特許第6043351号(P6043351)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043351
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】核酸クロマトグラフィー検査具
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20161206BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20161206BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20161206BHJP
   G01N 33/53 20060101ALN20161206BHJP
【FI】
   C12M1/00 AZNA
   C12M1/34 Z
   !C12N15/00 A
   !G01N33/53 M
【請求項の数】13
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-523812(P2014-523812)
(86)(22)【出願日】2013年7月5日
(86)【国際出願番号】JP2013068565
(87)【国際公開番号】WO2014007385
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2016年2月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-153114(P2012-153114)
(32)【優先日】2012年7月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】奥村 英正
(72)【発明者】
【氏名】廣田 寿一
【審査官】 松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−014507(JP,A)
【文献】 特開平11−044689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12N 15/09
G01N 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸を含む試料液体を展開し、前記標的核酸を検出して表示するための細長形状の多孔性シートと、
前記多孔性シートが貼り付けられた貼付面を有するバッキング部材と、を備え、
前記多孔性シートの表面は、前記標的核酸を捕獲するための核酸プローブが固定されているとともに前記多孔性シートの長手方向と交わる角度に延びる帯状の表示部を有する検出面を有し、
前記貼付面が凹形状を呈するとともに、
前記多孔性シートが前記貼付面の凹形状に追随して反った形状を有する核酸クロマトグラフィー検査具。
【請求項2】
前記多孔性シートの前記長手方向に平行でかつ前記多孔性シートの厚さ方向に平行な断面において、前記貼付面が凹形状を呈する請求項1に記載の核酸クロマトグラフィー検査具。
【請求項3】
前記多孔性シートの反りに伴って、前記検出面における平均開孔径が、前記多孔性シートの前記貼付面側の表面における平均開孔径よりも小さい請求項1または2に記載の核酸クロマトグラフィー検査具。
【請求項4】
前記バッキング部材の形状が細長の板形状であり、前記バッキング部材の長手方向が前記多孔性シートの前記長手方向と平行である請求項1〜3のいずれか1項に記載の核酸クロマトグラフィー検査具。
【請求項5】
前記多孔性シートが、曲率を有して反っている請求項1〜4のいずれか1項に記載の核酸クロマトグラフィー検査具。
【請求項6】
前記多孔性シートの凹値が1.0〜5.0mmである請求項5に記載の核酸クロマトグラフィー検査具。
【請求項7】
前記バッキング部材は、前記貼付面とは反対側の表面が前記貼付面の凹形状に相補的な凸形状であることにより、弓なりに湾曲している請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸クロマトグラフィー検査具。
【請求項8】
複数の、請求項1〜7のいずれか1項に記載の核酸クロマトグラフィー検査具と、
前記核酸クロマトグラフィー検査具を収容する梱包ケースと、を備える核酸クロマトグラフィー検査具セット。
【請求項9】
複数の、請求項7に記載の核酸クロマトグラフィー検査具と、
前記核酸クロマトグラフィー検査具を収容する梱包ケースと、を備え、
前記複数の核酸クロマトグラフィー検査具の前記バッキング部材がそれぞれ異なる曲率を有して弓なりに湾曲している核酸クロマトグラフィー検査具セット。
【請求項10】
標的核酸を含む試料液体を展開し、前記標的核酸を検出して表示するための細長形状の多孔性シートと、
前記多孔性シートが貼り付けられたバッキング部材と、を備え、
前記多孔性シートの表面は、前記標的核酸を捕獲するための核酸プローブが固定されているとともに前記多孔性シートの長手方向と交わる角度に延びる帯状の表示部を有する検出面を有し、
前記検出面に垂直かつ前記表示部の延びる方向に沿って前記表示部を切断した断面において、前記表示部の両端部以外の部分が前記表示部の前記両端部を結ぶ基準線よりも張り出している核酸クロマトグラフィー検査具。
【請求項11】
前記多孔性シートの前記長手方向に垂直な断面において、前記検出面が曲率を有して張り出している請求項10に記載の核酸クロマトグラフィー検査具。
【請求項12】
前記表示部においては、前記表示部の両端部のそれぞれから中央に向かって所定の幅を有する領域で、同一の前記表示部における残余の領域よりも前記核酸プローブが高密度に固定されている請求項10または11に記載の核酸クロマトグラフィー検査具。
【請求項13】
前記表示部においては、前記表示部の両端部のそれぞれから中央に向かって所定の幅を有する領域で、同一の前記表示部における残余の領域よりも前記多孔性シートの平均開口径が小さい請求項10〜12のいずれか1項に記載の核酸クロマトグラフィー検査具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症やアレルギーなどに関する診断や、細菌やウィルスなどの検出に使用可能な核酸クロマトグラフィー検査具に関する。
【背景技術】
【0002】
ウィルスや細菌に由来する核酸(DNA、RNA)の有無、および特定の疾患や体質に関連した変異遺伝子に由来する核酸の有無を調べることにより、感染症、腫瘍などの遺伝性疾患、体質などを的確に診断することが可能である。例えば、ウィルス感染の有無を診断する場合には、患者の粘膜などから試料を採取し、PCR法を用いてウィルスに由来する核酸のみを増幅する処理を行う。この処理で得られた試料において、ウィルスに由来する核酸が検出されると、患者がウィルスに感染しているものと判定することができる。今日では、ゲノム解析の発展によって、遺伝子などの核酸の塩基配列に関する情報が蓄積されているのに加え、PCR法の改良によって、ウィルスや細菌に由来する核酸や特定の変異遺伝子に由来する核酸を選択的に増幅することはたやすくなっている。そこで、上述した核酸を対象とした診断法の適用をさらに一般的に広めるため、特定の核酸の有無を簡便に判定する技術が求められている。
【0003】
特定の核酸(以下、「標的核酸」という)の有無を簡便に判定する技術として、核酸クロマトグラフィー検査具が提案されている(特許文献1、2)。この核酸クロマトグラフィー検査具は、ペーパークロマトグラフィーと同様の仕組みで液体の試料を多孔性シート内に展開し、試料中に含まれる標的核酸を、多孔性シートの表面に固定した核酸プローブによって捕獲する。さらに、捕獲した標的核酸を発色させることにより、多孔性シートの表面に標的核酸の検出を表示するというものである。このように、核酸クロマトグラフィー検査具では、試料中に標的核酸が含まれている場合には多孔性シートの表面に表示が現れる。一方、試料中に標的核酸が含まれていない場合には多孔性シートの表面に表示が現れない。こうした極めて単純な仕組みで標的核酸の有無を判定することが可能である。
【0004】
一般的に、核酸クロマトグラフィー検査具は、細長い長方形の多孔性シートを、細長い長方形の台紙(バッキングシート)に貼り付けて作られた試験片(これを通常「ストリップ」と呼ぶ)の形で広く用いられている(特許文献3、4)。例えば、試料を調製する際に標的核酸を予め色素で標識しておいた場合には、上述のストリップの先端部を試料の入ったテストチューブに挿し込んでおくと、この後は何の操作を行わなくても、試料が毛細管現象によって多孔性シート内を展開していく。そして、多孔性シート中の核酸プローブを固定した場所で標的核酸が捕獲され、蓄積されていくことで、多孔性シート表面(核酸プローブを固定した部分)を発色させることが可能となる。そのため、核酸クロマトグラフィー検査具のストリップを多数のテストチューブのそれぞれに挿し込むのみという非常に簡便な作業でも、多数の試料を同時に検査可能になるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−157598号公報
【特許文献2】特表2005−503556号公報
【特許文献3】特開2006−201062号公報
【特許文献4】特開2010−14507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述の核酸クロマトグラフィー検査具のストリップでは、試料中の標的核酸の濃度が薄い場合、標的核酸の検出を示す表示の発色が薄くぼやけてしまい、標的核酸の有無を判定することが困難なことがある(従来技術の第1の問題点)。
【0007】
また、上述の核酸クロマトグラフィー検査具のストリップでは、細長く薄い試験片のため、ストリップを正面以外の方向から観察する場合、特に、ストリップを側方から観察する場合に、多孔性シートの表面を視認しにくくなり、その結果、標的核酸の検出を示す表示の有無を判別することが困難となる(従来技術の第2の問題点)。もっとも、観察する際にストリップをハンドリングし、ストリップを正面に向ければ支障がないとも思われるが、ハンドリング時に多孔性シートに触れてしまうと、多孔性シートが汚染されてしまって、標的核酸が捕獲されているにも関わらず、発色が現れないことがある。その結果として、標的核酸が存在している試料に対して、標的核酸が存在していないという誤った判定をしてしまう恐れがある。また、核酸クロマトグラフィー検査具のストリップでは、上述したように多くの試料を同時かつ簡便に検査可能であることが重要な利点であるので、ストリップを1つ1つハンドリングして向きを調整することになれば、この重要な利点を大きく損なうことにもなる。
【0008】
上記の従来技術の第1の問題点に鑑みて、本願の第1発明の目的は、試料中の標的核酸の濃度が薄い場合であっても、標的核酸の有無を容易に判別可能とする技術を提供することにある。
【0009】
また、上記の従来技術の第2の問題点に鑑みて、本願の第2発明の目的は、核酸クロマトグラフィー検査具を正面以外の方向から観察する場合であっても、標的核酸の検出を示す表示の有無を容易に判別可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下に示す核酸クロマトグラフィー検査具である。
【0011】
[1] 標的核酸を含む試料液体を展開し、前記標的核酸を検出して表示するための細長形状の多孔性シートと、前記多孔性シートが貼り付けられた貼付面を有するバッキング部材と、を備え、前記多孔性シートの表面は、前記標的核酸を捕獲するための核酸プローブが固定されているとともに前記多孔性シートの長手方向と交わる角度に延びる帯状の表示部を有する検出面を有し、前記貼付面が凹形状を呈するとともに、前記多孔性シートが前記貼付面の凹形状に追随して反った形状を有する核酸クロマトグラフィー検査具。
【0012】
[2] 前記多孔性シートの前記長手方向に平行でかつ前記多孔性シートの厚さ方向に平行な断面において、前記貼付面が凹形状を呈する前記[1]に記載の核酸クロマトグラフィー検査具。
【0013】
[3] 前記多孔性シートの反りに伴って、前記検出面における平均開孔径が、前記多孔性シートの前記貼付面側の表面における平均開孔径よりも小さい前記[1]または[2]に記載の核酸クロマトグラフィー検査具。
【0014】
[4] 前記バッキング部材の形状が細長の板形状であり、前記バッキング部材の長手方向が前記多孔性シートの前記長手方向と平行である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の核酸クロマトグラフィー検査具。
【0015】
[5] 前記多孔性シートが、曲率を有して反っている前記[1]〜[4]のいずれかに記載の核酸クロマトグラフィー検査具。
【0016】
[6] 前記多孔性シートの凹値が1.0〜5.0mmである前記[5]に記載の核酸クロマトグラフィー検査具。
【0017】
[7] 前記バッキング部材は、前記貼付面とは反対側の表面が前記貼付面の凹形状に相補的な凸形状であることにより、弓なりに湾曲している前記[1]〜[6]のいずれかに記載の核酸クロマトグラフィー検査具。
【0018】
[8] 複数の、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の核酸クロマトグラフィー検査具と、前記核酸クロマトグラフィー検査具を収容する梱包ケースと、を備える核酸クロマトグラフィー検査具セット。
【0019】
[9] 複数の、前記[7]に記載の核酸クロマトグラフィー検査具と、前記核酸クロマトグラフィー検査具を収容する梱包ケースと、を備え、前記複数の核酸クロマトグラフィー検査具の前記バッキング部材がそれぞれ異なる曲率を有して弓なりに湾曲している核酸クロマトグラフィー検査具セット。
【0020】
[10] 標的核酸を含む試料液体を展開し、前記標的核酸を検出して表示するための細長形状の多孔性シートと、前記多孔性シートが貼り付けられたバッキング部材と、を備え、前記多孔性シートの表面は、前記標的核酸を捕獲するための核酸プローブが固定されているとともに前記多孔性シートの長手方向と交わる角度に延びる帯状の表示部を有する検出面を有し、前記検出面に垂直かつ前記表示部の延びる方向に沿って前記表示部を切断した断面において、前記表示部の両端部以外の部分が前記表示部の前記両端部を結ぶ基準線よりも張り出している核酸クロマトグラフィー検査具。
【0021】
[11] 前記多孔性シートの前記長手方向に垂直な断面において、前記検出面が曲率を有して張り出している前記[10]に記載の核酸クロマトグラフィー検査具。
【0022】
[12] 前記表示部においては、前記表示部の両端部のそれぞれから中央に向かって所定の幅を有する領域で、同一の前記表示部における残余の領域よりも前記核酸プローブが高密度に固定されている前記[10]または[11]に記載の核酸クロマトグラフィー検査具。
【0023】
[13] 前記表示部においては、前記表示部の両端部のそれぞれから中央に向かって所定の幅を有する領域で、同一の前記表示部における残余の領域よりも前記多孔性シートの平均開口径が小さい前記[10]〜[12]のいずれかに記載の核酸クロマトグラフィー検査具。
【発明の効果】
【0024】
本願の第1発明(上記[1]〜[9]に記載されている発明)によれば、核酸クロマトグラフィー検査具のバッキング部材における貼付面が凹形状を呈し、この貼付面の凹形状に追随して多孔性シートが反った形状を有するので、表示部で標的核酸がより密集した状態で捕獲される。その結果、標的核酸の検出を示す表示の発色が濃く現れやすくなる。すなわち、本願の第1発明(上記[1]〜[9]に記載されている発明)によれば、標的核酸の検出を示す表示の発色が濃く現れやすくなるので、試料中の標的核酸の濃度が薄い場合であっても、標的核酸の有無を容易に判別可能となる。
【0025】
本願の第2発明(上記[10]〜[13]に記載されている発明)によれば、標的核酸の検出を表示する表示部の両端部以外の部分が当該表示部の両端部よりも張り出しているので、核酸クロマトグラフィー検査具を正面以外の方向から観察する場合であっても、表示部の一部分が面として視認可能な状態となる。その結果、標的核酸の検出を示す表示の有無を容易に判別可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A】第1発明の核酸クロマトグラフィー検査具の一実施形態を模式的に示す正面図である。
図1B図1Aに示されている白抜き矢印Vの方向から観た、核酸クロマトグラフィー検査具の模式的な側面図である。
図2図1Aに示されている核酸クロマトグラフィー検査具の使用時において、表示部に標的核酸が捕獲されている様子を模式的に示す説明図である。
図3図1Aに示されている核酸クロマトグラフィー検査具の一使用態様を示す模式図である。
図4】第1発明の核酸クロマトグラフィー検査具の他の実施形態を模式的に示す側面図である。
図5】第1発明の核酸クロマトグラフィー検査具セットの一実施形態を示す模式図である。
図6A】第2発明の核酸クロマトグラフィー検査具の一実施形態を模式的に示す正面図である。
図6B図6Aに示されている白抜き矢印Vの方向から観た、核酸クロマトグラフィー検査具の模式的な側面図である。
図7図6A中のA−A’断面の模式図である。
図8A図6Aに示されている核酸クロマトグラフィー検査具の一使用態様を模式的に示す正面図である。
図8B図8Aに示されている白抜き矢印Vの方向から観た、核酸クロマトグラフィー検査具の一使用態様を模式的に示す側面図である。
図9】第2発明の核酸クロマトグラフィー検査具の他の実施形態を模式的に示す正面図である。
図10図9中のB−B’断面の模式図である。
図11図9に示されている白抜き矢印Vの方向から観た、核酸クロマトグラフィー検査具の模式的な側面図である。
図12】キャプチャーDNAプローブ溶液のスポットの概要を示す説明図である。
図13】展開工程および検出工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0028】
1.第1発明:
図1Aは、本願の第1発明の核酸クロマトグラフィー検査具の一実施形態を模式的に示す正面図である。図1Bは、図1Aに示されている白抜き矢印Vの方向から観た、核酸クロマトグラフィー検査具1aの模式的な側面図である。本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aは、細長形状の多孔性シート10と、バッキング部材20とを備えている。さらに、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、吸収パッド40を備えている。
【0029】
まず、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aにおいて、多孔性シート10の表面には、標的核酸を検出した時に表示が現れる検出面13が設けられている。この検出面13内には表示部15が設けられている。表示部15は、多孔性シート10の長手方向Xと交わる角度に延びる、帯状の領域であり、この帯状の領域内に標的核酸を捕獲するための核酸プローブが固定されている。
【0030】
さらに、図1Bに示されているように、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、バッキング部材20に凹形状を呈した貼付面25が設けられている。この貼付面25の凹形状に追随する形で、多孔性シート10が反った形状にて貼付面25に貼り付けられている。そのため、多孔性シート10の検出面13、さらには、検出面13の一部領域である表示部15も弓なりに反った形状になっている。
【0031】
図2は、図1Aに示されている核酸クロマトグラフィー検査具1aの使用時において、表示部15に標的核酸60が捕獲されている様子を模式的に示す説明図である。図示されているように、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、表示部15が弓なりに反った形状であるので、表示部15に捕獲されている標的核酸60同士、特に、標的核酸60の中の表示部15から離れている部分同士が互いに寄せ集まる。その結果として、標的核酸60を標識している色素65同士が密集した状態になる。このように色素65が密集することにより、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、標的核酸60の検出を示すシグナル(発色)が表示部15に濃く、鮮明に現れやすくなる。
【0032】
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、多孔性シート10の長手方向Xに平行でかつ多孔性シート10の厚さ方向Zに平行な断面において、貼付面25が凹形状を呈することが好ましい。このように貼付面25が長手方向Xに沿って弓状となる凹形状を有する場合には、標的核酸60が帯状の表示部15の側方から中央に向かって寄せ集まるようになるので、標的核酸60の検出を示すシグナル(発色)がシャープなバンドとして現れやすくなる。
【0033】
また、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、表示部15に捕獲されている標的核酸60同士がより一層に寄せ集まり、その結果として、標的核酸60を標識している色素65同士がより一層に密集した状態となる。このことから、多孔性シート10の反りに伴って、検出面13における平均開孔径が、多孔性シート10の貼付面25側の表面における平均開孔径よりも小さいことが好ましい。
【0034】
図3は、図1Aに示されている核酸クロマトグラフィー検査具1aの一使用態様を示す模式図である。図示されているように、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aについては、例えば、テストチューブ50内に入っている液体の試料55の中に、核酸クロマトグラフィー検査具1aの先端部45を浸して使用することができる。こうして先端部45を試料55の中に浸しておくと、試料55が毛細管現象によって多孔性シート10内を展開して、もう一方の先端部(吸収パッド40が設けられている先端部)まで送られていく。このとき、試料55内に標的核酸が含まれていると、この標的核酸が表示部15に固定されている核酸プローブによって捕獲され、その結果、標的核酸を標識する色素によって表示部15が発色するようになる(図3中の表示部15a,15bを参照)。
【0035】
図3に示されているように、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、検出面13が2本の位置マーカー14a,14bによって長手方向Xに沿って3つの区画に仕切られており、これら3つの区画に表示部15a〜15cが1つずつ設けられている。そして、表示部15a〜15cには、それぞれ異なる種類の標的核酸(異なる塩基配列の標的核酸)を捕獲するための核酸プローブが固定されている。例えば、表示部15aにアレルギー疾患のマーカーとなる標的核酸に対する核酸プローブ、表示部15bに腫瘍マーカーとなる標的核酸に対する核酸プローブ、および表示部15cにウィルス感染のマーカーとなる標的核酸に対する核酸プローブを固定しておくと、一度の検査で上述した3種の疾患を患っているのか否かを判定することが可能となる。これを図3に示されている例に当てはめて考えると、図3中の試料55が採取された患者については、表示部15a,15bで発色が観察され、表示部15cで発色が観察されていないので、アレルギー疾患および腫瘍を患っている一方で、ウィルス疾患を患っていないと判定されることになる。
【0036】
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、表示部15a〜15cは、長手方向Xと直交する幅方向Yに沿って直線状に延びている。なお、本実施形態では、表示部15は、多孔性シート10の幅方向Yに沿って直線状に延びている必要はなく、試料55が多孔性シート10内を展開していく過程で、試料55が表示部15を横断していくように設けられているものであればよい。ここでは図示しないが、表示部15については、例えば、長手方向Xに対して45度で交わる角度で延びる帯形状や、蛇行した帯形状(例えば、図9を参照)などの任意の形状を適用することができる。
【0037】
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、多孔性シート10の一部と接触し、多孔性シート10を展開してきた試料55を吸収する吸収パッド40が設けられている。本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aのように吸収パッド40が設けられている場合には、吸収パッド40が多孔性シート10を展開してきた試料55を吸収、保持することが可能となるので、多孔性シート10内に展開させる試料55の液量を増加させることが可能となる。ひいては、核酸クロマトグラフィー検査具1aにアプライされる標的核酸の量も増加させることが可能となる。その結果として、表示部15に捕獲される標的核酸の量も増加し、標的核酸の検出を示すシグナル(発色)が濃く現れるようになるのでよい。
【0038】
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、試料55が多孔性シート10内を展開している際に、標的核酸の全部または一部が一本鎖のポリヌクレオチド構造を有するように調製しておく。また、核酸プローブも標的核酸の一本鎖ポリヌクレオチド構造と特異的にハイブリダイズ可能な一本鎖ポリヌクレオチド構造(標的核酸の一本鎖ポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド)を少なくとも一部に有するものを用いる。こうした標的核酸と核酸プローブを用いると、標的核酸が表示部15に到達したときに、標的核酸の一本鎖ポリヌクレオチド構造と、核酸プローブの一本鎖ポリヌクレオチド構造とがハイブリダイズ(二本鎖形成)し、標的核酸が核酸プローブを介して表示部15に固定される。なお、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、核酸プローブについては、標的核酸の有する一本鎖ポリヌクレオチド構造と特異的にハイブリダイズ可能な一本鎖ポリヌクレオチド構造を有するものであれば、DNAプローブ、RNAプローブ、あるいはモルフォリノアンチセンスオリゴなど、特に制限はされない。
【0039】
また、標的核酸についても、一本鎖DNA、端部が一本鎖構造とされた二本鎖DNA、RNAなどを適用することが可能である。標的核酸の標識についても通常用い得る方法を適用すればよい。PCR法を用いて標的核酸を調製する場合には、ポリメラーゼ反応の基質となるdNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)のうちの少なくとも1種に予め標識したものを用いてPCR産物を直接的に標識する手法を用いることができる。また、無標識のPCR産物(二本鎖DNA)に事後的に標識を付加する手法を用いることができる。無標識のPCR産物(二本鎖DNA)に事後的に標識を付加する手法としては、例えば、PCR産物の両端が特定の塩基配列の一本鎖ポリヌクレオチド構造となるように改変したPCRプライマーを用いることができる。この改変型のPCRプライマーを用いて得られたPCR産物の一本鎖ポリヌクレオチド構造に対して、これと相補的な塩基配列を有する標識された一本鎖ポリヌクレオチドをハイブリダイズさせる。このハイブリダイゼーションの結果、標的核酸(PCR産物)を標識することが可能である。
【0040】
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、多孔性シート10は、ニトロセルロース、セルロース、ポリエーテルスルホン、ナイロン、PVDFなどから作られた、無数の細孔を有するシートを用いることが可能である。
【0041】
また、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aのように、バッキング部材20の形状が細長の板形状であり、バッキング部材20の長手方向Xが多孔性シート10の長手方向Xと平行であることが好ましい。このようにすると、核酸クロマトグラフィー検査具1aはコンパクトなストリップとなるのでハンドリング性に優れたものとなる。
【0042】
また、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、試料55が多孔性シート10を均一に展開しやすくなり、その結果として表示部15に現れるシグナル(発色)にムラが生じにくくなるという理由から、多孔性シート10が曲率を有して反っていることが好ましい。なお、ここでいう「曲率を有して反っている」とは、断面で観た場合に、多孔性シートが円弧形状になっていることを意味する。
【0043】
また、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、多孔性シート10が曲率を有して反っている場合、表示部15に現れるシグナル(発色)にムラがより確実に生じにくくなるという理由から、多孔性シート10の凹値が1.0〜5.0mmであることが好ましい。さらに、ハンドリング性が高まるとの理由から、凹値が2.0〜5.0mmであることがより好ましい。これ加えて特に、表示部15に現れるシグナル(発色)が濃くなるという理由から、凹値が2.0〜4.0mmであることがより一層に好ましい。図4を参照しつつ説明すると、本明細書にいう「多孔性シートの凹値」とは、上述のバッキン部材20の長さ方向[ノギスを用いて長さを測定する場合に、バッキング部材20の最大長さが測定される方向(図4の例では長手方向X)]に対して垂直な方向に沿って測定される多孔性シートの凹みの深さDの値のことを意味する。
【0044】
さらに、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、表示部15に現れるシグナル(発色)が濃くなるという理由から、多孔性シート10の長さが15〜100mmかつ凹値が1.0〜5.0mmであることが好ましい。さらに多孔性シート10の長さが30〜60mmかつ凹値が1.0〜4.0mmであることがより好ましい。特に多孔性シート10の長さが40〜50mmかつ凹値が1.0〜3.0mmであることがより一層に好ましい。本明細書にいう多孔性シートの長さとは、多孔性シートの表面(検出面)上において長手方向に沿って引かれた多孔性シートの中心線の長さのことを意味する。
【0045】
図4は、第1発明の核酸クロマトグラフィー検査具の他の実施形態を示す模式的な側面図である。本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1bでは、バッキング部材20は、背面27(貼付面25とは反対側にあるバッキング部材20の表面)が貼付面25の凹形状に相補的な凸形状であることにより、弓なりに湾曲している。本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1bでは、バッキング部材20が弓なりに湾曲しているので、バッキング部材20の背面27を平らな実験台の上につける状態で置くと、核酸クロマトグラフィー検査具1bの両端と実験台との間に隙間が生じる。この隙間により、核酸クロマトグラフィー検査具1bを摘まみ易くなる。こうして摘まみ易くなると、核酸クロマトグラフィー検査具1bの検出面13を誤って触れて汚染させてしまうことが防止でき、ひいては、検出面13の汚染に起因する誤判定を防止することが可能になる。
【0046】
図5は、第1発明の核酸クロマトグラフィー検査具セットの一実施形態を示す模式図である。図示されているように、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具セット75は、上述した核酸クロマトグラフィー検査具1と、核酸クロマトグラフィー検査具1を収容する梱包ケース70とを有する。
【0047】
特に、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具セット75では、複数の核酸クロマトグラフィー検査具1のバッキング部材20が弓なりに湾曲しているものであり、さらに、これら複数の核酸クロマトグラフィー検査具1のバッキング部材20がそれぞれ異なる曲率を有して弓なりに湾曲していることが好ましい。このように、各核酸クロマトグラフィー検査具1のバッキング部材20が異なる曲率で弓なりに湾曲している場合には、梱包ケース70内で隣接する核酸クロマトグラフィー検査具1同士の間に隙間が生じる。その結果として、梱包ケース70から核酸クロマトグラフィー検査具1を1つずつ摘まみ出し易くなる。また、核酸クロマトグラフィー検査具1のバッキング部材20が異なる曲率で弓なりに湾曲している場合、バッキング部材20の背面27と梱包ケース70の内壁73との間に隙間が生じるので、梱包ケース70から核酸クロマトグラフィー検査具1を摘まみ出し易くなる。
【0048】
2.第2発明:
図6Aは、本願の第2発明の核酸クロマトグラフィー検査具の一実施形態を示す模式的な正面図である。図6Bは、図6Aに示されている白抜き矢印Vの方向(側方)から観察した、核酸クロマトグラフィー検査具101aの模式的な側面図である。本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aは、細長形状の多孔性シート110と、バッキング部材120とを備えている。さらに、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aでは、吸収パッド140を備えている。
【0049】
まず、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aにおいて、多孔性シート110の表面には、標的核酸を検出した時に表示が現れる検出面113が設けられている。この検出面113内には表示部115が設けられている。表示部115は、多孔性シート110の長手方向Xと交わる角度に延びる、帯状の領域であり、この帯状の領域内に標的核酸を捕獲するための核酸プローブが固定されている。さらに、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aでは、多孔性シート110がバッキング部材120の貼付面125に貼り付けられている。
【0050】
図7は、図6A中のA−A’断面の模式図である。この断面は、検出面113に垂直かつ表示部115の延びる方向に沿って表示部115を切断した断面に該当する。当該断面において、表示部115の両端部118a,118b以外の部分が表示部115の両端部118a,118bを結ぶ基準線(図7中の端部118aと端部118bとを結ぶ破線)よりも表側に張り出している。こうして表示部115が表側に向けて張り出しているので、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aを正面以外の方向(例えば、図6A図7中の白抜き矢印Vで示されている側方)から観察する場合であっても、図6Bに示されているように、表示部115の一部分が面として視認可能となる。その結果、標的核酸の検出を示す表示(発色)の有無を容易に判別可能となる。
【0051】
図7に示されているように、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aでは、多孔性シート110は中央部で厚く、中央部から両側に向かうにつれて薄くなる形状(蒲鉾形状)を有している。こうした形状の多孔性シート110を平らな貼付面125に密着させて貼り付けることで、多孔性シート110の検出面113(およびその一部領域である表示部115)が表側に向けて張り出した形となる。
【0052】
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aでは、多孔性シート110の長手方向に垂直な断面において、検出面113が曲率を有して表側に張り出していることが好ましい。このように検出面113が曲率を有して表側に張り出している場合には、検出面113に陰影が生じにくくなり、表示部115に現れるシグナル(発色)を視認し易くなる。なお、ここでいう「曲率を有して張り出している」とは、断面で観た場合に、多孔性シートの検出面が円弧形状になっていることを意味する。
【0053】
図8Aおよび図8Bは、図6Aに示されている核酸クロマトグラフィー検査具101aの一使用態様を示す模式図である。なお、図8A図6Aと同じ方向から観た正面図、図8B図6Bと同じ方向から観た側面図である。図示されているように、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aについては、例えば、テストチューブ150内に入っている液体の試料155の中に、核酸クロマトグラフィー検査具101aの先端部145を浸して使用することができる。こうして先端部145を試料155の中に浸しておくと、試料155が毛細管現象によって多孔性シート110内を展開して、もう一方の先端部(吸収パッド140が設けられている先端部)まで送られていく。このとき、試料155内に標的核酸が含まれていると、この標的核酸が表示部115に固定されている核酸プローブによって捕獲される。その結果、標的核酸を標識する色素によって表示部115が発色するようになる(図8A,8B中の表示部115a,115bを参照)。
【0054】
図示されているように、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aでは、検出面113が2本の位置マーカー114a,114bによって長手方向Xに沿って3つの区画に仕切られており、これら3つの区画に表示部115a〜115cが1つずつ設けられている。そして、表示部115a〜115cには、それぞれ異なる種類の標的核酸(異なる塩基配列の標的核酸)を捕獲するための核酸プローブが固定されている。例えば、表示部115aにアレルギー疾患のマーカーとなる標的核酸に対する核酸プローブ、表示部115bに腫瘍マーカーとなる標的核酸に対する核酸プローブ、および表示部115cにウィルス感染のマーカーとなる標的核酸に対する核酸プローブを固定しておくと、一度の検査で上述した3種の疾患を患っているのか否かを判定することが可能となる。これを図8Aおよび図8Bに示されている例に当てはめて考えると、図8Aおよび図8B中の試料155が採取された患者については、表示部115a,115bで発色が観察され、表示部115cで発色が観察されない。そのため、アレルギー疾患および腫瘍を患っている一方で、ウィルス疾患を患っていないと判定されることになる。
【0055】
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aでは、表示部115a〜115cは、長手方向Xと直交する幅方向Yに沿って直線状に延びている。なお、本実施形態では、表示部115は、多孔性シート110の幅方向Yに沿って直線状に延びている必要はなく、試料155が多孔性シート110内を展開していく過程で、試料155が表示部115を横断していくように設けられているものであればよい。表示部115については、例えば、長手方向Xに対して45度で交わる角度で延びる帯形状や、蛇行した帯形状などの任意の形状を適用することができる。
【0056】
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aでは、多孔性シート110の一部と接触し、多孔性シート110を展開してきた試料155を吸収する吸収パッド140が設けられている。本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aのように吸収パッド140が設けられている場合には、吸収パッド140が多孔性シート110を展開してきた試料155を吸収、保持することが可能となる。そのため、多孔性シート110内に展開させる試料155の液量を増加させることが可能となり、ひいては、核酸クロマトグラフィー検査具101aにアプライされる標的核酸の量も増加させることが可能となる。その結果として、表示部115に捕獲される標的核酸の量も増加し、標的核酸の検出を示すシグナル(発色)が濃く現れるようになるのでよい。
【0057】
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aでは、試料155が多孔性シート110内を展開している際に、標的核酸の全部または一部が一本鎖のポリヌクレオチド構造を有するように調製しておく。また、核酸プローブも標的核酸の一本鎖ポリヌクレオチド構造と特異的にハイブリダイズ可能な一本鎖ポリヌクレオチド構造(標的核酸の一本鎖ポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド)を少なくとも一部に有するものを用いる。こうした標的核酸と核酸プローブを用いると、標的核酸が表示部115に到達したときに、標的核酸の一本鎖ポリヌクレオチド構造と、核酸プローブの一本鎖ポリヌクレオチド構造とがハイブリダイズ(二本鎖形成)し、標的核酸が核酸プローブを介して表示部115に固定される。なお、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aでは、核酸プローブについては、標的核酸の有する一本鎖ポリヌクレオチド構造と特異的にハイブリダイズ可能な一本鎖ポリヌクレオチド構造を有するものであれば、DNAプローブ、RNAプローブ、あるいはモルフォリノアンチセンスオリゴなど、特に制限はされない。
【0058】
また、標的核酸についても、一本鎖DNA、端部が一本鎖構造とされた二本鎖DNA、RNAなどを適用することが可能である。標的核酸の標識についても通常用い得る方法を適用すればよい。PCR法を用いて標的核酸を調製する場合には、ポリメラーゼ反応の基質となるdNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)のうちの少なくとも1種に予め標識したものを用いてPCR産物を直接的に標識する手法を用いることができる。また、無標識のPCR産物(二本鎖DNA)に事後的に標識を付加する手法を用いることができる。無標識のPCR産物(二本鎖DNA)に事後的に標識を付加する手法としては、例えば、PCR産物の両端が特定の塩基配列の一本鎖ポリヌクレオチド構造となるように改変したPCRプライマーを用いることができる。この改変型のPCRプライマーを用いて得られたPCR産物の一本鎖ポリヌクレオチド構造に対して、これと相補的な塩基配列を有する標識された一本鎖ポリヌクレオチドをハイブリダイズさせる。このハイブリダイゼーションにより、標的核酸(PCR産物)を標識することができる。
【0059】
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aでは、多孔性シート110は、ニトロセルロース、セルロース、ポリエーテルスルホン、ナイロン、PVDFなどから作られた、無数の細孔を有するシートを用いることが可能である。
【0060】
図9は、第2発明の核酸クロマトグラフィー検査具の他の実施形態を模式的に示す正面図である。図示されているように、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101bでは、表示部115d,115eがS字形状に曲がり、その表示部115d,115eの両端部118c,118dが検出面113の側縁までは達していない。
【0061】
図10は、図9中のB−B’断面の模式図である。この断面は、図9中の帯状の表示部115dの両端部118c,118dを結ぶ破線に示されているように、表示部115dの中心線を含むものである。図示されているように、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101bでは、アーチ形状に湾曲したシート状のバッキング部材120の上面を貼付面125とし、この貼付面125に均一な厚さの多孔性シート110が貼り付けられている。そのため、当該断面において、表示部115dの両端部118c,118d以外の部分が表示部115dの両端部118c,118dを結ぶ基準線(図10中の破線)よりも表側に張り出している。
【0062】
図11は、図9および図10中の白抜き矢印Vで示されている方向から観た、核酸クロマトグラフィー検査具101bの側面図である。上述のように表示部115dが表側に向けて張り出している。そのため、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101bを正面以外の方向から観察する場合であっても、表示部115dの一部分が面として視認可能な状態となる。その結果、表示部115dにおける標的核酸の検出を示す表示(発色)の有無を容易に判別可能となる。
【0063】
さらに、図9に示されているように、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101bでは、表示部115(表示部115d,115e)においては、表示部115の両端部118c,118dのそれぞれから中央に向かって所定の幅Wを有する領域で、同一の表示部115における残余の領域よりも核酸プローブが高密度に固定されている。図9および図11中では、核酸プローブの密度の濃淡について表示部115dの網掛けの濃さで示す。このように表示部115における両端部118c,118dの近傍の領域で核酸プローブが高密度で固定されていると、表示部115の両端部118c,118dの近傍の領域で標的核酸の検出を示すシグナル(発色)が濃く現れるようになる。その結果として、図11に示されているように、核酸クロマトグラフィー検査具101bを側方から観察する場合、表示部115の端部118dの近傍の領域しか視認することができなくても、標的核酸の検出を示すシグナル(発色)の有無を容易に判別することが可能となる。これを図11に示されている例に当てはめて説明すると、核酸クロマトグラフィー検査具101bを側方から観察する場合であっても、表示部115dで標的核酸の検出を示すシグナル(発色)が生じた一方、表示部115eではシグナル(発色)が生じていないことを容易に判別することが可能になる。特に、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101bでは、標的核酸が検出されれば表示部115の端部118dの近傍が濃く発色するはずである。そのため、側方から観察した場合に表示部115の端部118dの近傍に発色を認められなければ、躊躇することなく、標的核酸が検出されないとの判定を下すことが可能である。すなわち、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101bでは、迅速に標的核酸の有無を判定することが可能になる。
【0064】
また、第2発明の核酸クロマトグラフィー検査具101では、表示部115の両端部118c,118dのそれぞれから中央に向かって所定の幅Wを有する領域で、同一の表示部115における残余の領域よりも多孔性シート110の平均開口径が小さいことが好ましい。このように、表示部115の両端部118c,118dの近傍の領域で多孔性シート110の平均開口径が小さい場合には、これら両端部118c,118dの近傍の領域では、標的核酸が密集した状態で捕獲されるようになる。その結果、標的核酸の検出を示すシグナル(発色)が濃く現れるようになるのでよい。
【0065】
なお、第2発明の核酸クロマトグラフィー検査具101では、表示部115の両端部118c,118dの近傍の領域で核酸プローブが高濃度で固定され、かつ表示部115の両端部118c,118dの近傍の領域で多孔性シート110の平均開口径が小さい場合がある。この場合、核酸プローブが高濃度で固定されている領域と、多孔性シート110の平均開口径が小さい領域とは必ずしも完全に一致するものでなくてもよい。
【0066】
多孔性シート110に関して、表示部115の両端部118c,118dのそれぞれから中央に向かって所定の幅Wを有する領域で、同一の表示部115における残余の領域よりも多孔性シート110の平均開口径が小さいものを作製する際には、次のようにするとよい。まず、細長形状の多孔性シート110とする際に、多孔性シート110の両側縁(幅方向Yの両側縁)(あるいは両側縁とそれらの近傍の部分)を圧縮した後に切断するとよい。あるいは、圧縮しつつ切断する手法を用いるとよい。こうして多孔性シート110の切断時に両側縁を圧縮すると、多孔性シート110の両側縁の周辺部分で多孔性シート110の平均開口径を縮小させることが可能となる。具体的には、刃先の鈍い押切カッターを用いて、多孔性シート110の両側縁を切断する方法などを用いるとよい。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
[核酸クロマトグラフィー検査具の作製]
メルクミリポア製Hi−Flow Plus メンブレンシート(以下、「多孔性シート」と称する)(45mm×300mm)をメルクミリポア製ラミネート加工メンブレンカード(以下、「バッキング部材」と称する)(60mm×300mm)に貼り付けて、複合シートを作製した。続いて、下記の手順1〜7に従い、複合シートの多孔性シートの表面に、表1に示す塩基配列からなるキャプチャーDNAプローブ溶液を、日本ガイシ株式会社GENESHOT(登録商標)スポッターを用いてスポットし、キャプチャーDNAプローブを多孔性シートの表面に固定化した。次いで、複合シートを細長形状に切断する加工を行うことにより、核酸クロマトグラフィー検査具のストリップを得た。なお、GENESHOT(登録商標)スポッターは、特開2003−75305号公報に記載されている吐出ユニット(インクジェット法)を用いた装置である。
【0069】
[手順1:キャプチャーDNAプローブ溶液の調製]
9種類のキャプチャーDNAプローブを表1の塩基配列に従って合成した。これらのキャプチャーDNAプローブをTris−EDTA bufferで溶解した水溶液を、SSC緩衝液およびブロモフェノールブルー(BPB)と混合して、ブロモフェノールブルー0.05wt%、キャプチャーDNAプローブ濃度2〜60μMの溶液を調製した。
【0070】
【表1】
【0071】
[手順2:スポット条件の検討]
複合シートの多孔性シートの表面にスポットするのに先立ち、検査用のシート上に検査スポットを行うことにより、スポット条件の検討を行った。具体的には、GENESHOT(登録商標)スポッターの吐出ユニット内に配置した液体注入部に、キャプチャーDNAプローブ溶液を注入し、検査用のシート上に検査スポットを行った。品質の検査は、検査用シートに対して、(i)スポットが形成されないことはないか、(ii)スポットがいびつな形状ではないか、(iii)スポット径が設計値から10%以上ずれていないか、(iv)不要なスポット(一般に「サテライト」と称されているスポット)が発生していないか、(v)スポット位置がスポット径の3分の1以上ずれていないか、という5項目について実施した。キャプチャーDNAプローブ溶液はブロモフェノールブルーによって青色に着色されているので、上記(i)〜(v)の項目については検査用のシート上のスポットを目視で観察することにより検査可能であった。
【0072】
上述の品質の検査の結果、検査スポットで不良が検出されたときは、吐出ユニット内に配置された圧電/電歪素子の駆動信号を調整して、検査スポットを再度行った。駆動信号の調整は電圧値、所定電圧までの上昇時間、所定電圧値のキープ時間、電圧立ち下げ時間の変更により行った。それでもなお不良が検出されるときは、真空吸引によって吐出ユニットからキャプチャーDNAプローブ溶液を抜き取り、液体注入部にキャプチャーDNAプローブ溶液を再度注入した後に、検査スポットを行った。以上の操作を、不良スポットが検出されなくなるまで繰り返した。
【0073】
[手順3:キャプチャーDNAプローブ溶液のスポット]
不良スポットが検出されなくなったことを確認した後、以下の方法でキャプチャーDNAプローブを、複合シートの多孔性シートの表面にスポットした。まず、1種類のキャプチャーDNAプローブ溶液につき、スポットのピッチを横方向[完成品の「幅方向Y」に対応]、縦方向[完成品の「長手方向X」に対応]ともに0.05mmで、かつ、多孔性シートの表面でスポットが横方向、縦方向に一直線上に並ぶように、吐出ユニットと多孔性シートとが非接触の状態でスポットを行った。これにより、複合シートの多孔性シートの表面に横方向300mm、縦方向0.5mmのライン(完成品の「表示部」に対応)を形成した。具体的には、多孔性シート上で、吐出ユニットを複合シートの横方向[完成品の「幅方向Y」に対応]に一直線上に移動させる。そして、終点まで到達したら、複合シートを縦方向[完成品の「長手方向X」に対応]に1列分または複数列分だけ移動させる。次いで、再び複合シートの横方向[完成品の「幅方向Y」に対応]に一直線上に移動させる。これらの手順にて、ライン(完成品の「表示部」に対応)の形成を行った。
【0074】
吐出ユニットから吐出されたキャプチャーDNAプローブのスポットが着弾し、当該スポットが乾燥する前に、隣接する次のスポットが着弾して、両者が接触すると、滲みや色むらが発生する恐れがある。そこで、まず、横方向[完成品の「幅方向Y」に対応]に0.1mmのピッチで前半のスポットを行った。続いてスポットとスポットとの隙間に、新たにキャプチャーDNAプローブのスポットを着弾させる態様で、0.1mmのピッチにて後半のスポットを行った。このように、前半、後半に分けてスポットをすることにより、0.05mmのピッチのスポット列を形成すると、滲みや色むらを防ぐことが可能となった。
【0075】
上述の長さ300mm×幅0.5mmのラインは、図12に示されているように、ライン縦方向[完成品の「長手方向X」に対応]に並ぶ、y1〜y10のスポット列により形成されている。y1、y2、y3、y4、y5、y6、y7、y8、y9、y10の順にスポット列を形成することにより、長さ300mm×幅0.5mmのラインを形成することができるが、先のスポット列が乾燥する前に、後続のスポット列が重なってしまうと、この重なった部分で滲みや色むらが発生する恐れがある。そこで、y1、y10、y2、y9、y3、y8、y4、y7、y5、y6の順でスポットを行うと、先のスポット列が乾燥する前に、後続のスポット列が重なってしまう状況を回避することができる。その結果、ライン幅を0.45〜0.55mm(設計値0.50mm±誤差0.05mm)以内に収まるように、滲みの発生を抑制可能であった。さらに、y1、y6、y2、y7、y3、y8、y4、y9、y5、y10の順もしくは、y1、y3、y5、y7、y9、y2、y4、y6、y8、y10の順のように隣接するスポット列を連続して形成しないようにすることにより、滲みによるライン幅が0.45mm〜0.55mm(設計値0.50mm±誤差0.05mm)以内に収まるのに加えて、ライン内の色むらを防ぐことが可能であった。
【0076】
最終的に、複合シートの多孔性シートの表面に、縦方向[完成品の「長手方向X」に対応]のピッチが1.2mmにて、9本の、長さ300mm×幅0.5mmのライン(ライン幅の設計値からの誤差が0.1mm以下)を形成した。これらの9本のラインは、それぞれ1種類ずつ異なるキャプチャーDNAプローブ(表1中のプローブ番号1〜9)から形成した。すなわち、9種類のキャプチャーDNAプローブ(プローブ番号1〜9)のそれぞれを多孔性シートの表面の異なる場所に固定した。
【0077】
[手順4:位置マーカーラインのスポット]
表示部の位置の判定を容易にするために、顔料系マゼンダインクを含んだ液体をスポットすることにより、位置マーカーのラインを形成した。なお、位置マーカーのラインは、キャプチャーDNAプローブ溶液のスポットと同様の方法でスポットを行うことにより形成した。その結果、9本のキャプチャーDNAプローブのライン[ブロモフェノールブルー(BPB)で着色]と、3本の位置マーカーのライン(顔料系マゼンダインクで着色)とがストライプ状に配置された複合シートを得た(当該複合シートを加工して得られた完成品を示している図13(a)を参照)。
【0078】
[手順5:キャプチャーDNAの固定化]
手順4を経てキャプチャーDNAプローブのライン、位置マーカーのラインの形成が完了したのち、複合シートを50℃で30分間加熱することにより、キャプチャーDNAプローブを多孔性シートの表面に固定し、位置マーカーの顔料系マゼンタインクを多孔性シートの表面に固着した。
【0079】
[手順6:検査]
上述の手順3で行った検査と同様の項目[(i)〜(v)]に関して、複合シートの多孔性シートに対して検査を行った。
【0080】
[手順7:加工]
(実施例1〜5)
手順6の検査後、異常がなかった複合シートについては、下記の加工方法1〜3のいずれかの方法にて加工することにより、多孔性シートの凹値が1.0mm(実施例1)、2.0mm(実施例2)、3.0mm(実施例3)、4.0mm(実施例4)、5.0mm(実施例5)となるように長手方向に沿って弓なりに湾曲した、核酸クロマトグラフィー検査具のストリップを作製した(「多孔性シートの凹値」については、図4中のD値を参照)。
【0081】
[加工方法1]
メルクミリポア製吸収パッド(20mm×300mm)を、多孔性シートに5mm程度被るように装着した。吸収パッドを固定するために、粘着テープ(25mm×300mm)を吸収パッドの上面部を予め貼った後、粘着テープのはみ出ている部分を、複合シートの縦方向(完成品の「長手方向X」に対応)に引っ張りながら、粘着テープのはみ出ている部分を多孔性シートに貼り付けた。このようにすることで、多孔性シートおよびこれを裏打ちするバッキング部材が弓なりに湾曲した複合シートを得た(弓なりに湾曲した形状については図4を参照)。続いて、この複合シートについて裁断機もしくはギロチン式のカッターを用いて切断を行い、幅3.5mm、長さ60mm(多孔性シート長さ45mm)のストリップ(核酸クロマトグラフィー検査具)を85個得た。なお、多孔性シートの凹値は1.0〜5.0mmであった。
【0082】
[加工方法2]
メルクミリポア製吸収パッド(20mm×300mm)を、多孔性シートに5mm程度被るように装着した。吸収パッドを固定するために、粘着テープ(25mm×300mm)を多孔性シートに貼り付けた。多孔性シートの凹値が1.0〜5.0mmとなるように調整された固定治具を準備し、この固定治具に複合シートを固定した。こうして固定した状態で、複合シートを、裁断機もしくはギロチン式カッターを用いて切断し、幅3.5mm、長さ60mm(多孔性シート長さ45mm)のストリップ(核酸クロマトグラフィー検査具)を85個得た。
【0083】
[加工方法3]
メルクミリポア製吸収パッド(20mm×300mm)を、多孔性シートに5mm程度被るように装着した。吸収パッドを固定するために、粘着テープ(25mm×300mm)を多孔性シートに貼り付けた。複合シートを裁断機もしくはギロチン式カッターを用いて切断し、幅3.5mm、長さ60mm(多孔性シート長さ45mm)としてストリップを85個得た。続いて、これらストリップの一方の先端部もしくは、両方に先端部に適当な応力を加えることにより、多孔性シートの凹値が1.0〜5.0mmとなるようにストリップを弓なりに湾曲させ、核酸クロマトグラフィー検査具のストリップを得た。
【0084】
(比較例1)
[加工方法4]
メルクミリポア製吸収パッド(20mm×300mm)を、多孔性シートに5mm程度覆うように装着した。吸収パッドを固定するために、粘着テープ(25mm×300mm)を多孔性シートに貼り付けた。複合シートを裁断機もしくはギロチン式カッターで切断し、幅3.5mm、長さ60mm(多孔性シート長さ45mm)のストリップ(核酸クロマトグラフィー検査具)を85個得た。なお、ここで得られた核酸クロマトグラフィー検査具のストリップは、多孔性シートが平ら、すなわち、多孔性シートの凹値が0.0mmであった。
【0085】
(実施例6〜10)
手順6の検査後、異常がなかった複合シートについては、下記の加工方法5または加工方法6にて加工することにより、多孔性シートの中央部と縁部との高低差(凸値)が0.01mm(実施例6)、0.03mm(実施例7)、0.05mm(実施例8)、0.07mm(実施例9)、0.10mm(実施例10)となる核酸クロマトグラフィー検査具のストリップを作製した。なお、上記高低差(凸値)については、多孔性シート両端部の表面を結ぶ基準線から多孔性シート中央部の表面までの距離であり、図7中の「凸値T」を参照されたい。
【0086】
[加工方法5]
メルクミリポア製吸収パッド(20mm×300mm)を、多孔性シートに5mm程度被るように装着した。吸収パッドを固定するために、粘着テープ(25mm×300mm)をメンブレンシートに貼り付けた。続いて、裁断機を使用して複合シートの加工を行う際に、裁断機の刃を多孔性シートの表面に接触させた後、多孔性シートに刃を押し込むようにして、複合シートを切断した。このようにすることで、多孔性シートの中央部の厚みが0.55mm、両縁部の厚みが0.45mmとなる、核酸クロマトグラフィー検査具のストリップを得ることができた。すなわち、多孔性シートの中央部が同両端部よりも0.10mm突出している蒲鉾形状となった。また、同様の作業を繰り返して、1枚の複合シートから、幅3.5mm、長さ60mm(多孔性シート長さ45mm)のストリップを85個得た。さらに、裁断機の刃を押し込む力を調整することにより、多孔性シートの中央部と縁部との高低差(凸値)が、上述の0.10mmのものの他に、0.01mm、0.03mm、0.05mm、0.07mmのものも作製した。
【0087】
[加工方法6]
メルクミリポア製吸収パッド(20mm×300mm)を、多孔性シートに5mm程度被るように装着した。吸収パッドを固定するために、粘着テープ(25mm×300mm)をメンブレンシートに貼り付けた。続いて、複合シートの加工を行う際に、裁断機もしくは、ギロチン式カッターを用い、刃先が鋭角ではなく平坦なカッターによって、多孔性シートを押しつぶすようにして、複合シートを切断した。さらに、刃先に粘着剤を付着させておくことにより、多孔性シートをより確実に押しつぶすように切断した。このようにすることで、多孔性シートの中央部が両端部よりも突出している蒲鉾形状で、多孔性シートの中央部と縁部との高低差(凸値)が、0.01mm、0.03mm、0.05mm、0.07mm、0.10mmのものを得た。なお、1枚の複合シートから幅3.5mm、長さ60mm(多孔性シート長さ45mm)のストリップを85個得た。
【0088】
(比較例2)
[加工方法7]
メルクミリポア製吸収パッド(20mm×300mm)を、多孔性シートに5mm程被るように装着した。吸収パッドを固定するために、粘着テープ(25mm×300mm)をメンブレンシートに貼り付けた。刃先が鋭く鋭利な刃を用いて切断を行うことにより、多孔性シートの厚さが均一(0.55mm)で、多孔性シートの中央部と両側部との高低差(凸値)が0.00mmの核酸クロマトグラフィー検査具のストリップを得た。
【0089】
[評価試験]
実施例1〜10、比較例1,2の核酸クロマトグラフィー検査具のストリップについて、下記の手順8〜10に従った、クロマトグラフィー法により評価を行った。
【0090】
[手順8:移動相の準備]
プローブ番号1の塩基配列に相補的な塩基配列を有するサンプルDNA(なお、アミノ基で修飾)を、カルボキシル化ラテックス粒子(色:青色、平均粒子径:400nm)に固定した。このサンプルDNAを固定したラテックス粒子を滅菌水で分散し、移動相とした。
【0091】
[手順9:展開工程]
0.2mlマイクロチューブに、移動相50μlを分注し、核酸クロマトグラフィー検査具のストリップの先端を移動相に浸積した。浸漬直後から、移動相が毛細管現象により、多孔性シート内を上方(吸収パッドが設けられているもう一方の先端の方向)に向かって移動した。ブロモフェノールブルー(BPB)は、多孔性シートに固定されていないため、移動相により洗い流された。こうして洗い流されることで、ブロモフェノールブルーによるラインは消失した[図13(b)〜13(d)中で、消失したラインを星印(*)にて示す]。こうして移動相が上方に移動していくにつれて、ブロモフェノールブルーによる9本のラインが順次消失していくので、移動相が多孔性シート内のどこの位置まで到達しているのかを容易に確認することが可能であった。なお、位置マーカーの顔料系マゼンダインクは、多孔性シートに固着しており、移動相に不溶であるため、移動相によって洗い流されなかった。
【0092】
[手順10:検出工程]
移動相中のサンプルDNAは、プローブ番号1のキャプチャーDNAプローブと相補的な塩基配列を有しているため、ハイブリダイゼーション反応によって、プローブ番号1のキャプチャーDNAプローブに特異的に結合する。これにより、サンプルDNAを固定したラテックス粒子が、プローブ番号1のキャプチャーDNAプローブに捕捉される。プローブ番号1のキャプチャーDNAプローブが固定されている表示部では、サンプルDNAとプローブ番号1のキャプチャーDNAプローブとのハイブリダイゼーション反応の進行に伴い、ラテックス粒子が蓄積、凝集し、青色に発色した[図13(d)を参照]。移動相への浸漬から約20分で、移動相がすべて吸収パッドに移動して反応が終了した。以上の手順9、手順10で述べたように、ブロモフェノールブルー(BPB)のラインの色が移動相の展開(上昇)とともに一旦消失した後[図13(c)を参照]、プローブ番号1の表示部がラテックス粒子の蓄積により発色(青色)した[図13(d)を参照]。
【0093】
[評価試験の結果]
実施例1〜5、比較例1の核酸クロマトグラフィー検査具のストリップについて、評価結果を表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
(ハンドリング)
表2に示されているように、多孔性シートの凹値が1.0mmの実施例1では、ストリップを平らな机の上に置いたときや、梱包ケースから取り出すときのハンドリングが若干もたつくことが時々あった[評価結果:良、表2中では丸印(○)で表示]。多孔性シートの凹値が2.0〜5.0mmの実施例2〜5では、ハンドリングが極めて良好であった[評価結果:優、表2中では二重丸印(◎)で表示]。これに対して、多孔性シートの凹値が0.00mmの比較例1では、ストリップを平らな机の上に置いたときや、梱包ケースから取り出すときにハンドリングが困難であった。そのため、比較例1では、キャプチャーDNAプローブをスポットした領域を手で触ったり、ストリップを変形させてしまったりすることがあった[評価結果:不可、表2中ではクロス印(×)で表示]。
【0096】
(表示部の発色)
また、プローブ番号1のキャプチャーDNAプローブを固定した表示部の発色については、多孔性シートの凹値が1.0〜4.0mmの実施例1〜4では、凹値が大きくなるにつれて、表示部の発色が非常に濃く(通常レベルよりも濃く)なることが観察できた[評価結果:優、表2中では二重丸印(◎)で表示]。実施例5の核酸クロマトグラフィーの検査具のストリップでは、移動相の全量を展開させることが不可能なときがあり(詳しくは後述)、このようなときには表示部の発色が通常レベルで濃くなっていた[評価結果:良、表2中では丸印(○)で表示]。なお、多孔性シートの凹値が0.0mmの比較例1では、表示部の発色が薄くぼやけていた[評価結果:不可、表2中ではクロス印(×)で表示]。
【0097】
(移動相の吸収)
実施例1〜4、比較例1の核酸クロマトグラフィーの検査具のストリップでは、マイクロチューブに入れておいた移動相の全量を吸収パッドに移動させることができた[評価結果:優、表2中では二重丸印(◎)で表示]。実施例5の核酸クロマトグラフィーの検査具のストリップでは、吸収パッドが一部で剥がれて、多孔性シートと吸収パッドとの間に隙間が生じ、移動相のほぼ全量を吸収パッドに移動させることが不可能な場合もあった[評価結果:良、表2中では丸印(○)で表示]。
【0098】
以上から、実施例1〜5の核酸クロマトグラフィー検査具のストリップでは、「ハンドリング」、「表示部の発色」、「移動相の吸収」のいずれの項目も良好(評価結果が「良」以上)であることが判明した。
【0099】
実施例6〜10、比較例2の核酸クロマトグラフィーの検査具のストリップについて、評価結果を表3に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
(側方からの視認性)
表3に示されているように、実施例6のように多孔性シートの中央部と端部との高低差(凸値)が0.01mmの場合には、核酸クロマトグラフィーの検査具のストリップの側方から位置マーカーのラインを僅かに視認することができた[評価結果:良、表3中では丸印(○)で表示]。さらに、実施例7〜10のように多孔性シートの中央部と端部との高低差(凸値)が0.03〜0.10mmの場合には、位置マーカーのラインを明確に視認することができた[評価結果:優、表3中では二重丸印(◎)で表示]。また、実施例7〜10のように多孔性シートの中央部と端部との高低差(凸値)が0.03〜0.10mmの場合には、多孔性シートの中央部と端部との高低差が大きくなるにつれて、位置マーカーのラインの視認性が高まっていくことが判明した。これに対して、比較例2のように多孔性シートの中央部と端部との高低差(凸値)が0.00mmの場合では、核酸クロマトグラフィーの検査具のストリップの側方から位置マーカーのラインを視認することができなかった[評価結果:不可、表3中ではクロス印(×)で表示]。
【0102】
(側方からの表示部の発色の判別性)
実施例6〜8のように多孔性シートの中央部と端部との高低差(凸値)(厚みの差)が0.01〜0.05mmの場合には、核酸クロマトグラフィーの検査具のストリップの側方から表示部の発色を確認することができた[評価結果:良、表3中では丸印(○)で表示]。さらに、実施例9,10のように多孔性シートの中央部と端部との高低差(凸値)(厚みの差)が0.07〜0.10mmの場合には、核酸クロマトグラフィー検査具のストリップの側方から表示部の呈色を非常に明瞭に確認することができた[評価結果:優、表3中では二重丸印(◎)で表示]。これに対して、比較例2のように多孔性シートの中央部と端部との高低差(凸値)(厚みの差)が0.00mmの場合には、核酸クロマトグラフィーの検査具のストリップの側方から表示部の発色を確認することができなかった[評価結果:不可、表3中ではクロス印(×)で表示]。
【0103】
ここでは、実施例6〜10、比較例2の核酸クロマトグラフィーの検査具のストリップにおける多孔性シート表面についての顕微鏡観察などの結果を考慮する。元来は厚みが均一であったメンブレンシート(多孔性シート)を材料として、完成品のストリップで、中央部が厚く、両縁部が薄くなるように多孔性シートを加工すると、完成品のストリップにおける多孔性シートの両縁部の近傍の領域が収縮することが判明した。これにより、この両縁部の近傍の領域の表面では、多孔性シートの平均開口径が縮小し、この平均開口径の縮小に伴ってDNAプローブの密度が高くなることが判明した。こうした仕組みにより、実施例9,10の核酸クロマトグラフィー検査具のストリップでは、多孔性シートの両縁部の近傍の領域で発色が非常に濃くなるものと結論付けることができた。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、感染症やアレルギーなどに関する診断や、細菌やウィルスなどの検出に使用可能な核酸クロマトグラフィー検査具として利用できる。
【符号の説明】
【0105】
1,1a,1b:核酸クロマトグラフィー検査具、10:多孔性シート、13:検出面、14a〜14c:位置マーカー、15,15a〜15e:表示部、18a,18b:(表示部の)端部、20:バッキング部材、25:貼付面、27:背面、40:吸収パッド、45:試料採取部、50:テストチューブ、55:試料、60:標的核酸、65:色素、70:梱包ケース、73:内壁、75:核酸クロマトグラフィー検査具セット、101,101a,101b:核酸クロマトグラフィー検査具、110:多孔性シート、113:検出面、114a〜114c:位置マーカー、115,15a〜15e:表示部、118a〜118d:(表示部の)端部、120:バッキング部材、125:貼付面、140:吸収パッド、145:試料採取部、150:テストチューブ、155:試料。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図13
図12