(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コバルト、ニッケル、ジルコニウム、スズ、亜鉛もしくはリチウムの有機金属化合物、またはこれらの混合物からなる群から選択される1以上の有機金属化合物を含む第2の金属添加剤をさらに含む、請求項1に記載のペースト組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のペースト組成物は、銀、ガラスフリット、および金属添加剤を含有することができる。例として、当該ペースト組成物は、ペースト組成物の約50重量%以上約92重量%以下の銀と、ペースト組成物の約1重量%以上約15重量%以下のガラスフリットと、ペースト組成物の約0.01重量%以上約5重量%以下の金属添加剤とを含有することができる。この金属添加剤は、イットリウム、有機バナジウム化合物、有機アンチモン化合物、有機リン化合物、有機イットリウム化合物、またはこれらの組み合わせを含む。1つの実施形態では、当該ペースト組成物は、有機バインダ、溶剤、またはこれらの組み合わせをさらに含む。
【0012】
当該ペースト組成物は、例えば、光への曝露によって発生される電流を集めるシリコン系太陽電池用の前面側接点を製造するため、または電子を外部負荷へと伝導する裏面側接点を製造するための膜ペーストとして使用することができる。セル効率(η)および曲線因子(FF)によって測定されるセルの電気的性能は、銀/シリコン界面の微細構造および電気特性によって影響を受ける。太陽電池の電気特性は、直列抵抗(R
s)およびシャント抵抗(並列抵抗)(R
sh)によっても特徴づけられる。前面側接触界面の組成および微細構造は、おおよそR
sを決定づける。本発明のペースト組成物は、効率(η)および曲線因子(FF)によって測定されるところによる、高性能太陽電池を与えるための低直列抵抗(R
s)および高シャント抵抗(R
sh)をもたらすことができる。
【0013】
本発明のペースト組成物および方法は、ガラス媒体を介する前面側接点成分、典型的にはAg、とSiとの間の最適化された相互作用、結合、および接点形成を容易にすることができる。当該ペースト組成物は、シリコン基板上に印刷され、焼成されてガラスが溶融されて上記金属がガラスの中に焼結されることができる。焼成の際に、バルクのペーストとシリコンウェーハとの間に導電性の橋を提供するAg/Siの導電性の島が形成される。有鉛ガラスが使用されるとき、その有鉛ガラスは、比較的低温でのその優れた流動特性のため、低い焼成温度を可能にする。
【0014】
当該ペーストは、いずれの好適な技法によって基板に付与されてもよい。1つの実施形態では、このペーストは、スクリーン印刷、ステンシル印刷、押出、パッド印刷、インクジェット印刷、ホットメルト印刷、または当業者であれば認識するいずれかの好適なマイクロデポジション・ダイレクトライティング(micro−deposition direct writing)技術によって付与される。当該ペースト組成物は、太陽電池の接点を形成するために使用することができる。当該ペーストは基板上にスクリーン印刷され、その基板上に形成されたペーストは、比較的低温(550℃〜850℃のウェーハ温度;650℃〜1000℃の加熱炉設定温度)に焼成され、例えば、リンをドーピングしたシリコンウェーハのN側と当該ペースト組成物との間に低抵抗の接点が形成される。
【0015】
銀成分
当該ペースト組成物は、あらゆる好適な形態のあらゆる好適な銀化合物を含有することができる。この銀成分における銀のソースは、銀金属の1以上の微細粒子もしくは粉末、または銀の合金であってもよい。この銀の一部分は、酸化銀(Ag
2O)として、またはAgNO
3、AgOOCCH
3(酢酸銀)、アクリル酸銀もしくはメタクリル酸銀などの銀塩として添加されてもよい。加えて、この銀は、リンなどの種々の物質でコーティングされていてもよい。あるいは、銀がガラス上にコーティングされてもよい。または、ガラス溶融/製造プロセスの間に、酸化銀がガラスに溶解されてもよい。当該ペーストで使用される銀粒子は、球形、薄片状、コロイド状、不規則的(球形でもなく薄片状でもない形態を持つ)、またはこれらの組み合わせであってもよい。銀粒子の具体例としては、球形の銀粉末Ag3000−1、解凝集銀粉末SFCGED、銀薄片SF−23、ナノ銀粉末Ag7000−35およびコロイド状の銀RDAGCOLBが挙げられ、これらはすべて、オハイオ州、クリーブランドのFerro Corporationから市販されている。
【0016】
当該ペースト組成物は、上述の銀ソースのいずれを含んでもよい。1つの実施形態では、このペーストの銀部分は、銀部分の約80重量%以上約100重量%以下の球形の銀粒子、および銀部分の約0重量%以上約20重量%以下の銀薄片を含有する。別の実施形態では、このペーストの銀部分は、銀部分の約75重量%以上約90重量%以下の銀薄片、および銀部分の約1重量%以上約10重量%以下のコロイド状の銀を含有する。別の実施形態では、このペーストの銀部分は、銀部分の約80重量%以上約100重量%以下の不規則的な銀金属粒子、銀部分の約0重量%以上約20重量%以下の銀金属薄片、および銀部分の約1重量%以上約10重量%以下のコロイド状の銀金属を含有する。
【0017】
当該ペーストが電気伝導性を与えることができる限り、このペースト組成物は、一般に、いずれの好適な量だけ銀を含有することができる。1つの実施形態では、このペースト組成物は、ペースト組成物の約50重量%以上約92重量%以下の銀を含有する。別の実施形態では、このペースト組成物は、ペースト組成物の約70重量%以上約90重量%以下の銀を含有する。さらに別の実施形態では、このペースト組成物は、ペースト組成物の約75重量%以上約87重量%以下の銀を含有する。
【0018】
当該銀粒子は、いずれの好適なサイズを有してもよい。1つの実施形態では、この銀粒子は、約0.05ミクロン(0.05μm)以上約10ミクロン(10μm)以下のメジアン粒径を有する。本願明細書および添付の特許請求の範囲において、粒径は、Honeywell Microtrac X100計器を使用して測定される。別の実施形態では、銀粒子は、約0.05ミクロン(0.05μm)以上約5ミクロン(5μm)以下のメジアン粒径を有する。さらに別の実施形態では、当該銀粒子は、約0.05ミクロン(0.05μm)以上約3ミクロン(3μm)以下のメジアン粒径を有する。別の実施形態では、当該粒子は、約0.01〜10g/mの比表面積を有する。別の実施形態では、当該粒子は、約0.1〜8g/mの比表面積を有する。別の実施形態では、この粒子は、約0.2〜6g/m
2の比表面積を有する。別の実施形態では、この粒子は、約0.2〜5.5g/m
2の比表面積を有する。別の実施形態では、当該ペーストの中での異なる種類の銀粉末(不規則的、球形、薄片、サブミクロンサイズまたはナノサイズの銀Agのいずれか)の混合物の粒径分布は、単峰性分布であってもよいし、または他のタイプの分布、例えば二峰性もしくは三峰性の分布であってもよい。
【0019】
ガラスフリット
本願明細書で使用されるガラスフリットは特に限定されず、当該ペースト組成物はいずれの好適なガラスフリットも含有することができる。最初の事項として、本発明のペーストで使用されるガラスフリットは、意図的に鉛および/もしくはカドミウムを含有してもよいし、または本発明のペーストで使用されるガラスフリットは、意図的に加えられた鉛および/もしくはカドミウムを欠いてもよい。1つの実施形態では、このガラスフリットは実質的に鉛を含まないガラスフリットである。別の実施形態では、ガラスフリットのすべてが鉛もカドミウムも含まない。当該ガラスは、部分的に結晶性または非結晶性であってもよい。部分的に結晶性のガラスが好ましい。1以上の結晶性または部分的に結晶性または非結晶性の構造を有するガラスフリットの混合物を使用することができる。ガラスフリットの組成および製造の詳細は、例えば、同一出願人による米国特許出願公開第2006/0289055号明細書および米国特許出願公開第2007/0215202号明細書(これらは、参照により本願明細書に援用したものとする)に見いだされうる。
【0020】
一般には回避されるが、より低い温度を成し遂げるために、酸化タリウムまたはバナジウム酸化物の相当量の添加物がこれらのフリットに添加されてもよい。より低いフロー温度を成し遂げるために、同様に相当量の酸化テルルまたは酸化ゲルマニウムがこれらのフリットに添加されてもよい。
【0021】
当該ペースト組成物は、いずれの好適なガラスフリットを含むこともできる。以下の表は、本発明の実施において有用なガラスフリット組成物を示す。Sb
2O
5+V
2O
5などの項目は、Sb
2O
5もしくはV
2O
5またはそれら2つの組み合わせが特定された量で存在するということを意味する。
【0025】
これらの表において、酸化物はそれらの原子価状態のうちの1つの化学式、例えばFe
2O
3、によって表されているが、他の原子価状態の酸化物、例えばFeO、Fe
3O
4、もこれらの式によって含意されている。
【0026】
当該フリットは、濡れ性およびフロー特性を調整するための他の酸化物、例えばMoO
3、WO
3、In
2O
3、および/またはGa
2O
3を含有することができる。
【0027】
当該ペースト組成物は、いずれの好適な量のガラスフリットを含有してもよい。1つの実施形態では、このペースト組成物は、約1重量%以上約15重量%以下のガラスフリットを含有する。別の実施形態では、このペースト組成物は、約2重量%以上約10重量%以下のガラスフリットを含有する。さらに別の実施形態では、このペースト組成物は、約2重量%以上約8重量%以下のガラスフリットを含有する。さらに別の実施形態では、このペースト組成物は、約3重量%以上約6重量%以下のガラスフリットを含有する。
【0028】
金属添加剤
当該ペースト組成物は、前面側接点の抵抗を低下させるための様々な方法で、1以上の金属添加剤を含有する。この金属添加剤としてはイットリウムおよび有機金属化合物が挙げられる。この有機金属化合物としては、有機バナジウム化合物、有機アンチモン化合物、有機リン化合物、および有機イットリウム化合物が挙げられる。つまり、金属添加剤は、イットリウム、有機バナジウム化合物、有機アンチモン化合物、有機リン化合物、および有機イットリウム化合物からなる群から選択される少なくとも1つである。イットリウムは、その元素形態にあってもよい。有機金属化合物は、金属がいずれかの好適な有機部分に結合されている化合物である。例えば、有機金属化合物は、分子中に金属、炭素、および/または窒素を含有する有機化合物である。さらには、上記の金属化合物に加えて、有機コバルト化合物、有機ニッケル化合物、有機スズ化合物、有機ジルコニウム化合物、有機亜鉛化合物および有機リチウム化合物からなる群から選択される第2の金属添加剤が、当該ペースト組成物に含まれてもよい。
【0029】
当該有機金属化合物は、有機バナジウム化合物、有機アンチモン化合物、有機リン化合物、および有機イットリウム化合物を含むことができる。当該ペースト組成物は、有機バナジウム化合物、有機アンチモン化合物、有機リン化合物、有機イットリウム化合物またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0030】
当該有機金属化合物は、その化合物内に、いずれの好適な有機部分を含んでもよい。有機部分の例としては、直鎖状もしくは分枝状の、飽和もしくは不飽和の、脂肪族、脂環式、芳香族、芳香族脂肪族の、ハロゲン化もしくは別の置換基で置換された、任意にO、N、S、またはSiなどの1以上のヘテロ原子を有する有機部分が挙げられ、アルキル、アルキルオキシ、アルキルチオ、またはアルキルシリル部分などの炭化水素部分が挙げられる。
【0031】
有機金属化合物の具体例としては、金属アルコキシドが挙げられる。この金属アルコキシドの金属は、バナジウム、アンチモン、リン、イットリウム、またはこれらの組み合わせであってもよい。アルコキシド部分は、例えば、1〜20個の炭素原子を有する分枝状もしくは非分枝状のアルキル基を有することができる。有機バナジウム化合物の例としては、バナジウムアルコキシドおよびバナジルアルコキシドが挙げられる。有機アンチモン化合物の例としては、アンチモンアルコキシドが挙げられる。有機リン化合物の例としては、リンアルコキシドが挙げられる。有機イットリウム化合物の例としては、イットリウムアルコキシドが挙げられる。有機コバルト化合物の例としては、コバルト(III)アルコキシドおよびコバルト(II)アルコキシドが挙げられる。有機ニッケル化合物の例としては、ニッケルアルコキシドが挙げられる。有機スズ化合物の例としては、スズアルコキシドが挙げられる。有機ジルコニウム化合物の例としては、ジルコニウムアルコキシドが挙げられる。有機亜鉛化合物の例としては、亜鉛アルコキシドが挙げられる。有機リチウム化合物の例としては、リチウムアルコキシドが挙げられる。
【0032】
バナジウムアルコキシドの例としては、バナジウムメトキシド、バナジウムエトキシド、バナジウムプロポキシド、およびバナジウムブトキシドが挙げられる。バナジルアルコキシドの例としては、バナジルメトキシド、バナジルエトキシド、バナジルプロポキシド、およびバナジルブトキシドが挙げられる。同様に、アンチモンアルコキシド、リンアルコキシド、イットリウムアルコキシド、コバルト(III)アルコキシド、コバルト(II)アルコキシド、ニッケルアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、スズアルコキシド、亜鉛アルコキシドおよびリチウムアルコキシドを使用することができる。
【0033】
有機金属化合物の他の例としては金属アセチルアセトナート類が挙げられ、この金属は、バナジウム、アンチモン、リン、イットリウム、またはこれらの組み合わせであってもよい。有機バナジウム化合物の例としては、V(AcAc)
3(バナジウム(III)2,4−ペンタンジオナート)とも呼ばれる)などのバナジウムアセチルアセトナート類、VO(AcAc)
2(バナジウム(IV)オキシドビス(2,4−ペンタンジオナート)とも呼ばれる)などのバナジルアセチルアセトナート類(式中、(AcAc)はアセチルアセトナート(2,4−ペンタンジオナートとも呼ばれる)である)が挙げられる。1つの実施形態では、有機バナジウム化合物は、バナジウム(IV)オキシドビス(2,4−ペンタンジオナート)、バナジウム(III)2,4−ペンタンジオナート、またはこれらの組み合わせである。別の実施形態では、有機バナジウム化合物は、バナジウム(IV)オキシドビス(2,4−ペンタンジオナート)からなる。
【0034】
同様に、アンチモンアセチルアセトナート、イットリウムアセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、コバルト(II)アセチルアセトナート、ニッケルアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジブチルスズアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナートおよびリチウムアセチルアセトナートを使用することができる。例えば、アンチモン2,4−ペンタンジオナート、イットリウム2,4−ペンタンジオナート、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0035】
有機金属化合物のさらに他の例としては、2−メチルヘキサン酸金属塩、2−エチルヘキサン酸金属塩、および2−プロピルヘキサン酸金属塩が挙げられる。具体例としては、金属がバナジウム、アンチモン、リン、イットリウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、スズ、亜鉛またはリチウムである、2−メチルヘキサン酸バナジウム類、2−メチルヘキサン酸アンチモン類、2−メチルヘキサン酸リン類、2−メチルヘキサン酸イットリウム類、2−メチルヘキサン酸コバルト類、2−メチルヘキサン酸ニッケル類、2−メチルヘキサン酸ジルコニウム類、2−メチルヘキサン酸スズ類、2−メチルヘキサン酸亜鉛類および2−メチルヘキサン酸リチウム類、2−エチルヘキサン酸バナジウム類、2−エチルヘキサン酸アンチモン類、2−エチルヘキサン酸リン類、2−エチルヘキサン酸イットリウム類、2−エチルヘキサン酸コバルト類、2−エチルヘキサン酸ニッケル類、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム類、2−エチルヘキサン酸スズ類、2−エチルヘキサン酸亜鉛類、2−エチルヘキサン酸リチウム類、2−プロピルヘキサン酸バナジウム類、2−プロピルヘキサン酸アンチモン類、2−プロピルヘキサン酸リン類、2−プロピルヘキサン酸イットリウム類、2−プロピルヘキサン酸コバルト類、2−プロピルヘキサン酸ニッケル類、2−プロピルヘキサン酸ジルコニウム類、2−プロピルヘキサン酸スズ類、2−プロピルヘキサン酸スズ類、2−プロピルヘキサン酸亜鉛類および2−プロピルヘキサン酸リチウム類が挙げられる。
【0036】
有機金属化合物のさらに他の例としては、金属がバナジウム、アンチモン、リン、イットリウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、スズ、亜鉛またはリチウムである、アクリル酸金属塩およびメタクリル酸金属塩が挙げられる。
【0037】
当該ペースト組成物は、いずれかの好適な量で当該金属添加剤を含有する。1つの実施形態では、このペースト組成物は、当該ペースト組成物の約0.01重量%以上約5重量%以下の金属添加剤を含有する。別の実施形態では、このペースト組成物は、ペースト組成物の約0.02重量%以上約3重量%以下の金属添加剤を含有する。別の実施形態では、このペースト組成物は、ペースト組成物の約0.05重量%以上約1重量%以下の金属添加剤を含有する。さらに別の実施形態では、このペースト組成物は、ペースト組成物の約0.05重量%以上約0.5重量%以下の金属添加剤を含有する。
【0038】
当該金属添加剤は、例えば球形の粒子、不規則的な形状の粒子、薄片状粒子、凝集した粒子などのいずれの好適な形態にあってもよいし、またはコロイド状の懸濁液、もしくは粒子を含まない溶液、およびこれらの組み合わせとして提供されてもよい。金属添加剤が粒子の形態にあるとき、金属添加剤粒子は、いずれの好適なサイズを有することもできる。1つの実施形態では、この金属添加剤粒子は、約0.05ミクロン(0.05μm)以上約50ミクロン(50μm)以下のメジアン粒径を有する。別の実施形態では、この金属添加剤粒子は、約0.05ミクロン(0.05μm)以上約10ミクロン(10μm)以下のメジアン粒径を有する。さらに別の実施形態では、この金属添加剤粒子は、約0.05ミクロン(0.05μm)以上約5ミクロン(5μm)以下のメジアン粒径を有する。
【0039】
無機添加剤/他の添加剤
当該ペースト組成物は、いずれかの他の添加剤を任意に含有することができる。1つの実施形態では、前面側接点sの抵抗を低下させるための様々な方法で、リンがペースト組成物に添加される。例えば、特定のガラスが、粉末またはフリット状の酸化物の形態のP
2O
5で変性されてもよいし、またはリン酸エステルおよび他の有機リン化合物としてリンが当該ペーストに加えられてもよい。より単純な場合には、銀および/または金属添加剤が粒子の形態にあるとき、リンは、ペーストを製造する前に、コーティングとして銀および/または金属添加剤粒子に添加されてもよい。このような場合、ペーストを形成する前に、この銀および/または金属添加剤粒子は、液体のリンおよび溶剤と混合される。例えば、約85〜約95重量%の銀および/または金属添加剤粒子、約5〜約15重量%の溶剤、ならびに約0.1〜約10重量%の液体のリンのブレンドが混合され、溶剤が留去される。リンでコーティングした銀および/または金属添加剤粒子は、当該ペーストにおけるリンと銀および/または金属添加剤との密な混合を確保することに役立つ。
【0040】
銀の還元反応および沈殿反応を制御するために、他の添加剤、例えば微細なケイ素もしくは炭素の粉末、またはそれらの両方、が当該ペーストに加えられてもよい。界面またはバルクのガラスでの銀沈殿は、焼成雰囲気を調整する(例えば、N
2またはN
2/H
2/H
2O混合物を流しながら焼成する)ことによっても制御することができる。しかしながら、特別な雰囲気は必要とはされない。より低い焼成温度で接点を提供するために、または焼成時間枠を広げるために、微細な低温融解性の金属添加剤(例えば、金属酸化物とは別個の元素状の金属添加剤)、例えばPb、Bi、In、Ga、Sn、Ni、およびZnまたはその各々と少なくとも1つの他の金属との合金、が添加されてもよい。典型的には、このような金属添加物は、本発明のペーストの導電性金属部分の約1重量%未満の割合で存在する。アルミニウム、バリウム、ビスマス、マグネシウム、亜鉛、ストロンチウム、リチウムおよび/またはカリウムを与える有機金属化合物、例えば、上記の金属の酢酸塩、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、ギ酸塩、ネオデカン酸塩、メトキシド、エトキシド、メトキシエトキシド、およびステアリン酸塩、を使用することができる。ケイ酸カリウムも、カリウムの好適なソースである。
【0041】
ガラス成分を所望の組成範囲に配合するために、(a)ガラスの混合物または(b)ガラスと結晶性の添加剤とのの混合物または(c)1以上の結晶性の添加剤の混合物を使用することができる。添加の目的は、接触抵抗を低下させ、太陽電池の電気的性能を向上させることである。例えば、接点特性を調整するために、Bi
2O
3、Sb
2O
3、Sb
2O
5、In
2O
3、Ga
2O
3、SnO、MgO、ZnO、Cr
2O
3、Fe
2O
3、Pb
3O
4、PbO、SiO
2、ZrO
2、V
2O
5、Al
2O
3、B
2O
3、TiO
2、Nb
2O
5、Ta
2O
5、Tl
2O、TeO
2およびGeO
2などの結晶性物質が、ガラス成分に添加されてもよい。上記の酸化物は、ガラス状(すなわち、非結晶性)の形態で添加されてもよい。上述の酸化物の組み合わせおよび反応生成物も、所望の特徴を持つガラス成分を設計するために好適である可能性がある。例えば、PbOとSiO
2との反応によって形成される、結晶性またはガラス状のいずれかの低温融解性のケイ酸鉛、例えば4PbO・SiO
2、3PbO・SiO
2、2PbO・SiO
2、3PbO・2SiO
2、およびPbO・SiO
2を、単独でまたは混合物として使用して、ガラス成分を配合することができる。上述の酸化物の他の反応生成物、例えばBi
2O
3.SiO
2、3Bi
2O
3.5SiO
2などのケイ酸ビスマス、2ZnO・SiO
2およびZrO
2・SiO
2などのケイ酸亜鉛も使用することができる。同様に、ニオブ酸ビスマスなどのニオブ酸塩、チタン酸ビスマスなどのチタン酸塩を使用することができる。これらの酸化物のさらなる鉱物形態、例えばケイ酸亜鉛鉱およびジルコン、も反応生成物の代わりに添加することができる。しかしながら、上記の酸化物の総量は、本願明細書中の他の箇所に開示された種々の実施形態について特定された範囲内に入ることになる。
【0042】
これらの酸化物の顔料形成反応生成物、例えばアルミン酸コバルト、ケイ酸コバルト、黒色色素、例えば銅−鉄−マンガン−酸化物、も他の結晶性の添加剤として使用することができるということも想定される。
【0043】
有機ビヒクル
当該ペースト組成物は、いずれの好適なビヒクル(例えば、担体)も含有することができる。ほとんどの導電性組成物についての有機ビヒクルまたは担体は、典型的には、溶剤に溶解させた樹脂の溶液である。1つの実施形態では、このビヒクルは、チキソトロープ剤をさらに含有する。この溶剤は、通常、約130℃〜約350℃で沸騰する。1つの実施形態では、当該樹脂はエチルセルロースである。他の樹脂の例としては、エチルヒドロキシエチルセルロース、ウッドロジン、ガムロジン、エチルセルロースとフェノール樹脂との混合物、低級アルコールのポリメタクリレート、およびエチレングリコールモノアセテートのモノブチルエーテルが挙げられる。
【0044】
溶剤の例としては、α−テルピネオールもしくはβ−テルピネオールなどのテルペン、またはより高沸点のアルコール、例えばDowanol(登録商標) (ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、またはこれらと他の溶剤との混合物、例えばbutyl Carbitol(登録商標) (ジエチレングリコールモノブチルエーテル);dibutyl Carbitolジ(登録商標) (ジエチレングリコールジブチルエーテル)、butyl Carbitol(登録商標) アセテート(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)、ヘキシレングリコール、Texanol(登録商標) (2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)、ならびに他のアルコールエステル、ケロシン、およびフタル酸ジブチルとの混合物が挙げられる。
【0045】
1つの実施形態では、接点を調整するために、有機ビヒクルは、有機金属の化合物、例えばリンまたは銀に基づく化合物、を含有する。各用途についての所望の粘度および揮発性の要求事項を満たすために、これらの溶剤および他の溶剤の種々の組み合わせを配合することができる。他の分散剤、界面活性剤およびレオロジー調整剤を含めることができる。
【0046】
有機担体において有用な製品は、以下の商標のいずれかとして商業的に入手することができる:Texanol(登録商標) (Eastman Chemical Company、テネシー州、キンクズポート(Kingsport));Dowanol(登録商標)およびCarbitol(登録商標) (Dow Chemical Co.、ミシガン州、ミッドランド(Midland));Triton(登録商標) (Union Carbide Division of Dow Chemical Co.、ミシガン州、ミッドランド)、Thixatrol(登録商標) (Elementis Company、ニュージャージー州、ハイツタウン(Hightstown))、およびDiffusol(登録商標) (Transene Co.Inc.、マサチューセッツ州、ダンバース(Danvers))、Ethyl Cellulose(Dow Chemical Company、ミシガン州、ミッドランド)、Terpineol、(Hercules Inc.、デラウェア州、ウィルミントン(Wilmington))。N−Diffusol(登録商標)は、元素状リンの拡散係数と同程度の拡散係数を持つn型拡散物質を含有する、安定化された液体調製物である。Plasticizer(登録商標) (Ferro Corporation、オハイオ州、クリーブランド)。
【0047】
硬化ヒマシ油およびその誘導体は、有機チキソトロープ剤として使用することができる。チキソトロープ剤は常に必要というわけではない。なぜなら、あらゆる懸濁液において固有のずり流動化と一体となった溶剤/樹脂特性だけで、この点に関しては、好適である可能性があるからである。さらに、脂肪酸エステル、例えば、N−タロー−1,3−ジアミノプロパンジオレエート;N−タロートリメチレンジアミンジアセテート;N−ココトリメチレンジアミン、βジアミン;N−オレイルトリメチレンジアミン;N−タロートリメチレンジアミン;ならびにN−タロートリメチレンジアミンジオレエート、およびこれらの組み合わせなどの湿潤剤を用いることができる。
【0048】
上記の組成範囲は好ましい範囲であり、これらの範囲に限定されることは意図されていないということに留意するべきであり、当業者なら、本願明細書の教示に基づいて、これらの範囲は、具体的な応用例、加工および最終生成物の形成のための具体的な成分および条件に応じて変わりうるということを認識するであろう。
【0049】
ペーストの調製
当該ペースト組成物は、銀、ガラスフリット、および金属添加剤を有機ビヒクルと合わせることと、この銀、ガラスフリット、および金属添加剤を有機ビヒクルに分散させることとによって形成されてもよい。利用されるビヒクルの量および種類は、最終の所望の配合物粘度、ペーストの磨砕度、および所望の乾燥前の印刷の厚さによって決定されてもよい。本発明に係る組成物を調製する際には、微粒子の無機固体が有機ビヒクルと混合され、好適な設備、例えば三本ロール練り機、を用いて分散され、懸濁液が形成され、9.6sec
−1のせん断速度で粘度が約50〜約200kcps、好ましくは約55〜約120kcpsの範囲にあるような組成物が得られる。この粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)粘度計HBT、スピンドル CP−1、で決定され、25℃で測定された場合の粘度である。
【0050】
ペーストの印刷および焼成
上述のペースト組成物は、例えば太陽電池用の接点(例えば、焼成された前面側接点膜)または他の部品を製造するためのプロセスで使用することができる。この接点の製造方法は、(1)当該ペースト組成物をシリコン基板(例えば、シリコンウェーハ)に付与することと、(2)このペーストを乾燥することと、(3)このペーストを加熱(例えば、焼成)して当該ペーストの金属を焼結し、シリコンへの接点を作製することを伴う。ペーストの印刷されたパターンは、好適な温度、例えば約650〜約1000℃の加熱炉設定温度、または約550〜約850℃のウェーハ温度で加熱または焼成される。1つの実施形態では、加熱炉設定温度は約750〜約960℃であり、当該ペーストは空気中で焼成される。反射防止用SiNx層は、焼成の間にガラスによって酸化および浸食されると考えられ、Ag/Siの島がSi基板との反応で形成され、このAg/Siの島はシリコンに対してエピタキシャルに結合される。焼成条件は、シリコン/ペースト界面で、シリコンウェーハ上に十分な密度の導電性の金属/Siの島が生成し、低抵抗率接点が導かれ、これにより高効率、高曲線因子の太陽電池が製造されるように選ばれる。
【0051】
典型的なARCは、窒化ケイ素(総称してSiN
X:H)などのケイ素化合物から作製される。この層は絶縁体として作用し、これは接触抵抗を高める傾向がある。従って、ガラス成分によるこのARC層の浸食は、前面側接点形成において必要な工程である。シリコンウェーハとペーストとの間の抵抗を低下させることは、界面におけるエピタキシャルな銀/シリコンの導電性の島の形成によって促されうる。このようなエピタキシャルな銀/シリコン界面が生じないとき、その界面における抵抗は、容認し難いほど高くなる。本発明のペーストおよび方法により、幅広い加工条件下(約650℃という最低焼成温度、しかし約850℃(ウェーハ温度)まで焼成することができる)で、低抵抗を有する接点を導くエピタキシャルな銀/シリコン界面を生成することが可能になる可能性がある。
【0052】
得られる焼成された前面側接点は、焼成された前面側接点の約50重量%以上約92重量%以下の銀;焼成された前面側接点の約1重量%以上約15重量%以下のガラスフリット;および焼成された前面側接点の約0.01重量%以上約5重量%以下のイットリウムを含むことができる。1つの実施形態では、焼成された前面側接点は、焼成された前面側接点の約0.02重量%以上約3重量%以下のイットリウムを含む。別の実施形態では、この焼成された前面側接点は、バナジウム、アンチモン、リン、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0053】
接点の製造方法
本発明に係る太陽電池接点は、本願明細書に開示されるいずれかの導電性ペーストを、例えばスクリーン印刷によって、所望の乾燥前の厚さ、例えば約10〜約80ミクロン(約10〜約80μm)で基板に付与することによって精製することができる。200〜400メッシュのスクリーンを使用する自動スクリーン印刷技法を用いることができる。印刷されたパターンは、次いで、250℃以下、好ましくは約80〜約250℃で約0.5〜20分間乾燥され、そのあと焼成される。乾燥した印刷されたパターンは、ベルトコンベヤー加熱炉の中で、空気中、ピーク温度でわずか1秒〜約30秒までの間焼成することができる。焼成の間、ガラスが溶融し金属が焼結される。
【0054】
ここで
図1A〜1Eを参照して、太陽電池前面側接点の製造の多くの考えられる例示の実施形態のうちの1つが説明される。この太陽電池前面側接点は、ペースト組成物をソーラー等級のSiウェーハに付与することによって一般に生成することができる。特に、
図1Aは、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンの基板10を準備することを概略的に示す。この基板は、光の反射を低減するざらついた表面を有してもよい。太陽電池の場合には、基板は、引き上げプロセスまたは流し込みプロセスから形成されたインゴットからスライスされたまま使用されることが多い。スライシングのために使用されるワイヤーソーなどの工具によって引き起こされる基板表面の損傷およびウェーハスライシング工程からの汚染は、典型的には、KOHもしくはNaOHなどのアルカリ水溶液を使用して、またはHFおよびHNO
3の混合物を使用して、基板表面の約10〜20ミクロン(10〜20μm)をエッチングすることにより取り除かれる。基板表面に付着している可能性がある鉄などの重金属を取り除くために、この基板は、任意に、HClおよびH
2O
2の混合物で洗浄されてもよい。このあと、例えば水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムの水溶液などのアルカリ水溶液を使用して、反射防止用のざらついた表面が形成されることがある。この得られた基板は、誇張された厚さ寸法で描かれているが、通常のシリコンウェーハは厚さが約160〜200ミクロン(160〜200μm)である。
【0055】
図1Bは、p型基板が使用されるとき、p−n接合を作り出すためにn型層20が形成されるということを概略的に示す。リン拡散層が、オキシ塩化リン(POCl
3)、有機リン化合物、および本願明細書に開示される他のものを含めた様々な好適な形態のうちのいずれかで供給される。リンソースは、シリコンウェーハの一方側のみに選択的に付与されてもよい。拡散層の深さは、拡散温度および拡散時間を制御することにより変えることができ、一般には約0.2〜0.5ミクロン(0.2〜0.5μm)であり、約40〜約120オーム/squareの面積抵抗を有する。このリンソースとしては、リンケイ酸ガラス(PSG)などのリン含有液体コーティング材料を挙げることができる。リンソースは、スピンコーティングなどのプロセスによって基板のただ1つの表面に付与されてもよく、このとき、拡散は好適な条件下でのアニーリングによってもたらされる。
【0056】
図1Cは、基板10を覆って反射防止コーティング(ARC)/保護膜30を形成することを説明する。SiN
x、TiO
2またはSiO
2であることができる、この反射防止コーティング(ARC)/保護膜30は、上記のn型拡散層20を覆って形成される。窒化ケイ素膜は、水素によるパッシベーションを強調するために、SiN
x:Hと表されることがある。ARC 30は、入射光に対する太陽電池の表面反射を低減し、発生する電流を増大させる。ARC 30の厚さは、その屈折率によるが、約700〜約900Åの厚さが約1.9〜約2.0の屈折率に好適である。ARCは、低圧CVD、プラズマCVD、または熱CVDを含めた様々な手順によって形成されてもよい。SiN
xコーティングを形成するために熱CVDが使用されるとき、出発物質は、ジクロロシラン(SiCl
2H
2)およびアンモニア(NH
3)ガスであることが多く、そして膜形成は少なくとも700℃の温度で実施される。熱CVDが使用されるとき、高温での出発のガスの熱分解によって、窒化ケイ素膜の中に実質的に水素が存在しないということがもたらされ、ケイ素と窒素との間の実質的に化学量論的な組成比 − Si
3N
4が与えられる。ARCの他の形成方法を使用することができる。
【0057】
図1Dは、ARC膜30を覆って本発明のペースト組成物500を付与することを説明する。このペースト組成物は、いずれの好適な技法によって付与されてもよい。例えば、このペースト組成物は、基板10の前面側にスクリーン印刷によって付与されてもよい。ペースト組成物500は約125℃で約10分間乾燥される。ペーストのビヒクルが、溶剤に関しては乾燥するが、この時点では燃焼も除去もされない限りは、他の乾燥時間および温度も可能である。
【0058】
図1Dは、基板10の裏面側を覆って裏面側ペーストの層を形成することをさらに説明する。この裏面側ペースト層は、1以上のペースト組成物を含有することができる。1つの実施形態では、第1のペースト70は、裏面側接点を形成することを容易にし、第2のペースト80は、基板の裏面側を覆ってp+層を形成することを容易にする。第1のペースト70は銀または銀/アルミニウムを含有することができ、第2のペースト80はアルミニウムを含有することができる。例示の裏面側銀/アルミニウムペーストは、オハイオ州、クリーブランドのFerro Corporationから市販されているFerro 3398、PS 33−610またはPS 33−612である。例示の市販の裏面側アルミニウムペーストは、オハイオ州、クリーブランドのFerro Corporationから市販されているFerro AL53−120 Standard、またはAL53−112、AL860、AL5116である。
【0059】
この裏面側ペースト層は、前面側ペースト層500と同様にして、基板に付与され、乾燥されてもよい。この実施形態では、裏面側は、あとのプロセスにおいてより厚いp+層を形成する必要性のためもあって、約30〜50ミクロン(30〜50μm)の乾燥前厚さに、アルミニウムペーストでほぼ覆われる。
【0060】
乾燥したペーストを載せたウェーハは、次いで、空気雰囲気を使用して、約650℃〜約1000℃の加熱炉設定温度で約1〜数分間、赤外線ベルト式加熱炉の中で焼成される。この焼成は、わずか約1秒間しか続かない約650℃〜約1000℃のピーク加熱炉設定温度の間に、約300℃〜約550℃で有機物の焼き尽くしが可能になると思われる温度プロファイルに従って一般に実施されるが、より低い温度で焼成するときは、1分間、3分間、または5分間といったより長い焼成時間が可能である。
【0061】
焼成は、典型的には、空気雰囲気中で行われる。例えば、約1〜約6.4メートル(40〜250インチ)/分、好ましくは5〜6メートル/分(約200〜240インチ/分)のベルト速度で6ゾーンの焼成プロファイルを使用することができる。好ましい例では、ゾーン1は長さ約18インチ(45.7cm)であり、ゾーン2は長さ約18インチ(45.7cm)であり、ゾーン3は長さ約9インチ(22.9cm)であり、ゾーン4は長さ約9インチ(22.9cm)であり、ゾーン5は長さ約9インチ(22.9cm)であり、ゾーン6は長さ約9インチ(22.9cm)である。各連続するゾーンの中の温度は、必ずしも必要というわけではないが、典型的には、各ゾーン以前のゾーンよりも高く、例えば、ゾーン1が350〜500℃、ゾーン2が400〜550℃、ゾーン3が450〜700℃、ゾーン4が600〜750℃、ゾーン5が750〜900℃、およびゾーン6が800〜970℃である。当然、各ゾーンが約5〜約20インチ(約12.7〜約50.8cm)のゾーン長さおよび650〜1000℃の焼成温度を具える4以上のゾーン、例えば4ゾーン、5ゾーン、6ゾーン、7ゾーン、8ゾーンまたは9ゾーンまたはこれより多いゾーン、を有する焼成の構成は、本発明によって想定されている。
【0062】
図1Eは、ペースト500の金属部分を焼結し、ペースト500のガラスフリットを溶融させ、これにより電気接点501を製造することを説明する。
図1Eに概略的に示すとおり、焼成の間に、前面側ペースト500は焼結して窒化ケイ素層30に浸透(すなわち、ファイヤースルー)し、これによりn型層20との電気接点501を作製する。焼成の間に、裏面側を覆うアルミニウムを含有するペースト80は融解し、シリコンウェーハ10と反応して、次いで、凝固して、高濃度のAlドーパントを含有する部分的なp+層40を形成する。この層は、一般に、裏面電界(BSF)層と呼ばれ、太陽電池のエネルギー変換効率を向上させるのに役立つ。裏面側電極81は、ペースト80を焼成することによって形成されてもよい。銀または銀/アルミニウムを含有するペースト70は焼成されて、裏面側接点となる。裏面側ペースト71のエリアは、モジュール製作の際のタブ取り付けのために使用することができる。本願明細書に開示されるペースト、太陽電池接点および太陽電池の製造プロセスは、本発明の実施形態として想定されている。
【0063】
図2は、ペースト組成物の例示の製造方法2000を説明する。2002において、銀、ガラスフリット、および金属添加剤が有機ビヒクルと合わされる。2004において、この銀、ガラスフリット、および金属添加剤は有機ビヒクルに分散される。
【0064】
図3は、太陽電池接点の例示の製造方法3000を説明する。3002において、ペーストがシリコン基板に付与される。このペーストは、銀粒子、ガラスフリット、および金属添加剤を含有することができる。3004において、このペーストは加熱され、銀粒子が焼結され、ガラスフリットが溶融される。
【0065】
図2および3に示されてはいないが、この方法は、以下の特徴のうちの1以上を伴うことができる。このペーストは、このペースト組成物の約50重量%以上約92重量%以下の銀;ペースト組成物の約1重量%以上約15重量%以下のガラスフリット;およびペースト組成物の約0.01重量%以上約5重量%以下の金属添加剤を含有する。このペーストは、このペースト組成物の約0.02重量%以上約3重量%以下の金属添加剤を含有する。このペーストは、このペースト組成物の約0.05重量%以上約1重量%以下の金属添加剤を含有する。
【0066】
当該金属添加剤は、バナジウムアルコキシド、バナジルアルコキシド、アンチモンアルコキシド、リンアルコキシド、イットリウムアルコキシド、コバルト(III)アルコキシド、コバルト(II)アルコキシド、ニッケルアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、スズアルコキシド、亜鉛アルコキシドおよびリチウムアルコキシドからなる群から選択される1以上の有機金属化合物を含む。この金属添加剤は、バナジウムアセチルアセトナート類、バナジルアセチルアセトナート類、アンチモンアセチルアセトナート類、イットリウムアセチルアセトナート類、コバルト(III)アセチルアセトナート、コバルト(II)アセチルアセトナート、ニッケルアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジブチルスズアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナートおよびリチウムアセチルアセトナートからなる群から選択される1以上の有機金属化合物を含む。この金属添加剤は、金属がバナジウム、アンチモン、リン、イットリウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、スズ、亜鉛またはリチウムである、2−メチルヘキサン酸金属塩、2−エチルヘキサン酸金属塩、および2−プロピルヘキサン酸金属塩からなる群から選択される1以上の有機金属化合物を含む。
【0067】
当該金属添加剤は、バナジウムアセチルアセトナート類、バナジルアセチルアセトナート類、またはこれらの組み合わせからなる。この金属添加剤は、バナジルアセチルアセトナート類からなる。
【実施例】
【0068】
以下の実施例は、本発明を例証する。以下の実施例および本願明細書の他の箇所ならびに請求項中に特段の記載がない限り、すべての部数および百分率は重量に基づき、すべての温度は℃表示であり、圧力は大気圧かまたは大気圧付近である。
【0069】
15.6cm×15.6cm、厚さ150〜250ミクロン(150〜250μm)の多結晶シリコンウェーハを、窒化ケイ素の反射防止コーティングでコーティングする。これらのウェーハの面積抵抗は約55〜80Ω/squareである。表7および表8に示すペースト組成物をペーストへと配合し、そのペーストを、それぞれシリコンウェーハに塗布する。表7では、約0.05〜3.5ミクロン(0.05〜3.5μm)のメジアン粒径を有する銀粒子を使用する。表8では、銀粉末混合物1は、1〜4ミクロン(1〜4μm)の中粒径を持つ二峰性粒度分布を持つFerro Ag粉末(81重量%)と、0.2〜0.6ミクロン(0.2〜0.6μm)の中粒径を持つサブミクロンAg懸濁液(3重量%)との混合物であり、銀粉末混合物2は、1〜4ミクロン(1〜4μm)の中粒径を持つ二峰性粒度分布を持つFerro Ag粉末(79重量%)と、0.2〜0.6ミクロン(0.2〜0.6μm)の中粒径を持つサブミクロンAg懸濁液(5重量%)との混合物であり、銀粉末混合物3は、1〜4ミクロン(1〜4μm)の中粒径を持つ二峰性粒度分布を持つFerro Ag粉末(83重量%)と0.2〜0.6ミクロン(0.2〜0.6μm)の中粒径を持つサブミクロンAg(1重量%)との混合物であり、銀粉末混合物4は、約0.8〜1.6ミクロン(0.8〜1.6μm)のメジアン粒径を有する球形のAg粒子(81重量%)と0.2〜0.6ミクロン(0.2〜0.6μm)の中粒径を持つサブミクロンAg(3重量%)との混合物であり、すべて、オハイオ州、クリーブランドのFerro Corporationから市販されている。PbフリーのガラスAは350〜525℃のTgを持つPbフリーのガラスであり、PbフリーのガラスBは280〜450℃のTgを持つPbフリーのガラスである。有鉛ガラス混合物1は、350℃〜550℃のTgを持つ2種の鉛ベースのガラスであり、有鉛ガラス2は280〜450℃のTgを持つ鉛ベースのガラスである。有機バナジウム化合物は、バナジウム(IV)オキシドビス(2,4−ペンタンジオナート)である。接着促進剤は1種の金属酸化物である。有機ビヒクルは、Ethyl Cellulose Std. 4、0.45重量%;Ethyl Cellulose Std. 45、1.28重量%;Thixatrol(登録商標) ST、0.3重量%;Triton(登録商標) X−100、0.18重量%;N−Diffusol(登録商標)、0.5重量%;Dowanol(登録商標) DB、8.45重量%;およびテルピネオール、3.84重量%のブレンドである。
【0070】
280メッシュまたは325メッシュのスクリーンを使用して、前面側接点フィンガーラインについて約110ミクロン(110μm)の間隔、およびライン間について約2.5mm間隔で、このペースト組成物を印刷する。前面側接点を印刷した後に、約250℃で約3分間、試料を乾燥する。印刷したウェーハを、Despatch製の6ゾーンの赤外線(IR)ベルト式加熱炉を約5メートル(200インチ)/分のベルト速度で、最後のゾーンにおいて880〜940℃の温度設定点で使用して、空気中で共焼成した。これらのゾーンは、それぞれ、長さが18インチ(約45.7cm)、18インチ(約45.7cm)、9インチ(約22.9cm)、9インチ(約22.9cm)、9インチ(約22.9cm)および9インチ(約22.9cm)である。ほとんどの試料についての焼成されたフィンガーの幅は約80〜約160ミクロン(約80〜約160μm)であり、焼成後の厚さは約10〜50ミクロン(10〜50μm)である。
【0071】
これらの太陽電池の電気的性能を、ニュージャージー州デュモン(Dumont)のNPC Incorporated製のソーラーテスター、モデル NCT−M−180Aを用いて、AM 1.5の太陽光条件下で、ASTM G−173−03に従って測定する。この電気的試験の結果を表7および表8に提示する。EFFはセル効率(η)を意味し、R
sはこれまでに定義されている。
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
主として、本願明細書中の実施例は、太陽電池接点の形成のための導体ペーストを形成することにおいて使用するための導電性組成物に関するが、本発明は、抵抗器および半導体ペースト、インク、テープなどを形成するための、本願明細書に開示される技術思想の使用も企図するということは分かるであろう。さらには、このような組成物は、厚膜を形成することにおいて使用するための材料として考えられてもよいし、考えられなくてもよい。従って、導電性の、抵抗性のまたは半導性のパスまたはパターンを基板上に形成するために、出願人らの独自の導電性の組成物を利用することができる。このような導電性組成物は、インク、ペースト、テープなどを含めた種々の形態をとることができる。加えて、本発明のペーストに関連してシリコン以外の基板を用いることができる。本願明細書に開示される組成物の使用は、様々な電子部品およびデバイスにおいても想定される。
【0075】
上記の内容は本発明の例を含む。本発明を説明する目的で、成分または方法論の思いつくあらゆる組み合わせを記載することは、当然、可能ではないが、当業者は、本発明の多くのさらなる組み合わせおよび置き換えが可能であるということを認識しうる。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲に含まれるすべてのそのような変更態様、改変態様およびバリエーションを包含することが意図されている。さらには、用語「含有する」、「有する」、「包含する」および「伴う」が、発明を実施するための形態または請求項のいずれかにおいて使用される範囲では、そのような用語は、請求項において移行句として用いられるときに「含む」が解釈されるように、用語「含む」と同様に包含的であることが意図されている。しかしながら、いくつかの例では、用語「含有する」、「有する」、「包含する」および「伴う」が、発明を実施するための形態または請求項のいずれかにおいて使用される範囲で、このような用語は、請求項において移行句として用いられるときに「〜からなる」または「実質的に〜からなる」が解釈されるように、用語「〜からなる」または「実質的に〜からなる」と同様に部分的にまたは全体的に排除的であることが意図されている。