特許第6043288号(P6043288)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6043288時間分解蛍光ベースのアッセイによるリポ多糖の測定のための使用方法およびキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043288
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】時間分解蛍光ベースのアッセイによるリポ多糖の測定のための使用方法およびキット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20161206BHJP
   G01N 33/566 20060101ALI20161206BHJP
   G01N 33/542 20060101ALI20161206BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20161206BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   G01N33/53 S
   G01N33/566
   G01N33/542 A
   G01N33/50 F
   G01N21/64 B
【請求項の数】10
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-529326(P2013-529326)
(86)(22)【出願日】2011年9月15日
(65)【公表番号】特表2013-538356(P2013-538356A)
(43)【公表日】2013年10月10日
(86)【国際出願番号】US2011051779
(87)【国際公開番号】WO2012037361
(87)【国際公開日】20120322
【審査請求日】2014年9月11日
(31)【優先権主張番号】61/382,990
(32)【優先日】2010年9月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505445164
【氏名又は名称】エンダセア, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンス・ニーリー・ウィルソン
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−510904(JP,A)
【文献】 特表2005−508012(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/143014(WO,A1)
【文献】 国際公開第1997/044665(WO,A1)
【文献】 Gregory Warner、外6名,Time-Resolved Fluorescence. Based GTP Binding Assay for. G-Protein Coupled Receptors.,PerkinElmer life sciences,2002年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A1アデノシン受容体均一時間分解蛍光(TRF)アッセイを用いてサンプル中のリポ多糖(LPS)レベルを測定する方法であって、それぞれドナーまたはアクセプターフルオロフォアに抱合された2つの異なる部分の結合、ドナーフルオロフォアの励起、ドナーフルオロフォアによる光の吸収、ドナーおよびアクセプターフルオロフォア間の共鳴エネルギー移動、ならびに共鳴エネルギー移動によって生じた時間分解蛍光を用いる方法であり、
a)A1アデノシン受容体タンパク質源を選択すること;
b) i. タグ;
ii. 代謝標識;
iii. タンパク質標識;
iv. タグ、代謝標識、またはタンパク質標識についての抗体;
v. A1アデノシン受容体タンパク質またはペプチドについての抗体;
vi. A1アデノシン受容体タンパク質またはペプチド;
vii. A1アデノシン受容体シグナル伝達経路のタンパク質またはペプチド;
viii. A1アデノシン受容体シグナル伝達経路のタンパク質またはペプチドに対する抗体;
ix. A1アデノシン受容体リガンド;
x. シグナル伝達分子;
xi. A1アデノシン受容体シグナル伝達経路の分子;
xii. A1アデノシン受容体シグナル伝達経路の分子に対する抗体;および
xiii. A1アデノシン受容体シグナル伝達経路において測定されうる分子;
からなる群から選択される異なる部分とそれぞれ結合したドナーおよびアクセプターTRFフルオロフォアを選択すること;ならびに
c)A1アデノシン受容体タンパク質源;それぞれ異なる選択された部分と結合したドナーおよびアクセプターTRFフルオロフォア;ならびにサンプルを利用して、
i.アッセイにA1アデノシン受容体タンパク質源を添加すること;
ii.サンプルを添加すること
iii.それぞれ異なる選択された部分と結合したドナーフルオロフォアおよびアクセプターフルオロフォアを添加すること;
iv.アッセイをインキュベーションすること;ならびに
.励起ならびにドナーおよびアクセプターフルオロフォア間の共鳴エネルギー移動後、時間分解蛍光を読み取るこ
含む様式にて均一TRFアッセイを行うこと
を含む方法。
【請求項2】
ドナーおよびアクセプターフルオロフォアがグアノシン三リン酸(GTP)、A1アデノシン受容体タンパク質またはペプチド、A1アデノシン受容体タンパク質またはペプチドについての抗体、タグ、タンパク質標識、タグまたはタンパク質標識に対する抗体、トロンボキサン、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、およびトロンボキサンまたはcAMPに対する抗体からなる群から選択される異なる部分とそれぞれ結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
A1アデノシン受容体が細胞内または細胞膜上で発現している、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
サンプルが生物学的サンプルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
サンプル中のLPSレベルが定性的測定値である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
サンプル中のLPSレベルが定量的測定値である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
サンプル中のLPSレベルが、均一TRFアッセイおよび既知濃度のLPSを含有するサンプルを使用して作成したLPS標準曲線から得られるものであり、サンプルの時間分解蛍光を読み取り、それをLPS標準曲線についての時間分解蛍光測定値と比較し、サンプル中のLPSレベルを決定することによって得られる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法を実施するためのキットであって、
a)A1アデノシン受容体タンパク質源;
b)少なくとも1つのフルオロフォア;および
c)LPS標準
を含むキット。
【請求項9】
フルオロフォアがGTPにキレートされているランタニドフルオロフォアである、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
ランタニドがユーロピウムである、請求項9に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2010年9月15日に出願された米国仮出願第61/382,990号の優先権を主張するものであって、その全体において参照することによって本明細書に包含される。
【0002】
著作権表示
この特許の開示の一部は、著作権保護の対象である材料を含有する。著作権所有者は、特許商標庁の特許ファイルまたは記録に現れる場合に何人かによる特許文献または特許開示の複製に対する異議を唱えることはできないが、それ以外はいかなるものであっても全著作権を保有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
発明の分野
本発明は、リポ多糖(LPS)の測定のための使用方法、ならびに敗血症およびLPS関連状態の診断のための使用方法に関する。特に、本発明は、LPSの測定のための時間分解蛍光(TRF)ベースのアッセイ、ならびに敗血症およびLPS関連状態を診断するためのLPSの測定のための使用方法に関する。
【0004】
関連技術の記載
リポ多糖(LPS)はグラム陰性細菌の外壁の主要成分であり、炎症性サイトカインの放出を含む免疫応答を誘導することができる。十分に高い濃度では、LPSは敗血症、敗血症ショック、および臓器障害を生じるメディエーターの放出を誘導することができる。それゆえ、LPSは敗血症の重要なバイオマーカーとして機能しうる。さらに、LPSは発熱物質、すなわち熱誘発物質として作用しうる。さらに、臓器、例えば眼、膀胱、もしくは耳の中のグラム陰性細菌感染から放出されたLPS、または腸内のグラム陰性細菌から放出された血漿中に循環しているLPSは、膀胱炎、中耳炎、またはアルツハイマー病を含むLPS関連状態の原因となりうる。
【0005】
現在、しばしばエンドトキシンと呼ばれるLPSを測定するためのFDAに認可された試験は2つのみである。リムルスアメボサイトライセート(Limulus amebocyte lysate(LAL))アッセイは、ヒトおよび動物の非経口薬物、生物学的製剤、ならびにヒト使用のためのFDAクリアランス用医療機器におけるLPS/エンドトキシンの検出用にFDAに認可されている。しかしながら、工業溶液、例えばヒト使用のためのFDAに認可された製剤および血液製剤中のLPSを測定するためのLAL試験と関連する高い固有の誤り率がある。さらに、LALエンドトキシン試験は、ヒト使用のためのこれらの製剤のクリアランスのための信頼性の低いウサギ発熱物質試験の使用を必要とする生物学的製剤、例えば抗体中のLPSを測定するには適していない。さらに、偽陽性および偽陰性試験結果をもたらすLAL LPS/エンドトキシン試験を増強または阻害する多数の妨害物質が血液中に存在しているため、この試験は、敗血症の危険性があり、または敗血症を患う患者の血液中のLPS/エンドトキシンを検出または測定するための臨床診断用としてFDAに認可されていない。
【0006】
スペクトラル・ダイアグノスティス社(トロント、カナダ)は、そのLPS/エンドトキシンアッセイ、エンドトキシン・アクティビティ・アッセイ(EAA(商標))を市販するためのFDA認可を受けている。このエンドトキシンアッセイは、血中のLPS/エンドトキシンのレベルの指標としての好中球からの酸素ラジカル放出を測定する化学発光試験である。この試験は特異性が欠如し得、さらに全血における使用に限定されている。
【0007】
敗血症は、最も大きな未だ対処されていない医学的ニーズの1つである。敗血症は、急速にショック、臓器不全、および死をもたらしうる感染に対する抗し難い全身性応答によって特徴付けられる医学症候群である。米国では、敗血症は全体で10番目に多い死因であり、毎年750,000件以上の症例、215,000名の死亡、および170億ドルの医療費を占めている(Angus et al., Crit Care Med 29:1303-1310; 2001)。さらに、敗血症の発生率は、集団の年齢増加、免疫力がない患者数の増加、生命維持技術の使用、および抗菌剤に対する細菌の耐性増加のために上昇しうる。さらに、クリティカル・ケア・メディシンの進歩、抗生物質の改善、およびイーライ・リリー・アンド・カンパニー社の抗敗血症治療薬ザイグリス(Xigris(登録商標))の認可にもかかわらず、敗血症による死亡率は50年以上にわたって本質的に変わっていない。今日、敗血症の治療は、抗生物質、感染が疑わしい部位の外科的ドレナージ、心臓および血圧を支えるための変力物質および昇圧剤、ならびに集中治療室(ICU)における支持療法、例えば人工呼吸を含む。新たな抗菌剤および改善された支持療法が利用できるにもかかわらず、重度敗血症および敗血症ショックの死亡率は30〜60%と高いままであり、敗血症を乗り切る患者の長期予後は芳しくない。これらの悲観的な統計は、敗血症に対するこの従来のアプローチへの追加療法(補助的療法)、すなわち、ショック、多臓器機能障害および不全症、ならびに死をもたらす敗血症事象の複雑なカスケードを妨害する治療の必要性を示唆している。
【0008】
FDAに最初に認可された敗血症用の補助的治療は、2001年11月に認可された。イーライ・リリーによって開発および販売されているこの薬物、ザイグリス(Xigris)(ドロトレコギンアルファ[活性化]、組換えヒト活性化タンパク質C)は、敗血症の終末事象、播種性血管内凝固(DIC)、すなわち重度のびまん性出血をもたらす血中凝固の異常を標的にしている。その最も信頼のおける大規模臨床試験において、ザイグリス(Xigris)は、プラセボと比較して、絶対的死亡率をほんの6%減少させたに過ぎなかった(Bernard et al., New Eng J Med 344:699-709, 2001)。さらに、ザイグリス(Xigris)は高価であり、出血の重篤な有害副作用を有している。安全かつ効果的な抗敗血症治療薬についての未だ対処されていない医学的ニーズのために、多数の他の製薬会社が、抗エンドトキシン、抗サイトカイン、および他の抗敗血症治療を含む補助的抗敗血症治療の開発を試みては失敗している。これらの試みは、多数の理由のために、予後における有益な効果の実証に失敗している。これらの失敗の第一の理由は、これらの臨床試験における治療について患者を正しく同定/階層化するための高感度で特異的なバイオマーカー/診断法の欠如であった。現在、敗血症を患い、もしくは敗血症の危険性がある患者を同定するための、信頼できる高感度で特異的なバイオマーカー、または敗血症を治療するための安全かつ効果的な抗敗血症治療薬はない。
【0009】
プロカルシトニンおよびC反応性タンパク質を含む敗血症についての170種以上の異なるバイオマーカーが、臨床試験において評価されてきた;しかしながら、これらのバイオマーカーおよびそれらの診断試験は、医師が敗血症を診断し、特定の抗敗血症治療について患者を同定/階層化するためのルーチン的な臨床使用のための、または臓器傷害および生存、ならびに治療応答についての予後の指標として使用するための感度または特異性を欠いている(Pierrakos and Vincent, Critical Care 14:R15 - R33, 2010)。これまで、患者が敗血症を患っていると同定するための信頼できる臨床診断法またはバイオマーカーはなく、その結果、全身性炎症反応症候群(SIRS)の非特異的徴候および症状を呈する患者が、敗血症と疑われる者に含まれることになっている。SIRSを患う全患者が感染しているわけではない。現在、敗血症を診断するために陽性細菌血液培養ドキュメンティング菌血症(positive bacterial blood culture documenting bacteremia)が一般的に用いられる;しかしながら、この試験は信頼できるものではなく、敗血症と疑われる症例の30%未満で陽性の結果を与える。
【0010】
EAAは現在、敗血症が疑われる患者におけるLPS/エンドトキシンの検出および測定のための臨床診断法としてFDAに認可されている。このエンドトキシンアッセイは、補体オプソニン化LPS−IgM免疫複合体を介した好中球からの酸素ラジカル放出を測定する化学発光試験である。これらの免疫複合体の存在下でのルミノール反応は、光エネルギーを放射する。ルミノメーターによって測定される相対発光量(RLU)は、血液サンプル中のLPSの尺度であり、全可能活性(0〜100%)EA値のパーセンテージとして表される。ヒトでは、このLPSアッセイを使用した場合に、0.40未満のEA値はグラム陰性感染がないことを支持し、より高いEA値(>0.59)はICU中にいる間の死亡の危険性の増加と関連する。このEAA LPS試験は特異性が欠如していると信じられている;使用も全血に限定されており、血液が採取された直後にその場で行われなければならない(結果は迅速ではあるが)。ロシュ・ダイアグノスティック社のLightCycler(登録商標)SeptiFast試験、すなわち敗血症が疑われる患者の血中の病原体について細菌および真菌DNAを検出するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースの試験は、米国では入手できない。その高感度のために、この試験での偽陽性率は高い。最終的に、敗血症を患う患者から摂取したサンプルのゲノム分析に基づいて、SIRS−Lab社は、敗血症を患う患者の血中の細菌および真菌DNAを測定するための、VYOO(登録商標)を含むチップ上の敗血症用分子バイオマーカーを開発している。VYOOは、米国で臨床使用のためにFDAに認可されたものではない。最終的に、LALエンドトキシン試験は米国で臨床使用のためにFDAに認可されたものではない。
【0011】
リポ多糖(LPS)レベルは敗血症を患う患者の血漿中で上昇する(Parsons et al., Am Rev Respir Dis 140:294-301, 1989; Brandtzaeg et al., J Infect Dis 159:195-204, 1989; Danner et al., Chest 99:169-175, 1991)。さらに、LPSはA1アデノシン受容体に結合し、活性化する(Wilson and Batra, J Endotoxin Res 8:263-27; 2002)。LPS/エンドトキシンがA1アデノシン受容体に結合するという発見に基づいて、エンドトキシンを測定するアッセイについての特許がいくつかの国で発行された[米国特許第5,773,306号、米国特許第6,908,742号;国際公開第97/044665号;カナダ特許第2,253,236号;欧州第97926695.4号(オーストリア、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スイスおよびリヒテンシュタイン、ならびに英国);日本特許第3,197,280号]。現在知られているアッセイは、A1アデノシン受容体に対する、LPSの結合についての、タグ付けした高親和性A1アデノシン受容体リガンド、例えばBW A844U−ビオチンとの置換または競合に基づいている。敗血症が疑われる患者の血漿を含む血漿中のLPSを測定するこのA1アデノシン受容体リガンド結合アッセイの実験室および臨床評価に基づき、LPS測定についてのカットオフ値に基づく以前の報告も参酌すると、LPSは敗血症および急性肺傷害が疑われる患者についての高感度で特異的なバイオマーカーである。しかしながら、この分光光度法(または蛍光)ベースのA1アデノシン受容体リガンド結合アッセイにおけるLPSについて、競合するA1アデノシン受容体リガンド、BW A844Uにつけられたタグ、例えばビオチンまたは蛍光タグ、例えばCy3Bについての高バックグラウンドノイズのために、その商業化が妨げられてきた。高バックグラウンドノイズ、すなわち低シグナル/ノイズ比のために、低信頼性かつ低再現性のアッセイとなった。高い商業的価値を有する臨床使用のために、敗血症バイオマーカー/診断法は高感度、特異性、および信頼性基準を満たさなければならない。さらに、このバイオマーカーを測定するアッセイは使いやすくなければならず、結果は、敗血症が疑われる患者のケアをしている医師に適時様式にて提供されなければならない。高バックグラウンドノイズのあるアッセイは信頼できず、再現性がなく、LPSを測定するために用いられ、または商業的に開発することができない。最適な光物理的特性、例えば高エネルギー移動効率を有し、生体分子に抱合されうるフルオロフォアを含む時間分解蛍光(TRF)技術の導入、ならびに蛍光測定の従来法と比較した計測手段およびゲーティング技術の改善は、新世代の蛍光ベースのアッセイ、例えばTRFベースのアッセイの基礎を提供している。時間分解蛍光(不均一および均一)ベースのアッセイは、限定されるものではないがTRF、均一TRF(HTRF)、時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(TR−FRET)、解離増強ランタニド蛍光イムノアッセイ(DELFIA(登録商標))、時間分解増幅クリプテート発光(TRACE)、およびランタニドキレート励起(LANCE(登録商標))アッセイを含み、高感度で、特異的で、信頼でき、頑健で、使いやすく、高シグナル/ノイズ比を有し、多数の異なる形式、例えばマイクロタイタープレートベース形式、小型形式、およびハイスループットアッセイ形式にて開発されうる。さらに、これらのアッセイを溶液中で、例えばマイクロタイタープレートのウェル内で行うことに加えて、これらのアッセイは固相形式を使用する形式にすることもでき、例えば、Gタンパク質共役受容体(GPCR)、例えばA1アデノシン受容体を発現している膜が固相に被膜される。固相はマイクロタイタープレート、ビーズ、カード、ディップ・スティック(dipsticks)、チップ、およびナノ粒子などを含んでよい。
【0012】
したがって、工業用の非生物学的溶液、血液製剤、および生体液におけるLPSを測定するために用いられうる、高シグナル/ノイズ比および低い固有の誤り率を有する、高感度で、高度に正確で、信頼でき、特異的で、再現性のある、非放射性アッセイが必要である。さらに、抗敗血症治療のために敗血症を診断し、または敗血症の危険性がある患者を同定し、敗血症が疑われる患者を階層化するのに十分な敗血症に対する高特異性を有する、患者の血漿または他の臨床サンプル中のバイオマーカーとしてのLPSを測定するための臨床使用のための形式にすることができる、高シグナル/ノイズ比を有する高感度で信頼できるアッセイが必要である。さらに、LPS関連状態を患う患者から採取した臨床サンプル中のLPSを測定するために用いられうる高感度で信頼できるアッセイが必要である。
【0013】
これまで、そのような高感度で特異的な敗血症バイオマーカーおよびアッセイが大いに必要とされ、非常に多数の敗血症バイオマーカーが知られ、多数の定量的かつ定性的アッセイがこの10年間以上にわたって知られているにもかかわらず、敗血症の危険性があり、または敗血症もしくは他のLPS関連状態を有する患者を確実に同定することができ、目的のはっきりした、または目的に向かった治療、例えば抗敗血症治療薬、例えばLPSの効果を遮断する抗LPS治療薬による治療について患者を階層化することができるものは知られておらず、または入手可能ではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概略
現在では、A1アデノシン受容体のLPS活性化は、明確なシグナルをTRFベースのアッセイにおいて誘導し、それは生物学的および非生物学的溶液の両方、例えば水、緩衝液、他の工業溶液、血液製剤から採取したサンプル、ならびに血漿、他の体液、または感染が疑われる臨床現場から採取したサンプル、敗血症の危険性または敗血症を有する患者から採取したサンプル中のLPSを測定するために、十分に高感度で、正確で、信頼できるものであることが発見されている。さらに、TRFアッセイで測定されたLPSは、敗血症の危険性を有し、または敗血症を患う患者を特異的治療、例えば抗敗血症治療薬について階層化するための、高感度で信頼できるバイオマーカーおよび定量的な決定要因としての機能を果たすであろう。さらに、TRFアッセイで測定されたLPSは、LPS関連状態を治療するための抗LPS治療薬について患者を階層化するための、高感度で特異的なバイオマーカーとしての機能を果たすであろう。1つの特定の実施態様は、LPSについてのTRFベースの結合アッセイにおける、グアノシン三リン酸(GTP)ランタニドキレートおよびA1アデノシン受容体タンパク質源の使用を含む。
【0015】
したがって、本発明の1つの実施態様では、サンプル中の定量的LPSレベルを測定する方法であって、
a)A1アデノシン受容体タンパク質源を選択すること;
b) i. タグ;
ii. 代謝標識;
iii. タンパク質標識;
iv. タグ、代謝標識、またはタンパク質標識に対する抗体;
v. A1アデノシン受容体タンパク質またはペプチドに対する抗体;
vi. A1アデノシン受容体タンパク質またはペプチド;
vii. A1アデノシン受容体シグナル伝達経路のタンパク質またはペプチド;
viii. A1アデノシン受容体シグナル伝達経路のタンパク質またはペプチドに対する抗体;
ix. A1アデノシン受容体リガンド;
x. シグナル伝達分子;
xi. A1アデノシン受容体シグナル伝達経路の分子;
xii. A1アデノシン受容体シグナル伝達経路の分子に対する抗体;および
xiii. A1アデノシン受容体シグナル伝達経路において測定されうる分子
を含む群から選択される部分と結合した少なくとも1つのTRFフルオロフォアを選択すること;ならびに
c)A1アデノシン受容体タンパク質源;結合した少なくとも1つのTRFフルオロフォア;およびサンプルを利用して、蛍光の測定がLPSの定量的レベルと相関する様式にてTRFアッセイを行うこと
を含む、A1アデノシン受容体TRFアッセイを用いる方法がある。
【0016】
さらに別の実施態様では、サンプル中の定量的LPSレベルを測定する方法であって、
a)A1アデノシン受容体タンパク質源を選択すること;
b) i. タグ;
ii. 代謝標識;
iii. タンパク質標識;
iv. タグ、代謝標識、またはタンパク質標識に対する抗体;
v. A1アデノシン受容体タンパク質またはペプチドに対する抗体;
vi. A1アデノシン受容体タンパク質またはペプチド;
vii. A1アデノシン受容体シグナル伝達経路のタンパク質またはペプチド;
viii. A1アデノシン受容体シグナル伝達経路のタンパク質またはペプチドに対する抗体;
ix. A1アデノシン受容体リガンド;
x. シグナル伝達分子;
xi. A1アデノシン受容体シグナル伝達経路の分子;
xii. A1アデノシン受容体シグナル伝達経路の分子に対する抗体;および
xiii. A1アデノシン受容体シグナル伝達経路において測定されうる分子;を含む群から選択される異なる部分とそれぞれ結合した第1および第2TRFフルオロフォアを選択することであって、2つのフルオロフォア間に、TRFアッセイにおける励起後、測定されうるエネルギー移動があるように選択すること;ならびに
c)A1アデノシン受容体タンパク質源;結合した第1および第2TRFフルオロフォア;ならびにサンプルを利用して、蛍光の測定がLPSの定量的レベルと相関する様式にてTRFアッセイを行うこと
を含むA1アデノシン受容体TRFアッセイを用いる方法がある。
【0017】
別の実施態様では、敗血症、グラム陰性細菌感染、またはLPS関連状態の存在について患者を診断する方法であって、患者から採取した生物学的サンプル中のLPSを測定することを含む方法であり、
a)A1アデノシン受容体タンパク質源を選択すること;
b)アッセイがLPSについて定量的である、少なくとも1つのTRFフルオロフォアを利用する定量的TRFアッセイを選択すること;
c)サンプルでアッセイを行うこと;
d)アッセイにおいてサンプルについての蛍光の量を測定すること;
e)該サンプルについての蛍光測定と、既知量のLPSを添加したサンプルを使用したステップa)〜d)のアッセイによって作成されたLPSについての標準曲線を比較することによって、蛍光の量から該サンプル中のLPSの量を決定すること;および
f)サンプル中のLPS量から患者の状態を診断すること
を含む方法がある。
【0018】
さらに別の実施態様では、サンプル中のLPS量を決定するためのキットであって
a)少なくとも1つのフルオロフォアを利用する選択されたTRFアッセイ;
b)A1アデノシン受容体タンパク質源;および
c)LPS標準
を含むキットがある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、A1アデノシン受容体TRFユーロピウム(Eu)−GTP結合アッセイで測定されたLPSについての標準曲線を表すデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な記載
この発明は多くの異なる形態において実施態様の影響を受けやすく、図面において示され、本明細書で詳細な特定の実施態様に記載されている一方、該実施態様の開示は原理の一例として考えられるべきであり、示され、記載されている特定の実施態様に本発明を限定することは意図していないと理解されたい。この詳細な記載は本明細書で用いられる用語の意味を定義しており、当業者が本発明を実施するために実施態様を具体的に記載している。
【0021】
定義
本明細書で用いられている用語「a」または「an」は、1または2以上を意味するものとして定義されている。本明細書で用いられている用語「複数」は、2または3以上を意味するものとして定義されている。本明細書で用いられている用語「別の」は、少なくとも第2またはそれ以上のものを意味するものとして定義されている。本明細書で用いられている用語「含む」および/または「有する」は、含むこと(すなわち、オープンランゲージ)として定義されている。本明細書で用いられている用語「共役した」は、必ずしも直接的ではなく、必ずしも機械的ではないが、結合しているものとして定義されている。
【0022】
用語「約」は、±10パーセントを意味する。
【0023】
この文書の全体を通して、「1つの実施態様」、「特定の実施態様」、および「実施態様」または類似の用語への言及は、実施態様に関連して記載される特定の特色、構造、または特徴が本発明の少なくとも1つの実施態様に含まれることを意味する。それゆえ、この明細書を通じた様々な場所における該語句の出現は、必ずしも全て同一の実施態様を指すわけではない。さらに、特定の特色、構造、または特徴は、1つ以上の実施態様で限定されることなく、いずれかの適切な様式で組み合わせられてよい。
【0024】
本明細書で用いられている用語「または」は、いずれか1つまたはいずれかの組み合わせの意味が含まれるものと解釈されたい。それゆえ、「A、BまたはC」は、以下のいずれかを意味する:「A;B;C;AおよびB;AおよびC;BおよびC;A、BおよびC」。この定義の例外は、要素、機能、ステップまたは作用の組み合わせが何らかの本質的に相互排他的なものである場合にのみ生じるであろう。
【0025】
図面で特徴付けられている図は、本発明の特定の好都合な実施態様を説明する目的で提供されており、それに限定されるものとして考えられるべきではない。動作の現在分詞に先行する用語「意味する」は所望の機能を示し、そのために所望の機能を達成するための1つ以上の実施態様、すなわち、1つ以上の方法、装置、または器具があり、当業者は本明細書の開示を考慮してこれらまたはそれらの均等物から選択することができ、用語「意味する」の使用は限定すること意図していない。
【0026】
本明細書で用いられている「リポ多糖」(LPS)(エンドトキシンとしても知られている)は、グラム陰性細菌の外壁の主要な成分である糖脂質を指す。それは通常、動物の血中に低濃度で見られる。それは、レベルが血中で上昇し、他の体液に低濃度でも存在している場合、疾患状態の指標として知られる。それは、炎症性サイトカインの放出を含む免疫応答を誘導することができる。十分に高い濃度では、LPSは敗血症、敗血症ショック、および臓器障害、ならびに不全症を生じるメディエーターの放出を誘導することができる。さらに、LPSは発熱物質、すなわち、熱誘発物質として作用しうる。さらに、臓器、例えば眼、膀胱、耳の中のグラム陰性細菌感染から放出されたLPS、または腸内のグラム陰性細菌から放出された血漿中に循環しているLPSは、LPS関連状態の原因となりうる。したがって、LPSは発熱物質、グラム陰性細菌感染、敗血症、およびLPS関連状態の存在または活性の指標として知られている。
【0027】
本明細書で用いられている用語「タンパク質」は、アミノ酸を含有するいずれかの分子を含み、RNA、RNAi、siRNA、shRNA、miRNA、RNAポリメラーゼ、DNA、dsDNA、DNAベクター、DNA断片、DNAプロモーター、単一ヌクレオチド多型(SNPs)、クロマチン、アンチセンス、オリゴヌクレオチド、エピトープ、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、および酵素などを含む。タンパク質は自然に生じたものでもよく、自然に組換えられたものでもよく、または遺伝的に操作されたものでもよい。タンパク質は可溶化または精製されていてよい。タンパク質は糖または脂質に抱合されていてよい。それは、別のタンパク質に結合してタンパク質複合体または融合タンパク質を形成していてよい。タンパク質にはタグがつけられていてよい。タンパク質は二量体またはタンパク質のサブユニット、例えばGタンパク質のサブユニットであってよい。さらに、タンパク質はナノ粒子に結合していてよい。タンパク質源は、限定されるものではないが哺乳類、魚類、爬虫類、植物、昆虫、細菌、酵母、および真菌を含む。タンパク質源は、植物、酵母、昆虫、または哺乳類に由来する組織および細胞または組織もしくは細胞から調製された膜、例えば最適なタンパク質、例えばA1アデノシン受容体タンパク質を発現しているチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはSf9昆虫細胞を含む。
【0028】
本明細書で用いられている用語「シグナル伝達分子」は、限定されるものではないが、タグを有しまたは有さないいずれかの物質を含み、A1アデノシン受容体の活性化後に測定されうるタンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、エピトープ、酵素、キナーゼ、DNA、RNA、アンチセンス分子、ホスファターゼ、トロンボキサン、インターロイキン、サイトカイン、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、GTP、核内因子κβ(NF−κβ)、NF−κβのサブユニット、イノシトール三リン酸(IP3)、タンパク質キナーゼC(PKC)、ジアシルグリセロール(DAG)、熱ショックタンパク質、マトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metaloproteinanses)、増殖因子、および他の分子を含む。
【0029】
本明細書で用いられている用語「敗血症(sepsis)」は、敗血症(sepsis)、敗血症(septicemia)(菌血症/内毒血症)、重度敗血症、敗血症ショック、および関連状態、ならびにこれらの状態のそれぞれと関連する臨床症状および合併症を含む。
【0030】
用語「LPS関連状態」は、サンプル中のLPSのレベルが状態の存在と相関する状態を含む。例えば、1)羊水において、LPSのレベルは妊娠中の早期破水の発生率と相関する(Hazan et al., Acta Ostet Gynecol Scand 74:275-280, 1995);2)術後の患者の血中において、LPSレベルは呼吸器および腎臓合併症の発生率と相関する(Berger et al., E Surg Res 28:130-139, 1996);3)喘息において、ハウスダスト中のLPSレベルは喘息の重症度と相関する(Michel et al., Am J Resp Crit Care Med 154:1641-1646, 1996);4)壊死性腸炎を患う新生児の便において、LPSレベルは腸粘膜疾患の重症度と相関する(Duffy et al., Digestive Dis and Sci 42:359-365, 1997);5)尿中において、LPSレベルはグラム陰性感染の存在と相関する(Hurley and Tosolini, J Microbiol Methods 16: 91-99, 1992);6)インビトロ受精についての培地において、LPSレベルは胚の生存と相関する(Nagatta and Shirakawa, Fertility and Sterility 65:614-619, 1996);ならびに、7)持続的携帯型腹膜透析(CAPD)患者の腹水において、LPSレベルはグラム陰性腹膜炎の診断について100%の感度および特異性を有する(Ishizaki et al., Advances in Peritoneal Dialysis 12:199-202, 1996)。血漿または他の患者サンプル中のLPSレベルは、他の状態、例えば神経変性疾患、例えばアルツハイマー病もしくはパーキンソン病、または線維症および硬化症をもたらす疾患、例えば炎症および自己免疫疾患と関連しうる(Jaeger et al., Brain Behav Immun 23:507-517, 2009; Villaran et al., J Neurochem 114:1687-1700, 2010)。さらなる例およびLPS関連状態の言及については、米国特許第6,117,445号(参照することによって本明細書に援用される)を参照のこと。
【0031】
血液または体内の感染が疑われる部位から採取したサンプルについて細菌培養報告を得るには24〜48時間を要するため、LPSの検出および測定についての高感度で特異的な適時アッセイは多数の臨床状態および状況において貴重である。血液、体液、腔、および組織中のLPSの測定は、医師がグラム陰性細菌感染の存在を診断し、広域スペクトル抗生物質の使用を避けながらグラム陰性細菌感染に対するより特異的な治療をより早く処方することを可能にするであろう。さらに、耳の細菌培養が陰性である場合、耳の中のLPSレベルはグラム陰性細菌感染および中耳炎の存在を示唆しうる。さらに、脳脊髄液(CSF)中のLPSレベルは、CSF細菌培養が陰性である場合、グラム陰性細菌感染および髄膜炎の存在を示しうる。また、腹部大手術後の腹水中にLPSレベルが検出された場合、これは外科的ドレナージを必要とする腹腔内感染の存在を示唆しうる。最終的に、特定の抗生物質または抗生物質の組み合わせがグラム陰性細菌からのLPSの放出を誘導することが報告されている(Hurley, Drug Safety 12:183-195, 1995)。LPSの検出および測定のための高感度で特異的なアッセイは、この重要な医薬の分野および抗生物質処方の実施についての研究を可能にし、おそらく抗生物質治療の開発に影響を与えるであろう。
【0032】
LPSを検出および測定するためのTRFアッセイを使用する臨床分野は、限定されるものではないが、敗血症、グラム陰性細菌感染、LPS関連状態についての臨床診断、心肺バイパス手術、手術前にサンプル、例えば血液中のLPSのレベルを決定する手術前試験、血液製剤のスクリーニング、妊娠の尿路感染および無症候性細菌尿を診断するポイント・オブ・ケア試験、透析液(肝臓および腹膜)のスクリーニング、低(pg/ml)LPSレベルが胚の死と相関するインビトロ受精(上記のNagatta and Shirakawa);ならびにLPSレベルが臓器移植の不全と相関しうる臓器移植バスを含む。
【0033】
LPSを検出および測定するTRFアッセイを使用する非臨床分野は、限定されるものではないが、研究使用限定(RUO)および工業使用を含む。工業使用は:ヒト使用のためにFDAに要求されるLPSレベルについて薬物、医療機器、および生物製剤をスクリーニングすること、レジオネラについて冷却システム中の水を試験すること、加湿器、例えば換気装置を接続されたものの中の水を試験すること、半導体製造施設についての水を試験すること、飲料水を試験すること、コンタクトレンズ液をモニターすること、ならびにLPS混入について化粧品を試験することを含む。
【0034】
したがって、本発明の方法およびキットは、動物におけるLPSのレベルを決定し、これらの状態を診断するために用いられうる。「動物」は限定されるものではないが、哺乳類、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、および有袋類を含むことを意味し、1つの実施態様ではヒトである。それゆえ、動物由来のサンプル中のLPSの存在およびレベルを測定することによって、上記の状態を迅速かつ正確に診断することができる。
【0035】
本明細書で用いられている用語「サンプル」は、限定されるものではないが、動物に由来する生物学的サンプル、例えば全血、血漿、血清、CSF、尿、唾液、耳液、子宮液、眼液、胸水、腹水、気管支肺胞洗浄液、心膜液、滑液、洞液、および嚢胞からの液、胚培地、ならびに非生物学的サンプル、例えば臓器バス、医薬溶液および製剤、血液製剤、医療機器、透析液、ならびに工業溶液および製剤を指す。本発明のサンプルはTRFアッセイにて試験することが可能な状態になければならず、それゆえ一般的にサンプルは液体状態、例えば溶液または懸濁液の状態であろう。
【0036】
「時間分解蛍光アッセイ」は、時間分解検出(励起と発光検出の間の遅延)と組み合わせた1つ以上の長寿命フルオロフォアの使用を含み、大きな蛍光干渉なく検出することを可能にする。これらのアッセイは、現在、不均一または均一のいずれかの性質を有する。本発明のアッセイは、A1アデノシン受容体の使用を含む。A1アデノシン受容体を用いたTRFアッセイを調整することは、当業者の技術の範囲内である。全てのGPCRsは、最適な結合のために、例えばGTP結合のために異なる条件を必要とする。それゆえ、当業者は、特異的GPCR、例えば本発明で利用されるA1アデノシン受容体のための緩衝液条件を最適化するであろう。これらの緩衝液条件は、当該技術分野で知られているように、A1アデノシン受容体のタンパク質源、例えば細胞もしくは細胞、組織、植物、もしくは細菌に由来する膜内で安定に発現し、または細胞、組織、植物、もしくは細菌に由来する膜から可溶化もしくは精製された組換えA1アデノシン受容体に基づいて異なってよい。
【0037】
TRFアッセイは全て、部分、例えばタンパク質またはリガンドと結合した少なくとも1つのフルオロフォアを有する。本発明に有用なフルオロフォアは周知であり、適合するように容易に選択されうる。フルオロフォアが選択されると、例えば、タグ、代謝標識、A1アデノシン受容体タンパク質についてのA1アデノシン受容体タンパク質もしくはペプチドに対する抗体、またはA1アデノシン受容体タンパク質もしくはペプチド、またはアッセイのタイプと一貫性があるものなどにキレート化することによって結合することができる。1つの実施態様では、フルオロフォアはGTPにキレートされている。1つの周知のTRF結合アッセイは、不均一および均一TRFアッセイの両方で利用されうるGTP結合アッセイである。GTP−ランタニド部分を利用すると、典型的には、蛍光は620nmで測定されうる。該部分の1つの実施態様は、ユーロピウムにキレートされているGTP(Eu−GTP)である。GTP結合アッセイは一般的に周知であり、A1アデノシン受容体およびLPSを用いる本発明への適用は、この開示を考慮すると、当業者の技術の範囲内である。本明細書で用いられているように、フルオロフォアと結合するように選択される部分は、
a) タグ;
b) 代謝標識;
c) タンパク質標識;
d) タグ、代謝標識、またはタンパク質標識に対する抗体;
e) A1アデノシン受容体タンパク質またはペプチドに対する抗体;
f) A1アデノシン受容体タンパク質またはペプチド;
g) A1アデノシン受容体シグナル伝達経路のタンパク質またはペプチド;
h) A1アデノシン受容体シグナル伝達経路のタンパク質またはペプチドに対する抗体;
i) A1アデノシン受容体リガンド;
j) シグナル伝達分子;
k) A1アデノシン受容体シグナル伝達経路の分子;
l) A1アデノシン受容体シグナル伝達経路の分子に対する抗体;および
m) A1アデノシン受容体シグナル伝達経路において測定されうる分子
を含む群から選択される。
【0038】
不均一アッセイはフルオロフォアでタグ付けした1つの試薬を利用し、それゆえ分析物、例えばLPSを測定するために用いられる。このアッセイは、非結合標識パートナー(unbound labeled partner)から結合標識パートナー(bound)を分離するために、洗浄および濾過ステップを必要とする。これらのタイプのアッセイは、多くの場合において、ランタニド系列の希土類元素の蛍光特性を利用する。これらのアッセイに通常用いられるランタニドは、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、およびジスプロシウムである。これらの実施態様は、他のフルオロフォアと比較して大きなストークシフトおよび極度に長い発光半減期を有するため、利用される。これらのアッセイのタイプは、競合性の、または結合性のタイプになる傾向がある。
【0039】
A1アデノシン受容体についてのTRFアッセイにおいて、フルオロフォアは次のようなタグにキレートされ、共役し、抱合され、または結合していてよい:例えばS−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン(SNAP)、クラスII関連インバリアント鎖ペプチド(CLIP)、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、もしくはACP/MCPタグ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、FLAG、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ヒスチジン(HIS)、酸アジドホモアラニン(AHA)またはHPGタグ、もしくは代謝標識、例えばアジドもしくはアルキンタグを有する生体分子で、A1アデノシン受容体タンパク質、Gタンパク質、Gタンパク質の二量体もしくはサブユニット、Gタンパク質、Gタンパク質の二量体もしくはサブユニットについてのペプチド、A1アデノシン受容体についてのシグナル伝達経路アッセイ、例えばGTP結合アッセイに関与する他のタンパク質、またはこれらのタンパク質についてのペプチド、オリゴヌクレオチドまたはエピトープに挿入されているもの。あるいは、TRFアッセイにおいて、フルオロフォアはA1アデノシン受容体シグナル伝達経路のタンパク質または分子、例えば限定されるものではないが、A1アデノシン受容体タンパク質またはペプチド、Gタンパク質、Gタンパク質の二量体もしくはサブユニット、Gタンパク質、Gタンパク質の二量体もしくはサブユニットについてのペプチド、これらのタンパク質についての他のタンパク質、融合タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、もしくはエピトープ、もしくはA1アデノシン受容体についてのシグナル伝達経路アッセイに関与する分子、またはこれらのタンパク質または分子に挿入または共役したタグにキレートされ、抱合され、結合し、または共役していてよい。
【0040】
あるいは、TRFアッセイにおいて、フルオロフォアはA1アデノシン受容体シグナル伝達経路のタンパク質または分子、例えば限定されるものではないが、A1アデノシン受容体タンパク質またはペプチド、Gタンパク質、Gタンパク質の二量体、もしくはサブユニット、Gタンパク質、Gタンパク質の二量体、もしくはサブユニットのペプチド、これらのタンパク質についての他のタンパク質、融合タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、もしくはエピトープ、もしくはA1アデノシン受容体についてのシグナル伝達経路アッセイに関与する分子、またはこれらのタンパク質もしくは分子に挿入または共役したタグに対する抗体にキレートされ、抱合され、結合し、または共役していてよい。
【0041】
TRFアッセイにおいて使用するためのフルオロフォアを結合またはキレートするために用いられうる付加的タグは、可溶化タグ、チオレドキシンおよびポリ(NANP)を含み、細菌内で発現している組換えタンパク質用に用いられうる。TRFアッセイのためのフルオロフォアを結合またはキレートするのに有用な他のタグは、エピトープタグ、例えばV5タグ、c−mycタグ、およびHAタグを含む。TRFアッセイにおいてフルオロフォアをタンパク質、ペプチド、分子、エピトープ、またはオリゴヌクレオチドに共役、結合、またはキレート化するための付加的タグは、イソペプタグ(isopeptag)、ビオチンカルボキシルキャリアータンパク質(BCCP)、カルモジュリンタグ、nusタグ、Sタグ、ソフタグ1(Softag 1)、ソフタグ2(Softag 2)、ストレプタグ(strep-tag)、SBTタグ、およびTyタグを含む。
【0042】
あるいは、TRFアッセイにおいて、フルオロフォアは、他のタンパク質、例えばストレプトアビジン、例えばLanthaScreen(登録商標)製品に見られるタンパク質にキレートされ、共役し、抱合され、または結合していてよく、それは、ビオチンに対するその高親和性のために、ビオチンタグ付けしたタンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、もしくはエピトープ、ビオチンタグ付けしたタンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、もしくはエピトープに対する抗体、ビオチンタグ付けしたタグに対する抗体、またはビオチンタグ付けしたA1アデノシン受容体結合またはシグナル伝達経路に関与するこれらの分子についての他の分子または抗体と反応しうる。例えば、1つのそのようなTRFアッセイにおいて、フルオロフォアはストレプトアビジンに結合し得、ついでGαiサブユニットタンパク質についてのビオチン化ペプチドに結合しうる。あるいは、TRFアッセイにおいて、フルオロフォアはELISAsに通常用いられ、アッセイ開発の当業者に知られている酵素または酵素についての基質にキレートされ、共役し、または結合していてよい。酵素のいくつかの例は、限定されるものではないが、グリコシダーゼ、ホスファターゼ、オキシダーゼ、ペプチダーゼ、プロテアーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、アルカリホスファターゼ、α−グリセロホスフェート、デヒドロゲナーゼ、アスパラギナーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−V−ステロイドイソメラーゼ、カタラーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、リボヌクレアーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ウレアーゼ、および酵母アルコールデヒドロゲナーゼを含む。酵素についての基質のいくつかの例は、限定されるものではないが、テトラメチルベンゼン(TMB)、o−フェニレンジアミン(OPD)、クマリン基質、例えば7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン(4−メチルウンベリフェロン、4−MU)の有機および無機エステルならびにグリコシドならびに7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC)のアミド、フルオレセイン基質、ナフチル基質、およびレゾルフィンに由来する基質などを含む。例えば、TRFアッセイにおいて、フルオロフォアは、NF−κβサブユニット、p65組換えタンパク質に挿入されたタグ、例えばGSTタグに対する抗体にキレートされていてよい。別のTRFアッセイでは、第1結合パートナーフルオロフォアにキレートされている抗GST抗体は、NF−κβサブユニット、p65組換えタンパク質に挿入されたGSTタグと相互作用し、次いで第2結合パートナーフルオロフォアで標識されたストレプトアビジンと結合したビオチン化NF−κβ特異的dsDNAと相互作用する。
【0043】
あるいは、TRFアッセイにおいて、フルオロフォアは、A1アデノシン受容体に結合するアンタゴニストおよびアゴニストを含むA1アデノシン受容体リガンド、例えばLPSにキレートされ、抱合され、結合し、共役し、またはタグ付けされていてよい。あるいは、TRFアッセイ形式において、フルオロフォアは、A1アデノシン受容体についてのシグナル伝達経路アッセイでA1アデノシン受容体の活性化後に測定されうるシグナル伝達分子、GTP、Gタンパク質、Gタンパク質の二量体、もしくはサブユニット、Gタンパク質またはGタンパク質の二量体もしくはサブユニットのペプチド、タンパク質、例えばインターロイキン−6(IL−6)もしくはNF−κβについてのサブユニット、または他のシグナル伝達経路分子、例えばcAMPもしくはトロンボキサンにキレートされ、共役し、またはタグ付けされていてよい。あるいは、TRFアッセイ形式において、フルオロフォアは、タンパク質、例えばIL−6もしくはNF−κβについてのサブユニット、該タンパク質についてのペプチド、エピトープ、もしくはオリゴヌクレオチド、該タンパク質に挿入されたタグ、またはシグナル伝達分子、GTP、もしくは他のシグナル伝達経路分子、例えばcAMPまたはトロンボキサンに対する抗体にキレートされ、またはタグ付けされていてよい。
【0044】
A1アデノシン受容体TRFアッセイにおいてフルオロフォアと共役しうるA1アデノシン受容体リガンドのリストは、限定されるものではないが、A1アデノシン受容体を活性化するアゴニスト、例えばN6シクロペンチルアデノシン(CPA)、2−クロロ−N−シクロペンチルアデノシン(CCPA)、2−クロロ−N−[(R)−[(2−ベンゾチアゾリル)チオ]−2−プロピル]−アデノシン)(NNC−21−0136)、2’−O−メチル−N−シクロヘキシルアデノシン(SDZ WAG94)、[1S−[1α,2β,3β,4α(S)]]−4−[7−[[1−[(3−クロロチエン−2−イル)メチル]プロピル]アミノ]−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリド−3−イル]N−エチル2,3−ジヒドロキシシクロペンタンカルボキサミド(AMP579)、テカデノソン(2R,3S,4R)−2−(ヒドロキシメチル)−5−(6−((R)−テトラヒドロフラン−3−イルアミノ)−9H−プリン−9−イル)テトラヒドロフラン−3,4−ジオール)、セロデノソン(2S,3S,4R)−5−(6−(シクロペンチルアミノ)−9H−プリン−9−イル)−N−エチル−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−2−カルボキサミド)およびPJ−875、2S,3S,4R)−2−((2−フルオロフェニルチオ)メチル)−5−(6−((1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンチル−アミノ)−9H−プリン−9−イル)テトラヒドロフラン−3,4−ジオール(CVT−3619)、3R,4S,5R)−2−(6−((1S,2S)−2−ヒドロキシシクロペンチルアミノ)−9H−プリン−9−イル)−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−3,4−ジオール(GR79236)、1S,2R,3R)−3−((トリフルオロメトキシ)メチル)−5−(6−(1−(5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)ピロリジン−3−イルアミノ)−9H−プリン−9−イル)シクロペンタン−1,2−ジオール(ARA)、カパデノソン(2−アミノ−6−((2−(4−クロロフェニル)チアゾール−4−イル)メチルチオ)−4−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)ピリジン−3,5−ジカルボニトリル、Bay−68−4986)、2−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン−3−イル)(4−クロロフェニル)メタノン(T−62)またはLPSを含む。
【0045】
A1アデノシン受容体TRFアッセイにおいてフルオロフォアと共役しうるA1アデノシン受容体リガンドのこのリストは、限定されるものではないが、A1アデノシン受容体アンタゴニスト、例えば1、3 ジプロピル−8−シクロペンチルアデノシン(DPCPX)、1,3−ジプロピル−8−(2−(5,6−エポキシ)ノルボルニル)キサンチン(BG−9719)、3−[4−(2,6−ジオキソ−1,3−ジプロピル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H−プリン−8−イル)−ビシクロ[2.2.2]オクト−1−イル]−プロピオン酸(BG−9928)、8−ノルアダマンチル−1,3−ジプロピルキサンチン(KW3902)、3−[2−(4−アミノフェニル)−エチル]−8−ベンジル−7−{2−エチル−(2−ヒドロキシ−エチル)−アミノ]−エチル}−1−プロピル−3,7−ジヒドロ−プリン−2,6−ジオン(L−97−1)、4−(2−フェニル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルアミノ)シクロヘキサノール(SLV320)、3−(4−アミノ)フェネチル−1−プロピル−8−シクロペンチルキサンチン(BW A844U)、8−シクロペンチル−3−(3−((4−フルオロスルホニルベンゾイル)−オキシ)プロピル)−1−プロピルキサンチン(FSCPX)、バミフィリン、N6エンドノルボルナン−2−イル−9−メチルアデニン(N−0861)、およびC8−(N−メチルイソプロピル)−アミノ−N6−(5’−エンドヒドロキシ)−エンドノルボルナン−2−イル−9−メチルアデニン(WRC−0571)も含む。
【0046】
当該技術分野で知られているA1アデノシン受容体アンタゴニストは、例えば、米国特許第5,786,360号、米国特許第6,489,332号、米国特許第7,202,252B2号、米国特許第7,247,639B2号、および同時係属の米国出願第10/560,853号、タイトル「Aアデノシン受容体アンタゴニスト」(2004年6月7日出願)、米国出願第13/010,152号、タイトル「A1アデノシン受容体診断プローブ」(2011年1月20日出願)、およびPCT/US2008/087638、タイトル「Aアデノシン受容体アンタゴニスト」(2008年12月19日出願)に記載されている化合物を含む(これらの全ては参照することによって本明細書で援用される。
【0047】
A1アデノシン受容体TRFアッセイとしての開発に適切なA1アデノシン受容体シグナル伝達経路のリストは、限定されるものではないが、GTP、アデニル酸シクラーゼ、ホスホリパーゼC(PLC)、ホスホイノシチド−3キナーゼ(PI3K)、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPKs)、細胞外受容体シグナル誘導キナーゼ(ERK)、ホスホリパーゼA2(PLA)、およびタンパク質キナーゼC(PKC)を含む。
【0048】
フルオロフォアにタグ付けするのに適切なA1アデノシン受容体シグナル伝達経路と関連する分子は、限定されるものではないが、Gタンパク質、Gタンパク質の二量体、サブユニット、およびペプチド、Gタンパク質の二量体、およびサブユニット、cAMP、NF−κBおよびNF−κBのサブユニット、IP3、DAG、インターロイキン−6(IL−6)、p38、熱ショックタンパク質、トロンボキサン、マトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metaloproteinanses)、ならびに増殖因子を含む。さらに、フルオロフォアでタグ付けするのに適切なA1アデノシン受容体シグナル伝達経路と関連する他のエフェクターは、カリウムチャネルおよびカルシウムチャネルについてのタンパク質、ならびにイオン、例えばカリウムおよびカルシウムを含む。
【0049】
均一TRFアッセイ、例えばTR−FRET技術は、ドナーおよびアクセプターフルオロフォア対合、すなわち複数のフルオロフォアを含み、GPCRs、例えばA1アデノシン受容体についてのリガンド結合アッセイおよび機能アッセイの両方を含み、不均一アッセイの洗浄および濾過または洗浄ステップを必要としない均一アッセイ形式において、バックグラウンドノイズが低く、高感度および特異性を有する。均一TR−FRET(HTRF)アッセイにおいて、フルオロフォアを有する2つの標識パートナーがエネルギー移動に要求される。このエネルギー移動は、2つの分子が互いに直接近接している場合にのみ生じる。第1フルオロフォアはエネルギードナーとして作用し、第2フルオロフォアはエネルギーアクセプターとして作用する。エネルギー移動の効率は、長寿命蛍光ドナー色素と短寿命蛍光アクセプター色素の間の距離の関数である。TR−FRETアッセイにおいて最もよく用いられるドナーランタニドは、ユーロピウムおよびテルビウムである。他のドナーランタニドは、サマリウムおよびジスプロシウムを含む。多数の共鳴エネルギーアクセプターがあり、XL665(アロフィコシアニン)、d2、フィコビリタンパク質、テトラメチルローダミン、フルオレセイン、チオニン、Rフィコシアニン、フィコエリトロシアニン、およびCフィコエリトリンなどを含む。本発明における使用に適切なさらなる例は、米国特許第6,908,769号(その全体において参照することによって本明細書に援用される)に見ることができる。HTRFアッセイにおいて最もよく用いられるエネルギー移動アクセプターは、d2またはXL665である。337nmの励起で高FRET効率を生じるHTRFアッセイにおける典型的なドナー/アクセプターペアは、620nmの発光を有するドナーとしてのユーロピウムクリプテートおよび665nmの発光を有するアクセプターとしてのXL665である。エネルギー移動過程における長寿命発光(ドナーとしてのユーロピウムクリプテートの長蛍光寿命のために)と比較した遊離アクセプター、XL665の自然な短寿命蛍光発光は、結合XL665(XL665でタグ付けした分子が、ユーロピウムクリプテートでタグ付けした分子と非常に近接したときに、エネルギー移動の間に生じる)と遊離XL665の間の明確な区別を可能にする。
【0050】
HTRF/TR−FRETアッセイと関連する多数の利点、例えば均一アッセイ形式、迅速性、高感度および特異性、低バックグラウンドノイズ、培地バックグラウンド、例えば血漿からの干渉が少ないという頑健性、膜内で発現しているGPCRsでの使用において適切なこと、二価イオン、例えばMg2+または他のアッセイ添加物、例えばDMSOおよびEDTAに対する認容性、ならびにアッセイの適応性、例えばハイスループットスクリーニング、自動液体ハンドリング、および小型化への適応可能性がある。さらに、HTRFアッセイは、特定のGPCRsおよびタンパク質で実施することを一度開発および決定すると容易に行うことができ、それゆえ使いやすく、通常、結果が2時間以内に入手できる。
【0051】
HTRF、TR−FRETアッセイの例は、米国特許第7,674,584号、米国特許第5,998,146号、米国特許第5,512,493号、米国特許第5,527,684号、米国特許第6,352,672号、米国特許第5,220,012号、米国特許第5,432,101号、米国特許第5,457,185号、米国特許第5,534,622号、米国特許第5,346,996号、米国特許第5,162,508号、米国特許第5,512,493号、米国特許第5,627,074号、米国特許第5,527,684号、米国特許第6,515,113号、米国特許第6,864,103号、米国特許第7,442,558号、米国特許第6,406,297号、米国特許第7,018,850号、および米国特許第7,404,912号、ならびに米国特許出願第20040115130号、米国特許出願第20060024775号、米国特許出願第20060292651号、米国特許出願第20070243568号、および米国特許出願第20070207532号に見ることができる(それらの全体において参照することによって本明細書に援用される)。
【0052】
A1アデノシン受容体タンパク質源は、本発明のアッセイと適合するいずれかの形態で提供することができる。A1アデノシン受容体は、細胞、例えば限定されるものではないが、植物、酵母、CHO、またはSf9細胞に安定にトランスフェクトされた組換えタンパク質であってよい。これらの細胞などに由来する膜は、TRFアッセイのためのA1アデノシン受容体タンパク質源を提供するために利用することができる。他のA1アデノシン受容体タンパク質源は、他の細胞型、組織、植物、細菌、酵母、およびA1アデノシン受容体タンパク質を安定に発現している細胞、組織、植物、細菌、もしくは膜から単離された、可溶化もしくは精製されたA1アデノシン受容体タンパク質、または組換えA1アデノシン受容体タンパク質を含む。アッセイの当業者であれば、許容される形態のA1アデノシン受容体タンパク質を容易に決定および提供することができるであろう。
【0053】
アッセイを行うにあたって、選択されたTRFアッセイは、不均一であっても均一であっても、試験の製造者からのプロトコール、ならびにA1アデノシン受容体およびLPSを用いるこれらのアッセイの熟練の使用者によって決定されなければならない緩衝液および溶液特性を用いて調整される。一度開発されると、試験サンプルはサンプル中に存在しているLPSの量の定量についてのアッセイに導入される。その結果は、アッセイにおいて既知量のLPSを含有するサンプルで作成されたLPSについての標準曲線から決定することができる。サンプル中のLPSの存在および量またはレベルの決定は、動物の敗血症、グラム陰性感染、またはLPS関連状態の診断に用いられうる。本発明は、サンプル中のLPSの検出および測定のためのキット、ならびに動物の敗血症、グラム陰性感染、またはLPS関連状態の診断のための使用方法も提供する。キットは、サンプル中のLPSレベルを測定するために提供される。これらのキットは、A1アデノシン受容体タンパク質源、少なくとも1つのフルオロフォア、A1アデノシン受容体TRFアッセイおよびLPSに特異的な緩衝液、ならびにLPS標準を含む。1つの実施態様では、キットはA1アデノシン受容体TRF GTP結合アッセイを行うために、フルオロフォアとしてGTP−ランタニド、例えばユーロピウムにキレートされているGTP(Eu−GTP)を提供する。
【0054】
以下の非限定的実施例は、本発明の実施態様をさらに説明するために提供されている。
【実施例】
【0055】
実施例1.
組換えラットA1アデノシン受容体を発現しているCHO細胞からの膜の調製
1.170 x gで10分間遠心分離することによって懸濁液からCHO細胞を収集する。
2.1容積(50mL)のPBSで細胞を2回洗浄する。
**残りのステップは全て氷上または4℃で実施される**
3.冷却した緩衝液Aにペレットを再懸濁する(元々の培養容積50mL当たり5mL)。
4.細胞をポリトロン(ブリンクマン社)で20秒間ホモジナイズする。
5.ホモジネートを1000 x gで、4℃で10分間遠心分離する。
6.上清を収集し、30,000 x gで30分間遠心分離する。
7.上清を捨て、ペレットを保存する。
8.緩衝液Aでペレットを2回洗浄する。
9.ペレットを緩衝液B中でピペッティングすることによって穏やかに再懸濁し、2mgタンパク質/mLの最終濃度を達成する
10.膜懸濁液を25μL単位の一定分量に分注し、急速凍結(snap freeze)する。
11.膜懸濁液の一定分量を−80℃で保存する。
【表1】
【0056】
実施例2.
CHO細胞内で発現している組換えラットA1アデノシン受容体についての、[3H]1,3ジプロピル−8−シクロペンチルキサンチン(DPCPX)の親和性を決定するための飽和結合研究
飽和結合アッセイのために、組換えラットA1アデノシン受容体(5〜20μgタンパク質/ウェル)で安定にトランスフェクトされたCHO細胞から調製された膜を、ウェル毎に濃度を増加させた[3H]−DPCPX(パーキンエルマー社、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)(0.01nM〜10nM)と共に、200μLの最終アッセイ容積でインキュベートする。各濃度の[3H]−DPCPXについて、全結合および非特異的結合を3回決定する。全結合は競合リガンドの非存在下で定義され、非特異的結合はDPCPX(シグマ・アルドリッチ社、セントルイス、ミズーリ州)(10μM)の存在下で決定される。DPCPXストック溶液はDMSO中で調製される(アッセイ中のDMSOの最終濃度は、≦0.01%である)。アッセイ緩衝液は、50mM Tris HCl(pH7.4)、10mM MgCl、およびアデノシンデアミナーゼ(シグマ・アルドリッチ社)(0.2ユニット/mL)からなる。全アッセイ成分をポリプロピレン製の、ディープウェルプレート(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、ウォルサム、マサチューセッツ州)に添加し、次いでプレートを穏やかに攪拌し、成分を混合する。アッセイは無菌技術、無菌試薬、および無菌消耗品を用いて行われる。膜を60分間25℃でインキュベートし、次いで、自動真空マニホールド(Mach III、トムテック社、ハムデン、コネチカット州)を用いて、GF/B濾過マット(パーキンエルマー社)に通す迅速濾過によってアッセイを終結させる。各ウェルを、300μLの氷冷洗浄緩衝液(Tris−HCl[50mM、pH7.4]およびMgCl[10mM])で迅速に4回洗浄する。濾過マットを乾燥し、固体シンチラント(scintillant)(パーキンエルマー社)にはめ込み、シンチレーションカウンター(1450Microbeta、パーキンエルマー社)を用いて3時間計数する。アッセイ用に希釈した膜サンプルの一定分量を、基準としてBSAを用いるBCAアッセイ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて全タンパク質を定量化するために用いる。[3H]−DPCPXの各濃度について、データを、特異的CPM結合(CPM bound)(全CPM結合と非特異的CPM結合の間の差異)として表し、次いでfmol/mgタンパク質に変換する。データは[3H]−DPCPXの濃度に対する特異的結合(fmol/mgタンパク質)としてプロットし、次いでワンサイトモデル(one-site model)を用いる非線形回帰(曲線適合)によって分析し、KおよびBmax(GraphPad Prism、バージョン5.01、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)を決定する。最低でも3つの独立した実験からの最終データを、平均値±SEMとして表す。
【0057】
実施例3.
[3H]−DPCPXで標識されたCHO細胞由来の膜内で発現している組換えラットA1アデノシン受容体についての、BW A844U−Euの親和性(Ki)を決定するための競合結合研究
競合結合アッセイ用に、組換えラットA1アデノシン受容体(5〜20μgタンパク質/ウェル)で安定にトランスフェクトされたCHO細胞から調製された膜を、[3H]−DPCPX(飽和結合研究で定義されているKで)と共に、200μLの最終アッセイ容積でインキュベートする。全結合は競合リガンドの非存在下で定義され、非特異的結合はDPCPX(10μM)の存在下で決定される。アッセイ緩衝液は、50mM Tris HCl(pH7.4)、10mM MgCl、およびアデノシンデアミナーゼ(0.2ユニット/mL)からなる。ユーロピウムと共役したBW A844U(BW A844U−Eu)を、0.01nM〜10μMの範囲の濃度で評価する。BW A844U−Euストック溶液をDMSO中で調製する(アッセイ中のDMSOの最終濃度は、≦0.01%である)。コントロールリガンドはCPA(N−シクロペンチルアデノシン)(シグマ・アルドリッチ社、セントルイス、ミズーリ州)(0.01nM〜10μM)およびDPCPX(0.01nM〜10μM)である。DPCPXおよびCPAのストック溶液は、DMSO中で調製する(アッセイ中のDMSOの最終濃度は、≦0.01%である)。各アッセイポイントを3回評価する。全アッセイ成分をポリプロピレン製の、ディープウェルプレート(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)に添加し、プレートを穏やかに攪拌し、成分を混合する。アッセイは、無菌技術、無菌試薬、および無菌消耗品を用いて行われる。膜を60分間25℃でインキュベートし、次いで真空マニホールド(Mach III、トムテック社、ハムデン、コネチカット州)を用いて、GF/B濾過マット(パーキンエルマー社)に通す迅速濾過によってアッセイを終結させる。各ウェルを300μLの氷冷洗浄緩衝液(Tris−HCl[50mM、pH7.4]およびMgCl[10mM])で迅速に4回洗浄する。濾過マットを乾燥し、固体シンチラント(scintillant)(パーキンエルマー社)にはめ込み、次いでシンチレーションカウンター(1450Microbeta、パーキンエルマー社)を用いて3時間計数する。各濃度の試験リガンドについて、パーセント特異的結合を、[(結合−非特異的結合)/(全結合−非特異的結合)]100として計算する。データを競合リガンドのlog濃度に対するパーセント特異的結合としてプロットする。競合的結合モデルを用いる非線形回帰(曲線適合)によってデータを分析し、Ki(GraphPad Prism、バージョン5.01)を決定する。最低でも3つの独立した実験からの最終データを、平均値±SEMとして表す。
【0058】
実施例4.
CHO細胞由来の膜内で発現している組換えラットA1アデノシン受容体についての、BW A844U−Euに対する親和性(K)を決定するための時間分解蛍光(TRF)飽和結合研究
TRF飽和結合アッセイのために、組換えラットA1アデノシン受容体(5〜20μgタンパク質/ウェル)で安定にトランスフェクトされたCHO細胞から調製された膜を、ウェル毎に濃度を増加させたBW A844U−Eu(0.01nM〜1μM)と共に200μLの最終アッセイ容積でインキュベートする。BW A844U−Euストック溶液をDMSO中で調製する(アッセイ中のDMSOの最終濃度は、≦0.01%である)。BW A844U−Euの各濃度について、全結合および非特異的結合を決定する。全結合は競合リガンドの非存在下で定義される。非特異的結合はN−R−フェニルイソプロピルアデノシン(R−PIA、シグマ・アルドリッチ社)(100μM)の存在下で決定される。R−PIAストック溶液は、エンドトキシンを含まない水で調製する。アッセイ緩衝液は、50mM Tris HCl(pH7.4)、10mM MgCl、およびアデノシンデアミナーゼ(0.2ユニット/mL)からなる。各アッセイポイントは3回評価する。全アッセイ成分をAcrowell(商標)96ウェルフィルタープレート(ポール・ライフ・サイエンス社、アナーバー、ミシガン州)に添加し、プレートを穏やかに攪拌し、成分を混合する。アッセイは無菌技術、無菌試薬、および無菌消耗品を用いて行われる。膜を60分間25℃でインキュベートし、次いで真空マニホールド(ポール・ライフ・サイエンス社)を用いるAcrowell(商標)フィルタープレートのBioTraceポリビニリデンフルオライドフィルターを通す迅速濾過によって、アッセイを終結させる。各ウェルを300μLの氷冷洗浄緩衝液(Tris−HCl[50mM、pH7.4]およびMgCl[10mM])で迅速に4回洗浄する。各ウェルの蛍光は、TRFが可能なマイクロプレートリーダー(Infinite F−200 PRO、テカン社、グレーディヒ、オーストリア)で、320nmの励起および620nmの発光で測定する。アッセイ用に希釈した膜サンプルの一定分量を、基準としてBSAを用いるBCAアッセイ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて全タンパク質を定量化するために用いる。BW A844U−Euの各濃度について、データは特異的結合(全結合と非特異的結合の間の差異)として表し、次いでfmol/mgタンパク質に変換する。データをBWA844U−Euの濃度に対する特異的結合(fmol/mgタンパク質)としてプロットし、次いで、ワンサイトモデル(one-site model)を用いる非線形回帰(曲線適合)によって分析し、KおよびBmaxを決定する(GraphPad Prism、バージョン5.01)。少なくとも3つの独立した実験からの最終データは、平均値±SEMとして表す。
【0059】
実施例5.
リポ多糖(LPS)/エンドトキシンについてのA1アデノシン受容体TRF競合結合アッセイ
競合結合アッセイのために、組換えラットA1アデノシン受容体(5〜20μgタンパク質/ウェル)で安定にトランスフェクトされたCHO細胞から調製された膜を、BW A844U−Euと共に、上記の飽和結合研究によって決定されたKでインキュベートする。全結合は競合リガンドの非存在下で定義される。非特異的結合はN−R−フェニルイソプロピルアデノシン(R−PIA)(100μM)の存在下で決定される。R−PIAストック溶液はエンドトキシンを含まない水で調製される。アッセイ緩衝液は、50mM Tris HCl(pH7.4)、10mM MgCl、およびアデノシンデアミナーゼ(0.2ユニット/mL)からなる。試験リガンドはLPS/エンドトキシン(USP社、ロックビル、メリーランド州)(0.01−750ng/mL)[またはポジティブコントロールとしてのCPA)(0.01nM−1μM)]である。LPSストック溶液は、10,000エンドトキシンユニット(1000ngに相当)を、333μLのエンドトキシンを含まない水に溶解することによって調製される。CPAストック溶液は、DMSO中で調製される(アッセイ中のDMSOの最終濃度は、≦0.01%である)。最終アッセイ容積は200μLである。各アッセイポイントを3回評価する。全アッセイ成分をAcrowell(商標)96ウェルフィルタープレート(ポール・ライフ・サイエンス社)に添加し、次いでプレートを穏やかに攪拌し、成分を混合する。アッセイは無菌技術、無菌試薬、および無菌消耗品を用いて行われる。アッセイ成分を60分間25℃でインキュベートし、次いで真空マニホールド(ポール・ライフ・サイエンス社)を用いるAcrowell(商標)フィルタープレートのBioTraceポリビニリデンフルオライドフィルターを通す迅速濾過によって、アッセイを終結させる。各ウェルを300μLの氷冷洗浄緩衝液(Tris−HCl[50mM、pH7.4]およびMgCl[10mM])で迅速に2〜4回洗浄する。各ウェルの蛍光を、TRFが可能なマイクロプレートリーダー(Infinite F−200 PRO、テカン社、グレーディヒ、オーストリア)で、320nmの励起および620nmの発光で測定する。各濃度の試験リガンドについて、パーセント特異的結合を、[(結合−非特異的結合)/(全結合−非特異的結合)]100として計算する。データは競合リガンドの濃度[logモル濃度(CPA)およびlog g/mL(LPS)]に対するパーセント特異的結合としてプロットし、次いで競合的結合モデルを用いた非線形回帰(曲線適合)によって分析し、Ki(GraphPad Prism、バージョン5.01)を決定する。最低でも3つの独立したアッセイからの最終データは、平均値±SEMとして表す。
【0060】
実施例6.
フルオロフォア、U−Lightでタグ付けした組換えラットA1アデノシン受容体アクセプターについてのポリクローナル抗体の、[3H]DPCPXの結合に対する効果を測定するためのA1アデノシン受容体飽和結合研究
組換えラットA1アデノシン受容体(5〜20μgタンパク質/ウェル)で安定にトランスフェクトされたCHO細胞から調製された膜を、ウェル毎に濃度を増加させた[3H]−DPCPX(パーキンエルマー社、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)(0.01nM〜10nM)と共に、アクセプターフルオロフォア、ULight(パーキンエルマー社)でタグ付けした組換えラットA1アデノシン受容体についてのポリクローナル抗体(1:10〜1:10,000)の存在下または非存在下でインキュベートする。各濃度の[3H]−DPCPXについて、抗体有りおよび無しで、全結合および非特異的結合を決定する。全結合は競合リガンドの非存在下で定義される。非特異的結合はDPCPX(シグマ・アルドリッチ社、セントルイス、ミズーリ州)(10μM)の存在下で決定される。DPCPXストック溶液はDMSO中で調製される(アッセイ中のDMSOの最終濃度は、≦0.01%である)。アッセイ緩衝液は、50mM Tris HCl(pH7.4)、10mM MgCl、およびアデノシンデアミナーゼ(シグマ・アルドリッチ社)(0.2ユニット/mL)からなる。全アッセイ容積は200μLである。各アッセイポイントは3回評価する。全アッセイ成分をポリプロピレン製の、ディープウェルプレート(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、ウォルサム、マサチューセッツ州)に添加し、次いでプレートを穏やかに攪拌し、成分を混合する。アッセイは無菌技術、無菌試薬、および無菌消耗品を用いて行われる。膜を60分間25℃でインキュベートし、次いで、自動真空マニホールド(Mach III、トムテック社、ハムデン、コネチカット州)を用いてGF/B濾過マット(パーキンエルマー社)を通す迅速濾過によって、アッセイを終結させる。各ウェルを300μLの氷冷洗浄緩衝液(Tris−HCl[50mM、pH7.4]およびMgCl[10mM])で迅速に4回洗浄する。濾過マットを乾燥し、固体シンチラント(scintillant)(パーキンエルマー社)にはめ込み、シンチレーションカウンター(1450Microbeta、パーキンエルマー社)を用いて3時間計数する。アッセイ用に希釈した膜サンプルの一定分量を、基準としてBSAを用いるBCAアッセイ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて全タンパク質を定量化するために用いる。データは特異的CPM結合(全CPM結合と非特異的CPM結合の間の差異)として表し、[3H]−DPCPXの濃度に対する特異的結合(fmol/mgタンパク質)としてプロットし、次いでワンサイトモデル(one-site model)を用いる非線形回帰(曲線適合)によって分析し、KおよびBmax(GraphPad Prism、バージョン5.01、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)を決定する。最低でも3つの独立した実験からの最終データ(KおよびBmax)は、平均値±SEMとして表す。アクセプターフルオロフォア、ULightでタグ付けした組換えラットA1アデノシン受容体についてのポリクローナル抗体の、A1アデノシン受容体リガンド認識部位に対する効果を評価するために、独立データ(unpaired data)についてのスチューデントt−検定を用い、[3H]−DPCPXのKおよびBmaxを抗体の非存在下および存在下で比較する。P値<0.05であれば、有意に異なると考えられる。
【0061】
実施例7.
リポ多糖(LPS)/エンドトキシンについての標準曲線を作成し、試験サンプル中のLPSのレベルを測定するための、A1アデノシン受容体均一時間分解蛍光(HTRF)競合アッセイ
標準LPS/エンドトキシン標準曲線を作成するために、組換えラットA1アデノシン受容体(5〜20μgタンパク質/ウェル)を発現しているCHO細胞膜を、アクセプターフルオロフォア、ULight(パーキンエルマー社)でタグ付けした組換えラットA1アデノシン受容体についてのポリクローナル抗体(1:10〜1:10,000)およびBW A844U−Eu(0.5〜20nM)(上記の飽和結合研究によって決定されたおおよそのK)の存在下で、Greiner white96ウェルプレート(グライナー・バイオワン・ノースアメリカ社、モンロー、ノースカロライナ州)内でインキュベートする。全結合は試験リガンドの非存在下で定義され、非特異的結合はR−PIA(100μM)の添加によって定義される。活性化リガンド、LPS/エンドトキシン(USP社、ロックビル、メリーランド州)は、0.01〜750ng/mLの範囲の8つの濃度で評価される。LPS/エンドトキシンストック溶液は、10,000エンドトキシンユニット(1000ngに相当)を333μLのエンドトキシンを含まない水に溶解することによって調製される。付加的アッセイ成分は、アッセイ緩衝液(Tris−HCl[50mM、pH7.4]、MgCl[10mM]、およびアデノシンデアミナーゼ(0.2ユニット/mL)を含む。全アッセイ容積は200μLである。各アッセイポイントは3回評価する。全アッセイ成分をプレートに添加し、次いでプレートを穏やかに攪拌し、成分を混合する。アッセイは無菌技術、無菌試薬、および無菌消耗品を用いて行われる。膜を60分間25℃でインキュベートする。インキュベーション後、HTRFが可能なマイクロプレートリーダー(Infinite F−200 PRO、テカン社、グレーディヒ、オーストリア)で、320nmの励起ならびに665および620nmでの発光で、蛍光を測定する。全測定(total)、非特異的測定(nonspecific)、およびLPSについてのデータは、665と620での測定の比(665/620)として表す。次いで、基礎活性を、全比測定と非特異的比測定の間の差異として計算する。LPSについてのパーセント(%)基礎活性は、以下のように計算する:[(試験条件−非特異的)/(基礎活性)]100。LPSについての濃度反応曲線は、LPS(g/mL)のlog濃度に対する%基礎活性の関数としてプロットする。この曲線を、勾配変化のある法面(variable slope)を有するS字型の用量反応曲線を用いる非線形回帰(GraphPad Prism、バージョン5.04、グラフパッド・ソフトウェア社、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)によって分析し、EC50を決定する。各標準曲線は、最低でも3つの独立した実験を表し、最終データは平均値±SEMとして表す。
【0062】
試験サンプル中のLPS/エンドトキシンレベルを測定するために、組換えラットA1アデノシン受容体(5〜20μgタンパク質/ウェル)を発現しているCHO細胞膜を、アクセプターフルオロフォア、ULight(パーキンエルマー社)でタグ付けしたラットA1アデノシン受容体についてのポリクローナル抗体(1:10〜1:10,000)およびBW A844U−Eu(0.5〜20nM)(上記の飽和結合研究によって決定されたおおよそのK)ならびに試験サンプルまたはLPS(10pg/mL 1ng/mL、10ng/mL、および100ng/mL)を含むポジティブコントロールの存在下で、Greiner white96ウェルプレート(グライナー・バイオワン・ノースアメリカ社、モンロー、ノースカロライナ州)内でインキュベートする。全結合は競合リガンドの非存在下で定義される。非特異的結合はN−R−フェニルイソプロピルアデノシン(R−PIA)(100μM)の存在下で決定される。R−PIAストック溶液はエンドトキシンを含まない水で調製される。ポジティブLPSコントロール用に、エンドトキシンストック溶液を、10,000エンドトキシンユニット(1000ngに相当)を333μLのエンドトキシンを含まない水に溶解することによって調製する。付加的アッセイ成分は、アッセイ緩衝液(Tris−HCl[50mM、pH7.4]、MgCl[10mM]、およびアデノシンデアミナーゼ(0.2ユニット/mL)を含む。全アッセイ容積は200μLである。各アッセイポイントは3回評価する。全アッセイ成分をプレートに添加し、次いでプレートを穏やかに攪拌し、成分を混合する。アッセイは無菌技術、無菌試薬、および無菌消耗品を用いて行われる。膜を60分間25℃でインキュベートする。インキュベーション後、HTRFが可能なマイクロプレートリーダー(Infinite F−200 PRO、テカン社、グレーディヒ、オーストリア)で、320nmの励起ならびに665および620nmでの発光で蛍光を測定する。全測定(total)、非特異的測定(nonspecific)、試験サンプル、およびポジティブLPSコントロールについてのデータは、665と620での測定の比(665/620)として表す。次いで、基礎活性を、全比測定と非特異的比測定の間の差異として計算する。試験サンプルまたはポジティブLPSコントロールについてのパーセント(%)基礎活性は、次のように計算する:[(試験条件−非特異的)/(基礎活性)]100。試験サンプルまたはポジティブコントロール中のLPSのレベルは、サンプルまたはポジティブコントロールについての%基礎活性の単位で表した蛍光測定を、上記のHTRF競合アッセイでLPSについての標準曲線を作成するための既知濃度のLPSを添加されたサンプルについての%基礎活性測定と比較することによって、LPSについての標準曲線から決定される。
【0063】
実施例8.
リポ多糖(LPS)/エンドトキシンについての標準曲線を作成し、試験サンプル中のLPSのレベルを測定するための、A1アデノシン受容体TRF Eu−GTP結合アッセイ
標準LPS/エンドトキシン標準曲線を作成するために、組換えラットA1アデノシン受容体を発現しているCHO細胞(1ユニット/ウェル、およそ20μgタンパク質/ウェルに相当;パーキンエルマー社、ウォルサム、マサチューセッツ州)から調製された膜を、Acrowellフィルタープレート(ポール・ライフ・サイエンス社、アナーバー、ミシガン州)内で、LPS/エンドトキシン(USP社、ロックビル、メリーランド州)(0.01〜750ng/mL)の存在下でプレインキュベートする。エンドトキシンストック溶液は、10,000エンドトキシンユニット(1000ngに相当)を333μLのエンドトキシンを含まない水に溶解することによって調製される。付加的アッセイ成分は、アッセイ緩衝液(Tris−HCl[50mM、pH7.4]、MgCl[10mM]、NaCl[100mM])、GDP(10μM)、サポニン(125μg/mL)、およびアデノシンデアミナーゼ(0.2ユニット/mL)を含む。全試薬および緩衝液は、エンドトキシンを含まない水を用いて調製される。60分間プレインキュベーションされる全容積は150μLである。25℃でのプレインキュベーション後、50μLのEu−GTP(パーキンエルマー社)を添加し、10nMの最終Eu−GTP濃度を200μLの全容積で達成する。各アッセイポイントは3回評価する。全結合はLPSの非存在下で定義され、非特異的結合はGTPγS(10μM)の添加によって定義される。アッセイは無菌技術、無菌試薬、および無菌消耗品を用いて行われる。25℃で30分間インキュベーションした後、真空マニホールド(ポール・ライフ・サイエンス社、アナーバー、ミシガン州)を用いる濾過によってアッセイを終結させる。フィルタープレートのBioTraceポリビニリデンフルオライドフィルターで膜を捕捉する。各ウェルを、300μLの洗浄緩衝液(Tris−HCl[50mM、pH7.4]およびMgCl[10mM])で2〜4回洗浄する。各ウェルの蛍光は、Infinite F−200 PRO(テカン社、グレーディヒ、オーストリア)で、320nmの励起波長、620nmの発光波長、および109のゲインセッティングで蛍光トップリード(top read)を用いて決定する。Eu−GTP基礎活性は、全Eu−GTP結合および非特異的Eu−GTP結合の間の差異として計算する。パーセント(%)基礎は、次のように計算される:[(試験条件−非特異的)/(基礎活性)]100。LPSについての濃度反応標準曲線を、LPS(g/mL)のlog濃度に対するEu−GTP%基礎活性の関数としてプロットする。勾配変化のある法面(variable slope)を有するS字型の用量反応曲線を用いる非線形回帰(GraphPad Prism、バージョン5、グラフパッド・ソフトウェア社、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)によって標準曲線を分析し、EC50を決定する。各標準曲線は最低でも3つの独立した実験を表し、最終データは平均値±SEMとして表す。
【0064】
試験サンプル中のLPS/エンドトキシンレベルを測定するために、組換えラットA1アデノシン受容体を発現しているCHO細胞(1ユニット/ウェル、およそ20μgタンパク質/ウェルに相当;パーキンエルマー社、ウォルサム、マサチューセッツ州)から調製された膜を、Acrowellフィルタープレート(ポール・ライフ・サイエンス社、アナーバー、ミシガン州)内で、試験サンプルまたはLPS/エンドトキシン(USP社、ロックビル、メリーランド州)(10pg/mL 1ng/mL、10ng/mL、および100ng/mL))を含むポジティブコントロールの存在下でプレインキュベートする。ポジティブLPSコントロール用に、エンドトキシンストック溶液を、10,000エンドトキシンユニット(1000ngに相当)を333μLのエンドトキシンを含まない水に溶解することによって調製する。付加的アッセイ成分は、アッセイ緩衝液(Tris−HCl[50mM、pH7.4]、MgCl[10mM]、NaCl[100mM])、GDP(10μM)、サポニン(125μg/mL)、およびアデノシンデアミナーゼ(0.2ユニット/mL)を含む。全試薬および緩衝液は、エンドトキシンを含まない水を用いて調製される。60分間プレインキュベーションする全容積は150μLである。25℃でのプレインキュベーション後、50μLのEu−GTP(パーキンエルマー社)を添加し、10nMの最終Eu−GTP濃度を200μLの全容積で達成する。各アッセイポイントは3回評価する。全結合はLPSの非存在下で定義され、非特異的結合はGTPγS(10μM)の添加によって定義される。アッセイは無菌技術、無菌試薬、および無菌消耗品を用いて行われる。25℃で30分間インキュベーションした後、真空マニホールド(ポール・ライフ・サイエンス社、アナーバー、ミシガン州)を用いる濾過によってアッセイを終結させる。フィルタープレートのBioTraceポリビニリデンフルオライドフィルターで膜を捕捉する。各ウェルを、300μLの洗浄緩衝液(Tris−HCl[50mM、pH7.4]およびMgCl[10mM])で2〜4回洗浄する。各ウェルの蛍光は、320nmの励起波長、620nmの発光波長、および109のゲインセッティングで蛍光トップリード(top read)を用いるInfinite F−200 PRO(テカン社、グレーディヒ、オーストリア)で決定する。Eu−GTP基礎活性は、全Eu−GTP結合と非特異的Eu−GTP結合の間の差異として計算される。パーセント(%)基礎活性は、次のように計算される:[(試験条件−非特異的)/(基礎活性)]100。試験サンプルまたはポジティブコントロール中のLPSのレベルは、サンプルまたはポジティブコントロールについての%基礎活性の単位で表している蛍光測定を、上記のTRF Eu−GTP結合アッセイでLPSについての標準曲線を作成するための既知濃度のLPSを添加されたサンプルについての%基礎活性測定と比較することによって、LPSについての標準曲線から決定される。
【0065】
図1は、LPS(g/mL)のlog濃度に対する%基礎活性の関数としてプロットした、TRF Eu−GTP結合アッセイに由来するLPSについての濃度反応標準曲線を示す。TRF Eu−GTP結合アッセイについての詳細は、実施例8に記載されている。この標準曲線を、勾配変化のある法面(variable slope)を有するS字型の用量反応曲線を用いる非線形回帰(GraphPad Prism、バージョン5、グラフパッド・ソフトウェア社、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)によって分析し、EC50を決定する。標準曲線は、LPSの濃度(10pg/mL〜100ng/mL)についての8〜10個の独立したアッセイの平均値を表している。このアッセイの感度は10pg/mLである。
【0066】
実施例9.
リポ多糖(LPS)/エンドトキシンについての標準曲線を作成し、試験サンプル中のLPSのレベルを測定するための、A1アデノシン受容体HTRF GTP結合アッセイ
標準LPS/エンドトキシン標準曲線を作成するために、組換えラットA1アデノシン受容体を発現しているCHO細胞膜(インビトロジェン社)(5〜20μgタンパク質/ウェル)を、LPS/エンドトキシン(USP社、ロックビル、メリーランド州)(0.01−750ng/mL)と共に、Greiner whiteマイクロタイター96ウェルプレート内でインキュベートする。LPSストック溶液は、10,000エンドトキシンユニット(1000ngに相当)を333μLのエンドトキシンを含まない水に溶解することによって調製する。全結合はLPSの非存在下で定義され、非特異的結合はGTPγS(10μM)の添加によって定義される。付加的アッセイ成分は、アッセイ緩衝液(Tris−HCl[50mM、pH7.4]、MgCl[10mM]、NaCl[100mM])、GDP(10μM)、サポニン(125μg/mL)、およびアデノシンデアミナーゼ(0.2ユニット/mL)を含む。30〜60分間25℃でインキュベーション後、ULight(パーキンエルマー社)でタグ付けした組換えラットA1アデノシン受容体についてのポリクローナル抗体(1:10〜1:10,000)およびEu−GTP(パーキンエルマー社)(5〜20nM)をアッセイに添加する。全アッセイ容積は200μlである。各アッセイポイントは3回評価する。アッセイは無菌技術、無菌試薬、および無菌消耗品を用いて行われる。さらに30〜60分間インキュベーションした後、蛍光を、テカン社製Infinite F−200 PRO(テカン社、グレーディヒ、オーストリア)で、320nmの励起ならびに665および620nmでの発光で測定する。全測定(total)、非特異的測定(nonspecific)、およびLPSについてのデータは、665と620での測定の比(665/620)として表す。次いで、Eu−GTP基礎活性を、全比測定と非特異的比測定の間の差異として計算する。LPSについてのパーセント(%)基礎活性は、次のように計算する:[(試験条件−非特異的)/(基礎活性)]100。LPSについての濃度反応曲線は、LPS(g/mL)のlog濃度に対する%基礎活性の関数としてプロットする。この曲線を、勾配変化のある法面(variable slope)を有するS字型の用量反応曲線を用いる非線形回帰(GraphPad Prism、バージョン5.04、グラフパッド・ソフトウェア社、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)によって分析し、EC50を決定する。各標準曲線は最低でも3つの独立した実験を表し、最終データは平均値±SEMとして表す。
【0067】
試験サンプル中のLPS/エンドトキシンレベルを測定するために、組換えラットA1アデノシン受容体を発現しているCHO細胞膜(インビトロジェン社)(5〜20μgタンパク質/ウェル)を、試験サンプルまたはLPS/エンドトキシン(USP社、ロックビル、メリーランド州)(10pg/mL 1ng/mL、10ng/mL、および100ng/mL))を含むポジティブコントロールと共に、Greiner whiteマイクロタイター96ウェルプレート内でインキュベートする。ポジティブLPSコントロール用に、エンドトキシンストック溶液を、10,000エンドトキシンユニット(1000ngに相当)を333μLのエンドトキシンを含まない水に溶解することによって調製する。全結合はLPSの非存在下で定義され、非特異的結合はGTPγS(10μM)の添加によって定義される。付加的アッセイ成分は、アッセイ緩衝液(Tris−HCl[50mM、pH7.4]、MgCl[10mM]、NaCl[100mM])、GDP(10μM)、サポニン(125μg/mL)、およびアデノシンデアミナーゼ(0.2ユニット/mL)を含む。30〜60分間25℃でインキュベーションした後、ULight(パーキンエルマー社)でタグ付けした組換えラットA1アデノシン受容体についてのポリクローナル抗体(1:10〜1:10,000)およびEu−GTP(パーキンエルマー社)(5〜20nM)をアッセイに添加する。全アッセイ容積は200μlである。各アッセイポイントは3回評価する。アッセイは無菌技術、無菌試薬、および無菌消耗品を用いて行われる。さらに30〜60分間インキュベーションした後、蛍光を、テカン社製Infinite F−200 PRO(テカン社、グレーディヒ、オーストリア)で、320nmの励起ならびに665および620nmでの発光で測定する。全測定(total)、非特異的測定(nonspecific)、試験サンプル、およびポジティブLPSコントロールについてのデータは、665と620での測定の比(665/620)として表す。次いで、Eu−GTP基礎活性を、全比測定と非特異的比測定の間の差異として計算する。試験サンプルまたはポジティブLPSコントロールについてのパーセント(%)基礎活性は、次のように計算する:[(試験条件−非特異的)/(基礎活性)]100。試験サンプルまたはポジティブコントロール中のLPSのレベルは、サンプルまたはポジティブコントロールについての%基礎活性の単位で表した蛍光測定を、上記のHTRF GTP結合アッセイでLPSについての標準曲線を作成するための既知濃度のLPSを添加されたサンプルについての%基礎活性測定と比較することによって、LPSについての標準曲線から決定される。
【0068】
実施例10.
腸管穿孔モデル(CLP)誘導性敗血症を患うラットの血中LPSを測定するための、エンドトキシン・アッセイ・アクティビティ(EAA(商標))アッセイの感度および特異性と比較したA1アデノシン受容体HTRF GTP結合アッセイについての感度および特異性
CLP誘導性敗血症のラットモデル:動物の外科手術および毎日のモニタリング
全ての外科手術および動物管理はNIHガイドラインに従い、動物管理委員会によって認可されている。雄性で無菌のスプラーグドーリーラット(275〜325g、ハーラン社、インディアナポリス、インディアナ州)を、実験前に食物および水に自由にアクセスできる陽圧隔離キャレル(carrels)内で飼育し、その後BSL−2バイオハザード実験室内で飼育する。実験を通して一般的な麻酔(3%イソフルラン、97%O)下におき、無菌技術を用い、腹側の頸部中央部(midventral neck)に2cmの切開を施し、左頸動脈および右頸静脈を露出させ、カテーテル処置をする(PE−50;クレイ・アダムス、パーシッパニー、ニュージャージー州)。ベースラインの生命徴候(直腸温度、脈動および平均動脈圧、頸動脈の脈拍数、呼吸頻度、立毛の程度、存在(presence)もしくは眼窩周囲出血または鼻汁)を決定し、血液学、血液ガス、血漿サンプル、および培養のために初期動脈血サンプルを得る(1.0mL)。採取された血液を3x容積の無菌0.9%NaCl(生理食塩水、NS)と交換する。外科的切開を閉じ、麻酔を中止し、意識が戻るまで(典型的には3〜5分)動物をモニターし、次いでそのケージに戻す。カテーテルをステンレス鋼バネ内で遮蔽し、ケージの蓋に固定したスイベル(インステック社)に乗せ、自由に動き、食物および水にアクセスできるようにする。翌朝(18〜24時間後)、動物に再度麻酔をかけ、腹側中央部(midventral abdominal)に無菌で4cmの切開を施し、腸を露出させる。3−0絹糸を有する回盲弁の下に腸を穏やかに格納し、次いでその腸間膜表面および腸間膜反対側表面の両方にA19−ゲージ針で、その「徹底的な(through and through)」穿通によって盲腸内に2つの穿孔を空ける。穿孔処理した盲腸を、少なくとも50μLの糞便が穿通された表面のそれぞれに押し出されるまで穏やかに圧迫し、次いで腸を穏やかに腹部に再挿入し、切開を閉じる。液体サポートのために、1回の術後NS急速投与を提供する(50mL/kg皮下注射)。血行動態のための動物のモニタリングは、CLP後、少なくとも0、3、6、24、および32時間で記録される。CLPを乗り切った全動物をイソフルラン過量投与によって人道的に屠殺し、気胸を観察し、32時間での最終出血の直後に検視する。
【0069】
LPS測定用の血漿サンプル
頸動脈の動脈血サンプルをCLP直前(t=0時間)、ならびにCLP後t=6時間、24時間、および32時間、または死亡が観察された時(TOD)(このTODがCLP後32時間よりも早い場合)に得る。頸動脈の動脈血サンプルは、正常なコントロール(CLP無し)で同一時点にて得る。これらの動脈サンプルは、正常なコントロール(CLP無し)(n=25)およびCLPを有する動物(n=25)でのLPS測定のために用いられる。計画案についてのサンプルサイズ評価へのアプローチは、良性の診断特性を示す0.75のROC曲線下面積(AUC)を有する新たな試験(HTRF LPSアッセイ)に基づいた。陽性群由来の25および陰性群由来の25のサンプルサイズは、0.05の有意水準で両側z−検定を用いた0.5のAUC(例えば、偶然のみの基準)と比較すると、92%検出力(power)を達成する。陽性および陰性群応答に由来する測定の標準偏差は等しいと想定される。AUCが0.8まで増加すると、検出力(Power)はより高くなる(98%)。
【0070】
サンプリングする前に、頸動脈の動脈カテーテルポートをベタジンで調製する。上で示した各時点で、1.0mLの動脈血を採取し、EAAアッセイについての製造者の使用説明書によりバイアルに添加し、全血中のLPSを測定する。全血サンプルを、製造者の使用説明書に従ってEAAで試験する。同一時点での0.4mLの第2の動脈血(arterial bleed)を、KEDTAを含有する1mLのシリンジ内に収集し、すぐに氷上または冷蔵庫内に置く(4℃で1時間以下)。この血液を3000rpmで15分間、4℃で遠心分離し、少なくとも0.2mLの血漿を得る。血漿を無菌的に無菌ピペットで無菌クライオバイアルに移し、HTRF LPSアッセイで血漿中のLPSを測定する。HTRF LPSアッセイのために、過塩素酸法を用いて血漿からLPSを抽出する(Obayashi, J Lab Clin Med 104:321-330, 1984)。各動脈サンプリング後、採取された血液の3x容積を頸静脈カテーテルで無菌NSと交換する。
【0071】
HTRF LPSアッセイ対EAA LPSアッセイについての診断感度および特異性
LPS測定は、各アッセイについて、すなわちHTRFまたはEAAアッセイについて作成されたLPSについての標準曲線から決定される。真陰性、真陽性、偽陰性、および偽陽性測定は、動物についてCLP有りおよび無しで決定される。診断感度、および診断特異性は、HTRFおよびEAAアッセイについて計算され、独立データ(unpaired data)についてのスチューデントt検定を使用して分析しされる。
統計的有意性:データは独立データ(unpaired data)についてのスチューデントt検定で分析される;有意水準はP<0.05で設定される。
【0072】
本発明が属する分野の当業者であれば、本発明の原理を利用してその精神または特徴から逸脱することなく、特に前述の教示を考慮して、他の実施態様をもたらす修正をなしうるであろう。したがって、記載された実施態様は全ての点において説明のためにのみ提供されており、限定する意図はないと考えられるべきであり、それゆえ本発明の範囲は、前述の記載または図面よりも、むしろ添付の特許請求の範囲によって示される。結果的に、本発明は特定の実施態様を参照して記載されている一方、当業者に明らかな構造、配列、および材料などの修正もまた出願人が特許請求の範囲に記載している本発明の範囲内に含まれる。
図1