(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
両トレッド端間に位置するトレッド部踏面の少なくとも一部に、タイヤ周方向に延びる一本以上の主溝と、該主溝間および/または主溝とトレッド端間でタイヤ周方向に凸形状となるような1個の屈曲点をもってタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝とを配設して、前記横溝の凸形状に対応した形状の周方向突出部を有する複数個のブロックを区画形成し、ブロックに、タイヤ幅方向に延びる少なくとも一本の横サイプを配設してなり、
前記周方向突出部の頂点は、前記ブロックのタイヤ幅方向中央よりもタイヤ幅方向一方側にオフセット配置され、
前記ブロックのタイヤ幅方向両側に位置するブロック側壁のそれぞれは、少なくとも一部がタイヤ周方向に対して傾斜し、
前記ブロックのタイヤ幅方向一方側に位置する前記ブロック側壁の少なくとも一部は、前記周方向突出部側から当該周方向突出部側とはタイヤ周方向反対側に向かって前記タイヤ幅方向一方側に傾斜し、
前記ブロックのタイヤ幅方向他方側に位置する前記ブロック側壁の少なくとも一部は、前記周方向突出部側から当該周方向突出部側とはタイヤ周方向反対側に向かって前記タイヤ幅方向他方側に傾斜し、
前記横サイプは、ブロック幅中心線よりも前記周方向突出部の頂点側に位置する主溝またはトレッド端に一端が開口し他端が当該一端に対して前記周方向突出部側に位置してブロック内で終端または横溝に開口する第1サイプと、ブロック幅中心線よりも前記周方向突出部の頂点側とは反対側に位置する主溝またはトレッド端に一端が開口し他端が当該一端に対して前記周方向突出部側に位置してブロック内で終端または横溝に開口する第2サイプとからなる1対の複合横サイプを含み、
前記第1サイプと前記第2サイプとを、タイヤ回転軸線を含みブロック表面に直交する平面に投影したとき、第1サイプのタイヤ幅方向寸法成分と第2サイプのタイヤ幅方向寸法成分とがオーバーラップすることを特徴とする、空気入りタイヤ。
前記横サイプは、ブロック幅中心線よりも前記周方向突出部の頂点側に位置する主溝またはトレッド端に一端が開口し他端がブロック内で終端または横溝に開口する第1サイプと、ブロック幅中心線よりも前記周方向突出部の頂点側とは反対側に位置する主溝またはトレッド端に一端が開口し他端がブロック内で終端または横溝に開口する第2サイプとからなる1対の複合横サイプを含み、
前記第2サイプは、延在方向および深さ方向の双方に屈曲するように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ここに、
図1は、本発明の空気入りタイヤの一例のトレッド部の一部の展開図である。そして、
図1に示す空気入りタイヤは、特に限定されることなくスタッドレスタイヤとして好適に用いることができる。
【0017】
ここで、この一例の空気入りタイヤでは、
図1に示すように、両トレッド端Eの間に位置するトレッド部踏面1に、タイヤ周方向に延びる複数本(
図1では4本)の主溝21,22,23,24が配設されている。また、トレッド部踏面1には、各主溝間、および、タイヤ幅方向両外側に位置する主溝22,24とトレッド端Eとの間でタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝31,32,36,39A,39Bが配設されている。そして、この一例の空気入りタイヤのトレッド部踏面1には、主溝21,22,23,24および横溝31,32,36,39A,39Bにより複数個のブロックが区画形成されている。
【0018】
より具体的には、この一例の空気入りタイヤのトレッド部踏面1には、タイヤ周方向に沿って直線状に延びる第1主溝21と、第1主溝21よりもタイヤ幅方向外側(
図1では左側)に位置し、タイヤ周方向に沿って直線状に延びる第2主溝22とが配設されている。また、トレッド部踏面1には、第1主溝21と第2主溝22との間でタイヤ周方向一方(
図1では下方)に凸形状となるような1個の屈曲点をもってタイヤ幅方向に延びる複数本の第1横溝31が配設されている。そして、トレッド部踏面1には、第1主溝21、第2主溝22および第1横溝31により区画形成された複数個の第1ブロック41よりなる第1ブロック列が形成されている。なお、第1ブロック41は、平面視矢羽形状をしており、第1ブロック41には、タイヤ幅方向に延びる複数本のサイプ41Aが形成されている。
【0019】
また、トレッド部踏面1には、タイヤ赤道Cを挟んで第1主溝21に隣接して(
図1では右側に)位置し、タイヤ周方向に向かってジグザグ状に延びる第3主溝23が配設されている。また、トレッド部踏面1には、第1主溝21と第3主溝23との間でタイヤ幅方向に向かって延びる複数本の第2横溝32が配設されている。そして、トレッド部踏面1には、第1主溝21、第3主溝23および第2横溝32により区画形成された複数個の第2ブロック42よりなる第2ブロック列が形成されている。なお、第2ブロック42は、平面視略四角形状をしており、第2ブロック42には、タイヤ幅方向に延びる複数本のサイプ42Aが形成されている。
【0020】
更に、トレッド部踏面1には、第3主溝23よりもタイヤ幅方向外側(
図1では右側)に位置し、タイヤ周方向に向かって延びる鋸歯波状の第4主溝24が配設されている。また、トレッド部踏面1には、第3主溝23と第4主溝24との間でタイヤ周方向一方(
図1では上方)に凸形状となるような1個の屈曲点をもってタイヤ幅方向に延びる複数本の第3横溝36が配設されている。そして、トレッド部踏面1には、第3主溝23、第4主溝24および第3横溝36により区画形成された複数個の第3ブロック50,60よりなる第3ブロック列が形成されている。なお、第3ブロック50,60のタイヤ幅方向寸法は、タイヤ周方向寸法よりも大きくされている。
【0021】
ここで、第3横溝36は、互いに形状の異なる第4横溝34と第5横溝35とをタイヤ周方向に等間隔で交互に配設してなる。即ち、複数本の第3横溝36のうち少なくとも一本は第4横溝34よりなる。
そして、第4横溝34は、タイヤ幅方向一方(
図1では左側)に位置する第3主溝23に一端が開口する狭幅の第1横溝成分37と、タイヤ幅方向他方(
図1では右側)に位置する第4主溝24に一端が開口し、第1横溝成分37よりも溝幅の広い第2横溝成分38とで構成されている。なお、第4横溝34では、第1横溝成分37と第2横溝成分38とが互いに連通する部分(第1横溝成分37と第2横溝成分38との交差部)が屈曲点となり、第1横溝成分37と第2横溝成分38とは屈曲点を挟んでタイヤ幅方向に対する傾斜角度が互いに異なっている。
また、第5横溝35は、屈曲点を挟んでタイヤ幅方向に対する傾斜角度が互いに異なり、且つ、溝幅が互いに等しい2つの横溝成分で構成されている。
【0022】
更に、第3ブロック50,60のタイヤ赤道C側に位置する第3主溝23がタイヤ赤道C側に向かって傾斜する部分と、第3ブロック50,60のトレッド端E側に位置する第4主溝24がトレッド端E側に向かって傾斜する部分とのタイヤ周方向の位置は略等しい。従って、第3ブロック50,60のタイヤ幅方向両側(第3主溝23側および第4主溝24側)に位置するブロック側壁同士は、そのブロック側壁の大部分において、タイヤ周方向に対して互いに反対側に向かって傾斜している。
【0023】
即ち、第3ブロック50は、第4横溝34の凸形状に対応した形状の周方向突出部51を有している。また、第3ブロック50の周方向突出部51が位置する側とは反対側のタイヤ周方向端縁は、周方向突出部51側に向かって凸の屈曲線よりなる。更に、第3ブロック50のタイヤ赤道C側に位置するブロック側壁53は、第4横溝34側から第5横溝35側に向かってタイヤ赤道C側に(
図1では左下がりに)傾斜している。また、第3ブロック50のトレッド端E側に位置するブロック側壁54は、その大部分において、第4横溝34側から第5横溝35側に向かってトレッド端E側に(
図1では右下がりに)傾斜している。なお、第3ブロック50のトレッド端E側に位置するブロック側壁54の一部(第5横溝35側)は、タイヤ赤道C側に(
図1では左下がりに)傾斜している。即ち、ブロック側壁54は屈曲してタイヤ周方向に延在している。また、第3ブロック50の周方向突出部51の頂点52は、特に限定されることなく第3ブロック50のタイヤ幅方向中央よりもタイヤ赤道C側にオフセット配置されている。
【0024】
そして、平面視略矢羽形状の第3ブロック50には、第4横溝34および第5横溝35に対応した配設形状で、第3ブロック50のタイヤ幅方向両端間に亘ってタイヤ幅方向に延びる少なくとも一本(
図1では3本)の横サイプ(複合横サイプ)が配設されている。具体的には、
図2に拡大して示すように、第3ブロック50には、周方向突出部51側(即ち、第4横溝34側)に位置する第1複合横サイプ55と、第3ブロック50の周方向突出部51とはタイヤ周方向反対側に位置する第3複合横サイプ57と、第1複合横サイプ55と第3複合横サイプ57との間に位置する第2複合横サイプ56とが配設されている。より具体的には、第3ブロック50の周方向突出部51側には、ブロック幅中心線よりも周方向突出部51の頂点52側に位置する第3主溝23に一端が開口し、他端が第3ブロック50内で終端するサイプ55Aと、ブロック幅中心線よりも周方向突出部51の頂点52側とは反対側に位置する第4主溝24に一端が開口し、他端が第4横溝34の第1横溝成分37に開口するサイプ55Bとよりなる第1複合横サイプ55が形成されている。また、第3ブロック50の周方向突出部51とはタイヤ周方向反対側(
図1では下側)には、第3主溝23に一端が開口し、他端が第3ブロック50内で終端するサイプ57Aと、第4主溝24に一端が開口し、他端が第3ブロック50内で終端するサイプ57Bとよりなる第3複合横サイプ57が形成されている。更に、第1複合横サイプ55と第3複合横サイプ57との間(即ち、第3ブロック50のタイヤ周方向中央部)には、第3主溝23に一端が開口し、他端が第3ブロック50内で終端するサイプ56Aと、第4主溝24に一端が開口し、他端が第3ブロック50内で終端するサイプ56Bとよりなる第2複合横サイプ56が形成されている。因みに、各複合横サイプ55,56,57の開口幅、即ち各複合横サイプ55,56,57を構成するサイプ55A,55B,56A,56B,57A,57Bの開口幅は、特に限定されることなく、0.3〜1.5mmとすることができる。
なお、
図1のI−I線に沿う断面を
図4(a)に示すように、第3ブロック50において、サイプ55B,56B,57Bは、延在方向および深さ方向の双方に屈曲するように3次元的に形成されている。また、サイプ55A,56A,57Aは、延在方向に屈曲し且つ深さ方向に直線状になるように形成されている。そして、各複合横サイプ55,56,57は、タイヤ回転軸線を含みブロック表面に直交する平面に投影したとき、複合横サイプを構成するサイプのタイヤ幅方向寸法成分同士がオーバーラップする(即ち、複合横サイプを構成する2つのサイプの投影図同士が重なり合う)。
【0025】
また、第3ブロック60は、第5横溝35の凸形状に対応した形状の周方向突出部61を有している。また、第3ブロック60の周方向突出部61が位置する側とは反対側のタイヤ周方向端縁は、第1横溝成分37の溝壁に対応する直線と、第2横溝成分38の溝壁に対応する直線と、それらの直線を結んでタイヤ周方向に延びる直線とで構成される、周方向突出部61側に向かって凸の屈曲線よりなる。更に、第3ブロック60のタイヤ赤道C側に位置するブロック側壁63は、第5横溝35側から第4横溝34側に向かってタイヤ赤道C側に(
図1では左下がりに)傾斜している。また、第3ブロック60のトレッド端E側に位置するブロック側壁64は、その大部分において、第5横溝35側から第4横溝34側に向かってトレッド端E側に(
図1では右下がりに)傾斜している。なお、第3ブロック60のトレッド端E側に位置するブロック側壁64の一部(第4横溝34側)は、タイヤ赤道C側に(
図1では左下がりに)傾斜している。即ち、ブロック側壁64は屈曲してタイヤ周方向に延在している。また、第3ブロック60の周方向突出部61の頂点62は、特に限定されることなく第3ブロック60のタイヤ幅方向中央よりもタイヤ赤道C側にオフセット配置されている。
【0026】
そして、平面視略矢羽形状の第3ブロック60には、第4横溝34および第5横溝35に対応した配設形状で、第3ブロック60のタイヤ幅方向両端間に亘ってタイヤ幅方向に延びる少なくとも一本(
図1では3本)の横サイプ(複合横サイプ)が配設されている。具体的には、
図3に拡大して示すように、第3ブロック60には、周方向突出部61側(即ち、第5横溝35側)に位置する第4複合横サイプ65と、第3ブロック60の周方向突出部61とはタイヤ周方向反対側に位置する第6複合横サイプ67と、第4複合横サイプ65と第6複合横サイプ67との間に位置する第5複合横サイプ66とが配設されている。より具体的には、第3ブロック60の周方向突出部61側には、ブロック幅中心線よりも周方向突出部61の頂点62側に位置する第3主溝23に一端が開口し、他端が第4横溝34の第2横溝成分38に開口するサイプ65Aと、ブロック幅中心線よりも周方向突出部61の頂点62側とは反対側に位置する第4主溝24に一端が開口し、他端が第3ブロック50内で終端するサイプ65Bとよりなる第4複合横サイプ65が形成されている。また、第3ブロック60の周方向突出部61とはタイヤ周方向反対側(
図1では下側)には、第3主溝23に一端が開口し、他端が第3ブロック60内で終端するサイプ67Aと、第4主溝24に一端が開口し、他端が第3ブロック60内で終端するサイプ67Bとよりなる第6複合横サイプ67が形成されている。更に、第4複合横サイプ65と第6複合横サイプ67との間(即ち、第3ブロック60のタイヤ周方向中央部)には、第3主溝23に一端が開口し、他端が第3ブロック60内で終端するサイプ66Aと、第4主溝24に一端が開口し、他端が第3ブロック60内で終端するサイプ66Bとよりなる第5複合横サイプ66が形成されている。因みに、各複合横サイプ65,66,67の開口幅、即ち各複合横サイプ65,66,67を構成するサイプ65A,65B,66A,66B,67A,67Bの開口幅は、特に限定されることなく、0.3〜1.5mmとすることができる。
なお、第3ブロック60において、サイプ65B,66B,67Bは、延在方向および深さ方向の双方に屈曲するように3次元的に形成されており、サイプ65A,66A,67Aは、延在方向に屈曲し且つ深さ方向に直線状になるように形成されている。また、各複合横サイプ65,66,67は、タイヤ回転軸線を含みブロック表面に直交する平面に投影したとき、複合横サイプを構成するサイプのタイヤ幅方向寸法成分同士がオーバーラップする(即ち、複合横サイプを構成する2つのサイプの投影図同士が重なり合う)。
【0027】
また、この一例の空気入りタイヤのトレッド部踏面1には、第2主溝22とトレッド端Eとの間でタイヤ幅方向に向かって延びる第6横溝39A、および、第4主溝24とトレッド端Eとの間でタイヤ幅方向に向かって延びる第7横溝39Bが配設されている。そして、トレッド部踏面1には、第2主溝22、第6横溝39Aおよびトレッド端Eにより区画形成された複数個の第4ブロック43よりなる第4ブロック列が形成されている。更に、トレッド部踏面1には、第4主溝24、第7横溝39Bおよびトレッド端Eにより区画形成された複数個の第5ブロック44よりなる第5ブロック列が形成されている。なお、第4ブロック43は、平面視略四角形状をしており、第4ブロック43には、タイヤ幅方向およびタイヤ周方向に延びる複数本のサイプ43Aが形成されている。また、第5ブロック44は、平面視略四角形状をしており、第5ブロック44には、タイヤ幅方向およびタイヤ周方向に延びる複数本のサイプ44Aが形成されている。
【0028】
ここで、この一例の空気入りタイヤでは、トレッド部踏面1の少なくとも一部に第3ブロック50,60を区画形成したことを特徴とする。
【0029】
そして、この一例の空気入りタイヤの第3ブロック50は、
図2(a)に第3ブロック50の拡大図を示すように、タイヤ制動時に第3ブロック50の周方向突出部51側が踏み込み端側となる場合には、略矢羽形状の第3ブロック50の両幅端部に相当する羽部が中央部(頂点52が位置する部分)に倒れこむ方向(
図2(a)の矢印で示す方向)に力が働く。従って、第3ブロック50の特にタイヤ幅方向中央部が倒れ込み変形し難くなるので、タイヤの接地面積を確保することができる。また、第3ブロック50の羽部(タイヤ幅方向両端部側)が若干倒れ込み変形するので、第3ブロック50のエッジによる路面(氷雪路面)の引っ掻き効果を向上することができる。更に、この一例の空気入りタイヤの第3ブロック50では、第1〜第3複合横サイプ55,56,57が第3ブロック50のタイヤ幅方向両端間に亘って位置するように配設されているので、エッジ成分を十分に確保することができ、第1〜第3複合横サイプ55,56,57のエッジによる路面の引っ掻き効果を向上することができる。更に、第1〜第3複合横サイプ55,56,57はそれぞれタイヤ周方向にオーバーラップするサイプ部分を有しているので、第3ブロック50ではエッジ成分を十分に確保することができる。
【0030】
また、この一例の空気入りタイヤの第3ブロック50は、
図2(b)に第3ブロック50の拡大図を示すように、タイヤ制動時に第3ブロック50の周方向突出部51側とは反対側が踏み込み端側となる場合には、略矢羽形状の第3ブロック50が開く方向(
図2(b)に矢印で示す方向)に力が働く。従って、第3ブロック50の羽部(タイヤ幅方向両端部側)が若干倒れ込み変形して、第3ブロック50のエッジによる路面の引っ掻き効果を向上することができる。更に、この一例の空気入りタイヤの第3ブロック50では、第1〜第3複合横サイプ55,56,57が、第3ブロック50のタイヤ幅方向両端間に亘って位置するように配設されているので、エッジ成分を十分に確保することができ、第1〜第3複合横サイプ55,56,57のエッジによる路面の引っ掻き効果を向上することができる。更に、第1〜第3複合横サイプ55,56,57はそれぞれタイヤ周方向にオーバーラップするサイプ部分を有しているので、第3ブロック50ではエッジ成分を十分に確保することができる。
【0031】
更に、
図3(a),(b)に示すように、この一例の空気入りタイヤの第3ブロック60についても第3ブロック50と同様にして、タイヤの接地面積の確保と第3ブロック60のエッジによる路面の引っ掻き効果の向上とを両立することができる。
【0032】
従って、この一例の空気入りタイヤによれば、第3ブロック50,60のタイヤ幅方向中央部で接地面積を確保できると共に、複合横サイプ55,56,57の配設により路面の引っ掻き効果を十分に向上することができるので、タイヤの接地面積の確保と、エッジによる路面の引っ掻き効果の向上とを両立し、タイヤの氷雪路における摩擦特性を向上することができる。
【0033】
更に、この一例の空気入りタイヤの第3ブロック50,60のタイヤ幅方向両側に位置するブロック側壁53,54,63,64は、全てタイヤ周方向に対して傾斜している。そのため、この一例の空気入りタイヤでは、タイヤの負荷転動時に、第3主溝23のうちのブロック側壁53,63側の部分で雪を踏み固めて雪柱を形成し、雪柱せん断力を高めることができる。また、同様に、第4主溝24のうちのブロック側壁54,64側の部分で雪を踏み固めて雪柱を形成し、雪柱せん断力を高めることができる。従って、この一例の空気入りタイヤによれば、ブロック側壁がタイヤ周方向に沿って延在している場合と比較し、雪柱せん断力を高めることもできる。
なお、雪柱せん断力を高める観点からは、ブロック側壁53,54,63,64のタイヤ周方向に対する傾斜角度(即ち、ブロック側壁のタイヤ径方向外端縁とタイヤ周方向線とがなす角度)は、2°以上であることが好ましい。また、排水性能および耐偏摩耗性を確保する観点からは、ブロック側壁53,54,63,64のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、30°以下であることが好ましい。更に、雪柱せん断力を高める観点からは、ブロック側壁53,54,63,64はタイヤ周方向にジグザグ状に延在していることが好ましい。
【0034】
なお、第3ブロック50,60のタイヤ幅方向両側に位置するブロック側壁53,54,63,64をタイヤ周方向に対して傾斜させた場合、第3ブロック50,60のタイヤ幅方向のエッジ成分を増加させて、第3ブロック50,60のエッジによる路面の引っ掻き効果を向上させることもできる。
【0035】
また、この一例の空気入りタイヤの第3ブロック50,60は、タイヤ幅方向の最大寸法がタイヤ周方向の最大寸法よりも大きい。従って、この一例の空気入りタイヤでは、第3ブロック50,60のタイヤ周方向両端縁の長さや複合横サイプの長さを長くし、エッジによる路面の引っ掻き効果を向上することができる。また、この一例の空気入りタイヤでは、第3ブロック50,60を適度に倒れ込ませてエッジによる路面の引っ掻き効果を向上することができる。
【0036】
更に、この一例の空気入りタイヤでは、第3ブロック50,60の間に位置する第4横溝34が狭幅の第1横溝成分37を有しているので、第3ブロック50,60が倒れ込み変形した際に、第4横溝34を挟んでタイヤ周方向に隣接する第3ブロック50,60同士が接触して互いに支え合うことができる。従って、この一例の空気入りタイヤによれば、上述したようにして氷雪上性能を向上させつつ、第3ブロック50,60の剛性を高めて、乾燥(DRY)路面や湿潤(WET)路面での性能、特にブレーキ性能を向上することができる。なお、第1横溝成分37のタイヤ周方向の溝幅は、第3ブロック50,60が倒れ込み変形した際に、第4横溝34を挟んでタイヤ周方向に隣接するブロック同士が接触して支え合うことができる溝幅、例えば0.3〜1.0mm程度とすることができる。また、第2横溝成分38のタイヤ周方向の溝幅は、特に限定されることなく例えば1.5〜5.0mm程度とすることができる。
【0037】
上述したところから明らかなように、本発明に従う空気入りタイヤの一例によれば、トレッド部踏面の少なくとも一部に第3ブロック50,60を有しているので、タイヤの接地面積の確保と、エッジによる路面の引っ掻き効果の向上と、雪柱せん断力の向上との全てを高い次元で並立させることができる。従って、この一例の空気入りタイヤでは、タイヤの氷雪路における摩擦特性を高めて、氷雪上性能を向上させることができる。
【0038】
ここで、上記一例の空気入りタイヤでは、氷雪上性能を向上させつつ、タイヤの排水性能を確保するために、タイヤ赤道Cを中心としてトレッド部踏面1のタイヤ幅方向一方側(
図1では右側)には第3ブロック50,60を配設し、タイヤ幅方向他方側にはタイヤ周方向に沿って延びる排水性の良好な主溝21,22を配設した。しかし、本発明の空気入りタイヤでは、トレッド部踏面の全体に略矢羽形状のブロックを配設して氷雪上性能を更に向上させても良い。また、本発明の空気入りタイヤは、タイヤ赤道Cを中心として両トレッド端までのパターン形状が同一である対称パターンとしても良い。
【0039】
また、本発明の空気入りタイヤでは、略矢羽形状のブロックのブロック側壁はタイヤ幅方向一方のみがタイヤ周方向に対して傾斜していても良く、また、ブロック側壁の一部のみがタイヤ周方向に対して傾斜していても良い。
【0040】
更に、上記一例の空気入りタイヤでは、第4横溝34と第5横溝35とをタイヤ周方向に交互に配設し、第3ブロック50の形状と第3ブロック60の形状とを若干異ならせたが、本発明の空気入りタイヤでは、同一形状の横溝を配設して略矢羽形状のブロックの形状を同一としても良い。
【0041】
また、本発明の空気入りタイヤは、特に限定されることなく
図5〜6に示すようなブロックをトレッド部踏面に有するものであっても良い。
【0042】
ここで、
図5(a)に示すブロック70Aは、平面視略矢羽形状をしており、周方向突出部71Aの頂点72Aがブロック幅中心線WC上に位置している。そして、ブロック70Aのタイヤ幅方向両側に位置するブロック側壁73A,74Aは、タイヤ周方向に対して傾斜している。また、ブロック70Aには、タイヤ周方向に一方に凸となるように屈曲し、且つ、タイヤ幅方向に連続して延びる3本の横サイプ75A,76A,77Aが形成されている。そして、これら3本の横サイプ75A,76A,77Aのうちタイヤ周方向中央に位置する横サイプ76Aは、ブロック70Aのタイヤ周方向に沿う断面を
図4(b)に示すように、底部に拡大部78Aを有する底部拡大サイプである。即ち、横サイプ76Aの底部には、横サイプ76Aの開口幅D
1よりも大きい幅D
2の拡大部78Aが形成されている。
【0043】
そして、このブロック70Aをトレッド部踏面に有する空気入りタイヤでは、先の一例の空気入りタイヤと同様にしてタイヤの接地面積の確保と、エッジによる路面の引っ掻き効果の向上と、雪柱せん断力の向上との全てを高い次元で並立させることができる。また、このブロック70Aをトレッド部踏面に有する空気入りタイヤでは、底部拡大サイプである横サイプ76Aにより氷雪路面とタイヤとの間に発生した水膜を十分に除去することができる。従って、ブロック70Aをトレッド部踏面に有する空気入りタイヤでは、タイヤを氷雪路面に密着させることができ、タイヤのグリップ力を十分に確保することができる。
【0044】
図5(b)に示すブロック70Bは、平面視略矢羽形状をしており、周方向突出部71Bの頂点72Bがブロック幅中心線WCからタイヤ幅方向一方(
図5(b)では右側)に距離Oだけオフセット配置されている。そして、ブロック70Bのタイヤ幅方向両側に位置するブロック側壁73B,74Bは、タイヤ周方向に対して傾斜している。また、ブロック70Bには、周方向突出部71B側に位置する第1複合横サイプ75Bと、ブロック70Bの周方向突出部71Bとはタイヤ周方向反対側に位置する第3複合横サイプ77Bと、第1複合横サイプ75Bと第3複合横サイプ77Bとの間に位置する第2複合横サイプ76Bとが配設されている。そして、第1複合横サイプ75Bは、ブロック幅中心線WCよりも周方向突出部71Bの頂点72B側に位置する主溝またはトレッド端に一端が開口し、他端がブロック70B内で終端する直線状のサイプと、ブロック幅中心線WCよりも周方向突出部71Bの頂点72B側とは反対側に位置する主溝またはトレッド端に一端が開口し、他端が周方向突出部71B側に位置する横溝に開口する3次元サイプとよりなる。また、第2複合横サイプ76Bおよび第3複合横サイプ77Bは、ブロック幅中心線WCよりも周方向突出部71Bの頂点72B側に位置する主溝またはトレッド端に一端が開口し、他端がブロック70B内で終端する直線状のサイプと、ブロック幅中心線WCよりも周方向突出部71Bの頂点72B側とは反対側に位置する主溝またはトレッド端に一端が開口し、他端がブロック70B内で終端する3次元サイプとよりなる。
【0045】
そして、このブロック70Bをトレッド部踏面に有する空気入りタイヤでは、先の一例の空気入りタイヤと同様にしてタイヤの接地面積の確保と、エッジによる路面の引っ掻き効果の向上と、雪柱せん断力の向上との全てを高い次元で並立させることができる。また、このブロック70Bをトレッド部踏面に有する空気入りタイヤでは、ブロック70Bの周方向突出部71Bの頂点72Bよりもブロック幅中心線WC側の領域に所謂3次元サイプ(延在方向および深さ方向の双方に三次元的に屈曲するサイプ)を形成しているので、接地面積の確保と、エッジによる路面の引っ掻き効果とをより効率的に両立させることができる。
【0046】
なお、ブロック70Bにおいて周方向突出部71Bの頂点72Bをブロック幅中心線WCからオフセットさせる距離Oは、ブロック幅Wの10〜30%とすることが好ましい。距離Oをブロック幅Wの10〜30%とすれば、エッジによる氷雪路面の引っ掻き効果を更に高めることができるからである。なお、「ブロック幅」とは、タイヤ回転軸線を含みブロック表面に直交する平面にブロックを投影したときに得られる投影図のタイヤ幅方向寸法を指す。
【0047】
図6(a)に示すブロック70Cは、II−II線に沿う断面を
図6(b)に、III−III線に沿う断面を
図6(c)に、IV−IV線に沿う断面を
図6(d)にそれぞれ示すように、複合横サイプの一部の深さを浅くした(即ち、底上げ部78を設けた)以外は
図5(b)に示すブロック70Bと同様の構成を有している。ここで、このブロック70Cでは、第1複合横サイプ75Cおよび第3複合横サイプ77Cのタイヤ幅方向両側(例えば開口部からサイプの延在方向に2mm以上6mm以下の範囲)に底上げ部78が設けられている。また、第1〜第3複合横サイプ75C,76C,77Cのブロック側壁73C側に位置するサイプの延在方向中央近傍には、それぞれ底上げ部78が2箇所設けられている。
【0048】
そして、このブロック70Cをトレッド部踏面に有する空気入りタイヤでは、先の一例の空気入りタイヤと同様にしてタイヤの接地面積の確保と、エッジによる路面の引っ掻き効果の向上と、雪柱せん断力の向上との全てを高い次元で並立させることができる。また、このブロック70Cをトレッド部踏面に有する空気入りタイヤでは、先のブロック70Bを有する空気入りタイヤと同様にして、接地面積の確保と、エッジによる路面の引っ掻き効果とをより効率的に両立させることができる。更に、このブロック70Cを有する空気入りタイヤでは、底上げ部78によりブロックの剛性を調整し、ブロックが過度に倒れ込むのを防止して接地面積を十分に確保することができる。
【0049】
なお、上述した第3ブロック50,60およびブロック70A,70B,70Cでは、周方向突出部側に位置して配設方向が互いに異なる2つの側壁部分からなるブロック側壁は、側壁部分が周方向突出部の頂点に向かう配設角度θ
1,θ
2が、ともにタイヤ幅方向に対し15〜45°の範囲内であることが好ましい。側壁部分のタイヤ幅方向に対する配設角度θ
1,θ
2を、それぞれ15〜45°の範囲内にすれば、エッジによる路面の引っ掻き効果を特に高めることができるからである。因みに、配設角度θ
1およびθ
2は、互いに等しくても良いし、異なっていても良い。
【0050】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明の空気入りタイヤは上述した例に限定されることは無く、適宜変更を加えることができる。また、上述したブロック形状およびサイプ形状などは適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
表1に示す諸元で、
図1に示すような構成のトレッド部踏面1を有する、サイズが195/65R15の空気入りタイヤを試作し、下記の方法で性能評価を行った。結果を表1に示す。なお、作製したタイヤは、第3ブロック50,60が車両の外側に位置するように装着される装着方向指定のタイヤとした。
【0053】
(比較例1)
表1に示す諸元で、
図7に示すような構成のトレッド部踏面を有する、サイズが195/65R15の空気入りタイヤを試作し、下記の方法で性能評価を行った。結果を表1に示す。なお、
図7中、80A〜80Dはブロックを示し、81A〜81Dはサイプを示す。
【0054】
<氷上ブレーキ性能>
作製したタイヤを、それぞれリムサイズ15×6Jのリムに装着し、内圧を200kPaとして、車両に装着した。そして、氷路(凍結路)において20km/hの速度からフルブレーキをかけて静止状態になるまでの制動距離を測定し、フルブレーキ前の速度と制動距離から平均減速度を算出した。そして、比較例1の平均減速度を100として指数化した。表中、値が大きいほどタイヤの摩擦特性が優れており、氷上ブレーキ性能が良好であることを示す。
<氷上トラクション性能>
作製したタイヤを、それぞれリムサイズ15×6Jのリムに装着し、内圧を200kPaとして、車両に装着した。そして、氷路(凍結路)において10km/hの速度からアクセルを踏み込んで30km/hの速度になるまで加速した際に要した時間を測定し、平均加速度を算出した。そして、比較例1の平均加速度を100として指数化した。表中、値が大きいほどタイヤの摩擦特性が優れており、氷上トラクション性能が良好であることを示す。
<雪上トラクション性能>
作製したタイヤを、それぞれリムサイズ15×6Jのリムに装着し、内圧を200kPaとして、車両に装着した。そして、積雪路において10km/hの速度からアクセルを踏み込んで45km/hの速度になるまで加速した際に要した時間を測定し、平均加速度を算出した。そして、比較例1の平均加速度を100として指数化した。表中、値が大きいほどタイヤの摩擦特性が優れており、雪上トラクション性能が良好であることを示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1より、実施例1のタイヤは、矢羽形状のブロックを有さない比較例1のタイヤに比べて氷雪上性能に優れていることが分かる。