特許第6043286号(P6043286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043286
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20161206BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20161206BHJP
   C04B 37/00 20060101ALI20161206BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20161206BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B01D39/20 D
   B01D46/00 302
   C04B37/00 A
   C04B38/00 303Z
   F01N3/022 C
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-526249(P2013-526249)
(86)(22)【出願日】2013年2月22日
(86)【国際出願番号】JP2013054625
(87)【国際公開番号】WO2013125713
(87)【国際公開日】20130829
【審査請求日】2014年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-39254(P2012-39254)
(32)【優先日】2012年2月24日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸明
(72)【発明者】
【氏名】児玉 優
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−024073(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/095982(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/119407(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/111279(WO,A1)
【文献】 特開2007−204360(JP,A)
【文献】 特開2004−148308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D39/20
B01D46/00−46/54
C04B37/00
C04B38/00
F01N3/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端面から他方の端面まで延び流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁及び最外周に位置し前記隔壁を取り囲むように配設された外周壁を有するとともに、所定の前記セルの一方の端部と残余の前記セルの他方の端部とに配設された目封止部を有する複数のハニカムセグメントと、
前記複数のハニカムセグメントを、前記ハニカムセグメントの互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合する複数の気孔を有する接合材層と、を備え、
前記接合材層の前記気孔の全数の60%以上が、最大径を最小径で割ったときの値が1.2以下の気孔であり、
前記接合材層全体の気孔率が、45〜75%であり、
前記複数のハニカムセグメントのうちの一のハニカムセグメントをハニカムセグメントA、別の一のハニカムセグメントをハニカムセグメントBとし、前記ハニカムセグメントA及び前記ハニカムセグメントBを接合する接合材層を、前記ハニカムセグメントA側から順に、第1層、第2層、第3層からなる厚さの比が1:2:1である3層に分割した場合に、前記第1層と前記第3層との平均の気孔率P1と、前記第2層の気孔率P2とが、0.9<P2/P1<1.2の関係を満たし、
前記接合材層の平均気孔径が、20〜50μmであるハニカム構造体。
【請求項2】
前記接合材層が、炭化珪素、コージェライト、アルミナ、ジルコニア、及び、イットリアからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記接合材層の厚さ方向の圧縮ヤング率が、15〜80MPaであり、曲げ強度が、0.8〜3.0MPaである請求項1または2に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、本発明は、従来のハニカム構造体の接合材層と同等の応力緩和機能及び接合強度の接合材層を有し、優れた耐熱衝撃性を有するハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス用の捕集フィルター、例えば、ディーゼルエンジン等からの排ガスに含まれている粒子状物質(パティキュレート)を捕捉して除去するためのディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)として、ハニカム構造体が広く使用されている。
【0003】
このようなハニカム構造体は、例えば、炭化珪素(SiC)等からなる多孔質の隔壁によって区画、形成された流体の流路となる複数のセルが中心軸方向に互いに並行するように配設された構造を有している。また、隣接したセルの端部は、交互に(市松模様状に)目封止されている。即ち、一のセルは、一方の端部が開口し、他方の端部が目封止されている。そして、一のセルと隣接する他のセルは、一方の端部が目封止され、他方の端部が開口している。
【0004】
このような構造とすることにより、以下のようにして排ガスを浄化することができる。まず、一方の端部から所定のセル(流入セル)に排ガスを流入させる。このようにすると、上記排ガスが多孔質の隔壁を通過する。そして、隔壁を通過する際に排ガス中の粒子状物質(パティキュレート)が隔壁に捕捉される。そのため、流入セルに隣接したセル(流出セル)を経由して浄化された排ガスが排出される。
【0005】
このようなハニカム構造体(フィルター)を長期間継続して使用するためには、定期的にフィルターに再生処理を施す必要がある。即ち、フィルター内部には、経時的にパティキュレートが堆積する。そのため、フィルター性能を初期状態に戻すため、即ち、パティキュレートにより増大した圧力損失を低減させるため、フィルター内部に堆積したパティキュレートを燃焼させて除去する必要がある。しかし、このフィルター再生時には、フィルターに大きな熱応力(以下、単に「応力」と記す場合がある)が発生するので、この熱応力がハニカム構造体にクラックや破壊等の欠陥を発生させるという問題があった。そこで、この熱応力による上記問題に対応すべく(別言すれば、耐熱衝撃性の向上の要請に対応すべく)、複数のハニカムセグメントを接合材層で一体的に接合した分割構造を有するハニカム構造体が提案されている(特許文献1〜4参照)。このような分割構造を有することにより、上記ハニカム構造体には、熱応力を分散、緩和する機能を持たせている。そして、このようなハニカム構造体によれば、耐熱衝撃性をある程度改善することができるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4392984号公報
【特許文献2】特許第3889194号公報
【特許文献3】特許第4592695号公報
【特許文献4】国際公開第2006/103786号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、フィルターは更に大型化の要請が高まっている。これに伴って再生時に発生する熱応力も増大することになってきている。そのため、上述の問題を解消するために、フィルターには、構造体としての耐熱衝撃性の更なる向上が強く望まれるようになった。そこで、耐熱衝撃性の更なる向上を実現するために、複数のハニカムセグメントを一体的に接合する接合材層には、優れた応力緩和機能と接合強度とが求められてきた。このように、最近では、耐熱衝撃性を更に向上させたハニカム構造体の開発が切望されている。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。その課題とするところは、従来のハニカム構造体の接合材層と同等の応力緩和機能及び接合強度の接合材層を有し、優れた耐熱衝撃性を有するハニカム構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下に示す、ハニカム構造体が提供される。
【0010】
[1] 一方の端面から他方の端面まで延び流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁及び最外周に位置し前記隔壁を取り囲むように配設された外周壁を有するとともに、所定の前記セルの一方の端部と残余の前記セルの他方の端部とに配設された目封止部を有する複数のハニカムセグメントと、前記複数のハニカムセグメントを、前記ハニカムセグメントの互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合する複数の気孔を有する接合材層と、を備え、前記接合材層の前記気孔の全数の60%以上が、最大径を最小径で割ったときの値が1.2以下の気孔であり、前記接合材層全体の気孔率が、45〜75%であり、前記複数のハニカムセグメントのうちの一のハニカムセグメントをハニカムセグメントA、別の一のハニカムセグメントをハニカムセグメントBとし、前記ハニカムセグメントA及び前記ハニカムセグメントBを接合する接合材層を、前記ハニカムセグメントA側から順に、第1層、第2層、第3層からなる厚さの比が1:2:1である3層に分割した場合に、前記第1層と前記第3層との平均の気孔率P1と、前記第2層の気孔率P2とが、0.9<P2/P1<1.2の関係を満たし、前記接合材層の平均気孔径が、20〜50μmであるハニカム構造体。
【0014】
] 前記接合材層が、炭化珪素、コージェライト、アルミナ、ジルコニア、及び、イットリアからなる群より選択される少なくとも1種を含む[1]に記載のハニカム構造体。
【0015】
] 前記接合材層の厚さ方向の圧縮ヤング率が、15〜80MPaであり、曲げ強度が、0.8〜3.0MPaである[1]または[2]に記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0016】
本発明のハニカム構造体は、複数のハニカムセグメントと、これらの複数のハニカムセグメントを接合する接合材層と、を備え、この接合材層の気孔の全数の60%以上が、最大径を最小径で割ったときの値が1.2以下の気孔である。このように気孔の全数の60%以上が、最大径を最小径で割ったときの値が1.2以下の気孔であると、応力緩和機能と接合強度とが両立された接合材層が得られる。そして、このような接合材層を備えるハニカム構造体は、従来のハニカム構造体の接合材層を構成する材料と同様の材料を用いたとしても、従来のハニカム構造体よりも優れた耐熱衝撃性を有する。即ち、本発明のハニカム構造体は、従来のハニカム構造体の接合材層と同等の応力緩和機能及び接合強度の接合材層を備えつつ、優れた耐熱衝撃性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示すハニカム構造体の中心軸に平行な断面を模式的に示す断面図である。
図3図2に示す領域Sを拡大して模式的に示す断面図である。
図4図2に示す領域S中の気孔を拡大して示す模式図である。
図5図2に示す領域S中の気孔を拡大して示す模式図である。
図6】ハニカム構造体から切り出した試験片を模式的に示す斜視図である。
図7】4点曲げ試験を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0019】
[1]ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一実施形態は、図1図2に示すハニカム構造体100のように、複数のハニカムセグメント4と、気孔の全数の60%以上が、最大径L1を最小径L2で割ったときの値が1.2以下の気孔である接合材層13と、を備えている。「複数のハニカムセグメント4」は、多孔質の隔壁2及び最外周に位置し隔壁2を取り囲むように配設された外周壁3を有するとともに、目封止部6を有するものである。「隔壁2」は、一方の端面11から他方の端面12まで延び流体の流路となる複数のセル1を区画形成するものである。「目封止部6」は、所定のセル1(1a)の一方の端部と残余のセル1(1b)の他方の端部とに配設されたものである。「接合材層13」は、複数のハニカムセグメント4を、これらのハニカムセグメント4の互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合する複数の気孔を有するものである。なお、以下、「最大径L1を最小径L2で割ったときの値が1.2以下の気孔」を「球状気孔」と記す場合がある。
【0020】
ハニカム構造体100は、気孔の全数の60%以上が、最大径L1を最小径L2で割ったときの値が1.2以下の気孔である接合材層13を備える。この接合材層13は、球状気孔が、気孔の全数の60%以上であるため、応力緩和機能と接合強度とが両立されている。そのため、接合材層13を備えるハニカム構造体100は、従来のハニカム構造体の接合材層を構成する材料と同様の材料を用いたとしても、従来のハニカム構造体よりも優れた耐熱衝撃性を有するものである。即ち、ハニカム構造体100は、従来のハニカム構造体の接合材層と同等の応力緩和機能(熱応力を緩和する機能)及び接合強度の接合材層を備えつつ、優れた耐熱衝撃性を有する。
【0021】
図1は、本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示すハニカム構造体の中心軸に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【0022】
[1−1]接合材層:
接合材層13は、図2図3に示すように、複数のハニカムセグメント4を、これらのハニカムセグメント4の互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合するものである。そして、接合材層13の内部には、複数の気孔8が形成されている。図3は、図2に示す領域Sを拡大して模式的に示す断面図である。
【0023】
球状気孔10は、より具体的には、気孔の重心を通り気孔の円周上の2点を結ぶ直線のうち、最も長いものを「最大径」とし、最も短いものを「最小径」としたとき、式(最大径/最小径)で算出される値が1.2以下である気孔のことである。上記値は、1.15以下であることが好ましく、1.1以下であることが更に好ましい。
【0024】
ここで、接合材層の内部には、接合材層の厚さ方向の断面において閉じられた領域として観察される空洞(「気孔」を含む)が形成されている。この空洞としては、接合材層の厚さ方向の断面における形状が以下のものを挙げることができる。即ち、円形、略円形、楕円形、略楕円形、多角形の角部を面取りした形状のものを挙げることができる。また、円形、略円形、楕円形、略楕円形、多角形の角部を面取りした形状などの複数の領域が連結して形成された形状のもの(連結空洞)などを挙げることができる。更に、円形、略円形、楕円形、略楕円形、多角形の角部を面取りした形状などが互いに重なることで形成された形状のもの(重複空洞)などを挙げることができる。本発明においては、原則的には空洞が即ち「気孔」に相当する(1つの空洞は1つの気孔に相当する)が、上記連結空洞及び重複空洞においては、空洞の一部を気孔とみなす場合がある。具体的には、上記連結空洞の場合、複数の領域(例えば領域C,D,E(図5参照))を連結している部分(空洞のくびれた部分)のうち、幅が30μm以下の部分(領域)は存在しないものとみなす。また、上記重複空洞の場合、空洞のくびれた部分の幅が30μm以下であるときには、上記「くびれた部分」に描かれる「幅30μm以下の線分」を境界線とする別個の閉じられた領域が存在するものとみなす。このように、「存在しないものとみなされた領域」または「幅30μm以下の線分」により、空洞が分割されるため、分割された空洞の一部(所定の領域)は、所定の大きさを有する(50μm以上である)限り「気孔」とみなす。
【0025】
具体的には、上記重複空洞としては、図4に示すような空洞15aを挙げることができる。また、上記連結空洞としては、図5に示すような空洞15bを挙げることができる。図4に示す空洞15aは、2つの円形が互いに重なることで形成された形状であり、くびれた部分の幅H1が30μm以下である例である。くびれた部分の幅H1は、くびれた部分の輪郭縁が最も近接する2点a,bを結ぶ線分9の長さである。このような空洞15aには、線分9を境界線として別個の閉じられた領域が存在するものとみなす。そのため、空洞15aには、領域A,Bの別個の2つの気孔が存在するものとみなす。また、図5に示す空洞15bは、円形の3つの領域C,D,Eと、隣り合う領域C,D,Eを互いに連結する最大幅H2が30μm以下の領域(くびれた部分)F,Gからなる空洞を示す例である。この空洞15bにおいて、領域F,Gは幅が30μm以下の領域であるため、領域F,Gは存在しないものとみなす。そのため、空洞15bには、領域C,D,Eの別個の3つの気孔が存在するものとみなす。図4は、図2に示す領域S中の気孔を拡大して示す模式図であり、図5は、図2に示す領域S中の気孔を拡大して示す模式図である。
【0026】
本明細書において「気孔」は、接合材層の厚さ方向の断面において観察される面積が50μm以上のものをいうものとする。
【0027】
そして、球状気孔10は、気孔8の全数の60%以上であることが必要であり、65〜100%であることが好ましく、70〜100%であることが更に好ましく、80〜100%であることが特に好ましい。上記球状気孔10が気孔8の全数の60%以上であることにより、応力緩和機能と接合強度とが両立された接合材層を得ることができる。上記球状気孔10が気孔8の全数の60%未満であると、扁平な気孔が多く存在することになり、扁平な気孔の内角が小さい箇所の周辺に応力集中が起こりやすくなる。そして、上記応力集中が起こると、接合材層における接合強度が不十分になる。そのため、応力緩和機能と接合強度との両立が得られず、耐熱衝撃性に優れたハニカム構造体を得ることができなくなる。なお、気孔が「球状気孔」であるか否かは、上述したように、最大径L1を最小径L2で割ったときの値が1.2以下であるか否かにより決定される。具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、観察倍率を200〜250倍としたときに得られる観察視野において上記決定を行う。本明細書において「観察視野」は、接合材層の厚さ方向の全体が含まれている視野である。別言すると、「観察視野」は、接合材層の一方の面(一のハニカムセグメント側の面)と他方の面(別の一のハニカムセグメント側の面)を含む視野のことである。
【0028】
球状気孔10の、最大径L1と最小径L2との平均値(即ち、球状気孔10の平均径)は、25〜55μmであることが好ましく、30〜50μmであることが更に好ましく、35〜45μmであることが特に好ましい。更に、接合材層の厚さ方向の断面における観察視野1mmあたりの球状気孔10の個数(個/mm)は、80〜200個/mmであることが好ましく、110〜180個/mmであることが更に好ましく、140〜160個/mmであることが特に好ましい。
【0029】
ハニカム構造体100は、下記関係式を満たすことが好ましい。ここで、図3に示すように、複数のハニカムセグメント4のうちの一のハニカムセグメントをハニカムセグメントAとする。また、別の一のハニカムセグメントをハニカムセグメントBとする。そして、ハニカムセグメントA及びハニカムセグメントBを接合する接合材層13を、ハニカムセグメントA側から順に、第1層R1、第2層R2、第3層R3からなる厚さの比が1:2:1である3層に分割する。このような場合に、ハニカム構造体100は、0.90<P2/P1<1.20の関係を満た、0.95<P2/P1<1.15の関係式を満たすことが更に好ましく、1.00<P2/P1<1.10の関係式を満たすことが特に好ましい。なお、上記関係式中、P1は、第1層R1と第3層R3との平均の気孔率P1のことであり、P2は、第2層R2の気孔率P2のことである。
【0030】
気孔率P1と気孔率P2とが上記関係を満たすことは、接合材層全体に気孔が均一に存在していることを意味する。このように気孔が均一に分布とすることにより、接合材層の厚さ方向の圧縮ヤング率が更に低減され、応力緩和機能と接合強度とを両立させつつハニカム構造体の応力緩和機能が更に向上する。
【0031】
接合材層全体の気孔率は、45〜75%であ、50〜70%であることが好ましく、55〜65%であることが更に好ましい。上記気孔率が上記範囲であると、圧縮ヤング率が低くなり、良好な応力緩和機能が発現される。そのため、更に優れた耐熱衝撃性を有するハニカム構造体が得られる。なお、応力緩和機能は、圧縮ヤング率が低いほど良好に発現する。接合材層全体の気孔率とは、第1層、第2層、第3層の全部からなる接合材層全体の気孔率のことである。具体的には、ハニカム構造体から接合材層を切り出して試験片とし、この試験片を用いたアルキメデス法によって測定した値である。なお、上記試験片は、第1層、第2層、第3層の全部からなるものである。別言すれば、一方の面が接合材層の一方の面(一のハニカムセグメント側の面)に由来する面であり、他方の面が接合材層の他方の面(別の一のハニカムセグメント側の面)に由来する面であるものである。なお、接合材層を構成する3層(第1層、第2層、第3層)についての気孔率は後述する画像処理により算出した値である。
【0032】
接合材層の平均気孔径は、20〜50μmであ、25〜45μmであることが更に好ましく、30〜40μmであることが特に好ましい。上記平均気孔径が上記範囲であると、圧縮ヤング率が低くなり、良好な応力緩和機能が発現される。そのため、更に優れた耐熱衝撃性を有するハニカム構造体が得られる。接合材層の平均気孔径は、接合材層の厚さ方向に垂直な断面における電子顕微鏡写真を画像処理して算出される値である。
【0033】
ハニカム構造体100は、接合材層13の厚さ方向の圧縮ヤング率が、15〜80MPaであることが好ましく、20〜60MPaであることが更に好ましく、30〜50MPaであることが特に好ましい。上記圧縮ヤング率が上記範囲内であると、応力緩和機能を十分に発揮させることができる。そのため、更に耐熱衝撃性が優れたハニカム構造体が得られ、このハニカム構造体はクラックが発生し難くなる。
【0034】
なお、本明細書において「接合材層の厚さ方向の圧縮ヤング率」は、以下のようにして算出した値である。まず、ハニカム構造体から接合材層を切り出して試験片とし、この試験片に対して、厚さ方向に圧縮応力が1〜2MPaとなる圧縮荷重を加える。その後、圧縮荷重前後の試験片の変位(試料厚みの変化量(mm))を計測して「応力−歪線図」を作成する。その後、上記「応力−歪線図」における「応力−歪線」の傾きを下記式(1)により算出する。算出される値を圧縮ヤング率とする。
【0035】
【数1】
(上記式(1)中、Eは圧縮ヤング率(MPa)、Wは圧縮荷重(N)、Sは試料面積(即ち、試験片のうち圧縮荷重が直接加えられる側の面の面積)(mm)、tは試料厚み(試験片の荷重方向の厚み)(mm)、ΔTは試料厚みの変化量(mm)である。)
【0036】
また、ハニカム構造体100は、曲げ強度が、0.8〜3.0MPaであることが好ましく、1.2〜2.5MPaであることが更に好ましく、1.5〜2.0MPaであることが特に好ましい。上記曲げ強度が上記範囲内であると、熱応力により接合材層にクラックが発生することを防止することができる。また、接合材層がハニカムセグメントを拘束する力が強くなりすぎない(即ち、接合材層が適度に変形し得る)。そのため、熱応力の発生時にハニカムセグメントにクラックが発生し難くなる。
【0037】
「曲げ強度」は、JIS R 1624の接合曲げ試験に準じた4点曲げ試験で測定した値である。具体的には、まず、図6に示すように、複数のハニカムセグメントのうちの一のハニカムセグメントをハニカムセグメントX、このハニカムセグメントXに隣接する別の一のハニカムセグメントをハニカムセグメントYとする。このとき、ハニカムセグメントXとハニカムセグメントYを接合している接合材層13を、ハニカムセグメントX及びハニカムセグメントYの一部とともに試験片として切り出す。次に、図7に示すように、試験片に対して、2つの支点16,16及び2つの荷重点18,18を配置する。次に、荷重点において試験片に外力を加える。以上のようにして試験を行い「曲げ強度」を測定する。図6は、ハニカム構造体から切り出した試験片を模式的に示す斜視図である。図7は、4点曲げ試験を説明するための斜視図である。
【0038】
接合材層13は、従来公知のハニカム構造体の接合材層と同様の材料を適宜選択して使用することができる。具体的には、炭化珪素、コージェライト、アルミナ、ジルコニア、イットリア、ムライト、アルミニウムシリケート、珪素、珪素−炭化珪素系複合材料などを挙げることができる。これらの中でも、炭化珪素、コージェライト、アルミナ、ジルコニア、及び、イットリアからなる群より選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましい。これらの化合物群より選択される少なくとも1種を含むことにより、ハニカム構造体の接合材層として十分な耐熱性が得られる。
【0039】
接合材層13の厚さは、ハニカムセグメント4の相互間の接合力を勘案して決定することができる。接合材層13の厚さは、例えば、0.5〜3.0mmの範囲とすることができる。
【0040】
[1−2]ハニカムセグメント:
ハニカムセグメントは、従来公知のディーゼルパティキュレートフィルターなどとして使用されているハニカム構造体のハニカムセグメントと同様のものを適宜用いることができる。図1に示すハニカムセグメントは、一方の端面11から他方の端面12まで延び流体の流路となる複数のセル1を区画形成する多孔質の隔壁2を有し、所定のセル1(1a)の一方の端部と残余のセル1(1b)の他方の端部とに配設された目封止部6を有する。そして、図1に示すハニカムセグメントにおいて、隣接したセル1の端部は、交互に(市松模様状に)目封止されている。
【0041】
ハニカムセグメント4は、図1に示すような断面形状が正方形のものに限らず、三角形、六角形等の形状であってもよい。また、セル1の断面形状も、三角形、六角形、円形、楕円形、その他の形状であってもよい。
【0042】
ハニカムセグメント4の材料としては、強度、耐熱性が良好であるという観点から、以下のものを挙げることができる。炭化珪素(SiC)、炭化珪素(SiC)を骨材とし且つ珪素(Si)を結合材として形成された珪素−炭化珪素系複合材料、窒化珪素、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミニウム、Fe−Cr−Al系金属からなる群から選択される少なくとも一種から構成されたものである。ハニカムセグメント4は、これらの中でも、炭化珪素(SiC)または珪素−炭化珪素系複合材料から構成されるものであることが好ましい。また、目封止部を形成するための充填材としては、上記ハニカムセグメントと同様の材料を用いることができる。
【0043】
[2]ハニカム構造体の製造方法:
本発明のハニカム構造体は、以下のように製造することができる。まず、目封止部を有する複数のハニカムセグメントを用意し、各ハニカムセグメントの接合面(側面)に接合材組成物を塗工する(接合材組成物塗工工程)。上記ハニカムセグメントは、一方の端面から他方の端面まで延び流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有し、所定のセルの一方の端部と残余のセルの他方の端部とに配設された目封止部を有するものである。次に、これらのハニカムセグメントを、ハニカムセグメントの互いの側面同士が対向するように隣接して配置し、隣接するハニカムセグメント同士を圧着した後、加熱乾燥させる。このようにして、隣接ハニカムセグメントの側面同士が接合材層によって接合されたセグメント接合体を作製する(セグメント接合体作製工程)。次に、このセグメント接合体の外周部を研削加工して所望の形状(例えば円柱状)とし、外周面にコーティング材を塗工した後、加熱乾燥させて外周壁を形成する(外周壁形成工程)。このようにしてハニカム構造体を作製することができる。
【0044】
[2−1]接合材組成物塗工工程:
本工程のハニカムセグメントとしては、以下のような方法で作製したものを用いることができる。
【0045】
まず、セラミック原料に、バインダ、界面活性剤、セグメント用造孔材、水等を添加して成形原料とする。セラミック原料としては、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、コージェライト化原料、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミニウム、鉄−クロム−アルミニウム系合金からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、炭化珪素又は珪素−炭化珪素系複合材料が好ましい。珪素−炭化珪素系複合材料とする場合、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末を混合したものをセラミック原料とする。セラミック原料の含有量は、成形原料全体に対して30〜90質量%であることが好ましい。
【0046】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、成形原料全体に対して2〜20質量%であることが好ましい。
【0047】
水の含有量は、成形原料全体に対して5〜50質量%であることが好ましい。
【0048】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、成形原料全体に対して0〜5質量%であることが好ましい。
【0049】
セグメント用造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。セグメント用造孔材の含有量は、成形原料全体に対して0〜20質量%であることが好ましい。
【0050】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0051】
次に、坏土を押出成形して複数のハニカム成形体を形成する。押出成形に際しては、所望のハニカム成形体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを有する構造である。
【0052】
ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周部の厚さ等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとする本発明のハニカム構造体の構造(ハニカムセグメントの構造)に合わせて適宜決定することができる。
【0053】
得られたハニカム成形体について、焼成前に乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができるためである。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜90質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0054】
次に、ハニカム成形体の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
【0055】
次に、ハニカム成形体を焼成して、ハニカム焼成体を作製することが好ましい。焼成の前に、バインダ等を除去するために仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1300〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。
【0056】
次に、得られたハニカム焼成体の、中心軸に直交する断面における所定のセルの一方の端部と、中心軸に直交する断面における残余のセルの他方の端部とに目封止を施し(目封止部を形成し)、ハニカムセグメントを作製する。なお、上記所定のセルと残余のセルとは、交互に配置され、ハニカムセグメントの端面にセル開口部と目封止部とによって市松模様が形成されるようにすることが好ましい。
【0057】
目封止部を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、以下の方法を挙げることができる。ハニカム焼成体の一方の端面にシートを貼り付けた後、当該シートの目封止部を形成しようとするセルに対応した位置に穴を開ける。そして、目封止部の構成材料をスラリー化した目封止用スラリーに、ハニカム焼成体の当該シートを貼り付けた端面に浸漬する。このようにして、シートに開けた孔を通じて、目封止部を形成しようとするセルの開口端部内に目封止用スラリーを充填する。そして、ハニカム焼成体の他方の端面については、一方の端面において目封止を施さなかったセルについて、上記一方の端面に目封止部を形成した方法と同様の方法で目封止部を形成する(目封止スラリーを充填する)。目封止部の構成材料としては、ハニカム成形体の材料と同じものを用いることが好ましい。目封止部を形成した後に、上記焼成条件と同様の条件で焼成を行うことが好ましい。また、目封止部の形成は、ハニカム成形体を焼成する前に行ってもよい。
【0058】
接合材組成物をハニカム焼成体の側面に塗工する方法は、特に限定されず、刷毛塗り等の方法を用いることができる。
【0059】
接合材組成物としては、アスペクト比が3以下の骨材及びアスペクト比が1.5以下の造孔材(接合材用造孔材)を含むものを用いることが好ましい。なお、骨材及び造孔材(接合材用造孔材)のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定を行った値である。具体的には、接合材組成物中の骨材及び接合材用造孔材についてそれぞれ100個以上、SEMにて写真撮影を行い、撮影された各骨材及び接合材用造孔材について長径と短径を測定する。そして、長径の平均値及び短径の平均値をそれぞれ算出する。その後、短径の平均値に対する長径の平均値の値を算出して、算出された値を、骨材及び接合材用造孔材のそれぞれのアスペクト比とする。このような接合材組成物により形成された塗工層は、焼成された後に接合材層となる。
【0060】
骨材としては、コージェライト、アルミナ、ジルコニア、イットリア、ムライト、アルミニウムシリケート、珪素、珪素−炭化珪素系複合材料などを挙げることができる。これらの中でも、炭化珪素、コージェライト、アルミナ、ジルコニア、及び、イットリアからなる群より選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましい。
【0061】
骨材の含有割合は、接合材組成物(固形分)の全量の65〜95質量%であることが好ましく、70〜90質量%であることが更に好ましく、75〜85質量%であることが特に好ましい。骨材の含有割合が上記範囲であることにより、造孔材添加量調整により応力緩和機能と接合強度の両立が可能となる。更に、アスペクト比が3以下の骨材の含有割合は、全骨材の80〜100質量%であることが好ましく、85〜100質量%であることが更に好ましく、90〜100質量%であることが特に好ましい。アスペクト比が3以下の骨材の含有割合が上記範囲であることにより、塗工層の焼成(乾燥)時に骨材の移動が抑制されるため、粗大気孔(図3参照)の形成を抑制することができる。
【0062】
骨材としては、粒子径50μm以下の粒子の体積含有率が85〜95%、粒子径10μm以下の粒子の体積含有率が40〜85%、粒子径2μm以下の粒子の体積含有率が10〜40%であるものを用いることが好ましい。そして、粒子径50μm以下の粒子の体積含有率が88〜92%、粒子径10μm以下の粒子の体積含有率が50〜75%、粒子径2μm以下の粒子の体積含有率が20〜35%であるものを用いることが更に好ましい。このような条件を満たす骨材を用いると、骨材粒度がブロードとなるため、塗工層の乾燥収縮が抑えられて気孔が均一に分布する。
【0063】
造孔材(接合材用造孔材)としては、例えば、発泡樹脂、カーボン、吸水性樹脂、フライアッシュバルーンなどを挙げることができる。これらの中でも、粒子径のバラツキが比較的小さく、接合材層に均一な気孔を形成することができるという観点から、発泡樹脂、カーボン、吸水性樹脂が好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上を用いてもよい。
【0064】
造孔材(接合材用造孔材)の含有割合は、接合材組成物(固形分)の全量の2〜8質量%であることが好ましく、3〜7質量%であることが更に好ましく、4〜6質量%であることが特に好ましい。接合材用造孔材の含有割合が上記範囲であることにより、接合材層が、球状気孔が更に均一に分散した構造となる。その結果、応力緩和と接合強度とを良好に両立させることが可能になる。更に、アスペクト比が1.5以下の接合材用造孔材の含有割合は、全接合材用造孔材の1〜8質量%であることが好ましく、2〜6質量%であることが更に好ましく、3〜5質量%であることが特に好ましい。接合材用造孔材の含有割合が上記範囲であることにより、接合材層中に形成される気孔の形状が球状または球状に近い形状になる。即ち、接合材層は、骨材がより均一に張り巡らされた構造となる。その結果、接合材層には、応力がより均一にかかることになる。そのため、応力緩和機能が更に向上した接合材層が得られる。
【0065】
造孔材(接合材用造孔材)の平均粒子径は、10〜70μmであることが好ましく、20〜60μmであることが更に好ましい。
【0066】
接合材組成物としては、更に、骨材として無機繊維を含有することもできる。
【0067】
無機繊維を含有することにより、接合強度に優れた接合材層を得ることができるため、優れた耐熱衝撃性を有するハニカム構造体を作製することができる。無機繊維としては、アルミノシリケートファイバー、アルミナファイバー、マグネシウムシリケートファイバーなどが挙げられる。また、無機繊維を含有しなくてもよく、無機繊維を含有しない場合には、人体に害のある無機繊維を使用しないため、健康面での問題が生じることを回避することができる。
【0068】
接合材組成物としては、更に、有機バインダ、分散剤などの添加剤を含有することもできる。有機バインダは、従来公知の有機バインダを適宜選択して使用することができる。この有機バインダによって、従来のハニカム構造体の接合材層と同等の接合強度の接合材層を得ることができる。分散剤は、従来公知の分散剤を適宜選択して使用することができる。
【0069】
有機バインダとしては、具体的には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどを用いることができる。これらの中でも、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースが好ましい。接合材組成物の接合性が良好になるためである。有機バインダの配合量は、骨材100質量部に対して、1〜10質量部とすることが好ましく、3〜6質量部とすることが更に好ましい。上記範囲とすることにより、良好な接合強度の接合材層を形成することができる。
【0070】
接合材組成物は、接合材層の厚さが0.5〜3.0mmの範囲となるようにハニカムセグメントの側面に塗工することができる。
【0071】
[2−2]セグメント接合体作製工程:
本工程において、ハニカムセグメントを組み付けた状態で圧着した後の加熱乾燥条件としては、120〜140℃、2〜3時間とすることができる。このようにして、隣接ハニカムセグメントの側面同士が接合材層によって接合されたセグメント接合体を作製する。
【0072】
[2−3]外周壁形成工程:
次に、作製したセグメント接合体の外周部を研削加工して所望の形状(例えば円柱状)とし、外周面にコーティング材を塗工した後、加熱乾燥させて外周壁を形成する。コーティング材によって塗工した後の加熱乾燥条件としては、600〜800℃、1〜3時間とすることができる。
【0073】
コーティング材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤、水等を混合したもの等を用いることができる。また、コーティング材を塗工する方法は、特に限定されず、ろくろ上で回転させながらゴムへら等でコーティングする方法等を挙げることができる。
【0074】
コーティング材の厚さは、例えば、0.1〜1.5mmの範囲で適宜設定することができる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
(実施例1)
(ハニカムセグメントの作製)
セラミックス原料として、SiC粉、金属Si粉を80:20の質量割合で混合した。これに、成形助材としてメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシメチルセルロース、造孔材として澱粉と吸水性樹脂、界面活性剤及び水を添加して混練し、真空土練機により可塑性の坏土を作製した。
【0077】
得られた坏土を押出成形機を用いて押出成形し、マイクロ波及び熱風で乾燥して流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを有するハニカム成形体を形成した。得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、両端面を所定量切断した。
【0078】
得られたハニカム成形体を、熱風乾燥機を用いて120℃で5時間乾燥した。その後、大気雰囲気にて脱臭装置付き大気炉を用いて約450℃で5時間かけて脱脂した。その後、Ar不活性雰囲気にて約1450℃で5時間焼成して、SiC結晶粒子がSiで結合された、多孔質のハニカム焼成体を得た。ハニカム焼成体の平均細孔径は14μmであり、気孔率は42%であった。平均細孔径および気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0079】
得られたハニカム焼成体について、所定のセルの一方の端部と、残余のセルの他方の端部とに目封止部を形成した。なお、所定のセルと残余のセルとは、交互に(互い違いに)並ぶようにして、両端面に、セルの開口部と目封止部とにより市松模様が形成されるようにした。目封止用の充填材には、ハニカム成形体と同様の材料を用いた。ハニカム焼成体に目封止部を形成した後に、上記焼成条件と同じ条件でハニカム焼成体を焼成し、ハニカムセグメントを得た。
【0080】
このようにして16個のハニカムセグメントを作製した。ハニカムセグメントは、底面の形状が正方形であり、この底面の外径(縦×横)が36mm×36mm、中心軸方向長さが152mmであった。
【0081】
また、得られたハニカムセグメントの隔壁厚さは、310μmであった。また、セル密度は、約46.5セル/cm(300セル/平方インチ)であった。
【0082】
(接合材組成物の調製)
骨材として炭化珪素(平均粒子径4μm、アスペクト比1〜3)65質量部、及び、造孔材として発泡樹脂(平均粒子径45μm、アスペクト比1〜1.2)5質量部を用いた。なお、上記骨材は、粒子径50μm以下の粒子の体積含有率が89%、粒子径10μm以下の粒子の体積含有率が78%、粒子径2μm以下の粒子の体積含有率が18%であった。更に、上記骨材と造孔材に以下の添加材を混合した。即ち、コロイダルシリカ(無機バインダ)20質量部、カルボキシメチルセルロース(CMC)(有機バインダ)0.5質量部、アルミノシリケートファイバー(無機繊維)5質量部、ポリエチレングリコールオレイン酸エステル(分散剤)0.1質量部、水を混合した。その後、ミキサーにて30分間混練を行ってペースト状の接合材組成物を得た。このとき、ペースト状の接合材組成物の粘度が20〜60Pa・sとなるように水の添加量を調整した。
【0083】
(ハニカム構造体の作製)
ハニカムセグメントの側面に、厚さが1mmとなるように接合材組成物を塗布して塗布層を形成した。このとき、塗布方向は、ハニカムセグメントの長手方向に沿うようにした。次に、このハニカムセグメント上に、上記塗布層と外壁面とが接するように別のハニカムセグメントを載置した。その後、この工程を繰り返し、縦4個×横4個に組み合わせた合計16個のハニカムセグメントからなるハニカムセグメント積層体を作製した。その後、外部から圧力を加えた後、140℃で2時間乾燥させてセグメント接合体を得た。得られたセグメント接合体の外周部を、全体が円柱状になるように研削加工した。その後、外周面にコーティング材を塗布し、700℃で2時間乾燥させて外周壁(厚さ0.3mm)を形成した。このようにしてハニカム構造体を得た。なお、コーティング材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材を加えたものに水を加えて混練したものを用いた。得られたハニカム構造体の円形の底面の直径は、144mmであった。
【0084】
接合材組成物の配合について、表1及び表2に示す。
【0085】
(接合材層の評価)
得られたハニカム構造体の接合材層について、気孔率、球状気孔の平均径、P2/P1の値、圧縮ヤング率、及び、曲げ強度を、下記の方法により求めた。その結果を表3に示す。
【0086】
[気孔率]
ハニカム構造体から接合材層の一部を切り出して試験片とした。この試験片についてアルキメデス法により算出した。なお、接合材層を構成する3層(第1層、第2層、第3層)についての気孔率は後述する画像処理により算出した。上記試験片は、縦10mm×横10mmとし、その厚さは接合材層の厚さと同じ(1mm)とした。即ち、上記試験片の一方の面は接合材層の一方の面(一のハニカムセグメント側の面)に由来する面である。そして、他方の面は接合材層の他方の面(別の一のハニカムセグメント側の面)に由来する面である。
【0087】
[球状気孔の割合]
まず、接合材層の厚さ方向に垂直な断面における電子顕微鏡写真を画像処理し、観察視野(1.0mm)中の「気孔」の全数を数えた。次に、これらの「気孔」のうち「最大径/最小径」の値が1.2以下となる気孔(球状気孔)の数を数えた。その後、「気孔」の全数中の球状気孔の数の割合((球状気孔の数/「気孔」の全数)×100)を算出した。そして、この操作を、無作為に選択した10視野について行い、これらの平均値を算出して、球状気孔の割合(%)とした。なお、各視野は互いに重ならないようにした。なお、接合材層の厚さ方向に垂直な断面における面積が50μm未満のものは、「気孔」とはみなさなかった。
【0088】
[球状気孔の平均径]
観察視野(1.0mm)中の「球状気孔」159個の平均径((最大径+最小径)/2)を算出して、球状気孔の平均径とした。
【0089】
[微構造観察]
16個のハニカムセグメントのうちの一のハニカムセグメントをハニカムセグメントAとした。このハニカムセグメントAに隣接する別の一のハニカムセグメントをハニカムセグメントBとした。そして、ハニカムセグメントA、ハニカムセグメントB、及び接合材層13からなる試験片(10mm×15mm×70mm)をハニカム構造体から切り出した。具体的には、10mm×15mm×34.5mmのハニカムセグメントAと、10mm×15mm×34.5mmのハニカムセグメントBと、これらを接合している10mm×15mm×1mmの接合材層13とからなる試験片を切り出した。この試験片の接合材層を、図3に示すように、ハニカムセグメントA側から順に、第1層R1、第2層R2、第3層R3からなる厚さの比が1:2:1である3層に分割した。そして、各層についての気孔率を、それぞれ画像処理することによって算出した。その後、第1層R1と第3層R3との平均の気孔率P1と、第2層R2の気孔率P2とを求めて、P2/P1の値を算出した。本評価を、表2中「P2/P1の値」と示す。
【0090】
画像処理による各層(第1層R1、第2層R2、第3層R3)の気孔率の算出は、具体的には、以下のように行った。まず、試験片の接合材層の走査型電子顕微鏡(SEM)による画像(SEM画像、倍率200〜250倍、画像解析ソフト(Win ROOF:三谷商事社製)を用いて二値化した。二値化において、気孔部分が黒、気孔以外の部分が白となるようにした。二値化後、気孔以外の部分(白の部分)の面積を算出した。その後、SEM画像全体の面積(SEM画像中の黒と白の部分の総面積)に対する気孔以外の部分(白の部分)の割合(%)を算出して、気孔率とした。このようにして第1層R1、第2層R2、第3層R3の気孔率を算出した。
【0091】
[接合材層の厚さ方向の圧縮ヤング率]
ハニカム構造体から接合材層を切り出して試験片とし、この試験片に対して所定の圧縮荷重(具体的には2MPa)を加え、圧縮荷重前後の変位を計測して「応力−歪線図」を作成した。そして、「応力−歪線図」から算出した。上記試験片は、縦10mm×横10mmとし、試験片の厚さは接合材層の厚さと同じ(1mm)とした。即ち、上記試験片の一方の面は接合材層の一方の面(一のハニカムセグメント側の面)に由来する面である。そして、他方の面は接合材層の他方の面(別の一のハニカムセグメント側の面)に由来する面である。
【0092】
[曲げ強度]
JIS R 1624の接合曲げ試験に準じた4点曲げ試験で測定した。具体的には、まず、図6に示すように、複数のハニカムセグメントのうちの一のハニカムセグメントをハニカムセグメントXとした。このハニカムセグメントXに隣接する別の一のハニカムセグメントをハニカムセグメントYとした。そして、ハニカムセグメントX、ハニカムセグメントY、及び接合材層13からなる試験片(10mm×15mm×70mm)をハニカム構造体から切り出した。具体的には、10mm×15mm×34.5mmのハニカムセグメントX、10mm×15mm×34.5mmのハニカムセグメントY、及び、これらを接合している10mm×15mm×1mmの接合材層13とからなる試験片を切り出した。次に、図7に示すように、2つの支点16,16間の距離Lが60mm、2つの荷重点18,18間の距離Lが20mmとなるように配置した。次に、荷重点において外力を加えた。以上のようにして試験を行い「曲げ強度」を測定した。本評価を、表2中「曲げ強度」と示す。なお、図6及び図7中、セルの延びる方向に沿った方向を符号Nで示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
[ハニカム構造体の評価]
[バーナースポーリング試験(急速加熱試験)]
得られたハニカム構造体について、下記の方法により、急速加熱試験(バーナースポーリング試験)を試験温度900℃、1000℃、1100℃として順次行った。そして、試験後のハニカム構造体のクラックの発生状況を観察した。その結果を表3に示す。
【0096】
本試験は、ハニカム構造体にバーナーで加熱した空気を流すことにより中心部分と外側部分との温度差をつくり、ハニカム構造体のクラックの発生しない温度により耐熱衝撃性を評価する試験(温度が高いほど耐熱衝撃性が高い)である。評価基準は、以下のようにした。試験温度900℃でクラックが発生した場合を「D」とした。試験温度900℃ではクラックが発生しないが、試験温度1000℃ではクラックが発生した場合を「C」とした。試験温度1000℃ではクラックが発生しないが、試験温度1100℃ではクラックが発生した場合を「B」とした。試験温度1100℃でもクラックが発生しない場合を「A」とした。
【0097】
【表3】
【0098】
[繰返しバーナースポーリング試験(繰返し急速加熱試験)]
試験温度を800℃として上記急速加熱試験(バーナースポーリング試験)を複数回繰返し行った。具体的には、ハニカム構造体にバーナーで加熱した空気(800℃)を流すことにより中心部分と外側部分との温度差をつくり、その後、室温(約25℃)まで冷却し、再び、バーナーで加熱した空気(800℃)をハニカム構造体に流すという操作を繰返し行った。そして、試験後のハニカム構造体のクラックの発生状況を観察した。評価基準は、以下のようにした。5回未満の繰返し試験でクラックが発生した場合を「D」とした。5回以上、10回未満の繰返し試験でクラックが発生した場合を「C」とした。10回以上、20回未満の繰返し試験でクラックが発生した場合を「B」とした。20回の繰返し試験でもクラックが発生しない場合を「A」とした。その結果を表3に示す。
【0099】
なお、[バーナースポーリング試験(急速加熱試験)]または[繰返しバーナースポーリング試験(繰返し急速加熱試験)]のいずれかの試験で「D」評価があると、フィルター再生時にクラックが生じる可能性がある。そのため、いずれかの試験で「D」評価がある場合には、優れた耐熱衝撃性がないと判断できる。
【0100】
(実施例2〜、参考例1〜4、比較例1〜4)
表1及び表2に示す接合材組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体(実施例2〜、参考例1〜4、比較例1〜4)を作製した。その後、作製したハニカム構造体(実施例2〜、参考例1〜4、比較例1〜4)について、それぞれ、実施例1と同様の評価及び試験を行った。その結果を表3に示す。
【0101】
表3から明らかなように、実施例1〜のハニカム構造体は、比較例1〜4のハニカム構造体に比べて、従来のハニカム構造体の接合材層と同等の応力緩和機能及び接合強度の接合材層を有し、優れた耐熱衝撃性を有することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のハニカム構造体は、例えば、ディーゼルエンジン等からの排ガスに含まれている粒子状物質(パティキュレート)を捕捉して除去するためのディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)として利用することができる。
【符号の説明】
【0103】
1:セル、2:隔壁、3:外周壁、4:ハニカムセグメント、6:目封止部、8:気孔、9:線分、10:球状気孔、11:一方の端面、12:他方の端面、13:接合材層、15a,15b:空洞、16:支点、18:荷重点、R1:第1層、R2:第2層、R3:第3層、100:ハニカム構造体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7