(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1−3に開示の先行技術は、粘着シートを巻回してなる粘着ローラー部と、使用後の粘着シートを巻き取る巻き取り部を、それぞれケース内に回転可能に備えてなるものである。
【0008】
特許文献1−2は、粘着ローラー部から所定長さの粘着シートを引き出し、その始端側を巻き取り部に止め、粘着ローラー部を接地させて掃除する。そして、粘着面が毛や塵で一杯になり、接着力が低下したと判断されれば、巻取り部を手動で回転させて使用後の粘着シートを巻き取っていく構造である。
よって、使用された粘着シートは巻き取り部に巻き取られるため、使用者は使用後の毛や塵が付着した粘着シートを引きちぎって新しい粘着シートを出すために直接触らなくても済むため、衛生的であり、かつ使用勝手にも優れている。
【0009】
しかし、この特許文献1−2に開示の粘着ローラー式掃除用具にあっては次のような問題点が解消されていない。
すなわち、使用中、粘着シートの粘着面が毛や塵で一杯になり、接着力が低下した場合、使用者自らが作業(掃除)を中止し、一旦、巻き取り部を手動で回転させて使用後の粘着シートを巻き取り、新しい粘着シートを引き出すといった作業を別途行なわなければならないといった煩わしさを有していた。
【0010】
特許文献3はこの特許文献1−2が有していた上記煩わしさを解消するものであり、粘着ローラー部から引き出されて使用され、毛や塵などが付着した使用後の粘着シートを自動的に巻き取り部に巻き取っていく構造を有しているものである。
この特許文献3に開示の構造を採用すれば、使用者自らが作業(掃除)を中止し、一旦、巻き取り部を回転させて使用後の粘着シートを巻き取り、新しい粘着シートを引き出すといった作業を別途行なわなければならないといった煩わしさが解消される。
【0011】
しかし、この特許文献3に開示の粘着ローラー式掃除用具にあっても、解消されていない課題を抱えている。
すなわち、この種の粘着ローラー式掃除用具にあっては、フローリングなどの床面に粘着シートが接すると、その粘着力により床面などにくっついてしまい、そのまま動かしたり、上方に持ち上げたりすると粘着シートが引き出されてしまう不具合を有していた。
特許文献3に開示の技術によれば、粘着ローラー部と巻き取り部の双方のギア部に逆転防止用の爪付きアームが噛み込んで、所定方向以外の回転(逆転)を防止する構成とはなっているが、使用時以外における所定方向への回転(正転)は抑制されていないため、粘着シートが床面にくっついた状態で動かしたり、上方に引き上げたりすると、当然に粘着ローラーや巻取り部が回転をしてしまい、粘着シートが引き出されてしまうといった不具合は避けられない構造であった。また、このような問題点を解決する課題として示唆されているものでもない。
【0012】
本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、毛や塵などが付着した部分の粘着シートを切り離すことなく順次綺麗な粘着シートを提供し、作業性を向上するとともに衛生面での向上も図りつつ、不用意な粘着シートの引き出しをも抑制し得る粘着ローラー式掃除用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的を達成するために、第1の発明がなした技術的手段は、ケース部材と、
ケース部材内に前後方向に回転可能に配される粘着ローラー部と、粘着ローラー部から引き出され、塵などを付着した後の粘着シートを巻き取るための巻き取り部とを備え、
巻き取り部は、回転作動伝達部を介して粘着ローラー部の前後回転作動に同期して前後回転作動可能に備えられており、
粘着ローラー部は、接地面に押し付けて前進させた際に回転作動伝達部と噛み合い、後退させたとき、及び接地面から離れたときには、前記回転作動伝達部との噛み合いが解除されるように付勢されており、
粘着ローラー部が接地面から離れたときに、粘着ローラー部と巻き取り部のそれぞれの回転作動を抑止する回転抑止機構が備えられていることを特徴とする粘着ローラー式掃除用具としたことである。
【0014】
本発明によれば、巻き取り部は、回転作動伝達部を介して粘着ローラー部の前後回転作動に同期して前後回転作動可能に備えられているため、粘着ローラー部の回転作動によって引き出された粘着シートは、粘着ローラー部の回転と同期した巻取り部に順次巻き取られていく。
また、粘着ローラー部は、接地面に押し付けて前進させた際に回転作動伝達部と噛み合い、後退させたとき、及び接地面から離れたときには、前記回転作動伝達部との噛み合いが解除されるように付勢される構成としたため、床面に押し付けて前進させているときは、粘着ローラー部の回転作動が巻き取り部へと伝達されて粘着シートを巻き取っていくが、逆方向、すなわち粘着ローラー部を引き寄せるように逆転(後退)させるときには、粘着ローラー部は回転作動伝達部との噛み合いが解除されるため、粘着ローラー部はフリー回転状態(正逆回転自由状態)となる。
したがって、粘着ローラー部を前後方向に押し引き操作するにあたって、負荷が無く作動できる。
さらに、粘着ローラー部が接地面から離れたときに、粘着ローラー部と巻き取り部のそれぞれの回転作動を抑止する回転抑止機構が備えられているため、もしも、床面に粘着シートがくっついてしまい離れない状態となっていたとしても、粘着ローラー部と巻き取り部のそれぞれの回転作動は抑止されているため、不用意な粘着シートの引き出しは抑制される。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、ケース部材に対して前後回転自在に連結された握持部を備え、
握持部は、ケース部材と一直線上になるように付勢されており、粘着ローラー部を接地面に押し付けるときには、前記付勢力に抗して前方に回転させることを特徴とする粘着ローラー式掃除用具としたことである。
【0016】
本発明によれば、例えば、使用者は立っている状態から床面方向に粘着ローラー部を押し付けるため、その押し付け作動を利用して付勢力に抗して握持部を前方に回転、すなわち、ケース部に対して握持部を一直線上から所定角度で折曲させたような状態とすることができる。
【0017】
第3の発明は、第2の発明において、回転抑止機構は、握持部の前後回転作動に同期させ、握持部が付勢力によりケース部材と一直線上になるときは粘着ローラー部と巻き取り部の回転作動を抑止し、付勢力に抗して粘着ローラー部を接地面に押し付けるときは前記抑止作動が解除されることを特徴とする粘着ローラー式掃除用具としたことである。
【0018】
本発明によれば、握持部が付勢力によりケース部材と一直線上になるときは、回転抑止機構によって粘着ローラー部と巻き取り部の回転作動を抑止するため、移動するとき、あるいは掃除を終了するときに上方に持ち上げる場合であっても、不用意な粘着シートの引き出しが抑制される。
本発明を使用して掃除をしようとする場合、下方向への押し付け力が必然と掛かってくるものであるため、付勢力に抗して押し付けたときには回転抑止機構が解除されるため、使用勝手に優れている。
【0019】
第4の発明は、前後方向に回転可能に配される粘着ローラー部と、
粘着ローラー部から引き出され、塵などを付着した後の粘着シートを巻き取るための巻き取り部とを備え、
巻き取り部は、回転作動伝達部を介して粘着ローラー部の前後回転作動に同期して前後回転作動可能に備えられており、
粘着ローラー部は、接地面に押し付けて前進させた際に回転作動伝達部と噛み合い、後退させたとき、及び接地面から離れたときには、前記回転作動伝達部との噛み合いが解除されるように付勢されており、
粘着ローラー部が接地面から離れたときに、粘着ローラー部と巻き取り部のそれぞれの回転作動を抑止する回転抑止機構が備えられていることを特徴とする粘着ローラー式掃除用具としたことである。
【0020】
本発明によれば、第一の発明と同様、巻き取り部は、回転作動伝達部を介して粘着ローラー部の前後回転作動に同期して前後回転作動可能に備えられているため、粘着ローラー部の回転作動によって引き出された粘着シートは、粘着ローラー部の回転と同期した巻取り部に順次巻き取られていく。
また、粘着ローラー部は、接地面に押し付けて前進させた際に回転作動伝達部と噛み合い、後退させたとき、及び接地面から離れたときには、前記回転作動伝達部との噛み合いが解除されるように付勢される構成としたため、床面に押し付けて前進させているときは、粘着ローラー部の回転作動が巻き取り部へと伝達されて粘着シートを巻き取っていくが、逆方向、すなわち粘着ローラー部を引き寄せるように逆転(後退)させるときには、粘着ローラー部は回転作動伝達部との噛み合いが解除されるため、粘着ローラー部はフリー回転状態(正逆回転自由状態)となる。
したがって、粘着ローラー部を前後方向に押し引き操作するにあたって、負荷が無く作動できる。
さらに、粘着ローラー部が接地面から離れたときに、粘着ローラー部と巻き取り部のそれぞれの回転作動を抑止する回転抑止機構が備えられているため、もしも、床面に粘着シートがくっついてしまい離れない状態となっていたとしても、粘着ローラー部と巻き取り部のそれぞれの回転作動は抑止されているため、不用意な粘着シートの引き出しは抑制される。
【0021】
第5の発明は、第四の発明において、握持部を備え、
粘着ローラー部と巻き取り部には、それぞれ噛み合い部が一体に備えられ、
回転抑止機構は、握持部の押下げ引上げ作動に連動して前記それぞれの噛み合い部に係止若しくは係止解除される抑止部を備えていることを特徴とする粘着ローラー式掃除用具としたことである。
【0022】
本発明によれば、握持部の引上げ作動に連動して回転抑止機構の抑止部が、粘着ローラー部の噛み合い部と巻き取り部の噛み合い部とにそれぞれ係止されて粘着ローラー部と巻き取り部の回転作動を抑止する。よって、移動するとき、あるいは掃除を終了するときに上方に持ち上げる場合であっても、不用意な粘着シートの引き出しが抑制される。
本発明を使用して掃除をしようとする場合、下方向への押し付け力が必然と掛かってくるものであるため、握持部の押下げ作動により粘着ローラー部を床面などに押し付けたときには、抑止部の噛み合い部への係止が解除されるため、使用勝手に優れている。
【0023】
第六の発明は、第五の発明において、ケース部材を備え、
ケース部材の内面には、上下方向に移動可能に配設されたハンドルベースプレートと、
ハンドルベースプレートに一端が回転可能に軸止され、ハンドルベースプレートとともに上下方向に移動可能なハンドルプレートとを備え、
ハンドルプレートには、握持部の一端が接続されており、
粘着ローラー部と巻き取り部は、それぞれケース部材の外方に突出させた粘着ローラー部用の回転軸と、巻き取り部用の回転軸を介してそれぞれ上下方向で並設されており、
粘着ローラー部用の回転軸と巻き取り部用の回転軸の一端は、それぞれケース部材内に収容され、
粘着ローラー部用の回転軸の一端には、第一のギアと第一の噛み合い部が一体に備えられ、
巻き取り部用の回転軸の一端には、第二のギアと第二の噛み合い部が一体に備えられ、
回転作動伝達部は、ケース部材内において、第一のギアと第二のギアとの間に配設される第三のギアと第四のギアであって、
第三のギアは、第二のギアと常時噛み合っており、
第四のギアは、ケース部材の内面に一端が回転可能に軸止されたギア保持板に回転可能に保持されており、ギア保持板は、常時、第四のギアが第一のギアと離間する方向に付勢されており、
ハンドルベースプレートには、第一の噛み合い部と第二の噛み合い部にそれぞれ噛み合うことが可能な抑止部が備えられており、
ハンドルプレートは、押圧部を有し、押圧部は、握持部の押下げ作動によってギア保持板を押圧して第四のギアを第一のギアと第三のギアとに噛み合わせることを可能としたことを特徴とする粘着ローラー式掃除用具としたことである。
【0024】
本発明によれば、握持部の押下げ作動により、粘着ローラー部を床面などに押し付けると、第一の噛み合い部と第二の噛み合い部に噛み合っていたハンドルベースプレートの抑止部の係止状態が解除され、粘着ローラー部と巻き取り部が前後回転可能な状態となる。
そして、握持部の押下げ作動によってハンドルベースプレートとともにハンドルプレートが押下げられるとともに、軸止部を中心として回転することで、ハンドルプレートに備えられている押圧部がギア保持板を押圧する。
ギア保持板は、押圧部による押圧力が掛かると、軸止部を中心として回転し、ギア保持板に備えられている第四のギアが第一のギアと第三のギアとの間に移動してそれぞれのギアと噛み合うこととなる。
これにより、粘着ローラー部側に備えられている第一のギアと巻き取り部側に備えられている第二のギアが、第三のギアと第四のギアからなる回転作動伝達部を介して噛み合い同期することとなり、粘着ローラー部の前後回転作動に同期して巻き取り部を前後回転作動させるため、粘着ローラー部の回転作動によって引き出された粘着シートは、粘着ローラー部の回転と同期した巻取り部に順次巻き取られていく。
また、粘着ローラー部は、接地面に押し付けて前進させた際に回転作動伝達部と噛み合い、後退させたとき、及び床面などから離れたときには、ハンドルプレートへの握持部からの押下げ力が掛からず、ギア保持板への押圧力も解除されるため、第四のギアは第一のギアと離間する、すなわち、回転作動伝達部との噛み合いが解除されるため、床面などに押し付けて前進させているときは、粘着ローラー部の回転作動が巻き取り部へと伝達されて粘着シートを巻き取っていくが、逆方向、すなわち粘着ローラー部を引き寄せるように逆転(後退)させるときには、粘着ローラー部は回転作動伝達部との噛み合いが解除されるため、粘着ローラー部はフリー回転状態(正逆回転自由状態)となる。
したがって、粘着ローラー部を前後方向に押し引き操作するにあたって、負荷が無く作動できる。
さらに、粘着ローラー部が床面などから離れたときに、粘着ローラー部と巻き取り部のそれぞれの回転作動を抑止する回転抑止機構(抑止部)が備えられており、その抑止部が、粘着ローラー部側に備えられている第一の噛み合い部と、巻き取り部側に備えられている第二の噛み合い部に噛み合って係止され、粘着ローラー部と巻き取り部のそれぞれの回転作動は抑止されているため、もしも、床面に粘着シートがくっついてしまい離れない状態となっていたとしても、不用意な粘着シートの引き出しは抑制される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、毛や塵などが付着した部分の粘着シートを切り離すことなく順次綺麗な粘着シートを提供し、作業性を向上するとともに衛生面での向上も図りつつ、不用意な粘着シートの引き出しをも抑制し得る粘着ローラー式掃除用具を提供し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る粘着ローラー式掃除用具の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1乃至
図6は本発明の第一実施形態を示し、
図7乃至
図13は、本発明の第二実施形態を示す。
なお、添付図面に基づいて説明する以下の本実施形態は、本発明の一実施形態を単に例示したに過ぎず、何らこれに限定して解釈されるものではなく、本発明の範囲内で適宜設計変更することが可能である。
また、本発明の粘着ローラー式掃除用具は、家庭用・業務用のいずれにも対応可能であって、かつその大きさ・材質なども限定されることなく適宜用途に応じて設計変更し得るものである。
「第一実施形態」
【0027】
図1は、本実施形態の粘着ローラー式掃除用具の一例を示す概略斜視図であって、ケース部材1と、ケース部材1に対して前後回転自在に連結された握持部13と、ケース部材1内に前後方向に回転(正転・逆転)可能に配される粘着ローラー部27と、粘着ローラー部27から引き出され、塵などを付着した後の粘着シート37を巻き取るための巻き取り部39と、粘着ローラー部27の回転(正転)作動を巻き取り部39へと伝達する回転作動伝達部51とで構成されている。
【0028】
ケース部材1は、粘着ローラー部27、巻き取り部39、回転作動伝達部51などがセットされる第一部材3と、第一部材3上を開閉可能にカバーする第二部材11とで構成されており、第一部材3の後端寄りには、握持部13が連結されている(
図1および
図2参照。)。
【0029】
第一部材3は、前側部5と後側部(図示省略)と右側部7と左側部9とにより平面視で略矩形状に形成されている(
図1および
図2参照。)。
【0030】
左側部9には、粘着ローラー部27の回転軸33を収容する軸収容部9aと、巻き取り部39の回転軸45を収容する軸収容部9bとを備えている。それぞれの軸収容部9a,9bは、左側部9の平面と側面(対右側部の側面)に開放して設けられており、粘着ローラー部27の回転軸33と巻き取り部39の回転軸45をそれぞれ上方から挿入可能に構成している。
【0031】
右側部7には、粘着ローラー部27の回転軸31と結合される第一のギア47のギア軸48を収容するギア軸収容部7aと、巻き取り部39の回転軸43と結合される第二のギア49のギア軸50を収容するギア軸収容部7bとを備えている。それぞれのギア軸収容部7a,7bは、右側部7の平面と側面(対左側部の側面)に開放して設けられており、第一のギア47のギア軸48と第二のギア49のギア軸50をそれぞれ上方から挿入可能に構成している。
【0032】
また、右側部7には、第二のギア49と噛み合い状態に回転作動伝達部51が前後方向に回転自在に備えられている。
【0033】
第二部材11は、例えば、本実施形態では、特に図示はしないが、第一部材3の後端寄りにて、前後方向に回転可能に軸支されている。すなわち、蓋状に形成され、第一部材3に備えられた粘着ローラー部27・巻き取り部39などを覆うように収容するとともに、その下端面にて第一部材3の右側部7と左側部9の平面に空いている軸収容部9a,9bとギア軸収容部7a,7bの開口を上方から抑えてそれぞれ収容された回転軸33,45・ギア軸48,50の上方への抜け外れを抑止している。
【0034】
握持部13は、平面視で略コの字状の連結部15と、連結部15の横棒部17の略中心位置に連結される縦棒部23とで構成されている。本実施形態によれば、使用者は、この縦棒部23を持って押し引き操作して掃除をすることとなる。
連結部15は、横棒部17の両端に一体に備えられている左右の連結片19,19を有し、その連結片19,19の中途部には、それぞれ対向する突部21,21が設けられている。
突部21,21は、それぞれ第一部材3の右側部7と左側部9の後端寄りに設けられている連結孔7c,9cに前後方向に回転可能に差し込まれる。
【0035】
握持部13は、ケース部材1と一直線上になるように付勢されている。
例えば本実施形態では、突部21の差込み配設箇所において、第一部材3と連結片19とにわたって弾性部材(コイルばね)25を架け渡し、一方の端部を第一部材3に、他方の端部を連結片19にそれぞれ押し当てており、ケース部材1と握持部13が一直線上になるように付勢しており(
図6)、粘着ローラー部27を接地面に押し付けて使用するときには、前記弾性部材25の弾性力に抗して握持部13を前方に回転させて折り曲げ状態で使用する(
図1、
図4、
図5)。
【0036】
なお、ケース部材1と握持部13の構造・外観形態などは特に本実施形態に限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内において種々の構造・外観形態に設計変更可能である。
【0037】
粘着ローラー部27は、円筒部29と円筒部29の両側に一体に突設された回転軸31,33とで構成されている芯材35と、芯材35の円筒部の周りに所定長さドラム状に巻回される粘着シート37とで構成されている。
そして、一方の回転軸31は、第一のギア47のギア盤中心に設けられている連結孔76にキー結合などによって一体に連結され、第一のギア47と粘着ローラー部27が同期して回転するように構成されている。
【0038】
巻き取り部39は、粘着ローラー部27から引き出され、掃除をした後の使用後の粘着シート37を巻き取っていくものであり、円筒部41と円筒部41の両側に一体に突設されている回転軸43,45とで構成されている。
なお、本実施形態では、使い切った粘着ローラー部27の芯材35が使用されている。すなわち、使い切った粘着ローラー部27の芯材35を巻き取り部39として使用することにより、別途、巻き取り部39を生産する必要がなくコスト的にも大変有用である。
そして、一方の回転軸43は、第二のギア49のギア盤中心に設けられている連結孔77にキー結合などによって一体に連結され、第二のギア49と巻き取り部39が同期して回転するように構成されている。
【0039】
第一のギア47と第二のギア49は、径を異にするように構成されている。すなわち、本実施形態では、第一のギア47に比して第二のギア49を小径に構成している。
すなわち、使用開始当初、粘着ローラー部27の径(粘着シート37を巻回した状態の外径)に対して巻き取り部39の径(円筒部の外径)が極端に異なる(小径)ため、粘着シート37が送り出される(引き出される)スピードと、巻き取り部39が巻き取るスピードが異なる。そのため粘着シート37にたるみが生じ得るので、このたるみをなくすために、巻き取り部39を早く回転させる必要があるからである。
【0040】
さらに、本実施形態では、巻き取り部39への巻き取り作動において所定の引っ張り力(テンション)が掛かった際に、第二のギア49の連結孔77と巻き取り部39の回転軸とがすべる(空回りする)ように構成されている。
例えば、本実施形態では図示省略しているが、第二のギア49の連結孔77と巻き取り部39の回転軸43との間に、いわゆるラチェット機構を備えるものとしている。
すなわち、巻き取り部39の巻き取り量が増えていくと、巻き取り部39の径が大きくなっていく。そして、巻き取り部39の径が粘着ローラー部27の径よりも大径になったとき、巻き取る粘着シート37に引っ張り力(テンション)が掛かってくる。このような状況下になると巻き取り部39による粘着シートの巻き取りができなくなる。そこで、本実施形態のように構成することで、所定の引っ張り力(テンション)が巻き取り部39に掛かった場合には、第二のギア49のみが動き、巻取り部は動かない(その間、粘着シートを巻き取らない)という状態を作り出し、所定の引っ張り力(テンション)が消滅すると、再び第二のギア49と巻き取り部39とが連動し、巻き取りを再開する。
【0041】
回転作動伝達部51は、粘着ローラー部27の回転作動を巻き取り部39に伝達するもので、本実施形態の回転作動伝達部51は、第二のギア49と常時噛み合っている第三のギア53、第三のギア53と常時噛み合っている第四のギア55の二つのギアで構成されている。
また、回転作動伝達部51を構成する第三のギア53と第四のギア55は、第一のギア47および第二のギア49よりも小径に形成されている。
このようなギア構成を採用することで、第一のギア47と第二のギア49は同一方向に回転作動することとなる。
また、第三のギア53と第四のギア55を、それぞれ第一のギア47と第二のギア49よりも小径に構成することで、第一のギア47と第二のギア49の距離を極力離さないようにして、粘着シート37の弛みを防いでいる。
【0042】
上述のように構成した理由次のとおりである。
粘着ローラー部27は、巻回されている粘着シート37の糊面37aが外方に向いている。
粘着ローラー部27から引き出されていった粘着シート37(粘着ローラー部27から引き出され、巻き取り部39に行き着くまでの粘着シート37)は、不安定な状態であるため、巻き取り部39に行き着くまでの間に何処かにくっついて撚れたりしてしまうことも考えられるため、その糊面37aを接地面(床面)からできる限り離して巻き取り部39へと送って行きたい。よって、巻き取り方向を粘着ローラー部27の回転方向(引き出し方向)と同一とすることで、引き出された粘着シート37を巻き取り部39の上方へと持っていくことができ、接地面(床面)から離すことができる(
図4にて仮想線で示すように、引き出された粘着シート37が巻き取り部39の上方向に向けて昇り傾斜状にセットできる。)。
また、粘着シート37の糊面37aを巻き取り部39の円筒部41表面に対向させれば、その糊面37aの接着力により、引き出した粘着シート37を円筒部41の表面に接着させるだけで架け渡すことができるため、巻き取り開始における特別複雑な構造を用いなくても簡単かつ安価に巻き取り部39に粘着シートを架け渡すことができる。
【0043】
第一のギア47と回転作動伝達部51の第四のギア55とは、接地面に押し付けて前進させた際に噛み合い、後退させたとき、及び接地面から離れたときには、前記第一のギア47と回転作動伝達部51の第四のギア55との噛み合いが解除されるように付勢されている。
【0044】
上記付勢機構は、本実施形態では具体的に次の構成を採用している。
図2乃至
図6に基づいて説明する。
【0045】
第一部材3における粘着ローラー部27を回転自在に支持する右側部7と左側部9のそれぞれの軸収容部(ギア軸収容部7a,9aと軸収容部7b,9b)には、ギア軸48と回転軸33をそれぞれ前方へと付勢する押出し部材57が配設されている。
【0046】
押出し部材57は、弾性部材59と、弾性部材59の一端に備えられた押圧板61とで構成され、常時、回転軸31を介して粘着ローラー部27を前方へと付勢して第一のギア47と回転作動伝達部材51の第四のギア55を離間させようと機能している。
すなわち、粘着ローラー部27を接地面(床面)に押し付けて正転(矢印X1方向へ前進)させると、その際の押し付け力により、弾性部材59の弾性力に抗して押出し部材57が後方へと押される。そして、粘着ローラー部27が後方へと押されることにより、第一のギア47と回転作動伝達部51の第四のギア55とが噛み合い、粘着ローラー部27の回転作動が伝達される(
図2、
図4参照。)。
【0047】
また、逆方向、すなわち粘着ローラー部27を引き寄せるように逆転(矢印X2方向へ後退)させるときには、粘着ローラー部27に掛かっていた押し付け力がなくなり、押出し部材57の弾性力により回転軸を介して粘着ローラー部27を前方へと付勢して第一のギア47と回転作動部の第四のギア55は離間される(噛み合いが解除される)ため、粘着ローラー部27はフリー回転状態(正逆回転自由状態)となる(
図3、
図5、
図6)。したがって、粘着ローラー部27を前後方向に押し引き操作するにあたって、負荷が無く作動できる。
【0048】
なお、上述のとおり付勢する構造は本実施形態に何等限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0049】
本実施形態では、粘着ローラー部27が接地面から離れたとき、すなわち移動や掃除を終了するにあたり、本掃除用具を上方に持ち上げたときに、粘着ローラー部27と巻き取り部39のそれぞれの回転作動(正逆回転作動)を抑止する回転抑止機構63が備えられている
【0050】
回転抑止機構63は、本実施形態では、握持部13の前後回転作動に同期させるように構成した。
例えば、握持部13が付勢力によりケース部材1と一直線上になるときは粘着ローラー部27と巻き取り部39の回転作動を抑止し、付勢力に抗して粘着ローラー部27を接地面に押し付けるときは前記抑止作動が解除されるように構成した。
具体的には、次のとおりである。
【0051】
第一のギア47と第二のギア49のそれぞれのギア軸に噛み合い部を備える。この噛み合い部は、第一のギア47と右側部7との間の隙間S、第二のギア49と右側部7との間の隙間Sに位置するように構成されている。
そして、握持部13に一体に形成された突部21の先端に一体に固着された偏心板69と、この偏心板69の回転中心からずれた位置に回転自在に軸着した長尺状の操作腕部71と、この操作腕部71の所定位置に立ち上げ形成され、先端部に前記それぞれの噛み合い部に噛み合い可能な凹凸部を備えた抑止部73,73とで構成されている。
握持部13を前方(矢印X3方向)に回転作動させると、その作動に追随して偏心板69が後方(矢印X4方向)に回転作動する。
すると、操作腕部71が後方(矢印X4方向)に引き寄せられ、抑止部
73,73は同じく後方(矢印X4方向)に移動する。これにより、粘着ローラー部27と巻き取り部39の回転作動を抑制するものはない。
そして、握持部13を後方(矢印X5方向)に回転作動させると、その作動に追随して偏心板69が前方(矢印X6方向)に回転作動する。
すると、操作腕部71が前方に押されるとともに抑止部73,73が移動して第一のギア47と第二のギア49のそれぞれの噛み合い部65,67に噛み合って粘着ローラー部27と巻き取り部39の回転作動を抑止する。
従って、もしも、床面に粘着シートがくっついてしまい離れない状態となっていたとしても、粘着ローラー部27と巻き取り部39のそれぞれの回転作動は抑止されているため、不用意な粘着シートの引き出しは抑制される。
【0052】
なお、本実施形態では、第三のギア53と第四のギア55からなる回転作動伝達部51を備えているが、回転作動伝達部51はそのギア構成数量には特に限定されない。また、回転作動伝達部51を一切用いない形態とすることも本発明の範囲内である。
「第二実施形態」
【0053】
図7乃至
図13は本発明の第二実施形態を示す。
本実施形態の粘着ローラー式掃除用具は、第一実施形態の粘着ローラー式掃除用具と比してコンパクトかつ使い勝手が更に向上している。
【0054】
図7は、本実施形態の粘着ローラー式掃除用具の概略斜視図であって、図中100はケース部材、110は粘着ローラー部、115は巻き取り部、145は握持部をそれぞれ示す。本実施形態では、粘着ローラー部110と巻き取り部115とが、上下方向で並設されている(
図7、
図8中で矢印200で示す方向)。
【0055】
ケース部材100は、ケース本体101と、ケース蓋部105とで構成されている。
【0056】
ケース本体101は、所定形状の底板102と、底板102の周縁から立設させた周壁103とで構成され、本実施形態の掃除用具の機械的構造部分(第一のギア120〜第四のギア127、ギア保持板130、ハンドルベースプレート135、ハンドルプレート141)が収容される程度の深さ(厚み)を有している。
【0057】
前記底板102の外面102aには、内面102bと連通する粘着ローラー部用回転軸111の保持用貫通孔(図示せず)と巻き取り部用回転軸116の保持用貫通孔(図示せず)が、それぞれ上下方向(矢印200で示す方向)で所定距離をおいて設けられている。
また、ケース本体101の底板102の内面102bには、回転作動伝達部125を構成する第三のギア126の回転軸128を受ける受孔(図示せず)が設けられており、前記第三のギア126の回転軸128用の受孔は、前記巻き取り部用回転軸116の受孔と上下方向(矢印200で示す方向)で同一線上に配するように設けられている。
【0058】
さらに、底板102の内面102bには、ギア保持板130の一端130aを回転可能に軸止する軸支部106が設けられている。
また、ケース本体101の背面(外面)102a側の下方には、切欠きが形成されており、ケース蓋部105を合わせてケース部材100を構成した際に、前記切欠きが握持部用の通孔104として機能する。
【0059】
そして、ケース蓋部105の内面には、前記ケース本体101に設けられている粘着ローラー部用回転軸111の保持用貫通孔及び巻き取り部用回転軸116の保持用貫通孔と相対向する位置に、粘着ローラー部用回転軸111の一端を回転可能に受ける受孔(図示せず)と、巻き取り部用回転軸116の一端を回転可能に受ける受孔(図示せず)がそれぞれ設けられている。
【0060】
なお、ケース部材100の構造・外観形態などは特に本実施形態に限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内において種々の構造・外観形態に設計変更可能である。
【0061】
粘着ローラー部110は、ケース部材100の外方(ケース本体101の外方)に突出させた粘着ローラー部用回転軸111を介して前後回転可能に保持され、巻き取り部115は、ケース部材100の外方に突出させた巻き取り部用回転軸116を介して前後回転可能に保持されている。
【0062】
粘着ローラー部用回転軸111は、所定径で所定長さの棒状に形成され、一端側が前記ケース部材100内にて、図示しない前記保持用貫通孔と受孔によって回転可能に保持されており、他端側が、図示しない前記保持用貫通孔を介してケース部材100の外方に突出されている。
【0063】
粘着ローラー部用回転軸111と粘着ローラー部110とは同期して回転作動する必要があるため、そのための機構として、例えば、ケース部材100の外方に突出している粘着ローラー部用回転軸111の他端側外周に、略円柱状に形成された嵌合部112を一体に備え、粘着ローラー部110の筒内面に前記嵌合部112を緊密に嵌合させるものが一例として挙げられる。これにより、粘着ローラー部用回転軸111と粘着ローラー部110とは同期して回転作動することができる。
なお、同期して回転作動させる機構は特に限定解釈されるものではなく、他の周知の機構が適宜設計変更可能である。
【0064】
粘着ローラー部110は、所定長さの粘着シート110aが円筒状の芯材110bの外周にドラム状に巻回されている。粘着ローラー部110は、従来周知の形態が適宜使用可能であって、特に限定解釈されるものではない。
【0065】
巻き取り部用回転軸116は、一端側が前記ケース部材100内にて、前記保持用貫通孔と受孔によって回転可能に保持されており、他端側が、前記保持用貫通孔を介してケース部材100の外方に突出されて筒状の巻き取り部115を回転可能に保持している。
【0066】
巻き取り部用回転軸116と巻き取り部115とは同期して回転作動する必要があるため、そのための機構として、前記粘着ローラー部用回転軸111と同じく、巻き取り部用回転軸116の他端側外周に、略円柱状に形成された嵌合部117を一体に備え、巻き取り部115の筒内面に前記嵌合部117を緊密に嵌合させるものが一例として挙げられる。これにより、巻き取り部用回転軸116と巻き取り部115とは同期して回転作動することができる。
なお、同期して回転作動させる機構は特に限定解釈されるものではなく、他の周知の機構が適宜設計変更可能である。
【0067】
巻き取り部115は、粘着ローラー部110から引き出され、掃除をした後の使用後の粘着シート110aを巻き取っていくものであり、円筒状に形成されている。
なお、本実施形態では、使い切った粘着ローラー部110の芯材110bが使用されている。すなわち、使い切った粘着ローラー部110の芯材110bを巻き取り部115として使用することにより、別途、巻き取り部115を生産する必要がなくコスト的にも大変有用である。
【0068】
上述の通り、粘着ローラー部用回転軸111と巻き取り部用回転軸116の一端は、それぞれケース部材100内に収容されており、粘着ローラー部用回転軸111の一端には、第一のギア120と第一の噛み合い部121が一体に備えられ、巻き取り部用回転軸116の一端には、第二のギア122と第二の噛み合い部123が一体に備えられている。
【0069】
第一のギア120は、所定径の円盤状に形成され、粘着ローラー部用回転軸111の一端側を第一のギア120の盤中心に設けた連結孔120aを連通して一体に備えられている(
図8乃至
図13参照。)。第一のギア120は、粘着ローラー部用回転軸111と一体に回転作動するようにキー結合などの所定の結合構造を介して一体化されている。第一のギア120が粘着ローラー部用回転軸111の外周を回らないように構成されていれば良く特にその機構は特定されるものではない。
【0070】
第一の噛み合い部121は、第一のギア120と比して極端に小径かつ短尺の筒状に形成されるとともに、その外周に凹凸部121aが形成されている(
図12及び
図13参照。)。第一の噛み合い部121も、第一のギア120と同様に粘着ローラー部用回転軸111と一体に回転作動するように所定の機構を介して一体化されている。
なお、第一の噛み合い部121は、粘着ローラー部用回転軸111の外周の所定位置に直接凹凸部を形成するものであってもよい。
【0071】
第二のギア122は、第一のギア120と比して小径の円盤状に形成され、巻き取り部用回転軸116の一端側を第二のギア122の盤中心に設けた連結孔122aを連通して一体に備えられている(
図8乃至
図13参照。)。第二のギア122は、巻き取り部用回転軸116と一体に回転作動するようにキー結合などの所定の結合構造を介して一体化されている。第二のギア122が巻き取り部用回転軸116の外周を回らないように構成されていれば良く特にその機構は特定されるものではない。
このように第一のギア120と第二のギア122の径を異にすることによる作用効果は第一実施形態で説明したとおりであり、本実施形態においても同じである。
【0072】
第二の噛み合い部123は、第二のギア122と比して極端に小径かつ短尺の筒状に形成される(第一の噛み合い部121と同一形状に形成される)とともに、その外周に凹凸部123aが形成されている(
図12及び
図13参照。)。
第二の噛み合い部123も、第二のギア122と同様に巻き取り部用回転軸116と一体に回転作動するように所定の機構を介して一体化されている。
なお、第二の噛み合い部123は、巻き取り部用回転軸116の外周の所定位置に直接凹凸部を形成するものであってもよい。
【0073】
本実施形態の回転作動伝達部125は、ケース部材100内において、第一のギア120と第二のギア122との間に配設される第三のギア126と第四のギア127で構成されている。
【0074】
第三のギア126は、第一のギア120と略同径の円盤状に形成されるとともに、その盤中心位置には、回転軸を嵌合する嵌合孔126aが形成されている。
第三のギア126用の回転軸128は、第一のギア120の回転軸(粘着ローラー部用回転軸111)の軸心と比して多少前方(図中矢印300で示す方向)にずれて配されるように、ケース本体101の底板102の内面102bに設けられた第三のギア126用の回転軸128を受ける受孔に回転可能に配されている(
図9参照。)。これにより、第二のギア122の回転軸(巻き取り部用回転軸116)も第一のギア120の回転軸(粘着ローラー部用回転軸111)の軸心と比して多少前方(図中矢印300で示す方向)にずれて配されることとなる。また、第三のギア126は第二のギア122と上下方向(矢印200で示す方向)で同一線上に軸心を位置させるとともに、常時噛み合って配設されている。
【0075】
第四のギア127は、第一のギア120よりも小径で、かつ第二のギア122よりも大径に形成されており、ケース部材100の内面102bに、一端130aが回転可能に軸止されて配設されるギア保持板130の一面(ケース本体101の内面と対向する面部130e)に回転可能に一体に保持されている。
【0076】
ギア保持板130は、一端(上端)130aに被軸止部131を設け、その被軸止部131と対向する他端(下端)130bの面部(背面)130cに被押圧面部132を設け、被押圧面部132と相対向する面部(正面)130dに弾性部材収容空間133を備えて構成されている(
図8乃至
図13参照。)。
【0077】
ギア保持板130は、前記被軸止部131が、ケース本体101の内面102bに備えた軸止部106にネジ108などを介して前後回転可能に取り付けられる。
前記軸止部106は、ケース本体101の内面102bの所定位置、本実施形態では、第二のギア122の回転軸(巻き取り部用回転軸116)と横並びで設けられている。そして、ギア保持板130は、この軸止位置から斜め後方に被押圧面部132が位置するように弾性部材134によって常時付勢されている。
【0078】
弾性部材134は、例えばコイルスプリングが採用され、ギア保持板130の弾性部材収容空間133に一端側134aが突出するように収容され、ケース本体101の内面102bに突設したバネ受部107で弾性部材収容空間133から突出する一端側134aを受けている。
これにより、ギア保持板130は、被軸止部131を中心にして、弾性部材134の弾性力によって、図面の時計回り方向(矢印400で示す後方)に、常時付勢されている(
図8参照)。第四のギア127は、この状態のときに第一のギア120と離間するようにギア保持板130の所定位置に配設されている。
そして、ギア保持板130の被押圧面部132が、後述するハンドルプレート141の押圧部143によって押圧されると、弾性部材134の弾性力に抗してギア保持板130が軸止部106を支点として前方に回転移動して第四のギア127が第一のギア120と噛み合うこととなる。
なお、弾性部材134は、コイルスプリングに限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0079】
また、本実施形態では、握持部145の押圧力が掛かりすぎてギアの損傷を招かないように工夫がなされている。すなわち、第四のギア127が第一のギア120と噛み合って第一のギア120の作動が伝達可能となったときには、ギア保持板130のそれ以上の前方への回転作動を規制できるように、ギア保持板130の正面部130d側がバネ受部107に当接するように構成されている(
図11及び
図13参照。)
【0080】
ハンドルベースプレート135は、例えば、長尺平板状に形成され、上下方向(矢印200で示す方向)の所定位置に、上下方向に長尺に形成された第一の長孔136と第二の長孔137を備えている。
そして、ケース本体101の内面102bに設けた図示しないネジ孔に、前記第一の長孔136・第二の長孔137を介してそれぞれネジ止めすることで、ハンドルベースプレート135は、ケース本体101の内面102bに対して、第一の長孔136と第二の長孔137に沿って上下方向(矢印200で示す方向)に直線移動(上下移動)可能に配設される。
【0081】
ハンドルベースプレート135には、上述したとおり、ハンドルベースプレート135の上下移動に伴って、第一の噛み合い部121と第二の噛み合い部123にそれぞれ噛み合って係止されたり、離間して噛み合いが解除されたりすることが可能な回転抑止機構63としての第一の抑止部(第一の係止爪)138と第二の抑止部(第二の係止爪)139が一体に備えられている。
【0082】
その機構の一例を説明すると次のとおりである。
第一の抑止部138は、第一の噛み合い部121の凹凸部121aに下方から係止可能なように、所定形状の爪部138aが第一の噛み合い部121方向に対向するようにハンドルベースプレート135の正面135a側の下方位置に突設されている。第二の抑止部139も、第二の噛み合い部123の凹凸部123aに下方から係止可能なように、所定形状の爪部139aが第二の噛み合い部123方向に対向するようにハンドルベースプレート135の正面135a側上方位置に突設されている。
【0083】
すなわち、ハンドルベースプレート135が上方に移動した際に、第一の噛み合い部121の下方から、第一の噛み合い部121の凹凸部121aに第一の抑止部138の爪部138aが噛み合って係止され、第二の噛み合い部123の下方から、第二の噛み合い部123の凹凸部123aに第二の抑止部139の爪部139aが噛み合って係止される。そして、ハンドルベースプレート135が下方に移動した際には、第一の抑止部138と第二の抑止部139が、第一の噛み合い部121の凹凸部121aと第二の噛み合い部123の凹凸部123aからそれぞれ離間し、それぞれの噛み合い状態は解除される。
【0084】
また、ハンドルベースプレート135は、常時、上方(矢印200aで示す方向)に向けて付勢されるように、下端に弾性部材140を配設している。弾性部材140は、例えばコイルスプリングが想定され、ハンドルベースプレート135の下端135bとケース本体101の周壁103との間に介在させている。
このような構成を採用することにより、ハンドルベースプレート135は、常時、弾性部材140の弾性力により上方(矢印200aで示す方向)に向けて付勢されているため、下方(矢印200bで示す方向)に向けて押下げる力が発生していない限り、第一の抑止部138と第二の抑止部139がそれぞれ第一の噛み合い部121と第二の噛み合い部123に噛み合うように構成されている。
【0085】
ハンドルプレート141は、前記ハンドルベースプレート135に一端141aが回転可能に軸止されて、ハンドルベースプレート135とともに上下方向(矢印200で示す方向)に移動可能に取り付けられている。また、ハンドルプレート141には、握持部(ハンドル部)145の一端が一体に接続されている。
【0086】
ハンドルプレート141は、一端側(上端側)141aに被軸止部(軸孔)142を設け、被軸止部142と対向する他端側(下端側)141bの背面141cに押圧部143を突設している。
押圧部143は、前記ギア保持板130の被押圧面部132と対向して接する位置に所定長さの平板状に突設されている。
なお、本実施形態では、ハンドルプレート141が被軸止部142を支点として回転作動する際のブレを解消するために、ハンドルプレート141のガイド機構を採用している。例えば一例を説明すると、ハンドルプレート141の所定位置に長孔144a,144bを設けるとともに、その長孔144a,144bを介してハンドルベースプレート135にネジ止めすることで、長孔144a,144bを介してハンドルプレート141の回転作動がブレることなく案内される。
押圧部143は、握持部145の押下げ作動によって前記ギア保持板130を押圧して第四のギア127を第一のギア120に噛み合わせることを可能とした
【0087】
握持部145は、下り傾斜状にケース部材100内に挿入される傾斜部145aと、傾斜部145aから水平状に一体に連続して形成される図示しない持ち手部とで構成されている。
本実施形態によれば、使用者は、この持ち手部を持って押し引き操作して掃除をすることとなる。なお、握持部145の形状、取付位置などは特に限定されず任意である。
【0088】
本実施形態の粘着ローラー式掃除用具の操作・作動について説明する。
【0089】
本掃除用具を使用していないときは、第四のギア127は、第一のギア120と離間する方向(矢印400で示す方向)に付勢されている(
図8乃至
図10及び
図12参照。)。
【0090】
本掃除用具を使用する際に、粘着ローラー部110を床面などに接触させると、握持部145・ハンドルベースプレート135・ハンドルプレート141の重みもあり、ハンドルベースプレート135がケース部材100に対して下方(矢印200bで示す方向)に下がる。これにより、ハンドルベースプレート135の第一の抑止部138と第二の抑止部139が、粘着ローラー部用回転軸111の第一の噛み合い部121と巻き取り部用回転軸116の第二の噛み合い部123にそれぞれ係止して回転作動を抑止していた状態が解除される(
図11及び
図13参照。)。
そして、同時に、ハンドルプレート141が前方(矢印300で示す方向)に向けて回転作動し、ギア保持板130の被押圧面部132が押圧部143によって押圧されることで、ギア保持板130は弾性部材134の弾性力に抗して前方(矢印300で示す方向)に向けて回転作動する。
【0091】
これにより、第四のギア127が第一のギア120と噛み合い、第一のギア120→第四のギア127→第三のギア126→第二のギア122と全てが噛み合い状態となる。
そして、握持部145を介して斜め前方に粘着ローラー部110を接地面(床面)に押し付けて正転(矢印300で示す前方向へ前進)させると、粘着ローラー部110の回転作動が、第四のギア127を介して第三のギア126から第二のギア122へと伝達される(
図11及び
図13参照。)。これにより、塵などを吸着した粘着シート110aは、巻き取り部115へと順次巻き取られていく。
【0092】
また、逆方向、すなわち粘着ローラー部110を手前に引き寄せるように逆転(矢印400で示す後方向へ後退)させるときには、粘着ローラー部110に掛かっていた押し付け力がなくなり、押圧部143によるギア保持板130への押圧力も解除されるため、ギア保持板130は弾性部材134の弾性力により、被軸止部131を支点として後方(矢印400方向)に戻されるため、第四のギア127は第一のギア120から離間される(噛み合いが解除される)。従って、粘着ローラー部110はフリー回転状態(正逆回転自由状態)となる(
図8乃至
図10、
図12)。
したがって、粘着ローラー部110を前後方向に押し引き操作するにあたって、負荷が無く作動できる。
【0093】
本実施形態では、粘着ローラー部110が接地面から離れたとき、すなわち移動や掃除を終了するにあたり、本掃除用具を上方に持ち上げたときに、粘着ローラー部110と巻き取り部115のそれぞれの回転作動(正逆回転作動)を抑止する回転抑止機構(第一の抑止部138・第二の抑止部139)が備えられているため、もしも、床面に粘着シートがくっついてしまい離れない状態となっていたとしても、本掃除用具を上方に持ち上げたときには、粘着ローラー部110と巻き取り部115のそれぞれの回転作動は抑止されているため、不用意な粘着シートの引き出しは抑制される。
すなわち、本掃除用具を持ち上げると、引力でケース部材100が下方(矢印200bで示す方向)に下がり、ハンドルベースプレート135の第一の抑止部138と第二の抑止部139が、粘着ローラー部用回転軸111の第一の噛み合い部121と巻き取り部用回転軸116の第二の噛み合い部123にそれぞれ係止されて回転作動が抑止されるからである。
【0094】
さらに、本実施形態では特に開示していないが、第一実施形態と同様、巻き取り部115への巻き取り作動において所定の引っ張り力(テンション)が掛かった際に、第二のギア123と巻き取り部用回転軸116とがすべる(空回りする)ように、第二のギア123と巻き取り部用回転軸116との間に、いわゆるラチェット機構を備えるものとしてもよい。
また、その他の構成・作用効果は第一実施形態と同様であって特にその説明は省略する。