(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば電子写真方式の画像形成装置は、装置内に存在するトナー等の異物を捕集するための異物捕集装置を備えている。この異物捕集装置は、ファンを用いてダクト内に空気を流通させることで、ダクト内に配置されたフィルターにより空気中の異物を捕集するように構成されている。この種の異物捕集装置では、フィルターの目詰まりに起因する捕集効率の低下を防止するべく現在までに様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示すものでは、可撓性部材からなるフィルターをダクトの鉛直部分内に配置するようにしている。これによれば、送風ファンが作動すると、フィルターは下側から流れてきた空気に押されて変形する。そして、この送風ファンが停止する際には、フィルターの変形が解除されることにより、該フィルターに付着した異物が振るい落とされる。
【0004】
ところで、上記電子写真方式の画像形成装置は、トナー以外にも、揮発性物質(以下、VOCという)や超微粒子(以下、UFPという)等の異物を排出する。このVOCやUFPを捕集するために、例えば特許文献2に示す異物捕集装置では、フィルターにシリコンオイルを含浸させるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示す異物捕集装置では、トナーのように粒径の大きい異物は振るい落とせたとしても、粒径の小さいUFP(特許文献2参照)や、VOCのような化学物質は振るい落とすことができないという問題がある。このため、異物捕集装置を長期間使用していると、フィルターに目詰まりが生じ易くなる。延いては、排気ファンの吸引力が低下して、画像形成装置内に異物が残存し易くなる。この残存した異物は、例えば記録紙に付着して画像形成装置外に排出される。排出された異物はオフィス環境を汚染する。このため、オフィス環境をクリーンに維持する観点から改良の余地がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フィルターに目詰まりが生じても、異物の捕集効率を極力、低下させないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る異物捕集装置は、異物捕集用の第1フィルターと、 上記第1フィルターに向けて空気を送風する送風ファンと、 上記第1フィルターと上記送風ファンとを接続する第1ダクト部と、 上記第1ダクト部における上記第1フィルターと上記送風ファンとの間に位置する部分に形成された
第1開口部と、 上記第1ダクト部の外側に設けられた、上記第1フィルターとは別の第2フィルターと、 上記第1ダクト部の
第1開口部から該第1ダクト部の外側に延びて上記第2フィルターに接続された第2ダクト部と、 上記
第1開口部又は上記第2ダクト部内に設けられた
第1開閉弁と、
上記第2ダクト部における上記1開閉弁と上記第2フィルターとの間に位置する部分に形成された第2開口部と、上記第2ダクト部の外側に設けられた第3フィルターと、上記第2開口部から上記第2ダクト部の外側に延びて上記第3フィルターに接続された第3ダクト部と、上記第3ダクト部内に設けられた第2開閉弁と、を備え、
上記第1乃至第3フィルターはそれぞれ、画像形成装置本体における互いに異なる三つの側面に設けられており、上記
第1開閉弁
及び上記第2開閉弁は、
第1及び第2揺動軸部と、該第1及び第2揺動軸部に回転一体に固定された揺動式の第1及び第2開閉弁本体と、該第1及び第2開閉弁本体を閉方向に付勢する第1及び第2弁付勢部材と、を有し、上記第1開閉弁は第1位置決め機構に連結され、上記第2開閉弁は該第1位置決め機構と同様の構成を有する第2位置決め機構に連結されており、上記第1及び第2位置決め機構はそれぞれ、上記第1及び第2揺動軸部の一端部に固定された揺動側カップリング部と、所定部材に固定された固定側カップリング部とを有するカップリング方式のラッチ機構であって、上記第1及び第2開閉弁本体の開き側への揺動のみを許容するようになっていて、上記第1
及び第2フィルターの異物捕集量が所定量未以下である場合には
上記第1及び第2開閉弁本体を閉弁状態
に位置決めする一方、上記第1
及び第2フィルターの異物捕集量が上記所定量を超えた場合には、
上記第1フィルターの上流側部分及び第2フィルターの上流側部分の圧力がそれぞれ所定圧力を上回ることにより上記第1及び第2開閉弁本体が上記第1及び第2弁付勢部材の付勢力に抗して開方向に揺動するのを許容するとともに、該第1及び第2開閉弁本体の開度を、上記第1及び第2フィルターの異物捕集量の増加に応じて均等な回転角で段階的に増加させるように上記第1及び第2開閉弁本体の位置決めを行う。
【0009】
本発明に係る画像形成装置は、上記異物捕集装置を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フィルターに目詰まりが生じても、異物の捕集効率を極力低下させないようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、
参考形態における異物捕集装置100を備えたレーザープリンター1(以下、単にプリンターという)を示している。このプリンター1は、プロセスユニット10と、定着ユニット20と、該両ユニット10,20を収容する筐体30とを有している。尚、以下の説明において、「左側」、「右側」はそれぞれ、
図1の左側、右側を意味し、「前側」、「後側」はそれぞれ、
図1の紙面に垂直な方向の手前側、奥側を意味する。
【0014】
図2に示すように、プロセスユニット10は、感光体ドラム11aを有するドラムユニット11と、現像ローラー17aを有する現像ユニット17とを一体化したものである。ドラムユニット11における感光体ドラム11aの周囲には、帯電器13、露光装置15、上記現像
ユニット17、転写器18、クリーニングユニット19が時計回り方向にこの順で配置されている。画像形成時には、先ず、帯電器13によって感光体ドラム11
aの周面が帯電され、その後、露光装置15によって感光体ドラム11
aの表面に原稿画像データ(例えば、外部端末より受信した原稿画像の画像データ)に基づくレーザー光が照射される。そうして、感光体ドラム11
aの表面には、上記画像データに対応する静電潜像が形成される。感光体ドラム11
aの表面に形成された静電潜像は、現像
ユニット17によりトナー像として現像される。これにより、感光体ドラム11
aの表面にトナー像が形成(担持)される。このトナー像は転写器18によって、不図示の給紙部から供給された用紙Pに対して転写される。トナー像が転写された後の用紙Pは、転写器18における転写ローラー18aの回転によって定着ユニット20へ供給される。
【0015】
定着ユニット20は、定着ローラー20a及び加圧ローラー20bを有している。定着ユニット20では、転写器1
8より供給される用紙Pを定着ローラー20a及び加圧ローラー20b間で加熱及び加圧することにより、当該用紙Pにトナー像を定着させる。そして、定着ユニット20にてトナー像が定着された用紙Pは、両ローラー20a,20bにより用紙搬送方向の下流側へと送り出される。定着ユニット20より送り出された用紙Pは、複数の搬送ローラー対によって排紙部40(
図3参照)に排出される。
【0016】
排紙部40は、筐体30の上面に形成された凹状部からなる。筐体30の後側面及び左側面にはそれぞれ、筐体30内に外気を取り込むための後側吸気口31(
図1参照)及び左側吸気口32が形成されている。尚、図中の符号41、42は、吸気口31,32を空気の流通可能に覆うルーバーである。
【0017】
筐体30の前側面及び左側面にはそれぞれ、筐体30内に取り込まれた空気を排出するための前側排気口33及び左側排気口34が形成されている。前側排気口33の筐体内方側には送風ファン101が設けられており、この送風ファン101が作動することにより、吸気口31,32から筐体30内に空気が取り込まれる。取り込まれた空気は、プロセスユニット10及び定着ユニット20を冷却した後、排気口33又は排気口34から排出される。両排気口33,34には、空気中の異物が筐体30外に排出されるのを防止するための異物捕集装置100(後述する)が接続されている。この異物には、例えば、トナー、VOC(揮発性物質)、及びUFP(超微粒子)等が含まれる。トナーは、例えば現像ユニット17から漏出する異物であり、VOC及びUFPは、例えば定着ユニット20にて発生する異物である。
【0018】
異物捕集装置100は、異物捕集用の第1及び第2フィルター102,105を備えている。第1フィルター102は、前側排気口33に取付けられていて、該前側排気口33を筐体30の内方側から覆うように配置されている。第2フィルター105は、左側排気口34に取付けられていて、該左側排気口34を筐体30の内方側から覆うように配置されている。各フィルター102,105は、例えばシリコンオイルを含浸した網目状部材により構成されている。前側排気口33の筐体30内方側には上記送風ファン101が配置されている。送風ファン101は、その作動状態において空気を第1フィルター102に向けて送風する。第1フィルター102と上記送風ファン101との間には、断面矩形状の第1ダクト部103が配置されている。第1ダクト部103は、送風ファン101と第1フィルター102とを接続することにより、送風ファン101により形成される空気流を第1フィルター102へと導く
【0019】
上記103における上記送風ファン101と上記第1フィルター102との間に位置する部分には、矩形状の開口部104(
図3参照)が形成されている。開口部104は、第1ダクト部103の左側面に形成されている。開口部104には、第2ダクト部106が接続されている。第2ダクト部106は、上記第1ダクト部103の開口部104から左側(外側)に向かって延びて上記第2フィルター105に接続されている。
【0020】
上記開口部104には、開閉弁107が設けられている。開閉弁107は、開口部104を開閉するための弁である。開閉弁107は、
図4に示すように、揺動式の開閉弁本体108と揺動軸部109とを有している。開閉弁本体108は、上記開口部104の形状に対応する矩形状に形成されている。開閉弁本体108は、揺動軸部109に回転一体に固定されている。揺動軸部109は、開口部104の前側辺部に沿って上下方向に延びている。揺動軸部109の上端部は、第1ダクト部103の上側壁部を揺動可能に貫通している。同様に、揺動軸部109の下端部は、第1ダクト部103の下側壁部を揺動可能に貫通している。揺動軸部109の上端部には、弁付勢部材としての捻りバネ120が装着されている。捻りバネ120は、開閉弁本体108を揺動軸部109と一体でその軸心回りに閉じ側に付勢している。揺動軸部109の下端部は位置決め機構110に連結されている。位置決め機構110は、カップリング方式の位置決め機構であって、揺動側カップリング部111と固定側カップリング部112とを有している。揺動側カップリング部111は、下側に開放する有底円筒状をなしている。揺動側カップリング部111は、揺動軸部109に対して同軸に配置されていてその下端部に固定されている。揺動側カップリング部111の下端部には、全周に亘って鋸歯状の凹部111aが形成されている。各凹部111aは、2つの傾斜辺の角度が等しい逆三角形状をなしている。
【0021】
固定側カップリング部112は、上側に開放する有底円筒状をなしている。固定側カップリング部112は、揺動側カップリング部111に対して同軸に配置されている。固定側カップリング部112は、不図示の拘束部材によって上下方向にのみ移動可能に構成されている。固定側カップリング部112の上端部には、全周に亘って鋸歯状の凸部112aが形成されている。各凸部112aの形状は、上記各凹部111aに対応する三角形状とされている。固定側カップリング部112は、カップリング付勢部材としての圧縮バネ113によって上側に付勢されている。そうして、固定側カップリング部112の凸部112aが揺動側カップリング部111の凹部111aに係合することにより、開閉弁117の揺動軸部109回りの位置決めがなされる。
【0022】
以上のように構成された異物捕集装置100の動作について説明する。異物捕集装置100の使用を開始し始めた直後は、第1フィルター102には異物が殆ど付着していない状態(異物捕集量が所定量以下の状態)にある。したがって、開閉弁117は、
捻りバネ120の付勢力により閉状態に維持されている。しかし、時間の経過により第1フィルター102の異物捕集量が所定量を超えると(例えば、第1フ
ィルター102の目詰まり領域が所定範囲を超えると)、第1フィルター102における空気の流通抵抗が大きくなり、第1ダクト部103内(つまり送風ファン101と第1フィルター102との間)の圧力が所定圧力を超える。そうすると、開閉弁107が、
捻りバネ120の付勢力に抗して開き側に揺動し始めて開弁状態に移行する。この結果、第1ダクト部103内の空気が開口部104から第2ダクト部106内に流入する。そして、第2ダクト部106内に流入した空気は、未使用状態の第2フィルター105を通過して筐体30外に排出される。したがって、第1フィルター102に目詰まりが生じてそのフィルター機能が失われた場合でも、未使用の第2フィルター105により空気中の異物を捕集することで、異物捕集効率の低下を抑制することができる。
【0023】
また、開閉弁107の揺動軸部109は、カップリング方式の位置決め機構110に接続されているので、第1フィルター102の異物捕集量に応じて上記開閉弁107(開閉弁本体108)の開度を段階的に規制することができる。このように、開閉弁107の角度を段階的に増加させることにより、送風ファン101の回転数変動等に影響されることなく、開閉弁107の開度を第1フィルター102の異物捕集量に応じた開度に制御することができる。
【0024】
《実施形態》
次に実施形態について説明する。上記参考形態では、異物捕集装置100が、第1フィルター102と第2フィルター105との2つのフィルターを有する構成について説明したが、
実施形態では、
図5に示すように第3フィルター114及び第3ダクト部115をさらに備えて
いる。この例では、第3フィルター114は、筐体30の上面に形成された上側排気口35に取付けられている。第3ダクト部115は、第2ダクト部106の上面に形成された開口部116から上側に延びて第3フィルター114に接続されている。第3ダクト部115内には、開閉弁117が設けられている。開閉弁117は、第3ダクト部115の流路断面を開閉する。開閉弁117は、開閉弁本体118、揺動軸部119、弁付勢部材121を有している。開閉弁117の構成は、上記
参考形態における開閉弁107の構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。揺動軸部119の一端部は不図示の位置決め機構に接続されている。この位置決め機構の構成も上記
参考形態における位置決め機構110の構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0025】
図5の例によれば、第1フィルター102及び第2フィルター105の異物捕集量が共に所定量を超えた後は、開閉弁117が閉状態から開状態に移行する。したがって、第1ダクト部103内に流入した空気は、第2ダクト部106、及び第3ダクト部115を通って第3フィルター114へと導かれる。したがって、第1及び第2フィルター102,105の異物捕集量が所定量を超えた場合でも、第3フィルター114により異物を捕集することで異物捕集効率の低下を抑制することができる。
【0026】
また、上記
参考形態では、位置決め機構110の揺動側カップリング部111の凹部111aは、二つの傾斜辺の角度が等しい三角形状に形成されているが、
本実施形態では、
図6に示すように、揺動方向の前側に向かって上側に傾斜する傾斜辺と上下に延びる鉛直辺とを有する直角三角形状
に形成されている。すなわち、位置決め機構110は、開閉弁117の開き側への揺動のみを許容するラッチ機構であ
る。
【0027】
上記実施形態では、開閉弁107を第1ダクト部103の開口部104に配置した例を示したが、これに限ったものではなく、開閉弁107は第2ダクト部106内に配置してもよい。
【0028】
上記実施形態では、一例として、プリンター1にて発生する異物の捕集装置100について説明したが、これに限ったものではなく、異物捕集装置100は、空気中に異物が存在する如何なる装置及び環境に対しても適用し得る。