(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記次の記録対象の被記録材と、前記次の記録対象の被記録材よりも先に前記画像が記録された前記被記録材との前記第2方向における幅の差に応じて、前記記録ヘッドが部分的にメンテナンスされるように前記メンテナンス機構の動作を制御する、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示している。また、以下の各実施形態で示す材質や形状、寸法等は、一例であって特に限定されるものではない。
【0015】
[第1実施形態]
まず
図1を参照して、本実施形態に係るインクジェット記録装置1の構成を説明する。
図1は、インクジェット記録装置1の構成を示す図である。詳しくは、
図1は、用紙P(被記録材の一例)への画像の記録時におけるインクジェット記録装置1を示している。インクジェット記録装置1はインク滴を吐出して、用紙Pに画像を記録する。
【0016】
インクジェット記録装置1は、装置筐体100と、給紙部2と、用紙搬送路3と、第1搬送部4と、記録部5と、第2搬送部6と、用紙排出部7と、ワイピングユニット8と、制御部9と、第1搬送ガイド101と、第2搬送ガイド102とを備える。
【0017】
給紙部2は、用紙Pを用紙搬送路3へ給紙する。給紙部2は、装置筐体100に着脱自在の給紙カセット21と、給紙ローラー22とを備える。給紙ローラー22は給紙カセット21の一端側(
図1では右側端)の上方に配置される。
【0018】
給紙カセット21は、複数枚の用紙Pを収納可能である。給紙ローラー22(ピックアップローラー)は、用紙Pを給紙カセット21から1枚ずつ取り出し、用紙搬送路3へ向けて送る。
【0019】
用紙搬送路3は、用紙Pを第1搬送部4へ案内する。用紙搬送路3は、ガイド板31によって構成される。用紙搬送路3は、第1搬送ローラー対32と、第2搬送ローラー対33と、レジストローラー対34とを備える。第1搬送ローラー対32は、用紙搬送路3の入口側に設けられる。第2搬送ローラー対33は、用紙搬送路3の途中に設けられる。レジストローラー対34は、用紙搬送路3の出口側に設けられる。
【0020】
第1搬送ローラー対32は、給紙部2から給紙される用紙Pを挟んで第2搬送ローラー対33へ向けて送出する。第2搬送ローラー対33は、第1搬送ローラー対32が送出した用紙Pを挟んでレジストローラー対34へ向けて送出する。
【0021】
レジストローラー対34は、第2搬送ローラー対33が送出した用紙Pの斜行補正を行う。また、レジストローラー対34は、用紙Pへの画像の記録タイミングと、第1搬送部4への用紙Pの搬送タイミングとを同期させるために、用紙Pを一時的に停止させた後、用紙Pを画像記録タイミングに合わせて第1搬送部4へ向けて送出する。具体的には、用紙Pがレジストローラー対34に当接して停止する。この当接により、用紙Pの斜行補正が行われる。その後、レジストローラー対34が、用紙Pを画像記録タイミングに合わせて第1搬送部4へ向けて送出する。
【0022】
第1搬送部4は、用紙Pへの画像の記録時に、記録部5の直下に位置する。第1搬送部4は、レジストローラー対34から送出された用紙Pを、第1搬送ガイド101へ向けて搬送する。
【0023】
第1搬送部4は、第1搬送ベルト410を備える。第1搬送ベルト410は無端ベルトである。レジストローラー対34が送出した用紙Pは、第1搬送ベルト410上に導かれる。第1搬送部4は、用紙Pを第1搬送ベルト410に吸着させる。これにより、第1搬送ベルト410が用紙Pを保持する。また、第1搬送部4は、第1搬送ベルト410を所定の回転方向(
図1では反時計回り方向)に回転させる。第1搬送ベルト410が回転することにより、用紙Pが矢印X1で示す方向(副走査方向)へ搬送される。したがって、第1搬送部4は、用紙Pを所定の方向X1(第1方向の一例)に搬送する。以下、第1搬送部4(第1搬送ベルト410)によって用紙Pが搬送される方向を、用紙搬送方向X1と記載する。
【0024】
記録部5は、第1搬送部4が搬送している用紙Pへ向けてインク滴を吐出して、用紙Pに画像を記録する。記録部5は、ラインヘッド51Bk、51C、51M、51Yと、ヘッドベース52とを備える。ラインヘッド51Bkはブラック色のインク滴を吐出する。ラインヘッド51Cはシアン色のインク滴を吐出する。ラインヘッド51Mはマゼンタ色のインク滴を吐出する。ラインヘッド51Yはイエロー色のインク滴を吐出する。ラインヘッド51Bk、51C、51M、51Yは、略同一の構成を有するため、ラインヘッド51と総称することもある。
【0025】
ラインヘッド51は、ヘッドベース52に支持されている。ラインヘッド51は、第1搬送部4(第1搬送ベルト410)が用紙Pを搬送している間に、用紙Pへ向けてインク滴を吐出して、用紙Pに画像を記録する。詳しくは、ラインヘッド51は、ラインヘッド51に対向する位置を通過する用紙Pへ向けてインク滴を吐出する。これにより、用紙Pに文字、図形のような画像が記録される。
【0026】
第1搬送ガイド101は、第1搬送部4と第2搬送部6との間に配置される。第1搬送ガイド101は、第1搬送部4から送出された用紙Pを第2搬送部6へ案内する。
【0027】
第2搬送部6は、第1搬送部4から送出された用紙Pを、第2搬送ガイド102へ向けて搬送する。第2搬送部6は、第2搬送ベルト610を備える。第2搬送ベルト610は無端ベルトである。第1搬送部4から送出された用紙Pは、第2搬送ベルト610上に導かれる。第2搬送部6は、用紙Pを第2搬送ベルト610に吸着させる。これにより、第2搬送ベルト610が用紙Pを保持する。また、第2搬送部6は、第2搬送ベルト610を所定の回転方向(
図1では反時計回り方向)に回転させる。第2搬送ベルト610が回転することにより、用紙Pが第2搬送ガイド102へ向けて搬送される。
【0028】
第2搬送ガイド102は、第2搬送部6と用紙排出部7との間に配置される。第2搬送ガイド102は、第2搬送部6から送出された用紙Pを用紙排出部7へ案内する。
【0029】
用紙排出部7は、用紙Pを装置筐体100の外部に排出する。用紙排出部7は、排出ローラー対71と、排出トレイ72とを備える。排出トレイ72は、装置筐体100に形成された排出口11から外部に突出するように装置筐体100に固定される。排出口11は、装置筐体100の一方側面(
図1では左側面)に形成されている。
【0030】
排出ローラー対71は、第2搬送ガイド102を通過した用紙Pを排出口11の方向に送出する。排出ローラー対71が送出した用紙Pは、排出トレイ72によって案内されて、排出口11を介して装置筐体100の外部に排出され、排出トレイ72上に載置される。複数枚の用紙Pに連続して画像が記録された場合、複数枚の用紙Pは、排出トレイ72上に積載される。
【0031】
ワイピングユニット8は、用紙Pへの画像の記録時に、第2搬送部6の下方に位置する。ワイピングユニット8は、複数のワイプブレード81を備える。ワイプブレード81は、ラインヘッド51のノズル面51aを清掃するためのクリーニング部材である。ラインヘッド51のノズル面51aは、用紙Pへの画像の記録時に第1搬送部4(第1搬送ベルト410)に対向する。ノズル面51aには、インク滴を吐出する複数のノズル孔(不図示)が形成されている。ワイピングユニット8は、ラインヘッド51のメンテナンス時に記録部5の直下に移動して、ワイプブレード81によってノズル面51aを払拭(ワイプ又はワイピング)する。
【0032】
制御部9は、記憶領域を有する。記憶領域には、プログラムや設定情報などが記憶される。記憶領域は、HDD(Hard Disk Drive)が備える磁気ディスク、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等で構成される。制御部9は、記憶領域に予め記憶されたプログラムを実行することにより、インクジェット記録装置1の各部の動作を制御する。
【0033】
インクジェット記録装置1の装置筐体100の内部には、用紙Pへの画像の記録時に様々な空気の流れが発生する。例えば、第1搬送部4は、用紙Pを第1搬送ベルト410に吸着させる。したがって、第1搬送ベルト410の上方から第1搬送ベルト410の内側へ向けて空気が流れる。また、用紙Pが搬送されることで、用紙搬送方向X1への空気の流れが発生する。したがって、用紙Pは風に当たりながらラインヘッド51の下方を通過する。また、ラインヘッド51と第1搬送ベルト410との間の空間は狭いため、ラインヘッド51と第1搬送ベルト410との間では、比較的強い風が発生し易い。したがって、ラインヘッド51の下方は、用紙Pに付着している紙粉のような異物が風によって吹き飛ばされやすい(舞い上がりやすい)環境になっている。そのため、用紙Pから吹き飛ばされた異物がラインヘッド51のノズル孔に付着する可能性がある。ノズル孔に付着した紙粉のような異物は、不吐出ノズルの発生原因となる。不吐出ノズルが発生すると、画像に白筋が発生して、画像品質が低下する。
【0034】
また、紙粉のような異物が帯電していると、第1搬送部4を構成する部材とラインヘッド51との間に電界が生じた場合に、その電気的な力によって異物が飛翔し、ラインヘッド51へ異物が引き寄せられる可能性がある。その結果、紙粉のような異物がラインヘッド51のノズル孔に付着する可能性がある。
【0035】
そこで、本実施形態におけるインクジェット記録装置1は、所定枚数(本実施形態では3000枚)の用紙Pに画像が記録された後に、ラインヘッド51のメンテナンスを実行する。また、本実施形態におけるインクジェット記録装置1は、インクジェット記録装置1の起動時(電源投入時、及びスリープ状態からの復帰時)に、ラインヘッド51のメンテナンスを実行する。以下、これらのメンテナンスを通常のメンテナンスと記載する。
【0036】
しかし、同じサイズの多数の用紙Pに対して連続して画像が記録された場合、通常のメンテナンスが実行される前に不吐出ノズルが発生する可能性がある。具体的には、用紙Pの端部(エッジ部)に紙粉が多く含まれるため、同じサイズの多数の用紙Pに対して連続して画像が記録された場合に、それらの多数の用紙Pが通過した領域の外方の領域において不吐出ノズルが発生する可能性がある。このため、次の記録対象の用紙Pの用紙搬送方向X1に直交する方向(
図1では、紙面に直交する方向)の幅が、先に画像が記録された多数の用紙Pの用紙搬送方向X1に直交する方向の幅よりも大きい場合、次の記録対象の用紙Pに白筋が発生する可能性がある。以下、用紙搬送方向X1に直交する方向(第2方向の一例)の幅を、単に、「幅」と記載する。なお、用紙Pの端部(エッジ部)に紙粉が多く含まれるのは、用紙Pの生産工程(製紙工程)に含まれる裁断処理時に、用紙Pの切断面に切り粉(紙粉)が発生して、用紙Pの端部に切り粉(紙粉)が付着するためである。
【0037】
上記問題を解決するために、本実施形態におけるインクジェット記録装置1は、次の記録対象の用紙Pへの画像の記録が要求されたとき、この要求がされるよりも前に画像が記録された用紙Pのうち、次の記録対象の用紙Pよりも幅が小さい用紙Pの枚数が所定枚数(本実施形態では100枚)以上である場合に、ラインヘッド51のメンテナンスを実行する。以下、このメンテナンスを、用紙幅に応じたメンテナンスと記載する。用紙幅に応じたメンテナンスは、次の記録対象の用紙Pへ画像が記録される前に実行される。
【0038】
本実施形態によれば、次の記録対象の用紙Pの幅が、先に画像が記録された用紙Pの幅よりも大きい場合に、用紙幅に応じたメンテナンス(ラインヘッド51のメンテナンス)が実行されるため、次の記録対象の用紙Pに白筋が発生し難くなる。したがって、画像品質の低下を抑制することができる。
【0039】
用紙幅に応じたメンテナンスの実行タイミングは、用紙Pへの画像の記録を要求する印刷要求に含まれる情報、又は印刷ジョブに含まれる情報に基づいて、制御部9が制御する。具体的には、制御部9は、記録対象の用紙Pの用紙サイズ及び向きのような情報に基づいて、用紙Pの幅を判定する。また制御部9は、印刷対象の原稿のページ数や印刷部数のような情報に基づいて、次の記録対象の用紙Pへの画像の記録が要求されるよりも前に画像が記録された用紙Pのうち、次の記録対象の用紙Pよりも幅が小さい用紙Pの枚数が所定枚数(本実施形態では100枚)以上であるか否かを判定する。以下、次の記録対象の用紙Pへの画像の記録が要求されるよりも前に画像が記録された用紙Pのうち、次の記録対象の用紙Pよりも幅が小さい用紙Pの枚数を、小さい用紙Pの総枚数と記載する。
【0040】
小さい用紙Pの総枚数は、1つの印刷ジョブの実行によって所定枚数以上となる場合がある。また、小さい用紙Pの総枚数は、複数の印刷ジョブの実行によって所定枚数以上となる場合がある。そこで、本実施形態における制御部9は、印刷ジョブを実行するごとに、小さい用紙Pの総枚数を算出する。算出された総枚数は、記憶領域に記憶される。また制御部9は、ラインヘッド51のメンテナンスが実行されると、記憶領域に記憶されている小さい用紙Pの総枚数をリセットとする。なお、所定枚数は100枚に限定されるものではなく、1枚以上であればよい。また、所定枚数は、ユーザーによって任意に設定可能な設定値であり得る。
【0041】
ラインヘッド51のメンテナンスは、具体的には、パージ・ワイプ処理によって実行される。パージ・ワイプ処理とは、パージ動作に続けて、ワイプ動作を実行する処理である。パージ動作とは、ラインヘッド51にインクを供給して、ラインヘッド51が有するノズル孔からインク(パージインク)を強制的に押し出す(パージする)動作である。ワイプ動作とは、ラインヘッド51が有するノズル面51aをワイプブレード81によって払拭して、ノズル面51aを清掃する動作である。
【0042】
続いて
図2を参照して、ラインヘッド51の構成について説明する。
図2は、
図1に示す第1搬送部4及び記録部5を上方から見た平面図である。
図2に示すように、ラインヘッド51Bk、51C、51M、51Yは、用紙搬送方向X1の上流側から下流側に向けて(
図2では左向きに)並設される。
【0043】
各ラインヘッド51Bk、51C、51M、51Yはそれぞれ、第1記録ヘッド55a、第2記録ヘッド55b、及び第3記録ヘッド55cによって構成される。第1記録ヘッド55a、第2記録ヘッド55b、及び第3記録ヘッド55cは、用紙搬送方向X1に直交する方向X2に沿って千鳥状に配列される。以下、用紙搬送方向X1に直交する方向X2を、幅方向X2と記載する。また、第1記録ヘッド55a、第2記録ヘッド55b、及び第3記録ヘッド55cは、略同一の構成を有するため、記録ヘッド55と総称することがある。
【0044】
記録ヘッド55には、
図1を参照して説明したノズル面51aが形成されている。記録ヘッド55は、第1搬送ベルト410によって搬送される用紙Pに対して、印字位置に対応したノズル孔からインク滴を吐出する。これにより、用紙Pに文字、図形のような画像が記録される。
【0045】
続いて
図3を参照して、第1搬送ベルト410について説明する。
図3は、
図1に示す第1搬送ベルト410を上方から見た平面図である。
図3に示すように、第1搬送ベルト410には複数の吸引孔411が穿孔されている。吸引孔411の直径は、2mmであり得る。また、隣接する吸引孔411間の間隔は、8mmであり得る。複数の吸引孔411は、用紙搬送方向X1、及び幅方向X2に沿って配列される。複数の吸引孔411は、
図3に示すように、千鳥状に配置され得る。
【0046】
続いて、
図1〜
図4を参照して、第1搬送部4及び記録部5について説明する。
図4は、
図1に示す第1搬送部4及び記録部5の構成を示す図である。
図4は、理解を容易にするために、第1搬送部4の一部の断面を示している。
【0047】
第1搬送部4は、装置筐体100(
図1参照)内において、ラインヘッド51に対向する。第1搬送部4は、第1搬送ベルト410の内周側に配置された駆動ローラー412、ベルト速度検知ローラー413、テンションローラー414、及び一対のガイドローラー415を備える。第1搬送部4は更に、第1搬送ベルト410の外周側に配置された吸着ローラー416を備える。また、第1搬送部4は、搬送板42(ガイド部材の一例)と、吸引部43とを備える。
【0048】
第1搬送ベルト410は、駆動ローラー412、ベルト速度検知ローラー413、テンションローラー414、及び一対のガイドローラー415に張架される。張架された第1搬送ベルト410の内周側に、搬送板42及び吸引部43が配置される。搬送板42は、第1搬送ベルト410を介して、ラインヘッド51に対向する。吸引部43は、第1搬送ベルト410の内周側において、搬送板42の下方に配置される。
【0049】
駆動ローラー412は、用紙搬送方向X1に対して搬送板42よりも下流側(
図4では左側)に配置される。駆動ローラー412はモーター(図示せず)によって回転駆動され、所定の回転方向(
図4では反時計回り方向)に第1搬送ベルト410を回転させる。第1搬送ベルト410が回転することにより、用紙Pが用紙搬送方向X1に搬送される。
【0050】
ベルト速度検知ローラー413は、用紙搬送方向X1に対して搬送板42よりも上流側(
図4では右側)に配置され、第1搬送ベルト410との間に発生する摩擦によって回転する。好ましくは、ベルト速度検知ローラー413は、駆動ローラー412と共に、ラインヘッド51と対面する箇所の第1搬送ベルト410の平面性を維持するように配置される。
【0051】
ベルト速度検知ローラー413はパルス板(図示せず)を含み、パルス板は、ベルト速度検知ローラー413と一体になって回転する。パルス板の回転速度を測定することにより、第1搬送ベルト410の回転速度が検知される。
【0052】
テンションローラー414は、第1搬送ベルト410が撓まないように、第1搬送ベルト410に張力を与える。一対のガイドローラー415は、第1搬送ベルト410が吸引部43の下方を通過するように、第1搬送ベルト410を案内する。
【0053】
吸着ローラー416は従動ローラーである。吸着ローラー416は、用紙搬送方向X1における搬送板42の上流側の端部に、第1搬送ベルト410を介して対向する。吸着ローラー416は、レジストローラー対34(
図1参照)が送出した用紙Pを第1搬送ベルト410上へ誘導して、第1搬送ベルト410に吸着させる。
【0054】
搬送板42は、第1搬送ベルト410を支持すると共に、第1搬送ベルト410を介して用紙Pを支持する。搬送板42は、第1搬送部4(第1搬送ベルト410)が搬送する用紙Pを、用紙搬送方向X1へ案内する。搬送板42は、用紙搬送方向X1に沿って配列された複数の溝421を有する。各溝421は、用紙搬送方向X1に延びている。また、各溝421は、記録部5側(第1搬送ベルト410側)の面が開口しており、第1搬送ベルト410の吸引孔411(
図3参照)と連通する。
【0055】
更に搬送板42は、用紙搬送方向X1に沿って配列された複数の貫通孔422を有する。複数の貫通孔422は、複数の溝421に対応して設けられており、各貫通孔422の記録部5側(第1搬送ベルト410側)の端面は、対応する溝421の内面(底面)に開口している。したがって、各貫通孔422は、対応する溝421を介して第1搬送ベルト410の吸引孔411と連通する。一方、各貫通孔422の吸引部43側の端面は、搬送板42の下面に開口している。
【0056】
吸引部43は、搬送板42及び第1搬送ベルト410を介して、用紙Pを第1搬送ベルト410へ向けて吸引する。その結果、用紙Pが第1搬送ベルト410に吸着される。詳しくは、吸引部43は、搬送板42の溝421及び貫通孔422と、第1搬送ベルト410の吸引孔411とを介して、第1搬送ベルト410の上方の空間から空気を吸引する。この吸引により、搬送板42の上方の空間に吸引部43へ向かう風が発生する。用紙Pが第1搬送ベルト410上に案内されて第1搬送ベルト410の一部を覆うと、用紙Pに吸引力(負圧)が作用して、用紙Pが第1搬送ベルト410に吸着される。
【0057】
吸引部43は、上面が開口した箱状部材431と、吸引装置432と、ダクト433とを備える。搬送板42は、箱状部材431の上面開口を覆うように配置される。搬送板42と箱状部材431とにより、圧力室434が区画される。圧力室434は、搬送板42の貫通孔422及び溝421を介して、第1搬送ベルト410の吸引孔411に連通する。
【0058】
吸引装置432は、箱状部材431の下面に固定される。詳しくは、箱状部材431の底壁に開口435が形成されている。吸引装置432は開口435に対応して配置される。また、吸引装置432にはダクト433が接続されている。吸引装置432は、ファンである。但し、吸引装置432はファンに限定されるものではなく、例えば真空ポンプであってもよい。
【0059】
吸引装置432が駆動することによって、圧力室434内に負圧が発生する。この負圧により、貫通孔422を介して溝421に吸引力が発生し、溝421を介して第1搬送ベルト410の吸引孔411に吸引力が発生する。その結果、第1搬送ベルト410の吸引孔411、搬送板42の溝421、及び搬送板42の貫通孔422を介して、圧力室434内に空気が吸引される。圧力室434内に吸引された空気は、吸引装置432及びダクト433を介して排気される。また、用紙Pが第1搬送ベルト410上に案内されて、複数の吸引孔411のうちの一部を塞ぐと、用紙Pによって塞がれた吸引孔411から用紙Pに吸引力(負圧)が作用して、用紙Pが第1搬送ベルト410に吸着される。
【0060】
ラインヘッド51はヘッドベース52に保持されて、第1搬送ベルト410との間に所定の間隔(本実施形態では1mm)が形成されるような高さに支持され得る。なお、インクジェット記録装置1は、第1搬送ベルト410によって搬送される用紙Pの厚みに応じてヘッドベース52を昇降させる機構を備え得る。斯かる構成により、ラインヘッド51と用紙Pとの間に所定の距離(本実施形態では1mm)が形成されるような高さに、ラインヘッド51を支持することが可能となる。
【0061】
続いて
図5及び
図6を参照して、搬送板42について説明する。
図5は、
図4に示す搬送板42を上方から見た平面図である。詳しくは、
図5は、搬送板42のラインヘッド51側の面420の一部を示す。以下、搬送板42のラインヘッド51側の面420を支持面420と記載する。搬送板42は支持面420により、第1搬送ベルト410介して用紙Pを支持する。
【0062】
搬送板42は、金属材料から構成される。具体的には、搬送板42の材料として、アルミダイキャスト、プレス加工板等を使用できる。あるいは、搬送板42の材料として、第1搬送ベルト410との摺動性に優れた樹脂を選択することも可能である。搬送板42が金属材料から構成される場合、搬送板42は接地され得る。
【0063】
図5に示すように、支持面420に複数の溝421が形成されている。各溝421は、ラインヘッド51側が開口する長溝である。詳しくは、各溝421の形状は、用紙搬送方向X1に延伸する長円状である。
【0064】
複数の溝421は、用紙搬送方向X1及び幅方向X2に沿って配列される。複数の溝421は、
図5に示すように、千鳥状に配置され得る。詳しくは、複数の溝421は、第1搬送ベルト410の吸引孔411(
図3参照)と対向し得る位置に配列される。つまり複数の溝421は、吸引孔411と連通できる位置に配列される。この配列により、第1搬送ベルト410の進行(回転)に伴って、各溝421に対向する吸引孔411が1つずつ入れ替わってゆく。各溝421は、少なくとも2つの吸引孔411と対向し得るように形成される。
【0065】
また、各溝421内に1つの貫通孔422が位置する。各貫通孔422は、対応する溝421に連通する。各貫通孔422の断面は、円形状であり得る。複数の貫通孔422は、
図5に示すように、千鳥状に配置され得る。
【0066】
図6(a)は、搬送板42の溝421及び貫通孔422の平面図であり、
図6(b)は、
図6(a)に示すA−A線に沿った溝421及び貫通孔422の断面図である。
図6(a)及び
図6(b)に示すように、貫通孔422は、搬送板42をその厚み方向に貫通しており、貫通孔422の一方端は、対応する溝421内に開口する。
【0067】
続いて
図7を参照して、記録ヘッド55にインクを供給するインク供給機構500について説明する。
図7は、第1実施形態に係るインク供給機構500の構成を示す図である。詳しくは、
図7は、任意の1色に対応するインク供給機構500を示している。
図1に示すインクジェット記録装置1は、ブラック色、シアン色、マゼンタ色、及びイエロー色の各色ごとに、
図7に示すインク供給機構500を備える。
【0068】
図7に示すように、インク供給機構500は、インクタンク501、及びポンプ機構502を備える。また、インク供給機構500は、インクタンク501とポンプ機構502とを接続する第1流路503、及び、ポンプ機構502と記録ヘッド55とを接続する第2流路504を備える。更にインク供給機構500は、第1流路503に設けられる第1電磁弁505(流入側切り替え弁の一例)と、第2流路504に設けられる第2電磁弁506(流出側切り替え弁の一例)とを備える。
【0069】
なお、第2流路504は、
図2を参照して説明した第1記録ヘッド55a、第2記録ヘッド55b、及び第3記録ヘッド55cの各々とポンプ機構502とを接続する。但し、
図7には、理解を容易にするために、第1記録ヘッド55a、第2記録ヘッド55b、及び第3記録ヘッド55cのうちの任意の1つを示している。
【0070】
インクタンク501は、任意の1色のインク511を収容する。ポンプ機構502は、中空形状のシリンダー521と、ピストン522とを備える。シリンダー521の中空部分に、ピストン522の一部が挿入される。ピストン522は駆動装置により、シリンダー521の長手方向に移動することができる。
【0071】
第1流路503の一方端は、インクタンク501に接続されており、第1流路503の他方端は、シリンダー521の底部に形成されているインク流入口に接続されている。第2流路504の一方端は、シリンダー521の底部に形成されているインク流出口に接続されており、第2流路504の他方端は、記録ヘッド55の内部に形成された微細流路551の流入口に接続されている。
【0072】
記録ヘッド55はノズル面51aを有し、ノズル面51aには、幅方向X2に配列された複数のノズル孔51bが形成されている。各ノズル孔51bは微細流路551に連通している。
【0073】
用紙Pへの画像の記録時には、シリンダー521内にインク511が収容される。また、第1電磁弁505及び第2電磁弁506が共に開いた状態となり、ピストン522は予め設定された位置で停止している。記録ヘッド55(ノズル孔51b)からインク滴が吐出されると、毛細管現象によって記録ヘッド55の微細流路551にシリンダー521からインク511が供給される。なお、シリンダー521内にインク511を収容する際には、第1電磁弁505が開き、第2電磁弁506が閉じた状態で、ポンプ機構502が備えるピストン522が引き動作を行う。これにより、インクタンク501に収容されているインク511が、第1流路503を介して、ポンプ機構502が備えるシリンダー521内に引き込まれる。
【0074】
またインク供給機構500は、ラインヘッド51(記録ヘッド55)のメンテナンス時、具体的にはパージ動作の実行時に作動する。インク供給機構500の動作は、
図1に示す制御部9によって制御される。パージ動作の実行時には、シリンダー521内にインク511が収容される。また、第1電磁弁505が閉じ、第2電磁弁506が開いた状態となり、ピストン522が押し動作を行う。この結果、シリンダー521内に収容されているインク511が、第2流路504を介して微細流路551へ供給され、ノズル孔51bからインク511(パージインク)が強制的に押し出される(パージされる)。このパージ動作により、気泡や、増粘したインク511、紙粉のような異物が、記録ヘッド55の外部へ押し出される。気泡や、増粘したインク511、紙粉のような異物は、不吐出ノズルの発生原因となる。
【0075】
続いて
図8及び
図9を参照して、ワイピングユニット8について説明する。
図8は、
図1に示すワイピングユニット8の構成を示す図である。
図8は、ワイピングユニット8の第1状態を示している。
図9は、
図8に示すワイピングユニット8の第2状態を示す図である。ワイピングユニット8は、ラインヘッド51(記録ヘッド55)のメンテナンス時に第2状態となる。ワイピングユニット8の動作は、
図1に示す制御部9によって制御される。
【0076】
なお、
図8及び
図9では、理解を容易にするために、4色のラインヘッド51Bk、51C、51M、51Yのうちの任意の1つに対応する3つのワイプブレード81を示している。ワイピングユニット8は、ラインヘッド51Bk、51C、51M、51Yごとに、3つのワイプブレード81を備えている。3つのワイプブレード81は、
図2を参照して説明した第1記録ヘッド55a、第2記録ヘッド55b、及び第3記録ヘッド55cに対応するように配置される。
【0077】
図8に示すように、ワイピングユニット8は、ワイプブレード81に加えて、移動機構82を備える。移動機構82は、ワイプブレード81を矢印D1で示す方向(
図8では左方向)、及び、矢印D2で示す方向(
図8では右方向)へ移動させる。以下、矢印D1で示す方向を主走査方向D1と記載し、矢印D2で示す方向を戻り方向D2と記載する。主走査方向D1は、幅方向X2における記録ヘッド55の一方の端から他方の端へ向かう方向である。戻り方向D2は、主走査方向D1と反対向きの方向である。
【0078】
移動機構82は、キャリッジ83、キャリッジ83を支持する支持フレーム84、コロ85、ギャップコロ86、昇降部材87、及び底部88を含む。
【0079】
昇降部材87の各々は、リフト部材87a及びシャフト87bにより構成される。ワイピングユニット8が第1状態である場合、昇降部材87のリフト部材87aは、底部88上に倒伏している。
【0080】
ワイピングユニット8が第1状態から第2状態へ遷移する際には、昇降部材87のシャフト87bが回転する。具体的には、昇降部材87のうち、主走査方向D1の上流側(
図8では右側)に配置される昇降部材87のシャフト87bが、
図8において時計回り方向に回転する。一方、昇降部材87のうち、主走査方向D1の下流側(
図8では左側)に配置される昇降部材87のシャフト87bは、
図8において反時計回り方向に回転する。その結果、倒伏していたリフト部材87aが、
図9に示すように底部88から起立する。これにより、支持フレーム84と共にキャリッジ83、コロ85、ギャップコロ86、及びワイプブレード81が上昇して、ワイピングユニット8が第2状態となる。ワイピングユニット8は、パージ動作が実行される前に第2状態となる。
【0081】
ワイピングユニット8は、
図1に示すノズル面51aがワイプブレード81によって清掃された後に、第2状態から第1状態へ遷移する。ワイピングユニット8が第2状態から第1状態へ遷移する際には、ワイピングユニット8の第1状態から第2状態への遷移時とは逆方向に昇降部材87のシャフト87bが回転する。具体的には、昇降部材87のうち、主走査方向D1の上流側(
図9では右側)に配置される昇降部材87のシャフト87bが、
図9において反時計回り方向に回転する。一方、昇降部材87のうち、主走査方向D1の下流側(
図9では左側)に配置される昇降部材87のシャフト87bは、
図9において時計回り方向に回転する。その結果、起立していたリフト部材87aが、
図8に示すように底部88上に倒伏する。これにより、支持フレーム84と共にキャリッジ83、コロ85、ギャップコロ86、及びワイプブレード81が下降して、ワイピングユニット8が第1状態となる。
【0082】
キャリッジ83は、支持フレーム84に対して、コロ85を介して移動可能に係合する。具体的には、キャリッジ83は、支持フレーム84に対して、主走査方向D1及び戻り方向D2へ移動可能に係合する。ワイプブレード81はキャリッジ83に搭載されており、キャリッジ83が主走査方向D1又は戻り方向D2へ移動することにより、ワイプブレード81が主走査方向D1又は戻り方向D2へ移動する。
【0083】
キャリッジ83は、ワイプ動作が実行される際に、主走査方向D1へ移動する。キャリッジ83が主走査方向D1へ移動することにより、ワイプブレード81が主走査方向D1へ移動する。ワイプブレード81のこの移動により、ノズル面51aがワイプブレード81によって払拭される。ワイプブレード81によるこの払拭により、ノズル面51aが清掃される。また、ノズル面51aの清掃が終了し、ワイピングユニット8が第2状態から第1状態へ遷移すると、キャリッジ83は、戻り方向D2へ移動する。キャリッジ83のこの移動により、ワイプブレード81が元の位置に戻る。
【0084】
なお、4色のラインヘッド51Bk、51C、51M、51Yの各々に対応する3つのワイプブレード81からなる各組は、シャフト87bの回動、及びキャリッジ83の移動に応じて同じ動作をする。
【0085】
続いて
図10〜
図14を参照して、ラインヘッド51(記録ヘッド55)のメンテナンス時におけるインクジェット記録装置1の動作について説明する。本実施形態のインクジェット記録装置1において、ラインヘッド51のメンテナンス機構は、
図7を参照して説明したインク供給機構500と、
図8及び
図9を参照して説明したワイピングユニット8とを含む。
【0086】
図1を参照して説明したように、本実施形態におけるラインヘッド51のメンテナンスは、通常のメンテナンスと、用紙幅に応じたメンテナンスとを含む。用紙幅に応じたメンテナンスの実行時におけるインクジェット記録装置1の動作は、通常のメンテナンスの実行時におけるインクジェット記録装置1の動作と同じ動作である。
【0087】
図10及び
図11は、ラインヘッド51のメンテナンス時におけるインクジェット記録装置1の動作を示す図である。ラインヘッド51(記録ヘッド55)のメンテナンス時には、
図10に示すように、まず、第1搬送部4が、矢印D11の方向(下方向)へ移動して、ラインヘッド51から離れる(遠ざかる)。次に、ワイピングユニット8が、矢印D12の方向へ(
図10では右向きに)移動して、記録部5(ラインヘッド51)と第1搬送部4との間の位置で停止する。
【0088】
次に、
図11に示すように、第1搬送部4が矢印D13の方向(上方向)へ移動して、ワイピングユニット8を持ち上げる。この結果、ワイピングユニット8が、記録部5(ラインヘッド51)の直下に移動する。
【0089】
図12及び
図13は、ラインヘッド51のメンテナンス時におけるワイピングユニット8の動作を示す図である。
図12に示すように、ワイピングユニット8は、ラインヘッド51の直下に移動する際、
図8を参照して説明した第1状態となっている。なお、
図12及び
図13では、理解を容易にするために、
図8及び
図9と同様、4色のラインヘッド51Bk、51C、51M、51Yのうちの任意の1つに対応する3つのワイプブレード81を示している。
【0090】
ワイピングユニット8は、ラインヘッド51の直下に移動すると、
図8及び
図9を参照して説明したように第1状態から第2状態へ遷移する。
図13は、ラインヘッド51の直下で第1状態から第2状態へ遷移したワイピングユニット8を示している。ワイピングユニット8がラインヘッド51の直下で第2状態へ遷移すると、各ワイプブレード81が、対応する記録ヘッド55のノズル面51aに押し当てられる。詳しくは、主走査方向D1における各ノズル面51aの一方の端(
図13では右側の端)に、対応するワイプブレード81が押し当てられる。また、ギャップコロ86が、ヘッドベース52に当接する。ギャップコロ86のこの当接により、ノズル面51aに押し当てられたワイプブレード81の上下方向の位置が一定に保持される。
【0091】
ワイピングユニット8が第1状態から第2状態へ遷移すると、
図7を参照して説明したようにインク供給機構500によってパージ動作が実行される。このパージ動作により、パージインクがラインヘッド51(記録ヘッド55)から押し出されて、支持フレーム84に落下する。支持フレーム84の上面にはインク回収トレイ(不図示)が形成されており、落下したパージインクは、インク回収トレイによって回収される。また、パージインクの一部は、ノズル面51aに残留する。
【0092】
パージ動作が実行された後、
図9を参照して説明したように、ワイピングユニット8によってワイプ動作が実行される。即ち、キャリッジ83が主走査方向D1に移動することによって、ワイプブレード81が主走査方向D1へ移動する。ワイプブレード81のこの移動により、ノズル面51aがワイプブレード81によって払拭される。この結果、ノズル面51aに残留していたパージインクが、ノズル面51aからワイプブレード81に沿って流下して、支持フレーム84(インク回収トレイ)によって回収される。
【0093】
図14は、ラインヘッド51のメンテナンス時(ワイプ動作時)におけるワイプブレード81の動作を示す図である。
図14(a)に示すように、インク供給機構500によってパージ動作が実行されると、記録ヘッド55のノズル孔51bから押し出されたパージインク511aの一部が、ノズル面51aに残留する。ワイプ動作の実行時には、
図14(a)及び
図14(b)に示すように、ワイプブレード81が、ノズル面51aに押し当てられた状態で主走査方向D1へ移動する。ワイプブレード81のこの移動により、ノズル面51aに残留していたパージインク511aが、ワイプブレード81によって拭き取られて、ノズル面51aからワイプブレード81に沿って流下する。
【0094】
ワイプ動作が終了すると、
図8及び
図9を参照して説明したように、ワイピングユニット8が第2状態から第1状態へ遷移する。その結果、
図14(c)に示すように、ワイプブレード81がノズル面51aから下降して、ノズル面51aから離れる。その後、
図8及び
図9を参照して説明したキャリッジ83が、戻り方向D2へ移動する。これにより、ワイプブレード81が戻り方向D2へ移動して、
図8に示す元の位置に戻る。
【0095】
続いて、
図15を参照して、本実施形態におけるラインヘッド51(記録ヘッド55)のメンテナンス方法について説明する。詳しくは、用紙幅に応じたメンテナンスの実行タイミングについて説明する。
図15は、本実施形態に係るインクジェット記録装置1が備える制御部9(
図1参照)の処理フローを示す図である。詳しくは、
図15は、用紙幅に応じたメンテナンスを実行するか否かを決定する処理のフローを示している。
【0096】
制御部9は、新たな印刷ジョブの実行時に、
図15に示すステップS1〜ステップS4の処理を実行する。
【0097】
制御部9は、新たな印刷ジョブの実行時に、まず、次の記録対象の用紙Pの幅が、先に画像が記録された用紙Pの幅よりも大きいか否かを判定する(ステップS1)。
【0098】
制御部9は、次の記録対象の用紙Pの幅が、先に画像が記録された用紙Pの幅よりも大きいと判定すると(ステップS1のYes)、小さい用紙Pの総枚数が所定枚数以上か否かを判定する(ステップS2)。即ち、制御部9は、次の記録対象の用紙Pの幅よりも幅が狭い所定枚数上の用紙Pに対して先に画像が記録されているか否かを判定する。
【0099】
制御部9は、小さい用紙Pの総枚数が所定枚数以上であると判定すると(ステップS2のYes)、メンテナンス機構を作動させる。これにより、ラインヘッド51(記録ヘッド55)のメンテナンス(用紙幅に応じたメンテナンス)が実行される(ステップS3)。
【0100】
制御部9は、用紙幅に応じたメンテナンスが終了すると、次の記録対象の用紙Pに対して画像が記録されるように、インクジェット記録装置1の動作を制御する(ステップS4)。
【0101】
一方、ステップS1において、次の記録対象の用紙Pの幅が、先に画像が記録された用紙Pの幅よりも大きくないと判定されると(ステップS1のNo)、制御部9の処理は、ステップS4の処理へ移る。また、ステップS2において、小さい用紙Pの総枚数が所定枚数以上ではないと判定されると(ステップS2のNo)、制御部9の処理は、ステップS4の処理へ移る。
【0102】
なお、ステップS2の処理に用いられる所定枚数の設定値が「1」の場合、ステップS2の処理は省略されてもよい。
【0103】
以上説明したように、本実施形態によれば、制御部9が、メンテナンス機構(ワイピングユニット8及びインク供給機構500)の作動タイミングを制御する。具体的には、制御部9は、次の記録対象の用紙Pの幅が、先に画像が記録された用紙Pの幅よりも大きいと判定すると、メンテナンス機構を作動させる。したがって、次の記録対象の用紙Pの幅が、先に画像が記録された用紙Pの幅よりも大きい場合でも、次の記録対象の用紙Pに白筋が発生し難くなる。よって、本実施形態によれば、画像品質の低下を抑制することができる。
【0104】
また本実施形態によれば、通常のメンテナンスを実行するメンテナンス機構を利用して、用紙幅に応じたメンテナンスを実行することができる。したがって、簡易な構成で画像品質の低下を抑制することができる。
【0105】
また本実施形態によれば、制御部9は、次の記録対象の用紙Pの幅よりも幅が狭い所定枚数以上の用紙Pに対して先に画像が記録されていると判定すると、メンテナンス機構を作動させる。したがって、本実施形態によれば、所定枚数の設定値を小さくすることにより、用紙幅に応じたメンテナンスの実行間隔を短縮化して、画像品質の向上を図ることができる。あるいは、所定枚数の設定値を大きくすることにより、パージ動作に使用されるインクの消費量を抑制することができる。
【0106】
また、ラインヘッド51のメンテナンスの実行中は、用紙Pへの画像の記録を行うことができない。このため、用紙幅に応じたメンテナンスの実行間隔が短い程、即ち、用紙幅に応じたメンテナンスが実行される頻度が高い程、処理速度(作業効率)が低下する。この課題に対し、本実施形態によれば、所定枚数の設定値を大きくすることにより、用紙幅に応じたメンテナンスの実行間隔を広げて、処理速度(作業効率)の低下を抑制することができる。
【0107】
[第2実施形態]
続いて
図16〜
図24を参照して第2実施形態について説明する。但し、第1実施形態と異なる事項を説明し、第1実施形態と同じ事項についての説明は割愛する。第2実施形態に係るインクジェット記録装置1は、用紙幅に応じたメンテナンス時のパージ動作及びワイプ動作が第1実施形態と異なる。具体的には、第2実施形態では、用紙幅に応じたメンテナンス時に、ラインヘッド51が部分的にメンテナンスされる。
【0108】
図16は、第2実施形態において用紙幅に応じたメンテナンスが実行される領域を示す図である。
図16に示すように、本実施形態におけるインクジェット記録装置1は、幅W1を有する用紙Pと、幅W1よりも広い幅W2を有する用紙Pに対して画像を記録する。したがって、本実施形態におけるインクジェット記録装置1では、幅W1を有する多数の用紙Pに画像が記録された場合に、それらの多数の用紙Pが通過した領域の外方の領域Aにおいて、通常のメンテナンスが実行される前に不吐出ノズルが発生する可能性がある。
【0109】
そこで、本実施形態におけるインクジェット記録装置1では、
図1を参照して説明した制御部9が、ラインヘッド51(記録ヘッド55)のうち領域Aに対応する部分に対してのみ用紙幅に応じたメンテナンス(パージ・ワイプ処理)が実行されるように、メンテナンス機構の動作を制御する。具体的には、ラインヘッド51を構成する第1記録ヘッド55a、第2記録ヘッド55b及び第3記録ヘッド55cのうち、第1記録ヘッド55aの領域Aに対応する部分、及び第3記録ヘッド55cの領域Aに対応する部分に対し、用途幅に応じたメンテナンスが実行される。
【0110】
用紙幅に応じたメンテナンスは、第1実施形態と同様に、幅W1を有する所定枚数(本実施形態では100枚)以上の用紙Pに画像が記録された後に、幅W2を有する用紙P(次の記録対象の用紙)に画像が記録される場合に、幅W2を有する用紙Pに対して画像が記録される前に実行される。
【0111】
図17は、第2実施形態に係るインク供給機構500の構成を示す図である。詳しくは、
図17は、任意の1色に対応するインク供給機構500を示している。第2実施形態のインクジェット記録装置1は、ブラック色、シアン色、マゼンタ色、及びイエロー色の各色ごとに、
図17に示すインク供給機構500を備えている。インク供給機構500の動作は、
図1に示す制御部9によって制御される。
【0112】
図17に示すように、本実施形態では、第1記録ヘッド55a及び第3記録ヘッド55cの各々の内部に形成される微細流路が、第1微細流路551aと第2微細流路551bとに分割されている。したがって、第1記録ヘッド55a及び第3記録ヘッド55cは、第1微細流路551aと第2微細流路551bとを有する。第2微細流路551bは、
図16を参照して説明した領域A内に位置するノズル孔51bに対して連通している。
【0113】
インク供給機構500は、インクタンク501、及びポンプ機構502を備える。また、インク供給機構500は、第1流路503及び第2流路504を備える。第1流路503は、インクタンク501とポンプ機構502とを接続する。第2流路504は、第1記録ヘッド55a、第2記録ヘッド55b、及び第3記録ヘッド55cの各々とポンプ機構502とを接続する。更にインク供給機構500は、第1流路503に設けられる1つの第1電磁弁505(流入側切り替え弁の一例)と、第2流路504に設けられる5つの第2電磁弁506(流出側切り替え弁の一例)とを備える。
【0114】
詳しくは、第2流路504のうち、第1記録ヘッド55aに繋がる部分は、第1微細流路551aの流入口に接続する部分と、第2微細流路551bの流入口に接続する部分とに分岐している。同様に、第2流路504のうち、第3記録ヘッド55cに繋がる部分は、第1微細流路551aの流入口に接続する部分と、第2微細流路551bの流入口に接続する部分とに分岐している。また、5つの第2電磁弁506は、2つの第2電磁弁506aと、2つの第2電磁弁506bとを含む。2つの第2電磁弁506aは、第1記録ヘッド55a及び第3記録ヘッド55cの各々の第1微細流路551aにそれぞれ対応する。2つの第2電磁弁506bは、第1記録ヘッド55a及び第3記録ヘッド55cの各々の第2微細流路551bにそれぞれ対応する。
【0115】
用紙幅に応じたメンテナンス時(パージ動作の実行時)には、シリンダー521内にインク511が収容される。また、第1電磁弁505が閉じ、5つの第2電磁弁506のうち、2つの第2電磁弁506bが開いた状態となる。これにより、シリンダー521が、第2微細流路551bの流入口と連通する。この状態で、ピストン522が押し動作を行う。この結果、シリンダー521内に収容されているインク511が、第2流路504を介して第2微細流路551bへ供給され、領域A内に位置するノズル孔51bからインク511(パージインク)が強制的に押し出される(パージされる)。
【0116】
図18〜
図24は、第2実施形態に係る用紙幅に応じたメンテナンス時(ワイプ動作時)におけるワイプブレード81の動作を示す図である。詳しくは、
図18〜
図24は、第1記録ヘッド55aに対応するワイプブレード81の動作、及び第3記録ヘッド55cに対応するワイプブレード81の動作を示している。なお、第2記録ヘッド55bに対応するワイプブレード81は、第1記録ヘッド55a及び第3記録ヘッド55cにそれぞれ対応するワイプブレード81と同じ動作をする。
図18〜
図24に示すワイプブレード81の動作は、
図1に示す制御部9がワイピングユニット8の動作を制御することによって実施される。
【0117】
第2実施形態では、用紙幅に応じたメンテナンス時にパージ動作が実行されると、第1記録ヘッド55a及び第3記録ヘッド55cの各々のノズル面51aのうち領域Aに対応する部分から、パージインク511aが押し出される。よって、
図18(a)及び
図18(b)に示すように、第1記録ヘッド55a及び第3記録ヘッド55cの各々のノズル面51aのうち領域Aに対応する部分に、パージインク511aの一部が残留する。
【0118】
ワイプ動作の実行時には、まず、
図18及び
図19に示すように、第1記録ヘッド55aのノズル面51aのうち領域Aに対応する部分が払拭されるように、ワイプブレード81が、ノズル面51aに押し当てられた状態で主走査方向D1へ移動する。ワイプブレード81のこの移動により、第1記録ヘッド55aのノズル面51aに残留していたパージインク511aが、ワイプブレード81によって拭き取られて、第1記録ヘッド55aのノズル面51aからワイプブレード81に沿って流下する。
【0119】
次に、
図8及び
図9を参照して説明したようにワイピングユニット8が第2状態から第1状態へ遷移する。その結果、
図20(a)及び
図20(b)に示すように、ワイプブレード81がノズル面51aから下降する。
【0120】
次に、
図21(a)及び
図21(b)に示すように、第3記録ヘッド55cを払拭するワイプブレード81が、第3記録ヘッド55cのノズル面51aのうち領域Aに対応する部分の手前の位置まで移動するように、ワイプブレード81が主走査方向D1へ移動する。
【0121】
次に、
図8及び
図9を参照して説明したようにワイピングユニット8が第1状態から第2状態へ遷移する。その結果、
図22(a)及び
図22(b)に示すように、ワイプブレード81が上昇して、対応するノズル面51aに押し当てられる。
【0122】
次に、
図23(a)及び
図23(b)に示すように、第3記録ヘッド55cのノズル面51aのうち領域Aに対応する部分が払拭されるように、ワイプブレード81が、ノズル面51aに押し当てられた状態で主走査方向D1へ移動する。ワイプブレード81のこの移動により、第3記録ヘッド55cのノズル面51aに残留していたパージインク511aが、ワイプブレード81によって拭き取られて、第3記録ヘッド55cのノズル面51aからワイプブレード81に沿って流下する。
【0123】
ワイプ動作が終了すると、
図8及び
図9を参照して説明したようにワイピングユニット8が第2状態から第1状態へ遷移する。その結果、
図24(a)及び
図24(b)に示すように、ワイプブレード81がノズル面51aから下降して、ノズル面51aから離れる。その後、ワイプブレード81が戻り方向D2へ移動して、
図8に示す元の位置に戻る。
【0124】
なお本実施形態では、2種類の用紙Pの幅(幅W1、及び幅W2)に応じて、ラインヘッド51の微細流路551(記録ヘッド55の内部に形成される微細流路551)を第1微細流路551aと第2微細流路551bとに分割する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、3種類以上の用紙Pの幅に適用することができる。3種類以上の用紙Pの幅に本発明を適用する場合、用紙Pの幅の種類に応じてラインヘッド51の微細流路551を3つ以上の微細流路に分割して、分割された微細流路ごとに第2電磁弁506を設ければよい。
【0125】
以上説明したように、本実施形態によれば、制御部9が、次の記録対象の用紙Pの幅と、次の記録対象の用紙Pよりも先に画像が記録された用紙Pの幅との差に応じて、ラインヘッド51(記録ヘッド55)が部分的にメンテナンスされるようにメンテナンス機構の動作を制御する。したがって、第1実施形態と同様に、次の記録対象の用紙Pの幅が、先に画像が記録された用紙Pの幅よりも大きい場合でも、次の記録対象の用紙Pに白筋が発生し難くなる。よって、画像品質の低下を抑制することができる。
【0126】
また本実施形態では、制御部9が、次の記録対象の用紙Pの幅と、次の記録対象の用紙Pよりも先に画像が記録された用紙Pの幅との差に応じて、ラインヘッド51(記録ヘッド55)に形成されている複数のノズル孔51bの一部からインク511(パージインク511a)が押し出されるようにインク供給機構500の動作を制御する。したがって、本実施形態によれば、用紙幅に応じたメンテナンスに使用されるインク511の量を抑制することができる。
【0127】
また本実施形態では、制御部9が、次の記録対象の用紙Pの幅と、次の記録対象の用紙Pよりも先に画像が記録された用紙Pの幅との差に応じて、ラインヘッド51(記録ヘッド55)のノズル面51aの一部がワイプブレード81によって払拭されるようにワイプブレード81の動作を制御する。したがって、本実施形態によれば、用紙幅に応じたメンテナンス時にワイプブレード81がノズル面51aに押し当てられた状態で移動する量を抑制して、ワイプブレード81の摩耗量を抑制することができる。そのため、ワイプブレード81の長寿命化を図ることができる。
【0128】
なお本実施形態では、用紙幅に応じたメンテナンス時にワイプブレード81によってノズル面51aが部分的に払拭される(清掃される)場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。用紙幅に応じたメンテナンス時にワイプブレード81がノズル面51aの全部分を払拭してもよい。
【0129】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。
【0130】
例えば、本発明の実施形態では、3個の記録ヘッド55によって構成されるラインヘッド51を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。ラインヘッド51は、1個、2個、又は4個以上の記録ヘッドによって構成され得る。
【0131】
また、本発明の実施形態では、フルカラーで画像を記録可能なインクジェット記録装置に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、モノクロで画像を記録するインクジェット記録装置にも適用可能である。
【0132】
なお、本発明の実施形態で説明された各事項は適宜組み合わせることが可能である。