(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Rが、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール−ビニル及びヘテロアリール−ビニルからなる群から選択され、これらのそれぞれが、ハロゲン、C1−C6アルキル又はC1−C6アルコキシで置換されていてもよい、請求項1に記載のアミド化オレアノール酸誘導体又はその薬学的に許容される塩。
ヘテロシクリルがテトラヒドロフリル、テトラヒドロチエニル、ピペリジル、ピペラジニル又はモルホリニルである、請求項1又は2に記載のアミド化オレアノール酸誘導体又はその薬学的に許容される塩。
腫瘍が、白血病、多発性骨髄腫、リンパ腫、肝臓癌、胃癌、乳癌、胆管細胞癌、膵臓癌、肺癌、結腸直腸癌、骨肉腫、ヒト子宮頸癌、神経膠腫、上咽頭癌、喉頭癌、食道癌、中耳腫瘍、黒色腫及び前立腺癌から選択される、請求項15に記載のアミド化オレアノール酸誘導体又はその薬学的に許容される塩。
【背景技術】
【0002】
オレアノール酸(OA,Oleanolic acid)は、カリオフィリン(caryophyllin)としても知られており、五環トリテルペノイドの一種である。それはモクセイ科、リンドウ科、アカネ科、ヒユ科などの葉及び果実から抽出され、主に遊離型として及び(又は)糖類と組み合わせて存在する。国内外の多くの科学者は、五環トリテルペノイドに関する広範な研究を行ってきた。文献によれば、オレアノール酸及びその誘導体又はアナログは、種々の生物学的活性、例えば抗炎症、抗腫瘍、抗ウイルス、免疫調節、血小板凝集の阻害、脂質低下、肝臓保護、腎臓保護、抗HIV等を示す(LI, Yingxia et al., An oleanolic acid-lactose conjugate, the preparation process and use thereof, 中国特許出願公開第1414012号公報.2003; ZHANG, Yihua et al., An oleanolic acid derivative, the preparation process and use thereof, 中国特許出願公開第102070697号公報.2011; Lin, Z. H.; Zhang, Y.; Zhang, Y. N.; Shen, H.; Hu, L. H.; Jiang, H. L.; Shen, X. Oleanolic acid derivative NPLG441 potently stimulates glucose transport in 3T3-L1 adipocytes via a multi-target mechanism. Biochemical Pharmacology. 2008. 76:1251-1262; Chen, J.; Gong, Y. C.; Liu, J.; Hua, W. Y.; Zhang, L. Y.; Sun, H. B. Synthesis and biological evaluation of novel pyrazolo[4,3-b]oleanane derivatives as inhibitors of glycogen phosphorylase. Chemistry & Biodiversity. 2008. 5:1304-1312)。
【0003】
【化1】
【0004】
今日では、悪性腫瘍は、最も深刻な一般的疾患であり、ヒトの健康に脅威をもたらす。抗腫瘍薬の開発は現代医学の重要な研究テーマである。有効性が高く毒性の低い薬を中国のハーブ植物から探し出すことが、国内外の抗腫瘍研究の焦点となっている。オレアノール酸は、毒性が低く漢方薬に豊富な供給源がある、非常に有望な抗腫瘍薬である。
【0005】
近年、オレアノール酸のヒト肺癌細胞の増殖に対する機能並びに抗浸潤及び細胞アポトーシスを誘導する能力についての文献報告が目にされた。研究者は、細胞増殖阻害アッセイ、軟寒天コロニー形成アッセイなどを介したPGCL3細胞の浸潤能に対するオレアノール酸の効果を観察した。結果は、オレアノール酸が用量依存的な相関でPGCL3細胞の増殖を減少させることができ、PGCL3ヒト肺癌細胞の抗増殖及び抗浸潤効果を有し、PGCL3細胞のアポトーシスを誘導する効果を有することを示した。その抗浸潤効果は浸潤の特定のステップをブロックすることだけでなく、浸潤の各基本ステップの阻害にも及ぶ。さらに、研究者はA549細胞におけるオレアノール酸の影響及びその可能なメカニズムを調査し、その結果は、オレアノール酸がヒト肺腺癌細胞のアポトーシスを濃度依存的に誘導できることを示した。(ZHANG Dongfang et al., Study on proliferation inhibition and anti-invasion and apoptotic induction of oleanolic acid in human lung cancer cell line, 2003, 30 (3):081-381; WEI Xiaohong et al., Apoptosis induced by oleanolic acid and its relation to intracellular calcium of human lung adenoma A549 cells, Journal of Tongji University (Medical Science), 2009, 30 (5):19-23.)
【0006】
文献は、研究者が細胞増殖の阻害試験及びMTT法で腫瘍細胞の活性を検出することによって、オレアノール酸による卵巣癌細胞株IGROV1及びヒト乳癌細胞株MDA−MB−231の阻害について調査したことを報告した。結果は、オレアノール酸が用量依存的な相関でIGROV1及びMDA−MB−231細胞の増殖能を低下させることができることを示し、それはオレアノール酸がこれら2つの悪性腫瘍細胞株に対する阻害活性を有することを示した。(WU, Linwei et al., Inhibiting Effect of Oleanolic Acid on Ovarian Carcinomas IGROV1 and Breast Cancer Cell Line MDA-MB-231, Chinese Journal of Applied and Environmental Biology, 2010, 16(2):202-204.)
【0007】
近年、LIN Xiukunらは、オレアノール酸及びその医薬調製物の優れた抗膵臓癌効果を報告し、それはインビトロでのヒト膵臓癌細胞に対する明らかな阻害活性及びこれらの腫瘍細胞の移植腫瘍を持つヌードマウスに対する有意な抗腫瘍活性によって表された。さらに、LIN Xiukunらは、子宮頸癌に対するオレアノール酸の阻害効果についても調査した。結果は、オレアノール酸及びその医薬調製物は、インビトロでヒト子宮頸癌細胞に対して明らかな阻害活性を有し、またこれら腫瘍細胞のヌードマウスの移植腫瘍に対して有意な抗腫瘍活性を有することを示した。(LIN Xiukun et al., Anti-pancreatic carcinoma effects of oleanolic acid and pharmaceutical preparations thereof, 中国特許出願公開第102151275号公報.2011; LIN Xiukun et al., Anti-cervical cancer effects of oleanolic acid and pharmaceutical preparations thereof, 中国特許出願公開第102133219号公報.2011.)
【0008】
オレアノール酸は、その種々の薬理活性及び低毒性のために診療所で広く用いられるが、このタイプの薬物は人体での生物学的利用能が低い。したがって、高効率、低毒性のオレアノール酸誘導体の業界における見通しは良好である。本発明は、アミノ置換によってオレアノール酸をそのC−17位で改変し、その生物活性及び生物学的利用能を改善するために官能基を導入した。これまでのところ、本発明の方法及びC−17位でアミノ置換することによるオレアノール酸のアミド化誘導体についての報告は文献においてまだ見られていない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、式(I)の新規なアミド化オレアノール酸誘導体
【0022】
[式中、RはH、置換されていてもよいC
3−C
7シクロアルキル又はシクロアルケニル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル又はヘテロアリール、置換されていてもよいアリール−ビニル、及び置換されていてもよいヘテロアリール−ビニルからなる群から選択され、これらのそれぞれは、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、カルボキシル、C
1−C
6アルキル、C
1−C
6アルキルアミノ、C
1−C
6アルコキシ及びC
1−C
6アルキルチオからなる群から選択される置換基で置換されていてもよい]
又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、Rは、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール−ビニル及びヘテロアリール−ビニルからなる群から選択され、これらのそれぞれは、ハロゲン、C
1−C
6アルキル又はC
1−C
6アルコキシで置換されていてもよい。
【0024】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、アリールはフェニルである。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、ヘテロアリールは、フリル、チエニル、ピロリル及びピリジルからなる群から選択される。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシルからなる群から選択される。
【0027】
本発明の好ましい実施形態によれば、複素環式ラジカルは、テトラヒドロフリル、テトラヒドロチエニル、ピペリジル、ピペラジニル及びモルホリニルからなる群から選択される。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によれば、Rは、置換されていてもよいヘテロアリール−ビニルからなる群から選択される。
【0029】
本発明による好ましいアミド化オレアノール酸誘導体の一部を以下の通り示す。これらの例は、本発明の範囲をいかなる制限もすることなく、本発明をさらに例示するためのものにすぎない。
【0031】
上記化合物についてのいくつかのデータを以下の表に列挙する。
【0033】
本発明の別の実施形態において、式(I)の以下の化合物が特に好ましい。
【0035】
本発明のアミド化オレアノール酸誘導体は、抗腫瘍活性を有する。オレアノール酸それ自体と比較して、本発明のアミド化オレアノール酸誘導体は、例えば数倍又は数十倍にも改善された抗腫瘍活性を有する。
【0036】
本明細書で使用するとき、用語「アルキル」は、指定された数のアルカンに由来する炭素原子を含有する直鎖状又は分岐状の炭化水素ラジカルを意味する。アルキルは、1〜18個の炭素原子、例えば1〜12、1〜10、1〜8、1〜6、1〜5、1〜4又は1〜3個の炭素原子を含むことができる。アルキルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル及びn−オクタデシルがあるが、これらに限定されない。
【0037】
用語「C
3−C
7シクロアルキル又はシクロアルケニル」は、飽和又は不飽和の3〜7員単環式炭化水素ラジカルを意味する。C
3−C
7シクロアルキル又はシクロアルケニルの代表例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロプロペニル及びシクロヘキセニルがあり得る。
【0038】
用語「アリール」は、縮合又は縮合していない、6〜14個の炭素原子(例えば6〜12個若しくは6〜10個の炭素原子)を含有する単環式アリール又は多環式アリールを意味する。多環式アリールの場合、少なくとも1つの環は芳香族である。アリールはまた、ヘテロシクリルと縮合したものであり得る。アリールの例としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル、5,6,7,8−テトラヒドロナフチル、2,3−ジヒドロベンゾフラニル等がある。
【0039】
用語「ヘテロアリール」は、環内に環員(複数可)として1〜4個のヘテロ原子(例えば、1、2、3又は4個のヘテロ原子)を有する芳香族環基を意味する。ヘテロ原子は、窒素、酸素又は硫黄を意味する。ヘテロアリールは、5〜7個の環原子を有する単環式ヘテロアリール、又は7〜11個の環原子を有する二環式ヘテロアリールであってもよい。該二環式ヘテロアリールは、少なくとも1つの芳香族複素環基を含むべきであり、他の環(複数可)は芳香族又は非芳香族であり、ヘテロ原子を伴っても伴わなくてもよい。ヘテロアリールの例としては、例えばピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、フラニル、チオフェニル、イソオキサゾリル、インドリル等がある。
【0040】
用語「ヘテロシクリル」は、環員(複数可)として1〜4個のヘテロ原子(例えば、1、2、3又は4個のヘテロ原子)を含有する非芳香族環式基を意味する。ヘテロ原子は、窒素、酸素又は硫黄を意味する。ヘテロシクリルは、4〜8個の環原子(例えば4〜7員環、5〜7員環若しくは5〜6員環)を有する単環式ヘテロシクリル、又は7〜11個の環原子を有する二環式ヘテロシクリルであってもよい。複素環式ラジカルは芳香族又は非芳香族であり得る。ヘテロシクリルの例としては、アザシクロブチル、ピロリジニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、ピペラジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニル等がある。
【0041】
用語「アリール−ビニル」は、上記アリールで置換されたビニル基を意味する。
【0042】
用語「ヘテロアリール−ビニル」は、上記ヘテロアリールで置換されたビニル基を意味する。
【0043】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を意味する。
【0044】
用語「アルキルアミノ」は、指定された数の炭素原子を有する1つ又は2つのアルキルで置換されたアミノ基を意味する。
【0045】
用語「アルコキシ」は、アルキルが上記のように定義されるアルキル−O−ラジカルを意味する。
【0046】
用語「アルキルチオ」は、アルキルが上記のように定義されるアルキル−S−ラジカルを意味する。
【0047】
本明細書で使用するとき、用語「式(I)の化合物の薬学的に許容される塩」としては、薬学的に許容される陰イオンを含む有機酸によって形成される有機酸塩を例示することができる。これらの有機酸塩としては、トシル酸塩、メタンスルホン酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α−ケトグルタル酸塩、乳酸塩及びα−グリセロリン酸塩があるが、これらに限定されない。適切な無機塩が形成されてもよく、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩及び炭酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩などが含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
薬学的に許容される塩は、例えば、薬学的に許容される陰イオンをもたらす十分な量のアルカリ化合物を適切な酸と反応させることにより、当技術分野で周知の標準的な手順を用いて得ることができる。
【0049】
本発明のアミド化オレアノール酸誘導体の主な構造は、構造式(I)で表される立体化学構造において8個のキラル中心を有する。本明細書中で使用される立体化学的な定義及び規則は、概して、MCGRAW-HILL DICTIONARY OF CHEMICAL TERMS(S. P. Parker, Ed., McGraw-Hill Book Company, New York, 1984)及びELIEL, E. AND WILEN, S., STEREOCHEMISTRY OF ORGANIC COMPOUNDS(John Wiley & Sons, Inc., New York, 1994)に従っている。多くの有機化合物は、光学的に活性な形態で存在する、すなわち、それらは平面偏光を回転させる能力を有する。
【0050】
本明細書中で使用される用語「治療」、「治療する(treating)」、「治療する(treat)」などは一般に所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを意味する。効果は、完全に若しくは部分的に疾患又はその症状を予防するという点で予防的であってもよく、及び/又は疾患及び/又はその疾患によって引き起こされる副作用の部分的若しくは完全な安定化又は治癒の点で治療的であってもよい。本明細書で使用するとき、「治療」は、対象の疾患のいかなる治療も包含し、(a)疾患又は症状にかかりやすいが、まだそれを有すると診断されていない対象に疾患若しくは症状が起こるのを予防すること;(b)疾患の症状を阻害すること、すなわち、その進行を阻止すること;又は(c)疾患の症状を軽減すること、すなわち、疾患若しくは症状の退行を引き起こすことを含む。
【0051】
本発明の化合物は、従来の有機化学合成方法により調製することができる。例えば、本発明の式(I)の化合物は、以下のように調製される。
【0053】
式(I)のアミド化オレアノール酸誘導体は、自然の生薬から抽出されるオレアノール酸をクルチウス反応に供して、オレアノール酸アミノ化中間体(OA−NH
2)を産生し、次いで、中間体をカップリング剤の存在下で有機酸、有機塩化アシル又は有機無水物とアミド結合形成反応し、式(I)のアミド化オレアノール酸誘導体を産生することによって調製することができ、ここで、式(I)のRは式(I)について上記で定義されている通りである。
【0054】
アミノ化のための上記クルチウス反応は、アルカリ又はアルカリ剤の存在下で、通常、最初にアジド中間体を産生する。次に、このようなアジド中間体は、酸又は酸性剤の存在下、加熱下で分解して、アミノ化オレアノール酸中間体(OA−NH
2)を産生する。
【0055】
アジド中間体を産生するために使用されるアルカリは、有機アルカリ、例えばトリエチルアミンであり得るが、これに限定されない。
【0056】
アジド中間体を分解するために使用される酸は、無機酸、例えば硫酸であり得るが、これに限定されない。
【0057】
クルチウス反応に用いられるアジド剤は、有機剤又は無機剤、例えばアジ化ナトリウム及びジフェニルアジドホスフェートであり得る。
【0058】
上記アジド−アミノ化反応は、通常、溶媒中で起こる。使用される溶媒としては、極性溶媒、例えばクロロホルムがあるが、これに限定されない。
【0059】
上記アミノ化反応の反応温度は、通常、40℃〜120℃、例えば100℃である。
【0060】
上記アミド化のための有機酸、有機塩化アシル及び有機無水物は、すべて市販されている。
【0061】
アミド化反応は、通常、縮合剤の存在下で起こり、縮合剤は、有機縮合剤、例えば2−(7−アゾベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロボレート(HBTU)、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、ベンゾトリアゾリル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロボレート(TBTU)であり得るが、これらに限定されない。
【0062】
アミド化反応は、通常、アルカリの存在下で行われる。本明細書でアルカリは、有機アルカリ、例えばN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリエチルアミン(TEA)、ピリジン又は4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)であり得るが、これらに限定されない。
【0063】
アミド化反応は、通常、溶媒中で行われるが、溶媒の非存在下で行われてもよい。本明細書で使用される溶媒としては、有機極性溶媒、例えばジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)又はジメチルスルホキシド(DMSO)等があるが、これらに限定されない。
【0064】
アミド化反応の典型的な操作は、次の通りであり得るが、これらに限定されない。有機酸、アルカリ及び縮合剤を適切な割合でN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に添加する。常温下で30分間混合物を撹拌し、次いでオレアノール酸中間体(OA−NH
2)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を添加する。混合物を室温下で撹拌し12時間反応させた後、有機溶媒を用いて生成物を抽出し、次いで、それを水及び飽和塩水で洗浄し、乾燥及び濃縮して粗生成物を得る。次いで、粗生成物をHPLCで精製して純粋な生成物を得る。
【0065】
従来の化学変換方法を用いて本発明を実施してもよい。当業者は適切な化学薬品、溶媒、保護基及びこれらの化学変換のための反応条件を決定することができる。関連情報は、例えば、R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3
rdEd., John Wiley and Sons (1999); L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994); and L. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)及びそれらのその後の版に記載されている。
【0066】
保護基は、活性部分(例えば、ヒドロキシル又はアミノ基)に付加されると、その部分がその後の反応において干渉されることを防止し、反応後、従来の方法によって除去され得る基を意味する。ヒドロキシル保護基の例としては、アルキル、ベンジル、アリル、トリチル(トリフェニルメチルとしても知られている)、アシル(例えば、ベンゾイル、アセチル又はHOOC−X’’−CO−、ここでX’’はアルキリデン、アルケニレン、シクロアルキレン又はアリーレン)、シリル(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル及びt−ブチルジメチルシリル)、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル(例えば、ジメチルアミノカルボニル、メチルエチルアミノカルボニル及びフェニルアミノカルボニル)、アルコキシメチル、ベンジルオキシメチル並びにアルキルメルカプトメチルがあるが、これらに限定されない。アミノ保護基の例としては、アルコキシカルボニル、アルカノイル、アリールオキシカルボニル、アリール置換アルキルなどがあるが、これらに限定されない。ヒドロキシル及びアミノ保護基については、T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd. Ed., John Wiley and Sons (1991)で論じられている。すべてのヒドロキシル及びアミノ保護基は、反応後に従来の方法によって除去することができる。
【0067】
本発明はまた、本発明の式(I)の化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0068】
本発明は、少なくとも1つの上記で定義した本発明の式(I)の化合物を含み、薬学的に許容される賦形剤を含んでいてもよい医薬組成物を提供する。
【0069】
所定量の活性構成成分を有する種々の医薬組成物を調製する方法は当業者に知られている、又は本開示に照らして明らかであろう。REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES, Martin, E.W., ed., Mack Publishing Company, 19th ed. (1995)に記載されているように、このような医薬組成物を調製する方法は、他の適切な医薬賦形剤、担体、希釈剤等の取り込みを含む。
【0070】
本発明の医薬調製物は、混合、溶解又は凍結乾燥方法を含む既知の方法によって産生される。
【0071】
本発明の化合物は、医薬組成物に製剤化され、選択される投与様式に適した経路、例えば、経口的に、胃腸の潅流によって、又は静脈内、筋肉内若しくは皮下注射によって対象に投与されてもよい。
【0072】
したがって、本化合物は、薬学的に許容される担体、例えば不活性希釈剤又は可食担体と組み合わせて、全身的に投与、例えば経口投与されてもよい。それらは硬又は軟ゼラチンカプセルに封入してもよく、錠剤に圧縮してもよい。治療用経口投与については、活性化合物は1又は2以上の賦形剤と組み合わせてもよく、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、オブラートなどの形態で取ることができる。このような組成物又は調製物は、少なくとも0.1%の活性化合物を含有すべきである。当然、組成物及び調製物中の活性化合物の割合は変化してもよく、所与の単位剤形の約1重量%〜約99重量%であってもよい。治療的に有用な組成物において、活性化合物は有効な投与量レベルが達成されるような量で存在する。
【0073】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などはまた、結合剤、例えばトラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ若しくはゼラチン;賦形剤、例えばリン酸二水素カルシウム;崩壊剤、例えばコーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸など;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム;及び甘味剤、例えばスクロース、フルクトース、ラクトース若しくはアスパルテーム;又は香味剤、例えばペパーミント、ウインターグリーン油若しくはチェリーフレーバーを含んでいてもよい。単位剤形がカプセル剤である場合、上記の材料に加えて、液状媒体、例えば植物油又はポリエチレングリコールを含んでいてもよい。種々の他の材料はコーティングとして存在してもよく、そうでなければ固体単位剤形の物理的形態を変更してもよい。例えば、錠剤、丸剤又はカプセル剤は、ゼラチン、ワックス、シェラック又は糖等で被覆することができる。シロップ剤又はエリキシル剤は活性化合物、甘味剤、例えばスクロース又はフルクトース、防腐剤、例えばメチルパラベン又はプロピルパラベン、色素及び香味剤(例えば、チェリー又はオレンジフレーバー)を含有していてもよい。当然、単位剤形を調製するのに使用されるいかなる材料も、用いられる量において薬学的に許容され、実質的に非毒性であるべきである。さらに、活性化合物は徐放性調製物又はデバイスに組み込むことができる。
【0074】
活性化合物はまた、注入又は注射によって静脈内又は腹腔内に投与されてもよい。活性化合物又はその塩の水溶液は、非毒性の界面活性剤と混合して調製されてもよい。また、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン若しくはこれらの混合物中、又は油中分散液を調製することができる。通常の貯蔵及び使用条件下で、これらの調製物は微生物の増殖を防止するために防腐剤を含有する。
【0075】
注射又は注入に適した医薬剤形は、無菌水溶液、分散液又は無菌の注射可能若しくは注入可能な溶液若しくは分散液の即時調製に適合されている活性成分(リポソームにカプセル化されていてもよい)を含む無菌粉末を含んでいてもよい。すべての場合において、最終剤形は、製造及び貯蔵条件下で無菌で安定した液体でなければならない。液体担体又は媒体は、溶媒又は液体分散媒質であってよく、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリド及びそれらの適切な混合物を含む。適切な流動性は、例えば、リポソームの形成によって、分散液の場合は必要な粒径の維持によって、又は界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、等張剤は好ましくは、例えば糖、緩衝剤又は塩化ナトリウムから構成されている。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤の組成物、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によって得ることができる。
【0076】
注射可能な無菌溶液は、適切な溶媒中の必要量の活性化合物を上に列挙した種々の付加的な所望の構成成分と組み合わせ、その後に濾過及び滅菌することによって調製される。注射可能な無菌溶液を調製するために使用される無菌粉末については、好ましい調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、それらは活性成分の粉末に加えて、先の濾過した無菌溶液中に存在するいかなる付加的な所望の成分ももたらす。
【0077】
有用な固体担体には、微粉固体、例えばタルク、粘土、微結晶性セルロース、シリカ、アルミナなどが含まれる。有用な液体担体は、本発明の化合物が、非毒性の界面活性剤を用いてもよい有効な含有量で溶解又は分散することができる、水、エタノール若しくはエチレングリコール又は水−エタノール/エチレングリコール混合物を含む。アジュバント(例えばフレーバー)及び付加的な抗菌剤を所与の用途のための特性を最適化するために添加することができる。
【0078】
増粘剤(例えば、合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩及びエステル、脂肪アルコール、変性セルロース又は変性無機材料)は、液体担体とともに用いて、使用者の皮膚に直接塗布するための、展延性のペースト、ゲル、軟膏、石鹸などを形成することもできる。
【0079】
治療に必要とされる化合物若しくは活性塩又はそれらの誘導体の量は、選択される特定の塩だけでなく、投与経路、治療される状態の性質並びに対象の年齢及び状態に依存して変化し、最終的に担当医師又は臨床医の裁量により決定される。
【0080】
上記製剤は、単位用量を含有する物理的に個別の単位である単位剤形で存在することができ、それはヒト又は他の哺乳動物への投与に適している。単位剤形は、カプセル剤若しくは錠剤、又は複数のカプセル剤若しくは錠剤であってもよい。意図する特定の療法に依存して、単位剤形中の活性成分の量は、約0.1mg〜約1,000mg以上の範囲で変化又は調整することができる。
【0081】
本発明はまた、薬剤、とりわけ抗腫瘍薬剤の製造における、本発明による化合物又は本発明の化合物を含む医薬組成物の使用を提供する。したがって、本発明は、本発明の少なくとも1つの化合物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、腫瘍を患う対象を治療する方法を提供する。本発明のアミド化オレアノール酸誘導体又はその薬学的に許容される塩は、例えば、白血病、多発性骨髄腫、リンパ腫、肝臓癌、胃癌、乳癌、胆管細胞癌、膵臓癌、肺癌、結腸直腸癌、骨肉腫、黒色腫、子宮頸癌、神経膠腫、上咽頭癌、喉頭癌、食道癌、中耳腫瘍、前立腺癌等の治療のために使用することができる。
【0082】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は例示のみを意図しており、決して本発明の範囲を限定するものではないと理解されるべきである。
【0083】
以下の実施例で使用される未加工の化学物質は市販されており、又は当該技術分野で知られている合成法によって調製されてもよい。
【実施例1】
【0084】
化合物BS−OA−102の合成
【0085】
【化8】
【0086】
オレアノール酸(2.5g、5.5mmol)をクロロホルム(25mL)に溶解させ、それにジフェニルホスホリルアジド(1.8g、6.6mmol)及びトリエチルアミン(0.66g、6.6mmol)を添加する。反応溶液を室温下で12時間撹拌し、次いで、それに3M硫酸(15mL)を添加する。反応溶液を100℃まで加熱し、6時間撹拌を継続する。反応が完了した後、反応溶液を室温に冷却し、NaOH(10%水溶液)でpH13に調整し、次いで酢酸エチル(40mL
*2)で抽出する。有機相を合わせ、乾燥させ、濃縮し、化合物OA−NH
2を黄色の油として得て、精製することなく次の反応に直接使用する。
【0087】
【化9】
【0088】
N,N−ジメチルホルムアミド(0.5mL)にp−トルイル酸(15.1mg、0.1mmol)、ベンゾトリアゾリル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(45.5mg、0.12mmol)及びトリエチルアミン(30.3mg、0.30mmol)を添加する。反応溶液を室温下で30分間撹拌した後、OA−NH
2(110mg)を添加し、反応溶液を室温下で12時間撹拌する。反応が完了した後、溶液を抽出し、濃縮する。得られた粗生成物を分取クロマトグラフィーカラムを介して分離精製し、化合物BS−OA−102(16.1mg、収率12.3%)を白色固体として得る。
LC−MS:保持時間:1.74分(97.56%)、m/z:546.7(M+H)。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ 7.60(d,J=8.2Hz,1H)、7.33(s,1H)、7.19(t,2H)、5.86(s,1H)、5.40(s,1H)、3.20(s,1H)、2.62(d,1H)、2.37(s,2H)、2.31(m,2H)、2.00(s,2H)、1.94(m,3H)、1.69(m,2H)、1.62(m,4H)、1.56(m,2H)、1.50〜1.22(m,10H)、1.17(s,3H)、0.92(m,9H)、0.84(m,2H)、0.74(m,5H)。
【0089】
BS−OA−096は、BS−OA−102のための方法に従い、同じ試薬を用いて、OA−NH
2を2−クロロニコチン酸と反応させることによって調製する。LC−MS:1.37分(97.92%)、m/z:568.6(M+H)。
【0090】
BS−OA−097は、BS−OA−102のための方法に従い、同じ試薬を用いて、OA−NH
2をシクロプロパンカルボン酸と反応させることによって調製する。LC−MS:1.40分(86.38%)、m/z:496.5(M+H)、518.5(M+Na)。
【0091】
BS−OA−098は、BS−OA−102のための方法に従い、同じ試薬を用いて、OA−NH
2をチオフェン−2−カルボン酸と反応させることによって調製する。LC−MS:1.55分(99.73%)、m/z:538.5(M+H)、560.6(M+Na)。
【0092】
BS−OA−099は、BS−OA−102のための方法に従い、同じ試薬を用いて、OA−NH
2をフラン−2−カルボン酸と反応させることによって調製する。LC−MS:1.55分(98.47%)、m/z:522.5(M+H)。
【0093】
BS−OA−100は、BS−OA−102のための方法に従い、同じ試薬を用いて、OA−NH
2を2−フランアクリル酸と反応させることによって調製する。LC−MS:1.43分(98.69%)、m/z:549.8(M+H)。
【0094】
BS−OA−101は、BS−OA−102のための方法に従い、同じ試薬を用いて、OA−NH
2を安息香酸と反応させることによって調製する。LC−MS:1.61分(98.42%)、m/z:532.6(M+H)。
【0095】
BS−OA−103は、BS−OA−102のための方法に従い、同じ試薬を用いて、OA−NH
2を3−メトキシ安息香酸と反応させることによって調製する。LC−MS:1.58分(98.59%)、m/z:562.6(M+H)。
【0096】
BS−OA−104は、BS−OA−102のための方法に従い、同じ試薬を用いて、OA−NH
2をテトラヒドロフラン−2−カルボン酸と反応させることによって調製する。LC−MS:1.32分(98.25%)、m/z:526.6(M+H)、548.5(M+Na)。
【実施例2】
【0097】
抗白血病活性についての本発明のアミド化オレアノール酸誘導体の評価
(1)実験材料
白血病細胞株:白血病細胞株:K562/adr(薬剤耐性、慢性骨髄性白血病(CML,chronic myeloid leukemia))、NB4(急性前骨髄球性白血病(AML,acute promyelocytic leukemia))、Kasumi−1(急性骨髄性白血病M2型(AML−M2,acute myeloid leukemia M2 type))、Jurkat(急性リンパ芽球性白血病(ALL,acute lymphoblastic leukemia))(これらはすべてCancer Research Institute of Zhejiang University, Chinaより寄贈);及びH9(急性リンパ芽球性白血病、ALL)(China Center for Type Culture Collection(CCTCC)から購入)。
【0098】
試薬:オレアノール酸(OA)の標準試料は、Hua Kang Pharmaceutical Raw Material Factory, Shifang City, Sichuan, Chinaから購入し、アミド化オレアノール酸誘導体は本発明に従って調製される。
【0099】
主な機器:細胞培養器(モデル:Thermo Scientific 3111)、マイクロプレート吸光度リーダー(モデル:Bio-Rad社製iMark)。
【0100】
(2)実験法
6000個の十分に成長している白血病細胞を得て、それらを96ウェル細胞培養プレートのウェルに接種する。培養培地は、10%ウシ胎児血清を含有する1640細胞培養培地である。異なる濃度のアミド化オレアノール酸誘導体を添加し、均一に混合した後、37℃で二酸化炭素細胞培養器(5%CO
2)中にプレートを置き、72時間インキュベートする。次いで、生存細胞の相対数をMTT法によって測定する。この実験では、対照群の細胞増殖阻害率(いかなる化合物でも処理されていない)を0%と設定する。生細胞の相対数に基づいて、72時間での白血病細胞における半最大阻害濃度(72時間のIC
50値、μg/mL)及び72時間での16μg/mLの化合物による白血病細胞増殖の阻害率(IR,inhibition rate)を計算する。
【0101】
(3)実験結果
実験結果を表1に示す。表1は、本発明のアミド化オレアノール酸誘導体は、ヒト慢性骨髄性白血病細胞、急性骨髄性白血病細胞及び急性リンパ性白血病細胞の細胞死を誘導し、これら白血病細胞の増殖を阻害することができることを示している。具体的には、本発明のアミド化オレアノール酸誘導体BS−OA−096、BS−OA−097、BS−OA−098、BS−OA−099、BS−OA−101及びBS−OA−103は、K562/adr細胞に対して特に顕著な効果を示す。すなわち、オレアノール酸と比較して、これらの化合物すべてが細胞阻害率を3倍を超えて改善する。さらに、オレアノール酸と比較して、本発明のBS−OA−096、BS−OA−097、BS−OA−098、BS−OA−099及びBS−OA−101は、NB4細胞の細胞阻害率を5倍を超えて改善し、BS−OA−099及びBS−OA−101は、Kasumi−1細胞の阻害率を3倍を超えて改善し、BS−OA−096及びBS−OA−097は、H9細胞の細胞阻害率をほぼ4倍改善し、BS−OA−097及びBS−OA−099は、Jurkat細胞の細胞阻害率を6倍を超えて改善する。
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【実施例3】
【0104】
本発明のアミド化オレアノール酸誘導体による抗ヒト多発性骨髄腫細胞活性の評価
(1)実験材料
多発性骨髄腫細胞株:RPMI8226(多発性骨髄腫)、Fuxiang Bio-tech Co. Ltd., Shanghai, Chinaから購入。
試薬:実施例2と同様。
主な機器:細胞培養器(モデル:Thermo Scientific 3111)、マイクロプレート吸光度リーダー(モデル:Bio-Rad社製iMark)。
【0105】
(2)実験法
6000個の十分に成長している上述の腫瘍細胞を得て、それらを96ウェル細胞培養プレートのウェルに接種する。培養培地は、10%ウシ胎児血清を含有する1640細胞培養培地である。異なる濃度のアミド化オレアノール酸誘導体を添加し、均一に混合した後、37℃で二酸化炭素細胞培養器(5%CO
2)中にプレートを置き、72時間インキュベートする。次いで、生存細胞の相対数をMTT法によって測定する。この実験では、対照群の細胞増殖阻害率(いかなる化合物でも処理されていない)を0%と設定する。生細胞の相対数に基づいて、72時間での白血病細胞における半最大阻害濃度(72時間のIC
50値、μg/mL)及び72時間での16μg/mLの化合物による腫瘍細胞増殖に対する阻害率(IR)を計算する。
【0106】
(3)実験結果
実験結果を表2に示す。表2は、本発明のアミド化オレアノール酸誘導体がヒト骨髄腫細胞の細胞死を誘導し、これら腫瘍細胞の増殖を阻害できることを示している。具体的には、オレアノール酸と比較して、本発明のBS−OA−096、BS−OA−097、BS−OA−098、BS−OA−099、BS−OA−101、BS−OA−103及びBS−OA−104は、44倍を超えて改善されたRPMI8226細胞の細胞阻害率を示す。
【実施例4】
【0107】
ヒト固形腫瘍に対する本発明のアミド化オレアノール酸誘導体の効果についての評価
(1)実験材料
ヒト固形腫瘍細胞株:Hep−2(喉頭癌)、A549(ヒト肺癌)、CaES−17(食道癌細胞)、PC−3(前立腺癌)、CNE(上咽頭癌細胞)及びSK−OV−3(卵巣癌細胞)(これらはすべてChina Center For Type Culture Collectionから購入);RKO(ヒト結腸腺癌細胞)、MGC803(ヒト胃癌細胞)、MG63(骨肉腫)及びU87MG(悪性神経膠腫細胞)(これらはすべてFuxiang Bio-tech Co. Ltd., Shanghai, Chinaから購入);PANC−1(膵臓癌)、HepG2(ヒト肝臓癌細胞)、Becap37(ヒト乳癌細胞)及びHela(ヒト子宮頸癌細胞)(これらはすべてCancer Research Institute of Zhejiang University, Chinaより寄贈)。
試薬:実施例2と同様。
主な機器:細胞培養器(モデル:Thermo Scientific 3111)、マイクロプレート吸光度リーダー(モデル:Bio-Rad社製iMark)。
【0108】
(2)実験法
4000個の十分に成長しているヒト固形腫瘍細胞を得て、それらを96ウェル細胞培養プレートのウェルに接種する。培養培地は、10%ウシ胎児血清を含有するDMEM高グルコース細胞培養培地である。インキュベーションのために、プレートを24時間37℃で二酸化炭素細胞培養器(5%CO
2)中に置く。異なる濃度のアミド化オレアノール酸誘導体を添加し、均一に混合した後、インキュベーションのために37℃で72時間二酸化炭素細胞培養器(5%CO
2)中にプレートを置く。次いで、生細胞の相対数をMTT法によって測定する。この実験では、対照群の細胞増殖阻害率(いかなる化合物でも処理されていない)を0%と設定する。生細胞の相対数に基づいて、72時間での白血病細胞における半最大阻害濃度(72時間のIC
50値、μg/mL)及び72時間での16μg/mLの化合物による腫瘍細胞増殖の阻害率(IR)を計算する。
【0109】
(3)実験結果を表2に示す。
表2は、本発明のアミド化オレアノール酸誘導体は、ヒト固形腫瘍の細胞死を誘導し、これら腫瘍細胞の増殖を阻害できることを示している。具体的には、オレアノール酸それ自体と比較して、本発明のアミド化オレアノール酸誘導体BS−OA−096は、PANC−1、Hela、CNE及びMGC803細胞の阻害率をそれぞれほぼ7倍、4倍、2倍及び3倍改善し、RKO、MG63、SKOV−3細胞の細胞阻害率をそれぞれ4倍、3倍及び12倍を超えて改善し、BS−OA−097は、PC−3細胞の細胞阻害率をほぼ2倍改善し、MG63細胞の細胞阻害率を3倍を超えて改善し、BS−OA−099は、RKO及びA549細胞両方の細胞阻害率を4倍を超えて改善し、U87MG及びCaES−17細胞両方の細胞阻害率を2倍を超えて改善し、Hep−2細胞の細胞阻害率を3倍を超えて改善する。
【0110】
【表4】
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】
【0113】
【表7】