特許第6043427号(P6043427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043427
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】微小球体
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/18 20060101AFI20161206BHJP
   C08J 9/32 20060101ALI20161206BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B01J13/18
   C08J9/32CEY
   C08F2/44 B
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-514440(P2015-514440)
(86)(22)【出願日】2013年5月27日
(65)【公表番号】特表2015-523908(P2015-523908A)
(43)【公表日】2015年8月20日
(86)【国際出願番号】EP2013060818
(87)【国際公開番号】WO2013178561
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2015年1月21日
(31)【優先権主張番号】12169975.5
(32)【優先日】2012年5月30日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/652,945
(32)【優先日】2012年5月30日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】アクゾ ノーベル ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ノルディン,オーヴェ
【審査官】 森井 隆信
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/122227(WO,A1)
【文献】 特開2011−016884(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/099955(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/050863(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/058910(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00−13/22
C08F 2/00−301/00
C08J 9/32
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体発泡剤を封入する、エチレン性不飽和モノマーから調製されるポリマー外殻を含み、前記エチレン性不飽和モノマーが21重量%〜80重量%のメタクリルアミド及び20重量%〜70重量%のメタクリロニトリルを含み、メタクリルアミド及びメタクリロニトリルの総量が前記エチレン性不飽和モノマーの70重量%〜100重量%であり、
前記エチレン性不飽和モノマーが、カルボン酸含有モノマーを含まないか、又は、10重量%未満のカルボン酸含有モノマーを含む、熱膨張性の熱可塑性微小球体。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和モノマーが30重量%〜70重量%のメタクリルアミド及び30重量%〜60重量%のメタクリロニトリルを含む、請求項1に記載の微小球体。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和モノマーが31重量%〜80重量%のメタクリルアミドを含む、請求項1に記載の微小球体。
【請求項4】
メタクリルアミド及びメタクリロニトリルの総量が前記エチレン性不飽和モノマーの80重量%〜100重量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の微小球体。
【請求項5】
メタクリルアミド及びメタクリロニトリルの総量が前記エチレン性不飽和モノマーの90%〜100%である、請求項4に記載の微小球体。
【請求項6】
前記エチレン性不飽和モノマーが40重量%〜60重量%のメタクリルアミドを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の微小球体。
【請求項7】
前記エチレン性不飽和モノマーが40重量%〜60重量%のメタクリロニトリルを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の微小球体。
【請求項8】
前記液体発泡剤が、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、イソドデカン及びそれらの混合物から選択される炭化水素を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の微小球体。
【請求項9】
前記液体発泡剤が50重量%〜100重量%のイソオクタンを含む、請求項に記載の微小球体。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載される熱膨張性微小球体を製造するための方法であって、エチレン性不飽和モノマーを液体発泡剤の存在下で重合して、前記液体発泡剤を封入するポリマー外殻を含む微小球体を生じさせることを含み、前記エチレン性不飽和モノマーが21重量%〜80重量%のメタクリルアミド及び20重量%〜70重量%のメタクリロニトリルを含み、メタクリルアミド及びメタクリロニトリルの総量が前記エチレン性不飽和モノマーの70重量%〜100重量%である、方法。
【請求項11】
熱可塑性ポリマーマトリックスと、請求項1〜のいずれか一項に記載される膨張性微小球体とを含む膨張性配合物。
【請求項12】
請求項1〜のいずれか一項に記載される熱膨張性微小球体又は請求項11に記載される膨張性配合物の、起泡剤としての使用。
【請求項13】
請求項1〜のいずれか一項に記載される熱膨張性微小球体又は請求項11に記載される膨張性配合物の、射出成形又は押出し成形における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性の熱可塑性微小球体、その製造及び使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
液体発泡剤(propellant)を封入する熱可塑性ポリマー外殻を含む膨張性の熱可塑性微小球体がEXPANCEL(登録商標)の商標で市販されており、多くの異なる用途で起泡剤として使用されている。
【0003】
そのような微小球体において、液体発泡剤は通常、沸騰温度が熱可塑性ポリマー外殻の軟化温度よりも高くない液体である。加熱したとき、液体発泡剤は、外殻が軟化すると同時に蒸発して内圧を増大させ、その結果、微小球体の著しい膨張を生じさせる。膨張が始まる温度がTstartと呼ばれ、一方、最大の膨張に達する温度がTmaxと呼ばれる。膨張性微小球体が様々な形態で上市されており、例えば、乾燥した易流動性粒子として、水性スラリーとして、又は、一部脱水された湿潤ケークとして上市されている。
【0004】
膨張性微小球体を、エチレン性不飽和モノマーを液体発泡剤の存在下で重合することによって製造することができる。通常、この場合のモノマーは主に、1つの炭素・炭素間の二重結合を有するモノマーを、2つ又はそれ以上の炭素・炭素間の二重結合を有する少量の架橋性モノマーと一緒に含む。様々な膨張性微小球体及びそれらの製造の詳しい記載を、例えば、下記の特許公報において見出すことができる:米国特許第3615972号、同第3945956号、同第4287308号、同第5536756号、同第6235800号、同第6235394号及び同第6509384号、同第6617363号及び同第6984347号、米国特許出願公開第2004/0176486号及び同第2005/0079352号、欧州特許第486080号、同第1230975号、同第1288272号、同第1598405号、同第1811007号及び同第1964903号、国際公開第2002/096635号、同第2004/072160号、同第2007/091960号、同第2007/091961号及び同第2007/142593号、並びに、特開1987−286534号公報及び同2005−272633号公報。
【0005】
膨張性微小球体のための1つの重要な用途が、ポリマー材料を、例えば、射出成形及び押出し成形において加工するための起泡剤としての用途である。場合により、例えば、微小球体が長い期間中に高い温度でポリマーと一緒に加工されるときには、高い膨張温度を膨張後の大きい熱安定性との組合せで有する微小球体を有することが望ましい。広い膨張域を有する微小球体を有し、その結果、微小球体が、微小球体組成物を加工期間中に再配合することを必要とすることなく種々の温度で使用され得ることもまた望ましい。このことは、微小球体の最終使用者に、ある特定の材料の泡立ちを最適化する際においてプロセス条件を設計するためのより多くの自由を与えることになるであろう。
【0006】
欧州特許第1508604号、同第1577359号及び同第1964903号は、著量のメタクリル酸モノマーをポリマー外殻に含むことによって製造される高い膨張温度を有する微小球体を開示する。
【0007】
高い膨張温度を有する微小球体を得ることができるとしても、メタクリル酸モノマーは製造プロセスを複雑にする。例えば、メタクリル酸は非常に水溶性であり、また、プロセス条件は、低いpH、水相における多量の塩、並びに、重合スラリーにおける凝集物及び塊を防ぐための水溶性防止剤を必要とする。低いpH及び塩は、腐食を含む様々な問題を重合リアクターにおける引き起こす可能性がある。多量の塩はまた、塩を溶解することを可能とするために水相/有機相のより大きい比率を必要とし、このことは、バッチあたり製造される微小球体の量を低下させる。
【0008】
高い膨張温度を有する膨張性微小球体を提供することが本発明の1つの目的である。
【0009】
膨張性微小球体に広い膨張域を提供することが本発明のもう1つの目的である。
【0010】
優れた体積保持を高い温度において有する膨張させた微小球体を提供することが本発明のさらにもう1つの目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3615972号
【特許文献2】米国特許第3945956号
【特許文献3】米国特許第4287308号
【特許文献4】米国特許第5536756号
【特許文献5】米国特許第6235800号
【特許文献6】米国特許第6235394号
【特許文献7】米国特許第6509384号
【特許文献8】米国特許第6617363号
【特許文献9】米国特許第6984347号
【特許文献10】米国特許出願公開第2004/0176486号
【特許文献11】米国特許出願公開第2005/0079352号
【特許文献12】欧州特許第486080号
【特許文献13】欧州特許第1230975号
【特許文献14】欧州特許第1288272号
【特許文献15】欧州特許第1598405号
【特許文献16】欧州特許第1811007号
【特許文献17】欧州特許第1964903号
【特許文献18】国際公開第2002/096635号
【特許文献19】国際公開第2004/072160号
【特許文献20】国際公開第2007/091960号
【特許文献21】国際公開第2007/091961号
【特許文献22】国際公開第2007/142593号
【特許文献23】特開1987−286534号公報
【特許文献24】特開2005−272633号公報
【特許文献25】欧州特許第1508604号
【特許文献26】欧州特許第1577359号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、ポリマー外殻が主要構成成分としてのメタクリルアミド及びメタクリロニトリルのコポリマーである膨張性微小球体を提供することによってこれらの目的の少なくとも1つを実現することが可能であることが見出されている。
【0013】
本発明の1つの態様が、液体発泡剤を封入させてエチレン性不飽和モノマーから調製されるポリマー外殻を含み、該エチレン性不飽和モノマーが21重量%(wt%)〜80wt%のメタクリルアミド及び20wt%〜70wt%のメタクリロニトリルを含み、メタクリルアミド及びメタクリロニトリルの総量が該エチレン性不飽和モノマーの70wt%〜100wt%である熱膨張性の熱可塑性微小球体に関連する。
【0014】
本発明の別の態様が、熱膨張性微小球体を製造するための方法であって、エチレン性不飽和モノマーを液体発泡剤の存在下で重合して、該液体発泡剤を封入するポリマー外殻を含む微小球体を生じさせることを含み、該エチレン性不飽和モノマーが21wt%〜80wt%のメタクリルアミド及び20wt%〜70wt%のメタクリロニトリルを含み、メタクリルアミド及びメタクリロニトリルの総量が該エチレン性不飽和モノマーの70wt%〜100wt%である方法に関連する。
【0015】
本発明のさらに別の態様が、本発明の膨張性微小球体を膨張させることによって得られる膨張させた微小球体に関連する。
【0016】
本発明のさらなる態様が、本発明の熱膨張性微小球体の、起泡剤としての使用に関連する。
【0017】
なおも、本発明のさらなる態様が、熱可塑性ポリマーマトリックスと本発明の膨張性微小球体とを含む膨張性配合物、及び、そのような配合物の調製に関連する。
【0018】
これらの態様及び他の態様が下記においてより詳しく記載されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
エチレン性不飽和モノマーは好ましくは、30wt%〜80wt%、31wt%〜80wt%、30wt%〜70wt%、又は、40wt%〜60wt%のメタクリルアミドを含む。さらには、エチレン性不飽和モノマーは好ましくは、30wt%〜65wt%、30wt%〜60wt%、又は、40wt%〜60wt%のメタクリロニトリルを含む。
【0020】
メタクリルアミド及びメタクリロニトリルの総量が、エチレン性不飽和モノマーの80wt%から100wt%まで、或いは、90wt%又は95wt%、また、最大で100wt%である場合がある。
【0021】
メタクリロニトリル対メタクリルアミドの重量比が好ましくは2.5:1から1:2.5までであり、特に1.8:1から1:1.8までであるか、又は、1.5:1から1:1.5までである。
【0022】
エチレン性不飽和モノマーはさらに、少なくとも2つの重合可能な炭素・炭素間の二重結合を有する1つ又はそれ以上の架橋性モノマーを含む場合があり、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ジ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、グリセロールジ(メタ)アクリラート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリラート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリラート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリラート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリラート、トリアリルホルマールトリ(メタ)アクリラート、アリルメタクリラート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、トリブタンジオールジ(メタ)アクリラート、PEG#200ジ(メタ)アクリラート、PEG#400ジ(メタ)アクリラート、PEG#600ジ(メタ)アクリラート、3−アクリロイルオキシグリコールモノアクリラート、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアナート、トリアリルイソシアヌラートなどの1つ又はそれ以上を含む場合がある。特に好ましいものが、少なくとも三官能性である架橋性モノマーであり、そのようなものの例には、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリラート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリラート、トリアリルホルマールトリ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアナート及びトリアリルイソシアヌラートが挙げられる。
【0023】
架橋性の官能性モノマーの量は、例えば、エチレン性不飽和モノマーの0.01wt%〜3wt%、又は、0.1wt%〜1wt%、又は、0.2wt%〜0.5wt%である場合がある。
【0024】
エチレン性不飽和モノマーはカルボン酸モノマーを含まない場合があるか、或いは、10wt%未満のカルボン酸モノマーを含む場合があり、例えば、5wt%未満又は2wt%未満のカルボン酸モノマー含有モノマー(例えば、メタクリル酸又はアクリル酸など)を含む場合がある。
【0025】
ただ1つの炭素・炭素間の二重結合を有するエチレン性不飽和モノマーがメタクリロニトリル及びメタクリルアミドとは別に含まれるならば、その量は好ましくは0〜10wt%であり、最も好ましくは0〜5wt%であるか、又は、0〜2wt%である。含まれることがあるモノマーのそのような他の種類の例が、ニトリル含有モノマー、例えば、アクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル又はクロトニトリルなど;ビニルピリジン;ビニルエステル、例えば、ビニルアセタートなど;スチレン系化合物、例えば、スチレン、ハロゲン化スチレン及びα−メチルスチレンなど;ジエン、例えば、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンなど;不飽和カルボン酸化合物、例えば、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの塩;不飽和エステル、例えば、メチルアクリラート又はメチルメタクリラート又はエチルアクリラート又はエチルメタクリラートなど;不飽和ハロゲン化化合物、例えば、ビニルクロリド、ビニリデンフルオリド及びビニリデンクロリドなど;或いは、他の不飽和モノマー、例えば、アクリルアミド、又は、N−置換マレイミドが挙げられる。
【0026】
1つの実施形態において、エチレン性不飽和モノマーは、メタクリロニトリル及びメタクリルアミドと、少なくとも2つの炭素・炭素間の二重結合を有する少なくとも1つの架橋性モノマーとから実質的になるか、又は、メタクリロニトリル及びメタクリルアミドと、少なくとも2つの炭素・炭素間の二重結合を有する少なくとも1つの架橋性モノマーとからなる。
【0027】
ポリマー外殻の軟化温度は、通常の場合にはそのガラス転移温度(T)に対応するものであり、好ましくは50℃〜250℃の範囲に含まれるか、又は、100℃〜230℃の範囲に含まれる。
【0028】
好ましくは、ポリマー外殻は微小球体全体の50wt%〜95wt%を構成するか、又は60wt%〜90wt%を構成する。
【0029】
液体発泡剤は通常、熱可塑性ポリマー外殻の軟化温度よりも高くない沸騰温度を有する液体であり、炭化水素(例えば、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、n−ブタン、イソブタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、ネオヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、イソデカン、イソドデカン又はそれらの混合物など)を含む場合がある。それらとは別に、他の炭化水素タイプもまた使用することができ、例えば、石油エーテル、或いは、塩素化炭化水素又はフッ素化炭化水素(例えば、メチルクロリド、メチレンクロリド、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トリクロロフルオロメタン、ペルフッ素化炭化水素など)などを使用することができる。特に好ましい液体発泡剤は、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、イソドデカン及びそれらの混合物の少なくとも1つを含み、好ましくはイソオクタンを含む。
【0030】
液体発泡剤の大気圧における沸点が、好ましくは−20℃から200℃までの広い範囲に含まれる場合があり、最も好ましくは−20℃から150℃までの広い範囲に含まれる場合がある。液体発泡剤は、液体発泡剤の少なくとも50wt%が、好ましくは少なくとも80wt%が大気圧において蒸発することを可能にするように、沸点又は沸点範囲温度が50℃を超え、より好ましくは60℃を超え、最も好ましくは70℃を超え、しかし、好ましくは150℃以下であることが特に好ましい。
【0031】
1つの実施形態において、液体発泡剤は好ましくは、イソオクタンを、例えば、少なくとも25wt%又は少なくとも50wt%の量で含み、好ましくは少なくとも60wt%又は少なくとも70wt%の量で含むか、或いは、場合によってはイソオクタンから実質的になることさえある。液体発泡剤はさらに、液体発泡剤の好適な沸点範囲を与えるブタン類、ペンタン類、ヘキサン類、ヘプタン類、石油蒸留物、イソドデカン又は他の液体の1つ又はそれ以上を含む場合がある。イソオクタンとの組合せで使用されるための特に好ましい炭化水素が、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、石油エーテル、イソドデカン及びn−ヘプタンの少なくとも1つである。例えば、イソオクタンを、イソペンタン、イソドデカン又はそれらの混合物と一緒に使用することができる。
【0032】
液体発泡剤は、例えば、微小球体の総重量の5wt%〜50wt%を構成する場合があり、又は、10wt%〜40wt%を構成する場合がある。
【0033】
ポリマー外殻及び液体発泡剤とは別に、微小球体は、通常の場合には1wt%〜20wt%の量で、好ましくは2wt%〜10wt%の量でその製造期間中に加えられるさらなる物質を含む場合がある。そのような物質の例が固体の懸濁化剤であり、例えば、シリカ、チョーク、ベントナイト、コロイド状粘土、窒化ホウ素、デンプン、寒天(gum agar)、修飾多糖類(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプンエーテル、デンプンエステル)、架橋ポリマー、ポリマー粒子(例えば、ポリアミド、ポリカーボナート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリラート)の1つ又はそれ以上、並びに/或いは、金属、例えば、Al、Ca、Mg、Ba、Fe、Zn、Ni及びMn、Tiの塩、酸化物又は水酸化物の1つ又はそれ以上(例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シュウ酸カルシウム、二酸化チタン、及び、アルミニウム、鉄、亜鉛、ニッケル又はマンガンの水酸化物の1つ又はそれ以上)などである。存在するならば、これらの固体懸濁化剤は通常、主にポリマー外殻の外側表面に位置する。しかしながら、懸濁化剤が微小球体の製造の期間中に加えられていたならば、懸濁化剤は、後の段階で洗い流されている場合があり、したがって、最終製造物には実質的に存在していない可能性がある。
【0034】
好ましくは、組成物の微小球体は比較的大きいTstart及びTmaxを有する。Tstartは好ましくは130℃から230℃までであり、最も好ましくは150℃又は180℃から200℃までである。Tmaxは好ましくは170℃から270℃までであり、最も好ましくは200℃から260℃までである。
【0035】
膨張性微小球体は好ましくは、体積メジアン直径が、Malvern Mastersizer Hydro 2000SM装置で湿潤サンプルに対してレーザー光散乱によって求められる場合、1μm〜500μmであり、より好ましくは5μm〜100μmであり、最も好ましくは10μm〜70μmである。
【0036】
本発明のさらなる態様が、上記で記載されるような膨張性の熱可塑性微小球体を製造するためのプロセスに関する。このプロセスは、上記で記載されるようなエチレン性不飽和モノマーを好ましくは水性の懸濁物において、液体発泡剤の存在下で重合して、該液体発泡剤を封入するポリマー外殻を含む微小球体を生じさせることを含む。モノマー及び液体発泡剤の種類及び量に関しては、膨張性微小球体の上記説明が参照される。この製造は、前述の特許公報に記載されるのと同じ原理に従う場合がある。
【0037】
本発明の1つの実施形態において、微小球体は回分様式のプロセスで製造され、その場合、重合が反応槽において下記のように行われる場合がある。100部のモノマー相(これは好適にはモノマー及び液体発泡剤を含み、それらの割合により、ポリマー外殻におけるモノマーの割合及び最終生成物における液体発泡剤の量が決定される)について、例えば、0.1部〜5部の量での1つ又はそれ以上の重合開始剤と、例えば、100部〜800部の量での水相と、例えば、1部〜20部の量での1つ又はそれ以上の好ましくは固体のコロイド状懸濁化剤とが混合され、均質化される。得られるモノマー相の液滴のサイズにより、最終的な膨張性微小球体のサイズが、例えば、様々な懸濁化剤とともにすべての類似する製造法のために適用することができる米国特許第3615972号に記載される原理に従って決定される。温度が好適には40℃〜90℃で維持され、好ましくは50℃〜80℃で維持され、一方、好適なpHは、使用される懸濁化剤に依存する。例えば、懸濁化剤が、金属、例えばCa、Mg、Ba、Zn、Ni及びMnの塩、酸化物又は水酸化物から選択されるならば、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シュウ酸カルシウム、及び、亜鉛、ニッケル又はマンガンの水酸化物のうちの1つ又はそれ以上であるならば、高いpH、好ましくは5〜12の高いpHが、最も好ましくは6〜10の高いpHが好適である。懸濁化剤が、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、寒天、シリカ、コロイド状粘土、或いは、アルミニウム又は鉄の酸化物又は水酸化物から選択されるならば、低いpH、好ましくは1〜6の低いpHが、最も好ましくは3〜5の低いpHが好適である。上記薬剤のそれぞれ1つが、例えば、溶解性データに依存して、異なる最適なpHを有する。
【0038】
懸濁化剤の効果を高めるために、少量の1つ又はそれ以上の促進剤(例えば、0.001wt%〜1wt%)を加えることもまた可能である。通常、そのような促進剤は有機物であり、例えば、水溶性のスルホン化ポリスチレン、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース、テトラメチルアンモニウム水酸化物又はテトラメチルアンモニウム塩化物、或いは、水溶性の複合樹脂系アミン縮合生成物、例えば、ジエタノールアミン及びアジピン酸の水溶性縮合生成物、エチレンオキシド、尿素及びホルムアルデヒドの水溶性縮合生成物など、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミン、両性材料、例えば、タンパク質性材料、例えば、ゼラチン、にかわ、カゼイン、アルブミン及びグルチンなど、非イオン性材料、例えば、メトキシセルロース、乳化剤として通常の場合には分類されるイオン性材料、例えば、石けん、アルキルスルファート及びアルキルスルホナート並びに長鎖第四級アンモニウム化合物などのうちの1つ又はそれ以上から選択される場合がある。
【0039】
従来のラジカル重合が使用される場合があり、開始剤が好適には、有機過酸化物(例えば、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシジカルボナートなど)又はアゾ化合物の1つ又はそれ以上から選択される。好適な開始剤には、ジセチルペルオキシジカルボナート、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボナート、ジオクタノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、tert−ブチルペルアセタート、tert−ブチルペルラウラート、tert−ブチルペルベンゾアート、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、クメンエチルペルオキシド、ジイソプロピルヒドロキシジカルボキシラート、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナート)及び2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などが挙げられる。重合を放射線(例えば、高エネルギーのイオン化放射線など)により開始させることもまた可能である。
【0040】
重合が本質的に完了しているとき、微小球体は通常、水性のスラリー又は分散物として得られ、この場合、これらはそのようなものとして使用することができ、或いは、いわゆる湿潤ケークを得るために、任意の慣用的手段、例えば、ベッドろ過(bed filtering)、フィルター圧搾、リーフろ過(leaf filtering)、回転ろ過、ベルトろ過又は遠心分離などによって脱水することができる。しかしながら、微小球体を、任意の慣用的手段、例えば、噴霧乾燥、棚乾燥、トンネル乾燥、回転乾燥、ドラム乾燥、空気乾燥、ターボシェルフ乾燥(turbo shelf drying)、ディスク乾燥又は流動床乾燥などによって乾燥することもまた可能である。
【0041】
適切であるならば、微小球体は、任意の段階において、例えば、前述の国際公開第2004/072160号又は米国特許第4287308号に記載される手法のいずれかによって、残留する未反応モノマーの量を減らすために処理される場合がある。
【0042】
本発明の微小球体は、射出成形又は押出し成形において、様々な用途における起泡剤として、例えば、熱可塑性材料のための起泡剤として、特に、高融点の熱可塑性材料のための起泡剤として有用である。
【0043】
本発明の1つの態様が、上記で開示されるような膨張性微小球体を、例えば、未膨張の微小球体の直径よりも2倍〜5倍大きい粒子直径に膨張させることによって得られる膨張させた微小球体に関連する。膨張性微小球体を、Tstartを超える温度に加熱することによって膨張が達成される。上限の温度限界は、微小球体がいつ崩壊を始めるかによって設定され、ポリマー外殻及び液体発泡剤の正確な組成に依存する。ほとんどの場合において、100℃〜250℃の温度が好適である。膨張させた微小球体の密度を、加熱のための温度及び時間を選択することによって制御することができる。膨張を、例えば、欧州特許第0348372号、国際公開第2004/056549号又は国際公開第2006/009643号に記載されるように、任意の好適なデバイスにおいて、加熱のための任意の好適な手段によって達成することができる。
【0044】
本発明の特定の態様が、熱可塑性ポリマーマトリックス及び膨張性微小球体を含む膨張性配合物における、上記で記載されるような膨張性微小球体の使用に関する。配合物は必要な場合にはさらに、1つ又はそれ以上の添加剤、例えば、着色剤、安定剤、強化剤などを含む。膨張性配合物の例には、射出成形、押出し、ブロー成形、回転成形又は熱成形などにおいて使用されるための成形可能な複合シート及び複合コンパウンドが挙げられる。膨張性微小球体の量は好ましくは0.5wt%〜15wt%であり、又は1wt%〜5wt%である。ポリマーマトリックスは、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド、ポリカルボナート、ポリメチルメタクリラート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンコポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリビニルクロリド、エチレン−ビニルアセタートコポリマー又はそれらのコポリマー、或いは、類似する融点を有する別のポリマーである場合がある。
【0045】
本発明はまた、熱可塑性ポリマーマトリックス及び上記で記載されるような膨張性微小球体、並びに、必要に応じて上記で記載されるようなさらなる添加剤を含む、上記で記載されるような膨張性配合物に関する。
【0046】
本発明はさらに、熱可塑性ポリマー及び上記で記載されるような膨張性微小球体、並びに、必要な場合には上記で述べられるようなさらなる添加剤を、該ポリマーの融点を超えるが、該微小球体の膨張温度(Tstart)よりも低い温度において混合することを含むその調製方法に関する。
【実施例】
【0047】
本発明がさらに、下記の実施例に関連して記載されるであろう。しかしながら、下記の実施例は、本発明の範囲を限定するために解釈してはならない。別途明記されない場合、すべての部及び百分率が重量比による部及びパーセントを示す。
【0048】
微小球体の膨張特性を、20℃/分の加熱速度及び0.06Nの負荷(正味)を使用して、Mettler Toledo TMA/SDTA 841で評価した。Tstartは、膨張が始まる温度であり、Tmaxは、最大の膨張が維持される温度であり、Dminは、Tmaxにおける微小球体の密度であり、ΔT1/2は、微小球体の膨張から生じるプローブ変位が温度に対してプロットされる熱機械分析曲線(TMA曲線)の半値幅である。ΔT1/2の数字が大きいほど、膨張域が広くなる。F300は、最大膨張によって除される300℃における膨張との比率であり、例えば、F300が50%であるならば、最大膨張体積の半分が300℃において達成されるか、又は保持されるかのどちらかである。耐熱性をさらに、250℃及び0.06Nの負荷(正味)において等温状態で評価した。加熱を、20℃/分で230℃まで、10℃/分で240℃まで、かつ、5℃/分で250℃まで行い、その後、温度を250℃で1時間保った。耐熱性が、膨張した微小球体の体積保持として定義され、分析期間中に到達した最大膨張によって除される、250℃で0分後、15分後、30分後、45分後及び60分後での膨張との比率として示される。
【0049】
粒子サイズ及び粒子サイズ分布を、湿潤サンプルに対して、Malvern Mastersizer Hydro 2000SM装置でレーザー光散乱によって求めた。粒子サイズが体積メジアン直径D(0.5)として示される。
【0050】
液体発泡剤の量を、Mettler Toledo TGA/SDTA851での熱重量分析(TGA)によって求めた。すべてのサンプルを、水分をできる限り除くために、また、存在するならば、残留モノマーもまた除くために分析前に乾燥した。分析を、30℃から開始して20℃/分の加熱速度を使用して窒素雰囲気下で行った。いくつかの場合には、液体発泡剤の喪失に起因する重量減少と、ポリマーの分解に起因する重量減少とを区別することが困難であったので、液体発泡剤の量の正確な測定を得ることが困難であった。
【0051】
実施例1
Mg(OH)により安定化された有機液滴を水に含有する反応混合物を、これらの相を混合し、好適な液滴サイズが達成されるまで激しく撹拌することによって調製した。この水分散物は4.9部のMg(OH)及び370部の水を含有した。有機液滴は、2部のジラウロイルペルオキシド、25部のイソオクタン、50部のメタクリロニトリル、50部のメタクリルアミド及び0.4部のトリメチロールプロパントリメタクリラートを含有した。重合を、撹拌下、密封された反応器において、62℃で11時間行い、その後、80℃で4時間行った。室温に冷却した後、得られた微小球体スラリーのサンプルを、粒子サイズ分布を求めるために取り出した。ろ過、洗浄及び乾燥の後、粒子をTMAによって分析した。乾燥粒子は約31重量%のイソオクタンを含有し、メジアン粒子サイズが約51μmであった。TMAの結果が表1に見出される。
【0052】
比較例2〜7、実施例8〜11
微小球体を、表1に従ってモノ官能性モノマー(すなわち、ただ1つの炭素・炭素間の二重結合を有するモノマー)をを添加したことを除いて、実施例1の場合のように行われる複数の重合実験において調製した。比較例2では重合を62℃で20時間行ったことを除いて、重合を実施例1に記載されるように行った。分析結果を表1に見出すことができる。
【表1】
a)M1は実施例1及び8〜11、比較例3〜7においてメタクリロニトリル(MAN)であり、比較例2においてアクリロニトリル(AN)である。b)M2は、実施例1、比較例2、比較例7、及び実施例8〜11においてメタクリルアミド(MAAM)であり、比較例3においてアクリルアミドであり、比較例4においてN−(ヒドロキシメチル)アクリルアミドであり、比較例5においてN,N−ジメチルアクリルアミドであり、比較例6においてN−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミドである。
【0053】
表1において、高いTstart、広い膨張域及び300℃での優れた体積保持を有する熱膨張性微小球体が、メタクリロニトリル及びメタクリルアミドがモノ官能性モノマーとして使用されたときに達成され得ること、一方で、比較例2〜7の微小球体は膨張を示さなかったか、又は不良な膨張を示したことを認めることができる。
【0054】
実施例12〜16
微小球体を、表2に従って液体発泡剤を添加したことを除いて、実施例1での場合のように行われる複数の重合実験において調製した。分析結果を表2に見出すことができる。
【表2】
a)使用される種々の液体発泡剤は、イソペンタン(IP)、イソオクタン(IO)及びイソドデカン(ID)である。b)実験で使用される液体発泡剤の総量は同じである。
【0055】
表2において、高いTstart、広い膨張域及び300℃での優れた体積保持が、様々な炭化水素混合物を液体発泡剤として用いて得られたことを認めることができる。
【0056】
実施例17〜28
微小球体を、表3に従ってモノ官能性モノマーを添加したことを除いて、実施例1での場合のように行われる複数の重合実験において調製した。さらに、実施例21では、0.5部のトリメチロールプロパントリメタクリラートを使用した。重合を、重合が62℃で20時間行われた実施例21を除いて、実施例1に記載されるように行った。分析結果を表3に見出すことができる。
【表3】
a)AN=アクリロニトリル、MA=メチルアクリラート、MMA=メチルメタクリラート、VDC=ビニリデンクロリド。b)分析されず。サンプルは、220℃で既にその膨張を失っていた。
【0057】
表3において、メタクリロニトリル及びメタクリルアミドから得られるコポリマー外殻を有する微小球体における広い膨張域及び300℃での体積保持が他のモノ官能性モノマーの添加によって悪影響を受けることを認めることができる。
【0058】
参考例29(欧州特許第1577359号の開示を表す)
微小球体を、Mg(OH)の代わりにシリカの水分散物を使用することによって有機液滴を安定化させながら、モノマー及び液体発泡剤を除いて実施例1での場合のように調製した。有機液滴は、0.8部のジラウロイルペルオキシド、13部のイソヘキサン、13部のイソオクタン、40部のアクリロニトリル、23部のメタクリロニトリル、30部のメタクリル酸、3.5部のメタクリルアミド、3.5部のスチレン及び0.2部のジエチレングリコールジメタクリラートからなった。水分散物を、244部の水、10部の1M NaOH、17部の10%酢酸、0.3部のCr(NO)3、10部の40%コロイド状シリカ、0.9部の、ジエタノールアミンとアジピン酸との縮合生成物、1.5部のアスコルビン酸、及び7部のNa2SO4を混合することによって調製した。重合を70℃で20時間行った。分析結果を表4に見出すことができる。
【0059】
参考例30(欧州特許第1964903号の開示を表す)
有機液滴が54部のメタクリロニトリル、46部のメタクリル酸、30部のイソオクタン及び2.4部のジラウロイルペルオキシドからなることを除いて、微小球体を参考例29の場合のように調製した。重合を60℃で15時間行い、その後、70℃で9時間行った。分析結果を表4に見出すことができる。
【0060】
参考例31(欧州特許第1964903号の開示を表す)
微小球体を、モノマーが64部のメタクリロニトリル及び36部のメタクリル酸からなることを除いて、参考例30での場合のように調製した。分析結果を表4に見出すことができる。
【表4】
【0061】
耐熱性
表5において、メタクリロニトリル及びメタクリルアミドから得られるコポリマー外殻を有する本発明による微小球体(実施例1及び実施例9)が、先行技術による参考例参考例29〜参考例31)と比較して、250℃で1時間加熱した後でさえ、優れた体積保持を有することを認めることができる。
【表5】
なお、本発明には以下の態様も含まれる。
[1]
液体発泡剤を封入させてエチレン性不飽和モノマーから調製されるポリマー外殻を含み、前記エチレン性不飽和モノマーが21wt%〜80wt%のメタクリルアミド及び20wt%〜70wt%のメタクリロニトリルを含み、メタクリルアミド及びメタクリロニトリルの総量が前記エチレン性不飽和モノマーの70wt%〜100wt%である熱膨張性の熱可塑性微小球体。
[2]
前記エチレン性不飽和モノマーが30wt%〜70wt%のメタクリルアミド及び30wt%〜60wt%のメタクリロニトリルを含む、[1]に記載の微小球体。
[3]
前記エチレン性不飽和モノマーが31wt%〜80wt%のメタクリルアミドを含む、[1]に記載の微小球体。
[4]
メタクリルアミド及びメタクリロニトリルの総量が前記エチレン性不飽和モノマーの80wt%〜100wt%である、[1]〜[3]のいずれかに記載の微小球体。
[5]
メタクリルアミド及びメタクリロニトリルの総量が前記エチレン性不飽和モノマーの90%〜100%である、[4]に記載の微小球体。
[6]
前記エチレン性不飽和モノマーが40wt%〜60wt%のメタクリルアミドを含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の微小球体。
[7]
前記エチレン性不飽和モノマーが40wt%〜60wt%のメタクリロニトリルを含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の微小球体。
[8]
前記エチレン性不飽和モノマーがカルボン酸含有モノマーを含まないか、又は、10wt%未満のカルボン酸含有モノマーを含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の微小球体。
[9]
前記液体発泡剤が、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、イソドデカン及びそれらの混合物から選択される炭化水素を含み、好ましくはイソオクタンを含む、[1]〜[8]のいずれかに記載の微小球体。
[10]
前記液体発泡剤が50wt%〜100wt%のイソオクタンを含む、[9]に記載の微小球体。
[11]
[1]〜[10]のいずれかに記載される熱膨張性微小球体を製造するための方法であって、エチレン性不飽和モノマーを液体発泡剤の存在下で重合して、前記液体発泡剤を封入するポリマー外殻を含む微小球体を生じさせることを含み、前記エチレン性不飽和モノマーが21wt%〜80wt%のメタクリルアミド及び20wt%〜70wt%のメタクリロニトリルを含み、メタクリルアミド及びメタクリロニトリルの総量が前記エチレン性不飽和モノマーの70wt%〜100wt%である、方法。
[12]
[1]〜[10]のいずれかに記載される膨張性微小球体を膨張させることによって得られる膨張させた微小球体。
[13]
熱可塑性ポリマーマトリックスと、[1]〜[10]のいずれかに記載される膨張性微小球体とを含む膨張性配合物。
[14]
[13]に記載される膨張性配合物を調製するための方法であって、熱可塑性ポリマーと、[1]〜[10]のいずれかに記載される膨張性微小球体とを、前記ポリマーの融点を超えるが、前記微小球体の膨張温度よりも低い温度において混合することを含む、方法。
[15]
[1]〜[10]のいずれかに記載される熱膨張性微小球体又は[13]に記載される膨張性配合物の、起泡剤としての使用。
[16]
[1]〜[10]のいずれかに記載される熱膨張性微小球体又は[13]に記載される膨張性配合物の、射出成形又は押出し成形における使用。