(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分解性を有する樹脂は、デンプン、セルロース、ペクチン、ゼラチン、寒天、アルギン酸塩、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウムシードガム、デキストリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、酢酸ビニル、ポリエチレンイミン、ポリアルキレンオキサイド、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、変性デンプン、及び酸化デンプンからなる群から選択される少なくとも1つである請求項3に記載の人工土壌培地。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る人工土壌培地に関する実施形態を
図1〜
図7に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0034】
図1は、複数種の人工土壌粒子50を含む本発明の人工土壌培地100の概念図である。ここでは、複数種の人工土壌粒子50として養分の放出特性の異なる2種の人工土壌粒子で構成された人工土壌培地100を例示してある。人工土壌粒子50は、養分を坦持させるための基部10を備え、基部10の外表部を被覆する被覆層20の有無により養分の放出特性を変えている。基部10に含まれている養分は、外部環境に存在する植物Pの育成に必要な水分(アルカリ水、酸性水等も含む)に溶解したり、植物の根から分泌される根酸に溶解したり、養分として坦持されているリン酸等で溶解したりして、基部10から外部環境に放出される。ここで、「外部環境」とは、人工土壌粒子50の外側の環境を意図する。また、本明細書では、養分が放出される状態を「養分の放出特性」と規定する。
図1に示す人工土壌粒子50が集合した状態の人工土壌培地100においては、人工土壌粒子50の間に形成される空隙Sが外部環境に相当する。人工土壌粒子50は、基部10内に担持されている養分の状態、及び基部10から外部環境への養分の放出特性が制御されることで、栽培対象の植物Pへの養分の供給時期や供給量を調整することができる。以下、人工土壌粒子50について詳細に説明する。
【0035】
〔第一人工土壌粒子〕
図2は、本発明の人工土壌培地100を構成する人工土壌粒子50の概念図であり、異なる2つのタイプの人工土壌粒子50を例示したものである。
図2(a)の人工土壌粒子50は、第一のタイプの人工土壌粒子50であり、基部10は、複数のフィラー1が集合して粒状に構成された多孔質構造を備えている。第一人工土壌粒子50は、基部10内に養分を坦持可能に構成されている。基部10内の養分は、外部環境の水等に溶解したり、水素イオン等とイオン交換することにより、徐々に放出される。あるいは、基部10を崩壊可能に構成し、基部10の崩壊に伴って養分が放出されるように構成してもよい。例えば、植物に供給する水分や、植物の成長に伴って根から分泌する根酸や、基部10に坦持されている養分のリン酸等により基部10を崩壊するように構成したり、人工土壌培地100内に存在する微生物により分解するように構成する。
【0036】
基部10中において、複数のフィラー1は、それらが互いに接触していることは必須ではなく、粒子内でバインダー等を介して一定範囲内の相対的な位置関係を維持していれば、複数のフィラー1が集合して粒状に構成したものと考えることができる。基部10を構成するフィラー1は、表面から内部にかけて多数の細孔2を有する。細孔2は、種々の形態を含む。例えば、フィラー1がゼオライトの場合、当該ゼオライトの結晶構造中に存在する空隙が細孔2であり、フィラー1がハイドロタルサイトの場合、当該ハイドロタルサイトの層構造中に存在する層間が細孔2である。つまり、本発明において「細孔」とは、フィラー1の構造中に存在する空隙部、層間部、空間部等を意図し、これらは「孔状」の形態に限定されるものではない。なお、複数のフィラー1の間には、水分や養分を担持可能なサブμmオーダー乃至サブmmオーダーの連通孔3が形成されている。連通孔3の周囲には細孔2が分散配置されている。
【0037】
フィラー1の細孔2のサイズは、サブnmオーダー乃至サブμmオーダーとなる。例えば、細孔2のサイズは、0.2〜800nm程度に設定可能であるが、フィラー1がゼオライトの場合、当該ゼオライトの結晶構造中に存在する空隙のサイズ(径)は、0.3〜1.3nm程度である。フィラー1がハイドロタルサイトの場合、当該ハイドロタルサイトの層構造中に存在する層間のサイズ(距離)は、0.3〜3.0nm程度である。この他に、フィラー1として有機多孔質材料を使用することもでき、その場合の細孔径は、0.1〜0.8μm程度となる。フィラー1の細孔2のサイズは、測定対象の状態に応じて、ガス吸着法、水銀圧入法、小角X線散乱法、画像処理法等を用いて、又はこれらの方法を組み合わせて、最適な方法により測定される。
【0038】
ところで、天然土壌は、土壌の表面がマイナスイオンに帯電しているため、水に溶解してプラスイオンとなる養分を保持することが可能である(すなわち、保肥性を有する)。しかし、人工土壌は、土壌の表面がマイナスイオンに帯電していないため、それ自体は保肥性を有していない。従って、人工土壌に対して肥料等を添加しても、養分を保持することができずに流失する。そこで、本発明の人工土壌培地100においては、人工土壌粒子50が十分な保肥力を有するように、フィラー1としてイオン交換能が付与された材料を使用することが好ましい。
【0039】
イオン交換能が付与された材料としては、陽イオン交換能が付与された材料、陰イオン交換能が付与された材料、又は両者の混合物を使用することができる。また、イオン交換能を有さない多孔質材料(例えば、高分子発泡体、ガラス発泡体等)を別に用意し、当該多孔質材料の細孔に上記のイオン交換能が付与された材料を圧入や含浸等によって導入し、これをフィラー1として使用することも可能である。陽イオン交換能が付与された材料として、陽イオン交換性鉱物、腐植、及び陽イオン交換樹脂が挙げられる。陰イオン交換能が付与された材料として、陰イオン交換性鉱物、及び陰イオン交換樹脂が挙げられる。
【0040】
陽イオン交換性鉱物は、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト等のスメクタイト系鉱物、雲母系鉱物、バーミキュライト、ゼオライト等が挙げられる。陽イオン交換樹脂は、例えば、弱酸性陽イオン交換樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。これらのうち、ゼオライト、又はベントナイトが好ましい。陽イオン交換性鉱物及び陽イオン交換樹脂は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。陽イオン交換性鉱物及び陽イオン交換樹脂における陽イオン交換容量は、10〜700meq/100gに設定され、好ましくは20〜700meq/100gに設定され、より好ましくは30〜700meq/100gに設定される。陽イオン交換容量が10meq/100g未満の場合、十分に肥料成分を取り込むことができず、取り込まれた肥料成分も灌水等により早期に流失する虞がある。一方、陽イオン交換容量が700meq/100gを超えるように保肥力を過剰に大きくしても、効果は大きく向上せず、経済的ではない。
【0041】
陰イオン交換性鉱物は、例えば、ハイドロタルサイト、マナセアイト、パイロオーライト、シェーグレン石、緑青等の主骨格として複水酸化物を有する天然層状複水酸化物、合成ハイドロタルサイト及びハイドロタルサイト様物質、アロフェン、イモゴライト、カオリン等の粘土鉱物が挙げられる。陰イオン交換樹脂は、例えば、弱塩基性陰イオン交換樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂が挙げられる。これらのうち、ハイドロタルサイトが好ましい。陰イオン交換性鉱物及び陰イオン交換樹脂は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。陰イオン交換性鉱物及び陰イオン交換樹脂における陰イオン交換容量は、5〜500meq/100gに設定され、好ましくは20〜500meq/100gに設定され、より好ましくは30〜500meq/100gに設定される。陰イオン交換容量が5meq/100g未満の場合、十分に肥料成分を取り込むことができず、取り込まれた肥料成分も灌水等により早期に流失する虞がある。一方、陰イオン交換容量が500meq/100gを超えるように保肥力を過剰に大きくしても、効果は大きく向上せず、経済的ではない。
【0042】
フィラー1として、ゼオライトやハイドロタルサイトのような無機天然鉱物を使用する場合、バインダーを用いて粒状化が行われる。例えば、フィラー1にバインダーや溶媒等を加えて混合し、この原料混合物を造粒機に導入し、転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒、圧縮造粒、押出造粒、破砕造粒、溶融造粒、噴霧造粒等の公知の造粒法により、粒子状の基部10を形成する。また、フィラー1にバインダーを加え、さらに必要に応じて溶媒等を加えて混練し、これを乾燥してブロック状にしたものを、乳鉢及び乳棒、ハンマーミル、ロールクラッシャー等の粉砕手段で適宜粉砕して基部10とすることも可能である。基部10は、必要に応じて乾燥及び分級が行われ、人工土壌粒子50とされる。人工土壌粒子50の好ましい粒径は、0.2〜10mmの範囲である。
【0043】
人工土壌粒子50を製造するにあたり、人工土壌粒子50の基部10に肥料成分を導入するために、造粒を行う原料混合物に肥料成分が添加される。また、人工土壌粒子50の基部10に肥料成分を導入する他の方法としては、イオン吸着能を有するフィラー1で人工土壌粒子50を作製後、人工土壌粒子50を肥料成分の溶液に浸漬して、肥料成分を人工土壌粒子50の基部10に保持させることも可能である。つまり、基部10に導入された肥料成分は、複数のフィラー1の間に形成される連通孔3にバインダーの固着力によって保持された状態となったり、イオン吸着能があるフィラー1にイオンとして吸着した状態となる。連通孔3及びフィラー1に保持された肥料成分は、外部環境に存在する水や根酸等によって一部の肥料成分が溶解したり、フィラー1に吸着している肥料成分が溶出したりすることにより、外部環境に放出されて植物に利用される。余剰の肥料成分は、連通孔3の周囲に分散配置された細孔2に保持される。従って、人工土壌粒子50から外部環境への肥料成分の流失は最小限に留まる。人工土壌粒子50の基部10に導入する肥料成分は、三大要素である窒素、リン、カリウムの各成分の他、中量要素であるマグネシウム、カルシウム、硫黄の各成分、微量要素である鉄、銅、亜鉛、マンガン、モリブデン、ホウ素、塩素、ケイ酸の各成分が挙げられる。肥料成分の添加量としては、1重量部のフィラー1に対して、0.01〜10重量部とすることが好ましい。
【0044】
人工土壌粒子50の製造において、フィラー1及び肥料成分にバインダーを混合して造粒を行う際、バインダーの種類及び添加量を適宜設定すると、完成した人工土壌粒子50の崩壊性を制御することができる。例えば、バインダーに水溶性樹脂や酸分解性樹脂を用いることにより、植物に供給する水や、植物の成長に伴って根から分泌される根酸や、人工土壌粒子50に坦持されるリン酸等の養分等により水溶性樹脂や酸分解性樹脂が徐々に溶解、及び分解して人工土壌粒子50を崩壊させることができる。植物の成長に伴って分泌される根酸は、クエン酸を主成分としているため、使用する水溶性樹脂は、クエン酸で分解、及び溶解し易い樹脂を用いることが好ましい。このように構成した人工土壌粒子50は、植物が生成したクエン酸で容易に崩壊するため、肥料成分を植物の成長に合わせて放出することができる。また、生分解性樹脂のバインダーを用いることにより、微生物等の作用により徐々に崩壊させることができる。これらバインダーは、その添加量を増減させることにより、人工土壌粒子50の崩壊性を制御することができる。また、これらバインダーを、基部10の内部補強に使用することで、人工土壌粒子50の崩壊性を細かく制御することもできる。
【0045】
バインダーは、有機バインダー又は無機バインダーの何れも使用可能である。有機バインダーは、例えば、エチルセルロースなどの変性セルロース系バインダー;ポリオレフィン系バインダー、ポリビニルアルコール系バインダー、ポリウレタン系バインダー、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル等の酢酸ビニル系バインダー、ウレタン樹脂、ビニルウレタン樹脂等のウレタン樹脂系バインダー、アクリル樹脂系バインダー、シリコーン樹脂系バインダー等の合成樹脂系バインダー;デンプン、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、アルギン酸等の多糖類、ポリアミノ酸、膠等のたんぱく質等の天然物系バインダーが挙げられる。無機バインダーは、例えば、水ガラス等のケイ酸塩系バインダー、リン酸アルミニウム等のリン酸塩系バインダー、ホウ酸アルミニウム等のホウ酸塩系バインダー、セメント等の水硬性バインダーが挙げられる。有機バインダー及び無機バインダーは、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。
【0046】
基部10を崩壊可能に構成するために使用されるバインダーとしては、水溶性樹脂、生分解性樹脂、及び酸分解性樹脂が挙げられる。生分解性樹脂としては、自然界において、微生物が関与して分解されるものであればよい。生分解性樹脂の例として、バクテリアセルロース等に代表される微生物生産系樹脂;ポリアミノ酸、ポリグルタミン酸、ポリリジン、デンプン、セルロース、キチン・キトサン、カラギーナン、アルギン酸塩、アラビアゴム、ペクチン、ローカストビーンガム、カゼイン、グルテン、コラーゲン、カードラン、プルラン、デキストラン、ゼラチン、リグニン、キサンタンガム、蛋白質、多糖、核酸、タラガム、グアーガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、ヒアルロン酸、ポリヒドロキシアルカノエート、変性デンプン等の天然高分子系樹脂;ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート共重合体等の化学合成系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、一種又は二種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
酸分解性樹脂としては、酸で分解するものであればよく、特に、根酸成分であるクエン酸や、肥料成分であるリン酸で分解するものが好ましい。酸分解性樹脂の例として、アルギン酸塩、カラギーナン、ペクチン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース塩等の天然高分子系樹脂;ポリアミド、アセタール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等の合成高分子系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、一種又は二種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
水溶性樹脂としては、水、酸性水、アルカリ性水に溶解するものであって、各種植物に対して毒性のないものであればよく、上記の生分解性樹脂及び酸分解性樹脂も含まれる。水溶性樹脂の例として、デンプンセルロース、ペクチン、寒天、アルギン酸塩、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウムシードガム、アラビアゴム、トラガントゴム、トロロアオイー、コンニャク、膠、カゼイン、ゼラチン、卵白、プルラン、デキストラン等の天然高分子系樹脂;可溶性デンプン、カルボキシルデンプン、ジアルデヒドデンプン、カチオンデンプン、ポリエーテル、ポリリンゴ酸、デキストリン、ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、変性デンプン、酸化デンプン、ポリ乳酸等の半合成高分子系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、アクリル酸樹脂、酢酸ビニル系樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアミン、ポリN−ビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリエチレンオキサイド、無水マレイン酸、ポリマレン酸共重合体、ポリエチレンイミン、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルアンモニウム、ポリスチレン、ポリスチレンスルホン酸、ポリメタクリル酸、ポリアミン、ポリイミン、ポリベタイン、ポリアミド等の合成高分子系樹脂;ポリリン酸ソーダ等の無機高分子系樹脂等が挙げられるが、好ましくは寒天、アルギン酸塩、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、酢酸ビニル、ポリアルキレンオキサイドである。これらはの樹脂は、一種又は二種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
上記水溶性樹脂であって、酸性水に溶解するものとしては、デンプン、セルロース、ペクチン、ゼラチン、寒天、アルギン酸塩、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウムシードガム、デキストリン、ポリアミド、尿素樹脂、ウレタン樹脂、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリアルキレンオキサイド、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、変性デンプン、酸化デンプン等が好ましく、根酸成分であるクエン酸に溶解するものが特に好ましい。
【0050】
フィラー1が有機多孔質材料である場合、基部10の形成は、バインダーを用いた上述のフィラー1の粒状化法と同様の方法で行ってもよいが、フィラー1を、当該フィラー1を構成する有機多孔質材料(高分子材料等)の融点以上の温度に加熱し、複数のフィラー1の表面同士を熱融着させて粒状化することにより、基部10を形成することも可能である。この場合、バインダーを使用しなくても、複数のフィラー1が集合した粒状物を得ることができる。そのような有機多孔質材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、セルロー
ス等の有機高分子材料を発泡させた有機高分子発泡体、前記有機高分子材料の粉体を加熱溶融して連続気泡構造を形成した有機高分子多孔質体が挙げられる。基部10への肥料成分の導入法については、上記肥料成分の導入方法と同様の方法で行うことができる。
【0051】
基部10の形成に当たっては、高分子ゲル化剤のゲル化反応を利用することもできる。高分子ゲル化剤のゲル化反応として、例えば、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングルコールエステル、ジェランガム、グルコマンナン、ペクチン、又はカルボキシメチルセルロース(CMC)と多価金属イオンとのゲル化反応、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガムなどの多糖類の二重らせん構造化反応によるゲル化反応が挙げられる。このうち、アルギン酸塩と多価金属イオンとのゲル化反応について説明する。例えば、アルギン酸塩の一つであるアルギン酸ナトリウムは、アルギン酸のカルボキシル基がNaイオンと結合した形態の中性塩である。アルギン酸は水に不
溶であるが、アルギン酸ナトリウムは水溶性である。アルギン酸ナトリウム水溶液を多価金属イオン(例えば、Caイオン)の水溶液中に添加すると、アルギン酸ナトリウムの分子間でイオン架橋が起こり、ゲル化が進行する。本実施形態の場合、ゲル化反応は、以下の工程により行うことができる。初めに、アルギン酸塩を水に溶解させてアルギン酸塩水溶液を調製し、アルギン酸塩水溶液にフィラー1を添加し、これを十分攪拌して、アルギン酸塩水溶液中にフィラー1が分散した混合液を形成する。次に、混合液を多価金属イオン水溶液中に滴下し、混合液に含まれるアルギン酸塩を粒状にゲル化させる。その後、ゲル化した粒子を回収して水洗し、十分に乾燥させる。これにより、アルギン酸塩及び多価金属イオンから形成されるアルギン酸塩ゲル化物中にフィラー1が分散した粒状物としての基部10が得られる。肥料成分の導入は、ゲル化反応を行う前に、アルギン酸水溶液に予め肥料成分を混合しておいてもよいし、基部10となるゲル化物を生成後、これを肥料成分の溶液に浸漬して肥料成分を基部10に坦持させてもよい。
【0052】
ゲル化反応に使用可能なアルギン酸塩は、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムが挙げられる。これらのアルギン酸塩は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。アルギン酸塩水溶液の濃度は、0.1〜5重量%とし、好ましくは0.2〜5重量%とし、より好ましくは0.2〜3重量%とする。アルギン酸塩水溶液の濃度が0.1重量%未満の場合、ゲル化反応が起こり難くなり、5重量%を超えると、アルギン酸塩水溶液の粘度が大きくなり過ぎるため、フィラー1を添加した混合液の攪拌や、混合液を多価金属イオン水溶液中に滴下することが困難になる。
【0053】
アルギン酸塩水溶液を滴下する多価金属イオン水溶液は、アルギン酸塩と反応してゲル化が起きる2価以上の金属イオン水溶液であればよい。そのような多価金属イオン水溶液の例として、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化ニッケル、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化コバルト等の多価金属の塩化物水溶液、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸アルミニウム、硝酸鉄、硝酸銅、硝酸コバルト等の多価金属の硝酸塩水溶液、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、乳酸アルミニウム、乳酸亜鉛等の多価金属の乳酸塩水溶液、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸コバルト等の多価金属の硫酸塩水溶液が挙げられる。これらの多価金属イオン水溶液は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。多価金属イオン水溶液の濃度は、1〜20重量%とし、好ましくは2〜15重量%とし、より好ましくは3〜10重量%とする。多価金属イオン水溶液の濃度が1重量%未満の場合、ゲル化反応が起こり難くなり、20重量%を超えると、金属塩の溶解に時間が掛かるとともに、過剰の材料を使用することになるため、経済的でない。
【0054】
アルギン酸塩のゲル化反応により生成した人工土壌粒子50の崩壊性は、例えば、乾燥温度、乾燥方法、アルギン酸塩の濃度、アルギン酸塩の粘度、多価金属イオン水の濃度を調整することにより制御することができる。例えば、人工土壌粒子50の崩壊性を高めるために、人工土壌粒子50の製造条件を以下のように設定する。
(1)粒状物の乾燥温度を110〜150℃に設定する。
(2)粒状物を乾燥させる際に、加熱乾燥に代えて凍結乾燥を使用する。
(3)粒状物を作製する際に、アルギン酸塩の濃度を0.2乃至1.0重量%以下に設定する。
(4)粒状物を作製する際に、アルギン酸塩の粘度を300cps以下に設定する。
(5)粒状物を作製する際に、多価金属イオン水溶液の濃度を4%以下に設定する。
(6)粒状物を作製する際に、フィラー1にマイクロバルーン等の独泡剤を用いて、基部10内に気泡構造を形成させる。
(7)粒状物を低濃度リン酸溶液(例えば、2%溶液)に所定時間浸漬する。
【0055】
〔第二人工土壌粒子〕
図2(b)の人工土壌粒子50は、第二のタイプの人工土壌粒子50であり、基部10と、養分の放出特性が設定された被覆層20とを備えている。第二人工土壌粒子50の基部10は、
図2(a)の第一人工土壌粒子50の基部10と同様の材質及び構造を有する。従って、第二人工土壌粒子50の基部10については、詳細な説明は省略する。
【0056】
基部10の外表部には、被覆層20が形成される。被覆層20は、基部10に坦持される養分の放出を制御するためのものであり、例えば、被覆層20が徐々に分解して、養分を放出するように構成してもよく、被覆層20に養分が通過可能な微細孔を形成し、養分が徐々に放出するように構成してもよく、また、これら構成を組み合わせてもよい。被覆層20は、例えば、以下の方法により、基部10の外表部に形成することができる。先ず、粒状化した基部10を容器に移し、基部10の体積(占有容積)の半分程度の水を加え、基部10に水を浸み込ませる。次に、水を浸み込ませた基部10を、基部10を被覆するための樹脂を溶解させた溶液又は樹脂のコロイド溶液(樹脂溶液)に入れ、所定時間撹拌して、基部10の表面に均一に樹脂を付着させる。樹脂溶液には、顔料、香料、殺菌剤、抗菌剤、消臭剤、殺虫剤等の添加物を混合しておくことも可能である。その後、基部10の外表部に付着した樹脂を溶融させ、基部10の外表部付近のフィラー1に樹脂を融着させて被覆層20を形成する。これにより、基部10の外表部が被覆層20で被覆された第二人工土壌粒子50が完成する。この方法では、基部10に樹脂溶液を含浸させるため、樹脂溶液中の樹脂の種類及び濃度を調整することにより、基部10の外表部に形成される被覆層20の特性を変更することができる。これにより、人工土壌粒子50の養分の放出特性を調整することができる。また、樹脂溶液の濃度、及び樹脂を溶融させる際の加熱温度を調整することで、被覆層20に形成する微細孔の構造を制御することが可能となる。得られた人工土壌粒子50は、必要に応じて、乾燥及び分級が行われ、粒径が調整される。被覆層20の膜厚は、10nm〜1mmに設定され、好ましくは20nm〜500μmに設定され、より好ましくは30nm〜200μmに設定される。
【0057】
被覆層20に使用可能な樹脂としては、基部10に坦持されている養分の外部環境への放出を制御できるものであればよく、好ましくは生分解性樹脂、酸分解性樹脂、及び水溶性樹脂であり、第一人工土壌粒子50に使用したバインダーと同じ生分解性樹脂、酸分解性樹脂、及び水溶性樹脂を用いることができる。例えば、水溶性樹脂として、ポリエチレングリコール、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール等の合成高分子系樹脂を用いる場合、灌水、根酸、及び養分のリン酸等で被覆層20が溶解するように、水溶性樹脂の濃度を調整する。また、水溶性樹脂として、デンプン、アルギン酸塩、ポリ乳酸等の生分解性樹脂を用いる場合、微生物等の作用により被覆層20が徐々に分解するように、水溶性樹脂の組成を調整する。水溶性樹脂で構成された被覆層20を所望の時期に分解させることにより、人工土壌粒子50に坦持されている養分を、栽培対象の植物の必要な時期に必要な量だけ放出させることが可能となる。
【0058】
本発明の人工土壌培地100を構成する複数種の人工土壌粒子50は、養分の放出特性が夫々異なるように設定されている。人工土壌粒子50は、基部10及び被覆層20に異なる分解特性を有する樹脂(上記の水溶性樹脂、生分解性樹脂、及び酸分解性樹脂)を用いることにより、養分の放出特性を夫々異なるように設定することが可能となる。
図2(a)に示す被覆層を有さない第一人工土壌粒子50は、植物の初期生育期間(育苗期〜成長期初期)に養分を放出(初期放出)する。また、
図2(b)に示す被覆層20を備える第二人工土壌粒子50は、例えば、水溶性の高い樹脂(高水溶性樹脂)を用いて被覆層20を形成する場合、被覆層20が植物の成長期初期に分解が始まるため植物の中期生育期間(成長期初期〜成熟期初期)に養分を放出し、水溶性の低い樹脂(低水溶性樹脂)を用いて被覆層20を形成する場合、被覆層20が植物の成長期後期に分解が始まるため植物の後期生育期間(成長期後期〜成熟期)に養分を放出(後期放出)する。養分の放出特性は、人工土壌粒子50の崩壊性と密接に関連する。そこで、人工土壌粒子50の崩壊性について、以下の第1実施形態〜第5実施形態を例示しながら説明する。なお、本明細書では、植物の初期生育期間に崩壊する人工土壌粒子50を易崩壊性とし、植物の後期生育期間に崩壊する人工土壌粒子50を難崩壊性と規定する。
【0059】
〔第1実施形態〕
図3は、本発明に係る実施形態であり、第1実施形態の人工土壌培地100の説明図である。(a)及び(b)は、異なる養分放出特性を有する人工土壌粒子50a、50bにより構成される人工土壌培地100の概略図と、夫々の人工土壌培地100の養分の放出特性をグラフで示したものである。人工土壌粒子50a、50bの各基部10の構成は、
図2(a)に示すものであるため、
図3では省略してある。(c)は、(a)及び(b)の人工土壌粒子50a、50bを混合したときの対象植物の栽培の経過に伴う人工土壌培地100の遷移図と、人工土壌培地100の養分の放出特性をグラフで示したものである。グラフの縦軸は養分の放出量を、横軸は対象とする植物の栽培期間を表している。本実施形態の人工土壌粒子50は、被覆層を有さない第一人工土壌粒子と被覆層20を有する第二人工土壌粒子とを夫々使用し、基部10内に夫々異なるイオン交換能が付与されたフィラー1を使用している。
【0060】
人工土壌粒子50aは、基部10のフィラー1にゼオライト及びハイドロタルサイトを用いてK
+及びNO
3−を坦持させるとともに、水に溶解しない合成樹脂系バインダーを用いて造粒したり、高分子ゲル化剤を用いてゲル化することにより基部10を崩壊しないように構成している。人工土壌粒子50aは、基部10が被覆層で被覆されていないため、
図3(a)のグラフに示すように、基部10内に坦持している養分(K
+及びNO
3−)を、植物の初期生育期間に放出する(初期放出)。人工土壌粒子50aは、植物の初期生育期間に多くの養分を放出するが、基部10が崩壊しないため、残りの養分を植物の成長期後期まで徐々に放出する。また、人工土壌粒子50aのフィラー1には、ゼオライト及びハイドロタルサイトが用いられていることから、外部からカリウムや硝酸態窒素等の養分を添加した場合、イオン交換能を有するフィラー1に養分をイオン吸着させたりして、細孔2に保持することが可能である。天然土壌の場合、陰イオン交換能を有さないため、硝酸態窒素は、通常、灌水などにより流失してしまうが、本実施形態の人工土壌培地100は、硝酸態窒素も保持可能である。
人工土壌粒子50bは、基部10のフィラー1にハイドロタルサイトを用いてPO
43−を坦持させるとともに、水に溶解しない合成樹脂系バインダーを用いて造粒したり、高分子ゲル化剤を用いてゲル化することにより基部10を崩壊しないように構成し、さらに基部10を低水溶性樹脂で被覆して被覆層20を形成している。人工土壌粒子50bは、基部10が低水溶性樹脂で被覆されていることから、被覆層20の分解に時間を要し、
図3(b)のグラフに示すように、植物の成長期後期に被覆層20の分解が始まり、養分(PO
43−)を植物の後期生育期間に外部環境に放出する(後期放出)。人工土壌粒子50bは、被覆膜20が分解しても基部10が崩壊しないため、徐々に養分を放出する。
(c)は、上記人工土壌粒子50を混合した人工土壌培地100を示している。人工土壌粒子50aと、人工土壌粒子50bとを混合したものは、
図3(c)のグラフに示すように、植物の初期生育期間に硝酸態窒素及びカリウムを放出して、植物の成長を促し、植物の後期生育期間にリン酸を放出して、植物の成長を増進させる。なお、人工土壌粒子50aと、人工土壌粒子50bとの混合比率を適切に調整すれば、栽培対象の植物に最適な養分の放出量を調整することができる。従って、栽培対象の植物に応じて適切な養分の供給時期及び養分の供給量が高度に制御された人工土壌培地100を実現することが可能となる。
【0061】
〔第2実施形態〕
図4は、本発明に係る実施形態であり、第2実施形態の人工土壌培地100の説明図である。(a)〜(c)は、異なる養分放出特性を有する人工土壌粒子50c、50d、50eにより構成される人工土壌培地100の概略図と、夫々の人工土壌培地100の養分の放出特性をグラフで示したものである。人工土壌粒子50c、50d、50eの各基部10の構成は、
図2(a)に示すものであるため、
図4では省略してある。(d)は、(a)〜(c)の人工土壌粒子50c、50d、50eを混合したときの対象植物の栽培の経過に伴う人工土壌培地100の遷移図と、人工土壌培地100の養分の放出特性をグラフで示したものである。グラフの縦軸は養分の放出量を、横軸は対象とする植物の栽培期間を表している。本実施形態の人工土壌粒子50は、被覆層を有さない第一人工土壌粒子50のみを使用し、人工土壌粒子50c、50d、50eは、基部10内に夫々異なるイオン交換能が付与されたフィラー1を使用している。
【0062】
人工土壌粒子50cは、基部10のフィラー1にゼオライト及びハイドロタルサイトを用いてK
+及びNO
3−を坦持させるとともに、水に溶解しない合成樹脂系バインダーを用いて造粒したり、高分子ゲル化剤を用いてゲル化することにより基部10を崩壊しないように構成している。人工土壌粒子50cは、基部10が被覆層で被覆されていないため、
図4(a)のグラフに示すように、基部10内に坦持している養分(K
+及びNO
3−)の初期放出を開始する。人工土壌粒子50cは、植物の初期生育期間に多くの養分を放出するが、基部10が崩壊しないため、残りの養分を植物の成長期後期まで徐々に放出する。また、人工土壌粒子50cのフィラー1には、ゼオライト及びハイドロタルサイトが用いられていることから、外部からカリウムや硝酸態窒素等の養分を添加した場合、イオン交換能を有するフィラー1に養分をイオン吸着させたりして、細孔2に保持することが可能である。天然土壌の場合、陰イオン交換能を有さないため、硝酸態窒素は、通常、灌水などにより流失してしまうが、本実施形態の人工土壌培地100は、硝酸態窒素も保持可能である。
人工土壌粒子50dは、基部10のフィラー1にゼオライトを用いてCa
2+を坦持させるとともに、バインダーに高水溶性樹脂を用いて造粒したり、濃度を調整した高分子ゲル化剤を用いてゲル化すること等により基部10を易崩壊性に構成している。人工土壌粒子50dは、
図4(b)のグラフに示すように、基部10が被覆層で被覆されていないため、養分(Ca
2+)の初期放出を開始し、さらに基部10が易崩壊性であるため、植物の成長期初期に人工土壌粒子50dが崩壊して、残りの養分を植物の成長期に外部環境に放出する。
人工土壌粒子50eは、基部10のフィラー1にハイドロタルサイトを用いてPO
43−を坦持させるとともに、バインダーに低水溶性樹脂を用いて造粒したり、濃度を調整した高分子ゲル化剤を用いてゲル化すること等により基部10を難崩壊性に構成している。人工土壌粒子50eは、
図4(c)のグラフに示すように、基部10が被覆層で被覆されていないため、養分(PO
43−)の初期放出を開始し、さらに基部10が難崩壊性であるため、植物の成長期後期に人工土壌粒子50eが崩壊して、残りの養分を植物の成熟期に外部環境に放出する。
(d)は、上記人工土壌粒子50を混合した人工土壌培地100を示している。人工土壌粒子50cと、人工土壌粒子50dと、人工土壌粒子50eとを混合したものは、
図4(d)のグラフに示すように、植物の初期生育期間に硝酸態窒素、カリウム、カルシウム、リン酸を放出して、植物の成長を促す。また、植物の成長期にカルシウムの放出量を増加させ、さらに、植物の成熟期にリン酸の放出量を増加させることにより、植物の成長を増進させる。なお、人工土壌粒子50cと、人工土壌粒子50dと、人工土壌粒子50eとの混合比率を適切に調整すれば、栽培対象の植物に最適な養分の放出量を調整することができる。従って、栽培対象の植物に応じて適切な養分の供給時期及び養分の供給量が高度に制御された人工土壌培地100を実現することが可能となる。また、人工土壌粒子50d及び50eは、水溶性樹脂を混合して造粒したものであるから、植物への灌水量を変更することにより、基部10の崩壊時期を調整することが可能となる。
【0063】
〔第3実施形態〕
図5は、本発明に係る実施形態であり、第3実施形態の人工土壌培地100の説明図である。(a)及び(b)は、異なる養分放出特性を有する人工土壌粒子50f、50gにより構成される人工土壌培地100の概略図と、夫々の人工土壌培地100の養分の放出特性をグラフで示したものである。人工土壌粒子50f、50gの各基部10の構成は、
図2(a)に示すものであるため、
図5では省略してある。(c)は、(a)及び(b)の人工土壌粒子50f、50gを混合したときの対象植物の栽培の経過に伴う人工土壌培地100の遷移図と、人工土壌培地100の養分の放出特性をグラフで示したものである。グラフの縦軸は養分の放出量を、横軸は対象とする植物の栽培期間を表している。本実施形態の人工土壌粒子50は、被覆層20を有する第二人工土壌粒子50のみを使用し、人工土壌粒子50f、50gは、基部10内に夫々異なるイオン交換能が付与されたフィラー1を使用し、夫々異なる性質の水溶性樹脂で被覆されて被覆層20が形成されている。
【0064】
人工土壌粒子50fは、基部10のフィラー1にハイドロタルサイトを用いてNO
3−を坦持させるとともに、水に溶解しない合成樹脂系バインダーを用いて造粒したり、高分子ゲル化剤を用いてゲル化することにより基部10を崩壊しないように構成し、さらに基部10を低水溶性樹脂で被覆して被覆層20を形成している。人工土壌粒子50fは、基部10が低水溶性樹脂で被覆されていることから、被覆層20の分解に時間を要し、
図5(a)のグラフに示すように、植物の成長期後期に被覆層20の分解が始まり、養分(NO
3−)の後期放出が開始する。人工土壌粒子50fは、被覆膜20が分解しても基部10が崩壊しないため、徐々に養分を放出する。また、人工土壌粒子50fのフィラー1には、ハイドロタルサイトが用いられていることから、外部から硝酸態窒素等の養分を添加した場合、イオン交換能を有するフィラー1に養分をイオン吸着させたりして、細孔2に保持することが可能である。
人工土壌粒子50gは、基部10のフィラー1にゼオライトを用いてK
+を坦持させるとともに、水に溶解しない合成樹脂系バインダーを用いて造粒したり、高分子ゲル化剤を用いてゲル化することにより基部10を崩壊しないように構成し、さらに基部10を高水溶性樹脂で被覆して被覆層20を形成している。人工土壌粒子50gは、基部10が高水溶性樹脂で被覆されていることから、被覆層20が灌水や根酸等により容易に分解するため、
図5(b)のグラフに示すように、植物の成長期初期に被覆層20の分解が始まり、養分(K
+)を、植物の中期生育期間に放出する(中期放出)。人工土壌粒子50gは、被覆膜20が分解しても基部10が崩壊しないため、徐々に養分を放出する。また、人工土壌粒子50gのフィラー1には、ゼオライトが用いられていることから、外部からカリウム等の養分を添加した場合、イオン交換能を有するフィラー1に養分をイオン吸着させたりして、細孔2に保持することが可能である。
(c)は、上記人工土壌粒子50を混合した人工土壌培地100を示している。人工土壌粒子50fと、人工土壌粒子50gとを混合したものは、
図5(c)のグラフに示すように、植物の中期生育期間にカリウムを放出し、植物の後期生育期間に硝酸態窒素を放出する。なお、人工土壌粒子50fと、人工土壌粒子50gとの混合比率を適切に調整すれば、栽培対象の植物に最適な養分の放出量を調整することができる。従って、栽培対象の植物に応じて適切な養分の供給時期及び養分の供給量が高度に制御された人工土壌培地100を実現することが可能となる。本実施形態では、被覆層20の分解速度を変えることにより、人工土壌粒子50の養分の放出特性を調整しているが、被覆層20に養分が通過可能な微細孔を形成し、この微細孔のサイズ及び孔数を設定により、養分の放出特性を調整してもよい。
【0065】
〔第4実施形態〕
図6は、本発明に係る実施形態であり、第4実施形態の人工土壌培地100の説明図である。(a)及び(b)は、異なる養分放出特性を有する人工土壌粒子50h、50iにより構成される人工土壌培地100の概略図と、夫々の人工土壌培地100の養分の放出特性をグラフで示したものである。人工土壌粒子50h、50iの各基部10の構成は、
図2(a)に示すものであるため、
図6では省略してある。(c)は、(a)及び(b)の人工土壌粒子50h、50iを混合したときの対象植物の栽培の経過に伴う人工土壌培地100の遷移図と、人工土壌培地100の養分の放出特性をグラフで示したものである。グラフの縦軸は養分の放出量を、横軸は対象とする植物の栽培期間を表している。本実施形態では、人工土壌粒子50h及び人工土壌粒子50iは、被覆層20を有する第二人工土壌粒子と被覆層を有さない第一人工土壌粒子とを夫々使用し、基部10内に夫々異なるイオン交換能が付与されたフィラー1を使用している。
【0066】
人工土壌粒子50hは、基部10のフィラー1にゼオライト及びハイドロタルサイトを用いてK
+及びNO
3−を坦持させるとともに、水に溶解しない合成樹脂系バインダーを用いて造粒したり、高分子ゲル化剤を用いてゲル化することにより基部10を崩壊しないように構成し、さらに基部10を高水溶性樹脂で被覆して被覆層20を形成している。人工土壌粒子50hは、基部10が高水溶性樹脂で被覆されていることから、被覆層20が灌水や根酸等により容易に分解するため、
図6(a)のグラフに示すように、植物の成長期初期に被覆層20の分解が始まり、養分(K
+及びNO
3−)の中期放出が開始する。人工土壌粒子50hは、被覆膜20が分解しても基部10が崩壊しないため、徐々に養分を放出する。また、人工土壌粒子50hのフィラー1には、ゼオライト及びハイドロタルサイトが用いられていることから、外部からカリウムや硝酸態窒素等の養分を添加した場合、イオン交換能を有するフィラー1に養分をイオン吸着させたりして、細孔2に保持することが可能である。
人工土壌粒子50iは、基部10のフィラー1にハイドロタルサイトを用いてPO
43−を坦持させるとともに、バインダーに低水溶性樹脂を用いて造粒したり、濃度を調整した高分子ゲル化剤を用いてゲル化すること等により基部10を難崩壊性に構成している。人工土壌粒子50iは、
図6(b)のグラフに示すように、基部10が被覆層で被覆されていないため、養分(PO
43−)の初期放出を開始し、さらに基部10が難崩壊性であるため、植物の成長期後期に人工土壌粒子50iが崩壊して、残りの養分を植物の成熟期に外部環境に放出する。
(c)は、上記人工土壌粒子50を混合した人工土壌培地100を示している。人工土壌粒子50hと、人工土壌粒子50iとを混合したものは、
図6(c)のグラフに示すように、植物の初期生育期間にリン酸を放出して、植物の成長を促す。さらに、植物の中期生育期間に硝酸態窒素及びカリウムの放出を開始するとともに、植物の成熟期にリン酸の放出量を増加させて、植物の成長を増進させる。なお、人工土壌粒子50hと、人工土壌粒子50iとの混合比率を適切に調整すれば、栽培対象の植物に最適な養分の放出量を調整することができる。従って、栽培対象の植物に応じて適切な養分の供給時期及び養分の供給量が高度に制御された人工土壌培地100を実現することが可能となる。
【0067】
〔第5実施形態〕
図7は、本発明に係る実施形態であり、第5実施形態の人工土壌培地100の説明図である。(a)及び(b)は、異なる養分放出特性を有する人工土壌粒子50j、50kにより構成される人工土壌培地100の概略図と、夫々の人工土壌培地100の養分の放出特性をグラフで示したものである。人工土壌粒子50j、50kの各基部10の構成は、
図2(a)に示すものであるため、
図7では省略してある。(c)は、(a)及び(b)の人工土壌粒子50j、50kを混合したときの対象植物の栽培の経過に伴う人工土壌培地100の遷移図と、人工土壌培地100の養分の放出特性をグラフで示したものである。グラフの縦軸は養分の放出量を、横軸は対象とする植物の栽培期間を表している。本実施形態の人工土壌粒子50は、被覆層20を有する第二人工土壌粒子50のみを使用し、人工土壌粒子50j、50kは、基部10内にイオン交換能が付与されていないフィラー1を使用し、夫々異なる性質の水溶性樹脂で被覆されて被覆層20が形成されている。
【0068】
人工土壌粒子50jは、基部10のフィラー1にカオリンクレーを用いてKNO
3の養分を保持させるとともに、バインダーに低水溶性樹脂を用いて造粒したり、濃度を調整した高分子ゲル化剤を用いてゲル化すること等により基部10を難崩壊性に構成し、さらに基部10を高水溶性樹脂で被覆して被覆層20を形成している。人工土壌粒子50jは、基部10が高水溶性樹脂で被覆されていることから、被覆層20が灌水や根酸等により容易に分解するため、
図7(a)のグラフに示すように、植物の成長期初期に被覆層20の分解が始まり、養分(K
+、NO
3−)の中期放出を開始し、さらに基部10が難崩壊性であるため、植物の成長期後期に人工土壌粒子50jが崩壊して、残りの養分を植物の成熟期に外部環境に放出する。
人工土壌粒子50kは、基部10のフィラー1にカオリンクレーを用いて(NH
4)
3PO
4の養分を保持させるとともに、水に溶解しない合成樹脂系バインダーを用いて造粒したり、高分子ゲル化剤を用いてゲル化することにより基部10を崩壊しないように構成し、さらに基部10を低水溶性樹脂で被覆して被覆層20を形成している。人工土壌粒子50kは、基部10が低水溶性樹脂で被覆されていることから、被覆層20の分解に時間を要し、
図7(b)のグラフに示すように、植物の成長期後期に被覆層20の分解が始まり、養分(NH
4+、PO
43−)の後期放出が開始する。人工土壌粒子50kは、被覆
層20が分解しても基部10が崩壊しないため、徐々に養分を放出する。人工土壌粒子50j及び人工土壌粒子50kは、フィラー1にイオン交換能を有していないカオリンクレーを用いているため、
図7(b)のグラフに示すように、イオン交換能を有するフィラー1を用いた場合と比較すると、養分の放出速度が速くなる。
(c)は、上記人工土壌粒子50を混合した人工土壌培地100を示している。人工土壌粒子50jと、人工土壌粒子50kとを混合したものは、
図7(c)のグラフに示すように、植物の中期生育期間に硝酸態窒素及びカリウムを放出して植物の生長を促し、植物の後期生育期間にアンモニア態窒素及びリン酸を放出して、植物の成長を増進させる。なお、人工土壌粒子50jと、人工土壌粒子50kとの混合比率を適切に調整すれば、栽培対象の植物に最適な養分の放出量を調整することができる。従って、栽培対象の植物に応じて適切な養分の供給時期及び養分の供給量が高度に制御された人工土壌培地100を実現することが可能となる。本実施形態の人工土壌粒子50は、フィラー1にイオン交換能を付与した材料を使用していないため、被覆層20が分解した後、養分の放出量を一度に増加させて、その放出期間を短く設定することが可能である。
【実施例】
【0069】
本発明の人工土壌培地について、異なる養分放出特性を有する複数の人工土壌粒子で構成された人工土壌培地を評価する試験を実施した。試験結果を以下に説明する。
【0070】
<人工土壌粒子の作製>
(1)粒状物(人工土壌粒子の基部)の作製(実施例1〜13、比較例)
下記の表1〜3に記載される配合(重量部)に従って、フィラーとしての陽イオン交換性鉱物であるゼオライト、陰イオン交換性鉱物であるハイドロタルサイト、又は非イオン交換性鉱物であるカオリンクレーをアルギン酸ナトリウム0.5%水溶液に添加し、ミキサー(SM−L57:三洋電機株式会社製)を用いて3分間撹拌し、混合液を作製した。得られた混合液を、多価金属イオン水溶液である5%塩化カルシウム水溶液に滴下してゲル化物を生成した。生成したゲル化物を溶液から回収し、洗浄した後、55℃の乾燥機中で24時間乾燥させて、実施例1〜13の粒状物(人工土壌粒子の基部)、及び比較例の人工土壌粒子を作製した。このうち、実施例12は、上記ゲル化物を洗浄後、150℃の乾燥機中で24時間乾燥させたものをそのまま人工土壌粒子とした。実施例13は、上記ゲル化物を洗浄後、凍結乾燥にて乾燥させたものをそのまま人工土壌粒子とした。実施例12及び実施例13は乾燥方法が異なるものであるが、夫々の乾燥を行うことにより、人工土壌粒子の基部は易崩壊性となった。養分の人工土壌粒子への導入は、フィラーに陽イオン交換性鉱物のゼオライト又は陰イオン交換性鉱物のハイドロタルサイトを用いる場合、人工土壌粒子を夫々の肥料成分の溶液に浸漬して、肥料成分をフィラーに坦持させた。フィラーに非イオン交換性鉱物であるカオリンクレーを用いる場合は、肥料成分をアルギン酸ナトリウム水溶液に添加して人工土壌粒子を作製し、人工土壌粒子内に保持させた。
【0071】
(2)被覆層の形成(実施例1〜11)
表1〜3に記載される配合(重量部)に従って、粒状物の外表部に被覆層を形成した。以下に、各実施例における被覆層の形成方法を説明する。
実施例1:被覆層を形成するための樹脂としてポリアルキレンオキサイド(住友精化株式会社製 アクアコーク(登録商標))の20%エタノール溶解液に粒状物を常温で1時間含浸させた後、80℃で24時間乾燥させてポリアルキレンオキサイドで被覆した人工土壌粒子(養分:PO
43−)を作製した。
実施例2:被覆層を形成するための樹脂としてポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、分子量:2000)の20%水溶液に粒状物を常温で1時間含浸させた後、80℃で24時間乾燥させてポリエチレングリコールで被覆した人工土壌粒子(養分:PO
43−)を作製した。
実施例3:被覆層を形成するための樹脂としてポリビニルアルコール(電気化学工業株式会社製 デンカポバール(登録商標)K−05)の40%水溶液に粒状物を常温で1時間含浸させた後、80℃で24時間乾燥させてポリビニルアルコールで被覆した人工土壌粒子(養分:PO
43−)を作製した。
実施例4:被覆層を形成するための樹脂として酢酸ビニル(河口株式会社製 布用手芸ボンド)の20%エマルジョン水溶液に粒状物を常温で1時間含浸させた後、80℃で24時間乾燥させて酢酸ビニルで被覆した人工土壌粒子(養分:PO
43−)を作製した。
実施例5:被覆層を形成するための樹脂として寒天(和光純薬工業株式会社製)の80℃、1%溶解液に粒状物を常温で1時間含浸させた後、80℃で24時間乾燥させて寒天で被覆した人工土壌粒子(養分:PO
43−)を作製した。
実施例6:被覆層を形成するための樹脂としてアルギン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)の1%水溶液に粒状物を常温で1時間含浸させた後、5%塩化カルシウム水溶液に浸漬してゲル化させ、55℃で24時間乾燥させてアルギン酸で被覆した人工土壌粒子(養分:PO
43−)を作製した。
実施例7:被覆層を形成するための樹脂として高グルロン酸アルギン酸(株式会社キミカ社製 キミカアルギンI−3G)の2%水溶液に粒状物を常温で1時間含浸させた後、5%塩化カルシウム水溶液に浸漬してゲル化させ、55℃で24時間乾燥させて高グルロン酸アルギン酸で被覆した人工土壌粒子(養分:PO
43−)を作製した。
実施例8:(1)被覆層を形成するための樹脂としてポリエチレングリコールの20%水溶液に粒状物を常温で1時間含浸させた後、80℃で24時間乾燥させてポリエチレングリコールで被覆した人工土壌粒子(養分:Ca
2+)を作製した。(2)被覆層を形成するための樹脂としてポリビニルアルコールの40%水溶液に粒状物を常温で1時間含浸させた後、80℃で24時間乾燥させてポリビニルアルコールで被覆した人工土壌粒子(養分:PO
43−)を作製した。
実施例9:(1)被覆層を形成するための樹脂としてポリエチレングリコールの20%水溶液に粒状物を常温で1時間含浸させた後、80℃で24時間乾燥させてポリエチレングリコールで被覆した人工土壌粒子(養分:K
+)を作製した。(2)被覆層を形成するための樹脂としてポリビニルアルコールの40%水溶液に粒状物を常温で1時間含浸させた後、80℃で24時間乾燥させてポリビニルアルコールで被覆した人工土壌粒子(養分:NO
3−)を作製した。
実施例10:(1)被覆層を形成するための樹脂としてポリエチレングリコールの20%水溶液に粒状物を常温で1時間含浸させた後、80℃で24時間乾燥させてポリエチレングリコールで被覆した人工土壌粒子(養分:K
+)を作製した。(2)被覆層を形成するための樹脂としてポリエチレングリコールの20%水溶液に粒状物を常温で1時間含浸させた後、80℃で24時間乾燥させてポリエチレングリコールで被覆した人工土壌粒子(養分:NO
3−)を作製した。(3)被覆層を形成するための樹脂としてポリビニルアルコールの40%水溶液に粒状物を常温で1時間含浸させた後、80℃で24時間乾燥させてポリビニルアルコールで被覆した人工土壌粒子(養分:PO
43−)を作製した。
実施例11:(1)被覆層を形成するための樹脂としてポリエチレングリコールの20%水溶液に粒状物を常温で1時間含浸させた後、80℃で24時間乾燥させてポリエチレングリコールで被覆した人工土壌粒子(養分:K
+、NO
3−)を作製した。(2)被覆層を形成するための樹脂としてポリビニルアルコールの40%水溶液に粒状物を常温で1時間含浸させた後、80℃で24時間乾燥させてポリビニルアルコールで被覆した人工土壌粒子(養分:NH
4+、PO
43−)を作製した。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
表1〜3の実施例1〜13及び比較例の結果を以下に示す。
(1)実施例1、実施例3、及び実施例4
硝酸態窒素及びカリウムを坦持させた人工土壌粒子は被覆層を有さないため、植物の初期生育期間に硝酸態窒素及びカリウムを放出した。また、リン酸を坦持させた人工土壌粒子は低水溶性樹脂で被覆されているため、水分により植物の成長期後期に被覆層が分解し、植物の後期生育期間にリン酸を放出した。
(2)実施例2
硝酸態窒素及びカリウムを坦持させた人工土壌粒子は被覆層を有さないため、植物の初期生育期間に硝酸態窒素及びカリウムを放出した。また、リン酸を坦持されている人工土壌粒子は高水溶性樹脂で被覆されているため、水分により植物の成長期初期に被覆層が分解し、植物の中期生育期間にリン酸を放出した。
(3)実施例5
硝酸態窒素及びカリウムを坦持させた人工土壌粒子は被覆層を有さないため、植物の初期生育期間に硝酸態窒素及びカリウムを放出した。また、リン酸を坦持されている人工土壌粒子は生分解性樹脂で被覆されているため、微生物により植物の成長期初期に被覆層が分解し、植物の中期生育期間にリン酸を放出した。
(4)実施例6
硝酸態窒素及びカリウムを坦持させた人工土壌粒子は被覆層を有さないため、植物の初期生育期間に硝酸態窒素及びカリウムを放出した。また、リン酸を坦持させた人工土壌粒子は酸分解性樹脂(リン酸分解性樹脂)で被覆されているため、担持しているリン酸により植物の成長期初期に被覆層が分解し、植物の中期生育期間にリン酸を放出した。
(5)実施例7
硝酸態窒素及びカリウムを坦持させた人工土壌粒子は被覆層を有さないため、植物の初期生育期間に硝酸態窒素及びカリウムを放出した。また、リン酸を坦持させた人工土壌粒子は被覆層の高グルロン酸アルギン酸がリン酸溶解特性を有しているため、坦持しているリン酸により植物の成長期初期に被覆層が分解し、植物の中期生育期間にリン酸を放出した。
(6)実施例8
硝酸態窒素及びカリウムを坦持した人工土壌粒子は被覆層を有さないため、植物の初期生育期間に硝酸態窒素及びカリウムを放出した。カルシウムを坦持させた人工土壌粒子は高水溶性樹脂で被覆されているため、水分により植物の成長期初期に被覆層が分解し、植物の中期生育期間にカルシウムを放出した。さらにリン酸を坦持させた人工土壌粒子は低水溶性樹脂で被覆されているため、水分により植物の成長期後期に被覆層が分解し、植物の後期生育期間にリン酸を放出した。
(7)実施例9
カリウムを坦持させた人工土壌粒子は高水溶性樹脂で被覆されているため、水分により植物の成長期初期に被覆層が分解し、植物の中期生育期間にカリウムを放出した。また、硝酸態窒素を坦持させた人工土壌粒子は低水溶性樹脂で被覆されているため、水分により植物の成長期後期に被覆層が分解し、植物の後期生育期間に硝酸態窒素を放出した。
(8)実施例10
硝酸態窒素及びカリウムを坦持した人工土壌粒子は高水溶性樹脂で被覆されているため、水分により植物の成長期初期に被覆層が分解し、植物の中期生育期間に硝酸態窒素及びカリウムを放出した。リン酸を坦持させた人工土壌粒子は低水溶性樹脂で被覆されているため、水分により植物の成長期後期に被覆層が分解し、植物の後期生育期間にリン酸を放出した。
(9)実施例11
硝酸態窒素及びカリウムを坦持した人工土壌粒子は高水溶性樹脂で被覆されているため、水分により植物の成長期初期に被覆層が分解し、植物の中期生育期間に硝酸態窒素及びカリウムを放出した。アンモニア態窒素及びリン酸を坦持させた人工土壌粒子は低水溶性樹脂で被覆されているため、水分により植物の成長期後期に被覆層が分解し、植物の後期生育期間にアンモニア態窒素及びリン酸を放出した。実施例11は、フィラーに非イオン交換性鉱物であるカオリンクレーを使用しているため、他の実施例と比較して、養分の放出速度は、若干速くなった。
(10)実施例12
硝酸態窒素及びカリウムを坦持させた人工土壌粒子は被覆層を有さないため、植物の初期生育期間に硝酸態窒素及びカリウムを放出した。また、リン酸を坦持させた人工土壌粒子は、被覆層を有さず、さらに基部が易崩壊性に構成されているため、植物の初期生育期間にリン酸の放出を開始し、植物の中期生育期間に放出が終了した。
(11)実施例13
硝酸態窒素及びカリウムを坦持させた人工土壌粒子は被覆層を有さないため、植物の初期生育期間に硝酸態窒素及びカリウムを放出した。また、リン酸を坦持させた人工土壌粒子は、被覆層を有さず、さらに基部が易崩壊性に構成されているため、植物の中期生育期間にリン酸の放出を開始し、植物の中期生育期間に放出が終了した。
(12)比較例
硝酸態窒素、カリウム及びリン酸を坦持させた人工土壌粒子は被覆層を有さないため、植物の初期生育期間に硝酸態窒素、カリウム及びリン酸を放出した。つまり、比較例では全ての養分を同じ時期に放出した。
【0076】
上記結果から、本発明の人工土壌培地は、栽培対象の植物の成長段階に合わせて適切な種類の養分を、適切な量だけ供給することができることが明らかとなった。