(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043422
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】混合流体供給装置
(51)【国際特許分類】
B01F 1/00 20060101AFI20161206BHJP
B01F 15/02 20060101ALI20161206BHJP
B01F 15/06 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
B01F1/00 E
B01F15/02 A
B01F15/06 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-506362(P2015-506362)
(86)(22)【出願日】2013年3月21日
(86)【国際出願番号】JP2013001924
(87)【国際公開番号】WO2014147664
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2015年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000187149
【氏名又は名称】昭和電工ガスプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】那須 貴樹
【審査官】
河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−131725(JP,A)
【文献】
特開平05−131129(JP,A)
【文献】
実開昭62−160644(JP,U)
【文献】
特開平09−029268(JP,A)
【文献】
特開2004−230359(JP,A)
【文献】
特許第4919262(JP,B2)
【文献】
特開2014−181788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/00 − 5/26
B01F 15/00 − 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相部に熱対流を発生させる伝熱部を有する高圧容器と、この高圧容器に貯蔵容器内の液化炭酸ガスを、圧力が1.5〜7Mpaで注入する注入配管と、この注入配管に介装され、該注入配管を流れる圧力が1.5〜7Mpaの液化炭酸ガスで溶解される機能性物質が充填された機能性物質の投入カートリッジと、前記高圧容器の混合流体を取り出し、外部へ供給する供給配管と、前記高圧容器内の混合流体が減少すると、流入配管より炭酸ガスを自動供給する自動供給装置とで構成され、前記機能性物質は、常温常圧において粉粒体の固体であり、かつ、金属錯体、金属アルコキシド、又は樹脂成形体のいずれかに、着色、撥水性、電導性又は紫外線吸収性のいずれかを付加することができる物質であることを特徴とする混合流体供給装置。
【請求項2】
高圧容器の伝熱部は、該高圧容器の外部に設けた間接熱媒流通ジャケットであることを特徴とする請求項1記載の混合流体供給装置。
【請求項3】
注入配管に液化炭酸ガスの流量計あるいは液冷却装置、高圧容器の気相部にガス冷却装置あるいは圧力調整弁、高圧容器の液相部に取り出し口、供給配管に液冷却装置のいずれか1個、あるいは複数個設けられていることを特徴とする請求項1、請求項2いずれかに記載の混合流体供給装置。
【請求項4】
高圧容器に注入配管で混合流体を注入する前後の機能性物質の投入カートリッジの重量を測定することができる測定器が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれかに記載の混合流体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭酸ガスの溶媒性を利用して、炭酸ガスに機能性物質を溶解させて、繊維や樹脂成形体に着色、撥水性、電導性、紫外線吸収性等を付加する場合に使用される混合流体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭酸ガスに溶解させる金属錯体や金属アルコキシド、繊維や樹脂成形体に着色や撥水性や電導性や紫外線吸収性等を付加することができる物質等の機能性物質が常温常圧において粉粒体の固体である場合、粉粒体の固体の連続昇圧装置はシール材の耐久性が乏しく、長期に安定稼動できるものがなく、特に生産設備には不向きであった。
このため、粉粒体の固体である金属錯体や金属アルコキシド等の機能性物質を、圧力が1.5〜7Mpaである液化炭酸ガス中に混合させることは困難であった。
【0003】
常温常圧において、粉粒体の固体である金属錯体や金属アルコキシド等の機能性物質を溶媒に溶解させ、液体として昇圧ポンプを用いて高圧状態である液化炭酸ガスと混合させる方法はあるが、溶媒の混入によって、目的とする機能性が充分に得られないという欠点があり、固体である機能性物質と液化炭酸ガスのみを混合させる装置が求められていた。
また、液化炭酸ガス中の機能性物質の濃度が不均一であると、前述した機能性が安定的に得られないため、液化炭酸ガス中の機能性物質を部分的に滞留させることなく混合させて濃度を均一にすることが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4919262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、粉粒体の固体である機能性物質を液化炭酸ガスで溶解し、該液化炭酸ガスに混合させ、濃度を均一にし、濃度を均一にした液化炭酸ガスの液密度を安定させることができ、かつ連続して機能性物質と液化炭酸ガスの混合流体を供給することができる混合流体供給装置を提供することを目的としている。
【0006】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は液相部に熱対流を発生させる伝熱部を有する高圧容器と、この高圧容器に貯蔵容器内の液化炭酸ガスを、圧力が1.5〜7Mpaで注入する注入配管と、この注入配管に介装され、該注入配管を流れる圧力が1.5〜7Mpaの液化炭酸ガスで
溶解される機能性物質が充填された機能性物質の投入カートリッジと、前記高圧容器の混合流体を取り出し、外部へ供給する供給配管と、
前記高圧容器内の混合流体が減少すると、流入配管より炭酸ガスを自動供給する自動供給装置とで構成され、前記機能性物質は、常温常圧において粉粒体の固体であり、かつ、金属錯体、金属アルコキシド、又は樹脂成形体のいずれかに、着色、撥水性、電導性又は紫外線吸収性のいずれかを付加することができる物質とで混合流体供給装置を構成している。
【発明の効果】
【0008】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1により、貯蔵容器内の液化炭酸ガスを、圧力が1.5〜7Mpaで注入配管より高圧容器に注入することで、注入配管に介装された機能性物質の投入カートリッジに充填された常温常圧において粉粒体の固体である機能性物質が液化炭酸ガスに溶解されて、高圧容器内へ充填することができる。
したがって、高圧容器に確実に機能性物質が溶解された液化炭酸ガスを注入することができる。
(2)前記(1) により、液相部に熱対流を発生させる伝熱部を有する高圧容器を用いているので、液相部に熱対流を発生させることができる。
したがって、機能性物質を液化炭酸ガス中に分散させることができ、濃度を均一にでき、液化炭酸ガスの液密度を安定させることができる。
(3)前記(1) により、高圧容器内の機能性物質と液化炭酸ガスの混合流体を供給配管で外部の樹脂または繊維の成形体、または原材料に含浸させて使用することができる。
(4)自動供給装置によって、高圧容器から液相を取り出すことにより生ずる高圧容器内の液面低下スペースに気体炭酸ガス密度相当分の炭酸ガスが液相から蒸発する重量を追加注入することができるので、気体である炭酸ガスに対して溶解が小さい機能性物質においても、液相に濃縮されることなく、機能性物質の濃度を更に均一にすることができる。
(
5)請求項2も前記(1)〜(
4)と同様な効果が得られるとともに、高圧容器の伝熱部は、該高圧容器の外部に設けた間接熱媒流通ジャケットを用いているので、高圧容器の内部構造を単純にすることができ、液化炭酸ガス中の機能性物質を部分的に滞留させることなく、混合させて濃度を均一にすることができる。
また、間接熱媒を用いることで、高圧容器内部への電気ヒーターを設ける直接加熱方式に比べて、小さな温度差で液化炭酸ガス液相部へ熱対流を発生させることができる。
特に高温に不向きな機能性物質を用いる場合に、間接熱媒は有効である。
(
6)請求項3も前記(1)〜(
5)と同様な効果が得られるとともに、高圧容器の気相部にガス冷却装置、または圧力調整弁を設けることにより、熱対流の発生によって高圧容器の内部の圧力の上昇を抑えることができるので、液化炭酸ガスの液密度を安定させ、機能性物質の濃度を均一にすることができる。
また、高圧容器の取り出し口を液相部に設けることにより、取り出し時に高圧容器内部の圧力低下を抑えることができるので、液化炭酸ガスの液密度を安定させ、機能性物質の濃度を均一にすることができる。
さらに、注入配管に液冷却装置を設けることにより、注入時の高圧容器の内部の圧力上昇を抑えることができるので、液化炭酸ガスの液密度を安定させ、機能性物質の濃度を均一にすることができる。
さらに、供給配管に液冷却装置を設けることにより、供給時の液化炭酸ガスの気化を抑えることができ、液化炭酸ガスの液密度を安定させ、機能性物質の濃度を均一にすることができる。
(7)
請求項4も前記(1)〜(
6)と同様な効果が得られるとともに、高圧容器内へ注入した機能性物質の重量を正確に確認することができる。
【符号の説明】
【0010】
1、1A、1B、1C、1D:混合流体供給装置、
2:付加する装置、 3:液相部、
4:伝熱部、 5:高圧容器、
6:貯蔵容器、 7、7A:注入配管、
8:機能性物質の投入カートリッジ、
9、9A:供給配管、 10:気相部、
11:ガス冷却装置、 12:圧力調整弁、
13:間接熱媒流通ジャケット、 14:切換弁、
15:液冷却装置、 16:計量器、
17:取り出し口、 18:切換弁、
19:液冷却装置、 20:濃度測定器、
21:開閉弁、 22:迂回路。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0012】
図1に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は液化炭酸ガスで常温常圧において粉粒体の固体である金属錯体、金属アルコキシド、繊維や樹脂成形体に着色、撥水性、電導性、紫外線吸収性等のいずれかを付加することができる物質等の機能性物質を溶解した混合流体を繊維や樹脂成形体に着色、撥水性、電導性、紫外線吸収性等のいずれかを付加する装置2へ供給する混合流体供給装置で、この混合流体供給装置1は液相部3に熱対流を発生させる伝熱部4を有する高圧容器5と、この高圧容器5に1.5〜12Mpaの圧力で液化炭酸ガスが充填された貯蔵容器6内の液化炭酸ガスを、圧力が1.5〜7Mpaで注入することができる注入配管7と、この注入配管7に介装され、該注入配管7を流れる圧力が1.5〜7Mpaの液化炭酸ガスで溶解され、混合される常温常圧において粉粒体の固体である機能性物質が充填された機能性物質の投入カートリッジ8と、前記高圧容器の混合流体を取り出し、外部の前記付加する装置2へ供給する供給配管9と、前記高圧容器5の気相部10のガスを冷却するガス冷却装置11と、前記高圧容器5の圧力を調整する圧力調整弁12とで構成されている。
【0013】
前記高圧容器5の伝熱部4は、該高圧容器5の外部に設けた間接熱媒流通ジャケット13が用いられているが、高圧容器5の高さ方向に多段分割して熱対流の大小を多段分割して発生させてもよい。
【0014】
また、間接熱媒の使用が制限される場合には、間接熱媒流通ジャケット13と同様の位置に、高圧容器5を外部から加熱する電気ヒーターをジャケットに代用してもよい。
ただし、電気ヒーターと高圧容器5の間に空気層が生じる場合は、間接熱媒ほど温度差を小さくすることができないため、電気ヒーターに過昇温防止の温度制御を加えるとよい。
【0015】
また、より多くの熱対流を必要とする場合、前記高圧容器5の外部からの磁力により高圧容器5の内部に配置した磁性攪拌子を回転させるマグネティックスターラーや、高圧容器5の外部からの電磁誘導により、攪拌翼を備えた攪拌軸を回転させる攪拌機を用いても良い。ただし、攪拌機の場合は、回転軸の固定などのために高圧容器5の形状が複雑になりやすいが、前記高圧容器5の形状を複雑にすると混合が不均一になったり滞留が起こる原因となるので、高圧容器5の形状は単純にして用いると良い。
【0016】
前記注入配管7の貯蔵容器6と機能性物質の投入カートリッジ8との間には切換弁14、液冷却装置15、計量器16が介装されている。
【0017】
前記供給配管9は前記高圧容器5の液相部3に設けられた取り出し口17に接続され、前記付加する装置2へ導くもので、切換弁18が介装されるとともに、該供給配管9が長い場合には液冷却装置19が介装されている。
【0018】
上記構成の混合流体供給装置1は、注入配管7の切換弁14を開放することにより、貯蔵容器6内の液化炭酸ガスは高圧容器5に充填されるが、該注入配管7に介装された機能性物質の投入カートリッジ8を通過するため、この機能性物質の投入カートリッジ8を通過する液化炭酸ガスによって機能性物質が溶解されて、液化炭酸ガスに機能性物質が溶解された混合流体として高圧容器5へ充填される。
【0019】
高圧容器5へ充填された混合流体は、間接熱媒流通ジャケット13で液相部3に熱対流が発生し、機能性物質を液化炭酸ガス中に混合させ、濃度を均一にする。
また、高圧容器5に設けたガス冷却装置11や圧力調整弁12によって液化炭酸ガスの液密度を安定させ、機能性物質の濃度が均一にでき、この状態の混合流体を供給配管9で付加する装置2へ供給することができる。
【0020】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、
図2ないし
図5に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0021】
図2に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、高圧容器5内に充填された混合流体の濃度を測定することができる濃度測定器20を設置するとともに、貯蔵容器6と切換弁14との間の注入配管7と機能性物質の投入カートリッジ8と高圧容器5との間の注入配管7に開閉弁21を備えた迂回路22を設置し、かつ高圧容器5の外部に設けた2個の間接熱媒流通ジャケット13、13を設けた点で、このように構成した混合流体供給装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られるとともに、高圧容器5内の混合流体の濃度が高くなると、貯蔵容器6の液化炭酸ガスを、迂回路22を通過させて高圧容器5へ注入して混合流体の濃度を一定に保つことができる。
【0022】
また、2個の間接熱媒流通ジャケット13、13は両方とも加熱するものであっても良く、あるいは下部位置のものをヒーターとし、上部位置のものを冷却とし、高圧容器5内での対流を効率よくさせるようにしてもよい。
【0023】
図3に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、貯蔵容器6と付加する装置2との間に注入配管7、高圧容器5、供給配管9とを別に備える混合流体供給装置1Bにした点で、このように構成した混合流体供給装置1Bにすることにより、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られるとともに、機能性物質の投入カートリッジ8の交換を交互に行なって、効率よく高圧容器5、5内の混合流体を付加する装置2へ供給することができる。
【0024】
図4に示す本発明を実施するための第4の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、液冷却装置を用いない注入配管7Aと供給装置9Aを用いた点で、このように構成した混合流体供給装置1Cにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
なお、この実施形態では高圧容器5と付加する装置2との間の供給配管9Aが短い場合に使用できる。
【0025】
図5に示す本発明を実施するための第5の形態において、前記本発明を実施するための第4の形態と主に異なる点は、高圧容器5にガス冷却装置と圧力調整弁のないものを用いた混合流体供給装置1Dにした点で、このような混合流体供給装置1Dにしてもよい。
【0026】
なお、前記本発明の各実施の形態では、高圧容器5の混合流体を下方へ取り出す供給配管9、9Aについて説明したが、本発明はこれに限らず、高圧容器5の液相部3よりサイホン管を用いて上方へ取り出す供給配管を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は機能性物質を液化炭酸ガスに溶解させた混合流体を付加する装置へ供給する混合流体供給装置を製造する産業で利用される。