【文献】
Sung-Hyuck Im, et al.,“Indoor Navigation and Multipath Mitigation Using Code-Offset Based Pseudolite Transmitter Array”,Proceedings of the 2010 International Technical Meeting of The Institute of Navigation (ITM 2010),2010年 1月25日,p.259-263
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の相関量の計算に使用される前記局部信号は、前記第1の相関量の計算に使用される前記局部信号の前記位相搬送波に対して位相シフトされた局部搬送波を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
実施が比較的容易であり、効率的であり、安価な、いくつかの発信機を備えたシステム内の少なくとも1つの受信機のグレアを低減する方法を有する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、この必要性に応えることであり、本発明はこれを、その態様の1つによると、システム内、特にジオロケーションシステム内の少なくとも1つの受信機のグレアを低減する方法であって、システムが、
−第1の符号で変調された少なくとも1つの第1の信号を発信する少なくとも1つの第1の発信機と、
−反復性且つ潜在的に可変の第2の符号で変調された少なくとも1つの第2の信号及び第2の信号に対して位相シフトされた第3の信号を発信する少なくとも1つの第2の発信機であって、第3の信号は第1の遅延だけ遅延した第2の符号で変調される、少なくとも1つの第2の発信機と、
−受信機であって、第1及び第2の発信機が発信する信号を検出するように構成され、第1の信号を追跡するために、局部信号を作る受信機と、
を備え、この方法では、
−第1の符号で変調される受信機の局部信号と、少なくとも第1、第2、及び第3の信号の組み合わせから生じる信号との相関の第1の相関量が計算され、
−第1の遅延だけ遅延する第1の符号で変調される受信機の局部信号と、少なくとも第1、第2、及び第3の信号の組み合わせから生じる信号との相関の第2の相関量が計算され、
−第1及び第2の相関量を結合して、第2の信号による受信機のグレアを低減しながら、受信機が受信する第1の信号の信号/雑音比を向上させる、方法により達成する。
【0012】
本発明によれば、第2の発信機は、「二重発信」法に従って第2及び第3の信号の両方を発信する。第2の信号に加えて第2の発信機により発信される、第2の信号に対して位相シフトされ、第2の信号を変調する符号から遅延した符号で変調される第3の信号の発信により、ある発信機が別の発信機に誘導する干渉を低減することが可能である。
【0013】
さらに、本発明によれば、受信機のグレアを低減し、特に除去できるようにする第3の信号は、第2の信号と同じ発信機により発信される。したがって、第2の信号が受けるすべての物理的現象はすべて、第3の信号が受ける物理的現象と同じであることができ、これにより、第2の信号の間接経路に関連する干渉をなくすこともできる。
【0014】
さらに、同じ発信機が第2及び第3の信号を発信することにより、第2及び第3の信号から発せられるすべてのエネルギーを復元することができるため、エネルギーの無駄を低減し、実際にはなくし、相関付け動作後の信号/雑音比をかなり向上させることが可能である。
【0015】
「反復性且つ潜在的に可変の符号」
すなわち「反復性の、または可変であってもよい符号」という表現は、「符号の持続時間」とも呼ばれる同じ持続時間をそれぞれ示す複数の連続シーケンスを含む符号を示す。例えば、周期性符号に対処する場合、あるシーケンスから別のシーケンスに、符号を完全に同じように繰り返すことができ、この場合、符号の持続時間は符号の周期に対応する。変形形態として、シーケンス毎に符号は異なる値をとる。第1の符号も反復性且つ潜在的に可変の信号であり得、特に周期性を有し得る。
【0016】
第1の符号及び第2の符号は、同じ符号持続時間、例えば、同じ周期を示すことができる。
【0017】
第1の遅延は、第2の符号の持続時間の半分の±1%以内に相当し得る。第2の符号が周期性を有する場合、第1の遅延は、例えば、第2の符号の周期の半分の±1%に等しい。
【0018】
第2の信号と第3の信号との位相シフトは、180°の±10%以内に相当し得る。
【0019】
上記値を用いて、本発明による方法は、第1及び第2の相関量を結合することにより、第2の発信機から生じる信号をなくすことができ、それにより、受信機が第1の発信機により発信される第1の信号を満足がいくように追跡することができる。
【0020】
第2の信号の電力と第1の信号の電力との比率は、24dBを超え得る。したがって、第1の信号が第2の信号よりもはるかに小さな振幅を示すにも関わらず、本発明により第1の信号を追跡することが可能である。
【0021】
第2の発信機は、例えば、受信機に対して固定される。
【0022】
第1の発信機、例えば衛星は、受信機に対して可動であり得る。
【0023】
第1、第2、及び第3の信号は、GPS又はGNSSシステムに使用される信号であり得、これらの信号は符号に基づく多重化を実施する。
【0024】
第1及び第2の符号は、GPSの場合にはC/A(「粗同期捕捉」)とも呼ばれるゴールド符号であり得る。ゴールド符号は、周期性を有し、1023個の瞬間の長さを有し、1.023MHZでクロック制御される。ゴールド符号の最小周期は、GPSの場合、1msである。
【0025】
第1及び第2の信号は、第1及び第2の発信機により同時に、すなわち、同じ瞬間に発信し得る。第2及び第3の信号は、第2の発信機により同時に、すなわち、同じ瞬間に発信し得る。
【0026】
第1、第2、及び第3の信号は、例えば、周波数L1である同じ搬送周波数を有することができ、GPS又はGNSSシステムで用いられている用語によれば、この周波数は1.57542GHzである。
【0027】
第1の発信機は衛星であり得、第2の発信機は疑似衛星であり得る。
【0028】
方法は、外部設定で実施して、例えば、着陸段階及び/又は滑走路からの離陸段階で航空機をガイドし得る。
【0029】
第1の相関量の計算に使用される局部信号及び第2の相関量の計算に使用される局部信号は、同相局部搬送波を示すことができ、第1の相関量の計算に使用される局部信号及び第2の相関量の計算に使用される局部信号は、例えば、第1の符号の遅延だけ異なる。受信機が発信機に対して静止する場合、第2の局部搬送波と同相の第1の局部搬送波により、受信機のグレアを低減し、又は実際に除去することが可能であり得る。
【0030】
変形形態として、第2の相関量の計算に使用される局部信号は、以下において「第2の局部搬送波」と呼ばれる局部搬送波を示し得、この搬送波は、以下において「第1の局部搬送波」と呼ばれる、第1の相関量の計算に使用される局部信号の局部搬送波から、特に可変位相シフトに従って位相シフトし得る。そのような第1及び第2の局部搬送波により、受信機のこの移動により誘導されるドップラー効果を考慮することが可能になるため、受信機が発信機に対して移動する場合、上述した目的を達成することが可能であり得る。第2の局部搬送波は、例えば、第2の相関量の計算の周期の一部分で所定の位相シフトと、第2の相関量の計算の周期の残りの持続時間中の上記所定の値の逆に等しい位相シフト値とを示す。
【0031】
例えば、第2の相関量は、第2の符号の周期に等しい積分時間Tに従って計算し得、第1の局部搬送波に対する第2の局部搬送波の位相シフトは、間隔[t,t+T/2]のα及び間隔[t+T/2,t+T]の−αに相当し得る。
【0032】
第2の局部搬送波の位相シフトは、最高電力の発信機により発信される信号のドップラー周波数に基づいて計算し得る。
【0033】
変形形態として、受信機は、異なる局部信号を生成するように構成し得、各信号は、システムの異なる発信機のドップラー周波数に基づいて計算される局部搬送波位相を有する。
【0034】
第2及び第3の信号は同じ搬送波を示すことができる。
【0035】
第1及び第2の相関量は、受信機により計算し得、且つ/又は一緒に結合し得る。第1の相関量と第2の相関量とを結合する結合動作は、例えば、線形結合、特に加算又は減算である。
【0036】
第1及び第2の符号は、同じ持続時間又は同じ周期を示すことができ、第1の発信機は、第1の信号に加えて、第1の遅延により遅延した第1の符号で変調されることだけで、第1の信号とは異なる別の信号を発信することもできる。
【0037】
本発明の主題はさらに、別の態様によれば、システム、特にジオロケーションシステムであって、
−少なくとも1つの第1の信号を発信する第1の発信機と、
−反復性且つ潜在的に可変、特に周期性を有する第2の符号で変調された少なくとも1つの第2の信号を発信する少なくとも1つの第2の発信機と、
−第1及び第2の発信機が発信する信号を検出するように構成され、第1の信号を検出するために、局部信号を利用する、少なくとも1つの受信機と、
を備え、
第2の発信機は、第2の信号と、第2の信号に対して位相シフトされ、第1の遅延だけ遅延した第2の符号で変調される第3の信号とを、特に同時に発信するように構成される、システムである。
【0038】
第1の遅延は、第2の符号の持続時間の半分、特に半周期の±1%以内に相当し得る。
【0039】
第2の信号と第3の信号との位相シフトは、180°の±10%以内に相当し得る。
【0040】
本発明の主題はさらに、別の態様によれば、システム内、特にジオロケーションシステム内での使用を意図される発信機であって、システムは、少なくとも1つの他の発信機と、上記発信機および他の発信機により発信された信号を検出するように構成された受信機とを備え、上記発信機は、
−符号で変調された1つの信号と、上記信号に対して位相シフトされた別の信号とを、特に同時に発信するように構成され、他の信号はある遅延だけ遅延した上記符号により変調される。
【0041】
本発明の主題はさらに、別の態様によれば、システム内、特にジオロケーションシステム内での使用を意図される発信機であって、システムは、第1の符号で変調された少なくとも1つの第1の信号を発信する少なくとも1つの第1の発信機と、反復性且つ潜在的に可変、特に周期性を有する第2の符号で変調された少なくとも1つの第2の信号を発信する少なくとも1つの第2の発信機とを備え、第2の発信機はさらに、特に第2の信号の発信と同時に、第2の信号に対して位相シフトし、第1の遅延だけ遅延した第2の符号で変調される少なくとも1つの第3の信号を発信し、
受信機は、
−第1の信号を追跡することであって、追跡は受信機の局部信号を作る、追跡すること、
−第1の局部搬送波を有し、第1の符号で変調される受信機の局部信号と、少なくとも第1、第2、及び第3の信号の組み合わせから生じる信号との相関の第1の相関量を計算すること、
−第2の局部搬送波を有し、第1の遅延だけ遅延した第1の符号で変調された受信機の局部信号と、少なくとも第1、第2に、及び第3の信号の組み合わせから生じる信号との相関の第2の相関量を計算すること、並びに
−第1及び第2の相関量を結合すること
を行うように構成される。
【0042】
第1及び第2の局部搬送波は、上述したようなものであり得る。
【0043】
本発明は、以下の本発明の実施態様の非限定的な例を読み、添付図面を調べることでよりよく理解し得る。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の第1の例示的な実施態様によるGPS又はGNSS式のシステム1を
図1に表した。
【0046】
システム1は、受信機2及び複数の発信機を備える。受信機2はとりわけ、続けて説明され、ソフトウェア及び/又はハードウェアを通して実施され、
図4に表されるアンテナ及び追跡ループを備える。
【0047】
示される例では、発信機は、第1の発信機3及び第2の発信機4を備える。第1の発信機3は受信機2に対して可動であり、その一方で、第2の発信機4は受信機2に対して固定され、例えば、地面に固定される。第1の発信機3は信号S1及びS2を発信し、
【数1】
である。A
1は、受信機2の受信アンテナのレベルで第1の発信機3から生じる信号の振幅であり、f
L1は、信号の搬送周波数、例えば、GPS信号又はGNSS信号の周波数L1であり、f
1は、受信機のクロックバイアスのドリフトを含む受信機2の受信アンテナのレベルで第1の発信機から生じる信号のドップラー周波数であり、θ
1は、受信アンテナのレベルで第1の発信機から生じる信号の搬送波の位相であり、D
1は発信機のナビゲーションメッセージであり、c
1は、第1の発信機の信号を変調する符号、考慮される例では周期性符号、例えば、ゴールド符号であり、d
1は、第1の発信機3と、受信機2のクロックバイアスを含む受信機2のアンテナとの疑似距離である。
【0048】
第1の発信機は衛星であり得、第2の発信機は疑似衛星であり得る。
【0049】
説明の便宜上、第1の発信機3により発信される信号に、クロックバイアス及びそのドリフトに関連する影響を含むことが選択されている。
【0050】
信号S1の式と信号S2の式との比較により分かり得るように、信号S2は、信号S1及びS2を変調する符号は同じであるが、信号S2を変調する符号が信号S1を変調する符号に対して第1の遅延φだけ遅延することを通して異なる。第1の発信機3が発する信号S1及びS2はさらに、説明される例では、同じ搬送波を有する。
【0051】
第2の発信機4は、以下の式を有する信号S3及びS4を発信する。
【数2】
【0052】
データA
2、f
L1、f
2、θ
2、D
2、c
2、d
2は、第1の発信機3に関してここで述べたデータと同様に、第2の発信機4に関連して定義される。考慮される例では、c
2は周期性符号である。
【0053】
信号S3及びS4の式を比較することにより分かり得るように、信号S4は、信号S4を変調する符号に対して、信号S3を変調する符号の遅延φだけ、および信号S4が信号S3に対して180°位相シフトされることも通して、異なる。第2の発信機4が発信する信号S3及びS4が同じ搬送波を有することに留意し得る。
【0054】
説明される例では、振幅A
2の値は、振幅A
1の値よりも大きく、A
2とA
1との比率は、例えば、12dB以上であり、24dBよりも大きい信号S1又はS2とS3又はS4との電力比率に対応する。
【0055】
第1及び第2の発信機3及び4が発信する信号は、受信機2のアンテナで受信され、次に増幅され、周波数f
L1未満の中間周波数(FI)に変換される。
【0056】
考慮される例では、これらの信号はサンプリングされ、次に、デジタル化されてから、受信機の受信チャネルで処理される。これらの受信チャネルは、
図4に表される追跡ループを実施する。
【0057】
これらのループは、第1の発信機3の信号の搬送波及び符号のそれぞれを復調するように機能する2つの位相ロックループ、すなわち、PLLループ8及びDLLループ9を備える。
【0058】
第1の信号を追跡するために、受信機は、2つの別個の要素、すなわち、搬送波及び符号に分解された信号のローカルレプリカを使用し、ループ8及び9は、第1の発信機が発信する信号と永久的に同期する。受信機内のチャネルと同数の発信機を並行して追跡することができる。
【0059】
図4は、一方が他方に埋め込まれ、同じ相関器(又は積分器)を使用する追跡ループ8及び9を示す。
【0060】
受信機2のチャネル内の局部信号は、以下のようにグループ化される形態でモデリングし得る。
【数3】
−f
locは、搬送波の局部信号のドップラー周波数に対応し、θ
locは、受信機2のクロックのバイアス及びドリフトを含む、この搬送波の位相に対応し、τは、追跡される符号iに誘導される遅延であり、示される例では、第1の発信機2により発信される信号S1及びS2を変調する符号c
1である。
【0061】
DLLループ9についてまず説明する。DLLループ9の目的は、示される例では、第1の発信機3により発信される信号を変調する符号c
1である入射符号に受信機のローカル符号を同期させることである。このループは、例えば、標準DLLではSDLLと呼ばれることもあるいわゆる「アーリーマイナスレイト(Early minus Late)」(又は「アドバンスマイナスディレイ(Advance minus Delay)」)ループである。
【0062】
このループは、符号の3つのレプリカを作成するように構成された符号生成器10を備える。すなわち、生成器10aは、E(アーリー)と呼ばれる、0.5チップ(ここで、チップは符号瞬間又は符号ビットを示す)だけ進んだレプリカと、L(レイト)と呼ばれる0.5チップだけ遅延したレプリカとを作成し、生成器10bは、P(プロンプト)と呼ばれる、位相オフセットのないレプリカを作成する。これらのレプリカにより、ループ9の後述される弁別器15の動作を保証することが可能になり、これらのレプリカは、これもまた続けて説明するVCO17の制御信号に基づいて生成される。
【0063】
入射信号S=S1+S2+S3+S4は、ミキサ11により搬送波のローカルレプリカと混合され、次に、ミキサ12により符号生成器10から生じるローカル符号の3つのレプリカと混合される。
【0064】
結果として生成される信号は、ループの積分時間である時間Tにわたって積分器13により合算される。この演算は2つの目的を有する。すなわち、低域フィルタ及び相関器の両方の役割を果たす。
【0065】
低域フィルタリングにより、f
loc+FIで高周波部分をなくすことが可能である。
【0066】
積分器13において、6つの相関演算が実行され、これらは以下として示される。
−IPが同相プロンプト相関に対応し、
−IEが同相アーリー相関に対応し、
−ILが同相レイト相関に対応し、
−QPが直交プロンプト相関に対応し、
−QEが直交アーリー相関に対応し、
−QLが直交レイト相関に対応する。
【0067】
積分器13の出力での結果は、その後、弁別器15に送られる。
【0068】
ループ9の弁別器15は、追跡しようとする信号の符号c
1とローカル符号との位相誤差を検出するように構成される。例えば、Dに対して以下の式が選ばれるが、弁別器の正規化バージョンで非限定的に選ばれる。
【数4】
【0069】
弁別器は、アーリー相関がレイト相関に等しい場合にバランスされる。
【0070】
弁別器の出力は、0.5〜−0.5チップの誤差で線形であり、逸脱せずに最高位で±1.5チップで動作可能である。
【0071】
弁別器15は、追跡しようとする信号の符号と、局部信号の符号との対応する位相シフトを取得できるようにし、それにより、ループ9が、生成するローカル符号の位相を必要な量だけ補正できるようにする。
【0072】
弁別器15の出力での信号は、その後、ループ9内で雑音を低減するように構成されたフィルタ16により処理される。このフィルタ16により、外部干渉又はその他の信号との相互相関に起因する残留スプリアス信号をなくすことも可能になる。
【0073】
フィルタ16は、例えば、通過域で利得を提供する能動的な低域フィルタである。フィルタ16は、得ようとする目的に従って、以下のパラメータに対して動作することが可能である、すなわち、
−フィルタの次数、及び
−等化雑音。
【0074】
「フィルタの次数」という表現は、デジタルフィルタの電子均等物を構成する、インダクタ及びコンデンサ等のリアクタント素子の数を意味するものと理解されたい。高い次数のフィルタほど、動的体制でよりよい復元力を提供することができ、したがって、ループ9は加速についていくことが可能であるが、雑音の影響をより受けやすく、とりわけ、より不安定になる。
【0075】
等化雑音帯に関して、Bnが高いほど、ループ内で耐えることができる周波数逸脱が大きくなり、大きな動的ロードに応える可能性が大きくなる。他方、雑音は多くなり得る。ループ9は、非常に雑音が多いが、比較的静的であり(符号へのドップラーの変動は、積分毎に非常に低い)、選ばれるBnの値は一般に、極めて低い。Bnの典型的な値は、ループ9で0.5Hzである。他の例では、Bnは0.05Hzと小さい値であり得る。
【0076】
ループ9がバランスされる場合、フィルタ16の出力は、入射信号の符号c
1と受信機2のローカル符号とのドップラー差に対応する。次に、フィルタ16の出力は、VCO(電圧制御発振器)17の入力で受信される。
【0077】
VCO17は、フィルタ16の出力で信号の積分演算を実行して、位相を取得し、次に、クロック信号が、VCOのこの位相及び中心周波数に基づいて生成され、クロック信号は、例えば、1.023MHzに等しく、その後、クロック信号は符号生成器10を駆動する。
【0078】
PLLループ8の動作についてこれより説明する。このループ8は、入射信号の搬送波を復調するように構成される。ループ8は、例えば、コスタスループを必要とし、コスタスループは特に、ナビゲーションメッセージのビット及び大気の高層を横切ることから生じる位相ジャンプπの影響を受けにくいという特定の特徴を有し、これは、発信器の1つが衛星である場合に有利になり得る。
【0079】
このループ8は弁別器20を備え、弁別器20の標準式は、例えば、非限定的に
【数5】
であり、QP及びIPはすでに上で定義したようなものである。
【0080】
弁別器20の出力での信号は、その後、上述したフィルタ16と同じ種類のフィルタ21により処理される。フィルタ21の次数は、nがフィルタ16の次数である場合、例えば、n+1に等しく、フィルタ21のBn値はフィルタ16のBn値よりも大きく、例えば、10Hz〜18Hzである。
【0081】
フィルタ21の出力での信号は、その後、ループ8に固有のVCO22により処理され、このVCO22は、上述したVCO17と同じように動作する。
【0082】
VCO22の出力での信号は、その後、搬送波生成器23を駆動する。
【0083】
図4の例では、ループ9のVCO17は、入力として、フィルタ16の出力での信号のみを受信する。
【0084】
表されていないが、変形形態では、フィルタ21の出力での信号は、ループ9のVCO17にも送信され、次に、VCO17は、ループ9のフィルタ16の出力及びループ8のフィルタ21の出力を用いて、クロック信号を生成する。フィルタ16の出力での信号は、周波数f
L1と符号の周波数との比率、すなわち、説明される例では1540で除算される。フィルタ21の出力での信号のそのような復元により、特に、ループ9のフィルタ16の等化雑音帯Bnに0.05Hzという小さな値を使用可能にすることができる。
【0085】
信号S1〜S4の和に対応する信号Sを受信した場合、受信機2により実行される、式を上で与えた処理についてこれより説明する。
【0086】
これらの信号S1〜S4は、例えば、発信器3及び4により同時に発信される。
【0087】
位置特定を実行しなければならないゾーン内に配置された受信機2のアンテナのレベルでの信号は、以下の式(4.1)に対応する、すなわち、
【数6】
式中、n(t)は、熱雑音及び他の干渉源に対応する。
【0088】
第1の手法では、ナビゲーションメッセージがないこと、又は相関が常に1つの同じメッセージビット内部で生じる(したがって、遷移がない)ことを考慮し得る。
【0089】
示される例では、受信機は、第1の発信器3により発信される信号を追跡するように構成される。したがって、第2の発信器4により発信される信号の存在に関連する相互相関生成物を低減し、又は実際に完全になくすことが望ましい。
【0090】
したがって、受信機2は、信号Sと第1の局部信号との相関の第1の相関量を計算し、第1の発信機3により発信される信号を追跡するように構成される。分かり得るように、この第1の局部信号は、以下の式(4.2)に従って第1の発信機3により発信される信号を変調する符号c
1で変調される。
【数7】
【0091】
この式では、f
locは、ループ8のVCO22のドップラー制御に対応し、θ
locは累積位相である。
【0092】
第1の相関量を計算する場合、積分時間をTに等しく選ぶことができ、Tは、符号c
1の周期の持続時間及び符号C
2の持続時間に対応する。2つ以上の符号にわたって積分される場合、以下に説明するものが、符号の数と同じ回数、適用される。
【0093】
(4.1)の信号Sは、式(4.2)の信号S
loc(t,τ)のローカルレプリカに相関付けられ、第1の相関量R
1(τ)が得られ、第1の相関量R
1(τ)の式を以下の式(4.3)により与えられる。
【数8】
【0094】
並行して、信号S(t)と第2の局部信号との相関についての第2の相関量が、受信機2により計算され、第2の局部信号は、説明される例では、この第2の局部信号の符号が、すでに上述した第1の遅延φに等しい遅延だけ位相シフトされることのみを通して第1の局部信号と異なる。
【0095】
以下の式(4.4)が得られる。
【数9】
【0096】
受信機が発信機に対して静止すると仮定する場合、第1及び第2の相関量について、式(4.3)及び(4.4)で以下の近似を行うことが可能である、すなわち、f
1=f
2≒f
loc。
【0097】
次に、f
locの測定は、この仮定に従って、数kHzの値をとることができるクロックバイアスのドリフトに対応する。
【0098】
この近似は、
【数10】
と書くことにより行う。
【0099】
変数の適切な変更を適用し、(4.5)及び(4.6)の積分下の関数が周期性を有し、周期がTであることを考慮することにより、第1及び第2の相関量について式(4.3)及び(4.4)を簡易化することが可能であり、次に、式(4.3)及び(4.4)のそれぞれは、式(4.7)及び(4.8)に従って、
【数11】
になる。
【0100】
式(4.7)及び(4.8)では、「有用な」相関項はR
11中の項であり、その理由は、第1の発信機3により発信される信号を追跡すると考えられるためである。
【0101】
なくそうとしている干渉項は、相互相関項とも呼ばれるR
12中の項である。
【0102】
その後、第1及び第2の相関量R
1(τ)及びR
1(τ−φ)が一緒に加算される。熱雑音n(t)を無視して、これが行われ、式(4.9)による結果が得られる。
【数12】
【0103】
第1及び第2の相関量の加算から生じる式では、項R
12(τ)が消えることに留意する。
【0104】
次に、2つの干渉項R
12(τ+φ)及びR
12(τ−φ)があり、3つの有用信号項R
11(τ)、R
11(τ−φ)、及びR
11(τ+φ)がある。
【0105】
干渉を完全になくすために、第1の遅延φは、以下の関係(4.10)を満足するようなものでなければならない。
【数13】
【0106】
上の関係(4.10)を満たすために十分な条件は、関数R
12が周期性を有することであり、これは実際には、R
12が相互相関関数又は自己相関関数である場合である。
【0107】
関数R
12の最小周期はNT
cに等しく、Nは符号中の瞬間の数であり、Nは、例えば、L1でのGPS符号の場合、1023であり、T
cは符号瞬間の持続時間である。
【0108】
(4.10)の2項を分けるシフトが2φに等しい場合、関数R
12の2φに等しい周期が、関係(4.10)を満たすことが可能である。
【0109】
したがって、2φ=NT
cのように第1の遅延φを選ぶことにより
【0111】
説明される例では、符号c
1の周期の半分に等しい第1の遅延φを選ぶことにより、第1の発信機の信号と第2の発信機の信号との干渉についての項をなくすことが可能である。
【0112】
考慮される例で使用される符号c
1の場合、半周期は511.5の符号瞬間を表し、したがって、0.5msに対応する。
【0113】
さらに、受信機2を用いて復元しようとしている有用な信号、すなわち、第1の発信機3に対応する相関項R
11(τ)、R
11(τ−φ)、及びR
11(τ+φ)は、上記第1の遅延の値の影響を受けない。
【0114】
実際に、関数R
11自体はT周期を有し、第1及び第2の相関量の加算後、式(4.9)において、
【数15】
が得られる。
【0115】
第1及び第2の相関量を結合した結果は、
図2に表され、入射信号の符号と局部信号の符号との式(4.12)中の位相シフトτは、横座標として描画され、相関の値は縦座標として描画される。分かり得るように、符号周期の半分だけシフトするが、それにも関わらず、同じ情報を搬送する2つの別個の相関ピーク6がある。2つの相関ピーク間のこのシフトにより、第2の発信機4による干渉のいかなる問題もなく、第1の発信機3を変調する符号を追跡することが可能であり得る。
【0116】
説明される例では、他の関数R
11の二次ピークのみが残るが、干渉信号は同じアンテナから発信されるため、そのレベルは小さい。
【0117】
ここでの説明とは対照的に、受信機2が第2の発信機4により発信された信号を追跡しようとする場合、受信機2により実施される局部信号の式は、ここでは、
【数16】
であり、T
1/2は、第2の発信機4により発信される信号を変調する符号c
2の半周期に対応する。c
1及びc
2が同じ周期を有する場合、T
1/2は前と同じ値を有する。
【0118】
第1の相関量は、前のように、式(4.1)に従って信号S(t)を局部信号S
loc,2(t,τ)と相関付けることにより計算され、第2の相関量は、信号S(t)を局部信号S
loc,2(t,τ−T
1/2)に相関付けることにより計算される。同じ論理に由来するため、式を再び書かない。
【0119】
第1及び第2の相関量の各式は、以下の式(4.15)及び(4.16)である。
【数17】
【0120】
上の2つの相関量の結合は、その後、受信機2により実行することができる。考慮される例では、この結合は減算である。
【0121】
次に、以下の式(4.17)による結果が得られる。
【数18】
【0122】
項R
22及びR
21がT周期である場合、式(4.17)は、
【数19】
として簡易化することができる。
【0123】
第1及び第2の相関量を結合した結果を
図3に表す。分かり得るように、符号周期の半分だけシフトされ、180°位相シフトするが、同じ情報を搬送する2つの別個の相関ピーク7がある。
【0124】
第2の発信機4により発信される信号の追跡の枠組み内で得られる結果は、上述したように、第1の発信機3により発信される信号の追跡の枠組み内で得られる結果の相手方である。
【0125】
上記では、特に、受信機2が発信機3及び4に対して静止することを考慮して、ドップラー効果に関連する寄与を無視することが可能であると仮定した。
【0126】
受信機2がもはや発信機に対して静止しない場合に適用される本発明の実施態様の他の例についてこれより説明する。
【0127】
以下において、第2の発信機4が第1の発信機3のドップラー周波数f
1よりも大きなドップラー周波数f
2を示す場合を考える。f
locは、上述したように、局部信号のドップラー周波数を示す。
【0128】
第1及び第2の局部信号が、位相シフトされない局部搬送波を有した
図1〜
図4に関連して説明した例とは対照的に、これより説明する例では、受信機2は第1及び第2の位相シフト局部搬送波を実施する。これらの例では、追跡ループが
図5に表される追跡ループに準拠し得る受信機2が使用される。
【0129】
図5に表される追跡ループは、PLLループ8内に、例えば、受信機の別のループから入力として、最高ドップラー周波数f
2の値を受信する位相シフタ30の存在及びVCO22の出力での信号を通して、
図4の追跡ループと異なる。この位相シフタ30は、周波数f
2及びf
locに基づいて、第2の局部搬送波に可変位相シフトを生成するように構成され、この位相シフトは、交互に正の値及び負の値をとる。追跡しようとするシステムの発信機が発信する信号を変調する符号が周期性を有する場合、位相シフタ30により生成される位相シフトは、上記符号の半周期毎に符号を変更することができる。
【0130】
図5に表されるループにより、可変位相の第2の局部搬送波を使用することが可能になる。
【0131】
相関量が、使用される符号の周期に等しい積分時間に従って、すなわち、T=NT
c=2T
1/2に従って計算される場合、この第2の局部搬送波は、積分時間の第1の部分中、例えば、第1の半分中、−2π.(f
2−f
loc).T
1/2だけ位相シフトし、積分時間の残りの部分、特に、第2の半分中、2π.(f
2−f
loc).T
1/2だけ位相シフトし得る。
【0132】
したがって、t
nがループのn番目の積分の最初の時間である場合、第1の相関量の計算に使用される局部信号は、第1の局部搬送波で以下の形態を有し、
【数20】
第2の相関量の計算に使用される局部信号は、第2の局部搬送波で以下の形態を有し得、
【数21】
f
locは、第1の発信機3が発信する信号を追跡する場合、VCO22の制御に対応するローカルに誘導される周波数であり、その値はf
1に近く、θ
locは局部搬送波の位相であり、τは、符号の位相シフトを駆動するために受信機により誘導される相関遅延である。
【0133】
受信機2が受信する信号のこの変更局部搬送波による復調の結果は、ミキサ12によりローカル符号c
1のT
1/2だけ位相シフトした3つのレプリカ「アーリー」、「同相」、「レイト」と混合してから、積分器13aにより積分され、次に、加算器32により積分器13bの出力での直接復調の結果と加算し得る。その後、結果として生成された信号は、
図4を参照して説明したものと同様に、弁別器15及び20により処理される。
【0134】
追跡の過程で変化するグレアのリスク、すなわち、第1の発信機3が発信する信号の電力が大きくなり、第2の発信機4が第1の発信機3によるグレアで眩むリスクを低減するために、受信機の各受信チャネルは、グレアで実際には眩まない場合であっても、他のチャネルのドップラー周波数を使用することができる。このようにして、他に対するある発信機の干渉を除去可能な機会が増大する。
【0135】
図1〜
図4の例でのように、受信機2は、信号Sと第1の局部搬送波を有する局部信号との相関及び信号Sと第2の局部搬送波を有する局部信号との相関にそれぞれ対応する第1及び第2の相関量を計算することができる。
【0136】
以下の式(4.34)は、第1の相関量の干渉項について得られる。
【数22】
【0137】
以下の式(4.35)は、第2の相関量の干渉項について得られる。
【数23】
【0138】
変数の変更t−>u+T
1/2を(4.34)及び(4.35)の第1及び第3の項に適用することにより、上の式(4.34)及び(4.35)を簡易化することが可能であり、後者はそれぞれ、
【数24】
になる。
【0139】
すべての積分がここでは同じ間隔に対して行われ、符号c
1及びc
2が2T
1/2周期を有し、すなわち、c
1(t+T
1/2)=c
1(t−T
1/2)であることを考慮して、上の2つの式を再構成することも可能である。
【0140】
これらの条件下で、すぐ上の2つの式のすべての項は互いに補償するため、0に等しい。
【0141】
したがって、上の局部搬送波の選択により、ドップラー効果を考慮した場合であっても、干渉をなくすことが可能になる。
【0142】
ここで述べた例では、システム1の各発信機は、信号毎に遅延した1つの同じ符号で変調された2つの信号を同時に発信する。それにも関わらず、本発明は、システム1の各発信機による信号のそのような二重発信に限定されない。
【0143】
本発明の別の例示的な実施態様について、これより
図6を参照して説明する。
【0144】
システム1はこの例では、例えば、
図5を参照して説明したような追跡ループを備える受信機2と、複数の第1の発信機3及び第2の発信機4とを備える。
【0145】
第1の発信機3は、例えば、コンステレーションを形成する衛星であり、第2の発信機4は疑似衛星である。第2の発信機4は、考慮される例では、第1の発信機3とは対照的に、地面に対して固定される。システム1は、例えば、GNSS式のシステムである。
【0146】
図6に表されるように、疑似衛星4は、衛星3が発信する信号の電力よりも大きな電力を示す信号S2及びS3を発信する。疑似衛星4が発信する信号の電力と、各衛星3が発信する信号の電力との比率は、例えば、24dBよりも大きい。
【0147】
考慮されるシステム1は、この例では、衛星3が発信する信号と、疑似衛星4が発信する信号との、受信機2により計算される相互相関の結果を低減し、特になくすことを可能にする。
【0148】
続く関心は、衛星3が発信する信号S1及び追跡しようとする信号である。
【0149】
受信機2のアンテナのレベルで受信される信号は、説明される例では、式(4.40)で示される形態のものである。
【数25】
但し、
n
s:衛星の数、
ω:搬送波周波数での角周波数、
a
k:衛星kの振幅、
ω
k:クロックバイアスのドリフトを含む衛星kに対するドップラーによる角周波数、
θ
k:衛星kの信号の搬送波の位相、
D
k:衛星kのナビゲーションメッセージ、
c
k:ゴールド符号である衛星kの符号、
d
k:受信機と衛星kとの疑似距離、
A
pl:疑似衛星の信号の振幅、
ω
pl:クロックバイアスのドリフトを含む疑似衛星に対するドップラー角周波数、
θ
pl:疑似衛星の信号の搬送波の位相、
D
pl:疑似衛星のナビゲーションメッセージ、
c
pl:ゴールド符号である疑似衛星の符号、
d
pl:受信機と疑似衛星との疑似距離
である。
【0150】
考慮される例では、すべての発信機が、位相シフトされ、2つの信号のうちの一方で遅延する1つの同じ符号で変調された2つの信号を同時に発信する上述した例とは対照的に、疑似衛星4のみが、180°の移動シフト及び後者の周期の半分に等しい符号c
pl分の遅延で異なる2つの信号を同時に発信する。
図6の例では、実際には、疑似衛星4の信号が実際に衛星3の信号により妨げられないとみなされる。
【0151】
第1のステップによれば、疑似衛星4の信号が得られて、疑似衛星4の振幅A
plが、すべてのkについて各衛星の振幅
akと比較して非常に大きいという仮定を利用することにより、そこからω
plを抽出する。
【0152】
第2のステップによれば、第1及び第2の相関量が、信号Sと、
−衛星iが発信する信号を変調する符号で変調され、第1の局部搬送波を有する局部信号であって、この信号の式は以下の式(4.41)により与えられる、局部信号、及び
−上記符号の半周期T
1/2だけ遅延した衛星iを変調する符号で変調され、
図5に関連して説明したように生成される第2の局部搬送波を有する局部信号であって、式が以下の式(4.42)により与えられる、局部信号のそれぞれとを相関付けることにより、上述した方法と同様に計算される、すなわち、
【数26】
但し、t
nは、積分が開始される瞬間であり、θ
locは局部搬送波の位相であり、τは符号の被制御位相シフトであり、T=2T
1/2は積分時間である。
【0153】
図7は、ローカル符号の位相シフトτの関数として、疑似衛星4の信号と衛星3の信号との相関についての相関関数を表す。
【0154】
180°だけ位相シフトし、衛星3が発信する信号S1を変調する符号c
iの周期の半分だけシフトした2つのピーク40が観測される。これらのピーク40が、疑似衛星4と発信機3との相互相関を伝達するとともに、1つのピーク41が、ピーク40よりもはるかに低い振幅であり、追跡しようとしている衛星3の信号に対応する。
【0155】
同様に、
図8は、ローカル符号の位相シフトτの関数として、疑似衛星4及び信号を追跡しようとする衛星3が発信する信号の相関の相関関数を表す。
【0156】
図8では、180°位相シフトし、衛星3が発信する信号を変調する符号c
iの周期の半分だけシフトした2つのピーク40が観測され、これらのピーク40が、疑似衛星と発信機との相互相関を伝達するとともに、1つのピーク41が、ピーク40よりもはるかに低い振幅であり、追跡しようとする衛星3の信号に対応する。
【0157】
ピーク40の位置が
図7と
図8とで反転し、それにより、
図9に表されるように、第1及び第2の相関量を追加する場合、ピーク40を消すことができることに留意する。符号c
iの周期の半分だけシフトした2つのピーク41のみが残る。したがって、これらの
図6〜
図9に鑑みて、ここで述べた方法により、追跡しようとする信号の項のみを残すことが可能なことが理解される。
【0158】
分析的に、第1、第2のそれぞれの相関量について、疑似衛星4が発信する信号と衛星3が発信する信号との相互相関項を計算することが可能である。これらは以下の式(4.43)、(4.44)のそれぞれに与えられる。
【数27】
【0159】
第1及び第2の相関量を一緒に加算することにより、式(4.43)及び(4.44)のすべての項は、
図5を参照して説明した例では変数の同じ変更を使用して、互いに補償する。
【0160】
ここで分かったように、本発明は、外部GNSSコンステレーション及び疑似衛星と併用し得る。疑似衛星の信号は、有利なことには、グレアを生じさせるものであり、システムは、有利なことには1つのみの発信機を備え、発信機の信号は、この発信機がグレアを通して受信機2を眩ませ得るように、システムのその他の発信機が発信するその他の信号よりも大きな電力を有する。
【0161】
ここで述べた例では、疑似衛星4が発信する信号は、ナビゲーションメッセージDを含むが、変形形態では、この信号は、任意のナビゲーションメッセージになくてもよく、又は衛星よりも低いビットレートのナビゲーションメッセージを送信してもよい。このビットレートは、例えば、50Hz未満であり、この値はGPSメッセージの現在のビットレートである。
【0162】
図10及び
図11は、従来技術及び
図6〜
図9を参照して説明したような本発明のそれぞれによる、衛星が発信する信号の受信機2による追跡に関する性能を示す表である。
【0163】
これらの表では、左側の最初の列は疑似衛星4の信号/雑音比に対応し、表の各行は、疑似衛星の所与の信号/雑音比での10秒に等しい持続時間のシミュレーションに対応する。
【0164】
信号/雑音比に与えられる最初の値−∞は、疑似衛星がないことを示し、この行は、実際には、基準データムに対応する。
【0165】
衛星3毎に、一方では、シミュレーション中の疑似距離の平均誤差が測定され、この誤差の標準偏差も同様に測定される。結果は、メートル単位で提供され、(「ニア−ファー」)のシンボル「nf」が、グレアが、疑似距離の安定した値をこの衛星の受信機で得ることができないようなものであることを示す。
【0166】
図10で分かり得るように、衛星毎に、疑似衛星の存在に起因する干渉の影響はまず、疑似距離平均の測定の低下で明らかになる。疑似衛星4が発信する信号の電力が増大する場合、衛星番号3をもはや追跡することができなくなる。様々な衛星の挙動の違いは、ドップラー効果で説明される。衛星番号3は、疑似衛星4と同じドップラー周波数を有し、疑似衛星の信号/雑音比が1.2dBを超えるとすぐに、すなわち、疑似衛星が発信する信号の電力が、衛星が発信する信号の電力を20dB超える場合に妨害される。疑似衛星とは異なるドップラー周波数を有する衛星番号1及び2が、疑似衛星が大きな信号/雑音比を示すまでは、グレアを免れることに留意する。この信号/雑音比が31.2dBを達するとすぐに、衛星番号1及び2が発信する信号はもはや追跡することができない。
【0167】
図11との比較により、疑似衛星により発信され、信号/雑音比により明らかになる信号の電力が何であれ、グレアによる眩みが生じないことが明らかになる。
【0168】
したがって、疑似衛星による上述したような信号の二重発信により、より高い電力の発信機が存在する場合、衛星の1つにより発信される信号を追跡しようとするとき、受信機のグレアを低減し、又は実際にはなくすことが可能になる。
【0169】
まとめると、二重発信の技法の上記原理により、少なくとも2つの発信機を有するシステムであって、発信機のうちの1つが同じアンテナで、この発信機が発信する上記信号を変調する周期性を有する符号の周期の半分で位相シフトされ、第1の信号から180°だけ第2の信号を位相シフトすることにより位相シフトされた2つの信号を発信する、システムにおいて、発信機が発信する信号間の相関の2つの相関量の単純な加算を並行して行うことを通して、追跡しようとする発信機の信号に影響を与えずに、他の発信機の相互相関項を除去することができる。
【0170】
2つの発信機間のドップラー差及び受信機の動力学を考慮に入れるために、異なる局部搬送波を有する局部信号を使用して、相関量を計算することができる。
【0171】
本発明は、ここで述べた例に限定されない。