【文献】
Kenji Nomura et al,Amorphous Oxide Semiconductors for High-Performance Flexible Thin-Film Transistors,Japanese Journal of Applied Physics,2006年 5月25日,Volume 45, Part 1, Number 5B ,pp.4303-4308
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は
以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態お
よび詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本
発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下
に説明する本発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号
を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0020】
(実施の形態1)
本実施の形態では、薄膜トランジスタおよびその作製工程について、
図1及び
図2を用い
て説明する。
【0021】
図1には、本実施の形態のボトムゲート型薄膜トランジスタを示す。
図1(A)は平面図
であり、
図1(B)は
図1(A)におけるA1−A2で切断した断面図である。
図1に示
す薄膜トランジスタ150は、基板100上にゲート電極層111が形成され、ゲート電
極層111上にゲート絶縁膜102が形成され、ゲート絶縁膜102を介してゲート電極
層111上にソース電極層及びドレイン電極層117a及び117bが形成され、ソース
電極層及びドレイン電極層117a及び117bの間にチャネル形成領域として機能する
半導体層113が形成されている。なお、本実施の形態では、ゲート絶縁膜102は第1
のゲート絶縁膜102a及び第2のゲート絶縁膜102bの2層からなる。
【0022】
図1(B)において、ソース電極層及びドレイン電極層(117a、117b)は、アル
ミニウムを主成分とする層(114a、114b)と高融点の金属材料層(115a、1
15b)からなる。また、ソース電極層及びドレイン電極層(117a、117b)の表
面と、第2のゲート絶縁膜(102b)の表面のうち、ソース電極層及びドレイン電極層
(117a、117b)に覆われていない領域は、プラズマでスパッタリング処理されて
おり、酸化物や汚染物の皮膜が取り除かれている。
【0023】
本発明では半導体層113として、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体を用いる。
In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体層は光吸収が少なく光励起され難いため、チャ
ネル形成領域をゲート電極層で覆って遮光する必要がない。
【0024】
図1(A)及び(B)に例示する薄膜トランジスタ150の作製方法を
図2の(A)乃至
(E)を用いて説明する。
【0025】
基板100は、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、若しくはアルミ
ノシリケートガラスなど、フュージョン法やフロート法で作製される無アルカリガラス基
板、セラミック基板の他、本作製工程の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック
基板等を用いることができる。また、ステンレス合金などの金属基板の表面に絶縁膜を設
けた基板を適用しても良い。基板100がマザーガラスの場合、基板の大きさは、第1世
代(320mm×400mm)、第2世代(400mm×500mm)、第3世代(55
0mm×650mm)、第4世代(680mm×880mm、または730mm×920
mm)、第5世代(1000mm×1200mmまたは1100mm×1250mm)、
第6世代1500mm×1800mm)、第7世代(1900mm×2200mm)、第
8世代(2160mm×2460mm)、第9世代(2400mm×2800mm、また
は2450mm×3050mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等を用い
ることができる。
【0026】
また基板100上に下地膜として絶縁膜を形成してもよい。下地膜としては、CVD法や
スパッタリング法等を用いて、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、または窒化酸
化珪素膜の単層、又は積層で形成すればよい。
【0027】
ゲート電極層111は、金属材料で形成される。金属材料としてはアルミニウム、クロム
、チタン、タンタル、モリブデン、銅などが適用される。ゲート電極層は単層の導電膜で
もよいが、好適例としては、アルミニウムを主成分とする層又はアルミニウムを主成分と
する層とバリアメタル層の積層構造体によって形成される。
【0028】
アルミニウムを主成分とする層としては、タングステン、チタン、タンタル、モリブデン
、ニッケル、白金、銅、金、銀、マンガン、炭素、又はシリコンなどの耐熱性向上元素若
しくはヒロック防止元素、又はこれらの元素を主成分とする合金材料もしくは化合物が添
加されたアルミニウム合金を用いる。
【0029】
バリアメタル層としては、チタン、モリブデン、クロムなどの高融点金属が適用される。
バリアメタル層はアルミニウムのヒロック防止、酸化防止のために設けることが好ましい
。
【0030】
ゲート電極層111となる導電膜は厚さ50nm以上300nm以下で形成する。ゲート
電極層111の厚さを300nm以下とすることで、後に形成される半導体膜や配線の段
切れ防止が可能である。また、ゲート電極層111の厚さを150nm以上300nm以
下とすることで、ゲート電極層の抵抗を低減することが可能であり、大面積化が可能であ
る。
【0031】
また、ゲート電極層111上には半導体膜を形成するので、段切れ防止のため端部がテー
パー状になるように加工することが望ましい。また、図示しないがこの工程でゲート電極
層に接続する配線や容量配線も同時に形成することができる。
【0032】
ゲート電極層111は、スパッタリング法、CVD法、めっき法、印刷法を用いて形成す
ることができる。また、銀、金、銅などの導電性ナノペーストを用いてインクジェット法
により吐出し焼成して、ゲート電極層111を形成することができる。
【0033】
なお、ここでは基板上に導電膜としてアルミニウム膜とモリブデン膜をスパッタリング法
により積層して成膜する。次に、本実施の形態における第1のフォトマスクを用いて形成
したレジストマスクを使い、当該導電膜をエッチングしてゲート電極層111を形成する
。
【0034】
ゲート絶縁膜102a、102bはそれぞれ、厚さ50〜150nmの酸化珪素膜、窒化
珪素膜、酸化窒化珪素膜、または窒化酸化珪素膜で形成することができる。なお、ゲート
絶縁膜を2層とせず、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、または窒化酸化珪素膜
の単層で形成することができるし、また、3層のゲート絶縁膜を形成してもよい。
【0035】
ゲート絶縁膜102aを窒化珪素膜、または窒化酸化珪素膜を用いて形成することで、基
板と第1のゲート絶縁膜102aの密着力が高まる。また、基板としてガラス基板を用い
た場合、基板からの不純物が半導体層113に拡散するのを防止することが可能であり、
さらにゲート電極層111の酸化防止が可能である。即ち、膜剥れを防止することができ
ると共に、後に形成される薄膜トランジスタの電気特性を向上させることができる。また
、第1のゲート絶縁膜102a、及び第2のゲート絶縁膜102bはそれぞれ厚さ50n
m以上であると、ゲート電極層111の凹凸を被覆できるため好ましい。
【0036】
ここでは、酸化窒化珪素膜とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いもので
あって、濃度範囲として酸素が55〜65原子%、窒素が1〜20原子%、Siが25〜
35原子%、水素が0.1〜10原子%の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化珪
素膜とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものであって、濃度範囲とし
て酸素が15〜30原子%、窒素が20〜35原子%、Siが25〜35原子%、水素が
15〜25原子%の範囲で含まれるものをいう。
【0037】
また、半導体層113に接するゲート絶縁膜102bとしては、例えば酸化珪素、酸化ア
ルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ハフニウム
を使うことができる。
【0038】
第1のゲート絶縁膜102a、第2のゲート絶縁膜102bはそれぞれ、CVD法やスパ
ッタリング法等を用いて形成することができる。ここでは、
図2(A)のように第1のゲ
ート絶縁膜102aとして窒化珪素膜を、第2ゲート絶縁膜102bとして酸化珪素膜を
、それぞれプラズマCVD法により成膜する。
【0039】
本実施の形態では、ソース電極層及びドレイン電極層となる導電膜は、第1の導電膜10
4及び第2の導電膜105から構成される。第1の導電膜104及び、第2の導電膜10
5は、スパッタリング法や真空蒸着法により成膜できる。
【0040】
ソース電極層及びドレイン電極層となる導電膜はゲート電極層111と同じ材料を使うこ
とができる。ここでは、
図2(A)のように、アルミニウムを主成分とする導電膜104
と高融点の金属材料からなる導電膜105を積層する。
【0041】
高融点の金属材料からなる導電膜105としては、チタン、タンタル、タングステンやモ
リブデン等を用いることができるが、特にIn、Ga、及びZnを含む酸化物半導体層に
接する層がチタン膜であることが好適である。導電膜の具体例として、単体のチタン膜、
もしくはチタン膜とアルミニウム膜の積層膜、もしくはチタン膜とアルミニウム膜とチタ
ン膜とを順に積み重ねた三層構造としても良い。
【0042】
また、透明導電膜でもよく、材料としてはインジウム錫酸化物、珪素もしくは酸化珪素を
含有したインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛などを用いることもでき
る。
【0043】
次に、導電膜104及び105上にフォトリソグラフィ技術またはインクジェット法によ
りレジストマスク131を形成する。レジストマスク131を用いて、ゲート絶縁膜10
2b上の導電膜104及び105を選択的にエッチングして
図2(B)のようにソース電
極層及びドレイン電極層(117a、117b)を形成する。
【0044】
なお、ソース電極層又はドレイン電極層(117a、117b)上には半導体膜を形成す
るので、段切れ防止のため端部がテーパー状になるように加工することが望ましい。
【0045】
ソース電極層及びドレイン電極層(117a、117b)の表面には、パタニング工程中
に大気成分だけでなくいろいろな物質が接触する。例えば、フォトリソグラフィ技術を用
いた場合はレジストやレジストの剥離液が接触する。また、インクジェット法を用いた場
合は、インク中に含まれる溶剤や分散剤などの添加剤が接触する。その結果、ソース電極
層及びドレイン電極層(117a、117b)の表面には酸化物や汚染物の皮膜が形成さ
れてしてしまう。そして、当該酸化物や汚染物の皮膜はIn、Ga、及びZnを含む酸化
物半導体層との間のコンタクト抵抗を高める原因となる。
【0046】
次に、ソース電極層及びドレイン電極層(117a、117b)の表面に形成された酸化
物や汚染物の皮膜を除去するために、ソース電極層及びドレイン電極層(117a、11
7b)の表面をプラズマでスパッタリング処理し、導電膜の表面を清浄な状態にする。ス
パッタリングに用いるガスはソース電極層及びドレイン電極層に対し不活性なガスを用い
る。例えばArなどの希ガスをその例に挙げることができる。なお、ソース電極層及びド
レイン電極層にコンタクト抵抗を高める酸化皮膜等が形成しない程度であれば、酸素など
を混合して用いてもよい。
【0047】
プラズマでスパッタリング処理する方法としては、例えば逆スパッタリング法を用いるこ
とができる。逆スパッタリング法は、スパッタリング装置においてターゲット側に電圧を
印加せずに、不活性ガス(例えばアルゴンガス)雰囲気下で基板側に電圧を印加し、基板
側にプラズマを形成して基板表面をエッチングする方法である。
【0048】
逆スパッタリングの条件としては、チャンバーの圧力は好ましくは0.2から4.0Pa
、Arガスを用い、出力は好ましくは50Wから2kWでRFスパッタリングする。
【0049】
プラズマでスパッタリング処理した結果、ソース電極層及びドレイン電極層(117a、
117b)の表面は清浄な状態になる。
【0050】
なお、
図2(c)に示す如く、ゲート絶縁膜(102b)の表面のうちソース電極層及び
ドレイン電極層(117a、117b)に覆われていない領域と、ソース電極層及びドレ
イン電極層(117a、117b)の表面は、プラズマでスパッタリング処理されること
で、わずかに膜減りすることもある。
【0051】
次に、プラズマでスパッタリング処理されたソース電極層及びドレイン電極層(117a
、117b)の表面を大気にさらすことなく、プラズマ処理に連続して半導体膜103を
ソース電極層及びドレイン電極層(117a、117b)上に
図2(D)のように成膜す
る。プラズマでスパッタリング処理された表面を大気にさらすことなく連続して成膜する
ことで、表面への大気成分や大気中の汚染物の付着を防ぎ、清浄な表面を保つことができ
る。
【0052】
プラズマでスパッタリング処理されたソース電極層及びドレイン電極層(117a、11
7b)の表面を大気にさらすことなく連続して半導体膜103を成膜する方法としては、
プラズマ処理室と半導体膜103の成膜室がつながったマルチチャンバー型の製造装置を
用いる方法を一例としてあげることができる。
【0053】
また、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体膜103をスパッタリング法で成膜する
場合、半導体膜103の成膜前に、半導体膜103の成膜室でソース電極層及びドレイン
電極層の表面を逆スパッタリング法で処理する方法は、装置と工程が簡便であるため好適
である。
【0054】
半導体膜103としては、In、Ga、及びZnを含む酸化物を用いることができる。半
導体膜103としてIn、Ga、及びZnを含む酸化物を用いる場合は、膜厚は2nm以
上200nm以下、好ましくは20nm以上150nm以下の厚さで形成するとよい。ま
た、膜中の酸素欠損が増えるとキャリア濃度が高まり、薄膜トランジスタ特性が損なわれ
てしまうため、酸素を含む雰囲気下で成膜する。
【0055】
In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体は、反応性スパッタリング法、パルスレーザー
蒸着法(PLD法)により成膜できる。気相法の中でも、材料系の組成を制御しやすい点
では、PLD法が、量産性の点からは、スパッタリング法が適している。
【0056】
ここでは、酸化インジウム(In
2O
3)と酸化ガリウム(Ga
2O
3)と酸化亜鉛(Z
nO)をそれぞれ等モルで混合し、焼結した直径8インチのターゲットを用い、ターゲッ
トから170mmの位置に基板を配置して、500Wの出力でDC(Direct Cu
rrent)スパッタリングして半導体膜を形成する。チャンバーの圧力は0.4Pa、
ガス組成比はAr/O
2が10/5sccmの条件で50nm成膜する。成膜の際の酸素
分圧をインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜を成膜する条件より高く設定し、
成膜雰囲気の酸素濃度を制御して酸素欠損を抑制することが望ましい。また、パルス直流
(DC)電源を用いると、ごみが軽減でき、半導体層の膜厚分布も均一となるために好ま
しい。
【0057】
次に、半導体膜103上にフォトリソグラフィ技術またはインクジェット法によりレジス
トマスク132を形成する。レジストマスク132を用いて、半導体膜103を選択的に
ドライエッチングやウエットエッチングし、
図2(E)のように半導体層113を形成す
る。
【0058】
In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体膜のエッチングの方法の一例として、クエン酸
やシュウ酸などの有機酸をエッチャントに用いることができる。例えば、50nmの半導
体膜103はITO07N(関東化学社製)を使い150秒でエッチング加工できる。
【0059】
In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタは、酸化物半導体層
113を加熱処理することで、特性が改善する。
【0060】
スパッタ法はターゲットに対して強いエネルギーをArイオンで与えるため、IGZOを
スパッタ法で成膜した場合、成膜されたIGZO膜中には強い歪エネルギーが内在し、歪
はキャリアの移動を阻害すると考えられる。この歪エネルギーを解放するため200℃〜
600℃、代表的には300℃〜500℃の熱処理を行う。この熱処理により原子レベル
の再配列が行われ、キャリアの移動を阻害する歪が解放される。このような理由から、成
膜後の熱処理(光アニールも含む)は重要である。
【0061】
加熱処理に伴うIn、Ga、及びZnを含む酸化物半導体膜の変化を、XRD(X線解析
:X−ray diffraction)測定を用いて調査した。ガラス基板上にDCス
パッタ法によって400nmのIGZO膜を成膜して、試料とした。
図3に、XRD測定
チャートを示す。
【0062】
まず、成膜直後のIGZO膜のXRD測定チャートを
図3にas−depoと記して示す
。また、成膜後に窒素雰囲気で異なる温度で一時間熱処理した試料のXRD測定チャート
を処理温度と共に、
図3に示す。すなわち、350℃、500℃、600℃及び、700
℃で熱処理した試料の測定チャートを示す。なお、異なる試料の測定チャートを見比べる
ために、便宜上、並べて図示している。
【0063】
700℃の熱処理を施した試料には、結晶化を示すピークが30°≦2シータ≦35°の
範囲と、55°≦2シータ≦60°の範囲に明確に観察される。また、700℃以上の加
熱温度では明瞭な結晶化が観察される。
【0064】
しかし、200℃〜600℃の熱処理は、700℃を超えた熱処理のように、原子の大き
な移動による結晶成長までには至っていない。
【0065】
本実施の形態では、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体膜103を350℃で一時
間加熱処理する。加熱処理は半導体膜103の成膜後であればどの工程で行っても良い。
例えば、半導体膜103を成膜し終えた後でも良いし、半導体層113を形成し終えた後
でも良い。また、薄膜トランジスタの封止膜を形成した後でも良いし、平坦化膜の形成後
に行う熱硬化処理などの他の加熱処理と兼ねて行っても良い。
【0066】
さらに、半導体層113にプラズマ処理を行ってもよい。プラズマ処理を行うことにより
、半導体層113の形成時に行ったエッチングによるダメージを回復することができる。
プラズマ処理はO
2、N
2O、好ましくは酸素を含む雰囲気下で行うことが好ましい。な
お、酸素を含む雰囲気の具体例としては、N
2や、Heや、Ar等に酸素を添加した気体
を挙げることができる。また、上記雰囲気にCl
2、CF
4を加えた雰囲気下で行っても
よい。なお、プラズマ処理は、無バイアスで行うことが好ましい。
【0067】
以上の方法で、
図1に示したボトムゲート型薄膜トランジスタを作製する。
【0068】
本実施の形態によれば、ソース電極層及びドレイン電極層の表面を清浄な状態を保ったま
まIn、Ga、及びZnを含む酸化物半導体層を形成できるため、ソース電極層及びドレ
イン電極層とIn、Ga、及びZnを含む酸化物半導体層との間のコンタクト抵抗が低減
された薄膜トランジスタを提供することができる。
【0069】
よって、本発明を適用することにより、オン・オフ比の大きい薄膜トランジスタを作製で
きる。また、良好な電気特性と信頼性を有する薄膜トランジスタを有する半導体装置を生
産性に優れた方法で提供できる。
【0070】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1とは別の形態の薄膜トランジスタおよびその作製工程に
ついて、
図4及び
図5を用いて説明する。
図4には、本実施の形態の順スタガ型薄膜トラ
ンジスタの断面図を示す。
図4に示す薄膜トランジスタ151は、基板100上にソース
電極層及びドレイン電極層(117a、117b)が形成され、半導体層113がソース
電極層及びドレイン電極層(117a、117b)を覆って形成されている。ゲート絶縁
層112が半導体層113上に形成され、ゲート電極層111がゲート絶縁層112を介
してチャネル形成領域に重畳して形成されている。
【0071】
図4において、ソース電極層及びドレイン電極層(117a、117b)は、高融点の金
属材料層からなる。ソース電極層及びドレイン電極層(117a、117b)の表面はプ
ラズマでスパッタリング処理されており、酸化物や汚染物の皮膜が取り除かれている。
【0072】
本発明では半導体層113として、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体を用いる。
In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体層は光吸収が少なく光励起され難いため、チャ
ネル形成領域をゲート電極層で覆って遮光する必要がない。すなわち、チャネル形成領域
において、ゲート電極層とソース電極層及びドレイン電極層の重なりを減らすことができ
、寄生容量を軽減できる。
【0073】
図4の薄膜トランジスタ151の作製方法を
図5の(A)乃至(E)を用いて説明する。
【0074】
基板100は、実施の形態と同様のものを用いることができる。本実施の形態では無アル
カリガラス基板を用いる。
【0075】
ソース電極層及びドレイン電極層となる導電膜は、実施の形態1に記載されたゲート電極
層111と同じ材料を使うことができる。ソース電極層及びドレイン電極層となる導電膜
は、スパッタリング法や真空蒸着法により成膜できる。
【0076】
ソース電極層及びドレイン電極層となる導電膜は、単層であっても復層であっても構わな
いが、特にIn、Ga、及びZnを含む酸化物半導体層に接する層がチタン膜であること
が好適である。
【0077】
本実施の形態では、高融点の金属材料を用いて
図5(A)のように一対のソース電極層又
はドレイン電極層(117a、117b)を形成する。このような微細加工は、フォトリ
ソグラフィ技術またはインクジェット法で形成したレジストマスクを用いて行うことがで
きる。
【0078】
なお、ソース電極層又はドレイン電極層(117a、117b)上には半導体膜を形成す
るので、段切れ防止のため端部がテーパー状になるように加工することが望ましい。
【0079】
ソース電極層及びドレイン電極層(117a、117b)の表面には、パタニング工程中
に大気成分だけでなくいろいろな物質が接触し、ソース電極層及びドレイン電極層(11
7a、117b)の表面には酸化物や汚染物の皮膜が形成されてしてしまう。
【0080】
ここでは、ソース電極層及びドレイン電極層(117a、117b)の表面にある酸化物
や汚染物の皮膜を、逆スパッタリング法にて除去する。逆スパッタリング法は、実施の形
態1と同様に、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体層を形成するスパッタリング装
置を用いておこなうことができる。
【0081】
スパッタリングに用いるガスはソース電極層及びドレイン電極層に対し不活性なガスを用
いる。ここではArを用い、チャンバーの圧力は好ましくは0.2から4.0Pa、出力
は好ましくは50Wから2kWでRFスパッタリングする。
【0082】
なお、基板表面もしくは基板表面に下地膜を形成している場合はその下地膜のソース電極
層及びドレイン電極層(117a、117b)に覆われていない部分がプラズマでスパッ
タリング処理された結果、わずかに膜減りすることもある。
【0083】
次に、プラズマでスパッタリング処理されたソース電極層及びドレイン電極層(117a
、117b)の表面を大気にさらすことなく、ソース電極及びドレイン電極(117a、
117b)上に酸化物半導体膜103をプラズマ処理に連続して成膜する。なお、In、
Ga、及びZnを含む酸化物半導体膜の成膜条件は実施の形態1と同様である。また、こ
の段階の断面図を
図5(B)に示す。
【0084】
続いて、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体膜103を大気にさらすことなく、酸
化物半導体膜103上にゲート絶縁膜102を連続して成膜する。酸化物半導体膜103
の表面を大気にさらさずに、ゲート絶縁膜102を連続成膜すると生産性が高まるだけで
なく、水蒸気などの大気成分や大気中に浮遊する不純物元素やゴミによる汚染がない積層
界面を形成することができるので、薄膜トランジスタ特性のばらつきを低減することがで
きる。
【0085】
なお、本明細書中で連続成膜とは、スパッタ法で行う第1の成膜工程からスパッタ法で行
う第2の成膜工程までの一連のプロセス中、被処理基板の置かれている雰囲気が大気等の
汚染雰囲気に触れることなく、常に真空中または不活性ガス雰囲気(窒素雰囲気または希
ガス雰囲気)におかれていることを言う。連続成膜を行うことにより、清浄化された被処
理基板に水分等が再付着する事態を回避して成膜を行うことができる。
【0086】
例えば、同一チャンバー内で第1の成膜工程から第2の成膜工程までの一連のプロセスを
行うことは本明細書における連続成膜の範囲にあるとする。
【0087】
また、異なるチャンバーで第1の成膜工程から第2の成膜工程までの一連のプロセスを行
う場合、第1の成膜工程を終えた後、大気にふれることなくチャンバー間を基板搬送して
第2の成膜を施すことも本明細書における連続成膜の範囲にあるとする。
【0088】
なお、第1の成膜工程と第2の成膜工程の間に、基板搬送工程、アライメント工程、徐冷
工程、または第2の工程に必要な温度とするため基板を加熱または冷却する工程等を有し
ても、本明細書における連続成膜の範囲にあるとする。
【0089】
ただし、洗浄工程、ウエットエッチング、レジスト形成といった液体を用いる工程が第1
の成膜工程と第2の成膜工程の間にある場合、本明細書でいう連続成膜の範囲には当ては
まらないとする。
【0090】
なお、ここでは珪素ターゲットと酸化物半導体膜用のターゲットを備えたマルチチャンバ
ー型のスパッタリング装置を使って、酸化物半導体膜103の成膜に連続して、酸化珪素
膜からなるゲート絶縁膜102を
図5(B)のように形成する。
【0091】
次に、フォトリソグラフィ技術またはインクジェット法で形成したレジストマスク133
を用いて、ゲート絶縁膜102と、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体膜103を
それぞれエッチングして、酸化物半導体層113とゲート絶縁層112を
図5(C)のよ
うに形成する。
【0092】
次に、ゲート電極層となる導電膜101を
図5(D)のように形成する。ゲート電極層は
実施の形態1と同様に形成できる。本実施の形態では、高融点の金属導電膜を単層で用い
る。
【0093】
次に、フォトリソグラフィ技術またはインクジェット法で形成したレジストマスク134
を用いて、導電膜101をエッチングして、ゲート電極層111を
図5(E)のように形
成する。
【0094】
以上の方法で、
図4に示した順スタガ型薄膜トランジスタを作製する。
【0095】
本実施の形態で形成した薄膜トランジスタはソース電極層及びドレイン電極層の表面を清
浄な状態を保ったままIn、Ga、及びZnを含む酸化物半導体層を形成できるため、ソ
ース電極層及びドレイン電極層とIn、Ga、及びZnを含む酸化物半導体層との間のコ
ンタクト抵抗を低減することができる。
【0096】
よって、本発明を適用することにより、オン・オフ比の大きい薄膜トランジスタを作製で
きる。また、良好な電気特性と信頼性を有する薄膜トランジスタを有する半導体装置を生
産性に優れた方法で提供できる。
【実施例1】
【0097】
本実施例では、実施の形態1で説明した半導体装置の作成方法を用いてボトムゲート型薄
膜トランジスタを作製した場合について説明する。また、当該薄膜トランジスタの電気特
性を、ソース電極層及びドレイン電極層の表面をプラズマ処理せずに作製した薄膜トラン
ジスタの電気特性と比較する。
【0098】
本実施例では、ソース電極層及びドレイン電極層の表面を逆スパッタリング法によりプラ
ズマ処理した。逆スパッタリング法の条件は、チャンバーの圧力は0.4Pa、Arガス
の流量は50sccm、出力は200WでRFスパッタリングした。
【0099】
作製した薄膜トランジスタは、100nmのタングステン膜からなるゲート電極層上に、
100nmの酸化窒化珪素膜からなるゲート絶縁膜を有し、ゲート絶縁膜を介してゲート
電極層と端部を重畳する100nmのタングステン膜からなるソース電極層及びドレイン
電極層と、チャネル形成領域上に50nmのIGZO膜からなる酸化物半導体層を有して
いる。また、チャネル長及びチャネル幅は共に100μmとした。
【0100】
ソース電極層及びドレイン電極層の表面を逆スパッタリング法によりプラズマ処理した後
に、大気にさらすことなくIn、Ga、及びZnを含む酸化物半導体層を形成した薄膜ト
ランジスタの電気特性(ゲート電圧ドレイン電流特性 V
g−I
d曲線)を
図6に示す。
【0101】
また、ソース電極層及びドレイン電極層の表面をプラズマ処理することなく、In、Ga
、及びZnを含む酸化物半導体層を形成した薄膜トランジスタのV
g−I
d曲線を比較例
として
図7に示す。なお、測定はドレイン電圧(ソースの電圧に対するドレインの電圧)
を1Vに設定した条件と、10Vに設定した条件で行った。
【0102】
図6と
図7のV
g−I
d曲線を比較すると、ドレイン電圧の設定条件にかかわらず、ソー
ス電極層及びドレイン電極層の表面を逆スパッタリング法によりプラズマ処理した
図6の
方が、トランジスタのオン電流が大きくなっていることが判る。また、オフ電流には大き
な差が認められない。
【0103】
以上の様に本発明の一態様を適用することで、オフ電流を抑制したまま、大きなオン電流
が得られる薄膜トランジスタ、所謂オン・オフ比の大きい薄膜トランジスタを作製できる
。また、本発明の一態様は、良好な電気特性と信頼性を有する半導体装置の生産性に優れ
た作製方法を提供する。