(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、プロジェクターにおいて、高いコントラストを得る目的から、画像コンテンツの輝度パラメータに応じて供給電力を変更し、全動作時間の少なくとも一部で、高圧放電ランプの発光管部内で水銀が析出する「飽和動作方式」と、同発光管部内で全ての水銀が蒸発する「不飽和動作方式」とを、切り替えるようになっている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術のように、発光管部内の全ての水銀が蒸発した状態(不飽和動作方式)と、発光管部内に水銀が析出した状態(飽和動作方式)とを切り替えて動作させることには問題があった。
【0006】
すなわち、飽和動作方式で発光管部内に水銀が析出していくと高圧放電ランプの黒化の原因となり、アーク放電部分から放出される光を遮るとともに、発光管部の局所的な温度上昇をもたらして当該発光管部の破裂や損傷の原因になるおそれがあった。また、水銀の析出や蒸発によって発光管内の圧力に急激な変化が生じると、発光管内の対流が乱される。すると、電極が不所望な形状に変化してしまい、アーク放電の起点がずれて(=アークジャンプ)チラツキの原因になるとともに、高圧放電ランプの寿命が短くなるおそれがあった。
【0007】
また、不飽和動作方式から飽和動作方式に切り替えられて水銀が析出したとき、この水銀が発光管部内のどこに析出してくるかは不明であり、仮に、高圧放電ランプを適用したプロジェクターにおいて光学的に重要な光路上に水銀が析出した場合、投影した画像に水銀が写り込む事で著しい欠陥が生じるおそれがあった。
【0008】
さらに言えば、析出した水銀が大きくなっていく過程で、アーク放電による微振動や重力によって析出した水銀が発光管部内のより低い位置に向かって動くことがあり、このような動きが生じることにより、投影する画像に乱れが生じるおそれもあった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みて開発されたものである。それゆえに本発明の主たる課題は、画像コンテンツの輝度パラメータに応じて高圧放電ランプに供給する電力を変化させる動作において、発光管部の内部空間における水銀の析出を回避することにより、アークジャンプの発生を回避するとともに、高圧放電ランプの長寿命化を図り、また、投影した画像に欠陥や乱れが生じることも回避できる高圧放電ランプの点灯方
法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載した発明は、画像コンテンツの輝度パラメータに応じて高圧放電ランプに供給する電力を変化させる高圧放電ランプの点灯方法において、
高圧放電ランプへの冷却熱量を減少させることで、供給する電力が最も低くなったときでも、高圧放電ランプの発光管部内の温度が水銀の析出温度よりも高くなるようにすること、および、
高圧放電ランプに供給する電力が増加する際、供給する電力の変化が始まってから所定の時間が経過するまでは、高圧放電ランプの冷却熱量を直前の状態のままで維持することを特徴とする高圧放電ランプの点灯方法である。
【0012】
請求項2に記載した発明は、画像コンテンツの輝度パラメータに応じて高圧放電ランプに供給する電力を変化させる高圧放電ランプの点灯方法において、
冷却熱量が供給される高圧放電ランプにおいてヒータによる高圧放電ランプへの加熱量を増加することで、供給する電力が最も低くなったときでも、高圧放電ランプの発光管部内の温度が水銀の析出温度よりも高くなるようにすること、および、
高圧放電ランプに供給する電力が増加する際、および、供給する電力が減少する際の少なくともいずれか一方において、供給する電力の変化が始まってから所定の時間が経過するまでは、
ヒータによる高圧放電ランプへの加熱量を直前の状態のままで維持することを特徴とする高圧放電ランプの点灯方法である。
【0013】
請求項3に記載した発明は、請求項1の点灯方法をより具体的にしたものであり、
一定の電力を高圧放電ランプに供給している状態において、高圧放電ランプに与えられる電圧値が予め設定した値よりも高い場合は冷却熱量を増加させ、電圧値が予め設定した値よりも低い場合は冷却熱量を減少させることを特徴とする高圧放電ランプの点灯方法である。
【0014】
請求項4に記載した発明は、請求項2の点灯方法をより具体的にしたものであり、
一定の電力を高圧放電ランプに供給している状態において、高圧放電ランプに与えられる電圧値が予め設定した値よりも高い場合は加熱量を減少させ、電圧値が予め設定した値よりも低い場合は加熱量を増加させることを特徴とする高圧放電ランプの点灯方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、供給する電力が最も低くなったときにおける高圧放電ランプの発光管部の内部温度を水銀の析出温度よりも高くして、常に不飽和動作方式を維持することにより、発光管部の内部空間における水銀の析出を回避する。これにより、アークジャンプの発生を回避するとともに、高圧放電ランプの長寿命化を図り、また、投影した画像に欠陥や乱れが生じることも回避することができた。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、高圧放電ランプXを点灯させる、本発明が適用された点灯回路10の実施例について、図面を用いて説明する。
図1に示すように、点灯回路10は、大略、電力供給回路12と、点灯状態分析手段14と、冷却手段16と、輝度パラメータ決定手段17とで構成されている。
【0020】
最初に、高圧放電ランプXについて簡単に説明する。一般的な高圧放電ランプXは、
図2に示すように、石英ガラスで一体的に形成された発光管部18と当該発光管部18から延出する一対の封止部20とを有しており、発光管部18内には封止部20にて密閉された内部空間22が形成されている。また、各封止部20内にはモリブデン製の箔24が埋設されている。さらに、一端が箔24の一方端部に接続されているとともに他端が内部空間22に配置されたタングステン製の電極26と、一端が箔24の他方端部に接続されているとともに他端が封止部20から外部へ延出するリード棒28がそれぞれ設けられている。また、内部空間22には、所定量の水銀30およびハロゲン(例えば臭素)が封入されている。
【0021】
高圧放電ランプXに設けられた一対のリード棒28に所定の高電圧を印加すると、発光管部18の内部空間22に設けられた一対の電極26間で開始したグロー放電がアーク放電に移行し、このアークによって蒸発/励起された水銀30によって光が放射されるようになっている(
図2中において参照番号30が示す黒点は、析出した状態の水銀を示している。)。
【0022】
図1に戻って、電力供給回路12は、電源32から受けた電気を高圧放電ランプXの点灯に適した電圧および電流に変換した上で、一対のリード線34を介して当該高圧放電ランプXに供給するための回路である。この電力供給回路12による高圧放電ランプXの点灯方法については、後に詳述する。
【0023】
点灯状態分析手段14は、電力供給回路12による高圧放電ランプXの点灯状態をリアルタイムに分析し、その結果を電力供給回路12へ戻す役割を有している。本実施例において、この点灯状態分析手段14は、大略、一対のリード線34間に設けられた電圧計36と、いずれか一方のリード線34に設けられた電流計38と、電圧計36で測定された電圧値V、および電流計38で測定された電流値Aを受けた後、これらの値V、Aに基づいて高圧放電ランプXの点灯状態を分析するとともに、その結果を電力供給回路12へ送る分析回路40とで構成されている。なお、分析回路40と電圧計36との間は、電圧値送信線42で連絡されており、分析回路40と電流計38との間は、電流値送信線44で連絡されており、さらに、分析回路40と電力供給回路12との間は、分析結果送信線46で連絡されている。
【0024】
冷却手段16は、大略、冷却ファン48と、冷却ファン制御回路50とで構成されている。冷却ファン48は、高圧放電ランプXの発光管部18を主に冷却するためのファンであり、冷却ファン制御回路50によってその回転速度が制御され、その結果、高圧放電ランプXの冷却度合い(=冷却熱量)が制御されるようになっている。なお、冷却ファン48と冷却ファン制御回路50との間は、ファン制御信号送信線52で連絡されている。
【0025】
冷却ファン制御回路50は、冷却制御信号送信線54で電力供給回路12と連絡されており、電力供給回路12からの冷却制御信号を受けて、冷却ファン48の制御を行う回路である。
【0026】
輝度パラメータ決定手段17は、ノートパソコンやタブレット等の外部装置から提供された画像コンテンツCに基づいて輝度パラメータPを決定し、当該輝度パラメータPを電力供給回路12へ提供するものである。なお、輝度パラメータ決定手段17と電力供給回路12との間は、輝度パラメータ信号送信線56で連絡されている。
【0027】
次に、本実施例の点灯回路10を用いた高圧放電ランプXの点灯制御の一例(実施例1)について説明する。画像コンテンツCの輝度パラメータPに基づき、高圧放電ランプXに供給する電力を変化させた場合の一例として、
図3のようなグラフを挙げることができる。冷却ファン48による冷却熱量(冷却ファン48の回転数にほぼ比例する)は、高圧放電ランプXに供給する電力が予め設定された最大電力W
maxの場合であっても発光管部18の温度が過度に高くならないように予め設定されており、冷却ファン48は、設定された冷却熱量を達成できる回転数で基本的に動作している。
【0028】
また、
図3における水平の破線は、上述のように冷却ファン48の回転数を設定したときにおいて、その回転数のままでは、発光管部18の内部空間22の温度が水銀30の析出温度になる電力W
avを示している。したがって、電力W
av以下の供給電力では、発光管部18の内部空間22に水銀30が析出するおそれがある。そこで、後述するように、高圧放電ランプXに供給する電力がこの電力W
av以下になる場合、冷却ファン48の回転数を低くして、冷却熱量を減少させるようになっている。電力W
avの値は、冷却ファン48の回転数設定等によって変動するが、少なくとも、最低供給電力値よりも大きければよい。換言すれば、少なくとも最低供給電力値のときに冷却熱量を減少させるようにすればよい。
【0029】
最初に、比較的明るい画像コンテンツCを受けた輝度パラメータ決定手段17が当該画像コンテンツCに基づき、電力W
avよりも高い電力W1で高圧放電ランプXを点灯させるべきことを決定した場合について説明する。電力W1で高圧放電ランプXを点灯させるべきことを決定した輝度パラメータ決定手段17は、輝度パラメータ信号送信線56を介して、電力W1を促す輝度パラメータ信号P
W1を電力供給回路12へ送信する。
【0030】
電力W1を促す輝度パラメータ信号P
W1を受けた電力供給回路12は、一対のリード線34を介して、高圧放電ランプXに電力W1を供給する。一般に、高圧放電ランプXに印加する電圧は、当該高圧放電ランプXのアーク放電を維持するため、一対の電極26間距離によって決まる。したがって、電力供給回路12は、高圧放電ランプXに流れる電流値Aを主に制御することになる。
【0031】
高圧放電ランプXに供給された電力W1の一部は、蒸発した水銀30を励起して発光させるためのエネルギーとして使用され、残りのエネルギーの大部分は、熱エネルギーとして放散される。この熱エネルギーの一部は、水銀30が蒸発した状態を維持するように、発光管部18の内部空間22の温度が水銀30の析出温度(=蒸発温度)よりも高い状態を維持するために利用される。一方、熱エネルギーの残部は、発光管部18の過熱につながることから、冷却ファン48によって強制冷却される。
【0032】
上述のように、電力W
avよりも高い電力W1において、冷却ファン48による冷却熱量は予め設定されており、発光管部18の内部空間22の温度が水銀30の析出よりも高い状態が維持されることにより、水銀30が析出することのない点灯を維持することができる。
【0033】
もちろん、電力W
avよりも高い電力領域において、供給する電力の大きさに応じて、冷却ファン48による冷却熱量を変化させてもよい。
【0034】
この場合、電力W1において発光管部18の内部空間22の温度が適切になるような冷却熱量(=回転数)を予め設定し、冷却ファン48がそのような強制冷却を行うように動作する設定を冷却ファン制御回路50に記憶させておくことになる。
【0035】
ところで、電力W1に応じた冷却熱量で点灯を続けているときであっても、様々な要因により、現実的に発光管部18の内部空間22の温度は変動する。そこで、このような変動に対し、冷却ファン48による冷却熱量をある程度追従させるため、本実施例の点灯回路10には、点灯状態分析手段14が設けられている。
【0036】
点灯状態分析手段14の動作について説明すると、高圧放電ランプXに供給される電圧値Vおよび電流値Aは、電圧計36および電流計38からそれぞれ分析回路40にリアルタイムで送られる。これら電圧値Vおよび電流値Aを受けた分析回路40は、両値の動き(トレンド)を監視する。同じ電力を高圧放電ランプXに供給している場合であっても、電極間距離(=アーク長さ)が長くなっていると発光管部18の内部空間22の温度は予め設定した温度よりも高くなる傾向にあり、このとき、高圧放電ランプXに供給される電圧値Vは予め設定した値よりも高く、逆に、供給される電流値Aは低くなっている。トレンドからこのような状態(=内部空間22の温度が予め設定した温度よりも高い)が確認された場合、分析回路40は、分析結果送信線46を介して、電力供給回路12に対して内部空間22の温度が高い旨の信号S
Hを送信する。そのような信号S
Hを受けた電力供給回路12は、冷却制御信号送信線54を介して、冷却ファン制御回路50に対して冷却熱量を増加させる旨の信号を送信する。そのような信号を受けた冷却ファン制御回路50は、冷却ファン48による冷却熱量を増加させる(具体的には、冷却ファン48の回転数を大きくする。)。
【0037】
一方、同じ電力を供給しているにもかかわらず、電圧値Vが予め設定した値よりも低く、逆に、電流値Aが予め設定した値よりも高い場合は、電極間距離が短くなっており、高圧放電ランプXの発光管部18の内部空間22の温度は予め設定した温度よりも低くなっている。この場合、分析回路40は、電力供給回路12に対して内部空間22の温度が低下している旨の信号S
Lを送信する。電力供給回路12から冷却熱量を減少させる旨の信号を受けた冷却ファン制御回路50は、冷却ファン48による冷却熱量を減少させる(具体的には、冷却ファン48の回転数を小さくする)。
【0038】
このように点灯状態分析手段14を用いることにより、電力W1における、高圧放電ランプXの発光管部18内の温度変動を極力抑えて、予め設定した温度を維持し易くすることができる。なお、一般に、高圧放電ランプXに供給する電流値Aは、供給すべき電力と、リアルタイムの電圧値Vとに基づいて決定される(電流値Aは成り行き)ので、供給する電力と電圧値Vとの関係を監視して冷却ファン48による冷却熱量を増減させてもよい。
【0039】
次に、上述したように比較的高い電力W1で高圧放電ランプXを点灯させている状態から、比較的暗い画像コンテンツCを受けた輝度パラメータ決定手段17が当該画像コンテンツCに基づいて、電力W
av以下の電力W2で高圧放電ランプXを点灯させるべきことを決定した場合について説明する。
【0040】
電力W2で高圧放電ランプXを点灯させるべきことを決定した輝度パラメータ決定手段17は、輝度パラメータ信号送信線56を介して、電力W2を促す輝度パラメータ信号P
W2を電力供給回路12へ送信する。そして、電力W2を促す輝度パラメータ信号P
W2を受けた電力供給回路12は、一対のリード線34を介して、高圧放電ランプXに電力W2を供給する(主として、高圧放電ランプXに流れる電流値Aを低減することになる。)。
【0041】
高圧放電ランプXに供給する電力を電力W
av以下に低減すると、発光量が低下するとともに、放散される熱エネルギーも低下することから、最大電力W
maxに基づいて設定された冷却熱量では、発光管部18の内部空間22の温度が下がりすぎて水銀30の析出温度以下になり、蒸発していた水銀30が析出することになる。水銀30が析出すると、アークジャンプが生じるとともに、高圧放電ランプXの寿命が短くなるおそれがある。また、高圧放電ランプXを適用したプロジェクターから投影した画像に著しい欠損が生じたり、析出した水銀30が大きくなる過程で当該水銀30が発光管部18内のより低い位置に向かって動くことにより、投影する画像に乱れが生じたりするおそれがある。さらに言えば、水銀30の析出状態が長時間続くと、発光管部18の内壁の著しい黒化につながり、プロジェクター用の光源として求められる光量を放射できなくなるおそれもある。
【0042】
このため、電力供給回路12は、電力W2に切り替えると同時に、冷却制御信号送信線54を介して冷却ファン制御回路50に冷却熱量の低減指示を出し、これを受けた冷却ファン制御回路50が冷却ファン48を所定の回転数まで低下させる。電力W2における冷却ファン48の回転数は、高圧放電ランプXに供給する電力が最小電力W
minの場合であっても高圧放電ランプXにおける発光管部18の内部空間22が水銀30の析出温度よりも高い温度を維持できる範囲で予め設定されている。つまり、電力W
av以下の電力が高圧放電ランプXに供給される場合、冷却ファン48は同じ回転数で回転することになる。これにより、電力W
av以下になった場合であっても、内部空間22の温度が水銀30の析出温度以下に低下するのを回避することができる。
【0043】
また、電力W
av以下の供給電力において予め設定した冷却熱量で点灯を続けているときであっても、様々な要因により、内部空間22の温度は変動する。電力W
av以下の供給電力においても、上述のように点灯状態分析手段14が動作して冷却ファン48による冷却熱量を変動させ、内部空間22が水銀30の析出温度よりも高い温度を維持できるようになっている。
【0044】
もちろん、供給電力が電力W
av以下である場合においても、供給する電力の大きさに応じて、冷却ファン48による冷却熱量を変化させることができる。
【0045】
画像コンテンツCを受けた輝度パラメータ決定手段17が当該画像コンテンツCに基づいて、再び、電力W
avよりも大きい電力W4を供給するように決定した場合、電力供給回路12は、冷却ファン制御回路50を介して冷却ファン48による強制冷却熱量を増加させる。これにより、供給電力が増加したことで放散される熱エネルギーが増加して発光管部18が過度に高温になるのを回避することができる。
【0046】
本実施例の点灯回路10によれば、高圧放電ランプXに供給する電力が最も低くなったときにおける、発光管部18の内部空間22の温度を水銀30の析出温度よりも高くして、常に不飽和動作方式を維持しているので、高圧放電ランプXの動作期間中に、発光管の内壁における水銀30の析出が回避される。これにより、アークジャンプの発生を回避できるとともに長寿命化が期待でき、また、投影した画像に欠陥や乱れが生じることも回避することができる。
【0047】
(実施例2)
上述の実施例1では、冷却ファン48の回転数を変えることによって高圧放電ランプXの冷却熱量を変えていたが、
図4に示すように、内部空間22を加熱するヒータ58をさらに設置するとともに、冷却ファン制御回路50に代えてヒータ制御回路60でヒータ58による加熱量を制御してもよい。なお、その他の構成は実施例1と同様である(ただし、冷却制御信号送信線54は、加熱制御信号送信線54と読み替える。)。
【0048】
この実施例2の場合、冷却ファン48は、高圧放電ランプXに供給する電力の変化、さらには外的要因による内部空間22の温度変動にかかわらず、一定の回転数を維持している。つまり、冷却ファン48による冷却熱量は基本的にほぼ一定である。また、冷却ファン48による冷却熱量は、仮にヒータ58からの加熱がなければ、少なくとも電力W
av以下の供給電力において発光管部18の内部空間22の温度が水銀30の析出温度以下になる程度に設定されている。
【0049】
画像コンテンツCを受けた輝度パラメータ決定手段17が、当該画像コンテンツCに基づき、電力W
avより大きい電力W1から電力W
av以下のW2に変化させた場合、高圧放電ランプXから放散される熱エネルギーの量が低下する。これに対し、電力供給回路12から、電力W
av以下のW2になる旨の信号を受けたヒータ制御回路60が、ヒータ58による高圧放電ランプXへの加熱量を増加することにより、電力W
av以下において高圧放電ランプXの発光管部18の内部空間22が水銀30の析出温度以下になるのを回避できる。もちろん、ヒータ58による加熱量は、電力W
avを境にして、電力W
avよりも大きい場合と、電力W
av以下の場合とでそれぞれ一定にしてもよいし、供給電力に応じて変化するようにしてもよい。また、ヒータ58による加熱量は、点灯状態分析手段14からの直接的、あるいは、電力供給回路12を介しての間接的な指示によって調節される。
【0050】
また、画像コンテンツCを受けた輝度パラメータ決定手段17が当該画像コンテンツCに基づいて、再び、電力W
av以下のW3から電力W
avより大きい電力W4に変化させた場合、電力供給回路12は、ヒータ制御回路60を介してヒータ58による加熱量を減少させる。これにより、電力W
avより大きい電力W4に戻ったことで放散される熱エネルギーが増加して発光管部18が過度に高温になるのを回避することができる。
【0051】
なお、上記2つの実施例において、電力W
av以下の電力W3から電力W
avより大きい電力W4に変化させる場合、電力W4への変化が始まってから所定の時間が経過するまでは、高圧放電ランプXに与える電力以外の設定を直前の電力W
av以下のW3のままで維持するようにしてもよい。
【0052】
高圧放電ランプXの発光管部18における内部空間22の温度を変化させる早さは、冷却ファン48やヒータ58に比べて、高圧放電ランプXに供給される電力の方が早い。つまり、高圧放電ランプXに供給される電力の電力W3から電力W4への変化が始まると、内部空間22の温度は直ちに上昇しようとする。これに対して、冷却ファン48やヒータ58の動作を直ちに変化させれば、内部空間22の温度は比較的緩やかに上昇する。しかしながら、冷却ファン48やヒータ58の動作変化の開始をあえて遅らせることにより、内部空間22の温度を意図的に急上昇させることができる。
【0053】
一般に、発光管部18の内部空間22の温度と発光量との間には正の相関関係がある。つまり、内部空間22の温度が上昇すると、発光量も増加する。このため、冷却ファン48やヒータ58の動作変化の開始をあえて遅らせることにより、内部空間22の温度上昇が早まり、発光量の増加を早めることができる。電力W3から電力W4に変化する状況とは、画像コンテンツCがより明るさを要求している状況に他ならないことから、冷却ファン48やヒータ58の動作変化の開始をあえて遅らせることは、この明るさの要求に対する追従性を高めることができる点で好適である、
【0054】
もちろん、これとは逆に、電力W1から電力W2に変化させる場合も、電力W2への変化が始まってから所定の時間が経過するまでは、高圧放電ランプXに与える電力以外の設定を直前の電力W1のままで維持するようにしてもよい。このように冷却ファン48やヒータ58の動作変化の開始をあえて遅らせることにより、内部空間22の温度を意図的に急減少させることができ、発光量の減少を早めることができる。電力W1から電力W2に変化する状況とは、画像コンテンツCが暗い画面を要求している状況に他ならないことから、冷却ファン48やヒータ58の動作変化の開始をあえて遅らせることは、この暗い画面の要求に対する追従性を高めることができる点で好適である。
【0055】
(実施例3)
上記2つの実施例では、高圧放電ランプXに供給される電力の変化に応じて、冷却ファン48による冷却熱量あるいはヒータ58による加熱量を変化させている。しかしながら、これに代えて、冷却ファン48による冷却量やヒータ58による加熱量を変化させることなく、最小電力W
minにおける発光管部18の内部空間22の温度が水銀30の析出温度よりも高くなるように、最小電力W
minの値、冷却ファン48による冷却量、あるいは、ヒータ58による加熱量をより高く設定してもよい。ただし、最大電力W
maxのときに発光管部18の温度が石英ガラスの徐冷点(約1,200℃)に達しないように注意する必要がある。なお、この場合、冷却ファン制御回路50やヒータ制御回路60は不要になる。