特許第6043409号(P6043409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6043409
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】棒状部材及びバルブ装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/07 20060101AFI20161206BHJP
   F16K 3/24 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   F16K11/07 C
   F16K3/24 D
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-138604(P2015-138604)
(22)【出願日】2015年7月10日
【審査請求日】2016年9月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100181733
【弁理士】
【氏名又は名称】淺田 信二
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 良昌
(72)【発明者】
【氏名】藤原 武
(72)【発明者】
【氏名】小清水 力
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−119070(JP,A)
【文献】 特開平4−224376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/07
F16K 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧機器に組み込まれる棒状部材であって、
外周面が円形状である円形部と、
前記円形部の中心軸から離れた位置に設けられ、前記円形部の周方向における基準位置を定める基準部と、を備えることを特徴とする棒状部材。
【請求項2】
前記基準部は、前記円形部の外周面に設けられることを特徴とする請求項1に記載の棒状部材。
【請求項3】
前記基準部は、前記円形部の端面に設けられることを特徴とする請求項1に記載の棒状部材。
【請求項4】
前記棒状部材は、環状溝とランド部とを有するスプールであり、
前記ランド部は、前記環状溝と比較して軸方向の寸法が長く形成され、
前記円形部は前記ランド部であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の棒状部材。
【請求項5】
前記棒状部材は、第1ランド部と、第2ランド部と、前記第1及び第2ランド部と比較して小径であり前記第1ランド部と前記第2ランド部との間に環状溝を形成する小径部と、を有するスプールであり、
前記円形部は前記小径部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の棒状部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の棒状部材としてのスプールと、
前記スプールを摺動自在に収容する収容穴と、前記収容穴に連通する第1及び第2通路とを有するバルブボディと、を備え、
前記スプールは、前記第1通路と前記第2通路との連通を遮断する遮断位置を有し、
前記基準部は、前記スプールの外周面に形成される窪み部であり、
前記窪み部は、前記スプールが前記遮断位置にあるときには前記収容穴の内壁により塞がれる位置にあることを特徴とするバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧機器に組み込まれる棒状部材、及びその棒状部材を備えるバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バルブスプール等の棒状部材を製造する方法が開示されている。この方法では、まず、素材がチャックにより保持される。次に、チャックと共に素材を回転させながら刃物を素材の表面に当てることにより、素材が切削され、棒状部材の外周面が円形状に加工される。その後、チャックと共に素材の回転を停止させた状態でエンドミルを素材に近づけることにより、素材の外周面に周方向の段部が形成される。
【0003】
特許文献1に開示される方法では、チャックの回転角度が検出される。検出されたチャックの回転角度に基づいてチャックの回転を停止させることにより、棒状部材の周方向における所定の位置に前述の段部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−202401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バルブスプール等の棒状部材には高い同軸度が要求される。そのため、棒状部材の加工中又は加工後に棒状部材の曲がり量が測定される。曲がり測定では、棒状部材の周方向における複数の箇所でその外周面の変位が変位センサにより検出される。
【0006】
しかしながら、バルブスプール等の棒状部材の外周面には、ノッチといった、周方向の段部が形成される。変位センサが段部の変位を検出した場合、正確な曲がり量を測定することができない。そのため、曲がり測定では、周方向における段部の位置を特定し、段部を避けて外周面の変位を検出する必要がある。
【0007】
特許文献1に開示される方法では、段部の位置はチャックの回転角度に基づいて特定されるので、曲がり測定が終了するまで棒状部材をチャックから取り外すことができない。そのため、棒状部材を加工する装置に曲がり測定機能を持たせなければならず、装置が複雑化する。
【0008】
また、棒状部材を加工する装置を複数用意する場合には、各装置に曲がり測定機能をもたせなければならない。そのため、棒状部材の曲がりを測定する装置を、棒状部材を加工する装置とは別に用意する場合に比べてコストが増す。
【0009】
本発明は、チャックから取り外されても外周面における所定の位置を特定することができる棒状部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、流体圧機器に組み込まれる棒状部材であって、外周面が円形状である円形部と、円形部の中心軸から離れた位置に設けられ、円形部の周方向における基準位置を定める基準部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
第1の発明では、基準部が円形部の中心軸から離れた位置に設けられるので、円形部の外周面における所定の位置は、基準部から円形部の周方向に所定の距離離れた位置として特定される。
【0012】
第2の発明は、基準部が円形部の外周面に設けられることを特徴とする。
【0013】
第2の発明では、基準部が円形部の外周面に設けられるので、円形部の外周面のうち基準部とは別の部分を加工する場合に、基準部を棒状部材に形成する装置から棒状部材を取り外す必要がない。したがって、棒状部材をより容易に製作することができる。
【0014】
第3の発明は、基準部が円形部の端面に設けられることを特徴とする。
【0015】
第3の発明では、基準部が円形部の端面に設けられるので、長さ又は外径が異なる棒状部材においても、円形部の中心軸からの基準部の位置を変える必要がない。したがって、棒状部材の外周面における所定の位置をより容易に特定することができる。
【0016】
第4の発明は、棒状部材が、環状溝とランド部とを有するスプールであり、ランド部は環状溝と比較して軸方向の寸法が長く形成され、円形部がランド部であることを特徴とする。
【0017】
第4の発明では、スプールのランド部が円形部として利用されるので、環状溝と比較して軸方向の寸法が長いランド部に基準部が設けられる。したがって、基準部を設けるための領域を容易に確保することができる。
【0018】
第5の発明は、棒状部材が、第1ランド部と第2ランド部との間に環状溝を形成する小径部を有するスプールであり、円形部が小径部であることを特徴とする。
【0019】
第5の発明では、環状溝を形成する小径部が円形部として利用されるので、小径部に基準部が設けられランド部に基準部を設ける必要がない。したがって、基準部の影響がランド部による流体の流れの制御に及ぶのを防ぐことができる。
【0020】
第6の発明は、前述の棒状部材としてのスプールと、スプールを摺動自在に収容する収容穴と、収容穴に連通する第1及び第2通路とを有するバルブボディと、を備え、スプールは、第1通路と第2通路との連通を遮断する遮断位置を有し、基準部は、スプールの外周面に形成される窪み部であり、窪み部は、スプールが遮断位置にあるときには収容穴の内壁により塞がれる位置にあることを特徴とする。
【0021】
第6の発明では、スプールが遮断位置にあるときには、窪み部が収容穴の内壁により塞がれるので、第1通路と第2通路とが窪み部を通じて連通することなく確実に遮断される。したがって、窪み部を通じて第1通路と第2通路とを作動流体が流れるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、棒状部材がチャックから取り外されても、棒状部材の外周面における所定の位置を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係るスプールを備えるバルブ装置の断面図であり、スプールが遮断位置にある状態を示す。
図2】本発明の実施形態に係るスプールを備えるバルブ装置の断面図であり、スプールが連通位置にある状態を示す。
図3】本発明の実施形態に係るスプールの側面図である。
図4】本発明の実施形態に係るスプールの平面図である。
図5】本発明の実施形態に係るスプールを用いた曲がり測定方法を説明するための図であり、一方のチャック近傍でのスプールの外周面の変位を測定する状態を示す。
図6】本発明の実施形態に係るスプールを用いた曲がり測定方法を説明するための図であり、軸方向中央付近でのスプールの外周面の変位を測定する状態を示す。
図7】本発明の実施形態に係るスプールを用いた曲がり測定方法を説明するための図であり、他方のチャック近傍でのスプールの外周面の変位を測定する状態を示す。
図8】本発明の他の実施形態に係るスプールの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。ここでは、棒状部材が作動油の流れを許容又は遮断するバルブ装置100に組み込まれるスプール10である場合について説明する。本実施形態は、作動流体として作動水等の他の流体が用いられる流体圧機器の棒状部材にも適用可能である。
【0025】
図1及び図2に示すように、バルブ装置100は、スプール10と、スプール10を摺動自在に収容する収容穴21を有するバルブボディ20と、を備える。バルブボディ20には、収容穴21に連通する第1及び第2通路22,23が形成される。第1通路22は例えばポンプ(不図示)に接続され、第2通路23は例えばアクチュエータ(不図示)に接続される。
【0026】
スプール10は、第1通路22から第2通路23への作動油の流れを遮断する遮断位置(図1に示す位置)と、第1通路22から第2通路23への作動油の流れを許容する連通位置(図2に示す位置)と、を有する。遮断位置と連通位置とは、パイロット室24へのパイロット圧の供給及び遮断により切り換えられる。
【0027】
第1通路22がタンク(不図示)に接続され第2通路23がアクチュエータに接続されても良い。この場合、スプール10は、遮断位置では、第2通路23から第1通路22への作動油の流れを遮断し、連通位置では、第2通路23から第1通路22への作動油の流れを許容する。
【0028】
つまり、スプール10は、第1通路22と第2通路23との連通を遮断する遮断位置と、第2通路22と第2通路23との連通を許容する連通位置と、を有する。
【0029】
パイロット室24は、収容穴21の一端に形成される。収容穴21の他方の端部は、バルブボディ20の側面に開口し、開口端はキャップ30により閉塞される。キャップ30は、スプリング40を収容するスプリング室31を画定する。スプリング室31は、ドレンポート32を通じてタンク(不図示)に連通する。
【0030】
スプリング40は、スプール10をパイロット室24が収縮する方向へ付勢する。パイロット室24にパイロット圧が供給されると、スプール10はパイロット圧によりスプリング40の付勢力に抗して移動し、連通位置に切り換わる。パイロット室24へのパイロット圧の供給が遮断されると、スプール10はスプリング40の付勢力により移動し、遮断位置に切り換わる。
【0031】
図3及び図4を参照して、スプール10をより詳細に説明する。図3はスプール10の正面図であり、図4はスプール10の平面図である。図3及び図4において、スプール10の一部は断面図として示される。
【0032】
スプール10は、第1及び第2ランド部11,12と、第1及び第2ランド部11,12と比較して小径に形成される小径部13と、を有する。第1及び第2ランド部11,12は、外周面が円形状の円形部である。小径部13は、第1及び第2ランド部11,12と同様に、外周面が円形状の円形部である。
【0033】
小径部13は、第1及び第2ランド部11,12の間に位置し、第1及び第2ランド部11,12の間に環状溝13aが形成される。第1及び第2ランド部11,12は、環状溝13aと比較して軸方向の寸法が長い。
【0034】
第1及び第2ランド部11,12の外径は、収容穴21(図1及び図2参照)の内径と略等しい。第1ランド部11がスプリング室31に臨み、第2ランド部12がパイロット室24に臨む(図1及び図2参照)。
【0035】
第1及び第2ランド部11,12の外周面には、複数の環状溝から成るラビリンスシール14が形成される。また、第1ランド部11の外周面には、環状溝13aと連通する絞りとしての複数のノッチ15が形成される。ノッチ15により、第1ランド部11の外周面に周方向の段部が形成される。
【0036】
第1ランド部11の外周面には、第1及び第2ランド部11,12の周方向における基準位置を定める基準部としての窪み部16が形成される。窪み部16に対するノッチ15の位置を予め定めておくことにより、窪み部16の位置に基づいて、周方向におけるノッチ15の位置が特定される。
【0037】
ノッチ15及び窪み部16は、例えばエンドミル加工により形成される。スプール10を加工する装置にスプール10を取り付けた状態でノッチ15及び窪み部16を形成することにより、ノッチ15が窪み部16に対して予め定められた位置に形成される。
【0038】
再び図1及び図2を参照して、バルブ装置100の動作について説明する。
【0039】
パイロット室24へのパイロット圧の供給が遮断された状態では、スプール10は遮断位置にある。具体的には、図1に示すように、第1ランド部11が第1通路22から第2通路23への作動油の流れを遮断する。
【0040】
パイロット室24へパイロット圧が供給されると、スプール10は、パイロット圧によりスプリング40の付勢力に抗して移動し、連通位置に切り換わる。具体的には、スプール10の移動により、ノッチ15を通じて第1通路22と第2通路23とが連通する(図2参照)。
【0041】
パイロット室24へより高いパイロット圧が供給されると、スプール10は、パイロット圧によりスプリング40の付勢力に抗してさらに移動する。その結果、ノッチ15の開口面積が増大し、第1通路22から第2通路23へと流れる作動油の流量が増大する。
【0042】
パイロット室24へのパイロット圧の供給が遮断されると、スプール10はスプリング40の付勢力により移動する。その結果、第1通路22から第2通路23への流れが第1ランド部11により遮断される(図1参照)。
【0043】
このように、バルブ装置100は、スプール10の位置に応じて、作動油の流れを許容又は遮断する。また、バルブ装置100は、スプール10が連通位置にある場合には、スプール10の移動量に応じて作動油の流量を制御する。
【0044】
窪み部16は、スプール10が遮断位置にある場合であっても連通位置にある場合であっても、収容穴21の内壁により塞がれる。したがって、窪み部16は、作動油の流れに影響を与えない。
【0045】
本実施形態では、窪み部16は遮断位置及び連通位置の両方において収容穴21の内壁により塞がれる。しかし、窪み部16は、スプール10が連通位置にある場合には第1及び第2通路22,23に連通する位置であって、スプール10が遮断位置にある場合には収容穴21の内壁により塞がれる位置に形成されていればよい。窪み部16が塞がれることにより、第1通路22から窪み部16を通じた第2通路23への作動油の漏出を防ぐことができる。
【0046】
次に、図5から図7を参照して、スプール10の曲がり量を測定する方法を説明する。スプール10の曲がり測定は、モータ51及び変位センサ52の動作を制御する制御器54と、変位センサ52の検出結果に基づいて曲がり量を演算する演算器55と、により行われる。変位センサ52は、例えばレーザ式変位センサである。
【0047】
まず、図5に示すように、スプール10の両端の中心がスパイク56,57により保持される。スパイク56はモータ51に連結され、スパイク57は軸受58に支持される。モータ51が作動することにより、スプール10はスパイク56,57と共にスプール10の軸周りに回転する。
【0048】
スプール10がスパイク56,57により保持されたところで、制御器54は、モータ51及び変位センサ52を作動させて、スプール10を基準位置(0度位置)に合わせる。
【0049】
具体的には、制御器54は、モータ51によりスプール10を回転させながら、第1ランド部11の外周面のうち窪み部16を含む環状の領域の変位を変位センサ52により検出する。窪み部16以外の部分では、外周面が円形状を有するので、外周面の位置はスプール10が回転してもほとんど変化しない。窪み部16では、周方向の段部が形成されるので、外周面の位置はスプール10の回転に伴って大きく変化する。制御器54は、変位センサ52により検出されたスプール10の外周面の位置が大きく変化したと判定したとき(例えば予め定められた値以上変化したと判定したとき)は、そのときの回転位置を基準位置(0度位置)として定める。
【0050】
次に、制御器54は、モータ51によりスプール10を回転させながら、スパイク56近傍でのスプール10の外周面(以下、「一端部外周面」と称する)の変位を、変位センサ52により検出する。このとき、スプール10が1回転する間に、変位検出が複数回(例えば20回、18度毎)行われる。演算器55は、変位センサ52の検出結果を、変位検出時におけるスプール10の回転位置と共に記憶する。
【0051】
次に、制御器54は、図6に示すように、変位センサ52をスプール10の軸方向に移動させ、軸方向中央付近でのスプール10の外周面(以下、「中央部外周面」と称する)の変位を変位センサ52により検出する。変位センサ52の移動は、例えばモータ及びレールを備える不図示の移動機構により行われる。
【0052】
一端部外周面の変位を検出する場合と同様に、変位検出は、スプール10が1回転する間に複数回(例えば20回、18度毎)行われる。演算器55は、変位センサ52の検出結果を、変位検出時におけるスプール10の回転位置と共に記憶する。
【0053】
中央部外周面の変位を検出する前に、スプール10を基準位置に合わせ直すことが好ましい。スプール10を基準位置に合わせ直すことにより、一端部外周面の変位を検出する場合の回転位置と、中央部外周面の変位を検出する場合の回転位置と、のずれを防ぐことができる。
【0054】
次に、制御器54は、図7に示すように、変位センサ52をスプール10の軸方向に移動させ、スパイク57近傍でのスプール10の外周面(以下、「他端部外周面」と称する)の変位を、変位センサ52により検出する。一端部外周面の変位を検出する場合と同様に、変位検出は、スプール10が1回転する間に複数回(例えば20回、18度毎)行われる。演算器55は、変位センサ52の検出結果を、変位検出時におけるスプール10の回転位置と共に記憶する。他端部外周面の変位を検出する前に、スプール10の基準位置を合わせ直すことが好ましい。
【0055】
次に、演算器55は、検出された一端部外周面、中央部外周面、及び他端部外周面の変位から、スプール10の曲がり量を算出する。スプール10の曲がり量は、スプール10が1回転する間の各回転位置において検出された一端部外周面、中央部外周面、及び他端部外周面の変位を比較することにより算出される。
【0056】
変位センサ52が窪み部16及びノッチ15の位置の変位を検出し演算器55がこの検出結果を各回転位置での曲がり量の算出に用いると、算出される曲がり量の精度が低下する。そこで、演算器55は、窪み部16及びノッチ15の位置の変位の検出結果を除いて、曲がり量を算出する。変位センサ52の位置は予め定められるので、基準位置からの回転角度に基づいて窪み部16及びノッチ15の位置の変位を特定しその変位の検出結果を除くことができる。
【0057】
以上の方法により、スプール10の曲がり量が測定される。
【0058】
本実施形態では、窪み部16がスプール10の外周面に設けられるので、第1及び第2ランド部11,12の外周面における所定の位置は、窪み部16からランド部11,12の周方向に所定の距離離れた位置として特定される。したがって、スプール10を加工する装置のチャックからスプール10が取り外されても、ノッチ15の位置を特定することができる。
【0059】
スプール10を加工する装置に曲がり測定機能を持たせる必要がないので、加工装置が複雑化するのを防ぐことができる。また、棒状部材を加工する装置を複数用意する場合には、棒状部材の曲がりを測定する装置を加工装置とは別に用意することにより、各加工装置に曲がり測定機能をもたせる必要がなくなるので、スプール10の製造コストを削減することができる。
【0060】
窪み部16がスプール10の外周面に設けられるので、スプール10の外周面のうち窪み部16とは別の部分を加工する場合(例えば、ノッチ15を形成する場合)に、窪み部16をスプール10に形成する装置(図示省略)からスプール10を取り外す必要がない。したがって、スプール10をより容易に製作することができる。
【0061】
本実施形態では、窪み部16は第1ランド部11の外周面に設けられるが、第2ランド部12の外周面、又は小径部13の外周面(環状溝13aの底面)に設けられてもよい。また、図8に示すように、窪み部16は、スプール10の端面のうち、端面の中心Cから離れた位置に設けられてもよい。換言すれば、窪み部16は、スプール10の中心軸Dから離れた位置に設けられていればよい。
【0062】
第1及び第2ランド部11,12は、環状溝13aと比較して軸方向の寸法が長い。そのため、第1又は第2ランド部11,12に窪み部16を形成する場合に、窪み部16を設けるための領域を容易に確保することができる。
【0063】
小径部13の外周面(環状溝13aの底面)に窪み部16を形成する場合には、第1及び第2ランド部11,12に窪み部16を設ける必要がない。したがって、窪み部16の影響が第1及び第2ランド部11,12による作動油の流れの制御に及ぶのを防ぐことができる。
【0064】
窪み部16がスプール10の端面に設けられる場合、長さ又は外径が異なるスプール10においても、スプール10の中心軸Dからの窪み部16の位置を変える必要がない。したがって、スプール10の外周面における所定の位置をより容易に特定することができる。
【0065】
また、基準部は窪み部16に限られず、起伏のないマークであってもよい。基準部がマークの場合には、変位センサ52に代えて画像認識装置としてのカメラを用いることで、マークの位置を検出することができ、スプール10の外周面における所定の位置を特定することができる。
【0066】
本実施形態は、スプール10の曲がり量を測定する場合だけでなく、ノッチ15の深さ、ノッチ15の長さ、及びスプール10の真円度を測定する場合にも好適である。また、本実施形態は、ノッチ15を加工する際に生じるバリを除去する場合、及びスプール10に更に加工を施す場合にも好適である。
【0067】
以上の本実施形態によれば、以下の示す効果を奏する。
【0068】
窪み部16が第1ランド部11の中心軸Dから離れた位置に設けられるので、第1ランド部11の外周面におけるノッチ15の位置は、窪み部16から第1ランド部11の周方向に所定の距離離れた位置として特定される。したがって、スプール10を加工する装置のチャックからスプール10が取り外されても、第1ランド部11の外周面におけるノッチ15の位置を特定することができる。
【0069】
また、スプール10が遮断位置にあるときには、窪み部16が収容穴21の内壁により塞がれるので、第1通路22から窪み部16を通じて第2通路23への作動油の流れが遮断される。したがって、第1通路22内の作動油が窪み部16を通じて第2通路23へ流れるのを防ぐことができる。
【0070】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0071】
バルブ装置100に組み込まれるスプール10は、外周面が円形状である第1及び第2ランド部11,12、並びに小径部13と、第1ランド部11の中心軸Dから離れた位置に設けられ、第1及び第2ランド部11,12、並びに小径部13の周方向における基準位置を定める窪み部16と、を備えることを特徴とする。
【0072】
この構成では、窪み部16が第1ランド部11の中心軸Dから離れた位置に設けられるので、第1ランド部11の外周面におけるノッチ15の位置は、窪み部16から第1ランド部11の周方向に所定の距離離れた位置として特定される。したがって、スプール10を加工する装置のチャックからスプール10が取り外されても、第1ランド部11の外周面におけるノッチ15の位置を特定することができる。
【0073】
また、スプール10では、窪み部16は、第1ランド部11、第2ランド部12、又は小径部13の外周面に設けられることを特徴とする。
【0074】
この構成では、窪み部16が第1ランド部11、第2ランド部12、又は小径部13の外周面に設けられるので、第1ランド部11、第2ランド部12、又は小径部13の外周面のうち窪み部16とは別の部分を加工する場合に、窪み部16をスプール10に形成する装置からスプール10を取り外す必要がない。したがって、スプール10をより容易に製作することができる。
【0075】
また、スプール10では、窪み部16は、第1ランド部11又は第2ランド部12の端面に設けられることを特徴とする。
【0076】
この構成では、窪み部16が第1ランド部11又は第2ランド部12の端面に設けられるので、長さ又は外径が異なるスプール10においても、第1ランド部11又は第2ランド部12の中心軸Dからの窪み部16の位置を変える必要がない。したがって、スプール10の外周面における所定の位置をより容易に特定することができる。
【0077】
また、スプール10が、環状溝13aと第1及び第2ランド部11,12とを有し、第1及び第2ランド部11,12は環状溝13aと比較して軸方向の寸法が長く形成され、外周面が円形状の円形部が第1又は第2ランド部11,12であることを特徴とする。
【0078】
この構成では、スプール10の第1又は第2ランド部11,12が円形部として利用されるので、環状溝13aと比較して軸方向の寸法が長い第1又は第2ランド部11,12に窪み部16が設けられる。したがって、窪み部16を設けるための領域を容易に確保することができる。
【0079】
また、スプール10が、第1ランド部11と、第2ランド部12と、第1及び第2ランド部11,12と比較して小径であり第1ランド部11と第2ランド部12との間に環状溝13aを形成する小径部13と、を有し、外周面が円形状の円形部が小径部13であることを特徴とする。
【0080】
この構成では、環状溝13aを形成する小径部13が円形部として利用されるので、小径部13に窪み部16が設けられ第1及び第2ランド部11,12に窪み部16を設ける必要がない。したがって、窪み部16の影響が第1及び第2ランド部11,12による作動油の流れの制御に及ぶのを防ぐことができる。
【0081】
バルブ装置100は、前述のスプール10と、スプール10を摺動自在に収容する収容穴21と、収容穴21に連通する第1及び第2通路22,23とを有するバルブボディ20と、を備え、スプール10は、第1通路22と第2通路23との連通を遮断する遮断位置を有し、窪み部16がスプール10の外周面に形成され、窪み部16は、スプール10が遮断位置にあるときには収容穴21の内壁により塞がれる位置にあることを特徴とする。
【0082】
この構成では、スプール10が遮断位置にあるときには、窪み部16が収容穴21の内壁により塞がれるので、第1通路22と第2通路23とが窪み部16を通じて連通することなく確実に遮断される。したがって、窪み部16を通じて第1通路22と第2通路23とを作動油が流れるのを防ぐことができる。
【0083】
本実施形態に係る棒状部材は、スプール10に限られない。棒状部材は、油圧モータ及び油圧ポンプに組み込まれるシャフト、並びにポペット弁に組み込まれるポペット等であってもよい。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0085】
10・・・スプール(棒状部材)、11・・・第1ランド部(円形部)、12・・・第2ランド部(円形部)、13・・・小径部、13a・・・環状溝、16・・・窪み部(基準部)、20・・・バルブボディ、21・・・収容穴、22・・・第1通路、23・・・第2通路、100・・・バルブ装置(流体圧機器)
【要約】      (修正有)
【課題】チャックから取り外されても外周面における所定の位置を特定することができる棒状部材を提供する。
【解決手段】バルブ装置に組み込まれるスプール10は、外周面が円形状である第1及び第2ランド部11,12と、第1ランド部11の中心軸から離れた位置に設けられ、第1及び第2ランド部11,12の周方向における基準位置を定める窪み部16と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図3
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