特許第6043337号(P6043337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043337
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】セラミック分離膜及び脱水方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/02 20060101AFI20161206BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20161206BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20161206BHJP
   B01D 61/36 20060101ALI20161206BHJP
   C04B 41/89 20060101ALI20161206BHJP
   C04B 41/85 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B01D71/02
   B01D69/10
   B01D69/12
   B01D61/36
   C04B41/89 A
   C04B41/85 C
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-502397(P2014-502397)
(86)(22)【出願日】2013年2月28日
(86)【国際出願番号】JP2013055574
(87)【国際公開番号】WO2013129625
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2015年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-43198(P2012-43198)
(32)【優先日】2012年2月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】磯村 学
(72)【発明者】
【氏名】木下 直人
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 直子
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/119292(WO,A1)
【文献】 特開2011−121040(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/119286(WO,A1)
【文献】 特開2002−253919(JP,A)
【文献】 特表2010−509034(JP,A)
【文献】 特表2000−502948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
B01D 53/22
C04B 38/00−38/10
C04B 41/80−41/91
C01B 39/00−39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の基材と、前記基材に形成された分離層とを備え、
前記分離層が、最も表面側に位置する最表層と、前記最表層より下層に位置するゼオライトからなる下地層とを有する積層体であり、
前記最表層が、DDR型ゼオライトからなる層であり、
前記最表層が、前記下地層とは異なるものであるセラミック分離膜。
【請求項2】
前記下地層が、チャバサイト型ゼオライトからなる請求項1に記載のセラミック分離膜。
【請求項3】
前記最表層が、Al原子を実質的に含まないDDR型ゼオライトからなる請求項に記載のセラミック分離膜。
【請求項4】
前記最表層の厚さが、前記下地層の厚さの1/2以下である請求項1〜のいずれか一項に記載のセラミック分離膜。
【請求項5】
前記基材が、一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有するセラミックからなる請求項1〜のいずれか一項に記載のセラミック分離膜。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載のセラミック分離膜に、前記分離層の前記最表層の表面を覆うように酸性水溶液を気相または液相の状態で供給するとともに、前記分離層により仕切られた前記分離層の前記表面側の空間と裏面側の空間のうち前記裏面側の空間を大気圧未満に減圧することによって、前記表面側の空間から前記裏面側の空間に前記酸性水溶液中の水を選択的に透過させて前記酸性水溶液から水を除去する脱水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック分離膜及び脱水方法に関する。更に詳しくは、耐久性及び分離性が向上されたセラミック分離膜及びこのセラミック分離膜を用いた脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機物を含有する気体または液体の混合物から特定の成分を分離するには、分離の対象である物質の性質に応じて種々の方法が採用されている。種々の方法としては、例えば、蒸留法、共沸蒸留法、溶媒抽出/蒸留法、吸着剤による分離法などを挙げることができる。しかしながら、これらの方法は、多くのエネルギーを必要としたり、分離対象の適用範囲が限定的であったりするという問題がある。
【0003】
近年、上記分離方法に代わるものとして、高分子膜などの膜を用いた膜分離方法が提案されている(特許文献1参照)。高分子膜としては、例えば、炭素膜や中空糸膜などがある。この高分子膜は加工性に優れるものである。しかし、高分子膜は、耐熱性が低いという問題がある。また、高分子膜は、耐薬品性が低く、特に有機溶媒や有機酸などの有機物と接触することで膨潤するものが多い。そのため、分離対象の適用範囲が限定的であるという問題がある。
【0004】
一方、ゼオライト膜などのように無機材料を有する分離膜(セラミック分離膜)を用いた膜分離方法も提案されている(特許文献2〜5参照)。ゼオライト膜は、例えば有機物(酢酸などの酸性成分等)と水との混合物(酸性水溶液)を、このゼオライト膜に通じさせ、水を選択的に透過させることにより、酸性水溶液から水を除去することができる。別言すれば、ゼオライト膜を用いれば、酸性水溶液を濃縮することができる。このような無機材料を有する分離膜を用いた膜分離方法は、上記蒸留や吸着剤による分離法に比べて、エネルギーの使用量を削減することができる。また、高分子膜よりも広い温度範囲で分離を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2011−118469号
【特許文献2】特開2011−121040号公報
【特許文献3】特開2004−066188号公報
【特許文献4】特表2010−506697号公報
【特許文献5】特開2009−233540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、3〜5に記載の分離膜は、耐酸性が高いため、4年以上の耐久性を有する。しかしながら、特許文献1、3〜5に記載の分離膜を用いて酸性水溶液から水を除去する場合、透過液中の有機物の濃度は高くなってしまう。即ち、特許文献1、3〜5に記載の分離膜は分離性能が十分でないという問題がある。一方、特許文献2に記載の分離膜は、耐酸性が向上されたものである。即ち、被分離対象(有機物を含有する気体または液体の混合物)として酸性水溶液を用いる場合には、「耐久性が向上されたもの」ということができる。しかし、特許文献2に記載の分離膜は、水透過速度が低く、更に、透過液中の酢酸濃度も高い(即ち、分離性能が十分でない)という問題がある。そのため、高い耐久性を有するとともに優れた分離性を有するセラミック分離膜の開発が切望されていた。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。その課題とするところは、高い耐久性を有するとともに優れた分離性を有するセラミック分離膜及びこのセラミック分離膜を用いた脱水方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下に示す、セラミック分離膜及び脱水方法が提供される。
【0009】
[1] 多孔質の基材と、前記基材に形成された分離層とを備え、前記分離層が、最も表面側に位置する最表層と、前記最表層より下層に位置するゼオライトからなる下地層とを有する積層体であり、前記最表層が、DDR型ゼオライトからなる層であり、前記最表層が、前記下地層とは異なるものであるセラミック分離膜。
【0010】
[2] 前記下地層が、チャバサイト型ゼオライトからなる前記[1]に記載のセラミック分離膜。
【0012】
] 前記最表層が、Al原子を実質的に含まないDDR型ゼオライトからなる前記[]に記載のセラミック分離膜。
【0013】
] 前記最表層の厚さが、前記下地層の厚さの1/2以下である前記[1]〜[]のいずれかに記載のセラミック分離膜。
【0014】
] 前記基材が、一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有するセラミックからなる前記[1]〜[]のいずれかに記載のセラミック分離膜。
【0015】
] 前記[1]〜[]のいずれかに記載のセラミック分離膜に、前記分離層の前記最表層の表面を覆うように酸性水溶液を気相または液相の状態で供給するとともに、前記分離層により仕切られた前記分離層の前記表面側の空間と裏面側の空間のうち前記裏面側の空間を大気圧未満に減圧することによって、前記表面側の空間から前記裏面側の空間に前記酸性水溶液中の水を選択的に透過させて前記酸性水溶液から水を除去する脱水方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のセラミック分離膜は、多孔質の基材とこの基材に形成された分離層とを備えている。分離層は、所定のシリカ質材料、所定の有機含有非晶質シリカ材料、または、所定の炭素質材料からなる最表層と、この最表層より下層に位置するゼオライトからなる下地層とを有している。このように本発明のセラミック分離膜の分離層は、下地層としてゼオライト膜を備えており、このゼオライト膜は、分離性能が高く水透過速度が速いものである。更に、本発明のセラミック分離膜の分離層は、最表層として、所定のシリカ質材料、所定の有機含有非晶質シリカ材料、または、所定の炭素質材料からなり、上記下地層とは異なる膜を備えている。これらの材料からなる膜は、いずれも分離性能を有するとともに高い耐酸性を有している。本発明のセラミック分離膜は、上記下地層と上記最表層と有する分離層を備えることによって、高い耐酸性を有するとともに優れた分解性を有する。なお、被分離対象として酸性水溶液を用いる場合、本発明のセラミック分離膜は、高い耐久性を有するということができる。
【0017】
本発明の脱水方法は、セラミック分離膜として本発明のセラミック分離膜を使用する方法である。そのため、良好な分離性能を維持したまま長時間連続的に脱水処理が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のセラミック分離膜の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示すセラミック分離膜のセルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。
図3図2に示す領域Pを拡大して模式的に示す断面図である。
図4】本発明の脱水方法の一の実施形態に用いる脱水装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0020】
[1]セラミック分離膜:
本発明のセラミック分離膜の一の実施形態は、図1図3に示すセラミック分離膜10のように、多孔質の基材8と、この基材8に形成された分離層14とを備えている。分離層14は、最も表面側に位置する最表層15と、この最表層15より下層に位置するゼオライトからなる下地層16とを有する積層体である。即ち、分離層14は、図3に示すように、下地層16上に最表層15が積層されたものである。そして、最表層15は、90モル%以上のシリカを含有するシリカ質材料、Si−Cn−Si(但し、nは1または2)結合を有し、Si/C比が0.5〜2である有機含有非晶質シリカ材料、または、90質量%以上の炭素を含有する炭素質材料からなる層である。更に、最表層15は、下地層16とは異なるものである。図1は、本発明のセラミック分離膜の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示すセラミック分離膜のセルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。図3は、図2に示す領域Pを拡大して模式的に示す断面図である。
【0021】
このようにセラミック分離膜10は、分離層14が下地層16としてゼオライト膜を備えており、このゼオライト膜は、分離性能が高く水透過速度が速いものである。そして、セラミック分離膜10の分離層14は、最表層15として、上記シリカ質材料、上記有機含有非晶質シリカ材料、または、上記炭素質材料からなり、下地層16とは異なる膜を備えている。上記材料からなる膜は、いずれも分離性能を有するとともに高い耐酸性を有しているものである。このようなセラミック分離膜10は、下地層16と最表層15と有する分離層14を備えることによって、高い耐酸性を有するとともに優れた分解性を有することになる。
【0022】
セラミック分離膜10の分離層14が高い耐酸性を有する理由は、最表層が高い耐酸性を有しているためである。更に、仮に、被分離対象である「酸性成分を含む酸性水溶液」が最表層15を透過して下地層16に到達したとしても、下地層16に接する透過液(酸性水溶液)中の酸性成分の濃度が低くなっているためである。即ち、下地層16は、酸性水溶液よりも酸性成分の濃度が低いものと接することになる。そのため、下地層16は酸性成分による劣化が生じ難くなる。その結果、セラミック分離膜10は、高い耐酸性を有し、被分離対象が酸性水溶液である場合、高い耐久性を有するということができる。
【0023】
また、セラミック分離膜10の分離層14は、上述したように、最表層15と下地層16とを有する積層体である。このように分離層14が最表層15と下地層16とを備える積層体であることによって、分離層14は、最表層15の単層を分離層とした場合や下地層16の単層を分離層とした場合からは想定し得ない優れた分離性を発揮することになる。
【0024】
ここで、「下地層とは異なるものである」とは、最表層が、下地層の材質とは異なる材質からなるものであるか、或いは、最表層と下地層との材質が同じであっても、最表層と下地層とは結晶構造が異なるものであることを意味する。即ち、例えば下地層がチャバサイト型ゼオライトからなる層である場合、最表層は、ゼオライトとは材質が異なる材料からなる層であるか、チャバサイト型ゼオライト以外のゼオライトからなる層であることを意味する。
【0025】
[1−1]分離層:
最表層15は、上述したように、上記シリカ質材料からなる層、上記有機含有非晶質シリカ材料からなる層、または、上記炭素質材料からなる層である。別言すれば、最表層15は、上記シリカ質材料からなるシリカ膜、上記有機含有非晶質シリカ材料からなる炭素を含有する非晶質シリカ膜、または、上記炭素質材料からなる炭素膜である。これらの膜は、分離性を有するとともに高い耐酸性を有するものである。そのため、このような最表層15が表面に形成された分離層14は、高濃度の酸性成分を含む酸性水溶液に接しても劣化し難いものである。
【0026】
上記シリカ質材料は、90モル%以上のシリカを含有するものであり、99.0モル%以上のシリカを含有するものであることが好ましく、シリカの含有率の下限値は99.5モル%であることが更に好ましく、99.9モル%であることが特に好ましい。一方、上限値は100モル%であることが好ましい。シリカの含有率が90モル%未満であると、十分な耐酸性を有する最表層を得ることが困難になるおそれがある。
【0027】
上記シリカ質材料としては、例えば、DDR型ゼオライト、非晶質シリカなどを挙げることができる。これらの中でも、DDR型ゼオライトが好ましい。DDR型ゼオライトは結晶質であるので耐酸性が高いためである。
【0028】
上記有機含有非晶質シリカ材料は、Si−Cn−Si(但し、nは1または2)結合を有し、Si/C比が0.5〜2のものである。更に好ましくは、上記有機含有非晶質シリカ材料は、Si−Cn−Si(但し、nは1または2)結合を有し、Si/C比が1〜2である。上記Si/C比が0.5未満であると、十分な耐酸性を有する最表層を得ることが困難になるおそれがある。2より大きいと、最表層に欠陥(例えば、亀裂など)が生じるおそれがある。なお、「Si/C比」は、C(炭素)原子の数に対するSi(珪素)原子の数の比の値である。
【0029】
上記有機含有非晶質シリカ材料としては、例えば、有機含有シリカゾルなどを挙げることができる。上記有機含有非晶質シリカ材料からなる層は、例えば、以下のように形成することができる。まず、ビストリエトキシシリルエタン、ビストリエトキシシリルメタンを原料として有機含有シリカゾルを作製する。次に、この有機含有シリカゾルをエタノール等の溶媒で希釈して有機含有シリカゾル溶液を調製する。次に、調製した有機含有シリカゾル溶液を基材に成膜し、乾燥させる。その後、窒素または大気中200〜500℃で焼成する。このようにして上記有機含有非晶質シリカ材料からなる層を形成することができる。
【0030】
炭素質材料は、90質量%以上の炭素を含有するものであり、炭素の含有率の下限値は95質量%であることが好ましい。一方、上限値は、99質量%であることが好ましい。炭素の含有率が90質量%未満であると、十分な耐酸性を有する最表層を得ることが困難になるおそれがある。
【0031】
炭素質材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂などを挙げることができる。炭素質材料からなる層は、上記樹脂を前駆体として成膜した後、不活性雰囲気下600〜900℃で熱処理することにより形成することができる。
【0032】
最表層15は、Al原子の含有割合が1モル%以下のDDR型ゼオライトからなるものであることが好ましい。Al原子の含有割合が1モル%以下のDDR型ゼオライトからなることにより、最表層15は、耐酸性が向上するとともに分離性も向上する。
【0033】
最表層15は、「Al原子を実質的に含まないDDR型ゼオライト」からなるものであることが更に好ましい。「Al原子を実質的に含まないDDR型ゼオライト」からなることにより、最表層15の耐酸性が向上する。「Al原子を実質的に含まない」とは、Al原子の含有割合が0.1モル%以下であることを意味する。最表層15は、Al原子を含まない(即ち、Al原子の含有割合が0モル%である)DDR型ゼオライトからなるものであることが更に好ましい。Al原子の含有割合が0モル%であると、最表層15の耐酸性が更に向上する。
【0034】
最表層15の厚さは、下地層16の厚さの1/2以下であることが好ましい。最表層15の厚さの下限値は、下地層16の厚さの1/10であることが更に好ましい。一方、上限値は1/3であることが更に好ましい。最表層15の厚さが上記条件を満たすことにより、分離層14は、「高い分離性」と「水透過速度」とが両立したものになる。最表層15の厚さが、下地層16の厚さの1/2超であると、最表層における圧力損失が大きくなる。そのため、セラミック分離膜の水透過速度が遅くなるおそれがある。
【0035】
最表層15の厚さは、作製するセラミック分離膜の大きさなどにより適宜設定することができる。具体的には、0.5〜10μmであることが好ましい。最表層15の厚さの上限値は5μmであることが更に好ましい。最表層15の厚さを上記範囲とすることにより、分離膜14は、「高い分離性」と「水透過速度」とが両立したものになる。最表層15の厚さが上記下限値未満であると、最表層15を均一に成膜することが困難であり、下地層16の全面を被覆できないおそれがある。その場合、セラミック分離膜の耐久性及び分離性能が低下するおそれがある。一方、上記上限値超であると、最表層15における圧力損失が大きくなる。そのため、セラミック分離膜の水透過速度が遅くなるおそれがある。
【0036】
最表層15は、単層であってもよいし複層であってもよい。複層である場合、最表層15を構成する各層の材質及び結晶構造は同じであってもよいし異なってもよい。
【0037】
下地層16は、最表層15より下層に位置するゼオライトからなるものである。このような下地層16は、分離性能が高く水透過速度が速いものである。下地層16自体も分離性能が高く水透過速度が速いものであるため、下地層16のみを基材に形成したものをセラミック分離膜として用いることもできる。しかし、この下地層16の上に最表層15を形成することにより、分離性能が更に高く水透過速度が速いセラミック分離膜を得ることができる。
【0038】
下地層16は、ゼオライトの中でも、チャバサイト型ゼオライトからなるものであることが好ましい。下地層16をチャバサイト型ゼオライトから構成することによって、分離性が更に良好なセラミック分離膜を得ることができる。
【0039】
なお、チャバサイト型ゼオライトからなる下地層(即ち、チャバサイト膜)は、分離性能が高く水透過速度が速い。しかし、チャバサイト膜のみを分離層として用い、例えば酢酸濃度が50質量%以上の酢酸水溶液(高濃度の酢酸水溶液)を脱水する場合、脱水開始から一定時間が経過すると、透過液中の酢酸濃度が増加するという問題が生じる。即ち、チャバサイト膜の単層では、高濃度の酢酸水溶液に対する耐久性が十分でないという問題がある。
【0040】
このような問題を解決するため、最近ではSi/Al比の高いチャバサイト膜が報告されている(特許文献2参照)。しかし、Si/Al比が大きくなる(高くなる)と、親水性が減少するため水透過速度が低くなる。更に、透過液中の酢酸濃度が高くなるという問題がある。このように、チャバサイト膜の単層では、高い耐酸性を発揮するとともに優れた分解性を発揮することは困難である。一方、本発明のセラミック分離膜の分離層は、チャバサイト膜などのゼオライト膜の上に、上記最表層を形成したものである。このような構成とすることにより、高い耐酸性を有するとともに優れた分解性を有するセラミック分離膜を得ることができる。
【0041】
下地層16の厚さは、作製するセラミック分離膜の大きさなどにより適宜設定することができる。具体的には、下地層16の厚さの下限値は、1μmであることが好ましい。一方、上限値は、20μmであることが好ましい。下地層16の厚さが上記下限値未満であると、下地層16を均一に形成することが困難である。そのため、基材8のセル6の表面の全部を被覆できないおそれがある。その場合、セラミック分離膜の分離性能が低くなるおそれがある。一方、上記上限値超であると、下地層16における圧力損失が大きくなる。そのため、セラミック分離膜の水透過速度が遅くなるおそれがある。
【0042】
下地層16は、Si/Al比が、5〜1000であることが好ましい。Si/Al比の下限値は8であることが更に好ましい。上限値は100であることが更に好ましい。下地層16のSi/Al比を上記範囲とすることにより、高水透過速度、高分離性、及び高耐酸性を有するセラミック分離膜を得ることができる。下地層16のSi/Al比が上記下限値未満であると、下地層16の耐酸性が低くなるという不具合が生じるおそれがある。一方、上記上限値超であると、下地層16の親水性が低下する。そのため、セラミック分離膜の水透過速度が低下するおそれがある。なお、「Si/Al比」は、Al(アルミニウム)原子の数に対するSi(珪素)原子の数の比の値である。
【0043】
下地層16は、単層であってもよいし複層であってもよい。複層である場合、下地層16を構成する各層の結晶構造は同じであってもよいし異なってもよい。
【0044】
[1−2]基材:
基材は、分離層を支持するための支持体である。基材の形状は、図1に示すモノリス形状に限らず適宜選択することができる。基材の形状は、例えば、ハニカム形状、円板状、多角形板状、円筒、角筒等の筒状、円柱、角柱等の柱状等を挙げることができる。これらの中でも、モノリス形状、ハニカム形状が好ましい。容積、重量に対する膜面積比率が大きいためである。「モノリス形状」とは、図1に示すような形状のことである。具体的には、一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルが区画形成された形状である。別言すれば、レンコン形状ということもできる。
【0045】
基材は、一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有するセラミックからなることが好ましい。図2に示すようにこのような基材8を用いる場合、分離層14は、基材8のセル6の表面上に形成される。
【0046】
基材8を構成するセラミックとしては、例えば、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ムライト(Al・SiO)、ジルコニア(ZrO)、シリカ(SiO)等を挙げることができる。これらの中でも、耐食性が高いという観点から、アルミナが好ましい。
【0047】
基材8の平均細孔径は、機械的強度、基材の表面粗さ、水透過量等のバランスを考慮して決定される。基材8の平均細孔径は、例えば、0.01〜1.0μmであることが好ましい。基材8の平均細孔径の下限値は0.05μmであることが更に好ましい。一方、上限値は0.5μmであることが更に好ましい。平均細孔径を上記範囲とすることにより、下地層16を厚さが20μm以下の薄い膜となるように形成することができる。基材8の平均細孔径が0.01μmより小さいと、分離処理における圧力損失が高くなるおそれがある。一方、1.0μmより大きいと、基材8のセル6の表面上に均一な厚さで下地層16を形成することができないおそれがある。基材8の平均細孔径は、バブルポイント法により測定した値である。
【0048】
基材8の気孔率は、25〜45%であることが好ましい。基材8の気孔率の下限値は30%であることが更に好ましい。一方、基材8の気孔率の上限値は40%であることが更に好ましい。基材8の気孔率が25%より小さいと、セラミック分離膜を透過する分離対象成分(例えば酸性水溶液における水)の透過量が少なくなるおそれがある。一方、基材8の気孔率が45%より大きいと、基材8の強度が低下するおそれがある。基材8の気孔率は、アルキメデス法により測定した値である。
【0049】
モノリス状の基材8は、図1図2に示すように、所定のセル6(6a)の両端開口部を目封止する目封止部18を備えている。目封止部18は、基材8と同じ材料とすることができる。
【0050】
また、モノリス状の基材8は、少なくとも基材8の一方の端面2aと他方の端面2bが、ガラス等の不透水性材料からなる被膜により被覆されたものであってもよい。この被膜により、被分離対象(酸性水溶液)と透過液とが混合してしまうことを防止できる。この被膜は、具体的には、両端面におけるセル6の開口部以外の部分及び基材8の側面の両端部を被覆するものであることが好ましい。なお、基材8の側面の両端部を被膜により被覆する場合、側面を覆う部分の長さ(セル6の延びる方向の長さ)は、10〜30mmであることが好ましい。
【0051】
基材8としては、図3に示すように、基材本体20とこの基材本体20のセルの表面に形成された中間層21とを備えるものを用いることが好ましい。基材本体20は、一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有するセラミックからなるものである。中間層21は、基材本体20のセルの表面に形成された層である。この中間層21は、基材本体20の平均細孔径よりも小さく分離層の平均細孔径よりも大きな平均細孔径の細孔が形成されたものである。なお、中間層21は、1層あってもよいし複層であってもよい。中間層21を備えることにより、分離層14を形成する際に、分離層14を形成するためのスラリー中の骨材粒子を中間層21でトラップすることができる。そのため、基材本体20の細孔内部にまで骨材粒子が入り込むことを防止することができる。
【0052】
基材本体20及び中間層21を構成する材料としては、上記基材8を構成する材料(セラミック)として挙げたものと同じ材料を挙げることができる。また、基材本体20の平均細孔径及び気孔率は、上記基材8の平均細孔径及び気孔率として挙げた範囲と同様の範囲とすることができる。
【0053】
セル6の形状(流体の流通方向と直交する断面における形状)としては、例えば、円形、楕円形、四角形、六角形、三角形等を挙げることができる。これらの中でも、円形であることが好ましい。セル6を形成する壁の表面に均一な膜厚の分離層を形成できるためである。
【0054】
モノリス状の基材8の全体的な形状は、分離体の分離性能を阻害しない限り特に制限はない。モノリス状の基材8の全体的な形状としては、例えば、円柱状、四角柱状、三角柱状等を挙げることができる。
【0055】
基材8の大きさは、特に限定されない。基材8の大きさは、分離層の支持体として必要な強度を満たすとともに、分離対象成分の透過性を損なわない範囲で、目的に合わせて適宜選択することができる。モノリス状の基材8の寸法は、円柱状の場合、例えば、外径2〜200mm、長さ10〜2000mmとすることができる。
【0056】
[2]セラミック分離膜の製造方法:
セラミック分離膜10は、例えば、以下のように製造することができる。
【0057】
[2−1]基材の作製:
まず、以下のようにして多孔質の基材8を作製する。具体的には、まず、基材を形成するための材料であるセラミックス粉末(成形原料)に、バインダー、界面活性剤、及び必要に応じて造孔材等を適宜含有させて分散媒及び水を加えて混練して坏土を得る。次に、得られた坏土を、口金を用いて押出成形してモノリス状の成形体を作製する。次に、得られた成形体を乾燥し、焼成することによってモノリス形状の多孔質の焼成体を作製する。次に、作製された焼成体の両端面にガラスペーストを塗布し、所定温度で加熱する。このようにして焼成体の両端面にシール部が形成されたモノリス状の多孔質支持体を得ることができる。この多孔質支持体は、一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有する。この多孔質支持体を基材として用いることができる。
【0058】
なお、成形体を乾燥させる方法は特に限定されない。成形体を乾燥させる方法としては、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式を挙げることができる。なお、乾燥した成形体を焼成する前に、仮焼を行ってもよい。この仮焼は、脱脂のために行われる。仮焼は、例えば、酸化雰囲気において550℃、3時間程度で行うことができる。焼成(本焼成)は、成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するための加熱工程である。焼成条件(温度・時間)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。
【0059】
また、上記多孔質支持体のセルの表面に中間層を形成したものを基材として用いることができる。中間層は、例えば、アルミナ粒子などの原料をろ過成膜法によって上記多孔質支持体のセルの表面に成膜し、焼成することによって形成することができる。
【0060】
[2−2]分離層の形成:
次に、作製した基材に下地層及び最表層を有する分離層を形成する。具体的には、まず、下地層を形成し、次に最表層を形成する。
【0061】
例えばチャバサイト型ゼオライト(CHA型ゼオライト)からなる下地層は、以下のように形成することができる。まず、M.Itakura et al.,Chemistry Letters vol.37,No.9(2008)908に記載のFAU型ゼオライトの構造転換法に基づいてチャバサイト種結晶(CHA種結晶)を製造する。次に、このCHA種結晶を水に分散させて種結晶分散液を作製する。次に、作製した種結晶分散液をCHA種結晶の濃度が0.001〜0.3質量%になるように調整して種付け用スラリー液を作製する。この種付け用スラリー液を上記基材のセル内に流し込んで塗膜を形成した後、通風乾燥させる。このようにして「種付け基材」を作製する。
【0062】
次に、脱Al処理したFAU型ゼオライトを含む原料溶液を調製する。その後、調製した原料溶液に上記「種付け基材」を浸漬させて加熱処理(水熱合成)を行った後に焼成する。このようにして、チャバサイト型ゼオライトからなる下地層を有する基材を作製した。
【0063】
次に、最表層を形成する。例えばDDR型ゼオライトからなる最表層は、以下のように形成することができる。まず、M. J. den Exter, J. C. Jansen, H. van Bekkum, Studies in Surface Science and Catalysis vol.84, Ed. by J. Weitkamp et al., Elsevier(1994)1159−1166、または特開2004−083375号公報に記載のDDR型ゼオライトを製造する方法に基づいてDDR型ゼオライト結晶粉末を製造する。その後、製造したDDR型ゼオライト結晶粉末を粉砕して種結晶を得る。得られた種結晶を水に分散させた後、粗い粒子を除去し、種結晶分散液を得る。
【0064】
次に、得られた種結晶分散液をイオン交換水またはエタノールで希釈してDDR型ゼオライトの濃度が0.001〜0.36質量%になるように調整して種付け用スラリー液を得る。次に、上記「下地層を有する基材」のセルに種付け用スラリー液を流し込み、上記セル内を通過させた後、通風乾燥させる。このようにして「DDR種付け基材」を作製する。
【0065】
次に、エチレンジアミンに溶解させた1−アダマンタンアミンを含む溶解液を作製する。次に、シリカゾルを上記溶解液に加えて原料溶液を調製する。その後、上記「DDR種付け基材」を上記原料溶液に浸漬して加熱処理(水熱合成)を行った後、乾燥させた。次に、鋳型剤である有機分子(1−アダマンタンアミン)を加熱処理によって除去した。このようにして、チャバサイト型ゼオライトからなる下地層上にDDR型ゼオライトからなる最表層を形成することができる。以上のようにして、「基材のセルを区画形成する壁の表面」に分離層が形成されたセラミック分離膜を作製することができる。
【0066】
[3]脱水方法:
本発明の脱水方法の一の実施形態は、セラミック分離膜10に、分離層14の最表層15の表面15aを覆うように酸性水溶液を気相または液相の状態で供給するとともに、分離層14により仕切られた分離層14の表面14a側の空間32と裏面14b側の空間34のうち裏面14b側の空間34を大気圧未満に減圧する。このようにすることによって、表面14a側の空間32から裏面14b側の空間34に上記酸性水溶液中の水を選択的に透過させて上記酸性水溶液から水を除去する。このような脱水方法は、セラミック分離膜10を用いるため、長時間連続的に良好な脱水処理ができる。なお、「最表層15の表面15aを覆うように」とは、最表層15の表面15aの全部を覆うようにという意味である。以下、「分離層の裏面側の空間」のことを「二次側の空間」と記す場合がある。
【0067】
本実施形態の脱水方法では、図4に示す脱水装置100を用いて上記酸性水溶液から水を除去する。図4に示す脱水装置100は、セラミック分離膜10と、このセラミック分離膜10を収納する収納容器25とから構成されている。図4は、本発明の脱水方法の一の実施形態に用いる脱水装置を模式的に示す断面図である。
【0068】
収納容器25は、中空筒状の収納容器本体22と、その上端に装着される上部キャップ24と、下端に装着される底部キャップ26とから構成されている。収納容器本体22の上端部近傍には、透過液を送出するろ液送出口22aが形成されている。上部キャップ24の頂部には、被分離対象(酸性水溶液)を排出する原液排出口24aが形成されている。底部キャップ26の下端部には、セラミック分離膜10に被分離対象を供給し得る原液供給口26aが形成されている。そして、これらの開口にはフランジが付設されている。このフランジによって、「収納容器25と他の部材とを繋ぐ配管」と収納容器25とが容易に連結されることになる。収納容器本体22と上部キャップ24との間、及び、収納容器本体22と底部キャップ26との間には、それぞれ、弾性材からなるO−リング28が配設されている。収納容器25は、不透水性で耐食性が高い材質(ステンレスなど)から構成されている。
【0069】
酸性水溶液としては、例えば、酢酸水溶液、硫酸水溶液などを挙げることができる。
【0070】
本発明の脱水方法における酸性水溶液の温度などの条件は、用いる酸性水溶液により適宜変更可能である。酸性水溶液の温度は、具体的には、50〜150℃とすることができる。
【0071】
分離層14の裏面14b側の空間34の圧力は、大気圧未満に減圧される限り特に制限はない。例えば、「分離層14の表面14a側の空間32」と「分離層14の裏面14b側の空間34」の圧力差が、0.05〜1MPaとなるように減圧することが好ましい。
【0072】
分離層14の裏面14b側の空間34内の圧力は、具体的には、0.001〜0.1MPaとすることができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
(実施例1)
(基材の作製)
まず、モノリス形状のアルミナからなる基材本体を用意した。この基材本体は、外径30mm、セルの延びる方向の長さ160mm、セルの開口径2.5mm、セルの数55個、平均細孔径10μm、気孔率35%であった。次に、この基材本体のセルの表面に、厚さ100μm、平均細孔径0.5μmのアルミナを主成分とする中間層21(21A)を形成した(図3参照)。次に、この中間層21(21A)の表面に、厚さ10μm、平均細孔径0.1μmのアルミナを主成分とする中間層21(21B)を形成した(図3参照)。このようにして、図1に示すような一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有する基材(モノリス形状の基材)を作製した。次に、基材の両端面にガラスペーストを塗布し焼成してシール部を形成した。作製した基材のJIS K 3832:1990に規定されたバブルポイント試験による最大細孔径は、2.5μm以下であった。
【0075】
(分離層の形成)
次に、以下のようにして、作製した基材のセルの表面に分離層を形成した。
【0076】
(下地層の形成)
(種結晶の作製)
作製した基材のセルの表面に下地層としてチャバサイト型ゼオライトを形成した。具体的には、まず、FAU型ゼオライトの構造転換法に基づいてチャバサイト種結晶(CHA種結晶)を製造した。FAU型ゼオライトの構造転換法は、M.Itakura et al.,Chemistry Letters vol.37,No.9(2008)908に記載の方法を採用した。次に、このCHA種結晶を水に分散させて種結晶分散液を作製した。
【0077】
(種付け(粒子付着工程))
次に、作製した種結晶分散液をCHA種結晶の濃度が0.001〜0.3質量%になるように調整して種付け用スラリー液を作製した。その後、広口ロートの下端に、端面が上方を向くようにして上記基材を固定した。その後、上記広口ロートから上記基材に160mlの種付け用スラリー液を流し込みセル内を通過させた。その後、上記スラリーを流し込ませた基材を室温で10分間、風速5m/秒でセル内に空気を送って通風乾燥させた。このようにして「種付け基材」を作製した。
【0078】
(膜化(膜形成工程))
次に、FAU型ゼオライトの構造転換法によりCHA型ゼオライトを合成した。具体的には、まず、FAU型ゼオライト、ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ナトリウム、及びイオン交換水を、モル比がSiO:0.03Al:0.2BTMA:0.1NaCl:10HO溶液量200gとなるようにフッ素樹脂製の広口瓶に入れた。その後、1時間攪拌して原料溶液を調製した。FAU型ゼオライトは、75℃の1M硫酸水溶液にて5時間脱Al処理したFAU型ゼオライトを用いた。その後、ステンレス製の耐圧容器(内容積300mlのフッ素樹脂製の内筒付き)の内筒に上記「種付け基材」を配置した。その後、調製した原料溶液を内筒に入れて120℃で10日間加熱処理(水熱合成)を行った。水熱合成後、冷却させ、十分に洗浄した後、70℃で16時間乾燥させた。その後、550℃で10時間焼成した。このようにして、チャバサイト型ゼオライト(CHA型ゼオライト)からなる下地層を有する基材を作製した。
【0079】
(最表層の形成)
(種結晶の作製)
まず、特開2004−083375号公報に記載のDDR型ゼオライトを製造する方法に基づいてDDR型ゼオライト結晶粉末を製造した。その後、製造したDDR型ゼオライト結晶粉末を粉砕して種結晶を得た。得られた種結晶を水に分散させた後、粗い粒子を除去し、種結晶分散液を得た。
【0080】
(種付け(粒子付着工程))
次に、得られた種結晶分散液をイオン交換水で希釈してDDR型ゼオライト結晶粉末の濃度が0.02質量%になるように調整した。その後、スターラーを用いて300rpmで攪拌して種付け用スラリー液を得た。次に、広口ロートの下端に、端面が上方を向くようにして上記「下地層を有する基材」を固定した。その後、上記広口ロートから上記「下地層を有する基材」に160mlの種付け用スラリー液を流し込みセル内を通過させた後、上記スラリーを流し込ませた上記「下地層を有する基材」を室温で10分間、風速3m/秒でセル内に空気を送って通風乾燥させた。上記操作(種付け用スラリー液を流し込み通風乾燥させる操作)を3回繰り返して「DDR種付け基材」を作製した。その後、電子顕微鏡による微構造観察を行い、DDR型ゼオライトの粒子が基材のセルの表面に付着していることを確認した。
【0081】
(膜化(膜形成工程))
次に、フッ素樹脂製の100ml広口瓶に7.35gのエチレンジアミン(和光純薬工業社製)を入れた。その後、更に1.156gの1−アダマンタンアミン(アルドリッチ社製)を加えて、1−アダマンタンアミンの沈殿が残らないように溶解させて溶解液を得た。次に、別の容器に98.0gの30質量%シリカゾル(「スノーテックスS」日産化学社製)と116.55gのイオン交換水を入れて軽く攪拌した。その後、これを上記溶解液に加えて強く振り混ぜた。このようにして原料溶液を調製した。その後、この原料溶液を入れた広口瓶をホモジナイザーにセットして1時間攪拌した。その後、ステンレス製の耐圧容器(内容積300mlのフッ素樹脂製の内筒付き)の内筒に上記「DDR種付け基材」を配置した。その後、調製した原料溶液を内筒に入れて140℃にて10時間加熱処理(水熱合成)を行った。水熱合成後、冷却させ、十分に洗浄した後乾燥させた。このようにして、水熱合成物を得た。その後、電気炉を用い、得られた水熱合成物を大気中で0.1℃/分の速度で400℃まで昇温し、4時間保持した。その後、1℃/分の速度で室温まで冷却して、上記水熱合成物から鋳型剤である有機分子(1−アダマンタンアミン)を除去した。このようにして、下地層上にDDR型ゼオライトからなる最表層を形成して、基材のセルの表面に分離層が形成されたセラミック分離膜を作製した。このDDR型ゼオライトからなる最表層は、100モル%のシリカを含有するシリカ質材料からなるものである。
【0082】
作製したセラミック分離膜をセルの延びる方向に直交する方向に破断し、走査型電子顕微鏡を用いて破断面を観察した。このセラミック分離膜は、下地層の厚さが7μmであり、最表層の厚さが3μmであった。また、下地層のSi/Al比が10であった。
【0083】
作製したセラミック分離膜について、以下に示す方法で分離試験及び耐久性の評価を行った。
【0084】
[分離試験]
図4に示すような脱水装置を用い、10L/分の送液速度で、作製したセラミック分離膜に90℃の酢酸水溶液を流通させるとともに、二次側の空間内を100Torrの真空度で減圧する。酢酸水溶液は、酢酸濃度90質量%、水10質量%の水溶液を用いる。次に、セラミック分離膜から二次側の空間に透過した透過液を液体窒素トラップで捕集する。透過液を1時間捕集し、捕集された透過液の質量と透過液中の酢酸濃度(質量%)とを測定する。透過液中の酢酸濃度は、滴定法により測定する。その後、下記式により水透過速度を算出する。
式:水透過速度(kg/mh)=W×(1−(C/100))/分離層の面積/透過液の捕集時間(但し、Wは、捕集された透過液の質量(kg)である。Cは、透過液中の酢酸濃度(質量%)である。)
【0085】
[耐久性]
上記[分離試験]を継続して行い、「透過水中の酢酸濃度が、試験開始50時間後の値の1.5倍に増加するまでの時間」を測定する。この測定時間の長さにより耐久性を評価する。結果を表1に示す。なお、表1中、「最表層」の「材質」の欄の「DDR」は、最表層がDDR型ゼオライトからなる層であることを示す。「非晶質シリカ」は、最表層が下記「非晶質シリカからなる層」であることを示す。「有機含有非晶質シリカ」は、最表層が下記「有機含有非晶質シリカ材料からなる層」であることを示す。「炭素質」は、最表層が下記「炭素質材料からなる層」であることを示す。「最表層」の「組成」の欄の「シリカ含有量100モル%」は、最表層が「100モル%のシリカを含有するシリカ質材料」からなるものであることを示す。「シリカ含有量90モル%」は、最表層が「90モル%のシリカを含有するシリカ質材料」からなるものであることを示す。「Si/C比=1」は、最表層が「Si/C比が1である有機含有非晶質シリカ材料」からなるものであることを示す。「炭素含有量90質量%」は、最表層が「90質量%の炭素を含有する炭素質材料」からなるものであることを示す。
【0086】
「下地層」の「材質」の欄の「CHA」は、下地層が「チャバサイト型ゼオライトからなる層」であることを示す。
【0087】
【表1】
【0088】
参考例2〜4、実施例〜7、比較例1)
最表層及び下地層を表1に示す条件を満たすものとしたこと以外は、実施例1と同様にしてセラミック分離膜を作製した。その後、作製したセラミック分離膜について、実施例1と同様に、分離試験及び耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
参考例2〜4、実施例〜7における最表層(「非晶質シリカからなる層」、「有機含有非晶質シリカ材料からなる層」、及び「炭素質材料からなる層」)は、それぞれ以下のように形成した。
【0090】
(非晶質シリカからなる層)
(シリカゾルの調製)
まず、硝酸の存在下でテトラエトキシシランを加水分解してシリカゾル液を得た。その後、得られたシリカゾル液をエタノールで希釈して水の濃度が0.03〜3質量%となるように調整した。調整したものを成膜用シリカゾル液とした。
【0091】
(成膜)
次に、実施例1と同様にして作製した「下地層を有する基材」の外周面をマスキングテープでマスクし、流下成膜装置に端面が上方を向くように固定した。その後、この流下成膜装置のタンクに上記成膜用シリカゾル液を溜めた。その後、上記「下地層を有する基材」の上方から上記成膜用シリカゾル液を供給して上記「下地層を有する基材」のセル内を通過させた。その後、上記「下地層を有する基材」の上方から風速5m/秒の風を送り、余剰な上記成膜用シリカゾル液を除去した。なお、セルの表面の全体に上記成膜用シリカゾル液の塗膜が成膜されたことを確認した。
【0092】
(乾燥)
次に、上記成膜用シリカゾル液の塗膜を乾燥させるために、除湿送風機を用いて上記「下地層を有する基材」のセル内に室温の風を30分間通過させて上記塗膜を乾燥させた。なお、セル内を通過する風の風速は、5〜20m/秒、風露点は、−70〜0℃とした。
【0093】
(焼成)
次に、上記「下地層を有する基材」の外周面に貼り付けたマスキングテープを取り外し、上記「下地層を有する基材」を焼成した。具体的には、電気炉で25℃/時間の条件にて500℃まで昇温した。その後、大気中で500℃、1時間保持した。その後、25℃/時間の条件で降温させた。このようにして、「非晶質シリカからなる層」である最表層を形成し、セラミック分離膜を得た。
【0094】
(有機含有非晶質シリカ材料からなる層)
上記(非晶質シリカからなる層)の作製方法において、成膜用シリカゾル液の作製工程で用いたテトラエトキシシランに代えてビストリエトキシシリルエタンを使用した。また、焼成条件を、「大気中で500℃、1時間保持したこと」に代えて「窒素中で300℃、1時間保持したこと」に変更した。その他の条件は上記(非晶質シリカからなる層)の作製方法と同じ方法を採用した。このようにして、「有機含有非晶質シリカ材料からなる層」である最表層を形成し、セラミック分離膜を得た。
【0095】
(炭素質材料からなる層)
(成膜液の調製)
市販のフェノール樹脂(エア・ウォーター社製の「ベルパールS899」)をN−メチル−2−ピロリドンに溶解させて濃度10質量%に調製して成膜液とした。
【0096】
(成膜)
次に、実施例1と同様にして作製した「下地層を有する基材」に上記成膜液をディップコートした後、乾燥させた。その後、真空雰囲気下で750℃、1時間熱処理した。このようにして炭素膜を形成した。
【0097】
(担持処理)
次に、得られた炭素膜についてエタノールで5分間「浸透処理」を行い、その後100℃で64時間加熱した。ここで「浸透処理」とは、炭素膜の一方の表面の全部に液体のエタノールを供給し、他方の表面側の空間を減圧して強制的に炭素膜にエタノールを通過させる処理方法である。このようにして、「炭素質材料からなる層(即ち、炭素膜)」である最表層を形成し、セラミック分離膜を得た。
【0098】
表1から明らかなように、実施例1、5〜7のセラミック分離膜は、比較例1のセラミック分離膜に比べて、透過液中の酢酸濃度が小さかった。その結果、実施例1、5〜7のセラミック分離膜は、分離層を透過する酢酸の量が少ないことが分かる。従って、実施例1、5〜7のセラミック分離膜は、分離性能が良好であることが確認できた。また、実施例1、5〜7のセラミック分離膜は、比較例1のセラミック分離膜に比べて、「透過水中の酢酸濃度が、試験開始50時間後の値の1.5倍に増加するまでの時間」が長かった。従って、耐久性が良好であることが確認できた。
【0099】
比較例1では、チャバサイト型ゼオライトからなる分離層(即ち、最表層を有さない分離層)のみを備えている。この比較例1では、透過液中の酢酸濃度は0.2質量%である。一方、実施例1、5〜7のセラミック分離膜は、最表層を有する分離層を備えるため、いずれも0.2質量%より低くなっている(透過液中の酢酸濃度0.15質量%以下)。この理由は以下の通りである。
【0100】
チャバサイト型ゼオライトからなる膜(チャバサイト膜)は、供給液(酢酸水溶液)の酢酸濃度が低いほど透過水中酢酸濃度が低くなる。最表層は、チャバサイト膜より分離性が劣るものの分離性能を有する。そのため、酢酸水溶液が最表層を透過することによって酢酸の濃度が供給液より低くなる。そして、下地層は、供給液より低濃度の酢酸と接することになる。その結果、透過液中の酢酸濃度を低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明のセラミック分離膜は、例えば酸性水溶液から特定の物質(水)を選択的に分離するためのフィルタとして利用することができる。本発明の脱水方法は、例えば酸性水溶液から水を選択的に分離して脱水する方法として採用することができる。
【符号の説明】
【0102】
2a:一方の端面、2b:他方の端面、4:隔壁、6:セル、6a:所定のセル、8:基材、10:セラミック分離膜、14:分離層、15:最表層、16:下地層、18:目封止部、20:基材本体、21,21A,21B:中間層、25:収納容器、22:収納容器本体、22a:ろ液送出口、24:上部キャップ、24a:原液排出口、26:底部キャップ、26a:原液供給口、28:O−リング、32:分離層の表面側の空間、34:分離層の裏面側の空間、100:脱水装置。
図1
図2
図3
図4