(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記原料ガス接触部は、タンタル、タングステン、モリブデン、タンタル基合金、タングステン基合金、モリブデン基合金、炭化タンタル、炭化タングステン又は炭化モリブデンの少なくとも1種を主成分とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の複合発熱体。
前記抵抗発熱体の外表面が、酸化レニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、二酸化珪素、炭化タンタル又は炭化タングステンのコーティング処理がされた表面であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の複合発熱体。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0022】
図1は、第一実施形態に係る複合発熱体の一例を示す部分拡大正面図である。第一実施形態に係る複合発熱体1Aは、炭素、レニウム、イリジウム、ロジウム、炭化珪素又は二珪化モリブデンのいずれかを主成分とする線状の抵抗発熱体2Aと、抵抗発熱体2Aの外表面に配置した原料ガス接触部3Aと、を備え、原料ガス接触部3Aが、発熱体CVD法の原料ガスを分解する分解部である。
【0023】
抵抗発熱体2Aは、例えば通電することで発熱し、主として原料ガス接触部3Aに熱を供給する役割をもつ。抵抗発熱体2Aは、炭素、レニウム、イリジウム、ロジウム、炭化珪素又は二珪化モリブデンのいずれかを主成分とする線状の部材である。これらの材料は、表層で炭化反応が起こっても、電気抵抗の変化が小さいため、安定して所定の温度に発熱して原料ガス接触部3Aを加熱することができる。本明細書では、線状とは、外形が細長い形状をいう。また、線材とは、線状の部材をいう。
【0024】
抵抗発熱体2Aの断面形状は、円形、正方形若しくは正多角形であるか、又は扁平形状であってもよい。扁平形状とは、断面形状の長辺の長さ(a)と短辺の長さ(b)との比(a/b)で表される扁平率が1.5〜100であることをいい、例えば、楕円形、長方形、半円形又はこれらの変形形状である。抵抗発熱体2Aの長辺側の側面の形状は、特に制限はなく、例えば、平坦面、凸曲面、凹曲面である。抵抗発熱体2Aの断面形状を扁平形状とすることで、抵抗発熱体2Aの表面積を円形などと比較して広くすることができる。そして、抵抗発熱体2Aの外表面に配置する原料ガス接触部3Aの表面積を広くすることができる。
【0025】
抵抗発熱体2Aの線径は、0.05〜5mmであることが好ましく、0.1〜1.5mmであることがより好ましく、0.5〜1.0mmであることが更に好ましい。本明細書において、線径とは、断面形状が円形のときは直径であり、断面形状が正方形若しくは正多角形のときは正方形若しくは正多角形に外接する円の直径であり、又は断面形状が扁平形状のときは断面積と同一の面積を有する真円の直径である。
【0026】
抵抗発熱体2Aの材質は、単体であっても複合材であってもよい。炭素を主成分とする材料は、例えば、炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジット)、炭素繊維強化金属複合材料、炭素焼結体、グラファイトである。また、例えば、炭素を主成分としてタングステンやタンタル等を添加した複合材とすることで電気抵抗を低減させてもよい。レニウムを主成分とする材料は、例えば、金属レニウム、レニウム−タングステン合金、レニウム−タンタル合金などのレニウム基合金である。イリジウムを主成分とする材料は、例えば、金属イリジウム、イリジウム−タンタル合金、イリジウム−プラチナ合金などのイリジウム基合金である。ロジウムを主成分とする材料は、例えば、金属ロジウム、ロジウム−タンタル合金、ロジウム−プラチナ合金などのロジウム基合金である。炭化珪素を主成分とする材料は、例えば、炭化珪素、炭化珪素とタングステンとの複合材料である。二珪化モリブデンを主成分とする材料は、例えば、二珪化モリブデン、二珪化モリブデンとタングステンとの複合材料である。本明細書では、主成分とは、材料の全成分中で最も含有量(質量%)が多い成分をいい、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上含有する成分をいう。
【0027】
原料ガス接触部3Aは、発熱体CVD法の原料ガスを分解する分解部であり、発熱体CVD法において触媒としての役割をもつ。原料ガス接触部3Aは、炭素含有ガスの分解をより効率的に行うことができる点で、主成分がタンタル、タングステン、モリブデン、タンタル基合金、タングステン基合金、モリブデン基合金、炭化タンタル、炭化タングステン又は炭化モリブデンの少なくとも1種からなることが好ましい。原料ガス接触部3Aの材質は、単体であっても複合材であってもよい。タンタル基合金は、タンタルを50質量%以上含有する合金であり、例えば、タンタル−珪素合金、タンタル−イリジウム合金である。タングステン基合金は、タングステンを50質量%以上含有する合金であり、例えば、タングステン−レニウム合金、タングステン−トリウム合金である。モリブデン基合金は、モリブデンを50質量%以上含有する合金であり、例えば、モリブデン−珪素合金、モリブデン−金合金である。
【0028】
次に、抵抗発熱体2Aの外表面に原料ガス接触部3Aを配置する形態例として第一実施形態〜第五実施形態について説明する。
【0029】
(第一実施形態)
第一実施形態に係る複合発熱体1Aでは、
図1に示すように、原料ガス接触部3Aが線材であり、抵抗発熱体2Aの外表面に螺旋状に巻き付いていることが好ましい。原料ガス接触部3Aを抵抗発熱体2Aの外表面に螺旋状に巻きつけることで、原料ガス接触部3Aの組みつけ及び交換を容易に行うことができる。また、リサイクルが容易になる。巻き付けのピッチは、
図1に示すように等間隔とするか、又は相対的に疎の部分と密の部分とを設けた不等間隔であってもよい。原料ガス接触部3Aの線径は、0.05〜1.5mmであることが好ましく、0.2〜1.2mmであることがより好ましく、0.5〜1.0mmであることが更に好ましい。抵抗発熱体2Aの外表面の面積に対する原料ガス接触部3Aが被覆した面積の割合(以降、被覆率ということもある。)は、25〜100%であることが好ましく、50〜100%であることがより好ましい。
【0030】
(第二実施形態)
図2は、第二実施形態に係る複合発熱体の一例を示す断面図である。第二実施形態に係る複合発熱体1Bでは、
図2に示すように、原料ガス接触部3Bが、抵抗発熱体2Bの外表面を被覆した層構造をなしていることが好ましい。原料ガス接触部3Bを抵抗発熱体2Bの外表面に被覆する方法は、例えば、湿式コーティング法、クラッド法、スパッタリング法である。原料ガス接触部3Bの層の厚さは、0.0001〜1mmであることが好ましく、0.01〜0.1mmであることがより好ましい。第二実施形態に係る複合発熱体1Bは、抵抗発熱体2Bと原料ガス接触部3Bとが接合して一体化しているため、複合発熱体1Bをコイルばね形状、ジグザグ形状などに加工して、原料ガスとの接触の機会を増大させることができる。
【0031】
(第三実施形態)
図3は、第三実施形態に係る複合発熱体の一例を示す部分拡大正面図である。第三実施形態に係る複合発熱体1Cでは、原料ガス接触部3Cが粒形状であり、抵抗発熱体2Cの外表面に固定されていることが好ましい。例えば、抵抗発熱体2Cが炭素を主成分とする材料からなるとき、炭素を主成分とする材料の熱膨張率は、金属を主成分とする材料の熱膨張率に比べて相対的に小さいため、第二実施形態に係る複合発熱体1Bのように、抵抗発熱体2Bと原料ガス接触部3Bとを層構造で密着させることが難しい場合がある。このとき、原料ガス接触部3Cを粒形状とすることで、抵抗発熱体2Cと原料ガス接触部3Cとの熱膨張率の差が大きくても原料ガス接触部3Cを抵抗発熱体2Cの外表面に固定することができる。
【0032】
第三実施形態に係る複合発熱体1Cでは、原料ガス接触部3Cが抵抗発熱体2Cの外表面に接触していればよいが、固着していることがより好ましい。固着方法は、例えば、加熱して溶融状態又は半溶融状態となった原料ガス接触部3Cの材料を、抵抗発熱体2Cとなる線材の外表面に吹き付けて凝固及び密着させる方法(溶射法)、抵抗発熱体2Cの外表面に原料ガス接触部3Cとなる粒子を含むペーストを塗布して焼結する方法(焼結法)又は抵抗発熱体2Cの材料に原料ガス接触部3Cとなる粒子を練りこんだ組成物で線材を形成する方法(混練法)である。また、抵抗発熱体2CがC/Cコンポジット若しくは炭素繊維強化金属複合材料などの繊維状であるときは、抵抗発熱体2Cとして線材を形成した後、該線材の外表面に原料ガス接触部3Cとなる粒子を衝突(ショットピーニング)させて各繊維同士の間に原料ガス接触部3Cとなる粒子を固着させるか、又は抵抗発熱体2Cを形成する各繊維同士の間に原料ガス接触部3Cとなる粒子を固着させた後、線材を形成してもよい。
【0033】
(第四実施形態)
図4は、第四実施形態に係る複合発熱体の一例を示す断面図である。第四実施形態に係る複合発熱体1Dでは、原料ガス接触部3Dが箔材であり、抵抗発熱体2Dの外表面に巻き付いていることが好ましい。第四実施形態に係る複合発熱体1Dが、第二実施形態に係る複合発熱体1Bと相違する点は、第二実施形態に係る複合発熱体1Bでは、抵抗発熱体2Bと原料ガス接触部3Bとが接合して一体化しているのに対して、第四実施形態に係る複合発熱体1Dでは、抵抗発熱体2Dと原料ガス接触部3Dとが分離可能な別部材である点である。第四実施形態に係る複合発熱体1Dでは、原料ガス接触部3Dの組みつけ及び交換を容易に行うことができる。また、リサイクル性が容易になる。
【0034】
図1〜
図4では、抵抗発熱体2A〜2Dとして断面形状が円形の線材である形態を示したが、本発明はこれらの形態に限定されない。次に、変形形態の一例について説明する。
【0035】
図5は、第二実施形態に係る複合発熱体の変形形態例を示す断面図である。
図5に示す変形形態例では、抵抗発熱体2Eとして断面形状が楕円形の線材を使用し、この抵抗発熱体2Eの外表面を原料ガス接触部3Eで被覆している。抵抗発熱体2Eの断面形状を扁平形状とすることで、原料ガス接触部3Eの表面積を大きくできるので、原料ガスとの接触の機会を増すことができる。原料ガス接触部3Eは、第二実施形態の原料ガス接触部3Bと同様に形成することができる。第二実施形態に係る複合発熱体の変形形態例では、第二実施形態に係る複合発熱体と同様に抵抗発熱体2Eと原料ガス接触部3Eとが一体化しているため、複合発熱体1Eをジグザグ形状に加工して、原料ガスとの接触の機会を更に増大することができる。
【0036】
図6は、第四実施形態に係る複合発熱体の変形形態例を示す断面図である。
図6に示す変形形態例では、抵抗発熱体2Fは断面形状が長方形の線材であり、かつ、原料ガス接触部3Fが箔材であり、抵抗発熱体2Fの側面2F1,2F2に原料ガス接触部3Fを配置した積層構造を有する。抵抗発熱体2Fの断面形状を扁平形状とすることで、原料ガス接触部3Fの表面積を大きくできるので、原料ガスとの接触の機会を増すことができる。原料ガス接触部3Fが箔材であるため、原料ガス接触部3Fの組みつけ及び交換を容易に行うことができる。また、リサイクル性が容易になる。
図6に示すように端面2F3,2F4に原料ガス接触部3Fを配置せず、端面2F3,2F4を露出した形態とするか、又は原料ガス接触部3Fを端面2F3,2F4まで延在させて端面2F3,2F4を被覆した形態としてもよい。
【0037】
図1、
図4及び
図6では、抵抗発熱体2A,2D,2Fと原料ガス接触部3A,3D,3Fとが隙間なく接触している形態を示したが、触媒活性を損なわない限りにおいて、抵抗発熱体2A,2D,2Fと原料ガス接触部3A,3D,3Fとが非接触となる部分があってもよい。
【0038】
第一実施形態〜第五実施形態に係る複合発熱体1A〜1Fでは、抵抗発熱体2A〜2Fの外表面が、酸化レニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、二酸化珪素、炭化タンタル又は炭化タングステンのコーティング処理がされた表面であることが好ましい。抵抗発熱体2A〜2Fの外表面に使用雰囲気又は用途に応じてコーティング処理を施すことで、耐久性の更なる向上ができる。例えば、使用雰囲気が酸化雰囲気であるとき、抵抗発熱体2A〜2Fの外表面をコーティング処理として酸化レニウム、酸化ジルコニウム又は二珪化モリブデンで被覆することで、抵抗発熱体2A〜2Fが酸化することを防止して安定した発熱をすることができる。また、用途が食品容器用であるとき、抵抗発熱体2A〜2Fの外表面をコーティング処理として炭化タンタルで被覆することで、抵抗発熱体2A〜2Fが食品接触上好ましくない成分が揮発して薄膜表面に分布することを防止して安定した発熱をすることができる。
【0039】
図7は、本実施形態に係る発熱体CVD装置の一例を示す概略図である。
図7に示す発熱体CVD装置100は、成形体としてプラスチック容器11を用い、プラスチック容器11の内表面に薄膜を形成する装置である。本実施形態に係る発熱体CVD装置100は、真空チャンバ6と、真空チャンバ6内の内部ガスを真空引きする排気ポンプ(不図示)と、真空チャンバ6内に配置され、ガス吹出し孔17xを有する原料ガス供給管23と、第一実施形態〜第五実施形態に係る複合発熱体18と、を備える。
【0040】
真空チャンバ6は、その内部に成形体としてプラスチック容器11を収容する空間が形成されており、その空間は薄膜形成のための反応室12となる。真空チャンバ6は、下部チャンバ13と、この下部チャンバ13の上部に着脱自在に取り付けられて下部チャンバ13の内部をOリング14で密閉するようになっている上部チャンバ15とから構成されている。上部チャンバ15には図示していない上下の駆動機構があり、プラスチック容器11の搬入・搬出に伴い上下する。下部チャンバ13の内部空間は、そこに収容される成形体(
図7ではプラスチック容器11)の外形よりも僅かに大きくなるように形成されている。
【0041】
上部チャンバ15の内部空間には、排気管22が真空バルブ8を介して連通されており、図示しない排気ポンプによって真空チャンバ6の内部の反応室12の空気が排気されるようになっている。
【0042】
原料ガス供給管23は、上部チャンバ15の内側天井面の中央において下方に垂下するように支持されている。原料ガス供給管23には、ガス流量調整器24a,24bとバルブ25a〜25cを介して原料ガス33が流入される。原料ガス33の供給は、出発原料が液体である場合には、バブリング法によって供給することができる。すなわち、原料タンク40a内に収容された出発原料41aに、ガス流量調整器24aで流量制御しながらバブリングガスを供給し、出発原料41aの蒸気を発生させて原料ガス33として供給する。
【0043】
原料ガス供給管23は、内部に原料ガス流路17を有し、原料ガス流路17に通じるガス吹出し孔17xが、原料ガス供給管23の少なくとも先端に設けられることが好ましい。原料ガス供給管23のガス吹出し孔17xを設けた側とは反対側の端部は、上部チャンバ15に設けられたガス供給口16に接続される。これにより原料ガスはガス供給口16に接続された原料ガス流路17を通り、ガス吹出し孔17xから吹き出される。
【0044】
原料ガス供給管23の材質は、絶縁体であっても導電体であってもよい。原料ガス供給管23の材質は、例えば、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素若しくは酸化アルミニウムを主成分とする材料で形成されたセラミック管、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素若しくは酸化アルミニウムを主成分とする材料で表面が被覆された金属管、ステンレス管等の金属管である。ただし、原料ガス供給管23の材質がステンレス管などの導電体である場合は、抵抗発熱体に安定して通電するには、原料ガス供給管23を通電経路の一部とするか、別個の通電経路を確保する必要がある。これらの目的のために、抵抗発熱体の原料ガス供給管23に対する相対位置を固定するための蓮根型部材35を絶縁体で構成することが望ましい。複合発熱体18に安定して通電することができ、耐久性があり、かつ、複合発熱体18で発生した熱を熱伝導によって効率よく排熱させることができる。また、原料ガス供給管23の側壁には、複数のガス吹出し孔を設けること好ましい。原料ガス供給管の側壁に沿って配置した複合発熱体18の原料ガス接触部が原料ガスに接触する機会を増大させ、効率よく化学種を生成させることができる。
【0045】
複合発熱体18は、原料ガス供給管23の側壁に沿って配置され、配線19に接続部26a,26bで接続する。配線19には、ヒータ電源20が接続されている。
【0046】
図8は、複合発熱体の原料ガス供給管への支持状態の一例を示す概略図である。
図8では、一例として第一実施形態に係る複合発熱体1Aを2本設けた形態を示した。本実施形態に係る発熱体CVD装置100では、ガス吹出し孔17xが、原料ガス供給管23の少なくとも先端に設けられ、原料ガス供給管23が、ガス吹出し孔17x側の先端部に外嵌する中心孔51と中心孔51の周りに設けられた複数個のガイド孔52とを有する蓮根型部材35を備え、複合発熱体1Aが、ガイド孔52を通って支持されることが好ましい。
【0047】
蓮根型部材35の中心孔51は、蓮根型部材35の中央部に設けられた貫通孔であり、原料ガス供給管23の側壁に蓮根型部材35を固定する役割をもつ。蓮根型部材35を原料ガス供給管23に固定する方法は、特に制限はなく、例えば、中心孔51の内径と原料ガス供給管23の外径とを相互に嵌合する寸法に設定して物理的に固定する方法、接着剤を介して固定する方法である。また、着脱可能に固定するか、又は着脱できないように固定してもよい。
【0048】
蓮根型部材35のガイド孔52は、中心孔51を中心として放射状に配置された貫通孔であり、複合発熱体1Aを支持する役割をもつ。ガイド孔52は、同一円状に配置することが好ましい。ガイド孔52は、複合発熱体1Aの熱膨張による変形を阻害しない点で、複合発熱体1Aを非固定で支持することが好ましく、複合発熱体1Aを非接触で支持することがより好ましい。複合発熱体18を、ガイド孔52を通して支持することで、複合発熱体1Aを原料ガス供給管23の側壁表面から僅かに離して配置することができる。結果として、原料ガス供給管23の急激な温度上昇を防止することができる。また、ガス吹出し孔17xから吹き出た原料ガス及び反応室12にある原料ガスとの接触機会を増やすことができる。
【0049】
複合発熱体1Aは、ガス吹出し孔17xの前方に返し部4Aを有することが好ましい。これによって、ガス吹出し孔17xから吹き出た原料ガスは複合発熱体1Aと接触しやすくなるため、原料ガスを効率よく活性化させることができる。返し部4Aの形状は、例えば、
図8に示すように複合発熱体1Aを円弧状に曲げたアーチ形状、
図7に示すように複合発熱体1Aを四角状に曲げた凸形状、複合発熱体1Aをコイルばね形状、ジグザグ形状に曲げた多角形状(不図示)である。ここで、ガス吹出し孔17xの前方とは、原料ガス供給管23の長さ方向に対して突出した部分をいい、返し部4Aはガス吹出し穴17xの前方を横切って配置するか、又はガス吹出し穴17xの前方を横切らずに配置してもよい。
【0050】
蓮根型部材35の材質は、絶縁体であっても導電体であってもよい。蓮根型部材35の材質は、例えば、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素若しくは酸化アルミニウムを主成分とする材料で形成されたセラミック、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素若しくは酸化アルミニウムを主成分とする材料で表面が被覆された金属、ステンレス管である。特に、絶縁体で熱伝導率が大きいものが好ましい。蓮根型部材35の材質は原料ガス供給管23が絶縁性か導電性かによって選択する。すなわち、原料ガス供給管23の材質が絶縁性であるとき、蓮根型部材35の材質は、絶縁体又は導電体のいずれであってもよい。また、原料ガス供給管23の材質が導電性であるとき、蓮根型部材35の材質は、絶縁体であることが好ましい。
【0051】
蓮根型部材35は、
図7に示すように、ガス吹出し孔17x側の先端部に1個だけ設けてもよいが、
図8に示すように、複数個設け、各蓮根型部材35は、相互に間隔をあけ、かつ、各蓮根型部材35のガイド孔52同士の位置を対向させて配置することがより好ましい。これによって、複合発熱体2Aを原料ガス供給管23の側壁に沿って2点以上で支持することとなり、複合発熱体1Aが原料ガス供給管23の側壁への接触をより確実に防止できる。
【0052】
複合発熱体18は、導電性を有するため、例えば、通電することで発熱させることができる。ヒータ電源20によって複合発熱体18に電気を流すことで、複合発熱体18が発熱する。なお、本発明は、複合発熱体18の発熱方法に限定されない。また、複合発熱体18は、
図7では1本設けた形態を示したが、
図8に示すように2本設けてもよく、図示しないが3本以上設けてもよい。
【0053】
次に、
図7を参照しながら、成形体としてプラスチック容器11の内表面に薄膜を形成する場合を例にとって、本実施形態に係る薄膜を備える成形体の製造方法を説明する。本実施形態に係る薄膜を備える成形体の製造方法は、1800℃以上に発熱した複合発熱体18に原料ガスとして炭素を含有するガスを接触させて、原料ガスを分解して化学種34を生成させ、成形体(
図7では、プラスチック容器11)の表面に化学種34を到達させることによって薄膜を形成する。
【0054】
(成膜装置への成形体の装着)
まず、ベント(不図示)を開いて真空チャンバ6内を大気開放する。反応室12には、上部チャンバ15を外した状態で、下部チャンバ13の上部開口部から成形体としてのプラスチック容器11が差し込まれて、収容される。この後、位置決めされた上部チャンバ15が降下し、上部チャンバ15につけられた原料ガス供給管23とそれに固定された複合発熱体18がプラスチック容器の口部21からプラスチック容器11内に挿入される。そして、上部チャンバ15が下部チャンバ13にOリング14を介して当接することで、反応室12が密閉空間とされる。このとき、下部チャンバ13の内壁面とプラスチック容器11の外壁面との間隔は、ほぼ均一に保たれており、かつ、プラスチック容器11の内壁面と複合発熱体18との間の間隔も、ほぼ均一に保たれている。
【0055】
(圧力調整工程)
次いでベント(不図示)を閉じたのち、排気ポンプ(不図示)を作動させ、真空バルブ8を開とすることにより、反応室12内の空気が排気される。このとき、プラスチック容器11の内部空間のみならずプラスチック容器11の外壁面と下部チャンバ13の内壁面との間の空間も排気されて、真空にされる。すなわち、反応室12全体が排気される。そして反応室12内が必要な圧力、例えば1.0〜100Paに到達するまで減圧することが好ましい。より好ましくは、1.4〜50Paである。1.0Pa未満では、排気時間がかかる場合がある。また、100Paを超えると、プラスチック容器11内に不純物が多くなり、バリア性の高い容器を得ることができない場合がある。大気圧から、1.4〜50Paに到達するように減圧すると、適度な真空圧とともに、大気、装置及び容器に由来する適度な残留水蒸気圧を得ることができ、簡易にバリア性のある薄膜を形成できる。
【0056】
(成膜工程‐複合発熱体への通電)
次に複合発熱体18を、例えば通電することで発熱させる。複合発熱体18の発熱温度は、1800℃以上である。より好ましくは、1900℃である。1800℃未満では、原料ガスを効率的に分解することができず、成膜に時間がかかり作業効率に劣る。複合発熱体18の発熱温度の上限値は、抵抗発熱体2A及び原料ガス接触部3Aの材料によって異なり、例えば、抵抗発熱体2Aの材料がレニウムであり、原料ガス接触部3Aの材料がタンタルであるとき、複合発熱体18の発熱温度の上限は、2300℃であることが好ましく、2200℃であることがより好ましい。
【0057】
(成膜工程‐原料ガスの導入)
この後、原料ガス33として、炭素を含有するガスを供給する。炭素を含有するガスは、例えば、有機シラン系化合物である。有機シラン系化合物は、例えば、ビニルシラン(H
3SiC
2H
3)、ジシラブタン(H
3SiC
2H
4SiH
3)、ジシリルアセチレン(H
3SiC
2SiH
3)、2‐アミノエチルシラン(H
3SiC
2H
4NH
2)である。この中で、ビニルシラン、ジシラブタン又はジシリルアセチレンであることが好ましい。原料ガス33としてこれらの有機シラン系化合物を用いることで、薄膜としてガスバリア性を有するSiOC薄膜を形成できる。得られるSiOC薄膜は、(数1)で求める、バリア性改良率(Barrier Improvement Factor,以降、BIFという。)を6以上とすることができる。具体例としては、500mlのペットボトル(polyethylene terephthalate製のボトル、以降、PETボトルということもある。)(高さ133mm、胴外径64mm、口部外径24.9mm、口部内径21.4mm、肉厚300μm及び樹脂量29g)において、酸素透過度を0.0058cc/容器/日以下とすることができる。720mlのペットボトルにおいて、酸素透過度を0.0082cc/容器/日以下とすることができる。
(数1)BIF=[薄膜未形成の成形体の酸素透過度]/[薄膜を備える成形体の酸素透過度]
【0058】
原料ガス33は、ガス流量調整器24aで流量制御して供給する。さらに、必要に応じてキャリアガスをガス流量調整器24bで流量制御しながら、バルブ25cの手前で原料ガス33に混合する。キャリアガスは、例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガスである。すると、原料ガス33は、ガス流量調整器24aで流量制御された状態で、又はキャリアガスによって流量が制御された状態で、所定の圧力に減圧されたプラスチック容器11内において、原料ガス供給管23のガス吹出し孔17xから発熱した複合発熱体18に向けて吹き出される。このように複合発熱体18を昇温完了後、原料ガス33の吹き付けを開始することが好ましい。成膜初期から、複合発熱体18によって十分に活性化された化学種34を生成させることができ、ガスバリア性の高い膜を得ることができる。
【0059】
原料ガス33が液体である場合には、バブリング法で供給することができる。バブリング法に用いるバブリングガスは、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスであり、窒素ガスがより好ましい。すなわち、原料タンク40a内の出発原料41aを、バブリングガスを用いてガス流量調整器24aで流量制御しながらバブリングすると、出発原料41aが気化してバブル中に取り込まれる。こうして、原料ガス33は、バブリングガスと混合した状態で供給される。さらに、キャリアガスをガス流量調整器24bで流量制御しながら、バルブ25cの手前で原料ガス33に混合する。すると、原料ガス33は、キャリアガスによって流量が制御された状態で、所定の圧力に減圧されたプラスチック容器11内において、原料ガス供給管23のガス吹出し孔17xから発熱した複合発熱体18に向けて吹き出される。ここで、バブリングガスの流量は、3〜50sccmであることが好ましく、より好ましくは、5〜15sccmである。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、0〜80sccmであることが好ましい。より好ましくは、5〜50sccmである。キャリアガスの流量によって、プラスチック容器11内の圧力を20〜80Paに調整することができる。
【0060】
(成膜工程‐成膜)
原料ガス33が複合発熱体18と接触すると化学種34が生成される。この化学種34が、プラスチック容器11の内壁に到達することで、薄膜を堆積することになる。成膜工程において複合発熱体18を発熱させて原料ガスを複合発熱体18に吹き付ける時間(以降、成膜時間ということもある。)は、1.0〜20秒であることが好ましく、より好ましくは、1.0〜8.5秒である。成膜時の真空チャンバ内の圧力は、例えば1.0〜100Paに到達するまで減圧することが好ましい。より好ましくは、1.4〜50Paである。
【0061】
薄膜の膜厚は、特に制限はないが、例えば、薄膜がSiOC薄膜であるときは、ガスバリア性の向上効果を得るため、5〜200nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。
【0062】
(成膜の終了)
薄膜が所定の厚さに達したところで、原料ガス33の供給を止め、反応室12内を再度排気した後、図示していないリークガスを導入して、反応室12を大気圧にする。この後、上部チャンバ15を開けてプラスチック容器11を取り出す。
【0063】
本発明者らが実験したところによると、抵抗発熱体及び原料ガス接触部を別々の材質とせずに同一の材質(例えば、直径0.5mmのタンタル線)で一体に形成した発熱体を用い、原料ガスとしてビニルシランを用いて薄膜を形成したところ、連続成膜を30回行ったところで十分な触媒活性が発揮されない結果、ガスバリア性薄膜を堆積させることができない状態になった。このとき、発熱体の表面の構成元素をX線電子分光分析(以降、XPS分析ということもある。)したところ、発熱体の表面が炭化していることを確認した。これに対して、第一実施形態に係る複合発熱体1Aであって、抵抗発熱体2Aを直径0.5mmのレニウム線とし、原料ガス接触部3Aを直径0.1mmのタンタル線とした複合発熱体1Aを用い、原料ガスとしてビニルシランを用いて薄膜を形成したところ、1万回以上の連続成膜が可能なことが確認できた。ここで、1万回以上の連続成膜とは、
図7に示すような成形体に一つずつ成膜する成膜装置では、「成膜装置への成形体の装着」から「成膜の終了」までの一連の成膜操作を1回としてこれを1万回以上繰り返し行うことをいう。また、特許文献1の
図12に示すような、成形体をコンベアで移動させながら逐次成膜する成膜装置では、任意の原料ガス供給管の前を通過した成形体の個数が1万個以上であることをいう。
【0064】
薄膜をプラスチック容器の内表面に形成する方法について説明してきたが、薄膜をプラスチック容器の外表面に形成するには、例えば、特許文献1の
図3に示す成膜装置を用いて行うことができる。
【0065】
成形体が、プラスチック容器である態様について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、成形体をフィルム又はシートとすることができる。
【実施例】
【0066】
次に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
成形体として、500mlのペットボトル(高さ133mm、胴外径64mm、口部外径24.9mm、口部内径21.4mm、肉厚300μm及び樹脂量29g)の内表面に、
図7に示す成膜装置を用いてSiOC薄膜を形成した。ペットボトルを真空チャンバ6内に収容し、1.0Paに到達するまで減圧した。次いで、複合発熱体18を2本用い、複合発熱体18に直流電流を24V印加し、2000℃に発熱させた。複合発熱体18は、
図1に示す第一実施形態に係る複合発熱体1Aを用いた。すなわち、抵抗発熱体2Aをφ0.5mm、長さ44cmのレニウム線とし、原料ガス接触部3Aをφ0.1mm、長さ5000mmのタンタル線として、抵抗発熱体2Aの外表面に原料ガス接触部3Aを螺旋状に巻きつけたものを使用した。次いで、ガス流量調整器24aから原料ガス33としてビニルシランを、流量が50sccmとなるように供給し、ペットボトルの内表面にガスバリア薄膜を堆積させた。その後、原料ガス33の供給を止め、反応室12内を再度排気した後、リークガスを導入して、反応室12を大気圧にし、上部チャンバ15を開けてプラスチック容器11を取り出した。膜厚は、20nmであった。なお、膜厚は、触針式段差計(型式:α‐ステップ、ケーエルエーテン社製)を用いて測定した値である。ここで、ガス流量調整器24a,24bからガス供給口16の配管は、アルミナ製の1/4インチ配管で構成した。成膜時の圧力を5.0Paとした。また、成膜時間は、6秒間とした。
【0068】
(実施例2)
複合発熱体18に関し、抵抗発熱体2Aをφ0.5mm、長さ44cmのC/Cコンポジット線とし、原料ガス接触部3Aをφ0.1mm、長さ5000mmのタンタル線として、抵抗発熱体2Aの外表面に原料ガス接触部3Aを螺旋状に巻きつけたものに変更した以外は、実施例1と同様にして成膜操作を行った。
【0069】
(実施例3)
複合発熱体18に関し、抵抗発熱体2Aをφ0.5mm、長さ44cmのイリジウム線とし、原料ガス接触部3Aをφ0.1mm、長さ5000mmのタングステン線として、抵抗発熱体2Aの外表面に原料ガス接触部3Aを螺旋状に巻きつけたものに変更した以外は、実施例1と同様にして成膜操作を行った。
【0070】
(実施例4)
複合発熱体18に関し、抵抗発熱体2Aをφ0.5mm、長さ44cmのロジウム線とし、原料ガス接触部3Aをφ0.1mm、長さ5000mmのモリブデン線として、抵抗発熱体2Aの外表面に原料ガス接触部3Aを螺旋状に巻きつけたものに変更した以外は、実施例1と同様にして成膜操作を行った。
【0071】
(実施例5)
複合発熱体18に関し、抵抗発熱体2Aをφ0.5mm、長さ44cmの炭化珪素線とし、原料ガス接触部3Aをφ0.1mm、長さ5000mmのタンタル‐イリジウム合金(タンタル含有率95質量%)線として、抵抗発熱体2Aの外表面に原料ガス接触部3Aを螺旋状に巻きつけたものに変更した以外は、実施例1と同様にして成膜操作を行った。
【0072】
(実施例6)
複合発熱体18に関し、抵抗発熱体2Aをφ0.5mm、長さ44cmの二珪化モリブデン線とし、原料ガス接触部3Aをφ0.1mm、長さ5000mmのタングステン−レニウム合金(タングステン含有率95質量%)線として、抵抗発熱体2Aの外表面に原料ガス接触部3Aを螺旋状に巻きつけたものに変更した以外は、実施例1と同様にして成膜操作を行った。
【0073】
(実施例7)
複合発熱体18に関し、抵抗発熱体2Aをφ0.5mm、長さ44cmのレニウム線とし、原料ガス接触部3Aをφ0.1mm、長さ5000mmのモリブデン−金合金(モリブデン含有率95質量%)線として、抵抗発熱体2Aの外表面に原料ガス接触部3Aを螺旋状に巻きつけたものに変更した以外は、実施例1と同様にして成膜操作を行った。
【0074】
(実施例8)
複合発熱体18に関し、抵抗発熱体2Aをφ0.5mm、長さ44cmのレニウム線とし、原料ガス接触部3Aをφ0.1mm、長さ5000mmの炭化タンタル線として、抵抗発熱体2Aの外表面に原料ガス接触部3Aを螺旋状に巻きつけたものに変更した以外は、実施例1と同様にして成膜操作を行った。なお、炭化タンタルは、タンタル線を抵抗発熱体2Aに巻きつけたのち、プロパンガス雰囲気下で抵抗発熱体2Aを加熱して作製した。
【0075】
(実施例9)
複合発熱体18に関し、抵抗発熱体2Aをφ0.5mm、長さ44cmのレニウム線とし、原料ガス接触部3Aをφ0.1mm、長さ5000mmの炭化タングステン線として、抵抗発熱体2Aの外表面に原料ガス接触部3Aを螺旋状に巻きつけたものに変更した以外は、実施例1と同様にして成膜操作を行った。なお、炭化タングステンは、タングステン線を抵抗発熱体2Aに巻きつけたのち、プロパンガス雰囲気下で抵抗発熱体2Aを加熱して作製した。
【0076】
(実施例10)
複合発熱体18に関し、抵抗発熱体2Aをφ0.5mm、長さ44cmのレニウム線とし、原料ガス接触部3Aをφ0.1mm、長さ5000mmの炭化モリブデン線として、抵抗発熱体2Aの外表面に原料ガス接触部3Aを螺旋状に巻きつけたものに変更した以外は、実施例1と同様にして成膜操作を行った。なお、炭化モリブデンは、モリブデン線を抵抗発熱体2Aに巻きつけたのち、プロパンガス雰囲気下で抵抗発熱体2Aを加熱して作製した。
【0077】
(実施例11)
複合発熱体18として、
図2に示す第二実施形態に係る複合発熱体1Bに変更した以外は、実施例1と同様にして成膜操作を行った。第二実施形態に係る複合発熱体1Bは、抵抗発熱体2Bをφ0.5mm、長さ44cmのレニウム線とし、原料ガス接触部3Bを厚さ0.1mmタンタルの皮膜として、抵抗発熱体2Bの外表面を原料ガス接触部3Bで被覆したものを用いた。タンタルの皮膜の形成は、クラッドワイヤー法により作製した。
【0078】
(実施例12)
複合発熱体18として、
図3に示す第三実施形態に係る複合発熱体1Cに変更した以外は、実施例1と同様にして成膜操作を行った。第三実施形態に係る複合発熱体1Cは、抵抗発熱体2Cをφ0.5mm、長さ44cmのC/Cコンポジット線とし、原料ガス接触部3Cを平均粒子径50nmのタンタル粒子として、抵抗発熱体2Cの外表面に原料ガス接触部3Cの粒子を固着させたものを用いた。タンタル粒子の固着は、次のとおり行った。すなわち、ショットピーニング機(型式FDD−11RBDT−20−701、フジ製作所製)でタンタル粒子を抵抗発熱体2Cの外表面に衝突させて、抵抗発熱体2Bの外表面に原料ガス接触部3Cの粒子を固着させた。
【0079】
(実施例13)
複合発熱体18として、
図4に示す第四実施形態に係る複合発熱体1Dに変更した以外は、実施例1と同様にして成膜操作を行った。第四実施形態に係る複合発熱体1Dは、抵抗発熱体2Dをφ0.5mm、長さ44cmのレニウム線とし、原料ガス接触部3Dを厚さ0.01mm、幅10mm、長さ120cmのタンタル箔として、抵抗発熱体2Dの外表面に原料ガス接触部3Dを巻きつけたものを用いた。
【0080】
(実施例14)
複合発熱体18として、
図5に示す第二実施形態の変形形態に係る複合発熱体1Eに変更した以外は、実施例1と同様にして成膜操作を行った。第二実施形態の変形形態に係る複合発熱体1Eは、実施例11において、抵抗発熱体2Eを断面形状が楕円形であり、楕円形の平均長径1.0mm、平均短径0.25mm、側面の長さ44cmのレニウム線とした以外は、実施例11と同様にして形成した。
【0081】
(実施例15)
複合発熱体18として、
図6に示す第四実施形態の変形形態に係る複合発熱体1Fに変更した以外は、実施例1と同様にして成膜操作を行った。第四実施形態の変形形態に係る複合発熱体1Fは、実施例13において、抵抗発熱体2Fを断面形状が長方形であり、楕円形の長辺0.6mm、短辺0.3mm、側面の長さ44cmのレニウム線とした以外は、実施例13と同様にして形成した。
【0082】
(比較例1)
複合発熱体18に替えて、抵抗発熱体及び原料ガス接触部を同一の材質で一体に形成した発熱体とした以外は、実施例1と同様にして成膜操作を行った。発熱体は、φ0.5mm、長さ44mmのタンタル線を使用した。
【0083】
(比較例2)
複合発熱体18に替えて、発熱体としてφ0.5mm、長さ44mmのタングステン線を使用した以外は、実施例1と同様にして成膜操作を行った。
【0084】
(比較例3)
複合発熱体18に替えて、発熱体としてφ0.5mm、長さ44mmのモリブデン線を使用した以外は、実施例1と同様にして成膜操作を行った。
【0085】
(連続成膜可能回数)
実施例1に記載した成膜操作を、同条件で繰り返して行い、成膜したPETボトルの酸素透過率が薄膜未形成のペットボトルの酸素透過率を基準値として、基準値の2分の1を超える段階に至った時点で、炭化劣化によって電気抵抗が低下し成膜が不能な状態に達した状態と判断し、そのときの繰り返し回数を成膜可能回数として記録した。酸素透過率は、酸素透過度測定装置(型式:Oxtran 2/20、Modern Control社製)を用いて、23℃、90%RHの条件にて測定し、測定開始から24時間コンディションし、測定開始から72時間経過後の値とした。実施例1〜15及び比較例1〜3の成膜操作で形成したペットボトルは、いずれも成膜操作1回目では、基準値の10分の1以下に低下していた。
【0086】
実施例1〜15では、いずれも連続成膜可能回数が1万回を超えた。一方、比較例1では、連続成膜可能回数が30回、比較例2では26回、比較例3では23回であり、いずれも実施例1〜10よりも連続成膜回数が大きく下回った。