特許第6043301号(P6043301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴィンセント ダンゴイスの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043301
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】血管用針システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20161206BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   A61M5/32 540
   A61M25/06 500
   A61M25/06 580
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-555863(P2013-555863)
(86)(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公表番号】特表2014-508605(P2014-508605A)
(43)【公表日】2014年4月10日
(86)【国際出願番号】EP2012053457
(87)【国際公開番号】WO2012117028
(87)【国際公開日】20120907
【審査請求日】2015年2月10日
(31)【優先権主張番号】61/448,084
(32)【優先日】2011年3月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11156533.9
(32)【優先日】2011年3月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513218488
【氏名又は名称】ヴィンセント ダンゴイス
【氏名又は名称原語表記】DANGOISSE, Vincent
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント ダンゴイス
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−524590(JP,A)
【文献】 特表2010−524586(JP,A)
【文献】 特表2005−514114(JP,A)
【文献】 米国特許第5704914(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液を可視化するための血管針システムであって,
a)はす切りを施した遠位端(5)と,近位端(4)と,これら端部間における管壁とを有する管よりなる血管針(2)を備え,前記管壁が,外面と,前記端部間に液体を軸線方向に流すためのキャビティとを有し,前記血管針(2)は,少なくとも1つの側部開口(6)を有すると共に前記近位端に近位側のベース本体(3)が固定され,更に,
b)前記血管針(2)の少なくとも一部を覆う透明な管状のカニューレ(1)を備える血管針システムにおいて,
該血管針システムが,前記液体の検出キャビティと,前記血管針(2)の前記管壁の前記外面と前記カニューレ(1)の内面との間に位置する少なくとも1個の補強肩部(9)とを更に備え,前記少なくとも1つの側部開口(6)と前記カニューレ(1)の前記内面との間の距離が前記少なくとも1個の補強肩部(9)によって維持されることで,前記血管針(2)の前記管壁の前記外面の少なくとも一部が前記カニューレ(1)の前記内面に直接接触することを特徴とする血管針システム。
【請求項2】
請求項に記載の血管針システムであって,前記少なくとも1個の補強肩部(9)が,前記カニューレ(1)の前記内面に結合され,好適には該内面の一部を構成することを特徴とする血管針システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の血管針システムであって,前記少なくとも1個の補強肩部(9)が,前記血管針(2)の前記管壁の前記外面に結合され,好適には該外面の一部を構成することを特徴とする血管針システム。
【請求項4】
請求項の何れか一項に記載の血管針システムであって,前記少なくとも1個の補強肩部(9)が,前記血管針(2)のスリット部を始点とし,前記血管針(2)の前記ベース本体(3)に向けて延在することを特徴とする血管針システム。
【請求項5】
請求項1〜の何れか一項に記載の血管針システムであって,前記少なくとも1つの開口部(6)が,円形,多角形,楕円形もしくは不規則形の穴で構成され,又は前記管壁の軸線方向に沿って延在するスリットで構成されていることを特徴とする血管針システム。
【請求項6】
請求項1〜の何れか一項に記載の血管針システムであって,前記遠位端(5)と前記少なくとも1つの開口部(6)との間の距離が10 mm以上であることを特徴とする血管針システム。
【請求項7】
請求項1〜の何れか一項に記載の血管針システムであって,前記少なくとも1つの開口部(6)が前記近位端(4)まで延在することを特徴とする血管針システム。
【請求項8】
請求項1〜の何れか一項に記載の血管針システムであって,前記少なくとも1つの開口部(6)が前記近位端(4)の手前で終止することを特徴とする血管針システム。
【請求項9】
請求項1〜の何れか一項に記載の血管針システムであって,前記管壁に沿って少なくとも2つの開口部(6)が設けられ,これら開口部は前記管の周方向で互いに離間していることを特徴とする血管針システム。
【請求項10】
請求項1〜の何れか一項に記載の血管針システムであって,前記カニューレ(1)が,前記近位端に固定されている前記血管針(2)のベース本体(3)の少なくとも一部分をも覆うと共に該部分に着脱可能に結合されていることを特徴とする血管針システム。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の血管針システムであって,前記カニューレ(1)が前記ベース本体(3)の前記部分に対してねじ部(10)により着脱可能に結合されていることを特徴とする血管針システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,血液を可視化するために血管針を備える血管針システムに関するものである。本発明の血管針システムは,管を備え,該管は,はす切りを施した遠位端及び近位端を有し,これら端部間における管壁は,外面及び端部間において液体を流通させるための軸線方向へのキャビティを有し,血管針には少なくとも1つの側部開口と,管の近位端に固定される近位側のベース本体が設けられている。本発明の血管針システムは更に,内面を有すると共に,血管針の少なくとも一部を覆う透明で管状のカニューレを備える。
【背景技術】
【0002】
医療分野において,治療及び診断を目的とした多くの処置では,血管系(静脈又は動脈)へのアクセスが不可欠である。この場合のアクセスは,針を使用して血管を直接的かつ経皮的に穿刺することで可能である。針は通常,基本的には金属製で中空の管によって構成されると共に,一端(遠位端)には勾配がつけられ,他端(近位端)は透明プラスチック製又は金属製のハブ又はベース本体に埋設されている。
【0003】
穿刺は,穿刺部の上方を圧迫することで静脈が基本的に目視可能となる前腕部/手首部を除き,通常はブラインド状態で行われる。目視不能時の血管穿刺は,動脈の場合には拍動の触診に基づいて行われ,頚静脈又は大腿静脈等の深部静脈の場合には想定される解剖学的部位に基づいて行われる。
【0004】
血管穿刺の成否は,針を通しての血液流出に依存する。静脈への薬液又は液体注射において,静脈穿刺は通常,中空の金属針上を摺動するプラスチック管(カニューレ)よりなるシステムで達成される。即ち,血液が金属針のハブ又はベース本体から流出した直後に,プラスチック管が金属針上に沿って静脈により深く挿入され,その後に金属針が抜去される。この段階で,カニューレは,規格化された結合部,例えばルアーロック結合部を有する灌流システムに取り付けることができる。
【0005】
このような血管用針システム(金属針及びプラスチックカニューレ)は,動脈へのアクセスにも使用可能であるが,一般的には他の技術が利用されている。即ち,剥き出しの金属針で血管を穿刺した後,微細で柔軟なワイヤ(好適には,所要に応じて親水性コーティングを施した金属ワイヤ)を,針の中空キャビティから動脈内腔に漸進的に押し込む。次に針を,動脈内腔に位置するワイヤでガイドしながら抜去することができ,引き続いて,より長く,かつ遠位端側にテーパを有するプラスチック管(ダイレータ)を覆うプラスチック管(イントロデューサ又はシース)を含む器具をワイヤ上から血管腔内に挿入する。この技術は,「セルジンガー法」と称されている。
【0006】
何れの場合においても,針のベース本体における血液の流出は,血管に支障なくアクセスできたことを表すものである。しかしながら,ベース本体において血液が観察されるまでに遅延が生じることがあり,この遅延は,とりわけ小血管及び血管圧が低い(静脈では一般的)場合,又は長針又は小径針を使用する場合に生じる。その結果,血管腔に正確にアクセスできたにも関わらず,施術者は血管を探し続け,針を誤って動かす可能性がある。これにより,血管へのアクセスが失敗し,又は痛みを伴い,又は外傷及び/又は出血を生じる恐れがある。従って,血液の流出をより迅速に可視化して,施術者による血管穿刺処置をより容易で安全にすることが望まれる。血管穿刺後に血液を観察可能とする技術には,針のベース部に透明なハブを使用する基本技術に止まらず,より複雑な技術,例えば針とその被覆管に開口部又は窓を設けたり,針を覆う異なる管にチャネルを設け,かつ透明な材料を使用する技術も含まれる。
【0007】
例えば,特許文献1(米国特許出願公開第2008/0262431号公報)及び特許文献2(米国特許出願公開第2008/0262430号公報)に開示されているシステムは,第1に近位側に設けられた少なくとも1つの開口を有する針と,第2に針の本体上に摺動可能に配置されるダイレータと,第3に少なくとも一部が半透明又は透視性材料で構成される医療品(シース)とを備える。ダイレータ同様,針自体には少なくとも1つの開口部/開孔(形状又は長さは任意)が設けられており,その開口部により,針の内腔に進入する血液がダイレータとシースとの間のスペース又はチャネルに流入する。ダイレータとシースとの間のスペースに関しては,幾通りかの形成手法が記載されている。例えば,ダイレータ外面又はシース内面における全体的な周方向形状(円形又は楕円形など)を変形させ,又はダイレータ外面又はシース内面に突起を形成することにより,スペースを形成するものである。
【0008】
特許文献3(米国特許出願公開第2003/0153874号公報)は,血管アクセスシステムを開示している。このシステムは,第1に近位側に設けられた少なくとも1つの開口を有する針と,第2に環状凹部を間に有し,また通路を有することにより針周りに同軸状に配置される透明なダイレータと,第3にやはり透明に構成されると共に,ダイレータ上に同軸状に密着し,ダイレータを通る開口により,血液がダイレータからダイレータ及びシース間の環状スペースに流入することを可能にした任意のシースとを備える。この場合に血液は,ダイレータに連通する任意のサイドポートを流通することができる。更に,このシステムでは,針の内腔を通して血管内腔に前進させるガイドワイヤが使用される。好適には,ダイレータ及びシースを半透明又は透視性とすることにより,施術者は,血液が針に流入した後に開口を流通して針及びダイレータ間の環状スペースに流入したとき,又はダイレータのスペースに流入又はすペースを流通したとき,又は開口を流通してダイレータ及びシース間の環状スペースに流入したときに,血液を視認することできる。
【0009】
特許文献4(国際公開第2007/070584号パンフレット)は,透明又は半透明部を有する針を開示している。この針は,金属又は他の不透明材料よりなる内側部材と,透明又は半透明部分を有する外側部材とで構成されている。内側部材には1つ以上の開口が設けられており,これにより内側部材内における血液又は液体が可視化される。これら二部材を互いに結合して1本の針を構成するが,他の実施形態において,1つ又は2つの内腔を有する針として機能する。この文献に開示されている針は,血管にアクセスして医療機器,例えば血管形成用の心臓カテーテルを導入するために使用される。
【0010】
更に,特許文献5(米国特許第5704914号明細書)は,透明又は透視性のハブを通して血液を可視化するシステムを開示している。このシステムは堅くて透過性を有するプラスチックを備えるため,針の先端部を血管腔に成功裏に穿刺したときに,システム内の血液を観察することが可能である。更に,このシステムでは,針の内腔を通して前進させるガイドワイヤが使用される。
【0011】
しかしながら,このような機器は,針及びプラスチックシース(カニューレ)間で直接視認できる血液を常に正確に検出可能とするものではない。針の外面がシース内面に密着し,従って血液の流通を妨げられる場合があるからである。更に,特許文献1〜3によれば,血液の可視化を可能にする開口部がダイレータ及び針部分の双方に配置されているため,血流に対する向きを若干変える必要があり,従って可視化の遅延が生じるのみならず,装置の最終寸法を増大させることになり,小径血管への適用が適切ではなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0262431号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0262430号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0153874号公報
【特許文献4】国際公開第2007/070584号パンフレット
【特許文献5】米国特許第5704914号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は,上述した問題点を克服すると共に,針部分における血液の流出を迅速に可視化することにより,施術者による処置をより容易で安全なものとし,併せて,針の外面とシース(カニューレ)の内面との間における血液の正確な検出及び直接的な可視化を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題を解決するため,本発明は,冒頭に記載した血管針システムを提供する。この血管針システムは,冒頭に記載した特徴に加えて,カニューレの内面及び少なくとも1つの側部開口間における距離を保つために設けた液体用の検出キャビティを更に備え,これにより少なくとも1つの側部開口及びカニューレの内面間においてスペースを設けて,液体を捕集かつ検出することを特徴とするものである。
【0015】
本発明に係る血管針システムは,針部分における血液の流出を遅滞なく可視化すると共に,針の外面及びシース(カニューレ)の内面間における血液の正確な検出を可能とする。これは,少なくとも1つの側部開口及びカニューレの内面間における距離を保つための検出キャビティが設けられているからである。この検出キャビティにより針の外面及びカニューレの内面間に小さなスペースが形成され,針の先端部が血管に進入した直後に,針の開口部を流通する血液でこのスペースが汚染される。更に,本発明に係る血管針システムにおいて,液体(血液)はチャネル又は複雑な回路を流通する必要がない。
【0016】
好適には,上述の検出キャビティは,少なくとも1つの側部開口よりも大きく又は小さく形成し,少なくとも1つの側部開口に対して少なくとも部分的に重ねて連通させるものである。
【0017】
一実施形態において,少なくとも1つの側部開口とカニューレ内面との間の検出キャビティは,バキューム成形,トラクション成形,加熱成形又はモールディング等の成形技術によりカニューレにおける透視部を外側に変形させることにより,例えば楕円形又は半楕円形に形成される。この実施形態において,カニューレの横断面は,針の遠位端及び近位端では円形であるが,針の開口部部分では楕円形又は半楕円形である。これは,カニューレが開口部部分においてのみ楕円形又は半楕円形を呈し,開口部の前後においては針に密着していることを意味する。
【0018】
他の実施形態において,少なくとも1つの開口部及びカニューレの内面間における検出キャビティは,針の開口部における近位端及び/又は遠位端の断面を,例えば楕円形又は半楕円形に変形することによって形成される。
【0019】
代替的な実施形態において,少なくとも1つの側部開口及びカニューレの内面間における検出キャビティは,カニューレの内壁材料の一部を取り除くか,又は針の外壁材料の一部を取り除くことにより形成される。
【0020】
代替的な実施形態において,少なくとも1つの側部開口及びカニューレの内面間における検出キャビティは,血管針の管壁における外面及びカニューレの内面間における少なくとも1個の補強肩部により形成され,この補強肩部により,少なくとも1つの側部開口及びカニューレの内面間における距離が保たれる構成とする。
【0021】
上述した少なくとも1個の補強肩部は,カニューレの内面に結合され,好適にはこの内面の一部とする。
【0022】
他の実施形態において,上述した少なくとも1個の補強肩部は,針の管壁における外面に結合されるか,又はこの外面の一部とする。
【0023】
好適には,上述した少なくとも1個の補強肩部は,側部開口に沿って配置されるか,又は側部開口に対して近位部又は遠位部に配置されている。
【0024】
上述した開口部は,任意の寸法及び形状とすることができる。開口部の形状は,円形穴状,多角形穴状,楕円形穴状又は不規則な穴状又はスリット状であると共に,管壁の軸方向に沿って延在している。好適には,管の遠位端及び少なくとも1つの開口部間における距離は10 mm以上とする。好適には,開口部は,管の遠位端又は近位端に隣接する位置,又は管の中央に設けるものとする。管に複数の開口部が設けられている場合,これら開口部は管の外周上で互いに離間させると好適である。スリット状の開口部は,管の近位端まで延在するか,又は延在しないものとすることができる。
【0025】
本発明に係る有利な実施形態において,透明で管状のカニューレは,ベース本体の少なくとも一部も覆うと共に,例えばねじ部によってこの一部と着脱可能に結合されている。
【0026】
本発明に係る血管針システムは,橈骨動脈の穿刺,深部血管の穿刺,カニューレの挿入又は血管内への液体又は薬液の輸液に使用するものである。
【0027】
本発明のその他の特徴は,各請求項に記載したとおりである。
【0028】
以下,本発明を図示の実施形態について更に詳述する。なお,以下の実施形態が例示に過ぎず,本発明を限定するものでないことは,言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る血管針システムを示す縦断面図である。
図1a】針のベース本体とカニューレとの間のねじ部を示す詳細図である。
図2】血管針システムの一実施形態を示す,図1のII-II線に沿う拡大断面図である。
図2a】血管針システムの他の実施形態を示す,図2と同様な断面図である。
図3a】血管針に補強肩部を設けた血管針システムの一実施形態を示す側面図である。
図3b】血管針に補強肩部を設けた血管針システムの他の実施形態を示す側面図である。
図4a】補強肩部を設けたカニューレの一実施形態を破断して示す斜視図である。
図4b】補強肩部を設けたカニューレの他の実施形態を破断して示す斜視図である。
図5a】針の外壁材料を部分的に除去した血管針システムを一部破断して示す側面図である。
図5b】カニューレの内壁材料を部分的に除去した血管針システムを一部破断して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は,プラスチックカニューレ1と,これにより覆われた中空金属針2とで構成される血管針システムを示す。プラスチックカニューレ1は,透明材料で構成されると共に,針管の近位端に留められたプラスチック製のハブ又はベース本体3上にねじ固定されている。また,針管の遠位端5にははす切りを施した。図1に示すように,針2は円筒状の金属管として構成し,スリット状のスリットを設けることができる。開口部6は,好適には,はす切りを施した管の遠位端から1.5 ± 0.5 cmの距離を始点とし,勾配が付けられていない近位端4に向けて延在するものである。針の管壁を通る開口部は,任意の寸法又は形状,例えば円形,多角形,楕円形,又は不規則なものとすることができる。
【0031】
スリット状の開口部6は,はす切りが施されていない近位端で終端させるか,又はこの近位端に到達する前に終端させることができる。開口部6により,穿刺が成功したかを迅速かつ直接的に判断することが可能である。即ち,開口部6により,はす切りを施した針の遠位端5が血管に進入した直後に,流入する血液の直接的な可視化が達成される。これは,針のキャビティから該針の管壁を流通する血液が,金属針2及びプラスチックカニューレ1間におけるスペースを汚染するからである。これにより,穿刺が成功したかを迅速に視認可能とするものである。
【0032】
例えば橈骨動脈などの小動脈の穿刺においては,22ゲージの金属針を好適には使用するものであり,針を覆うプラスチックカニューレの内腔により0.021インチ(0.53 mm)以下のガイドワイヤを自由に通過させることができる。この場合,円筒状で中空の針の長さは,はす切りを施した遠位端5からベース本体3に向けて3±1cm以内とするのが好適である。これは,針の短縮した長さが,比較的浅く位置する橈骨動脈の穿刺には十分だからである。プラスチックカニューレ1の先端部は,しっかりとテーパがつけられると共に,はす切りを施した金属針の端部に対して可及的に近接する位置から延在する。カニューレは,透明な又は容易に着色するプラスチック材料で構成すると有利である。
【0033】
更に,この透明なカニューレのハブ部分7は,金属針のベース本体3に着脱可能に結合できるよう構成されている。図1において,ねじ部10として示す結合部により,これら2個の要素をねじ固定することができる。この構成は,カニューレ1及び金属針2を互いに固定し,これにより施術者が血管を探しているときに針2全体を前後に自由に動かすことを可能とするものである。好適には,上述のねじ部は,カニューレ1を針2上に固定するために必要な最小寸法とすると共に,短時間でねじ外し可能とする。システム全体の長さは,3cm〜3.5cmのベース本体3と,針2部分自体と,外部における3±1cmのベース本体3とを合わせて僅かに6〜7cmとするのが好適である。また,カニューレ1のハブ7は,ルアーロック可能とするのが好適である。
【0034】
血管針システムの他の実施形態では,大量の液体の恒久的な点滴に必要な大寸法のカニューレを挿入するために,又はより深部に位置する血管(例えば大腿静脈又は大腿動脈)のカテーテル法のために,より大寸法の針が使用可能とされている。これらの実施形態では,21〜16ゲージ又はそれ以下の針を使用すると共に,針の全長を9cm以上とすることができる。
【0035】
システムの管壁に設けるスリットは,穿刺対象としての血管の位置や深さに応じて,針のはす切り部から3〜4cm(又はそれ以上)離れた部位を始点とすることができる。
【0036】
図2に示す実施形態では,プラスチックカニューレ1の横断面が,針2のはす切り部では円形であるのに対して,スリット部では楕円形であるため,プラスチックカニューレ1と,開口部6に対向する金属針2の部分との間におけるスペース8が拡大している。図2aに示す実施形態では,キャビティ(スペース8)を,針2の管壁外面と,カニューレ1の内面との間に配置される2個の補強肩部9により形成する。
【0037】
スリット6に沿って配置する少なくとも1つの長手方向補強肩部9は,スリット部分を始点として針2のベース本体3に向けて延在する。
【0038】
図3aに示す実施形態において,針2の外面には,開口部6に対して近位部に位置する2個の補強肩部9が設けられている。図3bに示す他の実施形態において,2個の補強肩部9は,針2の外面上における開口部6に沿って配置されている。針の外面2に配置されている補強肩部9は,カニューレ1の内面及び針2の外面間における距離を保つものである。
【0039】
図4a及び図4bは,異なる長さの補強肩部9が設けられたカニューレ1の内面を示す。カニューレ1の内面に配置されているこれら補強肩部9は,カニューレ1の内面及び針2の外面間における距離を保つものである。
【0040】
図5a及び図5bは,検出キャビティを形成するための二通りの実施形態を示す。図5aの場合には針2の外壁材料の一部が取り除かれているのに対して,図5bの場合にはカニューレ1の内壁材料の一部が取り除かれている。何れの場合においても,検出キャビティが開口部6及びカニューレ1の内面間に形成されるものである。
図1
図1a
図2
図2a
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b