーキアーム14の上端部14aに前端部を揺動可能に連結するとともに後端部をフロントフォーク構造体11の上下中間部に揺動可能に連結するトルクロッド16と、スイングアーム13の前後中間部に下端部17bを揺動可能に連結する伝達ロッド17と、スイングアーム13の揺動に伴う伝達ロッド17の移動により作動して緩衝作用を生じるクッションユニット18と、クッションユニット18の作動端部(前下端部18a)と伝達ロッド17の上端部17aとの間に介設され、スイングアーム13の揺動に伴う伝達ロッド17の移動により揺動して、クッションユニット18を作動させるとともにフロントフォーク構造体11を揺動させるサブアーム33と、を備えるものである。
【0049】
この構成によれば、前輪9の上下動によりスイングアーム13が揺動すると、伝達ロッド17が作動してサブアーム33を揺動させ、クッションユニット18を作動させて緩衝作用を得るとともに、前輪9の上下動に応じてフロントフォーク構造体11を揺動させる。このため、フロントフォーク構造体11を含めた四節リンクがパンタグラフ状に作動し、通常のリーディング式ボトムリンクのように前輪9のストロークの軌跡が単なる円弧状とならず、前輪9を概ね直線状にストロークさせることが可能となる。したがって、前輪9の上下動に伴う前後の移動を抑えて乗り心地への影響を抑えることができる。
【0050】
また、上記実施形態は、車体に揺動可能に支持され、クッションユニット18の作動端部を支持するとともにサブアーム33を介してフロントフォーク構造体11を支持するクッションアーム32を備えることで、フロントフォーク構造体11をクッションアーム32で車体側からしっかり支持し、前輪懸架装置10の剛性を高めることができる。
【0051】
また、上記実施形態は、フロントフォーク構造体11が、前方に湾曲した湾曲部22aを形成するフォーク本体を有し、湾曲部22aの内側にサブアーム33が配置されることで、サブアーム33周辺に前方からの外乱が至り難くなるとともに、サブアーム33をコンパクトに配置することができる。
【0052】
また、上記実施形態は、フロントフォーク構造体11が、湾曲部22aの上下端部に渡るフロントフォークステー25を有し、フロントフォークステー25にサブアーム33が支持されることで、湾曲したフォーク本体の剛性を確保するとともに、フロントフォークステー25にサブアーム33の支持機能を持たせ、サブアーム33の支持剛性を高めることができる。
【0053】
また、上記実施形態は、スイングアーム13が、左右一対のアーム部13cと、左右アーム部13cの後端部13bを前輪9の後方で連結するクロスメンバ13dと、を有することで、左右アーム部13c及びクロスメンバ13dにより前輪9の支持剛性を高めることができる。
【0054】
また、上記実施形態は、フロントフォーク構造体11が、左右一対のフォーク部22と、左右フォーク部22を連結するフォーク連結部(上後延出部23及び後クロスメンバ24)と、を有することで、左右フォーク部22及びフォーク連結部により前輪9の支持剛性を高めることができる。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(スクータ型車両を含む)のみならず三輪の車両も含まれる。
また、水平対向エンジン以外の縦置きエンジンを搭載した車両や、クランク軸を車両左右方向に沿わせた横置きエンジンを搭載した車両に適用してもよい。クッションユニットやクッションアームが車体としてエンジンに支持された構成でもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。