(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フレーム側バンパー部材(91)及びフォーク側バンパー部材(96)の少なくとも一方は、上下に長い縦長に形成されることを特徴とする請求項1に記載の前二輪式鞍乗り型揺動車両。
前記フレーム側バンパー部材(91)は、前記車体フレーム(5)の左右中央部(23)に単一に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の前二輪式鞍乗り型揺動車両。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また、以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UPが示されている。
【0010】
<車両全体>
図1、
図2に示す鞍乗り型車両1は、車体前部に左右一対の前輪(操舵輪)2L,2Rを左右対称に備えるとともに、車体後部の左右中央に単一の後輪(駆動輪)3を備え、かつ車体を左右揺動(ローリング動)可能にした前二輪式の揺動車両として構成される。鞍乗り型車両1は、特に記載がなければ左右対称の構成を有する。また、以下の説明では、特に記載がなければ、左右前輪2L,2Rが水平な路面R上に接地した状態で、後述する前二輪懸架装置4に車重分の荷重が加わった1G状態で、車体が左右揺動角度を0度にした直立状態で、左右前輪2L,2Rの操舵角が0°の直進操舵状態にあるときの構成を説明する。なお、本実施形態では、左右対称の構成には左側の符号に「L」、右側の符号に「R」を付して区別するが、前記「L」、「R」を外した符号のみで示すこともある。
【0011】
鞍乗り型車両1の車体フレーム5は、車体前部上側の左右中央でバータイプの操向ハンドル11を支持するヘッドパイプ12と、ヘッドパイプ12の下部から左右に分岐しつつ後下がりに後方へ延びる左右メインフレーム13と、ヘッドパイプ12の上部から左右に分岐しつつメインフレーム13よりも急傾斜で後下方へ延びて左右メインフレーム13の中間部に接合される左右ガセットフレーム13aと、ヘッドパイプ12近傍で左右メインフレーム13の前端部からメインフレーム13よりも急傾斜で後下方へ延びる左右ダウンフレーム14と、左右メインフレーム13及び左右ダウンフレーム14の中間部間に渡る左右ガセットパイプ13bと、左右ダウンフレーム14の下部から前上がりに前方へ延びつつ左右内側に湾曲する左右ロアアームフレーム16と、ヘッドパイプ12の下方で左右ロアアームフレーム16の前端部に支持されるロアアームブラケット15と、ロアアームブラケット15から上方に延びて左右メインフレーム13の前端部下側のガセット13cに結合される連結パイプ15aと、ヘッドパイプ12及びロアアームブラケット15を含むフレーム前端部に支持されてこれらの前方に前二輪懸架装置4を支持する前懸架フレーム体20と、を備える。
【0012】
ロアアームブラケット15及び左右ロアアームフレーム16は、左右ダウンフレーム14から前方に延びるブランチロアフレーム17を構成する。左右メインフレーム13の後端部からは、左右ピボットフレーム18が下方に延びる。左右ピボットフレーム18の上部からは、左右シートフレーム19が後上がりに後方へ延びる。
【0013】
メインフレーム13の下方には、鞍乗り型車両1の原動機であるエンジン(内燃機関)6が搭載される。エンジン6の前方にはラジエータ6aが配置される。エンジン6の動力で駆動される後輪3は、スイングアーム7の後端部に支持される。スイングアーム7の前端部は、左右ピボットフレーム18に上下揺動可能に支持される。エンジン6の上方には収納ボックス8が配置され、収納ボックス8の後方には乗員着座用のシート9が配置され、シート9の下方には燃料タンク10が配置される。
【0014】
ヘッドパイプ12は、その中心軸線(ステアリング軸線)C1を車両前面視で車体左右中心線CL上に配置する。軸線C1は、車両側面視で鉛直方向に対して上側ほど後側に位置するように傾斜する。
図4、
図5を参照し、ヘッドパイプ12には、ステアリングシャフト12aが同軸かつ回動自在に挿通、支持される。ステアリングシャフト12aにおけるヘッドパイプ12の上方に突出する上端部には、バータイプの操向ハンドル11が取り付けられる。ステアリングシャフト12aにおけるヘッドパイプ12の下方に突出する下端部には、ステアリングリンク75を連結するボトムブラケット12bが取り付けられる。
【0015】
前懸架フレーム体20は、ヘッドパイプ12の上下中間部から前上がりに前方へ延びる上支持フレーム21と、ロアアームブラケット15の前端部から前上がりに前方へ延びる下支持フレーム22と、上下支持フレーム21,22の前端部間に渡って上側ほど後側に位置するように傾斜して上下に延びるフロントサブフレーム23と、を有する。
【0016】
上下支持フレーム21,22は互いに平行をなし、車両側面視でヘッドパイプ12の軸線C1と直交する方向よりも水平方向に対する傾斜角を小さくして配置される。
フロントサブフレーム23は、上下支持フレーム21,22の軸方向を厚さ方向とした厚板形状をなし、車両側面視でヘッドパイプ12よりも鉛直方向に対する傾斜角を小さくして配置される。
【0017】
フロントサブフレーム23の上部には、前二輪懸架装置4における一体のアッパーアーム24の左右中央を貫通する上揺動軸25の前端部が支持される。フロントサブフレーム23の下部には、前二輪懸架装置4における左右別体の左右ロアアーム26L,26Rの左右内側端部を貫通する左右の下揺動軸27L,27Rの前端部が支持される。上下揺動軸25,27は相互に平行をなし、かつ上下支持フレーム21,22とも平行に配置される。
【0018】
図中符号C2は上揺動軸25の中心軸線、符号C3L,C3Rは左右の下揺動軸27L,27Rの中心軸線をそれぞれ示す。
図2を併せて参照し、車両前面視において、上揺動軸25の中心軸線C2は車体左右中心線CL上に配置され、左右の下揺動軸27L,27Rの中心軸線C3L,C3Rは車体左右中心線CLから左右にオフセットして配置される。
【0019】
図2、
図4を参照し、前二輪懸架装置4のアッパーアーム24及び左右ロアアーム26L,26Rは、ヘッドパイプ12の前方で左右に延びる。アッパーアーム24及び左右ロアアーム26L,26Rの左右外側端部には、左右前輪2L,2Rを独立懸架する左右フロントフォークユニット28L,28Rの上部が、車両側面視でヘッドパイプ12と平行かつヘッドパイプ12よりも前方にオフセットして配置された左右操舵軸(キングピン軸)29L,29Rを介して、操舵可能に支持される。図中符号C4L,C4Rは左右操舵軸29L,29Rの中心軸線(キングピン軸線)を示す。
【0020】
前二輪懸架装置4は、左右前輪2L,2Rを接地させたままで、車体フレーム5、エンジン6及び後輪3等を含む車体本体を左右揺動可能とし、かつ車体本体の左右揺動に合わせて左右フロントフォークユニット28L,28R及び左右前輪2L,2Rを左右揺動させる。逆に、前二輪懸架装置4は、車体本体に対して左右フロントフォークユニット28L,28R及び左右前輪2L,2Rを互い違いに上下動させる。
【0021】
図8(a)に示すように、上下揺動軸25,27の軸方向視で、アッパーアーム24の左右アーム部、左右ロアアーム26L,26R及び左右フロントフォークユニット28L,28Rの上部は、フロントサブフレーム23も含めて、車体左右で平行リンク状に配置される。
【0022】
すなわち、上揺動軸25の軸線C2、左右の下揺動軸27L,27Rの軸線C3L,C3R、アッパーアーム24の左右外側端部の後述する左右の上外支持軸25aL,25aRの軸線C2aL,C2aR、左右ロアアーム26L,26Rの左右外側端部の後述する左右の下外支持軸27aL,27aRの軸線C3aL,C3aRを車体左右で結ぶ四角形sq1L,sq1Rは、それぞれ概ね平行四辺形とされる。これにより、アッパーアーム24及び左右ロアアーム26L,26Rの揺動時には、左右フロントフォークユニット28L,28R及び左右前輪2L,2Rが略平行に上下動する。
【0023】
また、上下揺動軸25,27の軸方向視で、アッパーアーム24の左右アーム部、左右タイロッド78L,78R及び左右フロントフォークユニット28L,28Rの上部は、フロントサブフレーム23も含めて、車体左右で平行リンク状に配置される。
すなわち、上揺動軸25の軸線C2、アッパーアーム24の左右の上外支持軸25aL,25aRの軸線C2aL,C2aR、左右タイロッド78L,78R内外の揺動中心78acL,78bcL,78acR,78bcRを車体左右で結ぶ四角形sq1L’,sq1R’は、それぞれ概ね平行四辺形とされる。これにより、アッパーアーム24及び左右ロアアーム26L,26Rの揺動時には、左右タイロッド78L,78Rも略平行に上下動し、左右前輪2L,2Rの舵角への影響が抑えられる。
【0024】
図2、
図4を併せて参照し、アッパーアーム24の左右外側端部には、上下揺動軸25,27と平行な上外支持軸25aL,25aRを介して、左右上外ブラケット24aL,24aRがそれぞれ揺動可能に支持される。左右上外ブラケット24aL,24aRには、左右操舵軸29L,29Rの上端部がそれぞれ支持される。上外支持軸25aL,25aRの中心軸線C2aL,C2aRは、左右前輪2L,2Rの接地点T1L,T1Rよりも車体左右方向内側に位置している。図中符号T2は後輪3の接地点を示す。
【0025】
左右ロアアーム26L,26Rの左右外側端部には、上下揺動軸25,27と平行な下外支持軸27aL,27aRを介して、左右下外ブラケット26aL,26aRがそれぞれ揺動可能に支持される。左右下外ブラケット26aL,26aRには、左右操舵軸29L,29Rの下端部がそれぞれ支持される。下外支持軸27aL,27aRの中心軸線C3aL,C3aRは、上外支持軸25aL,25aRの中心軸線C2aL,C2aRよりも左右外側で、左右前輪2L,2Rの接地点T1L,T1Rよりも左右内側に位置している。したがって、左右ロアアーム26L,26Rの左右外側端部間の距離H2は、アッパーアーム24の左右外側端部間の距離H1よりも長くなる。
【0026】
アッパーアーム24上には、これを左右に跨ぐように設けられたダンパーフレーム体31が固定される。ダンパーフレーム体31は、車両前面視で上方に凸のV字形状をなすもので、その左右傾斜辺に沿って延びる左右一対かつ前後一対のフレームパイプ32と、左右フレームパイプ32の左右内側端部を連結するトップブラケット33と、左右フレームパイプ32の左右外側端に固設される左右固定プレート34と、を有する。左右固定プレート34は、アッパーアーム24の左右外側端部上に締結固定される。
【0027】
図5を併せて参照し、トップブラケット33の前端部には、シリンダ式のスプリング装置(揺動反力発生装置)35の上端部が、上下揺動軸25,27と平行な上連結軸36及び球面軸受け35aを介して揺動可能に連結される。
スプリング装置35は、ロッド式のストロークガイドとコイルスプリングとを組み合わせたもので、車体の直立状態には、中心軸線(ストローク軸線)C5を車両前面視で車体左右中心線CL上に配置する。スプリング装置35の下端部は、フロントサブフレーム23における上揺動軸25よりも下方かつ下揺動軸27よりも上方となる位置に、上下揺動軸25,27と平行な下連結軸37及び球面軸受け35bを介して揺動可能に連結される。図中符号C6,C7は上下連結軸36,37の中心軸線を示す。
【0028】
図8(a)に示すように、スプリング装置35は、車体が直立状態にあるときには、車体左右中心で鉛直方向に延びた最伸長状態となる。このときのスプリング装置35における軸線C6,C7間の全長をL0とする。
一方、
図8(b)、
図8(c)に示すように、スプリング装置35は、車体が直立状態から左右に揺動したときには、前記最伸長状態から短縮するようにストロークする。すなわち、
図8(b)、
図8(c)のスプリング装置35の全長L1,L2は、
図8(a)の全長L0よりも短くなる。このときのスプリング装置35が伸長しようとする力が、車体を直立状態に戻そうとする復元力となり、かつ車体のローリング動に対する反力となる。
【0029】
スプリング装置35は、車体が直立状態にあるときに車体左右中心上に配置されることから、車体のローリング動に対する伸縮量が、車体の左右何れへの揺動時にも同一となり、車体が左右何れに揺動した場合にも同一の復元力が得られる。
【0030】
図2、
図9に示すように、ダンパーフレーム体31の例えば右フレームパイプ32には、車体の揺動エネルギーを減衰するためのロータリ式の揺動ダンパー(揺動減衰装置)38が支持される。
揺動ダンパー38は、直方体形状のハウジング38a内に扇形状の油室を形成し、この油室内でベーンを揺動させることで減衰力を得る(何れも不図示)。ベーンと一体揺動するダンパー揺動軸39は、ハウジング38aの車体搭載時における前面から前方に突出する。このダンパー揺動軸39の突出部分には、揺動レバー41の基端部が一体揺動可能に取り付けられる。
【0031】
揺動レバー41の先端部には、リンクロッド42の上端部がリンク連結軸42aを介して揺動可能に連結される。リンクロッド42の下端部は、フロントサブフレーム23における上揺動軸25の右下方となる位置にダンパー連結軸43を介して揺動可能に連結される。すなわち、ダンパー揺動軸39は、揺動レバー41及びリンクロッド42を含むリンク機構41Aを介して車体フレーム5に連結される。
ダンパー揺動軸39、リンク連結軸42a及びダンパー連結軸43は、上下揺動軸25,27と平行な軸である。図中符号C8はダンパー揺動軸39の中心軸線、符号C8aはリンク連結軸42aの中心軸線、符号C9はダンパー連結軸43の中心軸線をそれぞれ示す。
【0032】
図9(a)に示すように、リンク機構41Aは、フロントサブフレーム23におけるアッパーアーム24を支持する上揺動軸25とリンクロッド42を連結するダンパー連結軸43との間に渡るオフセット部23aを含んで、平行リンク状に配置される。
すなわち、上揺動軸25の軸線C2、ダンパー揺動軸39の軸線C8、リンク連結軸42aの軸線C8a、及びダンパー連結軸43の軸線C9を結ぶ四角形sq2は、概ね平行四辺形とされる。
【0033】
これにより、
図9(b)、
図9(c)に示すように、車体揺動時等にアッパーアーム24及びフロントサブフレーム23が所定角度だけ相対揺動すると、これと同等の角度で前記ハウジング38a内のベーンが揺動し、揺動ダンパー38に所定の減衰力を発生させる。揺動ダンパー38及びリンク機構41Aは、車体の左右何れへの揺動時にも同一の減衰力を発生させる設定とされる。
【0034】
揺動ダンパー38は、発生する減衰力の大きさを鞍乗り型車両1の車速に応じて変化させる電子制御式の可変ダンパーとされる。揺動ダンパー38は、例えば左右前輪2L,2Rに設けた車輪速センサー(車速センサー)2Sから得られる車速情報に基づき、ソレノイドバルブ等を作動させて油路を切り替える。これにより、揺動ダンパー38は、鞍乗り型車両1の停車時から高速走行時に渡り、減衰力の大きさ等を適宜変化させる。
【0035】
図2、
図4を参照し、ダンパーフレーム体31の後部には、車体フレーム5に対するアッパーアーム24の揺動軌跡に沿うように、車両前面視で円弧状に延びるロックプレート44が固定される。ロックプレート44は、上下揺動軸25,27の軸方向と直交する板状をなし、このロックプレート44の上端位置には、ロックプレート44を厚さ方向で挟圧可能なロックキャリパ45が配置される。ロックキャリパ45は、上支持フレーム21上に固設された支持ブラケット21aに支持される。
【0036】
ロックキャリパ45はケーブル式であり、車体前部左側に配置された操作ボックス46から延びる不図示の操作ケーブルの一端が連結される。前記操作ケーブルの他端は、操作ボックス46下部の揺動ロックレバー47の作用端に連結される。この揺動ロックレバー47の操作により、ロックキャリパ45を作動させてロックプレート44を挟圧し、車体の左右揺動をロック可能である。操作ボックス46は、その上部にパーキングブレーキレバー48を有し、このパーキングブレーキレバー48の作用端から延びる不図示の操作ケーブルが、例えば後輪3近傍に設けた不図示のパーキングブレーキに連結される。
【0037】
アッパーアーム24が支持する左右上外ブラケット24aL,24aRと、左右ロアアーム26L,26Rが支持する左右下外ブラケット26aL,26aRとの間には、左右フロントフォークユニット28L,28Rの上部が、左右操舵軸29L,29Rを介してそれぞれ操舵可能に支持される。
【0038】
図3は、左前輪2L及びハブh等を取り外した状態の左フロントフォークユニット28Lを示すが、右フロントフォークユニット28Rは左右対称の構成とする。以下、
図2、
図3を参照して左右フロントフォークユニット28L,28Rを説明する。
【0039】
左右フロントフォークユニット28L,28Rは、左右前輪2L,2Rの左右内側に隣接するように、トレーリングリンク式のフロントサスペンション52Aを構成する。左右フロントフォークユニット28L,28Rは、上部がアッパーアーム24及び左右ロアアーム26L,26Rの左右外側端部に支持されるフォーク本体51と、フォーク本体51の下端部に前端部52aが揺動可能に支持されるトレーリングアーム52と、トレーリングアーム52の後部とフォーク本体51の上部との間に渡るクッションユニット54と、トレーリングアーム52の後端部52bに一体揺動可能に設けられる前輪車軸57と、前輪車軸57の後方でサポートブラケット62aを介してブレーキキャリパ62を支持するとともに前輪車軸57に揺動可能に支持されるキャリパブラケット58と、前輪車軸57の上方で後端部59bがキャリパブラケット58に揺動可能に連結されるとともに前端部59aがフォーク本体51の下部に揺動可能に連結されるトルクロッド59と、を備える。
【0040】
トレーリングアーム52の前揺動軸53及びトルクロッド59の前後揺動軸60,61は、前輪車軸57と平行に配される。図中符号C11は前揺動軸53の中心軸線、符号C15,C16は前後揺動軸60,61の中心軸線、符号C12は前輪車軸57における左右方向に沿う中心軸線をそれぞれ示す。
【0041】
フォーク本体51は、アッパーアーム24及び左右ロアアーム26L,26Rの左右外側端部の間に左右操舵軸29L,29Rを介して支持されるアッパーブラケット65と、アッパーブラケット65における操舵軸29の前方に張り出すパイプ挿通部65aに上部が挿通、固定されるフォークパイプ66と、を有する。
フォークパイプ66の上部は、車両側面視で操舵軸29よりも鉛直方向に対する角度を大きくしてパイプ挿通部65aに挿通される。フォークパイプ66及びパイプ挿通部65aは、左右前輪2L,2Rの内側端よりも左右内側に配置される。
【0042】
フォークパイプ66は、パイプ挿通部65aの下方で前下方に湾曲して延びた後、前輪車軸57よりも前方となる位置で下方に湾曲して延びる。フォークパイプ66の下端部には、トレーリングアーム52の前端部52aを支持するピボットブラケット67が固設される。ピボットブラケット67は、車両側面視で前輪車軸57の上前方に配置される。
【0043】
フォークパイプ66の中間部の後下側には、クッションユニット54の上端部54aを支持する上クッションブラケット68が固設される。フォークパイプ66の下部後側には、トルクロッド59の前端部59aを支持する前ロッドブラケット69が固設される。フォークパイプ66の中間部の前上側には上前ガセット70が固設され、フォークパイプ66の下湾曲部の後内周側には下後ガセット71が固設され、フォークパイプ66の上部後側には上後ガセット72が固設される。フォークパイプ66の下湾曲部の内側面には、後に詳述するフォーク側バンパー部材96の上端部が締結固定され、このフォーク側バンパー部材96の下部が、下後ガセット71の内側面に締結固定される。
【0044】
トレーリングアーム52は、ピボットブラケット67から下後方に延びるように配置される。トレーリングアーム52の後端部52bからは、前輪車軸57が左右外側に突出する。前輪車軸57には、前輪2のハブhが回転自在かつ脱落不能に取り付けられる。ハブhの左右外側には、前輪2のホイールwの中心部が複数のホイールナットnにより締結される。ハブhの外周には、ブレーキキャリパ62に挟圧されるブレーキディスク63が取り付けられる。
【0045】
クッションユニット54は、車両側面視で上側ほど後側に位置するように傾斜したロッド式のダンパーと、ダンパーの周囲を巻回するコイルスプリングとを有する。クッションユニット54の上端部54aは、上クッションブラケット68に上支持軸55を介して支持される。クッションユニット54の下端部54bは、トレーリングアーム52の前輪車軸57寄りの部位に下支持軸56を介して支持される。上下支持軸55,56は前輪車軸57と平行な軸である。図中符号C13,C14は上下支持軸55,56の中心軸線、符号C17はクッションユニット54の中心軸線(ストローク軸線)をそれぞれ示す。
【0046】
クッションユニット54の上部前側には、前記ダンパーに連通するサブタンク54cが配置される。サブタンク54cは、軸線C17と平行に延びる円筒状をなし、前記ダンパー及びコイルスプリングを含むクッション本体とフォーク本体51との間のスペースに配置される。
クッションユニット54は、前輪2の上下動によるトレーリングアーム52の揺動によって、軸線C17に沿ってストロークし、前輪2に入力された衝撃等を吸収するとともに前輪2の上下動を減衰させる。
【0047】
キャリパブラケット58は、前輪車軸57に相対回転自在に外嵌する基部58aと、基部58aの後上方に延びる上アーム部58bと、基部58a及び上アーム部58bの後方に延びる支持プレート部58cとを有する。上アーム部58bの上端部には、クッションユニット54の左右外側を通過したトルクロッド59の後端部59bが後揺動軸61を介して連結される。
【0048】
ブレーキキャリパ62は、前輪2と一体回転するブレーキディスク63の後下部を車軸方向で挟み込むように配置される。ブレーキキャリパ62は、不図示のマスターシリンダから供給された油圧によって、ブレーキディスク63を挟圧して前輪2の回転を制動する。ブレーキディスク63、ブレーキキャリパ62及びキャリパブラケット58は、前輪2における左右内側方に開放する椀状のホイールwの内側に配置される。
【0049】
ブレーキディスク63及びブレーキキャリパ62を主とする前輪ブレーキは、左右前輪2L,2Rにそれぞれ設けられる。同様の構成の後輪ブレーキは、単一の後輪3に設けられる。前輪ブレーキへの油圧供給は、例えば操向ハンドル11の右グリップに配置したブレーキレバーの操作を主になされる。これにより、左右前輪2L,2Rが同時に制動される。後輪ブレーキへの油圧供給は、例えば右ステップに配置したブレーキペダルの操作を主になされる。前後輪ブレーキは、互いに独立した操作入力で個別に作動するものであってもよく、かつ少なくとも一方の操作入力で互いに連動して作動するものであってもよい。
【0050】
トルクロッド59は、キャリパブラケット58の上アーム部58bの上端部をフォーク本体51の下部に連結することで、前輪制動時にブレーキキャリパ62からキャリパブラケット58に入力される制動反力を、サスペンションフレームであるフォーク本体51に入力する。前輪制動時には、前記制動反力によりトレーリングアーム52が揺動してクッションユニット54をストロークさせようとするが、前記制動反力をトルクロッド59を介してフォーク本体51に入力することで、前輪制動時におけるトレーリングアーム52の揺動によるピッチングが抑えられる。
【0051】
フォーク本体51の下部、トレーリングアーム52、キャリパブラケット58及びトルクロッド59は、車両側面視で平行リンク状に配置される。
すなわち、前揺動軸53の軸線C11、前輪車軸57の軸線C12、前後揺動軸60,61の軸線C15,C16を車両側面視で結ぶ四角形sq3は、概ね平行四辺形とされる。
【0052】
左右操舵軸29L,29Rのキングピン軸線C4L,C4Rは、車両側面視では鉛直方向に対して上側ほど後側に位置するように傾斜する。換言すれば、左右キングピン軸線C4L,C4Rは、ステアリング軸線C1と平行となるように傾斜する。また、左右キングピン軸線C4L,C4Rは、車両前面視では鉛直方向に対して上側ほど左右内側に位置するように傾斜する。
【0053】
車両前面視における左右キングピン軸線C4L,C4Rの下方への延長部分は、左右前輪2L,2Rの接地点(接地中心)T1L,T1Rに至る。
車両側面視におけるキングピン軸線C4の下方への延長部分の路面Rとの交点T1’は、前輪2の接地点T1の前方に位置してトレールを生じさせる。車両側面視におけるキングピン軸線C4の鉛直方向に対する傾斜角はキャスター角となる。前輪車軸57は、車両側面視でキングピン軸線C4の前方にオフセットしている。
【0054】
左右前輪2L,2R及び後輪3の各タイヤは、断面円弧状のトレッド面を有する。左右前輪2L,2Rは、車体のバンク時(ローリング時)には、前二輪懸架装置4の作用により前記車体本体と同様に傾き、トレッド面の接地点をセンターからサイドに移行させる。このとき、左右前輪2L,2Rには、トレールの作用によって傾いた方向に舵角が生じる。
【0055】
図4〜
図6を参照し、ステアリングシャフト12aの下端部に取り付けられるボトムブラケット12bには、ステアリングリンク75の後端部が球面軸受け75bを介して連結される。ステアリングリンク75の前端部は、フロントサブフレーム23の後面側に支承されたベルクランク部材76の第一アーム76aに球面軸受け75aを介して連結される。
【0056】
ベルクランク部材76は、車両側面視で操舵軸29よりも鉛直方向に対する傾斜を大きくした中継軸77を介して、フロントサブフレーム23の後面側の車体左右中央に揺動可能に支持される。
ベルクランク部材76の第二アーム76bには、左右タイロッド78L,78Rの左右内側端が左右球面軸受け78aL,78aRを介して連結される。左右タイロッド78L,78Rの左右外側端は、それぞれ左右フォーク本体51のアッパーブラケット65の後部に左右球面軸受け78bL,78bRを介して連結される(
図2参照)。
【0057】
これにより、操向ハンドル11と左右前輪2L,2Rとが連係され、操向ハンドル11が左右に操舵されると、ステアリングシャフト12a、ステアリングリンク75、ベルクランク部材76及び左右タイロッド78L,78Rを介して、左右フロントフォークユニット28L,28R及び左右前輪2L,2Rが左右何れかに操舵される。
【0058】
ベルクランク部材76は、車両側面視で左右フロントフォークユニット28L,28Rの上部と重なるように配置される。このベルクランク部材76から概ね左右方向に沿うように延びる左右タイロッド78L,78Rを介して、左右フロントフォークユニット28L,28R及び左右前輪2L,2Rが操舵される。
【0059】
ヘッドパイプ12に支持したステアリングシャフト12aから、ヘッドパイプ12の前方にオフセットした左右フロントフォークユニット28L,28Rに向けて、左右方向に対して大きく傾斜した左右タイロッドを延ばして連結した場合、左右方向に沿うように左右タイロッドを延ばして連結する場合と比べて、左右前輪2L,2Rの操舵角を同一にし難い。
【0060】
すなわち、ステアリングシャフト12aの回動を、ヘッドパイプ12の前方にオフセットしたベルクランク部材76の回動に変換した後、ベルクランク部材76から左右タイロッド78L,78Rを延ばして左右フロントフォークユニット28L,28Rに連結することで、左右前輪2L,2Rの操舵角を同一にし易くなる。ベルクランク部材76は、左右フロントフォークユニット28L,28R間に効率よく配置できる。
【0061】
図7は、
図4中VII矢視図(キングピン軸線C4の車両側面視での傾斜に沿う矢視図)である。
図7(a)に示すように、ステアリングシャフト12aの下端部のボトムブラケット12b、これに連結されるステアリングリンク75、及びベルクランク部材76の第一アーム76aは、平行リンク状に配置される。
すなわち、ステアリング軸線C1、中継軸77の軸線C18(図示都合上、点で示す)、ステアリングリンク75前後の球面軸受け75a,75bの揺動中心75ac,75bcを結ぶ四角形sq4は、概ね平行四辺形とされる。これにより、操向ハンドル11の回動角とベルクランク部材76の回動角とが略同一になる(
図7(b)、
図7(c)参照)。
【0062】
また、
図7(a)において、ベルクランク部材76の第二アーム76b、左右タイロッド78L,78R及び左右フロントフォークユニット28L,28Rの上部は、横長かつ前側よりも後側が狭い左右一対の四節リンクを形成する。
すなわち、中継軸77の軸線C18、左右タイロッド78L,78R内外の球面軸受け78aL,78bL,78aR,78bRの揺動中心78acL,78bcL,78acR,78bcR、及び左右キングピン軸線C4L,C4Rを車体左右でそれぞれ結ぶ左右の四角形sq5L,sq5Rは、それぞれ軸線C18及び左右キングピン軸線C4L,C4R間の距離が左右タイロッド78L,78R内外の揺動中心78acL,78bcL,78acR,78bcR間の距離よりも長く形成される。
【0063】
さらに、軸線C18と左右タイロッド78L,78R内側の揺動中心78acL,78acRとを結ぶ直線は、後側ほど左右外側に位置するように傾斜して配置され、左右キングピン軸線C4L,C4Rと左右タイロッド78L,78R外側の揺動中心78bcL,78bcRとを結ぶ直線は、車両前後方向に沿うように配置される。また、前者の直線は後者の直線よりも長くされる。
【0064】
このような左右の四節リンクは、所謂アッカーマン機構と同等の作用を奏し、左右前輪2L,2Rを操舵した際、左右前輪2L,2Rの内の内輪側の操舵角を外輪側の操舵角よりも大きくする。すなわち、
図7(b)に示す如く左操舵した際、左前輪2Lの操舵角θ1Lは右前輪2Rの操舵角θ1Rよりも大きく、
図7(c)に示す如く右操舵した際、右前輪2Rの操舵角θ2Rは左前輪2Lの操舵角θ2Lよりも大きい。
【0065】
図5に示すように、上下揺動軸25,27の水平面(路面Rに相当)に対する側面視の傾斜角度θ1,θ2は互いに同一であり、これらは本実施形態では20度に設定される。
車体の左右揺動は、上下揺動軸25,27と平行な前上がりの軸中心になされることから、左右前輪2L,2Rを接地させたまま車体を左右揺動させようとすると、左右前輪2L,2Rが車体に対する上下動に伴い前後方向にも互い違いに移動しようとする。したがって、左右前輪2L,2Rにブレーキをかけて静止させることで、車体を左右揺動させようとしてもこの揺動が制限される。
【0066】
図3に示す1G状態のフロントフォークユニット28において、トレーリングアーム52の前後端の軸線C11,C12を車両側面視で結ぶ直線をアーム長基準線52cとすると、このアーム長基準線52cの水平面(路面Rに相当)に対する側面視の傾斜角度θ3は、本実施形態では上下揺動軸25,27の傾斜と同じ20度に設定される。
そして、1G状態からクッションユニット54をストロークさせてトレーリングアーム52を揺動させると、前輪2は上下動に伴い前後方向にも移動しようとする。したがって、左右前輪2L,2Rにブレーキをかけて静止させることで、左右クッションユニット54が別個にストロークすることによる車体の左右揺動が制限される。
【0067】
なお、上下揺動軸25,27の傾斜角度θ1,θ2は20度に限らず、20度を超えた角度とすれば、左右前輪2L,2Rの前後移動量が増えることから左右前輪2L,2Rの制動による車体揺動を制限する効果が高まる。同様に、トレーリングアーム52の傾斜角度θ3も20度に限らず、20度を超えた角度とすれば、上記同様に車体揺動を制限する効果が高まる。
【0068】
図2、
図3に示すように、フロントサブフレーム23の下端部前側には、概略半球形状のフレーム側バンパー部材91が取り付けられる。フレーム側バンパー部材91は、車体左右中心上で下揺動軸27L,27Rの下方で車体左右中心線CL上かつ下支持フレーム22と同軸に配置される。
図5を併せて参照し、フレーム側バンパー部材91は、自身を下支持フレーム22と同軸に貫通するボルト孔を有し、このボルト孔に車両前方から挿通したボルトB1を、下支持フレーム22前端に固設したナット部材N1に螺着し締め込むことで、車体フレーム5の下部前端に固定される。フレーム側バンパー部材91は例えば合成樹脂製とされる。
【0069】
一方、左右一対のフロントフォークユニット28L,28Rには、前述したように、フォークパイプ66の下湾曲部の内側面に、フォーク側バンパー部材96の上端部が締結固定され、このフォーク側バンパー部材96の下部が、下後ガセット71の内側面に締結固定される。図中符号97a,97bはフォーク側バンパー部材96の上下の締結孔を示し、ボルトナットの図示は略す。フォーク側バンパー部材96は、左右方向と略直交する平板状をなし、上下に長い縦長形状とされ、上側ほど前側に位置するように傾斜して配置される。フォーク側バンパー部材96は例えば金属製とされる。なお、フォーク側バンパー部材96が合成樹脂製であってもよい。さらにいうと、フォーク側バンパー部材96及びフレーム側バンパー部材91の少なくとも一方が緩衝効果のある合成樹脂製であればよい。
【0070】
図10、
図11を参照し、左右前輪2L,2Rが水平な路面R上に接地した状態で車体が左右何れか(図では右側)にバンクすると、前二輪懸架装置4の作用により、左右フロントフォークユニット28L,28R及び左右前輪2L,2Rが同側へ揺動しつつ、車体フレーム5に対して互い違いに上下動する。このとき、左右フロントフォークユニット28L,28R及び左右前輪2L,2Rは、車体が直立状態にあるときよりも車体左右内側へ変位する。
【0071】
このように車体がバンクした状態で車両が旋回走行するときに、車体が揺動した側と逆側にハンドルを切るカウンタステアを当てる場合には、
図12に示すように、上方移動した前輪2(内輪、図では右前輪2R)が車体フレーム5に近付いた状態からさらに車体フレーム5側(左前輪2L側)へ転舵される。このとき、上方移動した右前輪2Rを支持する右フォークパイプ66に取り付けたフォーク側バンパー部材96は、車体フレーム5の前端に取り付けたフレーム側バンパー部材91に斜め前外側から接近して当接する。これにより、フォークパイプ66等の懸架部材と車体フレーム5との直接的な接触が回避される。
【0072】
すなわち、車体が直立状態にある場合、不図示のハンドルストッパにより左右前輪2の最大舵角が規定され、前輪2及びその懸架部材等が車体フレーム5等に干渉することはない。しかし、前輪2等が車体左右内側へ変位して車体フレーム5に近付いた状態でさらに車体フレーム5側へ転舵されると、前記ハンドルストッパが機能する前に前輪2等が車体フレーム5等に干渉する虞がある。このため、車体の直立状態から浅いバンク角までは前記ハンドルストッパにより左右前輪2の舵角を制限し、深いバンク角になってからは前記ハンドルストッパが機能する前に両バンパー部材91,96を当接させる設定とする。
【0073】
図12は、車体が概ねフルバンクした状態でカウンタステアを当てた状態を示す。このとき、フォーク側バンパー部材96は、その長手方向の中間部の側面をフレーム側バンパー部材91に当接させる。
一方、
図13は、車体がフルバンクに至らない程度にバンクした状態でカウンタステアを当てた状態を示す。このとき、フォーク側バンパー部材96は、その上部の側面をフレーム側バンパー部材91に当接させる。すなわち、
図12に対してバンク角が浅くなった分、フロントフォークユニット28及び前輪2の車体左右内側への変位量が少なくなり、カウンタステアの操舵角が増加する。またこのとき、フロントフォークユニット28及び前輪2の上方移動量も少なくなるので、フォーク側バンパー部材96がフレーム側バンパー部材91に対してやや上方に変位した位置で当接する。このように、車体のフルバンク時に限らずやや浅いバンク角まで含めた広範囲で両バンパー部材91,96を当接させることが可能である。なお、カンタステアの操舵角の大きさは、フレーム側バンパー部材91の大きさやフォーク側バンパー部材96の厚さ等により調整可能である。
【0074】
図2、
図3に示すように、左右フロントフォークユニット28の左右内側には、その上端部から下端部に渡って延びるブレーキ配管100が配索される。ブレーキ配管100は、例えば、左右前輪2のみを独立して制動するべくブレーキキャリパ62に油圧を供給する第一ブレーキ配管と、左右前輪2と後輪3とを連動して制動するべくブレーキキャリパ62に油圧を供給する第二ブレーキ配管と、を並列に配索する。ブレーキ配管100は、例えば鋼管に曲げ加工を施してなる。ブレーキ配管100の上端部には、不図示の油圧供給源等から延びるブレーキホースが接続され、ブレーキ配管100の下端部には、ブレーキキャリパ62に向けて延びるブレーキホースが接続される。
【0075】
ブレーキ配管100は、フロントフォークユニット28の下後ガセット71の内側方を通過するが、当該部位において、下後ガセット71とフォーク側バンパー部材96との間に形成されたトンネル部98を通過する。
図11を併せて参照し、トンネル部98は、フォーク側バンパー部材96の外側面に形成された凹溝を下後ガセット71の内側面に対向させることで形成される。トンネル部98は、ブレーキ配管100の配索の向き沿うように、後側ほど上側に位置するように傾斜する。このトンネル部98を通過するようにブレーキ配管100を配索することで、ブレーキ配管100の配索がガイドされ、かつ車体バンク時のカウンタステアで車体フレーム5に接近するフォーク側バンパー部材96の近傍でのブレーキ配管100の車体フレーム5等への接触が避けられる(
図12、
図13参照)。
【0076】
以上説明したように、上記実施形態は、左右一対の前輪2L,2Rと、前記左右一対の前輪2L,2Rをそれぞれ懸架する左右一対のフロントフォークユニット28L,28Rと、前記左右一対のフロントフォークユニット28L,28Rをそれぞれ操舵可能に支持する左右一対の操舵軸29L,29Rと、車体フレーム5の左右中央部(フロントサブフレーム23)に揺動可能に支持されるとともに、左右外側端部で前記左右一対の操舵軸29L,29Rの上端部をそれぞれ支持するアッパーアーム24と、前記アッパーアーム24の下方に設けられ、前記車体フレーム5の左右中央部に揺動可能に支持されるとともに、左右外側端部で前記左右一対の操舵軸29L,29Rの下端部をそれぞれ支持するロアアーム26L,26Rと、を備える前二輪式の鞍乗り型車両1であって、前記車体フレーム5の左右中央部に取り付けられるフレーム側バンパー部材91と、前記左右一対のフロントフォークユニット28L,28Rに取り付けられ、前記左右一対の前輪2L,2Rの一方が上方移動した状態で他方側に転舵された際に、前記フレーム側バンパー部材91に当接するフォーク側バンパー部材96と、をさらに備えるものである。
【0077】
この構成によれば、旋回走行時にカウンタステアを当てる場合に、上方移動した一方の前輪2が車体フレーム5に近接した状態で他方の前輪2側(車体フレーム5側)に転舵されても、車体フレーム5及びフロントフォークユニット28にそれぞれ設けた両バンパー部材91,96が互いに当接することで、上方移動した前輪2を支持するフロントフォークユニット28と車体フレーム5との直接的な接触を回避することができる。また、左右前輪2のトレッド幅を増加させなくてもよく、車両の大型化を回避することができる。さらに、車体のバンク角が小さい場合には、左右前輪2の車体左右内側への変位が少なく、フレーム側バンパー部材91とフォーク側バンパー部材96との間の距離が確保されるため、押し歩き時等にも通常の舵角を確保でき、利便性を維持することができる。
【0078】
また、上記実施形態では、前記フォーク側バンパー部材96が、上下に長い縦長に形成されることで、車体のフルバンク時に限らずやや浅いバンク角まで含めた広範囲で両バンパー部材91,96を当接させることができる。
【0079】
また、上記実施形態では、前記フレーム側バンパー部材91が、前記車体フレーム5の左右中央部に単一に設けられることで、左右フロントフォークユニット28にそれぞれ設けられるフォーク側バンパー部材96と合わせて最小限の部品点数とすることができる。
【0080】
また、上記実施形態では、前記フロントフォークユニット28の左右内側にブレーキ配管100が配索され、前記フォーク側バンパー部材96が、前記フロントフォークユニット28の左右内側から前記ブレーキ配管100を跨ぐように設けられることで、ブレーキ配管100等の索状部材をフロントフォークユニット28の左右内側に隠すように配索した場合、両バンパー部材91,96が当接するような転舵時には索状部材と車体フレーム5側との接触の回避を考慮する必要があるが、フォーク側バンパー部材96をフロントフォークユニット28の左右内側から索状部材を跨ぐように設けることで、索状部材を目立たないように配索可能とした上で、索状部材と車体フレーム5側との接触を別途カバー部材等を設けることなく回避することができる。
【0081】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、本実施形態では、車体前部に左右一対の前輪を備えるとともに車体後部に単一の後輪を備えた揺動三輪車に適用した例を示したが、車体前部に左右一対の前輪を備えるとともに車体後部に左右一対の後輪を備えた揺動四輪車に適用してもよい。
フォーク側バンパー部材96のみを縦長に形成する構成に限らず、フレーム側バンパー部材91及びフォーク側バンパー部材96の少なくとも一方を縦長に形成する構成であればよい。フロントフォークユニット28の左右内側に配索するブレーキ配管100の本数は問わず、かつブレーキ配管に限定しない。本実施形態ではロアアーム26を左右分割したが、アッパーアーム24を左右分割した構成でもよい。両アーム24,26を左右分割した場合、補強メンバ等を用いて左右アームを繋いだ形態としてもよい。
上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。