【実施例】
【0015】
図1に示す
本発明の製造方法による練習球1は、
図2に示す球体1Aを作成する工程、
図3に示す孔2A又は穴2Bを形成する工程、
図4に示す芯部材3を挿入する工程、
図5に示す蓋部材4を設ける工程、を有する。図示では各工程の代表的な手法を示しているが、各工程における作業手法はこれに限らない。
【0016】
図2において、球体1Aとして採用する熱可塑性樹脂は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、等が選択でき、これらを用途に応じて調整して発泡成形して得るが、特に野球の練習用として好適な材料は、ポリエチレンである。
【0017】
野球の練習用としてポリエチレンが好適な理由は、バットで打った瞬間には変形するが、即座に復元してなおかついわゆる打感(バットで打ったときの感触)が公式球に近いため、また、繰り返し何度もバットで打っても、変形が確実に復元するという特性もあるからである。さらに、ポリエチレンは、人や物に当たっても跳ね返り過ぎず、適度に衝撃を吸収して怪我や損傷を抑制できるからである。
【0018】
野球の練習用としてポリスチレン(いわゆる発泡スチロール)はやや適していない。この理由は、バットで打った瞬間の変形が復元しにくく、繰り返し何度もバットで打つと変形したままになってしまうからである。さらに、ポリスチレンは、人や物に当たったときに跳ね返りが大きく、また、衝撃を吸収性を欠くため、怪我や損傷する可能性がある。しかし、野球の練習球としない場合は採用して問題はない。
【0019】
また、球体の材料を限定してもしなくても、例えば硬式野球の練習用とする場合は公式球の反発係数0.4034〜0.434となるように、一方、軟式野球の練習用とする場合は公式球(A,B,C,D,H)の反発係数50〜105、となるように球体1Aの発泡率や材料配合を調節する。
【0020】
また、本発明の方法における中実の球体1Aとは、例えば硬式野球の公式球とほぼ同じく円周を22.9〜23.5cm(直径7.29〜7.48cm)となる金型を用い、軟式野球の公式球(A,B,C,D,H)に対応させる場合は、直径6.4〜7.25cmとなる金型を用いる。
【0021】
この金型には、例えば硬式野球の練習用とするならば、108個の縫い目を高さ1〜2mm程度の高さとなるように金型内面に窪みを形成しておく。また、球体には、例えば、文字や図柄、表面の一部に色などを付すようにすれば、回転が把握でき、練習に有用となる。
【0022】
さらに、本発明の方法において、練習球1全体の重さは、例えば硬式野球の練習用とする場合は、後述の芯部材3を含めた状態で5〜60gとなる重さとなるように、芯部材3と球体1Aを構成する熱可塑性樹脂の重量とを調整する。
【0023】
練習球1全体の重さが、5gより軽いと、例えば野球の練習用とする場合は、軽すぎて投げたときに空気抵抗を受けて真っ直ぐな軌道とならず、60gより重いと、同じく野球の練習用とする場合は、重すぎてバットで打ったときに飛距離が長くなり狭い屋外練習場に向いていないと共に、人や物に当たると怪我や損傷を与える可能性がある。
【0024】
さらに、本発明の方法では、
図3に示す、球体1Aに貫通状の孔2A又は窪み状の穴2Bを形成する前、又はその後に、球体1Aにニスなどの仕上げ剤を塗布すれば、例えば土などが用いられている屋内練習場で使用しても球体が削れたり傷ついたりすることがなく、長期に亘って使用することができる。
【0025】
球体1Aに塗布する仕上げ剤としては、ニス等を使用してもよいが、例えば過度に硬くなるとか、べたつく等のように、球体1Aを構成する熱可塑性樹脂の性状や特性が大きく変化しないものを採用すればよく、エポキシ樹脂が好ましい。
【0026】
図3において、本発明は、以上の条件を満たす球体1Aに対し、貫通状の孔2A又は窪み状の穴2Bを形成する。まず、
図3(a)のように、球体を貫通する孔2Aを形成する場合、球体1Aの内部中心を通り、例えば上下、左右、前後、の位置で表面上は、合計6箇所形成するとよい。
【0027】
一方、
図3(b)のように、球体1Aの表面を窪ませた穴2Bを形成する場合も、例えば上下、左右、前後の直径対向位置に所定深さで合計6箇所形成するとよい。このように、球体の中心を通る(物理的にも仮想的にも)X,Y,Z軸線に孔2A又は穴2Bを形成することで、後述する芯部材3を挿入した際に、偏芯が抑制される。
【0028】
また、孔2A又は穴2Bの折衷形状としては、
図3(c)のように、球体1A表面のどこか一箇所から中心まで極細い孔を形成し、中心部に穴2Cを形成して挿入時に流動性の芯部材3を挿入するようにしてもよい。本発明の方法では、かならずしも球体1Aの内部中心に芯部材3が存在する必要はなく、偏芯しないように重量を加えることができればよい。
【0029】
また、孔2A又は穴2Bの詳細としては、後述の芯部材3の挿脱が自在となる構成(
図4参照)とすることで、一旦は芯部材3を挿入して任意の重さとした後に、屋内練習場の広さなどに応じて、重さの異なる芯部材3を差し替えることができる。
【0030】
この場合、孔2A又は穴2Bから、球体の使用時の回転などにより芯部材3が抜けないようにすることが必須となり、例えば芯部材3の外周面と孔2A又は穴2Bの内周壁に互いに螺合するネジを形成しておくことが考えられる。
【0031】
また、後述する蓋部材4でもって強固に芯部材3を封入する構成でもよく、あるいは、芯部材3を治具を用いなければ取り出し又は挿入ができない程度の圧力で挿入する径に設計しておくことが考えられる。
【0032】
図4において、本発明の方法では、芯部材3は、球体1Aの材料比重より重い材料により構成され、屋内練習場の広さに応じて重さを変更する練習球とする場合は、
図4(a)に示すように別体で予め作成しておき、一方、任意の重さで固定的な練習球とする場合は
図4(b)に示すように孔2A又は穴2Bに挿入時には流動性を有し、時間経過後に固化する材料を挿入する。
【0033】
図4(a)のように、屋内練習場の広さに応じて重さを変更できる芯部材3は、予め固形化されたもので構わないが、この場合は孔2Aや穴2Bに対して挿脱可能であることが条件とされる。すなわち、例えば孔2Aや穴2Bの内周面に(雌)螺子が形成されているとすれば、芯部材3は、例えば5g単位の重さの適当な大きさの固形体として、その外周に(雄)螺子を形成しておけばよい。
【0034】
一方、
図4(b)のように、挿入時に適度な流動性を有し、時間経過後に固化する芯部材3としては、例えば、酢酸エマルジョン重合分子を主材料とするいわゆる木工ボンド単体、又はこれに砂や砂鉄などを混ぜて作成した混合剤、(紙、油性)粘土、あるいは、水を含んで膨張した後に固化する材料を用いればよい。
【0035】
また、芯部材3は、孔2A又は穴2Bが螺子状ではないが挿脱可能とする場合は、例えば孔2A又は穴2Bの内径よりも僅かに大きい径としておき、球体1Aの孔2A又は穴2Bの内周を拡径するように弾性変性させつつ挿入するもの(取り替え時には治具を用いる)としてもよい。
【0036】
なお、芯部材3が孔2A又は穴2Bに対して挿脱可能な構成については、球体1Aの回転や、球体1Aに与えられた衝撃により芯部材3が不用意に飛び出してしまわないこと、重心が偏らないこと、及び球体1A表面から突出しないこと、の条件を満たすならば、限定しない。
【0037】
図5において、本発明の
製造方法による練習球1は、芯部材3を挿入する孔2Aや穴2Bに対して、球体1Aの表層部を蓋部材4によって面一状に塞ぐ工程を有する点も大きな特徴であり、この蓋部材4は、球体1Aと同材料で球体1Aとは別の部材により該球体1A表層部の孔2A又は穴2Bを面一状に塞ぐようにしてもよいし、
図4(a)のように芯部材3によって球体1A表層部をの孔2A又は穴2Bを面一状に塞ぐようにしてもよい。
【0038】
蓋部材4を球体1A及び芯部材3と別体とする場合は、球体1Aと同材料とすることで、表面上の指ざわりの違和感を感じることがなく、例えば野球の練習用とした場合には、投球時に投手の指に違和感が生じにくく、また、回転の偏芯の要因となることを回避できる。
【0039】
球体1Aと同材料とした場合の蓋部材4は、例えば孔2A又は穴2Bを形成した後の部位を採用することで無駄がなく、確実に球体1Aの表層部を面一化することでできる。
【0040】
一方、芯部材3が蓋部材4を兼ねて孔2Aや穴2Bを塞ぐようにする場合は、孔2Aや穴2Bの径や深さと、挿入する芯部材3の重さを計算して、(目的とする重さとなる)芯部材3を挿入したときに該芯部材3が球体1A表層部まで到達してかつ球体1Aの表層部と面一状となるように均すようにすればよい。
【0041】
以上のように
、本発明の方法により製造され
た練習球1は、製造段階で、パーツとしてストックした、球体1A、芯部材3(及び蓋部材4)を、練習球全体の大きさ、重さ、硬さ、のオーダーに応じて組み立てればよく、従来のように、完成品の多数の種類を予め製造して在庫とする必要がないので、無駄がない。
【0042】
また、本発明の
方法により製造された練習球1は、屋内練習場の狭い広いといった規模や、使用者のオーダーにきめ細かくかつ柔軟に対応できるので、多種のスポーツ競技の練習球としても幅広く採用できる。
【0043】
さらに、本発明の
方法により製造された練習球1は、練習用としながらも、球体1Aの材質や、芯部材3の重さ、を正しく選択することで、屋内練習場においても、公式球と同様の感触で練習することができ、より実践的な練習を行うことが可能となる。