特許第6043442号(P6043442)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043442
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】層状複水酸化物含有複合材料
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/00 20060101AFI20161206BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20161206BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20161206BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C01F7/00 C
   H01M2/16 M
   H01M2/16 L
   H01M2/16 P
   B32B9/00 A
   B32B18/00 Z
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-561457(P2015-561457)
(86)(22)【出願日】2015年10月8日
(86)【国際出願番号】JP2015078655
(87)【国際公開番号】WO2016067885
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2016年3月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-219757(P2014-219757)
(32)【優先日】2014年10月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-146893(P2015-146893)
(32)【優先日】2015年7月24日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】横山 昌平
(72)【発明者】
【氏名】藤▲崎▼ 恵実
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−191523(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/118561(WO,A1)
【文献】 X. LEI et al.,Synthesis of Oriented Layered Double Hydroxide Thin Films on Sulfonated Polystyrene Substrates,Chemistry Letters,2005年,34,1610-1611.,whole document.
【文献】 J. LIAO , et al.,Fabrication of high-performance facilitated transport membranes for CO2 separation,Chemical Science,2014年,5,PP.2843-2849
【文献】 J. LIAO et al.,Fabrication of high-performance facilitated transport membranes for CO2 separation,Chemical Science,2014年,5,2843-2849.,abstract, line 4, right-hand column, page 2844 - line 28, right-hand column, page 2845, fig. 1, sche
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 1/00−17/00
B32B 1/00−43/00
H01M 2/14−2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材と、
前記多孔質基材上及び/又は前記多孔質基材中に形成され、一般式:M2+1−x3+(OH)n−x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4であり、mは任意の実数である)で表される層状複水酸化物から主としてなる機能層と、
を備えてなり、前記機能層が前記多孔質基材との界面及びその近傍に硫黄(S)をさらに含有し、かつ、前記機能層が透水性を有しない、層状複水酸化物含有複合材料。
【請求項2】
前記機能層の前記多孔質基材との界面及びその近傍における硫黄含有量が0.01原子%以上である、請求項1に記載の層状複水酸化物含有複合材料。
【請求項3】
前記硫黄含有量が0.05〜5.0原子%である、請求項2に記載の層状複水酸化物含有複合材料。
【請求項4】
記機能層が前記多孔質基材との界面及びその近傍に炭素(C)を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の層状複水酸化物含有複合材料。
【請求項5】
前記層状複水酸化物が複数の板状粒子の集合体で構成され、該複数の板状粒子がそれらの板面が前記多孔質基材の表面と略垂直に又は斜めに交差するような向きに配向してなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の層状複水酸化物含有複合材料。
【請求項6】
前記一般式において、少なくともM2+にMg2+を、M3+にAl3+を含み、An−にOH及び/又はCO2−を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の層状複水酸化物含有複合材料。
【請求項7】
前記機能層が前記多孔質基材上に形成される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の層状複水酸化物含有複合材料。
【請求項8】
前記機能層が100μm以下の厚さを有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の層状複水酸化物含有複合材料。
【請求項9】
前記多孔質基材が、セラミックス材料、金属材料、及び高分子材料からなる群から選択される少なくとも1種で構成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の層状複水酸化物含有複合材料。
【請求項10】
前記多孔質基材が、セラミックス材料で構成され、該セラミックス材料が、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、スピネル、カルシア、コージライト、ゼオライト、ムライト、フェライト、酸化亜鉛、及び炭化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項9に記載の層状複水酸化物含有複合材料。
【請求項11】
前記多孔質基材が、0.001〜1.5μmの平均気孔径を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の層状複水酸化物含有複合材料。
【請求項12】
前記多孔質基材の表面が、10〜60%の気孔率を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の層状複水酸化物含有複合材料。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の層状複水酸化物含有複合材料をセパレータとして備えた、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状複水酸化物含有複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロタルサイトに代表される層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide)(以下、LDHともいう)は、水酸化物の層と層の間に交換可能な陰イオンを有する物質群であり、その特徴を活かして触媒や吸着剤、耐熱性向上のための高分子中の分散剤等として利用されている。特に、近年、水酸化物イオンを伝導する材料として注目され、アルカリ形燃料電池の電解質や亜鉛空気電池の触媒層への添加についても検討されている。
【0003】
従来の適用分野である触媒等を考えた場合、高比表面積が必要であることから粉末状LDHでの合成及び使用で十分であった。一方、アルカリ形燃料電池などの水酸化物イオン伝導性を活かした電解質への応用を考えた場合、燃料ガスの混合を防ぎ、十分な起電力を得るためにも高い緻密性のLDH膜が望まれる。
【0004】
特許文献1及び2並びに非特許文献1には配向LDH膜が開示されており、この配向LDH膜は高分子基材の表面を尿素及び金属塩を含有する溶液中に水平に浮かせてLDHを核生成させ配向成長させることにより作製されている。これらの文献で得られた配向LDH薄膜のX線回折結果はいずれも(003)面の強いピークが観察されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国登録特許公報CNC1333113号
【特許文献2】国際公開第2006/050648号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Zhi Lu, Chemical Engineering Science 62, pp.6069-6075(2007),“Microstructure-controlled synthesis of oriented layered double hydroxide thin films:Effect of varying the preparation conditions and a kinetic and mechanistic study of film formation”
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、LDHの緻密なバルク体(以下、LDH緻密体という)の作製に先だって成功している。また、LDH緻密体について水酸化物イオン伝導度の評価を実施する中で、LDH粒子の層方向にイオンを伝導させることで高い伝導度を示すことを知見している。しかしながら、亜鉛空気電池やニッケル亜鉛電池等のアルカリ二次電池へ固体電解質セパレータとしてLDHの適用を考えた場合、LDH緻密体が高抵抗であるとの問題がある。したがって、LDHの実用化のためには薄膜化による低抵抗化が望まれる。この点、特許文献1及び2並びに非特許文献1に開示される配向LDH膜は配向性及び緻密性において十分なものとはいえない。そこで、高度に緻密化されたLDH膜、好ましくは配向LDH膜が望まれる。また、固体電解質セパレータとしてLDH膜の適用を考えた場合、電解液中の水酸化物イオンがLDH膜を通して移動しなければならないことから、LDH膜を支持する基材は多孔質であることが要求される。
【0008】
本発明者らは、今般、多孔質基材上及び/又は前記多孔質基材中に形成されたLDH膜等のLDH含有機能層において、多孔質基材との界面及びその近傍に硫黄(S)を存在させることで、LDH含有機能層の伝導率を有意に向上できるとの知見を得た。
【0009】
したがって、本発明の目的は、多孔質基材上及び/又は多孔質基材中に形成されたLDH含有機能層の伝導率が有意に向上された、LDH含有複合材料を提供することにある。
【0010】
本発明の一態様によれば、多孔質基材と、
前記多孔質基材上及び/又は前記多孔質基材中に形成され、一般式:M2+1−x3+(OH)n−x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4であり、mは任意の実数である)で表される層状複水酸化物を含んでなる機能層と、
を備えてなり、前記機能層が前記多孔質基材との界面及びその近傍に硫黄(S)をさらに含有する、層状複水酸化物含有複合材料が提供される。
【0011】
本発明の別の一態様によれば、上記層状複水酸化物含有複合材料をセパレータとして備えた、電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のLDH含有複合材料の一態様を示す模式断面図である。
図2】本発明のLDH含有複合材料の他の一態様を示す模式断面図である。
図3】層状複水酸化物(LDH)板状粒子を示す模式図である。
図4A】例1及び2の緻密性判定試験Iで使用された緻密性判別測定系の分解斜視図である。
図4B】例1及び2の緻密性判定試験Iで使用された緻密性判別測定系の模式断面図である。
図5A】例1及び2の緻密性判定試験IIで使用された測定用密閉容器の分解斜視図である。
図5B】例1及び2の緻密性判定試験IIで使用された測定系の模式断面図である。
図6】例1及び2で用いた電気化学測定系を示す模式断面図である。
図7】例1において観察された試料の表面微構造を示すSEM画像である。
図8】例1において観察されたLDH膜/多孔質基材の界面近傍のFE−SEM画像である。
図9】例1において図8の点1において測定されたEDSスペクトルである。
図10】例2において観察された試料の表面微構造を示すSEM画像である。
図11】例3において観察された試料の表面微構造を示すSEM画像である。
図12】例3において観察されたLDH膜/多孔質基材の界面近傍のFE−SEM画像である。
図13】例3において図12に矢印で示される3μmの長さにわたって行われたEDS分析により得られた、LDH膜/多孔質基材の界面及びその近傍における炭素濃度のラインプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
層状複水酸化物含有複合材料
本発明の層状複水酸化物含有複合材料(LDH含有複合材料)は、多孔質基材と、この多孔質基材上及び/又は多孔質基材中に形成される機能層とを備えてなる。機能層は、一般式:M2+1−x3+(OH)n−x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4である)で表される層状複水酸化物(LDH)を含んでなり、好ましくはそのようなLDHから主としてなる。そして、機能層は、多孔質基材との界面及びその近傍に硫黄(S)をさらに含有する。硫黄の存在形態は特に限定されず、元素分析によりSの存在が確認できればよい。このように、LDH含有機能層において、多孔質基材との界面及びその近傍に硫黄(S)を存在させることで、LDH含有機能層の伝導率を有意に向上させることができる。前述のとおり、LDHの実用化のためには薄膜化による低抵抗化が望まれるが、本発明によれば望ましく低抵抗なLDH含有機能層を備えたLDH含有複合材料を提供できるので、亜鉛空気電池やニッケル亜鉛電池等のアルカリ二次電池へ固体電解質セパレータとしてLDHの適用において有利となる。
【0014】
多孔質材料は孔の存在により透水性を有しうるが、機能層は典型的には緻密な層であり、透水性を有しない程にまでLDHで緻密化されているのが好ましい。なお、本明細書において「透水性を有しない」とは、後述する実施例で採用される「緻密性判定試験I」)又はそれに準ずる手法ないし構成で透水性を評価した場合に、測定対象物(すなわち機能層及び/又は多孔質基材)の一面側に接触した水が他面側に透過しないことを意味する。機能層は多孔質基材上に形成されるのが好ましい。例えば、図1に示されるように、LDH含有複合材料10は、多孔質基材12上に機能層14がLDH緻密膜として形成されるのが好ましい。この場合、多孔質基材12の性質上、図1に示されるように多孔質基材12の表面及びその近傍の孔内にもLDHが形成されてよいのはいうまでもない。あるいは、図2に示されるLDH複合材料10’のように、多孔質基材12中(例えば多孔質基材12の表面及びその近傍の孔内)にLDHが緻密に形成され、それにより多孔質基材12の少なくとも一部が機能層14’を構成するものであってもよい。この点、図2に示される複合材料10’は図1に示される複合材料10の機能層14における膜相当部分を除去した構成となっているが、これに限定されず、多孔性基材12の表面と平行に機能層が存在していればよい。いずれにせよ、本発明のLDH含有複合材料において、機能層が透水性を有しない程にまでLDHで緻密化されている場合、水酸化物イオン伝導性を有するが透水性を有しないという特有の機能を有することができる。
【0015】
このように、本発明のLDH含有複合材料においては、透水性を有しうる多孔質基材を用いるにもかかわらず、透水性(望ましくは透水性及び通気性)を有しない程に緻密な機能層が形成されたものであるのが好ましい。その結果、本発明のLDH含有複合材料は、全体として、水酸化物イオン伝導性を有するが透水性を有しないものとなり、電池用セパレータとしての機能を呈することができる。前述したとおり、電池用固体電解質セパレータとしてLDHの適用を考えた場合、バルク形態のLDH緻密体では高抵抗であるとの問題があったが、本発明の複合材料においては、多孔質基材により強度を付与できるため、LDH含有機能層を薄くして低抵抗化を図ることができる。その上、多孔質基材は透水性を有しうるため、電池用固体電解質セパレータとして使用された際に電解液がLDH含有機能層に到達可能な構成となりうる。すなわち、本発明のLDH含有複合材料は、金属空気電池(例えば亜鉛空気電池)及びその他各種亜鉛二次電池(例えばニッケル亜鉛電池)等の各種電池用途に適用可能な固体電解質セパレータとして、極めて有用な材料となりうる。
【0016】
本発明の複合材料における多孔質基材は、その上及び/又は中にLDH含有機能層を形成できるものが好ましく、その材質や多孔構造は特に限定されない。多孔質基材上及び/又は中にLDH含有機能層を形成するのが典型的ではあるが、無孔質基材上にLDH含有機能層を成膜し、その後公知の種々の手法により無孔質基材を多孔化してもよい。いずれにしても、多孔質基材は透水性を有する多孔構造を有するのが、電池用セパレータとして電池に組み込まれた場合に電解液を機能層に到達可能に構成できる点で好ましい。
【0017】
多孔質基材は、セラミックス材料、金属材料、及び高分子材料からなる群から選択される少なくとも1種で構成されるのが好ましい。多孔質基材は、セラミックス材料で構成されるのがより好ましい。この場合、セラミックス材料の好ましい例としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、スピネル、カルシア、コージライト、ゼオライト、ムライト、フェライト、酸化亜鉛、炭化ケイ素、及びそれらの任意の組合せが挙げられ、より好ましくは、アルミナ、ジルコニア、チタニア、及びそれらの任意の組合せであり、特に好ましくはアルミナ、ジルコニア(例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ))、及びその組合せである。これらの多孔質セラミックスを用いると緻密性に優れたLDH含有機能層を形成しやすい。金属材料の好ましい例としては、アルミニウム及び亜鉛が挙げられる。高分子材料の好ましい例としては、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、親水化したフッ素樹脂(四フッ素化樹脂:PTFE等)及びそれらの任意の組合せが挙げられる。上述した各種の好ましい材料はいずれも電池の電解液に対する耐性として耐アルカリ性を有するものである。
【0018】
多孔質基材は0.001〜1.5μmの平均気孔径を有するのが好ましく、より好ましくは0.001〜1.25μm、さらに好ましくは0.001〜1.0μm、特に好ましくは0.001〜0.75μm、最も好ましくは0.001〜0.5μmである。これらの範囲内とすることで多孔質基材に所望の透水性、及び支持体としての強度を確保しながら、透水性を有しない程に緻密なLDH含有機能層を形成することができる。本発明において、平均気孔径の測定は多孔質基材の表面の電子顕微鏡画像をもとに気孔の最長距離を測長することにより行うことができる。この測定に用いる電子顕微鏡画像の倍率は20000倍以上であり、得られた全ての気孔径をサイズ順に並べて、その平均値から上位15点及び下位15点、合わせて1視野あたり30点で2視野分の平均値を算出して、平均気孔径を得ることができる。測長には、SEMのソフトウェアの測長機能や画像解析ソフト(例えば、Photoshop、Adobe社製)等を用いることができる。
【0019】
多孔質基材の表面は、10〜60%の気孔率を有するのが好ましく、より好ましくは15〜55%、さらに好ましくは20〜50%である。これらの範囲内とすることで多孔質基材に所望の透水性、及び支持体としての強度を確保しながら、透水性を有しない程に緻密なLDH含有機能層を形成することができる。ここで、多孔質基材の表面の気孔率を採用しているのは、以下に述べる画像処理を用いた気孔率の測定がしやすいことによるものであり、多孔質基材の表面の気孔率は多孔質基材内部の気孔率を概ね表しているといえるからである。すなわち、多孔質基材の表面が緻密であれば多孔質基材の内部もまた同様に緻密であるといえる。本発明において、多孔質基材の表面の気孔率は画像処理を用いた手法により以下のようにして測定することができる。すなわち、1)多孔質基材の表面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールのSEM画像を読み込み、3)[イメージ]→[色調補正]→[2階調化]の手順で白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とする。なお、この画像処理による気孔率の測定は多孔質基材表面の6μm×6μmの領域について行われるのが好ましく、より客観的な指標とするためには、任意に選択された3箇所の領域について得られた気孔率の平均値を採用するのがより好ましい。
【0020】
本発明の複合材料における機能層は、一般式:M2+1−x3+(OH)n−x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4であり、mは任意の実数である)で表される層状複水酸化物(LDH)を含んでなり、透水性を有しない。上記一般式において、M2+は任意の2価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはMg2+、Ca2+及びZn2+が挙げられ、より好ましくはMg2+である。M3+は任意の3価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはAl3+又はCr3+が挙げられ、より好ましくはAl3+である。An−は任意の陰イオンでありうるが、好ましい例としてはOH及びCO2−が挙げられる。したがって、上記一般式は、少なくともM2+にMg2+を、M3+にAl3+を含み、An−にOH及び/又はCO2−を含むのが好ましい。nは1以上の整数であるが、好ましくは1又は2である。xは0.1〜0.4であるが、好ましくは0.2〜0.35である。mは任意の実数である。より具体的には、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数ないし整数である。
【0021】
前述のとおり、機能層は、多孔質基材との界面及びその近傍に硫黄(S)をさらに含有する。Sの含有により伝導率が向上する。機能層の多孔質基材との界面及びその近傍における硫黄含有量が0.01原子%以上であるのが好ましく、より好ましくは0.05〜5.0原子%、さらに好ましくは0.1〜2.0原子%、特に好ましくは0.2〜1.0原子%である。硫黄(S)の含有量は機能層と多孔質基材との界面及びその近傍のEDS組成分析(断面EDSの点分析)により測定することができる。具体的には、S含有量の測定は以下のようにして行うのが好ましい。まず、クロスセクションポリッシャ(CP)により、複合材料試料(機能層及び多孔質基材)の断面研磨面が観察できるように研磨する。FE−SEMにより、複合材料試料の断面イメージを15000倍以上の倍率で3視野取得する。この3視野のイメージの各々におけるLDH膜と多孔質基材の界面部分の任意の3点(すなわち計9点)について、EDS分析装置により、加速電圧10kV、収集時間100secの条件にて、組成分析(点分析)を行う。各点の組成分析結果からSの濃度(原子%)を求め、全9点のSの濃度の平均値を界面部分のS含有量とする。なお、EDS組成分析の性質上、測定点の周辺数μmの情報も含んだ形で測定データが取得されうるため、界面部分を狙って測定したとしても界面近傍の情報も幾分含みうることとなる。その意味で本明細書において「界面及びその近傍」とは主として界面を指し、界面を狙ってEDS組成分析を行った場合に付随的に情報として取り込まれる典型的には界面から数μm以内の領域(例えば界面から0.5μmまでの領域)をも包含しうるものである。
【0022】
機能層は、多孔質基材との界面及びその近傍に炭素(C)を更に含んでいてもよい。Cの含有により伝導率が更に向上する。機能層の多孔質基材との界面及びその近傍における炭素濃度(すなわち炭素(C)原子の濃度)の極大値が10原子%以上であるのが好ましく、より好ましくは20原子%以上、さらに好ましくは30原子%以上、特に好ましくは50原子%以上である。炭素濃度の極大値に上限は無く、100原子%であってもよいが、典型的には80原子%以下である。炭素(C)の含有量は機能層と多孔質基材との界面及びその近傍のEDS組成分析(断面EDSによる炭素濃度ラインプロファイル取得)により測定することができる。具体的には、C含有量の測定は以下のようにして行うのが好ましい。まず、クロスセクションポリッシャ(CP)により、複合材料試料(機能層及び多孔質基材)の断面研磨面が観察できるように研磨する。FE−SEMにより、複合材料試料(LDH膜及び多孔質基材)の断面画像を10000倍以上の倍率で取得する(例えば図12に示される画像を参照)。この画像について、EDS分析装置により、加速電圧5kVの条件にて、例えば図12に点線の矢印で示されるように、炭素濃度(すなわち炭素原子Cの濃度(原子%))のラインプロファイルをLDH膜と多孔質基材の界面部分を跨ぐように(交差するよう)、LDH膜側から多孔質基材側に向かって3μmの長さにわたって所定のピッチ(例えば0.06μm)で取得する。こうして得られた炭素濃度のラインプロファイルについて、界面及びその近傍における炭素濃度の極大値の有無を確認する。界面及びその近傍における炭素濃度の極大値の存在は、測定時の外気等による汚染により不可避的に混入した炭素に起因するものでないことは明らかなため、界面及びその近傍における炭素(C)の存在を客観的に裏付ける根拠となる。なお、EDS組成分析の性質上、測定点の周辺数μmの情報も含んだ形で測定データが取得されうるため、界面部分を狙って測定したとしても界面近傍の情報も幾分含みうることとなる。その意味で本明細書において「界面及びその近傍」とは主として界面を指し、界面を狙ってEDS組成分析を行った場合に付随的に情報として取り込まれる典型的には界面から数μm以内の領域(例えば界面から0.5μmまでの領域)をも包含しうるものである。
【0023】
機能層は、多孔質基材上及び/又は多孔質基材中、好ましくは多孔質基材上に形成される。例えば、図1に示されるように機能層14が多孔質基材12上に形成される場合には、機能層14はLDH緻密膜の形態であり、このLDH緻密膜は典型的にはLDHからなる。また、図2に示されるように機能層14’が多孔質基材12中に形成される場合には、多孔質基材12中(典型的には多孔質基材12の表面及びその近傍の孔内)にLDHが緻密に形成されることから、機能層14’は典型的には多孔質基材12の少なくとも一部及びLDHからなる。図2に示される複合材料10’及び機能層14’は、図1に示される複合材料10から機能層14における膜相当部分を研磨、切削等の公知の手法により除去することにより得ることができる。
【0024】
機能層は透水性(望ましくは透水性及び通気性)を有しないのが好ましい。例えば、機能層はその片面を25℃で1週間水と接触させても水を透過させない。すなわち、機能層は透水性を有しない程にまでLDHで緻密化されているのが好ましい。もっとも、局所的且つ/又は偶発的に透水性を有する欠陥が機能膜に存在する場合には、当該欠陥を適当な補修剤(例えばエポキシ樹脂等)で埋めて補修することで水不透性を確保してもよく、そのような補修剤は必ずしも水酸化物イオン伝導性を有する必要はない。
【0025】
層状複水酸化物は複数の板状粒子(すなわちLDH板状粒子)の集合体で構成され、当該複数の板状粒子がそれらの板面が多孔質基材の表面(基材面)と略垂直に又は斜めに交差するような向きに配向してなるのが好ましい。この態様は、図1に示されるように、LDH含有複合材料10が、多孔質基材12上に機能層14がLDH緻密膜として形成される場合に特に好ましく実現可能な態様であるが、図2に示されるLDH複合材料10’のように、多孔質基材12中(典型的には多孔質基材12の表面及びその近傍の孔内)にLDHが緻密に形成され、それにより多孔質基材12の少なくとも一部が機能層14’を構成する場合においても実現可能である。
【0026】
すなわち、LDH結晶は図3に示されるような層状構造を持った板状粒子の形態を有することが知られているが、上記略垂直又は斜めの配向は、LDH含有機能層(例えばLDH緻密膜)にとって極めて有利な特性である。というのも、配向されたLDH含有機能層(例えば配向LDH緻密膜)には、LDH板状粒子が配向する方向(即ちLDHの層と平行方向)の水酸化物イオン伝導度が、これと垂直方向の伝導度よりも格段に高いという伝導度異方性があるためである。実際、本発明者らは、LDHの配向バルク体において、配向方向における伝導度(S/cm)が配向方向と垂直な方向の伝導度(S/cm)と比べて1桁高いとの知見を得ている。すなわち、本発明のLDH含有機能層における上記略垂直又は斜めの配向は、LDH配向体が持ちうる伝導度異方性を層厚方向(すなわち機能層又は多孔質基材の表面に対して垂直方向)に最大限または有意に引き出すものであり、その結果、層厚方向への伝導度を最大限又は有意に高めることができる。その上、LDH含有機能層は層形態を有するため、バルク形態のLDHよりも低抵抗を実現することができる。このような配向性を備えたLDH含有機能層は、層厚方向に水酸化物イオンを伝導させやすくなる。その上、緻密化されているため、層厚方向への高い伝導度及び緻密性が望まれる電池用セパレータ等の機能膜の用途(例えば亜鉛空気電池用の水酸化物イオン伝導性セパレータ)に極めて適する。
【0027】
特に好ましくは、LDH含有機能層(典型的にはLDH緻密膜)においてLDH板状粒子が略垂直方向に高度に配向してなる。この高度な配向は、機能層の表面をX線回折法により測定した場合に、(003)面のピークが実質的に検出されないか又は(012)面のピークよりも小さく検出されることで確認可能なものである(但し、(012)面に起因するピークと同位置に回折ピークが観察される多孔質基材を用いた場合には、LDH板状粒子に起因する(012)面のピークを特定できないことから、この限りでない)。この特徴的なピーク特性は、機能層を構成するLDH板状粒子が機能層に対して略垂直方向(すなわち垂直方向又はそれに類する斜め方向、好ましくは垂直方向)に配向していることを示す。すなわち、(003)面のピークは無配向のLDH粉末をX線回折した場合に観察される最も強いピークとして知られているが、配向LDH含有機能層にあっては、LDH板状粒子が機能層に対して略垂直方向に配向していることで(003)面のピークが実質的に検出されないか又は(012)面のピークよりも小さく検出される。これは、(003)面が属するc軸方向(00l)面(lは3及び6である)がLDH板状粒子の層状構造と平行な面であるため、このLDH板状粒子が機能層に対して略垂直方向に配向しているとLDH層状構造も略垂直方向を向くこととなる結果、機能層表面をX線回折法により測定した場合に(00l)面(lは3及び6である)のピークが現れないか又は現れにくくなるからである。特に(003)面のピークは、それが存在する場合、(006)面のピークよりも強く出る傾向があるから、(006)面のピークよりも略垂直方向の配向の有無を評価しやすいといえる。したがって、配向LDH含有機能層は、(003)面のピークが実質的に検出されないか又は(012)面のピークよりも小さく検出されるのが、垂直方向への高度な配向を示唆することから好ましいといえる。この点、特許文献1及び2並びに非特許文献1にも開示されるLDH配向膜は(003)面のピークが強く検出されるものであり、略垂直方向への配向性に劣るものと考えられ、その上、高い緻密性も有してないものと見受けられる。
【0028】
機能層は100μm以下の厚さを有するのが好ましく、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは25μm以下、最も好ましくは5μm以下である。このように薄いことで機能層の低抵抗化を実現できる。機能層が多孔質基材上にLDH緻密膜として形成されるのが好ましく、この場合、機能層の厚さはLDH緻密膜の厚さに相当する。また、機能層が多孔質基材中に形成される場合には、機能層の厚さは多孔質基材の少なくとも一部及びLDHからなる複合層の厚さに相当し、機能層が多孔質基材上及び中にまたがって形成される場合にはLDH緻密膜と上記複合層の合計厚さに相当する。いずれにしても、上記のような厚さであると、電池用途等への実用化に適した所望の低抵抗を実現することができる。LDH配向膜の厚さの下限値は用途に応じて異なるため特に限定されないが、セパレータ等の機能膜として望まれるある程度の堅さを確保するためには厚さ1μm以上であるのが好ましく、より好ましくは2μm以上である。
【0029】
層状複水酸化物含有複合材料の製造方法
層状複水酸化物含有複合材料(LDH含有複合材料)は、(1)多孔質基材を用意し、(2)多孔質基材に硫黄(S)を付着させ、(3)マグネシウムイオン(Mg2+)及びアルミニウムイオン(Al3+)を0.20〜0.40mol/Lの合計濃度で含み、かつ、尿素を含んでなる原料水溶液に、多孔質基材を浸漬させ、(4)原料水溶液中で多孔質基材を水熱処理して、層状複水酸化物を含んでなる機能層を多孔質基材上及び/又は多孔質基材中に形成させることにより製造することができる。
【0030】
(1)多孔質基材の用意
多孔質基材は、前述したとおりであり、セラミックス材料、金属材料、及び高分子材料からなる群から選択される少なくとも1種で構成されるのが好ましい。多孔質基材は、セラミックス材料で構成されるのがより好ましい。この場合、セラミックス材料の好ましい例としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、スピネル、カルシア、コージライト、ゼオライト、ムライト、フェライト、酸化亜鉛、炭化ケイ素、及びそれらの任意の組合せが挙げられ、より好ましくは、アルミナ、ジルコニア、チタニア、及びそれらの任意の組合せであり、特に好ましくはアルミナ及びジルコニアであり、最も好ましくはアルミナである。これらの多孔質セラミックスを用いるとLDH含有機能層の緻密性を向上しやすい傾向がある。セラミックス材料製の多孔質基材を用いる場合、超音波洗浄、イオン交換水での洗浄等を多孔質基材に施すのが好ましい。
【0031】
上述のとおり、多孔質基材は、セラミックス材料で構成されるのがより好ましい。セラミックス材料製の多孔質基材は、市販品であってもよいし、公知の手法に従って作製したものであってもよく、特に限定されない。例えば、セラミックス粉末(例えばジルコニア粉末、ベーマイト粉末、チタニア粉末等)、メチルセルロース、及びイオン交換水を所望の配合比で混練し、得られた混練物を押出成形に付し、得られた成形体を70〜200℃で10〜40時間乾燥した後、900〜1300℃で1〜5時間焼成することによりセラミックス材料製の多孔質基材を作製することができる。メチルセルロースの配合割合はセラミックス粉末100重量部に対して、1〜20重量部とするのが好ましい。また、イオン交換水の配合割合はセラミックス粉末100重量部に対して、10〜100重量部とするのが好ましい。
【0032】
一方、高分子材料を用いる場合、後続の硫黄付着工程に適する点で、スルホン化可能な高分子基材を用意するのが好ましい。スルホン化可能な高分子基材は、電池の電解液に対する耐性として耐アルカリ性を有するものが望ましい。そのようなスルホン化可能な高分子基材は、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、及び親水化したフッ素樹脂(四フッ素化樹脂:PTFE等)からなる群から選択される少なくとも一種からなるのが好ましい。特に、芳香族系高分子基材がスルホン化しやすい点で好ましく、そのような芳香族系高分子基材は、例えば、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、エポキシ樹脂、及びポリフェニレンサルファイドからなる群から選択される少なくとも一種からなり、最も好ましくはポリスチレンからなる。
【0033】
(2)硫黄(S)の付着
多孔質基材への硫黄(S)の付着はいかなる方法によって行ってもよく特に限定されないが、スルホン化処理により行われるのが好ましい。スルホン化処理は、スルホン化可能な基材又はスルホン化可能に表面処理された基材を、硫酸(例えば濃硫酸)、発煙硫酸、クロロスルホン酸、無水硫酸等のスルホン化可能な酸に浸漬すればよく、他のスルホン化技術を用いてもよい。スルホン化可能な酸への浸漬は室温又は高温(例えば50〜150℃)で行えばよく、浸漬時間は特に限定されないが、例えば1〜14日間である。スルホン化可能な基材の好ましい例としては高分子基材が挙げられる。スルホン化可能な高分子基材は前述したとおりである。あるいは、スルホン化可能でない又はスルホン化に適さない基材(例えばセラミックス基材)であってもスルホン化が可能となるように表面処理すれば、上記スルホン化可能な基材と同様にしてスルホン化を行うことができる。そのような表面処理は基材へのポリマーの付着により行われるのが好ましく、そのようなポリマーとしては上述したスルホン化可能な高分子基材と同様の高分子材料を用いるのが好ましい。また、基材へのポリマーの付着は、ポリマーを溶解させた溶液(以下、ポリマー溶液という)を基材の表面に塗布することにより行われるのが好ましい。ポリマー溶液は、例えば、ポリマー固形物(例えばポリスチレン基板)を有機溶媒(例えばキシレン溶液)に溶解することにより容易に作製することができる。ポリマー溶液は多孔質基材の内部にまで浸透させないようにするのが、均一な塗布を実現しやすい点で好ましい。この点、ポリマー溶液の付着ないし塗布はスピンコートにより行うのが極めて均一に塗布できる点で好ましい。スピンコートの条件は特に限定されないが、例えば1000〜10000rpmの回転数で、滴下と乾燥を含めて60〜300秒間程度行えばよい。
【0034】
多孔質基材への硫黄(S)の付着を、多孔質基材に予め付着させた炭素(C)に対して行う、すなわち炭素の付着後に硫黄の付着を行うのも好ましい。この場合、多孔質基材の表面に炭素(典型的には炭素膜又は炭素層)を付着させた後、炭素を付着させた表面(典型的には炭素膜又は炭素層の表面)に対して上記スルホン化処理を行うのが好ましい。多孔質基材への炭素の付着は、蒸着により行われるのが好ましい。炭素蒸着は市販の蒸着装置を用いて例えばフラッシュ蒸着法等の公知の手法により行えばよく、この炭素蒸着は基材を回転させながら行うのが均一に炭素を付着できる点で好ましい。あるいは、多孔質基材への炭素の付着は、樹脂の塗布及び該樹脂の炭化により行うのも好ましく、より好ましくは樹脂の塗布、該樹脂の熱硬化、及び該樹脂の炭化により行われる。この場合、樹脂は炭化可能な樹脂であれば特に限定されない。そのような樹脂の好ましい例としては、ポリイミド樹脂、リグニン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられ、特に好ましくはポリイミド樹脂である。樹脂は溶剤に溶かした形態(例えばワニスの形態)で基材に塗布されるのが好ましい。このとき、樹脂は多孔質基材の内部にまで浸透させないようにするのが、均一な塗布を実現しやすい点で好ましい。この点、樹脂の付着ないし塗布はスピンコートにより行うのが極めて均一に塗布できる点で好ましい。スピンコートの条件は特に限定されないが、例えば1000〜10000rpmの回転数で、滴下と乾燥を含めて60〜300秒間程度行えばよい。樹脂の熱硬化は大気中100〜300℃で1〜10時間加熱することにより行うのが好ましい一方、樹脂の炭化は真空雰囲気にて500〜1000℃で1〜10時間加熱することにより行うのが好ましい。
【0035】
(3)原料水溶液への浸漬
次に、多孔質基材を原料水溶液に所望の向きで(例えば水平又は垂直に)浸漬させる。多孔質基材を水平に保持する場合は、吊るす、浮かせる、容器の底に接するように多孔質基材を配置すればよく、例えば、容器の底から原料水溶液中に浮かせた状態で多孔質基材を固定としてもよい。多孔質基材を垂直に保持する場合は、容器の底に多孔質基材を垂直に設置できるような冶具を置けばよい。いずれにしても、多孔質基材にLDHを略垂直方向又はそれに近い方向(すなわちLDH板状粒子がそれらの板面が多孔質基材の表面(基材面)と略垂直に又は斜めに交差するような向きに)に成長させる構成ないし配置とするのが好ましい。原料水溶液は、マグネシウムイオン(Mg2+)及びアルミニウムイオン(Al3+)を所定の合計濃度で含み、かつ、尿素を含んでなる。尿素が存在することで尿素の加水分解を利用してアンモニアが溶液中に発生することによりpH値が上昇し、共存する金属イオンが水酸化物を形成することによりLDHを得ることができる。また、加水分解に二酸化炭素の発生を伴うため、陰イオンが炭酸イオン型のLDHを得ることができる。原料水溶液に含まれるマグネシウムイオン及びアルミニウムイオンの合計濃度(Mg2++Al3+)は0.20〜0.40mol/Lが好ましく、より好ましくは0.22〜0.38mol/Lであり、さらに好ましくは0.24〜0.36mol/L、特に好ましくは0.26〜0.34mol/Lである。このような範囲内の濃度であると核生成と結晶成長をバランスよく進行させることができ、配向性のみならず緻密性にも優れたLDH含有機能層を得ることが可能となる。すなわち、マグネシウムイオン及びアルミニウムイオンの合計濃度が低いと核生成に比べて結晶成長が支配的となり、粒子数が減少して粒子サイズが増大する一方、この合計濃度が高いと結晶成長に比べて核生成が支配的となり、粒子数が増大して粒子サイズが減少するものと考えられる。
【0036】
好ましくは、原料水溶液に硝酸マグネシウム及び硝酸アルミニウムが溶解されており、それにより原料水溶液がマグネシウムイオン及びアルミニウムイオンに加えて硝酸イオンを含んでなる。そして、この場合、原料水溶液における、尿素の硝酸イオン(NO)に対するモル比(尿素/NO)が、2〜6が好ましく、より好ましくは4〜5である。
【0037】
(4)水熱処理によるLDH含有機能層の形成
そして、原料水溶液中で多孔質基材を水熱処理して、LDHを含んでなる機能層を多孔質基材上及び/又は多孔質基材中に形成させる。この水熱処理は密閉容器中、60〜150℃で行われるのが好ましく、より好ましくは65〜120℃であり、さらに好ましくは65〜100℃であり、特に好ましくは70〜90℃である。水熱処理の上限温度は多孔質基材(例えば高分子基材)が熱で変形しない程度の温度を選択すればよい。水熱処理時の昇温速度は特に限定されず、例えば10〜200℃/hであってよいが、好ましくは100〜200℃/hである、より好ましくは100〜150℃/hである。水熱処理の時間はLDH含有機能層の目的とする密度と厚さに応じて適宜決定すればよい。
【0038】
水熱処理後、密閉容器から多孔質基材を取り出し、イオン交換水で洗浄するのが好ましい。
【0039】
上記のようにして製造されたLDH含有複合材料におけるLDH含有機能層は、LDH板状粒子が高度に緻密化したものであり、しかも伝導に有利な略垂直方向に配向したものである。特に、十分なガスタイト性を有する緻密性を有するLDH含有機能層を亜鉛空気電池等の電池に用いた場合、発電性能の向上が見込めると共に、従来適用できなかった電解液を用いる亜鉛空気電池の二次電池化の大きな障壁となっている亜鉛デンドライト進展阻止及び二酸化炭素侵入防止用セパレータ等への新たな適用が期待される。また、同様に亜鉛デンドライト進展が実用化の大きな障壁となっているニッケル亜鉛電池にも適用が期待される。
【0040】
ところで、上記製造方法により得られるLDH含有機能層は多孔質基材の両面に形成されうる。このため、LDH含有複合材料をセパレータとして好適に使用可能な形態とするためには、成膜後に多孔質基材の片面のLDH含有機能層を機械的に削るか、あるいは成膜時に片面にはLDH含有機能層が成膜できないような措置を講ずるのが望ましい。
【実施例】
【0041】
以下、多孔質基材上に層状複水酸化物配向膜を作製した例を示す。なお、以下の例で作製される膜試料の評価方法は以下のとおりとした。
【0042】
評価1:膜試料の同定
X線回折装置(リガク社製 RINT TTR III)にて、電圧:50kV、電流値:300mA、測定範囲:10〜70°の測定条件で、膜試料の結晶相を測定してXRDプロファイルを得る。得られたXRDプロファイルについて、JCPDSカードNO.35−0964に記載される層状複水酸化物(ハイドロタルサイト類化合物)の回折ピークを用いて同定を行った。
【0043】
評価2:微構造の観察
膜試料の表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察した。
【0044】
評価3:緻密性判定試験I
膜試料が透水性を有しない程の緻密性を有することを確認すべく、緻密性判定試験を以下のとおり行った。まず、図4Aに示されるように、LDH含有複合材料試料120(1cm×1cm平方に切り出されたもの)の膜試料側に、中央に0.5cm×0.5cm平方の開口部122aを備えたシリコンゴム122を接着し、得られた積層物を2つのアクリル製容器124,126で挟んで接着した。シリコンゴム122側に配置されるアクリル製容器124は底が抜けており、それによりシリコンゴム122はその開口部122aが開放された状態でアクリル製容器124と接着される。一方、複合材料試料120の多孔質基材側に配置されるアクリル製容器126は底を有しており、その容器126内にはイオン交換水128が入っている。この時、イオン交換水にAl及び/又はMgを溶解させておいてもよい。すなわち、組み立て後に上下逆さにすることで、複合材料試料120の多孔質基材側にイオン交換水128が接するように各構成部材が配置されてなる。これらの構成部材等を組み立て後、総重量を測定した。なお、容器126には閉栓された通気穴(図示せず)が形成されており、上下逆さにした後に開栓されることはいうまでもない。図4Bに示されるように組み立て体を上下逆さに配置して25℃で1週間保持した後、総重量を再度測定した。このとき、アクリル製容器124の内側側面に水滴が付着している場合には、その水滴を拭き取った。そして、試験前後の総重量の差を算出することにより緻密度を判定した。25℃で1週間保持した後においても、イオン交換水の重量に変化は見られなかった場合に、膜試料(すなわち機能膜)は透水性を有しない程に高い緻密性を有するものと判定した。
【0045】
評価4:緻密性判定試験II
膜試料が通気性を有しない程の緻密性を有することを確認すべく、緻密性判定試験を以下のとおり行った。まず、図5A及び5Bに示されるように、蓋の無いアクリル容器130と、このアクリル容器130の蓋として機能しうる形状及びサイズのアルミナ治具132とを用意した。アクリル容器130にはその中にガスを供給するためのガス供給口130aが形成されている。また、アルミナ治具132には直径5mmの開口部132aが形成されており、この開口部132aの外周に沿って膜試料載置用の窪み132bが形成されてなる。アルミナ治具132の窪み132bにエポキシ接着剤134を塗布し、この窪み132bに複合材料試料136の膜試料136b側を載置してアルミナ治具132に気密かつ液密に接着させた。そして、複合材料試料136が接合されたアルミナ治具132を、アクリル容器130の開放部を完全に塞ぐようにシリコーン接着剤138を用いて気密かつ液密にアクリル容器130の上端に接着させて、測定用密閉容器140を得た。この測定用密閉容器140を水槽142に入れ、アクリル容器130のガス供給口130aを圧力計144及び流量計146に接続して、ヘリウムガスをアクリル容器130内に供給可能に構成した。水槽142に水143を入れて測定用密閉容器140を完全に水没させた。このとき、測定用密閉容器140の内部は気密性及び液密性が十分に確保されており、複合材料試料136の膜試料136b側が測定用密閉容器140の内部空間に露出する一方、複合材料試料136の多孔質基材136a側が水槽142内の水に接触している。この状態で、アクリル容器130内にガス供給口130aを介してヘリウムガスを測定用密閉容器140内に導入した。圧力計144及び流量計146を制御して膜試料136a内外の差圧が0.5atmとなる(すなわちヘリウムガスに接する側に加わる圧力が反対側に加わる水圧よりも0.5atm高くなる)ようにして、複合材料試料136から水中にヘリウムガスの泡が発生するか否かを観察した。その結果、ヘリウムガスに起因する泡の発生は観察されなかった場合に、膜試料136bは通気性を有しない程に高い緻密性を有するものと判定した。
【0046】
評価5:硫黄含有量の測定
クロスセクションポリッシャ(CP)により、複合材料試料(LDH膜及び多孔質基材)の断面研磨面が観察できるように研磨した。FE−SEM(ULTRA55、カールツァイス製)により、複合材料試料(LDH膜及び多孔質基材)の断面イメージを15000倍以上の倍率で3視野取得した。この3視野のイメージの各々におけるLDH膜と多孔質基材の界面部分の任意の3点(すなわち計9点)について、EDS分析装置(NORAN System SIX、サーモフィッシャーサイエンティフィック製)により、加速電圧10kV、収集時間100secの条件にて、組成分析(点分析)を行った。各点の組成分析結果からSの濃度(原子%)を求め、全9点のSの濃度の平均値を界面部分のS含有量とした。
【0047】
評価6:伝導率の測定
電解液中での膜試料の伝導率を図6に示される電気化学測定系を用いて以下のようにして測定した。複合材料試料S(LDH膜付き多孔質基材)を両側から厚み1mmシリコーンパッキン40で挟み、内径6mmのPTFE製フランジ型セル42に組み込んだ。電極46として、#100メッシュのニッケル金網をセル42内に直径6mmの円筒状にして組み込み、電極間距離が2.2mmになるようにした。電解液44として、6MのKOH水溶液をセル42内に充填した。電気化学測定システム(ポテンショ/ガルバノスタッド−周波数応答アナライザ、ソーラトロン社製1287A型及び1255B型)を用い、周波数範囲は1MHz〜0.1Hz、印加電圧は10mVの条件で測定を行い、実数軸の切片を膜試料(LDH膜付き多孔基材)の抵抗とした。上記同様の測定をLDH膜の付いていない多孔質基材のみに対しても行い、多孔質基材のみの抵抗も求めた。複合材料試料S(LDH膜付き多孔基材)の抵抗と基材のみの抵抗の差をLDH膜の抵抗とした。LDH膜の抵抗と、LDHの膜厚及び面積を用いて伝導率を求めた。
【0048】
評価7:界面の炭素濃度測定
クロスセクションポリッシャ(CP)により、複合材料試料(LDH膜及び多孔質基材)の断面研磨面が観察できるように研磨した。FE−SEM(ULTRA55、カールツァイス製)により、複合材料試料(LDH膜及び多孔質基材)の断面画像を10000倍の倍率で取得した(例えば図12に示される画像を参照)。この画像について、EDS分析装置(NORAN System SIX、サーモフィッシャーサイエンティフィック製)により、加速電圧5kVの条件にて、図12に点線の矢印で示されるように、炭素濃度(すなわち炭素(C)原子の濃度(原子%))のラインプロファイルをLDH膜と多孔質基材の界面部分を跨ぐように(交差するよう)、LDH膜側から多孔質基材側に向かって3μmの長さにわたって0.06μmピッチで収集した。こうして得られた炭素濃度のラインプロファイルについて、界面及びその近傍における炭素濃度の極大値の有無を確認した。界面及びその近傍における炭素濃度の極大値の存在は、測定時の外気等による汚染により不可避的に混入した炭素に起因するものでないことは明らかなため、界面及びその近傍における炭素(C)の存在を客観的に裏付ける根拠となる。
【0049】
例1
(1)多孔質基材の作製
ジルコニアとして8YSZ粉末(東ソー社製、TZ−8YS、Y:8mol%)、メチルセルロース、及びイオン交換水を、(ジルコニア):(メチルセルロース):(イオン交換水)の質量比が10:1:5となるように秤量した後、混練した。得られた混練物を、ハンドプレスを用いた押出成形に付し、2.5cm×10cm×厚さ0.5cmの大きさに成形した。得られた成形体を80℃で12時間乾燥した後、1100℃で3時間焼成した。得られた焼成体を、2.0cm×2.0cm×厚さ0.3cmの大きさに加工して、ジルコニア(8YSZ)製多孔質基材を得た。
【0050】
得られた多孔質基材について、画像処理を用いた手法により、多孔質基材表面の気孔率を測定したところ、42.5%であった。この気孔率の測定は、1)表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察して多孔質基材表面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールのSEM画像を読み込み、3)[イメージ]→[色調補正]→[2階調化]の手順で白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とすることにより行った。この気孔率の測定は多孔質基材表面の6μm×6μmの領域について行われた。
【0051】
また、多孔質基材の平均気孔径を測定したところ約0.22μmであった。本発明において、平均気孔径の測定は多孔質基材の表面の電子顕微鏡(SEM)画像をもとに気孔の最長距離を測長することにより行った。この測定に用いた電子顕微鏡(SEM)画像の倍率は20000倍であり、得られた全ての気孔径をサイズ順に並べて、その平均値から上位15点及び下位15点、合わせて1視野あたり30点で2視野分の平均値を算出して、平均気孔径を得た。測長には、SEMのソフトウェアの測長機能を用いた。
【0052】
得られた多孔質基材をアセトン中で5分間超音波洗浄し、エタノール中で2分間超音波洗浄、その後、イオン交換水中で1分間超音波洗浄した。
【0053】
(2)ポリスチレンスピンコート及びスルホン化
ポリスチレン基板0.6gをキシレン溶液10mlに溶かして、ポリスチレン濃度0.06g/mlのスピンコート液を作製した。得られたスピンコート液0.1mlを8YSZ多孔質基材上に滴下し、回転数8000rpmでスピンコートにより塗布した。このスピンコートは、滴下と乾燥を含めて200秒間行った。スピンコート液を塗布した多孔質基材を95%硫酸に25℃で4日間浸漬してスルホン化した。
【0054】
(3)原料水溶液の作製
原料として、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO・6HO、関東化学株式会社製)、硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO・9HO、関東化学株式会社製)、及び尿素((NHCO、シグマアルドリッチ製)を用意した。カチオン比(Mg2+/Al3+)が2となり且つ全金属イオンモル濃度(Mg2++Al3+)が0.320mol/Lとなるように、硝酸マグネシウム六水和物と硝酸アルミニウム九水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を75mlとした。得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO=4の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得た。
【0055】
(4)水熱処理による成膜
テフロン(登録商標)製密閉容器(内容量100ml、外側がステンレス製ジャケット)に上記(3)で作製した原料水溶液と上記(2)でスルホン化した多孔質基材を共に封入した。このとき、基材はテフロン(登録商標)製密閉容器の底から浮かせて固定し、基材両面に溶液が接するように水平に設置した。その後、水熱温度70℃で168時間(7日間)水熱処理を施すことにより基材表面に層状複水酸化物配向膜(機能層)の形成を行った。所定時間の経過後、基材を密閉容器から取り出し、イオン交換水で洗浄し、70℃で10時間乾燥させて、層状複水酸化物(以下、LDHという)の緻密膜(以下、膜試料という)を基材上に得た。得られた膜試料の厚さは約1.5μmであった。こうして、層状複水酸化物含有複合材料試料(以下、複合材料試料という)を得た。なお、LDH膜は多孔質基材の両面に形成されていたが、セパレータとしての形態を複合材料に付与するため、多孔質基材の片面のLDH膜を機械的に削り取った。
【0056】
(5)評価結果
得られたLDH膜試料に対して評価1〜7を行った。結果は以下のとおりであった。
‐評価1:XRDプロファイルから、膜試料はLDH(ハイドロタルサイト類化合物)であることが同定された。
‐評価2:膜試料の表面微構造のSEM画像は図7に示されるとおりであった。この図から、多孔質基材の露出している部分がなく、多孔質基材の表面の全体にわたってLDH膜がムラなく均一に形成されることが分かる。
‐評価3:膜試料は透水性を有しない程に高い緻密性を有することが確認された。
‐評価4:膜試料は通気性を有しない程に高い緻密性を有することが確認された。
‐評価5:膜試料の多孔質基材との界面におけるS含有量は0.6%であった。S含有量の測定の際に観察した1視野におけるLDH膜/多孔質基材の界面近傍のFE−SEM画像を図8に示す(同図には組成分析を行った3点が示される)。また、測定の際に図8に示される点1において取得されたEDSスペクトルが図9に示される。
‐評価6:膜試料の伝導率は2mS/cmであった。
‐評価7:界面及びその近傍に炭素濃度の極大値が確認されなかった。
【0057】
例2(比較)
例1(1)と同様にして、8YSZ多孔質基材の作製及び洗浄を行った。8YSZ多孔質基材をオートクレーブ容器に入れた。i)ポリスチレンスピンコート及びスルホン化(上記(2))を行わなかったこと、及びii)70℃で7日間の水熱処理を施す前に同じ原料水溶液を用いて60℃で4日間の水熱処理を施して基材表面にAl(OH)を核形成させたこと以外は、例1(3)及び(4)と同様にしてLDH膜の形成及び評価を行った。すなわち、原料水溶液と多孔質基材が封入されたオートクレーブ容器中で、60℃で4日間水熱処理して基材表面にAl(OH)を形成させた後、そのまま(すなわち原料水溶液を入れ替えずに)温度を70℃に上げて7日間水熱処理してLDH膜を形成させた。
【0058】
得られたLDH膜試料に対して評価1〜7を行った。その結果は以下のとおりであった。
‐評価1:XRDプロファイルから、膜試料はLDH(ハイドロタルサイト類化合物)であることが同定された。
‐評価2:膜試料の表面微構造のSEM画像は図10に示されるとおりであった。この図から、多孔質基材の露出している部分がなく、多孔質基材の表面の全体にわたってLDH膜がムラなく均一に形成されることが分かる。
‐評価3:膜試料は透水性を有しない程に高い緻密性を有することが確認された。
‐評価4:膜試料は通気性を有しない程に高い緻密性を有することが確認された。
‐評価5:膜試料の多孔質基材との界面におけるS含有量は0%であった。
‐評価6:膜試料の伝導率は0.3mS/cmであった。
‐評価7:界面及びその近傍に炭素濃度の極大値が確認されなかった。
【0059】
例3:炭素付着(蒸着)及びスルホン化を行った例
例A1の(1)と同様にして、8YSZ多孔質基材の作製及び洗浄を行った。なお、多孔質基材表面の気孔率は42.5%、多孔質基材の平均気孔径は約0.22μmであった。8YSZ多孔質基材上へ基材を回転させながら炭素を均一にコート(蒸着)した。この炭素コートは、真空蒸着装置(SVC−700TMSG、サンユー電子株式会社製、但しオプションとして炭素蒸着用フラッシュ電源を備える)を用いて、フラッシュ式蒸着法により、フラッシュ回数:5回の条件で行った。こうして炭素を塗布した基材を95%硫酸に80℃で7日間浸漬して炭素にスルホン基を結合させた。スルホン化した多孔質基材をオートクレーブ容器に入れ、例1の(3)及び(4)と同様にしてLDH膜の形成を行った。
【0060】
得られたLDH膜試料に対して評価1〜7を行った。結果は以下のとおりであった。
‐評価1:XRDプロファイルから、膜試料はLDH(ハイドロタルサイト類化合物)であることが同定された。
‐評価2:膜試料の表面微構造のSEM画像は図11に示されるとおりであった。この図から、多孔質基材の露出している部分がなく、多孔質基材の表面の全体にわたってLDH膜がムラなく均一に形成されることが分かる。
‐評価3:膜試料は透水性を有しない程に高い緻密性を有することが確認された。
‐評価4:膜試料は通気性を有しない程に高い緻密性を有することが確認された。
‐評価5:膜試料の多孔質基材との界面におけるS含有量は0.5%であった。
‐評価6:膜試料の伝導率は3.2mS/cmであり、例1よりもさらに高い伝導度が達成された。
‐評価7:図12にLDH膜/多孔質基材の界面近傍のFE−SEM画像を、図13に例3において図12に点線の矢印で示される3μmの長さにわたって測定されたLDH膜/多孔質基材の界面及びその近傍における炭素濃度のラインプロファイルを示す。図12及び13に示されるように、界面及びその近傍(特に界面)に炭素濃度の極大値が確認され、炭素(C)を含むことが確認されるとともに、界面における炭素膜又は炭素層の存在が示唆された。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図9
図13
図7
図8
図10
図11
図12