(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記燃料ガス噴出口に供給される前記燃料ガスを完全燃焼させる際に必要な酸素量を100%とした場合において、前記1次酸化剤噴出口に供給される前記1次酸化剤に含まれる酸素量が5%以上30%以下であることを特徴とする請求項1ないし4のうち、いずれか1項記載のバーナの火炎形成方法。
前記2次酸化剤噴出口に供給する前記2次酸化剤の流量Bと、前記3次酸化剤噴出口に供給する前記3次酸化剤の流量Cと、した場合、下記式(1)が成り立つことを特徴とする請求項1なしいし5のうち、いずれか1項記載のバーナの火炎形成方法。
0≦C/(B+C)≦0.4 ・・・(1)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際のバーナの寸法関係とは異なる場合がある。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態のバーナの火炎形成方法を実施する際に使用するバーナの概略構成を示す断面図である。
図1では、説明の便宜上、バーナ10の構成要素ではない、加熱炉11(炉壁12も含む)を図示する。つまり、
図1では、一例として、加熱炉11にバーナ10を設けた場合を図示している。
図1において、Eはバーナ本体17の中心軸(以下、「中心軸E」という)、Xは中心軸Eの延在方向(以下、「方向X」という)、Fは2次酸化剤の噴出方向(以下、「方向F」という)、Gは方向Xの一方向であって、1次酸化剤及び燃料ガスの噴出方向(以下、「方向G」という)をそれぞれ示している。
図2は、
図1に示す炉壁に固定されたバーナをD視した正面図である。
図2において、
図1に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0022】
初めに、
図1及び
図2を参照して、第1の実施の形態のバーナの火炎形成方法を実施する際に使用するバーナ10の構成について説明する。
バーナ10は、風箱15と、バーナ本体17と、を有する。風箱15は、筒状部材21と、ガイド部材22と、背面部材23と、前面部材25と、フランジ部26と、を有する。
【0023】
筒状部材21は、筒状部材本体28と、2次酸化剤導入口29と、を有する。筒状部材本体28は、方向Xに延在するように配置されている。筒状部材本体28は、その内部に2次酸化剤が導入される空間31を有する。筒状部材本体28の形状は、例えば、円筒形状とすることができる。
【0024】
2次酸化剤導入口29は、筒状部材本体28の上部を貫通するように設けられている。2次酸化剤導入口29は、2次酸化剤供給ライン(図示せず)を介して、2次酸化剤供給源(図示せず)と接続されている。2次酸化剤導入口29は、空間31内に2次酸化剤を導入するための導入口である。
2次酸化剤供給源(図示せず)が供給する2次酸化剤としては、例えば、酸素、酸素富化空気、空気のうちの、いずれか1種を用いることができる。
上述した2次酸化剤導入口29及び空間31は、2次酸化剤を供給する際の経路として機能する。
【0025】
ガイド部材22は、筒状部材21よりもかなり厚さの薄い部材であり、筒状部材21の先端面を除く、外面を覆うように配置されている。ガイド部材22は、筒状部材21の先端から突出するように設けられている。
ガイド部材22のうち、筒状部材21の先端から突出した部分は、炉壁12に形成された貫通部12Aに配置されており、貫通部12Aを区画する炉壁12と接触している。
【0026】
背面部材23は、第1の部分23−1と、第2の部分23−2と、貫通穴23Aと、を有する。
第1の部分23−1は、空間31の後端内に収容されており、空間31の内径と略等しい外径とされている。例えば、空間31の形状が円柱形状の場合、第1の部分23−1の形状も円柱形状とすることができる。
【0027】
第2の部分23−2は、第1の部分23−1と一体に構成されており、筒状部材21の外側に配置されている。第2の部分23−2は、第1の部分23−1よりもかなり厚さの薄い部材である。
第2の部分23−2は、第1の部分23−1よりも拡径された部材であり、ボルト33により、筒状部材本体28の後端に固定されている。これにより、風箱15の後端側が気密されている。
【0028】
貫通穴23Aは、第1及び第2の部分23−1,23−2の中心を方向Xに貫通するように設けられている。貫通穴23Aの径は、バーナ本体17の外径と略等しくなるように構成されている。貫通穴23Aは、バーナ本体17の後端側を挿入するための穴である。
上記構成とされた背面部材23は、バーナ本体17の後端側を支持する機能を有する。
【0029】
前面部材25は、前面部材本体34と、挿入穴35と、燃焼室37と、複数の2次酸化剤噴出口38と、を有する。
前面部材本体34は、板状とされた部材であり、平坦な前面34a及び背面34bを有する。前面部材本体34は、背面34bが筒状部材28の先端面28Aと接触するように配置されている。
前面部材本体34は、その一部がガイド部材22内に配置されており、残部がガイド部材22から突出している。前面部材本体34は、炉壁12を貫通する貫通部12Aに収容されている。これにより、前面部材本体34の前面34aは、加熱炉11内の雰囲気に露出されている。
【0030】
挿入穴35は、背面34b側から前面部材本体34の中央部を貫通させた穴である。挿入穴35は、バーナ本体17の先端が挿入される部分である。
挿入穴35の直径は、バーナ本体17の先端の外径と略等しくなるように構成されている。
【0031】
燃焼室37は、挿入穴35と前面部材本体34の前面34aとの間に位置する前面部材本体34に設けられている。バーナ本体17の先端を露出する燃焼室37の底面37aは、挿入穴35の内径よりも拡径されている。
燃焼室37は、バーナ本体17の先端に設けられており、拡がり角度が0°以上30°以下とされている。
拡がり角度が0°よりも小さいと、燃焼室37からガスの吹き出し速度が速くなり、安定した火炎の形成が難しくなる恐れがある。一方、拡がり角度が30°よりも大きいと、バーナ本体17先端や燃焼室37への、火炎による輻射伝熱量が大きくなり、バーナ本体17の先端や燃焼室37の損傷あるいは耐久性が低下する恐れがある。
したがって、拡がり角度を0°以上30°以下とすることで、火炎の安定性を保持できるとともに、バーナ本体17の損傷を抑制でき、さらにバーナ本体17の耐久性を向上させることができる。
燃焼室37の形状としては、例えば、円柱形状や円錐台形状等を用いることができる。
上記構成とされた燃焼室37には、バーナ本体17の先端から1次酸化剤及び燃料ガスが噴出される。
【0032】
複数の2次酸化剤噴出口38は、2次酸化剤を噴出する噴出口である。複数の2次酸化剤噴出口38は、バーナ本体17及び燃焼室37の外側に位置する前面部材本体34を貫通するように設けられており、空間31と接続されている。
複数の2次酸化剤噴出口38は、バーナ本体17の中心軸Eに対して回転対称に配置されている。複数の2次酸化剤噴出口38は、バーナ本体17の中心軸Eから離間する方向に延在している。このため、複数の2次酸化剤噴出口38から噴出する2次酸化剤は、中心軸Eから離間する方向Fに噴出される。
【0033】
このような構成とされた複数の2次酸化剤噴出口38を設けることで、複数の2次酸化剤噴出口38から噴出する2次酸化剤が、加熱炉11内のガスで希釈された後に、バーナ本体17が形成する1次火炎中に取り込まれることになる。
これにより、火炎40の温度が局所的に高温になることを抑制可能となるので、NO
Xの生成を抑制することができる。
なお、第1の実施の形態において、「1次火炎」とは、バーナ本体17から供給される1次酸化剤及び燃料ガスのみで形成される還元火炎のことをいい、「火炎40」とは、1次火炎に2次酸化剤が供給されることで形成される火炎のことをいう。
【0034】
バーナ本体17の中心軸Eと方向Fとが成す角度(以下、「角度θ1」という)は、例えば、0°よりも大きく、かつ30°以下にするとよい。
角度θ1が0°以下であると、バーナ本体17の中心軸Eから離間する方向に2次酸化剤を噴出させることが困難となる。これによって、加熱炉11内のガスで2次酸化剤が十分に希釈されることなく、火炎40に取り込まれるため、NO
Xの生成を抑制することが困難となってしまう。
【0035】
一方、角度θ1を30°よりも大きくすると、1次火炎への2次酸化剤の巻き込みが遅くなるため、火炎40が極端に長くなったり、未燃が発生したりする恐れがある。
したがって、角度θ1を0°よりも大きく、かつ30°以下にすることで、火炎40が極端に長くなったり、未燃が発生したりすることを抑制した上で、NO
Xの生成を抑制することができる。
【0036】
図2では、複数の2次酸化剤噴出口38の一例として、4つの円形の噴出口を設けた場合を例に挙げて説明したが、複数の2次酸化剤噴出口38の数や形状や大きさは、2次酸化剤の噴出速度を考慮して、適宜決定することができ、
図2に示す2次酸化剤噴出口38に限定されない。
【0037】
フランジ部26は、筒状部材21と前面部材25との境界付近に位置するガイド部材21の外側に設けられている。フランジ部26は、ボルト41により外面12b側に位置する炉壁12に固定されている。
【0038】
バーナ本体17は、先端部が挿入穴35内に挿入されており、後端側の一部が貫通穴23Aに収容されている。これにより、バーナ本体17は、風箱15内に固定されている。
バーナ本体17は、第1の環状部材43と、1次酸化剤供給経路45と、1次酸化剤噴出口46と、第2の環状部材48と、燃料ガス供給経路49と、燃料ガス噴出口51と、燃料ガス導入口53と、を有する。
【0039】
第1の環状部材43は、方向Xに延在する円筒状の部材である。第1の環状部材43の後端は、1次酸化剤供給ライン(図示せず)を介して、1次酸化剤供給源(図示せず)と接続されている。
1次酸化剤供給源(図示せず)が供給する1次酸化剤としては、例えば、酸素、酸素富化空気、空気のうちの、いずれか1種を用いることができる。
1次酸化剤供給経路45は、第1の環状部材43内に形成された方向Xに延在する空間である。1次酸化剤供給経路45は、1次酸化剤供給源(図示せず)から供給された1次酸化剤をバーナ本体17の先端側に位置する1次酸化剤噴出口46に供給する。
【0040】
1次酸化剤噴出口46は、第1の環状部材43の先端に配置されている。1次酸化剤噴出口46は、燃焼室37に露出されており、燃焼室37に対して、方向Gに1次酸化剤を噴出させる。1次酸化剤噴出口46の形状は、例えば、円形とすることができる。
【0041】
第2の環状部材48は、第1の環状部材43との間に隙間を介在させた状態で、第1の環状部材43の外側に配置されている。第2の環状部材48は、円筒状の部材である。第1及び第2の環状部材43,48は、バーナ本体17の中心軸Eに対して、同心円状に配置されている。
燃料ガス供給経路49は、第1の環状部材43と第2の環状部材48との間に形成された筒状空間である。燃料ガス供給経路49は、燃料ガスを燃料ガス噴出口51に供給する機能を有する。
【0042】
燃料ガス噴出口51は、第1及び第2の環状部材43,48の先端で区画されている。
燃料ガス噴出口51は、燃焼室37に露出されており、燃焼室37に対して、方向Gに燃料ガスを噴出させる。燃料ガス噴出口51の形状は、例えば、リング形状とすることができる。
燃料ガス導入口53は、第2の環状部材48に設けられている。燃料ガス導入口53は、燃料ガス供給ライン(図示せず)を介して、燃料ガス供給源(図示せず)と接続されている。
燃料ガス供給源(図示せず)が供給する燃料ガスとして、例えば、LNG(Liquefied Natural Gas)を用いることができる。
【0043】
上記構成とされたバーナ本体17の先端を介して、燃焼室37に、1次酸化剤及び燃料ガスが噴出されることで、還元火炎である1次火炎が形成される。
そして、バーナ本体17の中心軸Eから離間する方向に2次酸化剤を噴出させ、2次酸化剤を加熱炉11内のガスで希釈させながら、上記1次火炎に取り込ませることで、温度が均一とされ、NO
Xの生成が低減された火炎40が形成される。
【0044】
次に、
図1及び
図2を参照して、バーナ10を用いた第1の実施の形態のバーナの火炎形成方法について説明する。
第1の実施の形態のバーナの火炎形成方法では、バーナ本体17の中心から、Gに1次酸化剤と、1次酸化剤の外側から、燃料ガスとを噴出させ、1次酸化剤の噴出速度を燃料ガスの噴出速度よりも速くし、燃料ガスの外側から、バーナ本体17の中心軸Eから離間する方向に2次酸化剤を噴出させることで、火炎40を形成する。
【0045】
このように、バーナ本体17から同じ方向に、1次酸化剤及び燃料ガスを噴出させるとともに、1次酸化剤の噴出速度を燃料ガスの噴出速度よりも速くすることで、全体的に均一な温度とされた還元火である1次火炎を形成することができる。
そして、燃料ガスの外側から、バーナ本体17の中心軸Eから離間する方向に2次酸化剤を噴出させることで、加熱炉11内のガスで希釈された2次酸化剤と1次火炎とが徐々に反応させることが可能となる。これによって、希釈されていない2次酸化剤を早い段階で1次火炎と反応させることが可能となる。
したがって、酸素富化燃焼時において、火炎40に局所的な高温部分が形成されることを抑制可能となるので、NO
Xの生成を抑制することができる。
【0046】
上記バーナの火炎形成方法において、例えば、1次酸化剤の噴出速度が100m/s以上300m/s以下で、かつ燃料ガスの噴出速度を50m/s以上150m/s以下の範囲内にしてもよい。
【0047】
このように、1次酸化剤の噴出速度が燃料の噴出速度より速い条件において、上記噴出速度の範囲内とすることで、バーナ本体17の先端から離間した火炎40を形成することが可能となり、バーナ本体17の近傍に高温部分が形成されることを抑制できる。
また、酸素富化燃焼時において、1次酸化剤が燃焼ガスを十分に巻き込むことが可能となるので、火炎40中の酸素濃度が低下し、局所的な高温部の形成が抑制可能となるので、NO
Xの生成を抑制することができる。
【0048】
上記バーナの火炎形成方法において、例えば、1次酸化剤及び燃料ガスを、バーナ本体17の先端に設けられた燃焼室37に噴出させてもよい。
【0049】
このように、燃焼室37に1次酸化剤及び燃料ガスを噴出させることで、火炎40の形成時において、燃焼室37が高温を維持するため、バーナ本体17の先端から離間した火炎40を形成した場合でも、火炎40を安定して形成することができる。
【0050】
上記バーナの火炎形成方法において、バーナ本体17の中心軸Eと2次酸化剤の噴出方向(つまり、方向F)とが成す角度θ1は、例えば、0°以上30°以下にするとよい。
角度θ1が0°よりも小さいと、バーナ本体17の中心軸Eから離間する方向に2次酸化剤を噴出させることが困難となる恐れがある。この場合、加熱炉11内のガスで2次酸化剤を十分に希釈する前に、火炎40に2次酸化剤が取り込まれるため、NO
Xの生成を抑制することが困難となる恐れがある。
【0051】
一方、角度θ1を30°よりも大きくすると、1次火炎への2次酸化剤の巻き込みが遅くなるため、火炎40が極端に長くなったり、未燃が発生したりする恐れがある。
したがって、角度θ1を0°以上30°以下にすることで、火炎40が極端に長くなったり、未燃が発生したりすることを抑制した上で、NO
Xの生成を抑制できる。
【0052】
上記バーナの火炎形成方法において、燃料ガス噴出口51に供給される燃料ガスを完全燃焼させる際に必要な酸素量を100%とした場合、1次酸化剤噴出口46に供給する1次酸化剤に含まれる酸素量は、例えば、5%以上30%以下にしてもよい。
【0053】
1次酸化剤に含まれる酸素量が5%よりも少ないと、1次火炎の火炎長が長くなりすぎたり、未燃が発生したりする恐れがある。一方、1次酸化剤に含まれる酸素量が30%よりも多いと、1次火炎の還元性が弱くなるため、NO
Xの生成が増加する恐れがある。
したがって、1次酸化剤に含まれる酸素量を5%以上30%以下とすることで、1次火炎の火炎長が長くなりすぎたり、未燃が発生したりすることを抑制した上で、NO
Xの生成を抑制することができる。
【0054】
上記バーナの火炎形成方法において、例えば、1次酸化剤に含まれる酸素濃度を80%以上とし、2次酸化剤として空気を用いてもよい。
【0055】
このように、1次酸化剤に含まれる酸素濃度を80%以上とし、2次酸化剤として空気を用いることで、酸素の供給系統を1系統のみ準備すればよいため、設備の簡素化を図ることができるとともに、設備コストを抑制することができる。
【0056】
上記バーナの火炎形成方法において、例えば、2次酸化剤噴出口38に供給する2次酸化剤の温度は、600℃以下にしてもよい。
【0057】
2次酸化剤噴出口38に供給する2次酸化剤の温度が、600℃よりも高いと、NOxの生成が多くなる恐れがある。
したがって、2次酸化剤噴出口38に供給する2次酸化剤の温度を、600℃以下にすることで、火炎40の温度を高温にすることが可能となるので、被加熱物への伝熱効率を向上させることができる。また、上記の温度範囲では、NO
Xの生成を抑制した燃焼を行うことができる。
【0058】
第1の実施の形態のバーナの火炎形成方法によれば、バーナ本体17の中心から、方向Gに対して、1次酸化剤、及び1次酸化剤の外側から燃料ガスを噴出させ、1次酸化剤の噴出速度を燃料ガスの噴出速度よりも速くすることで、全体的に均一な温度とされた還元火である1次火炎を形成することが可能となる。
また、燃料ガスの外側から、バーナ本体17の中心軸Eから離間する方向に2次酸化剤を噴出させることで、加熱炉11内のガスで希釈された2次酸化剤と1次火炎とを徐々に反応させることが可能となる。
したがって、酸素富化燃焼時において、火炎40に局所的な高温部分が形成されることを抑制可能となるので、NO
Xの生成を抑制することができる。
【0059】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施の形態のバーナの火炎形成方法を実施する際に使用するバーナの概略構成を示す断面図である。
図3では、説明の便宜上、バーナ60の構成要素ではない、加熱炉11(炉壁12も含む)を図示する。つまり、
図3では、一例として、加熱炉11にバーナ60を設けた場合を図示している。
図3において、
図1及び
図2に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
図4は、
図3に示す炉壁に固定されたバーナをI視した正面図である。
図4において、
図1〜
図3に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0060】
初めに、
図3及び
図4を参照して、第2の実施の形態のバーナの火炎形成方法を実施する際に使用するバーナ60の構成について説明する。
バーナ60は、第1の実施の形態で説明したバーナ10を構成するバーナ本体17に替えて、バーナ本体61を有することと、複数の2次酸化剤噴出口38の配置を十字配置からX字配置に変更したこと以外は、バーナ10と同様に構成されている。
【0061】
バーナ本体61は、第1の実施の形態で説明したバーナ本体17の構成に、さらに、第3の環状部材62と、3次酸化剤供給経路63と、3次酸化剤導入口65と、旋回羽根68と、3次酸化剤噴出口69と、を有すること以外は、バーナ本体17と同様に構成される。
【0062】
第3の環状部材62は、第2の環状部材48の外側に配置された円筒状の部材である。第1ないし第3の環状部材43,48,62は、バーナ本体61の中心軸Eを中心とする同心円状に配置されている。
第3の環状部材62は、第2の環状部材48よりも方向Xの長さが短くなるように構成されている。第3の環状部材62は、燃料ガス導入口53を露出している。
【0063】
3次酸化剤供給経路63は、第2の環状部材48と第3の環状部材62との間に形成された円筒形状の空間である。3次酸化剤供給経路63は、3次酸化剤を3次酸化剤噴出口69に供給する機能を有する。
3次酸化剤導入口65は、第3の環状部材62に設けられている。3次酸化剤導入口65は、3次酸化剤供給ライン(図示せず)を介して3次酸化剤供給源(図示せず)と接続されている。
3次酸化剤供給源(図示せず)が供給する3次酸化剤としては、例えば、酸素、酸素富化空気、空気のうち、いずれか1種を用いることができる。
【0064】
旋回羽根68は、挿入穴35と貫通穴23Aとの間であって、挿入穴35側に位置する3次酸化剤供給経路63に設けられている。旋回羽根68は、3次酸化剤供給源(図示せず)から供給された3次酸化剤を旋回流にする機能を有する。
【0065】
3次酸化剤噴出口69は、第2及び第3の環状部材48,62の先端で区画されている。
3次酸化剤噴出口69は、燃焼室37に露出されており、燃焼室37に対して、方向Gに、旋回流とされた3次酸化剤を噴出させる。3次酸化剤噴出口69の形状は、例えば、リング形状とすることができる。
【0066】
次に、
図3及び
図4を参照して、バーナ10を用いた第1の実施の形態のバーナの火炎形成方法について説明する。
第2の実施の形態のバーナの火炎形成方法では、火炎70を形成する際に、複数の2次酸化剤噴出口38と燃料ガス噴出口51との間に設けられた3次酸化剤噴出口69から3次酸化剤を旋回流として噴出させること以外は、第1の実施の形態のバーナの火炎形成方法と同様な手法により行うことができる。
このように、複数の2次酸化剤噴出口38と燃料ガス噴出口51との間に設けられた3次酸化剤噴出口69から3次酸化剤を旋回流として噴出させることで、保炎効果により安定した火炎70を形成することができる。
【0067】
また、第2の実施の形態のバーナの火炎形成方法において、2次酸化剤噴出口38に供給する2次酸化剤の流量Bと、3次酸化剤噴出口69に供給する3次酸化剤の流量Cと、した場合、例えば、下記式(2)が成り立つように、2次酸化剤及び3次酸化剤の流量B,Cを設定してもよい。
0≦C/(B+C)≦0.4 ・・・(2)
【0068】
このように、上記式(2)が満たされるように、2次酸化剤の流量B、及び3次酸化剤の流量Cを調整することで、火炎70の火炎長を制御することができる。
また、3次酸化剤の割合を多くすると、燃料ガスと3次酸化剤との混合が速くなるため、火炎70の火炎長を短くすることができる。
【0069】
第2の実施の形態のバーナの火炎形成方法によれば、複数の2次酸化剤噴出口38と燃料ガス噴出口51との間に設けられた3次酸化剤噴出口69から3次酸化剤を旋回流として噴出させることで、保炎効果により安定した火炎70を形成することができる。
また、第2の実施の形態のバーナの火炎形成方法は、第1の実施の形態のバーナの火炎形成方法と同様な効果を得ることができる。
【0070】
なお、第2の実施の形態における火炎70とは、バーナ本体61から供給される1次酸化剤、3次酸化剤、及び燃料ガスで形成される1次火炎(還元火炎)に、2次酸化剤を供給することで形成される火炎のことをいう。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0072】
以下、実施例及び比較例について説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。
【0073】
(実験例1)
実験例1では、
図1に示すバーナ10を試験炉(図示せず)に設置し、表1に示す条件で、実施例1〜3の燃焼試験を行い、試験炉(図示せず)の出口付近におけるNO
X濃度(O
211%換算)を算出した。
【0075】
表1に示すように、実施例1〜3では、1次酸化剤及び2次酸化剤を合計した酸化剤に含まれる酸素濃度は、25%とした。
実施例1では、1次酸化剤及び2次酸化剤として、酸素濃度が25%とされた酸素富化空気を用いた。実施例2では、1次酸化剤として、酸素濃度が25%とされた酸素富化空気を用い、2次酸化剤として酸素濃度が21%とされた空気を用いた。
実施例3では、1次酸化剤として、酸素濃度が21%とされた空気を用い、2次酸化剤として酸素濃度が25.2%とされた酸素富化空気を用いた。
【0076】
次に、実施例1〜3のNO
X濃度(O
211%換算)を算出方法について説明する。
実施例1〜3のNO
X濃度としては、下記式(3)を用いて、O
211%換算(酸素濃度の基準)のNO
X濃度(ppm)を求めた。
NO
X濃度(ppm)=(21−換算O
2濃度)/(21−実O
2濃度)× 実NO
X濃度(ppm)・・・(3)
【0077】
上記式(3)において、「実O
2濃度」は、排ガス中のO
2濃度を測定した値(堀場製作所製のVA−3000を用いて測定した値)を示している。「実NO
X濃度」は、排ガス中のNO
X濃度を測定した値(島津製作所製NOA-7000で測定した値)を示している。「21」は、空気中の酸素濃度の数値で単位はパーセントを示している。
また、「換算O
2濃度」については、大気汚染防止法などで、標準酸素濃度補正を用いてNO
X濃度を計算することに基づいて、実施例1〜3では換算O
2濃度を11%で換算した。
【0079】
図5は、比較例で使用したバーナの概略構成を示す断面図である。
実験例1では、
図5に示すバーナ100を試験炉(図示せず)に設置し、比較例の燃焼試験を行った。
【0080】
ここで、
図5を参照して、比較例で使用したバーナ100の構成について、簡単に説明する。なお、バーナ100は、特許文献2に開示されたバーナである。
バーナ100は、燃料ガスが供給される内管101と、内管101の先端に設けられた原料ガス噴出口102と、内管101を収容する外管104と、内管101の先端及び外管104の先端で区画された補助酸化剤噴出口106と、主酸化剤通路108と、バーナタイル109と、バーナタイル109で区画され、主酸化剤を噴出する主酸化剤噴出口111と、を有する。
【0081】
比較例で使用したバーナ100は、バーナ100の中心から燃料ガスを噴出させ、その外側から補助酸化剤を噴出させ、補助酸化剤の外側から主酸化剤を噴出させる構成とされている。
比較例では表3に示す条件を用いて、燃焼試験を行い、試験炉(図示せず)の出口付近におけるNO
X濃度(O
211%換算)を算出した。
【0083】
表3を参照するに、比較例のNO
X濃度は320ppmであった。一方、実施例1〜3のNO
X濃度は、26〜36.7ppmであり、十分にNO
X濃度を低減できることが確認できた。
【0084】
(実験例2)
実験例2では、
図2に示すバーナ60を試験炉(図示せず)に設置し、表4に示す条件で、バーナ60の燃焼試験を行い、実験例1と同様な手法により、試験炉(図示せず)の出口付近におけるNO
X濃度(O
211%換算)を算出した。
このとき、(3次酸化剤の流量C)/(2次酸化剤の流量B+3次酸化剤の流量C)の値を、0〜0.7の範囲内で変更させた。以下、(3次酸化剤の流量C)/(2次酸化剤の流量B+3次酸化剤の流量C)を単に、C/(B+C)という。
【0086】
図6に、実験例2で取得したC/(B+C)とNO
X濃度(O
211%換算)との関係を示す。
図6は、実験例2で取得したC/(B+C)とNO
X濃度との関係を示すグラフである。
図6を参照するに、C/(B+C)の数値が大きくなるにつれて、NO
X濃度が大きくなることが判った。また、排ガス量10万m
3/h以上の金属加熱炉を対象とした場合のNO
x規制値が100ppmであることから、NO
X濃度を100ppm以下にするためには、C/(B+C)の数値を0以上0.4以下にする必要があることが判った。
【0087】
実験例2では、
図2に示すバーナ60を用いて、C/(B+C)が0、0.2、0.4、0.6のときの前面部材本体42の前面42aからの距離と試験炉の内壁の温度との関係を調べた。この結果を、
図7に示す。また、このときの火炎の長さを目視で観察した。
図7は、バーナ本体の先端からの距離と試験炉の内壁の温度との関係を示すグラフである。
【0088】
図7に示す結果を取得する際に観察した火炎の長さの結果から、3次酸化剤の割合を多くすると、火炎の長さが短くなるとともに、最高温度となる位置がバーナ本体61に近づくことが判った。また、3次酸化剤の割合を調節することで、火炎の長さを調節可能なことが確認できた。
さらに、C/(B+C)を0.6まで高くすると、火炎の長さが伸びる傾向にあった。これは、火炎の状態が変化したためであると考えられる。
【0089】
(実験例3)
実験例3では、実験例1で使用した
図1に示すバーナ10を用いるとともに、表5に示す第1の条件を用いて燃焼試験を行った。
そして、実験例1と同様な手法により、試験炉(図示せず)の出口付近におけるNO
X濃度(O
211%換算)を算出するとともに、試験炉(図示せず)の出口付近におけるCO濃度を測定した。
CO濃度は、堀場製作所製のVA−3000を用いて、測定した。
【0091】
第1の条件を用いて、1次酸化剤の噴出速度とNO
X濃度(O
211%換算)及びCO濃度との関係を調べた結果を
図8に示す。
図8は、1次酸化剤の噴出速度とNO
X濃度(O
211%換算)及びCO濃度との関係を示すグラフである。
【0092】
図8を参照するに、NO
X濃度は、1次酸化剤の噴出速度が速くなると、低下していく傾向があり、CO濃度は、1次酸化剤の噴出速度が速くなると、増加していく傾向があることが判った。
図8に示す結果から、1次酸化剤の噴出速度は、100m/s以上300m/s以下の範囲内が好ましいことが確認できた。
【0093】
また、実験例3では、実験例1で使用した
図1に示すバーナ10を用いるとともに、表5に示す第2の条件を用いて燃焼試験を行った。
そして、実験例1と同様な手法により、試験炉(図示せず)の出口付近におけるNO
X濃度(O
211%換算)を算出するとともに、試験炉(図示せず)の出口付近におけるCO濃度を測定した。CO濃度は、上述した手法により測定した。
第2の条件を用いて、燃料ガスの噴出速度とNO
X濃度(O
211%換算)及びCO濃度との関係を調べた結果を
図9に示す。
図9は、燃料ガスの噴出速度とNO
X濃度(O
211%換算)及びCO濃度との関係を示すグラフである。
【0094】
図9を参照するに、NO
X濃度は、燃料ガスの噴出速度が速くなると、低下していく傾向があり、CO濃度は、燃料ガスの噴出速度が速くなると、増加していく傾向があることが判った。
図9に示す結果から、燃料ガスの噴出速度は、50m/s以上150m/s以下の範囲内が好ましいことが確認できた。
【0095】
図8及び
図9に示す結果から、1次酸化剤の噴出速度を100m/s以上300m/s以下とし、燃料ガスの噴出速度を50m/s以上150m/s以下にすることが好ましいことが判った。
【0096】
(実験例4)
実験例4では、実験例1で使用した
図1に示すバーナ10を用いるとともに、表6に示す条件1〜6を用いて燃焼試験を行った。そして、1次酸化剤及び2次酸化剤の流量バランスを変えたときの試験炉(図示せず)の出口付近におけるNO
X濃度(O
211%換算)を算出するとともに、試験炉(図示せず)の出口付近におけるCO濃度を測定した。このとき、目視で火炎の長さも観察した。
また、NO
X濃度(O
211%換算)の算出、及びCO濃度の測定は、上述した手法を用いた。これらの結果を
図10に示す。
【0098】
図10は、酸化剤全体の流量に対する1次酸化剤の流量割合とNO
X濃度(O
211%換算)及びCO濃度との関係を示す。
なお、酸化剤全体の流量に対する1次酸化剤の流量割合とは、下記式(4)から算出される割合のことをいう。
1次酸化剤の流量割合=(1次酸化剤の流量)/(1次酸化剤の流量と2次酸化剤の流量とを合計した流量) ・・・(4)
【0099】
図10を参照するに、1次酸化剤の流量割合を高くすると、NO
X濃度は減少するが、火炎の長さが長くなり、CO濃度が高くなることが確認できた。