(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043314
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】抽気システムの故障を診断するための方法
(51)【国際特許分類】
B64D 33/00 20060101AFI20161206BHJP
B64D 13/02 20060101ALI20161206BHJP
B64F 5/00 20060101ALI20161206BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20161206BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
B64D33/00 Z
B64D13/02
B64F5/00 B
F02C7/00 A
F02C7/00 F
F01D25/00 V
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-96418(P2014-96418)
(22)【出願日】2014年5月8日
(65)【公開番号】特開2014-223904(P2014-223904A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2014年7月1日
(31)【優先権主張番号】1308509.7
(32)【優先日】2013年5月13日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509133300
【氏名又は名称】ジーイー・アビエイション・システムズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GE AVIATION SYSTEMS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ジュリア・アン・ハワード
【審査官】
田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−096897(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0138184(US,A1)
【文献】
特開平11−222198(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第02378248(GB,A)
【文献】
特開2006−273183(JP,A)
【文献】
特表2005−518307(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0312420(US,A1)
【文献】
特開平05−139392(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0276832(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 13/02
B64D 33/00
B64F 5/00
F02C 7/00
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのバルブ、少なくとも1つの抽気システムセンサを含む抽気システムに動作可能に連結されたエンジンを有する航空機における抽気システムの故障を診断する方法であって、
センサ出力を定義するために前記抽気システムセンサの前記少なくとも1つからセンサ信号を受信するステップと、
前記センサ出力に対する参照値を航空機の稼働中に定義するステップと、
前記センサ出力を前記参照値と比較するステップと、
前記比較に基づいて前記抽気システムにおける故障を診断するステップと、
前記診断した故障の指示を提供するステップと
を含み、
前記センサ信号を受信するステップは、温度センサから温度センサ出力を受信することと、前記エンジンのファン速度を示すファン速度出力を受信することとをさらに含み、
前記故障は、履歴データに対する増大する前置冷却器出力温度傾向、および、前置冷却器出力温度とファン速度の関係のシフトを示す複数の比較に基づいて診断される
方法。
【請求項2】
前記センサ出力は、前記航空機の飛行の複数の段階からのものである請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記故障は、前記比較が所定数の飛行にわたって所定回数だけ前記参照値を超えたとき診断される請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記故障は前置冷却器制御バルブを使用して診断される請求項1乃至3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記センサ信号を受信するステップは、前記抽気システムの空気圧を示す圧力センサ出力を受信することをさらに含む請求項1乃至4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
圧力調整遮断バルブまたは抽気調整器に伴う故障は、圧力変動が決定されたとき診断される請求項1乃至5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
高段階調整器または高段階バルブに伴う故障は、低圧が決定されたとき診断される請求項1乃至5のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記高段階調整器または高段階バルブに伴う前記故障は、ファン速度が低いと決定されたとき診断される請求項7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抽気システムの故障を診断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の航空機は、熱気を航空機のエンジンから取り込み、空調および加圧を含めた航空機の他のシステムでの使用するための抽気システムを含む。現在、航空会社および整備士はこのシステムに故障または問題が発生するまで待機し、次いで計画整備、またはより可能性が高い計画外整備の間に原因の識別および修理を試みている。また、故障の発生は操縦士の裁量に基づいて手作業で記録される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】英国特許第2378248号公報
【発明の概要】
【0004】
一実施形態において、本発明は、少なくとも1つのバルブ、少なくとも1つの抽気システムセンサを含む抽気システムに動作可能に連結されたエンジンを有する航空機における抽気システムの故障を診断する方法に関する。
【0005】
この方法は、センサ出力を定義するために抽気システムセンサの少なくとも1つからセンサ信号を受信するステップと、センサ出力をセンサ出力のための参照値と比較するステップと、比較に基づいて抽気システムにおける故障を診断するステップと、診断した故障の指示を提供するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】例示的な抽気システムの一部の概略図である。
【
図2】本発明の各実施形態を実施可能な航空機および地上システムの斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態による航空機の抽気システムの故障を診断する方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1はターボファン式ジェットエンジンなどのファン14を有するエンジン12に連結された抽気システム10の一部の概略を示す。様々な抽気ポート16は、抽気システム10に高圧圧縮空気を供給するために、エンジン12の様々な部分に接続可能である。制御機構18は、抽気システム10を制御するために利用可能である。前置冷却器20と、抽気調整器21と、前置冷却器制御バルブ(PCCV)を含めた様々なバルブ22と、例えば温度センサ24、ファン速度センサ26、および、圧力センサ28を含めた様々なセンサとを含めて様々な構成要素を抽気システム10に含めることが可能である。示した例において、温度センサ24および圧力センサ28はPCCVの後に位置している。単一の温度センサ24および単一の圧力センサ28のみを例示しているが、センサが抽気システム10の様々な段階に含むことが可能であることを含めて、抽気システム10が任意の数のセンサを含むことが可能であることを理解されたい。さらに、センサは、例えばバルブの状態(例えば、全開、開、開閉中、閉、全閉)を含めて、バルブの設定および/または位置を示すための二値フラグを含めて、様々なパラメータを出力するために含むことが可能である。二値フラグは、例えば主翼の空気冷却装置からの漏れが検出されたか否か、または、温度または圧力が、指定した時間/データ周期にわたり1回だけまたは複数回にわたり限界を超えたと航空機が算出したか否かなどの多くの他の項目も示すことが可能である。これらのデータフラグは、連続的なデータが現在入手不可能であるシステム内の箇所から入手可能とすることができる。
【0008】
図2は、見やすいように一部のみを例示した抽気システム10を含むことが可能な航空機30を例示し、航空機30は本発明の実施形態の実施が可能である。例示したように、航空機30は機体32に連結された複数のエンジン12と、機体32内に定置されたコックピット34と、機体32から外側に延在する主翼組立体36とを含むことが可能である。制御機構18は、コックピット34が含むものとして例示し、かつ、コックピット34内に位置する操縦士が操作可能である。
【0009】
航空機30は、航空機30の適切な操作を可能にするさらに多くの複数の航空機システム38ならびにコントローラ40および無線通信リンク42を有する通信システムも含むことが可能である。コントローラ40は、抽気システム10を含めた複数の航空機システム38に動作可能に連結可能である。例えば、前置冷却器20(
図1)、抽気システム21(
図1)、様々なバルブ22(
図1)、温度センサ24、ファン速度センサ26、圧力センサ28は、コントローラ40に動作可能に連結可能である。
【0010】
コントローラ40は航空機30の他のコントローラとも接続可能である。コントローラ40はメモリ44を含むことが可能であり、メモリ44にはランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、または、ディスク、DVD、CD−ROMなどの1つもしくは複数の異なった種類のポータブル電子メモリ、または、これらの種類のメモリの任意の好適な組み合わせを含めることが可能である。コントローラ40は1つまたは複数のプロセッサ46を含むことが可能であり、このプロセッサは任意の好適なプログラムを実行可能である。コントローラ40はFMSの一部とすることができるか、または、FMSに動作可能に連結可能である。
【0011】
コンピュータ検索可能な情報データベースはメモリ44内に記憶可能であり、プロセッサ46がアクセス可能である。プロセッサ46は、データベースを表示する、またはデータベースにアクセスするための実行可能命令のセットを実行可能である。あるいは、コントローラ40は情報データベースに動作可能に連結可能である。例えば、このようなデータベースは代替のコンピュータまたはコントローラに記憶可能である。データベースが、複数のデータセットを有する単一のデータベース、互いにリンクされた複数の別個のデータベース、または、データの単純な表さえ含めて、任意の好適なデータベースを含むことが可能であることを理解されたい。このデータベースがいくつかのデータベースを組み込んでよいこと、または、このデータベースが実際にはいくつかの分離可能なデータベースであってよいことが企図されている。
【0012】
このデータベースは、センサ出力のための参照値に関連した履歴データ、ならびに、航空機30についての、および、一群の航空機に関連した抽気システム履歴データを含んでよいデータを記憶可能である。データベースは、履歴値または集積値を含めた参照値も含むことが可能である。
【0013】
あるいは、データベースはコントローラ40から分離可能であるが、コントローラ40へのアクセスが可能であるようにコントローラ40と通信可能であることが企図されている。例えば、データベースはポータブルメモリデバイスに搭載可能であり、この場合、航空機30はポータブルメモリデバイスを収容するポートを含んでよく、このポートは、コントローラ40がポータブルメモリデバイスの内容を読み出せるようにコントローラ40と電子的に通信することが企図されている。データベースは、無線通信リンク42を介して更新可能であること、および、このようにして、リアルタイムの情報をデータベースに含めることが可能であり、かつ、コントローラ40からアクセス可能であることも企図されている。
【0014】
さらに、このデータベースは、航空機運航センタ、運航業務部管理室、または、他の位置などの位置において航空機30から離れて位置してもよいことが企図されている。コントローラ40は、データベース情報をコントローラ40に提供可能な無線ネットワークに動作可能に連結可能である。
【0015】
商業用航空機を例示しているが、本発明の各実施形態の各部分は、コントローラまたは地上システム52のコンピュータ50内を含めて、どこでも実施可能であることが企図されている。さらに、上述したデータベースは、指定された地上システム52に位置してよいか、または、同システムを含んでよい目的地のサーバまたはコンピュータ50内にも位置してよいことが企図されている。あるいは、データベースは、地上の代替位置に位置してもよい。地上システム52は、コントローラ40、および、コンピュータ50から離れて位置するデータベースを含めて他のデバイスと無線通信リンク54を介して通信可能である。地上システム52は、運航管理室または運航業務部などの任意の種類の通信地上システム52であってもよい。
【0016】
コントローラ40およびコンピュータ50のうちの1つは、航空機30内の抽気システムの故障を診断するための実行可能命令のセットを有するコンピュータプログラムの全体または部分を含むことが可能である。この診断した故障は構成部品の不適切な動作ならびに構成部品の故障を含んでよい。本明細書において使用するように、用語「診断する」は、故障が発生した後の決定を指し、故障の発生時に先立って故障を知らしめる将来を考慮した決定を指す予測とは対照をなす。診断に伴い、コントローラ40および/またはコンピュータ50は故障を検出可能である。コントローラ40またはコンピュータ50のどちらが故障を診断するためのプログラムを実行するのかに関係なく、プログラムは、記憶済みの機械可読命令またはデータ構造を搬送または保持するための機械読み取り可能な媒体を含むことが可能なコンピュータプログラム製品を含むことが可能である。この機械読み取り可能な媒体は、汎用もしくは専用のコンピュータまたはプロセッサを備えた他の装置からアクセス可能な任意の入手可能な媒体であってもよい。一般に、このコンピュータプログラムは、特定のタスクの実行または特定の抽象データタイプの実装といった技術的効果を有するルチーン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造、アルゴリズムなどを含むことが可能である。機械実行可能命令、関連するデータ構造、および、プログラムは、本明細書で開示する情報の交換を実行するためのプログラムコードの例を示す。機械実行可能命令は、例えば、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、または、専用処理装置に特定の機能もしくは機能群を実行させる命令およびデータを含むことが可能である。
【0017】
航空機30およびコンピュータ50は、本発明の実施形態または実施形態の部分を実施するように構成可能な2つの例示的な実施形態を示しているにすぎないことを理解されたい。稼働中、航空機30および/またはコンピュータ50のいずれかは、抽気システムの故障を診断可能である。非限定的な例の方法により、航空機30が運航中である間、制御機構18は抽気システム10を操作するために利用可能である。温度センサ24、ファン速度センサ26、および、圧力センサ28を含めた各センサは抽気システム10の様々な特徴に関連したデータを出力可能である。コントローラ40および/またはコンピュータ50は、航空会社の整備士が以前に気付かなかった抽気システムの故障を診断または別の故障を検出するために、制御機構18、温度センサ24、ファン速度センサ26、圧力センサ28、航空機システム38、データベースからの入力、および/または、運航管理室もしくは運航業務部からの情報を利用可能である。中でも、コントローラ40および/またはコンピュータ50は、抽気システム10の動作のドリフト、傾向、ステップ、または、急変化を決定するために温度センサ24、ファン速度センサ26、および、圧力センサ28による経時的なデータ出力を解析可能である。コントローラ40および/またはコンピュータ50は、圧力の履歴、温度の履歴、航空機30の2つのエンジン間の圧力差、航空機30の2つのエンジン間の温度差などを決定するため、および、これらに基づいて抽気システム10の故障を診断するために、抽気システムのデータも解析可能である。抽気システムの故障を診断した後で、航空機30上で、かつ/または、地上システム52において指示を提供することができる。抽気システムの故障の診断は、飛行中に実行可能、飛行後に実行可能、または、任意の数の飛行の後で実行可能であることが企図されている。無線通信リンク42および無線通信リンク54は双方とも、コントローラ40および/またはコンピュータ50のいずれかが故障を診断可能となるようにデータを送信するために利用可能である。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、
図3は、抽気システム10の故障を診断するために使用可能な方法100を示し、この診断した故障は診断した機能停止を含むことが可能である。方法100は、抽気システム10の特徴に関連したセンサ出力を定義するために抽気システム10のセンサの少なくとも1つからセンサ信号を受信することによって102において開始される。これは、温度センサの出力が温度センサ24から受信可能であること、抽気システム10の空気圧を示す圧力センサの出力が圧力センサ28から受信可能であること、および、エンジンのファン速度を示すファン速度出力がファン速度センサ26から受信可能であることを含めて、航空機30の各センサの1つまたは複数から順次に、および/または、同時にデータを受信することを含むことが可能である。さらに、センサ信号を受信することは、複数のセンサ出力、および、様々なバルブ22の設定に関した情報を受信することを含むことが可能である。
【0019】
センサ出力からは、センサ出力を定義するために様々な他の情報を導出可能、または、その他で抽出可能な未加工データを含むことが可能であることが企図されている。受信した出力からセンサ出力を直接受信するか導出するかに関係なく、出力はセンサ出力と考えてもよいことを理解されたい。
【0020】
例えば、センサ出力は、集積したセンサデータを定義するために経時的に集積可能である。受信したセンサ出力を経時的に集積することは、受信したセンサ出力を飛行の複数の段階および/または複数の飛行にわたって集積することを含むことが可能である。この集積センサデータは、中央値、稼働中もしくは現在の中央値、または、履歴上の中央値を含むことが可能である。受信したセンサ出力を集積することは、現在の中央値および履歴上の中央値を含めた複数の値の集積を含むことが可能であることも企図されている。この集積センサデータは整備の後にリセット可能である。非限定的な例の方法により、この集積センサデータは、稼働中の履歴上の中央圧力値、稼働中の最近の中央圧力値、稼働中の履歴上の中央温度値、稼働中の最近の中央温度値、履歴上の標準偏差温度値、最近の標準偏差温度値、任意の数のデータ採取点にわたる最大温度、温度と示されたファン速度などのエンジンのパラメータとの間の関連性の指標、などを含むことが可能である。
【0021】
センサ出力は、飛行当たり1回または飛行当たり複数回受信可能である。データは航空機30の飛行のいくつかの様々な段階中に受信可能である。例えば、飛行の複数の段階は、離陸、下降、および、最も長い巡航部分を含むことが可能である。例えば、受信したセンサ出力は、複数の段階から受信したセンサ出力から算出した中央センサ出力の1つであってもよい。
【0022】
104において、センサ出力はセンサ出力のための参照値と比較可能である。参照値は、参照値が温度値、温度値を示す値、または、特定のファン速度での圧力値、圧力値などであってよいことを含めて、センサ出力に関連したいずれかの適切な参照値であってよい。センサ出力に対する参照値は、例えば、航空機の抽気システムに関連した履歴データまたは他の複数の航空機に対する履歴データを含めたセンサ出力に対する履歴参照値も含むことが可能である。したがって、出力信号は、同じ航空機に対する、および、一群の航空機全体に対してではない以前の飛行から得た結果と比較可能である。さらに、センサ出力に対する参照値は、温度センサ24、ファン速度センサ26、および、圧力センサ28の1つの出力を受信することによるなど飛行中に決定した値を含むことが可能である。このようにして、センサ出力に対する参照値は、稼働中に定義することができることを理解されたい。例えば、参照値は航空機の他のエンジンから算出した圧力とすることができる。あるいは、参照値は上述したデータベースの1つに記憶可能である。
【0023】
このようにして、センサ出力はセンサ出力に対する参照値と比較可能である。任意の好適な比較を実行可能である。例えば、比較は、センサ出力と参照値との間の差の決定を含むことが可能である。非限定的な例の方法により、比較は、最近の信号出力と履歴値との比較を含むことが可能である。比較は、任意の閾値を超える最大温度の指標の決定を含むことが可能である。あるいは、比較は、同じ航空機30のエンジン間の圧力差の決定を含むことが可能である。比較を飛行ごとに行うことも、データを一連の飛行にわたって個々のエンジン当たり処理することもできる。示されたファン速度に対する温度変化の依存性のために、比較は、示されたファン速度の様々な範囲内に限定可能であることも企図されている。比較は、関連性が任意の閾値を超える場合を含めて2つのパラメータ間の関連性の変化をさらに測定することも可能である。
【0024】
106において、抽気システムの故障は104での比較に基づいて診断可能である。例えば、抽気システム10の故障は、センサが所定の閾値を満たすことを比較が示すとき診断可能である。用語、閾値を「満たす」は、閾値に等しい、より小さい、または、より大きいなど、変化の比較が所定の閾値を満たすことを意味するために本明細書で使用する。この決定が、肯定/否定比較または真/偽比較がこの決定を満たすように容易に変更可能であることを理解されたい。例えば、閾値より低い値は、データが数値として反転された場合に試験基準物より大きな数値を適用することによって容易に満たすことができる。抽気システム10の任意の数の故障を決定可能である。非限定的な例の方法により、比較が、履歴データに対する増大する前置冷却器排出口温度傾向、および、前置冷却器排出口温度とファン速度との間の関係のシフトを示すとき、前置冷却器制御バルブ(PCCV)について故障を診断可能である。さらに、同じ航空機のエンジン間で空気圧スプリット(pneumatic pressure split)があるときPCCVについて故障を診断可能である。圧力変動が決定されたとき、圧力調整遮断バルブ(PRSOV)または抽気調整器に伴う故障を診断可能である。低圧が決定されたとき、高段階調整器または高段階バルブに伴う故障を診断可能である。しかし、これを上昇中または巡航中にのみ決定した場合は、空気調整システムに伴う故障を決定可能である。または、ファン速度が低いと決定されたとき、高段階調整器または高段階バルブに伴う故障を診断可能である。低圧が決定されたとき、抽気調整器またはPRSOVに伴う故障が決定可能である。ファン速度が高く、圧力が高いと決定されたとき、エンジンが高出力になっており、かつ、PRSOVの上流側の圧力が高いと決定されたとき、高段階調整器または高段階バルブに伴う故障を診断可能である。他の指示値を正常と決定された場合に、レンジを超えた多くの指示値を決定することによって、または、例えば、最近の中央温度の履歴上の中央温度との比較を介してセンサの故障も決定可能である。いずれかの数の比較に基づいていずれかの数の故障が予測可能であることを理解されたい。これらの比較は、故障の重大度に関連した情報を提供するためにも使用可能である。
【0025】
さらに、故障の診断は複数の比較に基づくことが可能である。比較または比較の組み合わせは、どのセンサ、部品、または、サブシステムに故障の可能性があるかを示すことが可能である。例えば、特定のバルブがその状態を頻繁に変えていることを示すが、他の全てのパラメータは正常である場合、故障しているバルブがどの状態にあるかを決定するものがセンサである可能性がある。さらなる例は、前置冷却器取り入れ口の圧力が正常であるが、移送圧力が示され、かつ、主翼内での漏れを示すパラメータのいくつかが、前置冷却器と空調システムへの出力との間に漏れがある可能性があることを示す場合、としてもよい。
【0026】
実施において、センサ出力および比較に対する参照値は、抽気システム10の故障を診断するためのアルゴリズムに変換してもよい。このアルゴリズムは、コントローラ40および/またはコンピュータ50が実行可能である実行可能命令のセットを含むコンピュータプログラムに変換可能である。高度、バルブ設定などの機内システムが記録する他の様々なパラメータも、抽気システム10の故障を診断するためのコンピュータプログラムによって利用可能である。あるいは、コンピュータプログラムは、抽気システム10の故障を診断するために使用可能なモデルを含むことが可能である。モデルは、推論ネットワーク、流れ図、または、決定樹の使用を含むことが可能である。診断は、システムおよび以前の故障に比較したデータ中のパターンについての理解に基づくことが可能である。モデルは、全ての入手可能な情報を使用し、かつ、故障の前向きな部分を低減可能であることを保証可能である。例えば、モデルは、圧力における単一の急変化が空調システムの整備に伴う可能性があるという知識を使用可能である。
【0027】
108において、コントローラ40および/またはコンピュータ50は、106で診断した抽気システム10の故障の指示を提供可能である。この指示は、コックピット34内および地上システム52を含めて任意の好適な位置で任意の好適な方法で提供可能である。例えば、指示は、航空機30のコックピット34内の主飛行表示装置(PFD)上で提供可能である。コントローラ40がプログラムを実行した場合、適した指示は航空機30上で提供可能であり、かつ/または、地上システム52にアップロード可能である。あるいは、コンピュータ50がプログラムを実行した場合、指示は航空機30にアップロード、または、その他で中継可能である。あるいは、指示は、運航管理室または運航業務部などの他の位置で指示が提供可能となるように、中継可能である。
【0028】
抽気システムの故障を診断する方法は柔軟であり、示した方法は例示のためのものにすぎないことを理解されたい。例えば、図示した各ステップの順序は例示のためのものにすぎず、いかなる形でも方法100を限定することは意味しない。なぜなら、各ステップが異なった論理的順序で進行可能であり、本発明の実施形態を損なわずに追加または挿入されるステップを含むことが可能であることが理解されているからである。さらに、比較が所定の回数および/または所定の飛行数にわたって参照値を超えた時、故障を診断可能である。さらに、故障は、航空機の飛行の段階当たりで算出可能な中央値、最小値、最大値、標準偏差、閾値を超えたか、または、閾値未満のデータ数、状態の変化、関連性などの導出データに基づくことが可能である。さらに、それでも、故障は、飛行の特定の段階の間、または、高いファン速度などの特定の条件が満たされたとき決定可能である。例えば、飛行の特定の段階におけるデータは、以下の表1に示すように特定の診断を表すことが可能である。
【0029】
【表1】
上述の実施形態の有益な効果は、航空機が収集したデータが抽気システムの故障を診断するために利用可能であることを含む。これは、整備の回数、ならびに、抽気システムによる故障および問題の運航への影響を低減する。特に、問題を診断するために必要な時間の低減が可能であり、各問題は正確に診断可能である。これは、整備コストおよびスケジュールの再決定のコストを低減すること、ならびに、航空機を地上に置く時間を最小限に抑えることを含めて運航への影響を最小に抑えることによってコストの節減を可能にする。
【0030】
書面による本説明は、最良の形態を含めて本発明を開示するため、ならびに、いずれのデバイスまたはシステムも作成および使用すること、および、組み込まれたいずれの方法も実行することを含めて本発明をいずれの当業者でも実施可能とするための例を使用している。本発明の特許付与可能な範囲は特許請求の範囲が規定し、当業者が思い付く他の例を含むことが可能である。このような他の例が、特許請求の範囲の文字通りの文言と異なっていない構造上の要素を有する場合、または、特許請求の範囲の文字通りの文言とは非実質的な差しか持たない等価な構造上の要素を含む場合、このような他の例は特許請求の範囲内であることを意味する。
【符号の説明】
【0031】
10 抽気システム
12 エンジン
14 ファン
16 抽気ポート
18 制御機構
20 前置冷却器
21 抽気調整器
22 バルブ
24 温度センサ
26 ファン速度センサ
28 圧力センサ
30 航空機
32 機体
34 コックピット
36 主翼組立体
38 航空機システム
40 コントローラ
42、54 無線通信リンク
44 メモリ
46 プロセッサ
50 コンピュータ
52 地上システム
100 方法